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    【少女終末旅行】つながり

    1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:14:33.03 ID:dW68xNSs0
    少女終末旅行です。地の文ありです。

    SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1512663272


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    2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:15:46.69 ID:dW68xNSs0

    がたごと、がたごと。ケッテンクラートは走る。

    じゃりじゃり、じゃりじゃり。ガラスを踏んだ音がする。

    かたかた、かたかた。詰んだ荷物の音がする。

    びゅーびゅー、びゅーびゅー。建物の間を風が吹き抜ける音がする。

    ぐーぐー、ぐーぐー。ユーの眠る音がする。

    がたごと、がたごと。塔に向かって。

    じゃりじゃり、じゃりじゃり。入り組んだあてのない道を行く。

    びゅーびゅー、びゅーびゅー。向かい風は私の服に突き刺さる。

    ぐーぐー、ぐーぐー。ユーはいつも通りだ。

    がたごと、じゃりじゃり、びゅーびゅー、ぐーぐー。

    がたごとじゃりじゃりびゅーびゅーぐーぐー。

    3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:16:46.43 ID:dW68xNSs0

    無数に連なる廃墟は、私とユーと、この音達を吸い込んでは、無に変える。

    音は無音になり、私とユーは、存在を廃墟と同じ、空虚に変える。

    それがいつも通り、普段の日常。なんて、言ったらいいんだろう。本風に言い換えるなら。

    言い換えなければ、バカみたいに寒い風を、私一人が耐え忍んで、ケッテンクラートを運転する。

    その後ろで、私のことなんか気にしないで、バカみたいに眠るユーと、揺れる荷物、履帯が踏み潰すガラスの音と、じゃりの音。

    これがいつも通り、普段の日常。

    がたごと、じゃりじゃり。びゅーびゅーぐーぐー。

    がたごとじゃりじゃり、びゅーびゅー、ぐーぐー。

    がた、ごと、じゃり、じゃり、びゅー、びゅー、ぐー、ぐー。

    4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:18:01.90 ID:dW68xNSs0

    私が読んだ本に書いてあった。昔の人は、音楽を聴いて、リラックスしてたって。

    リラックスすると、段々呼吸はゆっくりになって、頭が回らなくなって、しまいには体は風邪をひいたみたいに、熱を帯びるらしい。そして眠くなる。

    こうとも書いてあった。

    昔の人は、音楽を聴いて、高翌揚していたって。高翌揚すると、段々呼吸は荒くなって、頭の回転が速くなって、しまいには体は風邪をひいたみたいに、熱を帯びるらしい。そして眠くなる。

    私はため息をついた。廃墟が吸い込む前の音達を間近で受ける私には、その大昔の人たちの教えをしっかりと感じている。

    がたごとじゃりじゃりびゅーびゅーぐーぐー。

    もしかしたら、ユーもその教えを身に受けているから、いつも眠っているのか。そう考えると妙に納得できた。でもムカつくのはムカつく。

    がたごとじゃりじゃり、びゅー、びゅーぐーぐー。

    眠い。眠いけど、寝たら建物にぶつかる。後々のことを考えると、そっちの方がもっと面倒だ。

    がたごとじゃり、じゃり、、びゅーびゅーぐーぐー。

    5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:19:08.24 ID:dW68xNSs0

    寒い。

    がたごとじゃりじゃり、、びゅーびゅー、ぐーぐー、、。

    眠い。

    がたごと、、、じゃりじゃり、、びゅーびゅー、、ぐー、、ぐー、、、、。

    がた、、、、ぐー、、、。

    、、じゃ、、、びゅー、、。

    、、、。

    私は、落ちる。眠りの、底へ。深く、深く、誘われていく。

    ユーリ「ねぇちーちゃん」

    チト「.....うぁ!?」

    急に現れたユーの声に私は驚いて、思わずブレーキペダルをおもいっきり踏んだ。

    それに驚いたユーも大きな声をあげ、私のブロディヘルメットにぶつかると、鈍い音を響かせる。

    ごつんと、新しい音は廃墟が吸い込んで、また無に変えた。

    ユーリ「もうちーちゃん!危ないって!」

    チト「....ユーだって急に大きな声、出さないでよ」

    それでなに。と私は振り返って言うと、ユーは空を見上げて、手を伸ばした。白い吐息と一緒に言葉が紡がれる。

    6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:19:52.20 ID:dW68xNSs0

    ユーリ「雪、降ってきそーだなーって思って」

    私も空を見た。灰色の空模様に、灰色の雲がもくもくと現れ始め、すぐにでも雪が降り始めそうだった。でも今に始まったことじゃない。

    チト「いつも降ってるようなもんだから、気にしなくてもいいだろ」

    いつも空から落ちてきては、降り積もる雪。年がら年中降っていて、寒くて仕方ない。

    ユーリ「危機回避だよちーちゃん。風邪ひいたら死んじゃうし、早め早めの対策を....」

    珍しく真面目な顔をしたユーはそう言った。そして偉そうに腰に手を当て鼻を鳴らした。

    チト「....まぁそれもそうだな」

    その通りだと思った私は、ユーの意見に珍しく従うことにした。

    私はケッテンクラートのスロットルを少しだけ強める。

    かといって、そんなに速く走らせるわけじゃない。無駄に燃料を消費させるのと、その場しのぎの暖をとることの釣り合いがとれないからだ。

    7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:21:03.67 ID:dW68xNSs0

    ユーが鼻歌を始めた。

    がたごと、ふーんふふーん、じゃりじゃり、ふーーんふーん、かたかた、ふーん、びゅーびゅー、ふーーんふん、ぐーぐー。

    廃墟は無機質な物の音を吸い込んでも、ユーの出す間抜けで、ばらばらなリズムは吸い込めないみたいだ。

    鼻歌で空虚は存在を掴み取り、灰色は青色に。そんな色のついた鼻歌は、形になって空に上がっていっては、色んなところに存在をくっつけている様子が想像できたからだ。

    右に左に、時に行き止まりを後退したり、階段をゆっくりのぼる。

    ここはどう、と聞いては、違うと言われ、あっちはよさそうと言うと、それも違うと言われる。

    あっちにこっちに、存在打ち付ける。

    灰色にくすんだ外壁は虹色に。

    どんよりとした空模様は真っ青に、そして赤と緑の雲が流れて行く。

    車輪が踏みつけた跡は黄金色に。

    私たちの進む道は、ただの無色。だけど私たちが通った道は色とりどりの色模様が広がる。そんな想像。

    ユーリ「ちーちゃん!あそこがよい!」

    チト「わかった」

    8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:22:01.56 ID:dW68xNSs0

    私たちが進む先にある、ぽつんとたたずむプレハブ小屋の小さな建物。

    その小屋の前には丸い、剥がれた赤色に挟まれた白の線が施された、看板みたいなのが立っていた。

    ユーリは私のヘルメット叩いてそこがいいと言った。

    やかましく頭を叩くから、仕方ないけど、見るからに頼りない、壊れてしまいそうなその小屋の隣にケッテンクラートを止め、私は中を覗く。

    中を覗く、と言ってもその小屋は入り口を大きく解放していた。

    解放していたというか、扉はなく、誰でもすぐに入ることができるようだった。

    中には大きな椅子があった。破れていて、同じく赤色だった赤は、くすんでいた。

    ユーリ「どうよちーちゃん。風情があるでしょ」

    チト「まぁ、もう降りそうだし、ここでいいか」

    私は椅子に腰を下ろした。柔らかかったけど、埃が舞って咳き込んだ。

    そしてユーも私の隣に座った。いちいち動作が大きくユーだ。もちろんおもいっきり飛んで座ったから、埃が舞い、私はまた咳き込む。

    9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:22:53.84 ID:dW68xNSs0

    チト「....おい」

    ユーリ「ごめんごめん!いやーそれにしてもいいところ見つけたねぇ」

    チト「....そうだな」

    ぐーぐーと、ユーのもう一つの音がなった。いびきと同じこの音は、腹が減ったという音だ。ユーは私を見つめると。

    ユーリ「ちーちゃんお腹すいた」

    そう言い立ち上がる。そして歩き出してケッテンクラートのがある方へ向かって行く。

    どうせやることなんて、わかってる。でも私もユーと同じでお腹が空いている。

    いつもの空腹は、いつもより空腹だ。だから止めない。

    戻ってきたユーはレーションの入った袋と、カメラを持ってきて、にこにこしている。

    チト「なんでカメラがいるんだよ」

    ユーリ「なんとなく?カメラが私を呼んでいたのさ」

    自分でも疑問だったくせに、適当に理由をつけて納得したようで、満足そうだ。

    そしてゆっくりと私の隣に座ると、レーションの入った袋を開ける。

    ぽつり、ぽつり。新しい音。でも聞き覚えのある音だ。

    ぽつり、ぽつり。ぐーぐー。

    10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:23:35.17 ID:dW68xNSs0

    チト「雨だ」

    ユーリ「あれぇ雪じゃないの?」

    チト「雨だな」

    ユーリ「そのうち雪に変わる。私の勘がそう言っている」

    はいちーちゃんと言って私にレーションを渡した。

    魚のレーション。青空の下、冷たい川辺で洗濯をした時の、あの魚を真似た、レーション。

    残念だけど味は魚味じゃなくて、レーション味。

    砂糖の甘さだけで素っ気なく、魚を初めて食べた時の、あの味には遠く及ばない。

    その魚のレーションの頭の部分を口に咥え、ウィンクをして、カメラを自分に向けていた。

    その間抜けなユーに、間抜けさを足した姿を見た私は、思わず聞いてしまう。

    チト「何してるんだユー」

    ユーは魚を口から外して、わかってないな、とでも言いたげな顔をして、ため息を吐いた。

    ユーリ「こうやって食べてる自分を記録に残そうとしてるんだよ」

    11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:24:09.38 ID:dW68xNSs0

    チト「いやそれはわかるんだけどさ。なんでそんなことする必要があるんだってこと」

    ユーリ「....お腹空いた時にさ。あーこれ美味しかったなぁー、とか思ったり、この時の私はご飯食べてたなーって、記録見るたび思い出せば、お腹も膨れると思った。うん!そう思った!」

    チト「今適当に考えただろ」

    はい、とユーはそう言って私にカメラを押し付けてきた。

    カメラ。カナザワの、カメラ。白くて板みたいなのに、使おうとすると中からレンズが飛び出してくる、器械。たくさんの記録が中には残っている。

    カメラを渡してきたユーは、さっきと同じ様にレーションを口に咥えて、ウィンクをしている。

    準備万端なユーの姿に、結局私が撮るのかと思うと、何だかムカついてしょうがないから、カメラをユーに押し返して。

    チト「自分で撮れ」

    そう言ってやると。ユーはカメラを起動してまた私に押し付けてきた。

    ユーリ「えーだって撮れるわけないもん!ピント合わせるの大変だし、それに自分を自分で撮るなんてバカみたいじゃん!カメラは人を撮るためにあるんだよ!?」

    12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:25:25.66 ID:dW68xNSs0

    チト「でもユーを撮って後で見返しても、私はお腹は膨れない。だったら撮る意味ないだろ」

    押し返す。

    ユーリ「じゃあちーちゃんも撮ればいいじゃん!」

    押し付ける。

    チト「あーもうめんどくさい!撮らないものは撮らない!」

    そう大きな声で言いながら、カメラを押し返した。そして私は椅子に足を乗せた。

    そして寒さを凌ぐために小さく縮こまる。私はレーションを食べた。

    レーション。イシイが食糧生産施設の場所を教えくれたからできた、レーション。砂糖多めで幸せもたくさん詰まった、甘くて、しっとりとした、レーション。

    もぐもぐ、もぐもぐ。

    もぐもぐ、、、もぐもぐ、、、。

    私は急に静かになった隣に、急に不安になった。

    さすがに言いすぎたかな、と思いつつ視線だけをユーに向けた。

    やっぱり、少し悲しそうな顔をしている。いたたまれない。

    チト「....撮らないけど、ピントが合ってるかどうかは教えてやる」

    灰色は虹色に。どんよりとした空模様は青色に変わり、青と赤の雲が流れていく。空虚から存在を塗りたくる。

    13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:26:13.47 ID:dW68xNSs0

    ユーリ「やった!じゃあお願いねちーちゃん!」

    カメラの画面を私に向けた。画面には、改めて口にレーションを咥えて、ウィンクをするユーがボケて映っている。

    画面越し、それも表情も、何もかもぼやけてて見えないのに、ユーの笑顔が画面からは見えた。

    少しずつ、絞りを回す。それに合わせては徐々にピントが合ってきて、被写体の像が明らかになってきた。

    チト「ボケてないよ」

    こんがり焼けてたのに、今ではしっとりとした魚のレーションを口に咥え、ウィンクをする、今日何度もみた、ユーのウィンクと笑顔がしっかりと映っている。

    ユーリ「自分を撮る.....。自分撮り.....。自撮り....」

    チト「略すな」

    カシャ。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 01:26:48.77 ID:dW68xNSs0
    今日はここまでです。話は書き終わっているので適当な時間に。眠いので寝ます。

    15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:33:19.23 ID:dW68xNSs0
    ユーリ「てってんくらーと」

    ざーざー。

    チト「ケッテンクラート」

    ざーざー。ぽた、ぽた。

    ユーリ「ケッテンクラート....」

    ざーざーぽたぽた。ざーざーぽたぽた。

    チト「そう、ケッテンクラート」

    ユーリ「てってんくらーと」

    チト「一秒もたってないのに忘れるな」

    ユーリ「いっつも思うんだけどさ、あれ、ずっと外に出しっぱだよね」

    ざーざーぽたぽた、もぐもぐ。

    チト「....そういえばそうだな」

    ざーざー、ぽたぽた。もぐもぐ、もぐもぐ。

    ユーリ「風邪ひいたりしないのかな?」

    チト「しない」

    雨脚が強くなってきた。ユーが言うには雪に変わるらしいけど、そんな絶対ありえないくらい降り続いている。それで私たちは相変わらず、ちびちびとレーションをかじっては、外を見つめる。

    ユーリ「でもケガはするよね」

    チト「してない」

    ユーリ「壊れてるじゃん。たまに」

    チト「....まぁ壊れてるな」

    ざーざーぽたぽた、もぐもぐもぐもぐ。

    16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:34:08.86 ID:dW68xNSs0
    ユーリ「ケッテンクラート、ここに運ぼうよ」

    覚えてたのか。そう思ったけど、細かいことをいちいち気にしてたら、ユーの全てが気になってしまう。そこは流しておいて、私は最後の一口を口に放り込む。

    チト「ここ、狭くて運べない」

    二人とこの椅子だけでもう窮屈なここに、ケッテンクラートは運べない。

    さすがに鈍感なユーも、それには気がついたみたいで、残念そうな顔をして、レーションをかじり続ける。

    まぁでもユーの言うことは、よくわかる。いつも外に出しっぱなしだ。

    私達もいつも外で寝てるようなもんだけど、ケッテンクラートと違って、雨ざらし、雪ざらしってわけじゃない。

    かわいそうだな。素直にそう思った。

    膝の上に置いていたカメラを椅子に置くと、ユーは不意に立ち上がった。

    チト「....今度はなんだ」

    ユーリ「ここに運べないなら、せめて....レーションだけでも食べさせてあげよう!」

    雨に濡れてまで、ケッテンクラートにレーションを食べさせることを決意したのか、小さくガッツポーズをしたユーは、同意を求めるように、私を見た。


    17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:34:51.69 ID:dW68xNSs0

    チト「どうやって」

    ユーリ「ほら、燃料入れるところから」

    チト「壊れるからやめろ」

    ユーリ「ちーちゃんは血も涙もないの!?」

    チト「いやケッテンクラートを殺そうとしてる方が血も涙もないぞ」

    ユーリ「じゃあ私がケッテンクラートを同じものを食べる!」

    どうしてそうなった。そう思った頃にはもう遅く、ユーは雨の中に向かって走っていった。

    私も急いで立ち上がりユーの後を追いかける。

    チト「おいレーションもったいないからやめろ!」

    ユーリ「えーなんでー?もしかしたら、魚級に美味しくなるかもしれないんだよ?」

    すぐにずぶ濡れになったユーは、燃料の入ったタンクを抱えて、こっちに戻ってきていた。

    雨の中では食べないらしい。私は雨を遮るように手をかざして、そんな賢いユーにこう言った。

    18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:36:52.65 ID:dW68xNSs0

    チト「お前ガソリンの味しらないだろ」

    ユーリ「ちーちゃんは知ってるの?」

    チト「修理中に何度か口に入ったからな」

    ユーリ「レーションにつけて食べたことはないでしょ?」

    チト「....結果は見えてるけど、まぁ勝手にしろ。あと残すなよ。もったいないから」

    ユーリ「あい」

    廃墟に戻ってすぐ、私はずぶ濡れになったコートを脱いだ。ユーはコートを脱ぐことよりも、燃料缶の蓋を開けようとしていた。

    きゅぽん。

    チト「ほんとのやるのか?」

    ユーリ「もち。同じ釜の飯を食うってね~」

    ふーん、ふふーん。ぽちゃ。

    ユーはレーションを燃料の中に、躊躇いもなく突っ込んだ。そして数を数え始めた。そして五秒だった時、ユーはレーションを引っこ抜いて、珍しそうに上に持ち上げた。

    ユーリ「なんかきらきらしてるー」

    ぽたぽた。

    チト「早く食え。垂れてる燃料が勿体無い」

    ユーリ「いただきます!」

    もぐもぐ。もぐもぐ。

    チト「うまいか?」

    もぐもぐ、もぐもぐ。ごくり。

    ユーリ「うんまずい!」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:38:00.33 ID:dW68xNSs0

    ケッテンクラート。私たちが塔を目指す時に渡された乗り物。ずっと一緒だ。でも遅い。

    ユーは私にこう言った。なんの前触れもなく。振り続ける雨を見ながら。

    物って死ぬの?

    ざーざー。ぽたぽた、ぽたぽた。

    チト「そりゃ死ぬだろ」

    私たちだってそのうち死ぬ。どうやって死ぬのか知らないけど、死ぬ。

    餓死、溺死、焼死、落下死、圧死。ありとあらゆる死に方が、私達には用意されている。

    このどれかに当てはまらなくて、勝手に死ぬこともあるけど。今の私達に一番身近な死は、数えきれない。

    ユーリ「じゃああの喋る器械も、そのうち?」

    チト「うん。でも私達よりかは、長生きするだろうね」

    私達よりは長生きする。物の死に方は、私達の死に方よりも、少ないし、何より物は頑丈だから。そのことをユーに教える。


    20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:39:03.73 ID:dW68xNSs0
    ユーリ「じゃあケッテンクラートも?」

    チト「ケッテンクラートも」

    ユーリ「このレーションも?」

    チト「レーションも」

    ユーリ「この銃も?」

    チト「銃も」

    ユーリ「カナザワも?イシイも?」

    チト「そうだな。みんなみんな」

    みんなみんな。そのうち死ぬ。

    ざー、ざー、、、。ぽたぽた、、、ぽた、ぽた。

    ユーリ「じゃあ私達も?」

    ざー、、、、、、ざー、、、、ざー、、、。

    チト「....どうした急にしおらしくなって」

    ユーリ「私たちってさ、物に生かされてるなって思って」

    チト「物に生かされてる?」

    ユーリ「そう、物に」

    21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:40:06.54 ID:dW68xNSs0

    ユーリは起動したままのカメラをいじる。絞りのピントを意味もなく、合わせては、ぼかしたり。

    ユーリ「私達の代わりにケッテンクラートは歩いて、私達の代わりに、レーションが犠牲になって私達を生かしてる。それに、私達の代わりにこの服が寒さを受けてる。頭だって、このヘルメットが代わりに守ってくれてる」

    代わりに、代わりに。ユーリは私達の持ってる全ての物の名前を言う。

    ユーリ「ちーちゃんはさ。物はそのうち死ぬって言ったよね。じゃあ、物が死んで、私達二人だけになっちゃったらさ。私たちって」

    生きていけるのかな。

    チト「........」

    、、、、、、、、、、、、、。

    チト「わからん」

    ユーリ「そだね。わかんないね」

    22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:41:10.17 ID:dW68xNSs0

    魚のレーション。青空の下、冷たい川辺で洗濯をした時の、あの魚を真似た、レーション。

    カメラ。カナザワの、カメラ。白くて板みたいなのに、使おうとすると中からレンズが飛び出してくる、器械。たくさんの記録が中には残っている。

    レーション。イシイが食糧生産施設の場所を教えくれたからできた、レーション。砂糖多めで幸せもたくさん詰まった、甘くて、しっとりとした、レーション。

    ケッテンクラート。私たちが塔を目指す時に渡された乗り物。ずっと一緒だ。でも遅い。

    私達は、物に生かされていた。でも私はこう思っていた。

    私は、自分と、ユーの二人だけで生きていると。

    困難も苦難も、辛い時も怖い時も、私はユーと二人で生きていたと。

    23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:42:55.57 ID:dW68xNSs0
    いいや違う、物の元を辿れ。私たちがあてのない旅に出たのは、誰のおかげだ。ケッテンクラートを渡したおじいさんのおかげだ。

    ふざけてカメラで遊んで、暇つぶしをできているのは、誰のおかげだ。カナザワのおかげだ。

    こうしてレーションを食べて、生きていられるのは、誰のおかげだ。イシイのおかげだ。

    そもそも、この旅の終着点はよくわからんけど、塔に向かう目標だって、私が決めたわけじゃない。

    私達は、何も選択していない。色んな人に用意してもらった物と目的を使って旅をしている。

    私達は、生きていない。本当だったら、もう死んでいるんだ。

    チト「.....私たちってさ、よく生きてるよね」

    ユーリ「そだね。運がいいのか悪いのか。まぁどっちでもいいや。それにちーちゃん言ったよね。物は私達よりも早く死なないって」

    チト「そう言ったな....」

    24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:45:53.71 ID:dW68xNSs0

    ユーは椅子に大きく腕を広げ、たくさん白い息を吐いた。

    ユーリ「私達より後に死んじゃうなら、別に問題ないよね」

    なんてユーらしい答えなんだ。そうだな。物はそうは簡単に死なない。私達より、後の死ぬ。

    だから、ケッテンクラートが壊れて、私たちが歩くこともない。

    カメラが壊れて、記録も記憶もなくなることはない。

    レーションが底を尽きて、空腹に喘ぐこともない。

    それは、私達よりも後に起こることだから。もしも前後が逆になることは、ない。そう思いたい。

    そうなってしまったら。無防備で、生かされていた私達は、どうなるんだろう。その不安をユーに話した。するとユーは、いつもの調子でこう言うんだ。

    ユーリ「その時は、また誰か助けてくれるでしょ」

    チト「....誰も助けてくれなかったら?」

    ユーリ「その時は!」

    ユーは立ち上がって私の手を引いた。急にそんなことをされたら、私はバランスを崩して倒れそうになった。でも倒れない。

    ぽたぽた。ぽたぽた。

    ユーの笑顔。いつも通り。バカみたいに明るいその顔。

    ユーリ「ちーちゃんが好きなあれだよあれ。片方が支えるあれ。ちーちゃんが倒れそうになったら、私が支える」

    今度はユーはバランスを崩して私を引っ張る。ユーは私より全部がでかい。支えきれずにユーの上に倒れこむ。

    ユーリ「私が倒れそうになったらちーちゃんが支える。どう!?かんぺきでしょ!」

    チト「倒れてるんだけど」

    ユーリ「まぁなんとかなるでしょ」

    チト「またそれ....」

    でもまぁ、あんまり考えることじゃない。それは遠い先の話だ。私はユーの柔らかい胸に顔を埋める。暖かい。

    チト「でもまぁ、ユーの言う通りだな。倒れそうになったらどっちかが支える。そうすれば、私たち二人が終わるまで、終わらないよな」

    ユーリ「そう!そんな感じ!」

    たぶん終わる時は、ユーと一緒だろう。私は一人じゃ生きられない。ユーも同じだ。一人じゃ生きられない。

    この世界を旅すると決めた時。この世界に生まれついた時から、私とユーは、一つの存在なんだから。

    とくん、とくん、とくん、とくん。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





    25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/08(金) 11:46:33.12 ID:dW68xNSs0
    おしまいです。

    引用元: ・【少女終末旅行】つながり

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