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    一方通行「あァ?何だ格下?」 美琴「格下言うな!」

    1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:04:57.77 ID:rASbq8kto

     27の学園都市協力機関の離反
    『ヒーロー』達それぞれの日常を守るための戦いは、望まれない別の結果を産み出してしまう。
    学園都市、グレムリン、そして明け色の陽射し。それぞれの思惑の交錯は、最悪の事態を招いてしまう。
    上条当麻の失踪――
     再び訪れる上条当麻不在の世界。
    その時インデックスは、一方通行は、御坂美琴は、浜面仕上は、何を思い、何を信じるのか。
     十人十色の上条当麻への思いが交差するとき、物語は始まる――!



    【ご注意】
    ・この物語は『とある魔術の禁書目録』の二次創作SSです。
    ・初SS投下のため、読みづらい箇所も多いかと思いますが容赦願えればと思います。
    ・設定の矛盾、勝手な解釈等多分にあるかと思われます。
    ・それに伴ない、キャラ崩壊とも取れる描写が出てくるかと思われます。
    ・原作での描写に基づいて考えた独自の設定も一部ではありますがあります。
    ・タイトル通り電磁通行多めになりますので苦手な方はご注意を。
    ・新約3巻のその後の物語になります。ただの妄想ですので3人の木原もグレムリンも出なければ、格闘大会もありません知りません。


    上記の事を踏まえた上で、問題ない方は付き合って頂ければ幸いです。



    SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1329041070(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)



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    2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:11:58.26 ID:rASbq8kto

    一方通行「あァ?無能力者<レベル0>の野郎がいねェだ?」

    グレムリンや、PVCトライデントによるハワイ島の占拠を食い止め、学園都市に迫る脅威を退け、各々の日常を取り戻した一行――一方通行、浜面仕上、番外個体、黒夜海鳥――の耳に飛び込んだのはそのような内容の言葉だった。

    美琴「それに、今回の騒動で私たちの動きが明るみに出たことによる学園都市の協力機関27機関の離反、それもあのバードウェイって娘の計画通りだった…!」

    御坂美琴、肩口ぐらいまでの茶色いセミロングの髪に、利発そうな顔立ち。中学生という年齢の割には大人びた身長の少女。もっとも、今の彼女の顔色はお世辞にもいいとは言えず、焦りと後悔で今にも歪み出しそうなほどだ。
    学園都市に7人しかいない超能力者<レベル5> 序列は第三位。

    浜面「大将は、そのケジメをつけに、自分一人でどっか行ったってのかよ?!」

    浜面仕上、見た目はどこにでもいそうなチンピラのようで、明るい色に染めた長めの髪と耳についたピアスが特徴の学園都市の無能力者<レベル0>。

    番外個体「いやーっ。とんだヒーローさんだねあの人は。ぎゃは☆ほんとに人間の血流れてんの?大事なネジ置いてきたとしか思えないね」

    番外個体<ミサカワースト>、顔立ちは御坂美琴と瓜二つで、そのまま高校生程度まで成長させたような容姿をもつが、ただ一つ目付きだけが絶対的に違う。悪意に満ちた、見るものが見ればそれだけで萎縮してしまいそうな目付きの少女。
    第三次製造計画<サードシーズン>によって製造された、御坂美琴のクローン体。

    黒夜「べっつにいいんじゃねぇの?あの他人任せヒーロー。少しは自分一人で何かしないと気が済まねぇんじゃねぇの?」

    黒夜海鳥、前を揃えた黒い髪は肩甲骨の辺りまで伸びているが、アクセントのために耳元だけが金色に色を抜かれている。
    小柄な身体を締め付けるように、黒い革と錨で出来たパンク系の衣装で身を包んでいる12歳前後の少女。
    『暗部』からの解放を望まずそこに留まる事を求め、上層部の招集に従って『新入生』に参加していたが、今は浜面たちに危険を防ぐ為監視の意味で同行させられている。


    3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:13:01.83 ID:rASbq8kto

    一方通行「……。あの野郎、騙してやがって……!!いや、騙された奴が文句を言えた義理じゃねェか」

    一方通行、白い髪に、白い肌。目だけが赤く人間と言うよりも獣に近い印象を与える少年。
    その力の強大さ故に数々の『闇』の中を経験してきた学園都市最強の超能力者<レベル5>、序列は第一位。

    美琴「私は、あいつを止められる場所にいた!!それなのに…それなのに結局あいつと一緒に行ってあげられないままだった!」




    4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:14:04.20 ID:rASbq8kto






    美琴「私はあのバカを止めてくる」






    5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:15:27.79 ID:rASbq8kto

    一方通行「おい、待ちやがれ第三位」

    美琴「何よ?あんたには関係無いでしょ?大体、事態が事態だからさっきは結果的に協力したけどあんたのどうこう言われるような筋合いはないはずだけど?」

    一方通行「あの無能力者がどこに入ったか探すとしてだ、アテはあンのかよ?」

    美琴「それは……」

    一方通行「そもそも、行くアテがあったとして、オマエ一人ににどうこうできンのか?今の今まで一緒にいたンだろ。それでこのザマだ。そンな状態で行った所で、協力を断られンのがオチだと思うがなァ?」

    美琴「なっ……!」

    浜面「ま、まぁまず落ち着けって。一方通行の言い方も悪いが、ここの面子は皆大将と無関係ってわけじゃないんだし、ゆっくり今後のことを話し合ったって良いだろ?」

    美琴「そんなのじゃ……、そんなのじゃ遅いのよ……。あいつはあの時の私と同じ顔をしてた!!あのまま放っといたら、あいつは自分を犠牲にするような選択も迷わずする!そんなの黙って待ってるなんてできない!」

    美琴の瞳から涙が零れ落ちる。
    かつての自分と同じ境遇の少年を助けることが出来ないことを責める気持ち、そして後悔の念からだろう。


    6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:16:34.72 ID:rASbq8kto

    浜面「……」

    浜面「あんたと大将がさ、どんな間柄だったかは知らないけど――」

    浜面「きっとそれだけあんたが真剣に大将のことを考えられる人間だってんなら、きっと大将にとっても同じ位あんたが大切なんだろうよ」

    浜面「それならなおのこと、あんたは無茶なことをしちゃいけないんだ。きっと大将を苦しめちまう」

    美琴「それは……」


    7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:17:54.10 ID:rASbq8kto





    番外個体「要はこの男どもは、『自分の好きな女が苦しむ所は見なくないのー>< ヒーローさんにも同じ苦しみを味わって欲しくないよぉぉ』って言ってるんだぜ?」




    浜面「ぶふっ?!」

    一方通行の(俺もかよ…。)

    番外個体「それに、いままでどんな困難を切り抜けようと結局はあの人はただの男子高校生。手持ちの金は?移動経路は?そもそも日本語以外喋れないよねありゃあ」

    番外個体「そう早急に事を起こせるとは思わないんだけどにゃー?」


    8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:19:13.63 ID:rASbq8kto




    美琴「……ふふっ。こんな時に、ほんとにバカしかいないのかしら?」

    美琴「……はぁ、わかったわよ」

    美琴「わかったわよわかりました!!」

    浜面「それじゃあ……?」

    美琴「とりあえずあんた達と一緒に一旦学園都市まで戻るわ」




    美琴「はぁ……。自分一人で突っ走るなって何度も言われてるんだけどなぁ……」





    浜面「え?」

    美琴「な、なんでもないわよ! 取り合えず私その辺で時間潰してるから、出発の日程とか決まったら教えなさいよー?」

    浜面「行っちまった……。大丈夫かよ?」

    一方通行「大丈夫じゃねェの?」

    番外個体「おぉ~にやにややっぱにまにまツンデレのぎゃはっ心理状態はツンデレが一番わかるのかねぇー?」

    一方通行「殺すぞ」

    浜面(俺はあんな化け物相手に冗談言えねぇよ…。)


    ――


    9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:20:59.96 ID:rASbq8kto


    ――



    空港内 カフェ・シンプルココナッツ――

    美琴「……出発は明日かぁ。ご丁寧にホテルまで取ったのね」

    美琴は呟くと、年齢にそぐわないといつも後輩から口酸っぱく言われている携帯端末を折りたたんだ。

    美琴「……」

    美琴「なにやってんのよ、あのバカは……」

    「すいませン、相席いいですかァ?」

    美琴「(日本語?)……えぇ。かまいませんけ、ど……」



    美琴「何であんたなのよ?」

    一方通行「よォ。オリジナル」

    美琴「……何しにきたの?」

    一方通行「オマエに聞きたいことがある」

    美琴「私は一分一秒もあんたの顔見たくないんですけど?」

    一方通行「チッ。格下のくせに口が減らねェな」

    美琴「か、格下ですって?!」

    一方通行「事実だ」

    美琴「……!」


    10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:22:31.29 ID:rASbq8kto

    一方通行「まず一つ。あのバードウェイとか言うガキは、今回の騒動で学園都市の高位能力者が戦闘行為をしたことによる世界的な学園都市のイメージダウン、そこからつながる協力機関の離反までがあいつの計画の内だったって言ったなァ?」

    美琴「ええ、そうよ。それであいつは自分一人の責任だと背負いこんでまたどっか行っちゃったわ。」

    一方通行「オマエはそれが、本当にあの無能力者のせいだと思ってンのか?」

    美琴「そんなわけ無いじゃない。あいつ以外にも、例えば私だってあの娘の話を聞いた!話の裏に気付ける機会があった!あいつ一人で抱える問題なわけ無いじゃない!!」

    一方通行「そうじゃねェ」

    一方通行「これは俺たちの誰にも主たる責任はねェよ」

    美琴「……どういう、ことよ?」


    11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:24:17.37 ID:rASbq8kto

    一方通行「考えてもみろ、確かに手放しで褒められるもンじゃねェ手段ではあるが、俺たちは結果的にハワイに留まらず合衆国全土を救ってンだ。ここまでの悪評が蔓延するのはおかしい話だ」

    美琴「それって……どういう?」

    一方通行「十中八九間違いねェが、何か裏で大きな力が働いてやがる。それも世界の『闇』なんて呼ばれるよォなふざけた連中の仕業だろうな。胸糞わりィことに」

    一方通行「どういうわけか知んねェが、そんな馬鹿らしい規模のくだらねェ目的のために、あいつ一人が使い潰されようとしている。気に入らねェ話だ」

    一方通行「それにこの状況、あの時……」

    美琴「絶対能力進化<レベル6シフト>……?」

    一方通行「そォだ。あの時、学園都市の上層部全てが、2万体のクローン体をぶち殺すなんていう馬鹿げた計画を黙認し――オリジナル、オマエをクソッタレな闇の底に突き落とした時と同じだ」




    12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:24:51.62 ID:rASbq8kto




    一方通行「……今から俺が言うことだがなァ。笑いたきゃ笑いやがれ。」


    美琴「……え?」




    13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:25:33.93 ID:rASbq8kto








    一方通行「もう二度とオマエをあんな目に会わせるわけには行かねェ」









    14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:26:14.06 ID:rASbq8kto


    美琴「は?」



    一方通行「もう二度とあのクローン共の日常を壊すわけには行かねェ」




    15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:28:40.62 ID:rASbq8kto

    美琴「あんた……自分が何を言ってるかわかってんの?あんたは……1万もの妹達<シスターズ>を殺した張本人なのよ?」

    美琴「そのあんたが私を危険な目に合わせたくない?妹達<あのこたち>の日常を壊すわけにはいかない?!馬鹿にすんのもいいかげんにしなさいよ!!」



    一方通行「確かに、俺は一万もの妹達をこの手で殺した本物のクズだ」

    一方通行「だがなァ、そんな理由があった所で、残り1万の妹達が見殺しにされていい理由にもならねェし」

    一方通行「俺が守っちゃいけねェ理由にもならねェだろ」

    一方通行「身勝手だろォと何だろォと、あいつらは俺が守る。その為ならどんなに似合わねェことだってやってやる」

    真っ直ぐで迷いのない瞳。
    彼は自分が過去に引き落とした罪を、誤魔化すことも正当化することもせず正面から受け止めている。
    それであってなお、同じ顔をした1万もの少女たちを守ると言っているのだ。


    16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:30:01.05 ID:rASbq8kto

    美琴「そんなこと、急に言われても……」

    一方通行「それから」

    美琴「?」



    一方通行「悪かったな」

    一方通行「あのガキの受け売りだし、俺が言った所で自分のしたことを棚に上げたふざけた詭弁にしか聞こえねェだろうが、オマエのおかげであのガキやクローン共…いや」



    17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:31:18.84 ID:rASbq8kto






    一方通行「オマエの妹達<いもうとたち>に会うことができた」





    一方通行「もうこれ以上一人だって殺させねェよ」

    一方通行「あいつらの幸せのためにゃ、オマエの幸せも条件になってンだ。愉快に誤解すンじゃねェぞクソガキ」

    一方通行「身勝手で最低な発言だろォよ、一万人も殺しといてンな事言ってンだからな」


    一方通行「だが、まァ……」

    一方通行「今まで手間かけさせたな」


    18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:32:51.56 ID:rASbq8kto

    美琴は、その言葉を遮ることが出来なかった。

    もし彼が本当にあの実験以降、妹達を守るために戦っていたのだとしたら……?
    そういう経緯があるから、あの番外個体という妹達は一方通行と行動を共にしているのかもしれない。
    それに上条から聞いた話では、第三次世界大戦時、美琴と同じような顔ををした今にも消え入りそうなほど衰弱した少女を守るために、精神の均衡が保てなくなるほどの状態になっていたという。
    もしそれが妹達の一人だったら?


    そして自分は今までどの程度あの子たちのために動けていただろうか?

    実際の所、自分を加害者だと呪いつつも、大したことなど出来ていなかった。




    もっとも、彼女は妹達に関する実験が再開されるのを一度防いでおり、中学生の少女一人で出来る範囲を大幅に超えたことなのだが。彼女はそれだけでは気が済まないのだろう。


    それを考えたら、美琴には一方通行を責めることが出来なかった。


    19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:34:00.61 ID:rASbq8kto

    自分が情けない。



    今まで憎み続けていた人間は、自分の罪とこんなにも真剣に正面から向き合い。自分が誇れる選択を掴み取っていた。

    そして、誰かを憎み続けるのはとても苦しいこと。

    それをする必要がなくなったことは、とても嬉しいことだ。


    安堵と、自己嫌悪。

    それらの感情がないまぜになり、今にも溢れそうだ。


    20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:35:41.36 ID:rASbq8kto

    一方通行「どうしたァ?」

    そう声をかけた一方通行の口元とてもいたずらで、いやらしい笑みを浮かべている。

    美琴「なっ、なんでもないわよ!!あんまりにあんたの話が無責任すぎて言葉も出なかっただけよ!聞きたいことはそれだけ?!」

    一方通行「あァ、そうだなァ」

    美琴「じゃあとっとと行きなさいよ!!全くあんたのせいで何も飲む気無くしちゃったわよ!!」

    一方通行「そォかい、そりゃ残念だったなァ」

    一方通行は、二人分の伝票を抜き取り去っていく。
    かつて、同じ顔をしたもっと小さな少女にしたのと同じように。



    美琴「……私も」

    美琴「そろそろ私もあの子達のために、何かしてあげないとね」

    美琴「姉として――.」

    その時美琴が思い浮かべたのは紛れも無い自分の『妹』との思い出


    21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:36:56.18 ID:rASbq8kto

    ――

    御坂妹『確かに、彼女は年齢にそぐわない幼稚な趣味で、ガサツで、短気で、喧嘩っ早くて、そのくせ好きなものも好きと言えない天邪鬼ですが』

    御坂妹『ミサカのために命も捨てようとした困った姉です』




    御坂妹『ミサカにも生きるということの意味を見いだせるよう、これからも一緒に探すのを付き合って下さい、とミサカは精一杯のワガママを言います』

    美琴『うん』

    美琴『よろしく』

    ――

    美琴「あの子たちのためにも、私自身のためにも、あのバカ絶対連れ戻さないとね!」

    美琴「こんな事で罪を償えるとも思ってないけど……」

    美琴「妹だから」

    美琴「あの子たちは私の妹だから――」

    ――


    22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:38:01.82 ID:rASbq8kto

    ――

    一方通行「何やってンだァ、俺は?」

    一方通行「チッ、似合わなすぎだろォ」

    その時一方通行が思い浮かべたのは、『自分』が変わるきっかけになった、とある実験の最後の風景。

    ――

    チカラが争いを生むのなら、戦う気も起きないほどの絶対的な存在になればいい。

    そうすれば。

    誰も傷つけなくていいと――



    モルモット、人形、クローン

    『あれの単価は18万、蛋白質でできた人形だよ』

    『妹達だって精一杯生きてんだろ!!』

    『この子たちは私の、妹だから』



    …ホント…

    何やってンだ、俺……。

    ――


    23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 19:38:47.77 ID:rASbq8kto

    一方通行「……ま、あのクソガキの日常守るためならなンだってしてやろォじゃねェか」

    一方通行「そのために必要なものなら、なンだって取り戻してやる」


    上条当麻の失踪。

    それを巡ってとある少年と少女の物語は、それまで以上に大きな転換期を迎える。


    29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 20:52:00.88 ID:rASbq8kto

    ――夜、と言ってもまだ日付の変わり目にはまだ二時間程あり、観光地としては決して遅くとは言えない時間。



    とあるホテルの一室にとても良く似た顔をした二人の少女がいた。



    御坂美琴と番外個体。




    結局ホテルの部屋割は、一方通行と浜面で一部屋、美琴、番外個体、黒夜で一部屋となった。


    男女別室、という至極一般的な人選にも思えるが、それ以外に黒夜が危険な行動を起こしても発電系の能力者である二人で抑えこむ、という理由も含まれたものだ。




    結果として黒夜が番外個体の着せ替え人形及び可動式フィギュアになるという愉快な悲劇が巻き起こってしまっているが、黒夜自身のメンツのために内容は割愛させて頂く。


    30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 20:53:54.09 ID:rASbq8kto


    美琴「あんたやり過ぎよ……拗ねて寝ちゃったじゃないの」

    番外個体「でもおねーたま<オリジナル>も笑ってたよねー」

    美琴「ぬぅ……」

    番外個体「あの第一位よか随分とイジりやすいねぇ」ケラケラ


    美琴「第一位……か」


    番外個体「何でミサカがあの人と一緒に行動を共にしてんの?とか思ってるのかにゃーん?」

    美琴「そりゃあねぇ、私はあいつが妹達を殺して回るのをこの目で見てるし」

    番外個体「まぁ、ミサカも初めはあの人を殺すためだけに作られ、ミサカネットワークの悪意、特に一方通行に対するものを拾い上げやすいような調整されてたから分からないことはないねぇ」



    美琴「……へ?何それ?」




    番外個体「あー……そっか、そりゃおねーたまはそんな事知らないよね」

    番外個体「よし、お姉さんいっちょ昔話しちゃうよ」

    美琴「……なんであんたが上から目線なのよ?」

    番外個体「だってパッと見どう見てもミサカの方が大人だしー?主に胸的な意味でもー?」

    美琴「またもや言ってはならないことを言やがったな小娘!」

    番外個体(ここでおねーたまに色々話しとけば第一位をイジるいいネタになりそうだし?ぎゃは☆)



    ――


    31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 20:55:35.36 ID:rASbq8kto


    その日聞かされた話は、美琴の一方通行に対するイメージを激しく揺るがせることになった。



    8月31日、前頭葉を損傷してまで打ち止め<ラストオーダー>と呼ばれる特別な妹達を助け出していたこと(話を聞く限り美琴はその妹達に見覚えがあるが、その時点ですでに一方通行は今の道を歩み始めていたのだろう)

    入院中にも関わらず、妹達に関する実験を再開しようとした結標淡希を人知れず撃退していたこと。

    9月30日、上条当麻が自分の『友達』を助けるために奔走していた裏で、彼もまた打ち止めを守るために奔走していたこと。

    学園都市の『暗部』なんて物に利用されながらも、打ち止めや妹達の日常を最優先にしていたこと。

    誰に認められなくても、何を犠牲にしても、たとえその犠牲が自分自身であっても、打ち止めだけは何があっても守りぬくという覚悟があったこと。

    そして10月30日、打ち止めを救うためにロシアまで赴き、彼を殺すためだけに差し向けられた番外個体を、それでも彼女は妹達の一人なのだからと決して攻撃しなかったこと。
    心も体も壊れる寸前の、あるいは既に壊れていたかもしれない状況で、それでもなお妹達を犠牲にすることをよしとせず、最終的には自分を死地に追い込んだ番外個体までもを救ってみせたこと。

    ロシアを駆けずり回り、ボロ雑巾のようになりながらも、打ち止めを救い、今の日常を取り戻したこと。


    32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 20:57:11.06 ID:rASbq8kto

    番外個体「……ま、ミサカが生まれる前の情報に関しては最終信号<ラストオーダー>がミサカネットワークにバックアップした記憶を呼び出しただけだけど」


    美琴「それ……本当なの……?」

    番外個体「信じるかどうかはおねーたまの自由じゃないかな?」

    番外個体「それから最後に一つ」

    美琴「?」



    番外個体「『場違いだろォが何だろォが、そンな事は問題じゃねェ』」

    番外個体「『あァそうだ!!守りてェンだ!失いたくねェんだ!!そンなことを想像したくねェんだ!!あのたった一つの幻想を守りぬくためなら、俺はどンな現実とだって立ち向かってやる!!』」



    番外個体「――以上。ロシアの大地にてミサカ達を守るために立ち上がったもやしっ子のありがたいお言葉」キリッ


    美琴「……っ!!」


    番外個体は言うだけ言った後「あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!ウケる!!バカの真顔チョーウケる!!思い出しただけで泣けてきた!」

    等と、危ないクスリでもやってるんじゃないかというような勢いで笑い転げているが、美琴にはそんな余裕は無かった。



    未だに信じられないが、一方通行という人間は本当に変わったのではないだろうか?

    むしろ、本来の彼という人間はこうだったのではないだろうか?


    彼もまた、『学園都市の闇』に利用された悲しい被害者だったのではないだろうか?





    そんなことを考えても答えが出るわけでもなく、夜は更けていった――


    33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 20:58:30.59 ID:rASbq8kto

    ――翌日、11月11日

    少々予定より遅れてしまい、もうすぐ日は沈もうとしているが、一行は無事に学園都市へ帰ってくることが出来た。
    彼らが学園都市の世界的なイメージを下げた、といった報道をされているはずだが不思議なことに思った程手荒い歓迎を受けるような事はなかった。
    美琴にいたっては、いつも通り常盤台のエースとして同中学の生徒から羨望(一部歪んだ情欲)の眼差しを浴びて少々うんざりしていたくらいである。


    上条当麻には確か同居人の少女がいたはず。自分たちは上条の失踪を彼女に伝えるべきだ、という美琴の提案に浜面が賛同した為、他の面子も(一部は渋々ながらも)とある学生寮の上条の部屋の前まで来ていた。


    34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 20:59:20.98 ID:rASbq8kto

    美琴がインターホンを鳴らすと部屋の中から


    「鍵は開いてるから入ってくると良いんだよー!」

    という快活な少女の声。


    隣人か誰かと勘違いしているのだろうか?いずれにせよ無用心なことだ。

    そう思いながら玄関を開けてみる。



    そこから見えたのは、玄関から伸びた短い廊下、その先の部屋にある炬燵で暖をとりテレビを見るという服装とはあまりにミスマッチな行動をしている銀髪碧眼のシスターさん、インデックスと飼い猫のスフィンクス。



    35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) 2012/02/12(日) 21:00:06.20 ID:rASbq8kto









    そして炬燵の上の蜜柑と悪戦苦闘している元気溌溂系アホ毛幼女、打ち止め<ラストオーダー>と、壁を背もたれにして座り、目を開けながら寝息を立てているほんわか系ピンクジャージ少女、滝壺理后<たきつぼりこう>の姿だった。











    一方浜面「は?」


    41: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 19:49:20.13 ID:1lEZahwCo

    一方通行「おいクソガキオマエ何でこンな所にいやがる?」
    浜面「た、滝壺?!どうしてここに?!」


    二人がニュアンスは違えども、ほぼ同じようなことで口を開いたのが最初。



    打ち止め「あなたが悪いんだよーっ。またもやミサカの知らない所で危ないことをしてー!!ってミサカはミサカは良妻賢母を目指しつつもやっぱり無理で普通に憤慨してみる!」
    滝壺「はまづら?こんなに知らない女の子がいるなんて聞いてないよ?……はまづらが悪の道を進もうとしているのはどうやら本当だったんだね」


    そこから答えになっている様な、なっていない様な言葉が返され――



    美琴「え……っと?何であの娘以外にも知らない子がいるの?……ってあのちっちゃいの妹達よね?……え?え?」

    インデックス「もーっ!!今この家の主は私とスフィンクスなんだよっ?!主を置いてきぼりにして話を進めるのは順序がおかしいかも!そもそも日本人が世界に誇るべき礼儀ってものに欠けるんだよ!!」


    と雪だるま式に混乱は加速。


    もっとも、数分の後にこの混乱は収束した。


    42: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 19:50:52.43 ID:1lEZahwCo









    打ち止めが一方通行に対する演算補助の一切を停止し彼を床に転がし、滝壺が渾身の平手打ちを浜面にかますことによって。








    43: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 19:52:09.29 ID:1lEZahwCo


    一方通行「」ゴローン
    浜面「……」ガクブル


    打ち止め「~♪」ニコニコ
    滝壺「」ゴゴゴゴゴゴゴ



    インデックス「と、とにかくっ、今の状況を皆で整理してみるといいのかも!」

    美琴「そっ、そうね!皆状況が飲み込めなくてこうなったわけだし?」



    インデックス「とりあえず、らすとおーだー?あくせられーたを起こしてあげて?」

    打ち止め「了解なのだ―ってミサカはミサカは家主の要望を最優先!」バチィッ

    一方通行「このクソガキ……。いきなり演算停止かましやがって……」

    美琴(本当にこいつミサカネットワークの補助がないと能力の演算はおろか発語も歩行もできないのね……。いきなりぶっ倒れるからどうしたのかと……。)


    44: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 19:53:27.09 ID:1lEZahwCo

    一方通行「まずクソガキ、オマエ何でこいつの家にいたンだよ?」

    打ち止め「あなたがまたもやミサカを置いてきぼりにして出ていった後、インデックスと話す機会があったんだけど、思いのほか話が合ってしまいましてー!ってミサカはミサカは現状報告してみる!」

    打ち止め「具体的には男の人っていつもいつもミサカ達を置いてきぼりにするよねーって。そしたらお話がヒートアップしてお泊りに発展しちゃいましてー……。ってミサカはミサカは逆上緩和用のにこやかスマイルを~ってやっぱりあなたはそこで拳を握り締めるのねっ?!」


    浜面「……えっと、滝壺は?」

    滝壺「概ねはらすとおーだーと一緒かな。あとはいんでっくすと『相手が隣に知らない女の子を連れていた時の対処』を話してた」

    浜面「大変申し訳ございません」

    滝壺「あとは、この子達だけだと何かと不安だったから。食事とか。なんかほっとけなくて」

    浜面「そっか」

    インデックス「それで他の皆はハワイで一騒動片付けて戻ってきたっていうのは『てれびー』を見てればわかるんだけど……」


    45: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 19:54:22.67 ID:1lEZahwCo





    インデックス「とうまはどこ?」



    46: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 19:55:16.54 ID:1lEZahwCo

    場の空気が一瞬凍る。
    その場の何人かが慎重に話すべき時を見定めていたことを、他でもないインデックス本人から話すことを促されてしまった。


    浜面「あ、えっとそれはな――」
    美琴「ごめん」


    インデックス「?」


    美琴「あいつは戻って来てないわ……」

    美琴(これは私の責任。あの娘に本当のことを伝える義務が私にはある。)

    ――美琴は、今回の騒動で上条が失踪した理由を、少々酷だとは思いながらも、彼の同居人の少女に伝えた。


    47: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 19:56:31.96 ID:1lEZahwCo

    第三次世界大戦や、先のハワイでの騒乱。そのいずれでも、上条が救った物とは別の側面で救われなかった、不幸になった人間がいた。そしてそれが学園都市にまで及んだことに責任を感じ、彼一人でけじめをつけに向かったことを。



    インデックス「……なーんだ」

    インデックス「結局とうまはいつもどおりなんだよ」

    美琴「え?」

    インデックス「とうまはいつも自分が助けたい人のために、たとえ自分一人でも、何の対処法もなくても立ち向かっていく。向こう見ずで命知らずな困った人なんだよ?」

    インデックス「そして、最後にはいつも戻ってきてくれる」

    インデックス「だから、こんなのはいつものことなんだよ」


    彼女の言葉は、上条当麻という人間を信じるが故か、穏やかだった。

    しかし、

    よく聞けばその声は震えていたし、どこか表情も固かった。


    美琴「……」

    その後は上条の話は出てこず、先程までの和やかで騒々しい空気が続いていた。



    その一角で。


    48: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 19:57:46.10 ID:1lEZahwCo


    美琴「ちょっと」

    一方通行「なンだよ?」

    美琴「あんた……あのバカを探しに行くつもりなの?」

    一方通行「……さァ、どうだろうなァ?」

    一方通行「そもそも、オマエはあの無能力者のことばかりが気になってるみてェだが、他にも気にすることがあるはずだと思うがなァ」

    美琴「それって……どういう?」

    一方通行「学園都市の協力機関27機関の離反。つまりは学園都市への敵対。この現状でそれらの機関に在籍している妹達に危険が及ぶことはありえねェ話しじゃねェだろ」

    美琴「……!」

    美琴「それなら!私が行く理由にも十分成り得る」

    一方通行「足手まといだ。例えもし仮に、俺が行くよォなことになっても絶対に来ンじゃねェよ」

    美琴「そんなの……!!」


    その影で番外個体が笑いを堪えながら何かを言いたそうにしているが、一方通行に一睨みされると「へいへーい」と言った感じで渋々ながらその場を離れて行った。


    それからその日は、超能力者の少年と少女が言葉を交わすことはなかった。


    ――


    49: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 20:00:19.20 ID:1lEZahwCo

    浜面「さて、と。そろそろ夜も遅いし滝壺、そろそろ帰ろうぜ?」

    滝壺「うん、それは良いんだけど、はまづら?」

    浜面「ん?」

    滝壺「いんでっくす、どうしよう?この家に一人になっちゃうよ?」

    浜面「あー……。それを考えてなかったなあ。どうっすっかな?」

    美琴「当面は私達の中で、可能な人が交代で面倒みる事にしましょう?今日は私が残るわよ」

    インデックス「なんで短髪が残るのかな?!こう見えても私はとうまがいないこの部屋で一人で暮らしてたこともそれはそれは多くて、隣人からの有り難いお恵みにより飢えて倒れ死ぬこともなかったんだよ!!」

    美琴「(それは自立できてるとは言わないと思うんだけど……)私の中学は教育のレベルが凄く高くてね?もちろん料理の腕もプロ級なんだけど……」

    インデックス「ごはん?!おいしいご飯が食べれるの?!た、短髪!是非残るといいんだよ!!」

    美琴(あいつが話してるのをなんとなく聞いたことはあったけど、本当にこの娘食事に関する執着が半端ないわね……。)

    美琴「……。っていうことだから、この娘のことは心配いらないわよ?」

    浜面「あ、ああ。ありがとう」

    一方通行「オラ、オマエも帰ンだよ」

    打ち止め「え?ミサカも?!やだやだやだーっ!!まだこの家で某テレビ番組みたいに『ガールストーク』をするのーってミサカはミサカは実は長年憧れていたことをカミングアウトしてみる!!」

    一方通行「うるせェ!良ィからとっとと黄泉川ンとこ帰ンぞ!!」

    打ち止め「離してー!」

    番外個体「あひゃひゃひゃひゃ!!完全に親御さんだねあの人」


    美琴(気を遣って、くれたのかな?)

    美琴(とにかく、この娘には、謝らなくちゃいけないことがたくさんある。)



    ――


    50: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 20:01:58.01 ID:1lEZahwCo




    最終的にに部屋の残ったのは二人(と一匹)





    美琴「……」

    インデックス「……」


    みこイン(……気まずい……。)




    インデックス「ねぇ、短髪」

    美琴「何よ?」

    美琴「っていつも思うけどその呼び方なんなのよ?私には御坂美琴ってちゃんとした名前があんのよ!」

    インデックス「知ってるんだよ!完全記憶能力を舐めないで欲しいかも!」

    美琴「なおのこと性質が悪いわよ?!」

    美琴「っていうか私あんたの名前知らないんだけど?」

    インデックス「私?私の名前はインデックスっていうんだよ?」



    美琴(……目次ちゃん?)



    インデックス「何かなその目は?『それ偽名か何かかよー』ってそこはかとなく馬鹿にしてるのかな?そうなのかな?そうなんだねっ?!」

    美琴「そ、そんなことないわよ?す、素敵な名前じゃない」プークスクス

    インデックス「その堪え切れない笑いはどういった意味合いなのかな?!短髪は私と最初にあった時のとうまと同じくらい失礼なんだよ!!」

    インデックス「とうまと……」

    美琴「ぁ……」




    美琴「あ、あのさ、前にあんたとちょろっとあった時、あんたもあの馬鹿に命を救われたりしたみたいな話をしてたじゃない?」

    美琴「良かったら聞かせてくれない?もちろん私の時のことも話すわよ?」



    ――


    51: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 20:03:06.62 ID:1lEZahwCo

    二人の少女は、かつて自分のしがらみも何もかもを断ち切って上条当麻という少年に命を救われている。


    インデックスは、その立場の特殊さ故から、一年に一度の周期で記憶を消去しないといけないような『首輪』を架せられていた。

    御坂美琴は、2万体もの自分のクローン体が作られ、それを一人残らず殺し尽くすという非人道的極まりない実験を止めるすべもなく絶望し、自分の命と引き替えにしてでもそれを止めようとしていた。



    『魔術』と『科学』



    それぞれの地獄の底から、彼女たちは引きずり上げられていた。



    ――


    52: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 20:04:52.07 ID:1lEZahwCo

    美琴「それ以来あんたはここで暮らしてるのね?」

    インデックス「そうなんだよ!」

    美琴「そんなことがあったら、あんたが特別にもなるわよね……」

    インデックス「それを言ったら短髪の方も相当かも」





    美琴「……ごめん」


    インデックス「え?」



    美琴「ほんとに……ごめんね……っ!!」

    美琴「今度はきっと私があいつを助ける番だった!一番近くにいた!なのに何も出来なかった!」

    インデックス「と、とうまの頑固はいつもの事なんだよ?そんなに自分を責めないで?」

    美琴「でも……!でもあんたは今にも泣きそうじゃない……!」

    インデックス「……!」


    美琴「あんたには幾ら謝っても足りないわ」

    インデックス「短髪…」

    美琴「これ以上あんたに辛い思いはさせられない。そして危険なこともさせられない。あんたにもしものことがあったら、あいつが悲しむ…」



    美琴「必ずあいつを連れて帰ってくる。だから待ってて欲しいの」


    53: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 20:06:47.56 ID:1lEZahwCo

    インデックス「……」


    美琴「身勝手なのも、あんたが納得できないのもよくわかる。だけど……だけどこんな状況で、更にあんたに万一のことがあったら……あいつはもう本当に、『いつもの日常』に帰ってこれなくなっちゃう!!」

    美琴「だから、私が」




    美琴「私があいつを、地獄の底から引きずり出してやらなきゃいけないの!!」

    インデックス「……!!」




    美琴「だからあんたにはここで待ってて欲しい」

    美琴「笑っちゃうわよね、超能力者だ第三位だ言っても、助けをを求めてる女の子一人守りきれる自身がない。最高の選択じゃない、妥協案しか提案できない」


    インデックス「そんなこと……」

    インデックス「そんなこと無いんだよ?短髪…ううん。みことはとうまのことを本当に大切に思ってくれている。それだけじゃなくて私のことまでちゃんと考えてくれている」

    インデックス「そんなみことなら安心かも」

    インデックス「それに、今のみこと……」

    美琴「?」





    54: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 20:08:05.13 ID:1lEZahwCo

    インデックス「とうまにそっくり」

    美琴「うぇっ!!??」

    インデックス「きっとみことは、間違ってるとか正しいとか、そんな面倒なことじゃなく、自分がしたいことを自分に正直にしてるんだよね?」

    インデックス「それが結果として周りから評価されることにつながっているけど、本人はそんなの気にもとめない。とうまといっしょだよ」




    インデックス「きっと今のとうまは昔の私と同じ、なにもかも自分で抱え過ぎてるんだよ」

    インデックス「だから、私からも」

    インデックス「私からも、あの時のとうまの役目を…美琴にお願いしたいな」

    美琴「インデックス……」




    インデックス「でも、とうまみたいに色んな男の人を取っ替え引っ替え隣に侍らせたりしないでね?」

    美琴「そ、そんなわけあるかぁぁぁっ?!」




    御坂美琴とインデックス。



    二人はその後も、一人の少年の話をし続け、宵をを過ごしていた。


    60: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 21:41:32.26 ID:1lEZahwCo

    一方通行と打ち止めはあの後、同居人である黄泉川愛穂のマンションへ向かっていた。


    番外個体はというと、あのカエルによく似た顔をした医者の所だ。骨折していた腕の経過を見てもらうそうで、状態が良ければ数日中にもギプスが取れるそうだ。



    打ち止め「それでねー。その時インデックスが……」

    打ち止め「ねぇねぇ聞いてるの?ってミサカはミサカは可愛らしくプリプリ怒ってみる!」

    一方通行「自分で自分のこと可愛ィとか言ってんじゃねェよマセガキ」



    打ち止め「あのヒーローさんの事を考えてたの?ってミサカはミサカは質問してみる」

    一方通行「……」



    一方通行「あいつはオマエ達妹達に、俺から殺される以外の『生きる意味』ってやつを教えた人間であり、オマエたちの生きる指針だ」

    一方通行「そんな奴が自分勝手に姿くらまして、あろォことか自分を犠牲にするなんつゥ笑えねェ冗談かますなンざ許せねェな」

    一方通行「直接文句言ってやンねェと俺の気が済まねェよ」



    61: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 21:43:50.48 ID:1lEZahwCo


    打ち止め「また……どこかに言っちゃうんだね」

    一方通行「悪ィがそォいうこった」



    打ち止め「行ってらっしゃい。ってミサカはミサカは素直に元気に送り出してあげたり!」

    一方通行「……やかましく騒いで納得なンざしねぇと思ったんだがなァ……正直拍子抜けだ」





    打ち止め「あなたはミサカとミサカの妹達のためにいつだって戦ってくれた」

    打ち止め「そしていつもミサカの所に戻ってきてくれた」



    一方通行「……」

    打ち止め「もう逢えないのかな?そう思った時でもあなたは世界の全てからミサカを守って、他のミサカも一人残らず守って、そして帰ってきてくれた。ってミサカはミサカは過去を振り返ってみる」



    62: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 21:45:55.12 ID:1lEZahwCo


    打ち止め「『俺も……ずっと一緒に居たかった……』」

    一方通行「なン……っ!?」

    打ち止め「『守りてェンだ!!失いたくねェもがもがもがっ?!」

    打ち止めが誰かさんのモノマネをするのを、一方通行は必死に止めにかかる。



    一方通行「クソガキオマエいい加減ミサカネットワークに記憶のバックアップ取るのやめやがれ!!大体そんなくだンねェことばっかバックアップ取ってて容量圧迫しねェのかよ?!」

    打ち止め「規格外のあなたの頭脳もまかなってるけど10000人で精一杯なのはあくまで余剰領域だからね?記憶とは別。人一人の頭の中身全部をバックアップしていつでも好きな時に呼び出せる程度は造作も無いんだよ?ってミサカはミサカは予想以上のスペックを誇るミサカ達の頭脳に胸を張ってみる!!」

    一方通行「ンなもンが番外個体の野郎も自由に見れンのかよ……」



    事実もう見られているわけだが。





    63: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/13(月) 21:47:23.72 ID:1lEZahwCo


    打ち止め「それに…くだらなくなんか無い。ってミサカはミサカは大切な思い出を正当に評価してみる」

    一方通行「……そォかよ」



    気づけばもうマンションの扉は目の前だ。

    日常への出入り口。


    二人一緒に日常の扉を開けたことは決して多くはなかった。

    それ故またしばらくこの感覚を味わうことは無いのかもしれない。



    しかし不思議と不安は無い。



    きっと彼は戻ってきてくれる。

    きっと自分はこの少女のもとに帰ってくる。





    たとえこれがただの思い込みだとしても、彼らの中では紛れも無い真実だ。


    そう思いながら、二人で日常への扉を開ける――


    66: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:23:14.99 ID:CQLnItNEo

    11月12日



    上条の部屋には昨夜から変わらず美琴とインデックスが居た。


    インデックス「みこと、がっこうは行かなくていいの?」

    美琴「今は大体の学校は一端覧祭の準備期間で授業のない時間帯もあるからね。黒子…後輩に任せてきちゃった」

    インデックス「いちはならんさい??」

    美琴「要は都市全体での巨大な文化祭ねー。いろんな学校があるから発表の内容もすごいたくさんある――」

    インデックス「お、美味しい食べ物はあるのかな?!」

    美琴「おい」



    ピンポーン




    インデックス「?……誰だろ?見てくるね!」


    67: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:24:08.90 ID:CQLnItNEo

    打ち止め「おっじゃまっしまーす!ってミサカはミサカは元気に挨拶してみる!」


    インデックス「らすとおーだー!それにあくせられーたも!いらっしゃいなんだよ!」

    打ち止め「あ、お姉さまも居る―!ってミサカはミサカは大発見」

    美琴「打ち止め!いらっしゃい。どうしたの?凄く楽しそうじゃない?」

    打ち止め「一方通行と久しぶりのお出かけなのでーってミサカはミサカは溢れ出る嬉しさを隠そうともせず大発表!」


    美琴「あー。そっか……」

    一方通行「……」


    禁書止め「?」


    68: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:25:24.59 ID:CQLnItNEo

    美琴「あ!私そろそろ学校に戻らないと!」

    自分でもわざとらし過ぎると思うが、出来ればあの少年とは顔を合わせたくない。



    が。



    打ち止め「えー!!せっかく一緒にいるんだしもっとお姉さまともお話ししたいよー!ってミサカはミサカは可愛い妹としておねだりしてみる!」

    美琴「可愛いって自分で言う厚かましさはどうかと思うけど……」

    打ち止め「お姉さまの妹ですのでー!」

    美琴「それどういう意味よ?!っていうかいつもの口癖は?!色々意味深なんだけど?!」

    打ち止め「細かいことは良いんだよ!ってミサカはミサカはさり気にお姉さまの退路を塞いでみる!」

    美琴「ちょっ……!」


    そんな姉妹のやり取りを尻目に、一方通行は打ち止めが部屋に着くなり放り投げた買い物袋から缶コーヒーを抜き取り、ベランダへ一人向かっていった。

    美琴「……」


    69: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:26:56.18 ID:CQLnItNEo


    ――



    昼前の澄み渡る青空。

    時期的に少々冷たくなってきたが綺麗な空気。

    遮蔽物もなく射しこむ陽射し。


    平穏で変化のない『日常』


    ほんの半月ほど前までは彼から一番遠くにあった物。

    つい最近彼が取り戻した物。




    一方通行「……。似合わねェったらありゃしねェな」


    そんな彼の後ろから、少女の声


    インデックス「あくせられーたは一緒に遊ばないの?」

    一方通行「あンな騒々しい中に入る気はねェなァ」

    インデックス「楽しいと思うんだよ?」




    インデックス「あなた……とうまと知り合いだったんだね」

    一方通行「二回ばかり殺し合いをしたのを知り合いって呼ぶンならそうだろうなァ」

    インデックス「そうなんだ」

    一方通行「へェ、驚かねェのか?」

    インデックス「ちょっと前まで命をかけて戦ってたと思ったら背中を預けあって戦うなんてのは、とうまにとって珍しいことではないかも」

    一方通行「どォいう交友関係の広げ方をしてンだよあいつは……」


    70: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:28:58.81 ID:CQLnItNEo

    インデックス「とうまを探しに行くの?」

    一方通行「あン?だったらなンだよ?」

    インデックス「美琴も行きたいって言ってた」

    一方通行「ついてこられても足手まといなンだがなァ。つゥか邪魔だ。大人しくすっこンでて欲しいもンだ」




    インデックス「優しいんだね」

    一方通行「あ?」

    インデックス「少しでも周りの人間に振りかかるリスクを減らそうとしてる。それはみこと自身のことでもあるし、とうまのことだって考えてくれてのことだよね?」

    一方通行「……」

    一方通行「チッ。……あのガキがうるせェからな」

    インデックス「らすとおーだー、元気になってよかったんだよ」

    一方通行「あ?元気に、だ?……オマエあのガキの何知ってやがンだ?」

    インデックス「……?あの子に『ういるす?』が埋め込まれて、あなたが白衣の怖い人にボコボコにされてる時、その後ろで私が『歌』であの子を助けたんだよ?覚えてないの?」

    一方通行「(こっちは電極のバッテリーも切れて脳みそフルーリー状態で戦ってたンだよ……)あン時の俺は木原をどォにかすることしか考えられてなかったからなァ。つーかボコボコってどォいうことだコラ」

    インデックス「ふっふーん。見たままを述べたんだよ!それからちゃんとあの最新鋭日用品のお礼はしたんだよ!偉いでしょ?」

    一方通行「生意気なこと言いやがってポケットティッシュのどこが最新鋭だよ……」



    71: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:31:16.85 ID:CQLnItNEo

    一方通行(……待て。こいつ『歌』であのガキを救っただと?)


    一方通行「オマエ、確かインデックスっつったな?フルネームは?」

    インデックス「うん!インデックスだよ!Index=Librorum=Prohibitorumなんだよ!」

    一方通行「Indexは 『目録』、Librorumは『書籍の』、Prohibitorumは『禁じられたる』、……禁書目録、ねェ」

    インデックス「いかにもなんだよ! というか魔術サイドの知識の一切が無い人の口からその名が出てくるなんて素直に感心するかも!」

    一方通行(あの無能力者やエイワスの野郎が、ガキを助けるための情報として示した『禁書目録』……たしかにこいつは一度あのガキを救ってやがるな……)

    一方通行「おまえ、確か魔術に詳しかったんだよなァ?」

    インデックス「詳しいなんてもんじゃないんだよ?私の頭の中には世界に散らばる10万3000冊の魔道書の原典があって、その知識をいつだって呼び出せるんだから!」フフン

    一方通行「俺はそれを見ることはできねェのか?」

    インデックス「うーん。残念ながら難しいんだよ……。原典っていうのはいわば異世界の法則が書かれているものなんだよ。それを一般人、それも能力者なんかが目を通しちゃったらもうそれだけで廃人確定なんだよ?」

    一方通行「……オマエの完全記憶能力は魔術じゃねェンだな?」

    インデックス「むぅぅー。さっきから質問が多いかも……」

    インデックス「私の完全記憶能力自体は魔術じゃない、生まれ持っての体質なんだよ。それがどうかしたのかな?」

    一方通行「……」


    一方通行は問いかけるインデックスの言葉には耳を貸さず、何事か考え込んでいるようだった。



    72: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:32:01.77 ID:CQLnItNEo

    ――


    美琴「何だかすごい話し込んでるわね……っていうかあの二人全体的に白すぎて眩しっ」

    打ち止め「むーっ!あの人はミサカ以外と一緒にいるなんてー!ってミサカはミサカは嫉妬の炎をメラメラ燃やしてみる!!」

    美琴「ふふっ。あんた本当にあいつのこと好きなのねー」

    打ち止め「そりゃあもちろん!あの人はミサカの恩人ですから!ってミサカはミサカは情に厚い人間を演出!」

    美琴「恩人……か」

    打ち止め「『例え俺たちがどれほどのクズでも、どんな理由を並べても、それでこのガキが殺されて良ィ理由には、ならねェだろうが!!』って言ってくれたのー!」

    美琴「っ?!あいつそんなこと言ったの?!……番外個体からも似たようなこと聞いたけど、全っ然想像できない……」

    美琴(むしろ似合わなすぎて少し笑えてくる……って言うのは言わないほうが良いわよね……って私番外個体みたい……あ、あの娘も私の『妹』か……はぁ)


    73: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:33:04.93 ID:CQLnItNEo

    打ち止め「ところでお姉さま?」

    美琴「ん?」

    打ち止め「お姉さまは、あのヒーローさんを探しに行くの?ってミサカはミサカは半ば答えが決まったような質問をしてみる」

    美琴「もちろん行くつもりよ!あのバカには言いたいことが山ほどあるんだから!」

    美琴はそこで一旦言葉を区切ると、ベランダに居る白い少女に目線を向ける。

    美琴「それに……あの娘とも約束したしね」



    打ち止め「あのねお姉さま。そのことでミサカからお願いがあるの。ってミサカはミサカは上目遣い」

    美琴「時々入ってくるその妙なあざとさはなんなのよもう……。で?どうしたの?」




    打ち止め「あの人についていってあげて欲しい。」


    美琴「……っ!」




    74: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:34:19.27 ID:CQLnItNEo

    打ち止め「あの人はね、いろんなことを乗り越えてきたけど、弱いんだよ」



    打ち止め「大切な物を守ろうとして、失敗し続けて、ようやく誰かの守り方っていうものをわかりかけてきて……」

    打ち止め「あんなだけど、あの人はあんなだけど凄く弱いの。だから、誰かついていてあげなくちゃいけない」

    打ち止め「でもミサカはその役目を全うすることができない。きっとあの人を心配させちゃう」

    打ち止め「お姉さまならそんなことはないと思うの。ってミサカはミサカは心中を吐露してみる」




    美琴「……そんなの」

    美琴「そんなの、無理よ……。私は、あいつのしたことを知った上でそんなことできない」

    打ち止め「え……ってミサカはミ――」






    75: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:35:15.80 ID:CQLnItNEo

    美琴「って言いたい所だけど」


    美琴「他でもない妹の頼みだし?」

    美琴「それにあいつだって必死に変わろうとしてる。あんたや番外個体から聞いた話でそれは凄くよくわかる」

    美琴「……そ、それにあいつ自身私に気を遣ってるのかなー、なんて思うところもあったし?」



    美琴「私も……過去を引きずり過ぎるのは良くないのかもね」

    美琴「『可愛い』妹の頼み、聞いてあげるわよ?」


    打ち止め「お姉さま!!ってミサカはミサカは曇りかけた顔を一瞬で光り輝かせてみる!!」


    美琴「ふふっ。『お姉さま』に任せなさい!」



    と、そこまで話がまとまった所で、真っ白な二人も会話が終わったようでベランダから戻ってきた。




    76: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:35:59.41 ID:CQLnItNEo

    インデックス「だから!私はそんなに食べ物のことばかり考えて日々を過ごしているわけではないのであって、『暴食シスター』なんていう呼び方は極めて失礼かも!!」

    一方通行「あーあーうるせェうるせェ。人に死ぬほどハンバーガー奢ってもらっといてそのセリフはおかしいだろォがこの対食物用人間掃除機」

    インデックス「むきーっ!!」



    訂正。一方通行が一方的に会話を終わらせようとしていたようだ。


    77: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:36:50.24 ID:CQLnItNEo

    美琴(ほんと……変わったわよね、こいつ)




    美琴「って今何時?!」

    美琴「もうお昼じゃない!昼食までには寮に戻らないと……!!」

    美琴「ごめん!ほんとに帰るわね!」


    慌ただしく帰り支度を整えて玄関へ向かう美琴。



    美琴「あ、そうそう。インデックス?」

    インデックス「どうしたの?美琴?」


    美琴「明日も来て良いかしら?」

    インデックス「もちろんなんだよ!!」


    美琴「うん。ありがと」




    美琴はインデックスに微笑みかけると、お嬢様校の在校生にあるまじき速度で走り去っていった。


    78: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:38:24.04 ID:CQLnItNEo

    その後、上条の部屋では一方通行と打ち止めが残りインデックスと共に過ごしていた。

    その翌日。


    御坂美琴は、再び上条の部屋を訪ねていた。


    昨日とはまた違った『確かな目的』を持って


    79: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:39:05.84 ID:CQLnItNEo


    美琴「あんた、あのバカを…上条当麻を探しに行くの?妹達を助けるために行動を起こすの?」


    一方通行「何度も何度もしつけェ野郎だな。仮にそうだったらどうすンだァ?俺みてェなやつにゃ任せれねェってか?」

    自嘲するような笑みを浮かべながら一方通行は答える。

    美琴「そうじゃない」

    一方通行「あン?」


    80: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:39:33.68 ID:CQLnItNEo





    美琴「私も一緒に行く」

    一方通行「はァ?」


    81: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:40:09.90 ID:CQLnItNEo

    間の抜けたような声をあげてしまう。
    一方通行自身、文句を言われる筋合いこそあれ、美琴の口からそんな言葉が出るとは思ってもいなかったのだろう。


    美琴「あいつには助けられっぱなしなの、いつもいつも余計なことまで自分で背負い込んでばかりのバカに、文句の一つでも直接言わなきゃ気が済まないわよ」


    美琴「それに、この娘達とも約束したの」


    インデックスと打ち止め。


    二人の少女の願いを、大切な人間への想いを、御坂美琴は背負っている。

    そんな彼女は、ここで自分を曲げるわけにはいかない。



    この少女たちのため、自分のため。





    そしてとある少年のためにも。



    そんな美琴に対して



    一方通行「……。良いか?」



    一方通行が口を開く。


    82: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:40:51.51 ID:CQLnItNEo

    一方通行「学園都市のクソッタレな暗部を大して知らねェことと、超能力者<レベル5>っつゥことを学園都市側に体よく利用されて、客寄せパンダよろしく学園都市の広告塔として利用されてきただけのやつが言ったところでなァ、これから関わってくるのはのは世界の闇だ」

    一方通行「俺自身、闇だ光だ善だ悪だなんてクソ下らねェものに拘るのなンざもうごめンだ、だがなァ、闇をどうにかするのは闇を経験した人間だけで十分なはずだ」



    一方通行「オマエの出る幕じゃねェンだよ」

    美琴「なっ…!?」



    明確な拒絶の言葉。そして今までの自分の在り方を否定されるかのような言葉。



    83: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:42:07.66 ID:CQLnItNEo

    美琴「それでも……」


    美琴「それでも、私はあいつを助けたいの!力になりたいの!!今度こそあいつの夢を守ってあげなきゃやいけないの!!」

    美琴「誰も傷つかないハッピーエンドって物を、今のあいつは自分から遠ざけちゃってる!!インデックスのためにも、あいつ自身のためにも私はいかなくちゃならないの!!」



    学園都市に戻ってきてからここまで、押し殺していた不安が一斉に顕わになる。

    必死に抑えつけてはいたが、彼女自身不安と責任感に押しつぶされる寸前だった。そこへ先のような明確な拒絶。自分の進路の断絶。

    もう彼女の精神は限界だろう。



    そこへ射しこむ一筋の希望。



    それは彼女の『妹』だ。


    84: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:43:46.36 ID:CQLnItNEo

    打ち止め「守りたい、失いたくない。そういう気持はあなたは痛い程解るはずだよね」

    打ち止め「そして、そういう人間の気持ちを無理に考え直させるのは、あなた自身も相当に辛いよね。ってミサカはミサカはあなたの心中を察してみる」


    美琴「え……?それ……」


    少女は、一方通行という少年をきっと誰よりも理解していた。

    だからこそ彼の中に流れる温かいものを見逃すことはなく、拒絶の裏にある他人への想いを知ることが出来る。

    昔から彼の『拒絶』や『孤立』は周囲を思うが故のものだった。


    打ち止め「きっとあなたは、お姉さまにもしものことがあったらミサカ達に合わせる顔がない。そんなふうに思ってるんじゃないかな?」

    打ち止め「だから、勝手にあなた一人で出発するようなことをせず、わざわざこんな口論になってまで、お姉さまを納得させようとしてる。ってミサカはミサカは推測してみる」

    打ち止め「あなたは変わらないね。やっぱり優しい。取り返しの付かない大変な所に足を踏み入れる前に、お姉さまを止めようとしている」





    打ち止め「あなたはもう二度と、自分が原因でお姉さまを悲しませたくないんじゃないのかな?って、ミサカはミサカはずばり指摘」


    85: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:45:05.73 ID:CQLnItNEo


    一方通行「いつも思うが俺の言葉を好意的に解釈しすぎなンだよオマエは」

    打ち止め「でも、あなたは同時にお姉さまの気持ちをないがしろにしていいものか悩んでいる。ってミサカはミサカは論じてみる」



    美琴「あんたの……」

    美琴「あんたの気持ちは……その、凄くありがたいわよ」

    美琴「でもね」


    美琴「あいつに助けられっぱなしで、肝心な時に持てる力を使わずに指を加えているなんて、学園都市第三位、常盤台の超電磁砲の名前が泣いちゃうわよ」

    美琴「ううん」


    美琴「学園都市第三位の名前なんてもんは勝手に泣かせときゃいいのよ」


    一方通行「……」

    美琴「御坂美琴という一人の人間として、一生後悔することになる」


    何事にも屈しない意思のこもった瞳。



    つい先程までの今にも崩壊しそうな心境は、もう欠片も伺えない。




    美琴「お願い。私もあんたと一緒に、あいつを助けに行きたい」


    86: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:46:06.82 ID:CQLnItNEo

    一方通行「……ふン。言うじゃねェか。ちったァマシなガキみてェだなァ?」

    美琴「ちょっ……ガキって?!私は真面目な話を……」


    一方通行「俺みてェなバケモン地味た野郎にここまで言われても、確固たる『自分』ってのが揺るがねェ……。はン、腐っても超能力者<レベル5>、自分だけの現実<パーソナルリアリティ>はしっかりしてるみてェじゃねェか」

    美琴「……は?何……」


    一方通行「……まァ、そンだけの能力<チカラ>があれば足手まといにはならねェンじゃねェの?」


    みこイン止め「それじゃあ……?!」


    一方通行「チッ。勝手にしやがれ。クソやかましいガキ共が」



    一方通行「それから」




    一方通行は――おそらく初めて――美琴の方をまっすぐと見据え口を開く



    美琴「?」


    87: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/15(水) 19:48:17.50 ID:CQLnItNEo

    一方通行「今学園都市にゃ第二位が空位だ、お前は現時点で実質学園都市第二位なンだよ、俺の次点の人間としてみっともねェことしやがったら叩き潰す」


    その言葉は少なくとも、多少は美琴を認めたという意味合いの言葉にならないだろうか?


    美琴「……!」

    美琴「当たり前じゃない!むしろあんたをぶちのめして第一位の名前持ってくわよこの口リコンもやしめ!」


    一方通行「あァ!? つゥか序列は戦闘の強弱じゃなくて研究の価値なンですがそこンとこきちんと理解してんのかァ?恋愛脳(笑)のメスガキ?男追いかけるのに夢中で脳みそ溶けたンじゃねェの?」



    美琴「ふ、ふん。なんとでもいいなさいよ?心の広い美琴センセーは性格破綻者の性犯罪者予備軍に言われたことなんて気にも止めないで温かい目で見守りスルーしてあげるの」フフン


    一方通行「アバズレ短パン」


    美琴「今なんつったクソもやし!!!!」





    ――




    上条当麻を助け出すための『想い』は、着実に積み上げられていた――


    92: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:09:07.62 ID:/e/iPmXUo

    結局、一方通行と美琴は上条を探しに行くことになったわけだが、いくら何でもインデックスや打ち止めを連れて行く訳にはいかないだろう。という結論に至り、今回の経緯の説明も兼ねて浜面と滝壺、ついでに黒夜と、そのストッパーとして番外個体を呼び入れた。


    その際滝壺から聞いた話なのだが、一方通行らがハワイからの帰りの飛行機に乗っている間に、先の騒乱についてアメリカ大統領から学園都市に向けて、今回の件について公式発表があったらしい。

    学園都市の能力者達は偶然居合わせただけであり、にも関わらずアメリカ全土のために尽力してくれた素晴らしい少年少女たちだ。といった内容のもので、学園都市に向けての発表があった後は、日本全土にも同様の報道がされ謂れの無い誤解はある程度解けていたらしい。


    しかしながら、学園都市に無断で外出したことと外で能力を行使したことによるペナルティで、浜面以外の高位能力者たちは暫くの間学園都市外への外出が禁止になりはしたのだが。


    93: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:10:07.07 ID:/e/iPmXUo

    一方通行「どォりで帰ってきてからこっち何の騒動もなかったわけだ」

    美琴「それは良いけど、学園都市出られないとかどうすんのよ……?」



    美琴「……あ!それよりもさっきの話だけど、私達がいない間この娘たちの面倒……主にインデックスだけど、見てもらえるかしら……?」

    美琴「あんた達には直接の関係はないってことも、危険が付きまとうだってこともわかってるつもり。でも、他に頼める人間もいないのよ」


    全くもって身勝手な話だ、こんなこと突然頼まれても快く引き受ける人間が居る筈が……



    浜面「ああ、構わないさ」



    あった。それも即答。


    94: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:11:32.65 ID:/e/iPmXUo

    浜面「自分の大切なやつを守りたいって気持ちは痛いほどわかるしな!」

    番外個体「うひゃひゃ、お熱いことで。こんな所で惚気ちゃってー」

    滝壺「いやぁ……」テレッ


    番外個体「うわこいつ本気で照れやがった」



    一方通行「つゥかオマエも来ンだよ」

    番外個体「……は?」

    美琴「妹達に関わる問題も出てくるだろうし、何かあった時にネットワークを通じて全ての妹達に情報を飛ばせる方がいいでしょ?一方通行の独断で決まるのはどうかと思ったんだけどねー……あはは」

    一方通行「拒否権はねェぞ」

    番外個体「またまたー。そんな事言いつつミサカが居たほうがあなたみたいな人間と二人きりよりおねーたまも気が楽だろうとか思ぐぎゃっ?!」

    ゴスッと鈍い音を立てて一方通行のチョップが番外個体の額に突き刺さる。

    番外個体「~~っ!」


    95: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:14:34.01 ID:/e/iPmXUo

    浜面「でもさ一方通行、それに……えっと、御坂?」

    一方通行「あン?」

    美琴「あ、そういえば自己紹介してなかったわよね?何かもうするまでもない感じになっちゃったけど……」


    浜面「俺みたいな奴に、その、任せちまっていいのか?」

    浜面「俺や滝壺は、過去に学園都市の暗部で使い潰されてたような人間だ」

    浜面「一方通行には、俺の個人的な怨みや勘違いで随分迷惑かけちまったこともあったよな……」

    浜面「確かに、俺らのリーダーだったやつを殺したのはお前だ。それは許せはしないさ。でもお前には世話になったことだってあった。一度は滝壺を助けてもらったこともあった。ロシアではお前が居なかったら今頃どうなってたか分からねぇ」

    浜面「それなのに俺の勝手な勘違いでお前に銃を向けたりなんかして色々俺も悪かった」

    浜面「それから……ありがとな?」


    一方通行「はっ。めでてェ野郎だ。場合によっちゃァお前もそこの女もブチ殺してたンだがなァ?」

    浜面「お前はそんな事しないさ、そうだったら今頃、お前の周りに人間はいないはずだろ?」

    一方通行「……馬鹿は死ぬまで治らねェみてェだなァ」


    96: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:15:42.95 ID:/e/iPmXUo

    浜面「それから、御坂」

    美琴「?」

    浜面「俺は昔、暗部に堕ちるよりも前、武装無能力集団<スキルアウト>だった」

    浜面「その頃、俺達はお前の母親を殺そうとした」

    美琴「」

    一方通行(あン時か?)






    美琴「はぁぁっ?!」



    浜面「学園都市の上層部からの命令だったんだが……まぁその、馬鹿なことやろうとしてんのを、大将に目ぇ、覚まさせられたよ」

    浜面「お前のことは何も知らないし、お前も今までこのことを知らなかった。でもだからって責任を軽んじてもいい理由にはならない。悪かった」




    97: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:16:56.29 ID:/e/iPmXUo

    美琴「……」



    美琴「正直いきなりの告白すぎて驚いてるわよ」

    美琴「……ただ、あんたはその事情を話さないでおくこともできたはず。誰もそのことを知らないしね」

    美琴「確かにそんな話し聞かされてはいそうですかって流すこともできないわよ?」

    美琴「でも同時に、私みたいに自分の納得の出来無いものは突っぱねて、目の前の壁は全部越えなきゃ気が済まない。なんて人間ばかりじゃない。そうしたくてもその術を持たない人間も居るっていうのもよく分かるのよ」

    浜面「……!」




    無能力者の浜面には、嫌というほど身に覚えのある言葉。

    超能力者の美琴には、軽んじていた事を本当に後悔した言葉。


    98: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:20:00.35 ID:/e/iPmXUo

    美琴「どうしようもない理由があったのよね。そんな人間が居るのは、あの白いの見てたらわかるわよ」

    美琴(……私だって、あのバカに助けられていなかったら、今頃はどうなってたか分からないし)

    美琴「それに、あのバカがいなくなった時、あんたが諭してくれなかったら私は一人でいってたと思う。今だから解るわ、あのまま言ってたら間違いなく失敗してた。寧ろ私が礼を言いたいくらいよ?」

    美琴「そんなわけだから、私はこの子たちのことを、あんたに任せたい」

    浜面「……ありがとう」



    過去の自分というものをずっと後悔した、能力<チカラ>がない事を言い訳に碌でも無いことをし続けた、挙句暗部なんて最低な場所で「仕事」をした。


    今からでも、手段のあるなしになんて関わらず、守りたいものの為に生きたとしても遅くはないはずだ。


    99: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:20:43.37 ID:/e/iPmXUo

    浜面「一方通行は、構わないのか?その小さい子、大切な人なんだろ?」

    一方通行「構やしねェよ。使えそうな奴は使うだけだ」

    浜面「……!おう!お前らの役にここら辺でたっておかないとな?ほんとにお荷物だって笑われちまう」

    浜面「大将が戻るまでの間、必ず守りきるよ」

    滝壺「がんばろうねはまづら。私もいるよ」

    浜面「滝壺……!」


    100: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:22:43.87 ID:/e/iPmXUo

    滝壺「二児の子持ちみたい……」ニヘラ

    浜面「ぶふぉあっ?!」ハナヂー

    美琴「い、いい一体何考えてんだか……最低ね」

    一方通行「本当にこのガキ共預けても大丈夫なもンかなァ…?」

    浜面「俺はどこにいってもこんななのか?!俺が主導権を握れるコミュニティはないのか?!ちくしょう…!」

    滝壺「だいじょうぶ、私はそんないつになっても罵られ続ける三下基質なはまづらを応援してる」

    浜面「滝壺さんちょっと心が痛いです」

    黒夜「つうか何で私までよばれなきゃいけないんだよ。関係ぇねぇだろ」

    番外個体「だって放っとくと何するかわかんないし?今度はどんなポーズを取りたいのかなクロにゃーん??」

    黒夜「ひぃぃっ?!」

    浜面「調教済み……」

    美琴「うわぁ……」ヒキッ

    滝壺「応援……してる……?」

    黒夜「……!! ってかてめぇも第三位もこの街出るんだろう?私はこの家にいてやるよ!そんで心行くまで浜ちゃんをいじふぎゃぎゃぎゃ?!」

    一瞬元気を取り戻す黒夜だったが、すかさず体の自由を奪われる。あわれなり。

    打ち止め「電撃使いはお姉さまや番外個体だけじゃないんだよ!ってミサカはミサカは自分の存在も誇示してみる」

    浜面「幼女にいいように操られる幼女……」ゴクリ

    一方通行「オマエマジでいい加減にしろ叩き潰すぞつゥか今すぐ死ねいや殺す」

    浜面「」ガクブルガクブル


    101: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:24:04.01 ID:/e/iPmXUo

    美琴「ま、まぁ今後の方針は大体決まってきたわね」

    番外個体「でもどうすんのさ?ミサカ達学園都市から出れないらしいよ?」

    美琴「えっと……」



    ピンポーン

    美琴「ってあら?」


    インターホンが鳴る。

    インデックスが対応しに行くと。そこにいたのは土御門舞夏。


    美琴「土御門?あんたここの家主と知り合いだったの?」


    舞花「兄貴がここのお隣さんだからなー。今日は兄貴が来たいって言ったんだぞー?」

    美琴「兄貴?」

    土御門「にゃー。ハワイを救ったヒーロー達に学園都市からのお知らせを預かってきたんだぜーい?お、一方通行もいるじゃないか!」


    土御門元春、金髪のツンツン頭にいかついサングラス、素肌にアロハシャツを着用しその上から詰襟の学生服を羽織るという、口調も含めてなんとも特徴的な格好の高校生。

    その実態は、学園都市上層部、イギリス清教を初め多方面からの依頼をこなす多角スパイだ。

    イギリス清教視点で見ればインデックスとは同僚に当たるし、学園都市視点で見ればどこにでもいる無能力者の学生。同時に学園都市の暗部組織「グループ」に属して一方通行とともに「仕事」をしたこともあるという奇特な経歴の持ち主。

    もっとも、暗部組織自体は第三次世界大戦以後ほとんどが一方通行によって解体されているが。


    102: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:24:51.71 ID:/e/iPmXUo

    一方通行「またやかましいのが……つゥかこいつここの隣に住んでるンだったなァ……」

    土御門「そんな露骨に拒絶しないで欲しいんだけどにゃー?超能力者の二人に良いお知らせを持ってきてやったんだぜい?」

    美琴「良いお知らせ?」

    土御門「そうだにゃー。お前たち二人に学園都市上層部から直々の依頼。今回の学園都市の世界的なイメージダウンの責任を取って欲しいそうだにゃ―」

    土御門「具体的な内容としては。アメリカでの能力の演習。デモンストレーションってとこかにゃー?超能力者の有用性と、人格的な平和性をアピールしてこいって話なんだぜい?」



    それはつまり、一方通行達が学園都市外へ出るきっかけが出来る、ということ。

    このタイミングでこんなにも都合のよい話、偶然なわけがない。



    一方通行「オマエ、どンだけの組織の裏と繋がって……」

    土御門「こちらには幾らでも『顔』があるんでね」

    そう言うと土御門の顔から先程までのまでの軽薄な笑みがなりをひそめる。


    103: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:26:13.16 ID:/e/iPmXUo

    土御門「カミやんに助けられた、生き方を変えられた奴はお前らが思っている以上に多いのさ」

    土御門「お前たち二人はそいつら全員の希望を背負ってる…」

    土御門「頼む…!あいつを助けてやってくれ。何人の人間の人生を変えても、救っても!自分の救い方を知らない馬鹿野郎の目を覚ましてやってくれ」

    様々な組織に属し、肩書きなど幾らでもある少年は、それら全てを今この場に限り捨て去り「上条当麻の親友の土御門元春」として、懇願する。



    美琴「当たり前じゃない」

    美琴「あのバカのバカっぷりは今回はいい加減常軌を逸してる。心配かけた人達全員に一発づつ殴らせるくらいのことはさせてやるっての」

    番外止め(最低でも10000発弱ですか……。)

    土御門「ははっ。頼もしいことで」

    土御門「あぁそうそう、それからな」



    104: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:27:32.44 ID:/e/iPmXUo


    土御門「必ず生きて帰ってきてくれ」

    一方通行「何当たり前のこと抜かしてンですかねェこのシスコン野郎は、俺を誰だと思ってやがンだァ?」





    番外個体「あれ、なんかミサカ置いてけぼり?」

    美琴「そんなこと無いんじゃない?あんたは妹達の代表なのよ?大きい末妹さん?」

    番外個体「ふ、ふん!ミサカはネットワークの負の感情を取り上げやすいんだから、ミサカ達に心配かけたことに対して殺しちゃいそうなほどの諸々な感情があるわけなんだけどね」

    一方通行「おいオマエのアイデンティティの腹黒さが消えかかってンぞ。ったく、遺伝子情報の時点であの無能力者にご執心かよ」

    番外個体「んなっ?!」

    一方通行「こンな色ボケどもと一緒かァ?やっぱ俺一人で行ったほうが良かったンじゃねェか……?」

    電磁番外「死ねこのセ口リがっっ!!」


    105: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:29:19.57 ID:/e/iPmXUo

    美琴「……まぁいいわよ。それじゃあ、まぁ」

    美琴「ちょっとバカを懲らしめにいってきますか」

    番外個体「おねーたまがどんな懲らしめ方をするか妹達一同興味津々です」

    美琴「ちょっと?!べべべべつに大したことしないわよ?!」

    番外個体「おやおやその反応もしかしてまたいつぞやのように罰ゲームにかこつけてなんかしようとしてたのかなー?そうだねーゲコ太のストラップの時みたいに罰ゲームっていう言い訳があればハワイで作ってたタグリングいきなり渡しても『うわっこいつ重っ』とか思われないもんねー☆さぁっすがおねーたまあったまいい!!」

    美琴「い、いい加減にしなさいよ?この小娘がッ!!」

    番外個体「何度も言うけどその小娘に色々と負けてるおねーたまってどうなのかにゃーん?出番的なものもこの先大丈夫なのかなー??」

    美琴「絶対に見返してやるわよどちくしょう!!」

    一方通行「あーうるせェうるせェ。いい加減にしやがれやかましい。心温まる姉妹喧嘩はよそでお願いしまァす」

    美琴「ぐ……」

    番外個体「」プークスクス

    美琴「ぬぬぬぬぬぬ!!」




    美琴「…。正直な話このままバカやってるうちにあいつが戻ってくるのが理想なんだけどね」

    一方通行「幻想<ラッキー>メイカーが行方不明で機能してねえからなァ」


    106: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/16(木) 22:30:44.11 ID:/e/iPmXUo

    美琴「……そうね、その愉快なバカを取り戻しに行きましょうか」



    一方通行「行くぞ」



    かつて、とある少年に自分の生き方を根底から覆えされた少年と少女。

    きっとその出会いが無ければ、今頃この二人はどちらも闇の底だったのかもしれない。

    その少年が闇の底に向かうのを、自分たちは助けて貰う側だからと指を加えて見ていてもいいのだろうか?

    いや、何もそんな理詰めなどではない。

    目の前に、助けて欲しくても、自分ですらその気持ちに気づいていない人間が居る。

    その少年を自分たちは救いたい。

    それだけで十分なのだ。

    自分の内から沸き上がる気持ちに正直に進むべきなのだ。それがとある少年の生き方だったのだから。




    一方通行

    御坂美琴




    上条当麻という存在に救われ、自分というちっぽけな現実に大きな変化をもたらされた少年と少女が交差する時、物語は始まる――。


    111: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:09:21.69 ID:o2RlIOOlo

    11月14日
    ワシントンナショナル空港――

    一方通行、御坂美琴、そして番外個体の3人は、アメリカ大統領から指定された(と土御門から聞かされた)空港へ到着していた。


    大統領「おーおー。アメリカを救ってくれたヒーロー達じゃねぇか!待ってたぜー」

    アメリカ大統領、ロベルト=カッツェ。
    ラテン系の彫りの深い顔立ちで、並のアスリート以上の筋肉を持つ熱血四十代男性だが、知性は感じられない微妙な残念さ加減。
    ただ、地位相応の風格はあるようだ。

    美琴「待ってたって……あの、一国の大統領がこんな所に、一人でいて大丈夫なんですか?」

    大統領「問題ねーって!だって俺自ら身分証出して『俺は大統領だ』って言っても熱心なモノマネ芸人ぐらいにしか思われねぇし……うぅ、ちくしょう、ちくしょう……!」

    美琴(そういえばこんな人だったわ……)


    112: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:10:08.83 ID:o2RlIOOlo

    大統領「……まぁ、そんなことは忘れて気を取りなおすか」

    彼はこんな扱いには慣れているようだ。一国の主として甚だ問題ではあるが。

    大統領「ようこそ、学園都市の生徒諸君」

    大統領「先の騒乱では非常に世話になったが満足に礼もできんでな、済まなかったよ」

    大統領「その分、今回はアメリカ合衆国を思う存分味わって欲しいと思う。アメリカ国民の総意だ、受けとってくれると嬉しいよ」

    一方通行「あン?」

    どうも話が噛み合わない。
    彼らは学園都市のイメージを悪いものとした責任を取るために、能力者の有用性や平和性を示すために派遣されたのではなかったのか?


    大統領「?ジャパニーズ。なんだよその訝しむような顔は?」


    113: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:11:20.50 ID:o2RlIOOlo

    一方通行「俺らは能力者の演習として呼ばれたんだろォが。アメリカを楽しンでくれなんつゥ言葉が出てくるのはおかしくねェか?」

    大統領「は?演習?」

    大統領「そっちで『どんな話』になってるかなんざしらねぇが、俺がお前たちを呼んだのは、アメリカの代表として礼をしたかったからだよ」

    美琴「……?」

    美琴の頭の中は?マークでいっぱいのようだ。
    こんな国際的、公式的な場で両者の認識に相違があったのだ。無理も無い話ではある。

    大統領「ま、この状況をお前たちの都合の良いように利用してくれよ」



    大統領「学園都市の金髪のボーイから、『本当の所』は聞いてるよ」



    一方通行「オマエ……!全部知ってやがって……!」

    大統領「おいおい、落ち着いてくれよ。このことは誰にも言っちゃいないさ。俺はお前らに全面的に協力するぜ?」

    美琴「気持ちは嬉しいけど……アメリカ大統領がこれってどうなのよ……?」



    そんなことを話しながら空港を出る。

    出てすぐの所に自家用車を呼んでいるらしく、ひとまずアメリカを案内してくれるそうだ。


    114: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:11:47.53 ID:o2RlIOOlo






    その刹那。


    その場にいた一同の視覚と聴覚が機能を失う。


    115: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:13:07.97 ID:o2RlIOOlo

    一瞬遅れて押し寄せる轟音と閃光



    バス乗り場に停車していたバスの内の一つが何の前触れもなく炸裂した。

    その爆風は一瞬で周辺に停まっていた車両も巻き込み、規模を増してゆく。

    熱と暴風は嵐となって空港を喰らう。

    炸裂した車両の破片は巨大な散弾銃のように周囲に牙を剥く。時にはほぼ原型を残したままの大きさで。





    しかし、その地獄に涙は流れなければ、鮮血で彩られることもない。



    そこに居たのは一人の少年。

    彼は無謀にも、爆発の原因を作ったバスの目前に立っている。

    だが、彼に触れた爆風はまるで生きているかのように不可思議な動きを見せ、誘爆した車の爆風を飲み込み、相殺し、収縮していく。




    一方通行「ンだァ?随分と俺らのことをお待ちかねだったみてェじゃねェか?」



    皮肉げに笑う彼の手は首筋に添えられている。

    チョーカー型電極のスイッチ。

    彼を学園都市最強の怪物へと指一本で返り咲きさせる機器は、ランプを彼自身の眼の様に赤く、煌々と光らせている。

    今の彼は紛れも無く学園都市最強の超能力者<レベル5>、一方通行<アクセラレータ>だ。


    116: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:14:03.18 ID:o2RlIOOlo

    爆発の余波で大型車両が何台も吹き飛ぶ。そのままでは空港の建物自体も危険だが、何よりここは空港の出入り口だ、生身の人間だって多数にいる。


    しかし宙を舞う鉄の塊の総ては一瞬動きを止めると、まるで羽毛のような穏やかさで路面に降り立つ。

    美琴「ちょっと?!被害を抑えるなら抑えるで最後までやりなさいよ!何十台車ふっ飛ばしてんのよ?!」

    学園都市第三位の超能力者

    超電磁砲<レールガン>、御坂美琴。

    彼女が磁力に干渉し、吹き荒れる鉄屑被害を最小限に食い止める。


    117: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:15:05.10 ID:o2RlIOOlo

    大統領「……あんだけの爆発があったってのに被害は爆発した車だけかよ……人的被害もゼロときた。ほんとバケモンだな学園都市の能力者ってのは」

    番外個体「あれを学園都市のスタンダードと思ってもらわれても困るんだけど……」



    一方通行「オリジナル、反省会は後だ、見ろ」

    美琴「え?……ってあれは……」


    駆動鎧<パワードスーツ>
    学園都市特有の兵器で、人間がスーツのように着こむ機械仕掛けの体だ。

    それが夥しい数で押し寄せている。


    美琴「なんで学園都市の技術が……」

    一方通行「上層部が公式に認めた遠征だ、学園都市からの追手ってこたァ無ェだろ。」

    美琴「となると、離反した協力機関の方?」



    番外個体「裏に潜む黒幕を予想するのは結構だけど、あいつら明らかにミサカ達より大統領狙ってる感じだけど?」

    美琴「なっ!?」


    118: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:15:57.11 ID:o2RlIOOlo

    駆動鎧の集団の内の一体が疾風のように大統領に向かう。


    美琴「させない!」

    美琴の前髪から青白い稲妻が走る。

    それだけの動作で、駆動鎧は動きを止めてしまう。




    美琴「この場合、あれよね?」

    一方通行「あァ」






    一方通行「正当防衛だ」






    学園都市の怪物たちの大掃除が始まる――


    119: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:16:33.78 ID:o2RlIOOlo

    ――



    番外個体「うひゃー。大したことない癖に数だけは多いねぇ。うんざり」

    番外個体「……ってか、おねーたま?」

    美琴「うん。私も気付いてた」

    番外個体「そこのトラックから伸びてる……鉄塔?ありゃ学園都市製のものだねー。電力の消費具合が特殊過ぎる」

    番外個体「って言っても一体何なんだろねあれ、銃口やら砲台やらは見当たらないけど」


    美琴「あの形……どこかで……」


    120: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:17:18.91 ID:o2RlIOOlo

    ギイィィィィィィィィィィィィン!!



    鳴り響く不快な金属音

    それは3人の「能力者」に牙を剥く


    番外個体「あ痛っ?!あだだだだだっ!ちょっ頭割れる……!」

    美琴「あぐっ!!」


    キャパシティダウン。
    一種の音響兵器を使い、能力者の演算能力を大幅に阻害する装置。

    能力者にとっては著しい頭痛を引き起こすとともに、能力の使用を阻害させるが、それ以外の人間に対してはただの少しうるさい音に過ぎない。

    以前に美琴に対して使われていたものより改良が加えられているようだ、ほんの微力の電撃すら発することができない。



    美琴(まずっ……このままじゃ……!)



    一方通行「があァァァァァァァああっ?!」

    美琴(っ!?)


    121: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:18:15.64 ID:o2RlIOOlo


    一方通行は特に被害が甚大なようだ。普段の彼からは考えられないような悲鳴を上げている。


    演算能力か、自分だけの現実か。

    何にせよ、能力が強大な者ほど大きな被害を及ぼすようだ。


    美琴「……っ!音よ、この音だけでもいいからどうにかすれば……」


    一方通行(あァ、音だァ?)

    一方通行「……ぐっ!」

    一方通行は普段反射に費やしている膨大な演算能力を音、すなわち空気の振動の反射のみに設定し直す。


    その動作は彼にとってほんの100分の1にも満たない能力使用だ。その程度の余力しか今の彼に残されてはいない。


    しかし、それで十分。

    この音さえどうにかしてしまえば彼の演算能力は本来の力を取り戻す。


    122: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:18:51.80 ID:o2RlIOOlo

    一方通行「何の非科学も無ェ、正真正銘科学の力で学園都市最強に痛みを感じさせるなンてなァ、褒めてやるよ」


    一方通行「ご褒美だ」



    彼が何気なく蹴り飛ばした小石は、音を超える速さで諸悪の根源の鉄塔を射ぬいた。


    ――枷が外れる。


    自由を取り戻した獣達の、狩りが再開される――


    123: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:21:21.90 ID:o2RlIOOlo

    一方通行「格下のくせに役に立つじゃねェか」


    極めて局地的な暴風で駆動鎧が10体ほどまとめて吹き飛ばされる。


    美琴「んなっ?!それ助けて貰った側が言うセリフ?!」


    電撃による干渉により更に何体かが機能を停止する。


    一方通行「別に助けろなんて頼んでねェし。つゥか俺がいなかったらオマエら今頃肉塊だろ?」


    一方通行が地面を踏みしめると周囲十数メートルのアスファルトに亀裂が入る。ところにより地割れが起き愚かな捕食対象が飲み込まれる。


    美琴「その対抗策をわ・た・し・が!示したんだけど!?わっかんないのかなこの元殺人鬼さんは?」


    磁力によりアスファルトの亀裂から砂鉄を集め、それによる竜巻が生み出される


    一方通行「対策知ってンならとっとと叩きやがれ役立たず」


    無操作に蹴り飛ばしたコンクリート片が美琴の後ろに迫る駆動鎧に突き刺さる。


    美琴「コミュ障のくせに口数が減らないようで?」


    彼女の指先からデームセンターのコインが音速の3倍で射出され動線上の総てを薙ぎ払う



    一方通行「あ?やンのか格下?」

    美琴「上等じゃない!!望むところよ!!」


    124: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:23:23.00 ID:o2RlIOOlo

    番外(……とか言いながらお互いの背中をカバーし合って戦ってるのはどうなの?)ニヤニヤ


    と、ふいに無造作に一方通行の蹴りが飛ぶ。






    美琴に向かって






    美琴「痛ったいわね何すんのよ?!」

    一方通行「飛行機での話聞いてなかったのかボンクラ?」

    美琴「……え?」


    確か、この少年は「魔術」という物について、自分の経験した範囲で美琴に教えてくれていた。

    その話の中には、能力者が魔術を使用すると大きな反動があること、


    そして特定の動作を誘導し、強制的に魔術を使用させる術があることを。


    美琴「まさかあんた、助けて……」


    見れば彼の指先には血が滴っている。

    傷など負う筈のない最強の能力者であるにも関わらず。

    美琴「ちょっ?!」

    一方通行「……こっちは能力の演算さえ出来てりゃ止血ぐらいなンてこたァ無ェンだよ」




    番外個体(いやぁお互い素直じゃないねぇ)ニヤニヤ


    電磁通行「さっきからやかましい黙ってろ!!!」

    番外個体「ちょっ?!飛んでくる電撃はミサカも同系統だからいいとして、その音速超えた速度の石蹴りはミサカ死ぬってオイ?!」


    大統領「会話だけ聞いてりゃ平和この上ないんだが……そんな片手間で兵器100体規模に人間3人が圧勝できるのかよ……」


    125: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:24:05.45 ID:o2RlIOOlo

    正当防衛のはずだがなんとも相手がいたたまれなくなるような狩りはものの5分ほどで終了した。

    大統領「いやぁ、助かったぜ、ありがとよ」

    美琴「あの、申し訳ないんですけど……私達これから……」

    大統領「わかってるさ」

    大統領「あのツンツン頭のボーイを探すんだろう?それも金髪のボーイから、実際のところの内容は聞いているよ」

    一方通行(土御門の野郎……どこまで顔が利くンだよあいつは)

    大統領「あのボーイだってこの国の恩人だ、俺に出来ることならなんだって協力してやるよ」

    美琴「ありがとうございます!」

    番外個体「っていっても、これからどうするのさ?ミサカ達ヒーローさんの場所とか何も知らないよ?」

    大統領「あー……すまないがそりゃ俺にも分からねぇな……」


    126: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:24:38.79 ID:o2RlIOOlo




    美琴「イギリス……」

    一方通行「あ?」

    番外個体「なるほどねぇ。第三次世界大戦の学園都市以外のもう一つの戦勝国。終戦の後のゴタゴタの責任を負わないと、なんて思ってるヒーローさんは行きかねないかもねぇ。行ってみる価値はあるかもにゃーん?」

    美琴(それにあの子、インデックスの属する組織…必要悪の教会?だったかしら……もイギリスにある。あのバカが向かう理由は十分なはず!)

    大統領「よし、イギリスまでの空路は俺が手配しよう」

    大統領「それから、きっと世界のお前たちへの風当たりは依然として厳しいはずだろうな。例えあんな発表があったとしても」

    大統領「謂れの無い誹謗中傷が上がったら、俺がなんとでも言って撤回させてやるよ。スキャンダル上等!」

    美琴「あはは……。ありがたいんだけど、世界の警察の最高権力者がこれって…」

    番外個体「良いんじゃない?ミサカこういう方が好き☆」

    大統領「あぁそうそう、それから」

    一同「?」


    127: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:25:31.64 ID:o2RlIOOlo

    大統領「事が事なんで公にはしていないが、学園都市の協力機関がある各国にはクローン技術なんてものをおおっぴらにしたら、学園都市だけでなくその機関を内包する国自体も多大な被害を被るだろう。そのことを『あくまで親切心で』教えてやったよ」

    大統領「しっかしクローンなんてもんまで作ってるのか学園都市は?!」

    一方通行「オマエ……どこでそれを……!」

    大統領「おっと怒るなよジャパニーズ。クローンだって生きてるんだろ?俺は命あるものに生き抜いてもらえるように最大限助力するさ」

    一方通行「はン。世界の警察がクローン擁護かよ、笑えねェな」

    美琴「でも、こんな話が出る限り、あの子達は学園都市の外で平穏に暮らすことは出来ないのよね……」

    一方通行「……」


    128: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:26:22.99 ID:o2RlIOOlo



    ――

    御坂妹『ミサカにも生きるということの意味を見いだせるよう、これからも一緒に探すのを付き合って下さい、とミサカは精一杯のワガママを言います』

    ――



    美琴「あの子たちに頼まれたことがある。それを果たせる世の中にならなくちゃいけない。しなきゃいけない。姉としてね」

    一方通行「ふン」

    番外個体「あっれぇ~?もしかしてあなたもミサカ達のこと考えてくれてたりするの~?嬉しいねー」ニマニマ

    一方通行「うるせェ叩き潰すぞコラ」


    129: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:26:45.33 ID:o2RlIOOlo





    ――





    11月16日
    イギリス、ロンドン

    一行は上条の手がかりを探してロンドン市街を歩いていた。




    が――


    130: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:28:17.67 ID:o2RlIOOlo

    美琴「何の進展もないんだけど……」

    一方通行「……チッ」


    何の手がかりも掴めていなかった。



    彼らにしてみれば数ヶ国語は問題なく喋れるのだからコミュニケーションに不安はない。

    しかしながら、現地での知り合いが全くいないのだ。なかなかどうして、情報というものが集まらない。

    どこかのツンツン頭の少年とは全く逆の状況だった。



    一方通行「あ?」

    そこで一方通行は違和感を覚える。

    今歩いている周りには見渡す限り平野が広がっている。建物などは遠くに小さく見えるくらいだ。


    確かに彼らは土地勘はない。
    しかしだからといって、こんな何も無いような所に進んで足を運ぶだろうか?


    美琴「……後ろ。誰か居るわね?」

    美琴の電磁波による感知もまた、異変を感じ取っていた。


    131: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/17(金) 23:29:39.94 ID:o2RlIOOlo

    「ほう?科学の知識しか持たん奴らが、俺様達に気付くとはな」

    そこに居たのは一言で言えばどうしようもないほどに「赤」

    赤く染めた肩口ほどまでの髪に、上下赤で統一された衣服、白人の男性のようだ。
    衣服の右腕の部分が妙にダフついている。恐らくは右手が無いのだろう。


    「右方のフィアンマ」、かつてローマ正教の最暗部に存在した組織「神の右席」の一員だった男。



    そしてもう一人。


    「大人しくして貰えれば、苦しまずに済んだのであるが……」

    対照的に「青」

    といっても先の者の様に上から下まで総てが青なわけではない。

    青系の長袖シャツを中心にゴルフウェアを連想させるスポーティな格好の茶髪の白人。
    その極めて大柄な体躯と合わせて静かで揺るぎない雰囲気を放っている。
    見れば、その手には自分の背丈以上の長さがありそうなメイスが携えられている。

    ウィリアム=オルウェル。またの名を「後方のアックア」

    フィアンマと同じく、過去に「神の右席」に所属した魔術師であり、同時に世界に20人と存在しない「聖人」の一人だ。



    世界のもう片方の「怪物」が、顔を覗かせる――


    138: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:12:37.71 ID:zxNAe5Z1o

    一方通行「ンだァ、お前ら」

    フィアンマ「その台詞は俺様達が言いたいくらいだな」

    一方通行「……あァ?」



    フィアンマ「何故あの男を救い出そうとする?」

    美琴「そんなの、聞くまでもないじゃない!」

    フィアンマ「友情、愛情、恩返し、使命感……大いに結構だ」

    フィアンマ「だが、お前達は自分がやろうとしていることの意味を真に理解しているのか?」

    一方通行「……何が言いてェ?」

    フィアンマ「今のあの男の存在は世界、少なくとも俺様達の『領域』にとって脅威だ」

    フィアンマ「そんな人間を、あろうことか救おうなんて考える人間を見過ごすわけにはいかんよ」


    139: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:13:59.80 ID:zxNAe5Z1o

    一方通行「何言ってンのかさっぱりだが」

    一方通行「俺らに喧嘩売ってンのだけは確かみてェだなァおい?」

    一方通行「誰に向かってエラそうな口聞いてるか分かってンのか?」



    少しづつ、場の空気が触れればその指が裂けるように鋭さを増してゆく。

    一方通行も、美琴も番外個体も、目の前の男たちとの遭遇は決して偶然ではないこと、

    そして、それが果たして何なのか分からないが、自分たちと同じく譲れないものを抱えていることを理解し始めていた。


    フィアンマ「……大人しくここで身を引くのなら今後一切お前たちには関わらんよ」

    美琴「断るって言ったら?」

    フィアンマ「悪いが手段を選ぶ余裕は無いな」


    140: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:14:53.89 ID:zxNAe5Z1o

    ゴバッ!!



    美琴「わっ?!」



    何の前触れもなく美琴の足元を取り囲むように火の手が上がる。


    周りの者がそう理解できた時には既に、一方通行は地を蹴っていた。

    脚力のベクトル、そして周囲の大気の流れを手中に収め常人が反応できる速度を軽く超える早さでフィアンマに向かい、そのままの勢いでフィアンマを吹き飛ばす。





    あの少女の「妹」を何百何千何万と殺めた。

    そして、自分勝手だろうと何だろうと、残りの一万を一人だって殺させないと誓った。

    その出会いに感謝した。

    「守りたい」と確かに思った。

    その少女たちの日常を壊すようなことを、決して彼は許しはしない。


    141: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:15:44.12 ID:zxNAe5Z1o

    フィアンマ「なるほど、俺様の危険性を真っ先に察知しあの女どもを守ろうとしたか、状況判断能力はあるようだな」


    無傷。それどころか余裕すらその男の顔からは伺える。



    フィアンマ「だが、お前が俺様を止められる道理はどこにも無い」

    一方通行「吠えてろよ三下」


    142: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:17:47.71 ID:zxNAe5Z1o



    ――


    アックア「……フィアンマの様に答えを急ぎ過ぎるのも問題であるが」

    アックア「私もしようとしていることは同じである。どうする、能力者よ」

    美琴「一つだけ聞かせて」

    美琴「なんであんた達はあのバカを救うことを止めようとするの?」

    アックア「貴様らの様な科学の者たちに理解できるとも思わんが、無駄な争いは私も望まん。話してやろう」



    アックア「あの男の存在は争いしか生まん。貴様もあの男と共にいたのなら解るであろう」

    アックア「あの右腕を巡り、学園都市とローマ正教は相対した、第三次世界大戦なんてものを引き起こすほどに」

    アックア「確かにあの男の存在により免れた悲劇もあろう、救われた者もいよう」

    アックア「だが、こうして世界大戦が終わった今もあの男を巡って多くの組織が暗躍し、新たな争いを、悲劇を生まんとしているのである」

    アックア「この現状、あの男の存在そのものが争いの芽で無い等と言るのであるか?」


    143: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:18:23.80 ID:zxNAe5Z1o

    アックア「争いの芽ならば、それが何であろうと新たな涙を生む前に摘まねばならぬのが道理であ――」

    美琴「させない」

    アックアの言葉を遮る強い意志の篭った言の葉

    美琴「そんなこと、絶対に認めない」

    美琴「あいつが救ったこの世界に、あいつの居場所がないなんて冗談は許さない!」


    144: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:19:24.40 ID:zxNAe5Z1o


    アックア「やはり行っても分からぬのであるか」

    アックア「それに」

    アックア「あの男と同じ目だ。気に食わん」


    アックアが携えていた身の丈ほどもあるメイスを構え直す。


    明確な戦闘の意思。


    アックア「貴様も争いの芽であるようだ。悪いが消させてもらうのである」

    メイスが地面に向かって振り下ろされる。

    それだけで轟音が鳴り響き、地はまるで玩具のようにうねる。


    番外個体「はぁっ!?何あの馬鹿力?!棒っきれ振り下ろしただけで地震起きてるんですけど?!」


    美琴「くっ、この……!」

    美琴は、アコーディオンのような大地に遊ばれながらも、狙いを定める。


    超電磁砲。


    彼女の通り名にもなっている攻撃の。


    145: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:20:19.96 ID:zxNAe5Z1o

    美琴(規格外の馬鹿力みたいだけど、まずはその得物を吹き飛ばす!!)


    ゴッ――!!



    一瞬オレンジ色の光が見えたと思った次の瞬間には、爆音と共に超電磁砲の余波による暴風が吹き荒れ、土煙が舞い上がる。



    最悪、彼が手にしていたメイスと共に右腕が吹き飛んでしまうような事態になるかも知れないな。



    だが、手加減をして退けられる相手とも思えない。



    そんな美琴の思考は、杞憂に過ぎなかった。


    146: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:20:46.00 ID:zxNAe5Z1o



    爆煙が晴れ、そこに見えたアックアは五体満足だった。





    それどころかメイスも持ったままだ。


    147: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:22:07.25 ID:zxNAe5Z1o


    美琴「なっ――?!」

    アックア「ほう、中々の威力であるな。流石は学園都市最高峰の能力者、といったところであるが」.



    アックア「聖人である私を止められるものではない」

    アックアは涼しげな顔でメイスを構え直す。

    今度の狙いは間違いなく美琴自身だ。



    番外個体「ミサカ無視して話し進められても困るんだけ、ど!!」

    磁力により鉄釘を無数に射出する。出力は美琴の超電磁砲に劣るが、それでも速度は音速に迫る。


    それが


    ただの一つもかすりはしなかった。


    番外個体「ど、どうなってんのさこれ?!こっちは音速の鉄釘で弾幕貼ってんだよ?!」

    アックア「力の大きいものから処理するのが定石である」

    無常にも大男が薙ぎ払ったメイスは美琴に直撃する。

    番外個体「おねーたま!!?」



    薙ぎ払われた美琴は、悲鳴すら残さず吹き飛ばされる――。


    148: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:24:40.98 ID:zxNAe5Z1o




    ――





    美琴(あいったたた……。なんなのよあいつ?!あんなデカい得物好き勝手振り回して、、しかも超電磁砲ぶつけられても手放さないどころか痺れもしてないみたいじゃない!)



    新幹線から身を乗り出しているかのような速度で吹き飛ばされながら、美琴は先程の状況を振り返る。


    幸い、アックアの持つメイスの素材は鉄などの磁力の干渉を許すものが含まれていた。

    お陰で直撃の瞬間、とっさの能力使用で極力衝撃を緩和することが出来ていた。

    しかしながら、体中の骨や筋肉は悲鳴をあげているし、気を抜けば意識すらも飛んでしまいそうだ。


    美琴(ある程度勢いが弱まってきた所で、その辺の砂鉄かき集めて緩衝材にでもすれば接地時の衝撃も何とかなるかしら?……っていうかこのままじゃ番外個体が危な――)


    そこで美琴は思考を中断させられる。



    今現在美琴が向かっている方向にあったもの。



    それはフィアンマと交戦中の一方通行だ。

    かなり距離が離れてはいるが、この速度では5秒と待たずに衝突してしまう。



    美琴(まずっ?!能力使用状態のあいつの「反射」この速度で突っ込んだら…!!)


    学園都市第三位の超能力者と言えども美琴の身体能力は一般的な人間のそれだ、女子中学生としてみれば少々驚かれる様なものではあるが、とても生身でそんな衝撃に耐えられるようでは無い。


    そして、この速度で空中を突き進んでいる状態では、磁力によって砂鉄をかき集めることもままならない。



    美琴(ぶつかる……っ!!)


    149: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:25:08.79 ID:zxNAe5Z1o











    グシャッ


    150: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:25:59.37 ID:zxNAe5Z1o


    一方通行「痛ってェな何しやがるクソ野郎?!」

    美琴「……へ?」


    美琴「え、ちょ……あれ?」


    事態が飲み込めない。

    だが間違いなく美琴は意識を保っていれば、目立った外傷もない。

    つまり「反射」は起きていない。

    それどころか美琴が一方通行に衝突した際、彼はその衝撃のベクトルを操作し、緩和までしていた。

    美琴「あんた……っておぉわっ?!」



    美琴が何事か言おうとするよりも早く、一方通行は美琴の襟首を猫に対してするように無造作に掴みとり、元いた方向へ投げ飛ばす。


    美琴「あんたこそ何すんのよぉぉ?!」



    そして




    一瞬前まで美琴がいた場所は一面火の海と化した。



    見れば一方通行の白い衣服や髪はところどころ焼け焦げているし、呼吸も酷く荒いものになっている。


    フィアンマ「ふむ、そんな余裕をかませる状況とは思えんが……感心せんな」

    一方通行「チィッ!!」


    ――


    151: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:27:20.41 ID:zxNAe5Z1o



    アックア「さて、次は貴様の番であるが……」

    アックア「どうする、あの小娘よりも貴様の力は小さいもののようであるな?」


    事実その通りだ。美琴は超能力者、番外個体は大能力者。


    戦闘に関する知識に関しては紛れも無く番外個体のほうが豊富だが、それを補って余りあるほど能力の壁は絶大だ。


    番外個体(まずいねぇ、どうするよ?こんな怪獣映画にでも出れそうなおっさん、ミサカの手には負えないんだけど)



    美琴「おわっ、とと……」

    と、メイスの直撃を受けたはずの美琴が戦場に復帰する。
    一体どういう理屈なのか不明だが、ふわりと穏やかな着地を見せる。


    番外個体「っておねーたま戻ってきたよ?!大丈夫なの?!」


    美琴「問題ないわよ。あのメイス、磁力で干渉できるみたいだし」


    アックア「ほう。無傷か。少々貴様に対する認識を改める必要が出てきたが」

    アックア「面倒だ、早々に沈んでもらう」

    空気が急激に乾く。否、空気中の水分が次々にアックアに流れ込む。


    152: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:28:54.35 ID:zxNAe5Z1o

    美琴「遅い!」

    アックア「無駄である」

    砂鉄の高速振動によるブレードも、アックアの肉体に傷を付けることは叶わない。

    そして返す刀でアックアから放たれる水の塊は空中で静止し大きな球体となって美琴を閉じ込める。


    美琴「ごぼっ……?!」

    番外個体「ちっ!」

    番外個体がアックアの背後から鉄釘を放つ、同時に放電により空気を破裂させることで水で出来た球体の破壊を試みる。



    しかし――



    それらすべては、一振りのメイスで刈り取られる。


    番外個体「がっ……!!ぐふっ!!」


    腹部にメイスが直撃する。

    番外個体の能力の出力では、その強大な威力に為す術はなかった。


    そして美琴も、球体に捕らえられたまま、水圧により締め上げられる。


    美琴「ぁ……かはっ……っ!!」



    勝敗は既に、誰が見ても明らかだった。


    153: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:29:51.39 ID:zxNAe5Z1o



    ――



    フィアンマ「科学サイドサイドのバケモノと聞いたが…この程度か。」

    フィアンマ「悪いが、もう終わらせてもらうよ」


    涼しい顔を浮かべたままのフィアンマとは対照的に、一方通行は消耗しきっていた。



    一方通行(クソが!こいつの炎の「ベクトル」が掴めねェ。反射も不完全で中途半端にしか通用しなけりゃ弾幕貼られて距離も離せねェ!!)


    フィアンマ「稀有な能力の『対抗策』はいらない、右手を振れば能力者は倒れ伏すのだから」

    フィアンマの右肩から、不恰好な巨人の右腕のような、龍の腕のような光の塊が浮かび上がる。

    一方通行「ごっ、がああァァァァァァあァァっ?!」


    肺の中の空気が総て押し出される、内臓が熱を持つ。脳が破裂するように痛む。


    それらの攻撃は真正面から彼の反射を突き破り、体中を食い荒らしていく。


    154: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:31:06.10 ID:zxNAe5Z1o



    ――



    アックア「殺しはしない。もう二度とあの男に関わろうとしないのが身のためだ」



    ――



    フィアンマ「もう俺様の言葉を聞く余裕もないかも知れんが、一つ良いことを教えてやろう」



    フィアンマ「俺様の力は、ほんの一時ではあるが、あの第三次世界大戦を掌握し尽くした力の片鱗だよ」





    赤と青、ニ色の魔術師は初めからその存在など無かったかのように忽然と姿を消した。


    155: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/18(土) 19:31:33.94 ID:zxNAe5Z1o





    荒野に残ったのは、少年の咆哮と少女の涙だけだった。


    166: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:17:10.20 ID:K1NHkqdQo


    11月20日、学園都市――


    とある学生寮の一室では、インデックス、浜面仕上、滝壺理后、黒夜海鳥、打ち止め、そして土御門元春の6名が賑やかで騒々しい昼下がりを過ごしていた。


    一方通行たちが出発した後、土御門以外の面々は上条の部屋で日々を過ごしていた。

    インデックスを無理にこの部屋から遠ざけることもないだろう、という浜面の提案あってのものだ。



    浜面「ってかなんで最近お前ここに来てるんだ?」

    土御門「にゃー?そこの操り人形さんがいつメイドさんの格好をするのかと思ってにゃー。舞花も最近は来てないから間違ったメイド像云々で怒られる心配もないんだぜい?」フフン

    浜面「ドヤ顔で言うことでもねぇだ――」

    黒夜「てめぇふざけんじゃねえぞぶっ飛ばばばばばばばば?!」

    二人の会話に不穏な響きを感じて無理矢理に会話に割り込む黒夜だが。

    打ち止め「クロにゃんダメなんだよ!ってミサカはミサカは勧善懲悪!」ビリビリ

    案の定打ち止めの電気操作の能力で体の自由を奪われてしまうわけである。

    滝壺「ペットみたい」

    浜面「やめなさいこの子そういった類の言葉に過剰反応しちゃうから」


    167: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:17:40.68 ID:K1NHkqdQo




    ――と、そこで土御門が窓を背にする形で並んで座っていたインデックスと打ち止めを玄関の方向に向かって突き飛ばす。



    一同は突然の彼の行動にあっけにとられる。



    だがしかし、すぐにその理由を理解することになる。


    168: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:18:43.19 ID:K1NHkqdQo

    突如窓ガラスが飛散し、雨となって一瞬前までインデックス達がいた場所へ降り注ぐ。

    そう理解できた頃には何本もの火柱が立ち昇っていた。



    土御門「インデックスを連れて逃げろ!打ち止めは俺が守る。どの方向でも良いからとにかくここから離れろ!!」

    浜面「……は……?」

    土御門「早く!!」

    浜面「っ!!分かった。大丈夫か、インデックス?」

    インデックス「う、うん。大丈夫なんだよ、しあげ……ってうわわ?!」

    インデックスの体の無事を確認すると、浜面は軽い動作でインデックスを抱え上げる。

    浜面「緊急事態だ、酔っても文句言うなよ?」

    浜面「滝壺も大丈夫か?!走るぞ!」

    滝壺「うん。私は大丈夫だよ、はまづら」


    3人はすぐに学生寮をあとにする。



    土御門「……必要のないはずの「監視」がここ数日続いているのは気付いていたが、まさかいきなりの武力行使とはな」

    土御門の眼線も口調も、先程までの飄々さは微塵も感じられない。

    打ち止め「な、何があったの?ってミサカはミサカは現状確認……」

    土御門「お宝争奪戦ってところかな?商品は、お嬢さん達みたいだぜ?」


    瞬間、寮の一室は今度こそ完全に火の海と化す。


    169: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:19:49.99 ID:K1NHkqdQo


    ――



    「ふむ、やはり一筋縄ではいかない様だね?」

    不満を顕わにした男は、2メートルを超す大柄な体格を持ち、派手なアクセサリーに赤く染めた長い髪、右目の下にはバーコードの刺青と、なんだかとってもパンクな出で立ちだが、身に付けている真っ黒な修道服を見るかぎりどうやら神父のようだ。


    ステイル=マグヌス

    イギリス清教「必要悪の教会」に属するルーンの魔術師。


    「ここで文句を言っても始まりません。二手に分かれて追いましょう」

    パートナーを制し、冷静に作戦を組み直した女は、長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズという服装をし。腰のウエスタンベルトには身の丈以上の日本刀が携えられている。


    神裂火織

    イギリス清教「必要悪の教会」に属する聖人。



    神裂「あの子は私が追いましょう、……私は土御門は少々苦手です」

    ステイル「……そうだね」



    ステイル「今回は失敗は許されないし、僕も私情を挟むようなことはしたくない」



    ――


    170: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:20:28.92 ID:K1NHkqdQo


    打ち止め「大丈夫?すごい血だよ?!ってミサカはミサカは顔を青ざめさせてみたり……」

    土御門「ああ、大丈夫だ。こんなことはしょっちゅうなんでね」

    土御門のアロハシャツの所々には血が滲んでいた。
    先ほどの炎から打ち止めを守るために魔術を行使した結果だ。

    加えて先ほどの衝撃で学生服の上着が脱げ、腕が顕わになっている。見れば右肘から手首にかけて包帯が巻かれているようだ。直近でも何か怪我をするようなことがあったのだろうか?

    土御門(インデックスと俺が別行動となれば神裂ねーちんはインデックスを追う形になるだろうな。)

    土御門(これでいい。俺がインデックスを連れていたら、浜面達はステイルに打ち止めもろとも燃やされていただろうし。)

    そこまで考えて、人の弱みを突くようなやり方に我ながら苦笑する。


    171: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:21:23.21 ID:K1NHkqdQo


    打ち止め「あなたがツチミカドさん?ってミサカはミサカは確認してみる」

    土御門「?ああそうだぜい?そういえば自己紹介はしてなかったかにゃー?」

    打ち止め「あの人がよくあなたのこと話してたよ」

    あの人、とは一方通行のことだろう。一体何を話していたのだろうか?

    どうあっても良い話のビジョンが見えないので少々背筋が冷たくなる。


    打ち止め「『仕事』でヘマをしたーとか、どうしようもないシスコンだーとか」

    予想的中。


    打ち止め「でもね、あなたの話をしている時のあの人は文句ばかり言いながらも
    とっても楽しそうだったの!きっとあなたのことを実は信頼してたんだねーってミサカはミサカはあの人に聞かれたら万回チョップ確定な真実を暴露してみる」

    驚いた。

    あの傍若無人の体現みたいな怪獣の真意を、彼女は理解できているらしい。

    打ち止め「そんな人と一緒だから、きっとミサカは助かるのだ―!って、ミサカはミサカは安堵してみる」

    土御門「やれやれ、こいつは骨が折れそうだ」


    そんな会話を続けながら逃走を続けていた二人だったが、


    ゴバッ!という轟音と共に道路ごと炎に飲まれる。


    172: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:22:29.27 ID:K1NHkqdQo

    ステイル「この程度で君を攻略できるとも思っていないけど、防ぐために少しでも魔術を使って貰えればこっちのものだ。ゆっくりと自滅してく――」


    土御門「ナイスだにゃ―結標。結構ヒヤヒヤしたんだぜい?」


    言い終わらない内に、あらぬ方向から土御門に声をかけられる。

    しかも彼は無傷だ。どこにも怪我らしきものはない。


    ステイル(結標……あのビルへの案内人、空間移動能力者<テレポーター>か。)

    ステイル(たしかに厄介ではあるけど、種が割れれば対抗策なんていくらでもでもあるよ!)


    ステイル「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ」

    気付けば辺り一面にはいつの間に撒いたのか、無数のルーンのカードが敷き詰められている。

    ステイル「それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり」

    ステイル「それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり」

    ステイル「その名は炎、その役は剣」

    ステイル「顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ!」

    熱源もないのに、ステイルの周囲の気温は異常なまでに上昇する。
    あまりの気温に、陽炎のように風景が揺らぐ

    ステイル「魔女狩りの王<イノケンティウス>!!」


    姿を現すは炎の巨人。真紅に燃え盛る炎の中に、重油のような黒くドロドロした人間のカタチの芯が通っている。


    ステイル「焼き尽くせ」

    大気の温度変化による蜃気楼での目眩ましでサポートについているらしい結標の目測を誤らせ、魔女狩りの王で土御門を打ち止めもろとも火葬。

    それがステイルの描いた勝利へのロジック。


    だが、彼はそこで一つの違和感に気付く。気付いてしまう。


    173: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:22:59.33 ID:K1NHkqdQo


    土御門の傍らにいる筈の打ち止めの姿が見えない。結標の能力で別々の場所に飛ばしたのだろうか?


    彼は先程のステイルの攻撃を喰らってはいない、だが無傷というのはどうだろう。彼の能力を考えても打ち止めを救った際の魔術の反動が完治するには早すぎはしないか?
    そもそも腕に巻いていたはずの包帯すら無い。



    そして


    174: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:23:26.72 ID:K1NHkqdQo








    彼は黒曜石でできたナイフなど持っていただろうか?


    175: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:24:19.36 ID:K1NHkqdQo



    その違和感を感じた時には、黒曜石のナイフを向けられた魔女狩りの王は霧散し、周囲にばら撒かれたルーンのカードは結標の能力によりどこかへ掻き消える。


    土御門「トラウィスカルパンテクウトリの槍」


    土御門が顔に手をやると、パキパキと音を立てながらその顔に亀裂が入りボロボロと崩れ落ちる。

    その下から、黒髪で褐色肌の少年の顔が一瞬現れるが、その顔もまた別の顔で塗り替えられる。

    「アステカの神話には、興味がおありではないようですね?」

    最後にその人物に残ったのは茶色の髪に柔和な笑み。高めの身長に線の細い体つき。

    海原光貴そのものだ。もっとも、その顔すら偽りのものであるが、彼自身その顔をひどく気に入っている。


    ステイル「魔女狩りの王を破壊した上に他者への擬態?馬鹿な、能力者には2つ以上の能力の行使はできないはずじゃあ……っ?!」


    海原「残念ですが、自分は生粋の魔術師ですので」


    176: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:24:52.24 ID:K1NHkqdQo


    海原「あの少女とよく似た顔をした女性と、その周囲の世界を守る。どんな時でもどこへでも、都合のいいヒーローのように駆けつける」

    海原「そんな約束をした男がいたのですが……どうやら今回は守れなかったようですね」

    海原「まぁ、約束を破ったならず者への制裁は後にするとして」


    海原はそこで一旦言葉を区切ると、先ほどまで続けていた薄ら笑いを、酷薄な表情で塗りつぶす。



    海原「あの少女に危害を加えるというなら全力で阻止します」


    177: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:26:03.78 ID:K1NHkqdQo


    ステイル「悪いが、僕にも退けない理由があるんだ!!」

    どこから調達したのか、既にステイルの周囲には無数のルーンが再配置され魔女狩りの王が再生していた。

    ゴゥ!!という音と共に、魔女狩りの王は海原を灰塵に化す。



    否、化そうとした。



    海原「生憎と」

    海原の体のあちこちは煤けているが、普通に考えれば摂氏3000℃の炎の塊をまともに喰らってこの程度で済むはずがない。

    海原「自分は原典なんてものに余程好かれているようでして」

    海原の所持する2つの魔道書の「原典」

    それが持つ「自身の知識をより広める者に協力する」性質。

    それらは、所持者である海原を守るための防御機構を生み出し、反対に宿主に危害を加える存在へ容赦無く獰猛に爪を光らせる。


    海原「そんな理由など無くとも」

    海原は立ち上がると真っ直ぐにステイルを見つめ言い放つ。

    海原「ここで倒れるわけには行かないのですがね」


    178: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:26:48.81 ID:K1NHkqdQo

    ステイル「原典……だって……っ?!」

    彼は過去に二度、禁書目録という10万3000冊の魔導書を持つ「魔神」と相対している。

    例え1冊であろうと、その存在がどれだけ脅威かを彼は嫌というほど体験している。



    極度の緊張と不安で、普段の冷静さをステイル=マグヌスは失ってしまう。


    そこへ


    土御門「時間稼ぎゴクロー海原」

    響く「本物」の土御門元春の声。


    ステイル「っ?!」


    気が付けばステイルを中心として、東西南北四方向に折り鶴が配置され、陣のようなものが淡く光を放っている。


    179: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:27:21.22 ID:K1NHkqdQo




    土御門と海原がすり替わったのも。

    海原がこの緊急時に冗長なまでに一方的な会話をしたのも



    総てこのための布石。

    原典などという一撃必殺の隠し玉すらもフェイク。

    目の前の相手を穿てるのであれば、そして自分が守るべき者の為であれば、それが何であろうと利用する。誰であろうと裏切る。





    それが「土御門元春」

    それが「背中刺す刃(Fallere825)」


    180: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:27:47.31 ID:K1NHkqdQo


    土御門「――場ヲ区切ル事。紙ノ吹雪ヲ用イ現世ノ穢レヲ祓エ清メ禊ヲ通シ場ヲ制定」
        (それではみなさん。タネもシカケもあるマジックをごたんのうあれ)

    土御門「 ――界ヲ結ブ事。四方ヲ固メ四封ヲ配シ至宝ヲ得ン」
        (ほんじつのステージはこちら。まずはメンドクセエしたごしらえから)

    土御門「 ――折紙ヲ重ネ降リ神トシ式ノ寄ル辺ト為ス」
        (それではわがマジックいちざのナカマをごしょうかい)

    土御門「 ――四獣ニ命ヲ。北ノ黒式、西ノ白式、南ノ赤式、東ノ青式」
        (はたらけバカども。げんぶ、びゃっこ、すざく、せいりゅう)

    土御門「――式打ツ場ヲ進呈。凶ツ式ヲ招キ喚ビ場ヲ安置」
        (ピストルはかんせいした。つづいてダンガンをそうてんする)

    土御門「――丑ノ刻ニテ釘打ツ凶巫女、其ニ使役スル類ノ式ヲ」
        (ダンガンにはとびっきりきょうぼうな、ふざけたぐらいのものを)

    土御門「――人形ニ代ワリテ此ノ界ヲ」
        (ピストルにはけっかいを)

    土御門「 ――釘ニ代ワリテ式神ヲ打チ」
        (ダンガンにはシキガミを)

    ―土御門「―鎚ニ代ワリテ我ノ拳ヲ打タン!」
       (トリガーにはテメエのてを!)

    直後、ステイルを中心として資格を塗りつぶす程のまばゆい光が発生する。

    勝敗など、火を見るより明らかだった。


    181: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 00:28:13.90 ID:K1NHkqdQo

    あとに残ったのは海原と、夥しい量の血液を口から吐き出しながらも、何とか二本の足で持ちこたえている土御門の姿だった。



    土御門「悪いが、お前は手段を選んでいても勝てるような弱い存在じゃないのはわかっている」


    186: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:49:59.22 ID:K1NHkqdQo

    浜面「おいおい何だよあれ?!」

    インデックス「え、えっとかおりは聖人って言って、生まれた時から神の子に似た身体的特徴・魔術的記号を持っている人間で、偶像の理論により『神の力の一端』をその身に宿すことができ――」

    浜面「だーもう!もっと分かりやすく説明してくれよ!」

    インデックス「と、とにかく化物じみた身体能力とものすっごく強い魔術が使える人間!学園都市で言うところのみことやあくせられーたみたいな物かも!」

    浜面「なんでそんなのに俺ら追われてんだよ?!」

    インデックス「私だって分かんないよそんなの!」


    187: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:50:56.66 ID:K1NHkqdQo

    半ばちょっとしたパニックになりながら会話する二人と滝壺は、淡い水色の軽自動車に乗ってただひたすら学生寮から距離を離すように第七学区を奔っていた。

    寮の一室から逃げ出した浜面は、ただ事ではない様子に路上の車を拝借させて貰っていた。


    二人がこんなにも落ち着きを失っている理由は明白。

    聖人である神裂火織がその身一つで周囲の者をなぎ倒しながら、疾駆する車両に食らいついてきていたからだ。

    車の屋根の部分は既に切り落とされ、安っぽい即席のオープンカーが出来上がっていた。


    休日の真昼であるにも関わらず、当事者たち以外に周囲にはただの一人も人間がいないのは普段であればすぐに異常なことだと気付くが、彼らにそんな余裕はなかった。


    188: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:51:43.25 ID:K1NHkqdQo


    滝壺「何か。弱点とかって無いのかな?」

    普段はほんわりとした滝壺の口調にも焦りの色が混じっている。

    インデックス「え、えっとね、聖人は神の子に連なる強力な力を受け継ぐ一方で、神の子の弱点、処刑や刺殺の象徴と言ったものだね、そういったものも受け継いでしまっているの」

    滝壺「えっと…浜面より頭が良いつもりだけど、よく分かんないな……」

    無理も無い話だ、インデックスは禁書目録としての魔術サイドの天才、滝壺は学園都市の大能力者としての科学サイドの秀才。

    両者の間には絶対的な文化の違いという物が立ちはだかっている。

    インデックス「その、端的に言えばこの状況でかおりに一矢報いるような環境や人材はいないってこと、かも……」


    対策を知りつつも、何をすることもできない。

    「禁書目録」としてここまでの屈辱は無いだろう。


    189: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:52:46.47 ID:K1NHkqdQo

    浜面「落ち込んでも仕方ねぇ、何とかして逃げき――?!」




    あまりの驚きに声が出ない。

    突如として浜面が運転していた車両の自由が奪われ、全員が開けていた天井から投げ出される。



    浜面「がっ――?!」

    背中から地面に落下する。

    これ以上働きたくないと体中が悲鳴を上げるが――

    浜面「滝壺!インデックス!!」

    それら総てを振りきって、少し離れた所に落下した二人のもとに駆け寄る。


    浜面「大丈夫か……って」

    そこで浜面は、自分の背後から一筋の影が伸びているのを目にする。


    190: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:54:04.64 ID:K1NHkqdQo

    浜面「大ピンチだなぁおい。映画だったらここでカッコ良く脱却出来るんだけどな……」

    あまりの苦難に笑みすら溢れる。

    神裂「その子を、インデックスをこちらに渡して頂けませんか?こちらとしても事を荒立てるつもりはありません」

    浜面「いきなり人が死にかねないような事をしといて、そんなセリフを吐けるのは驚きだな」

    神裂「確かに、褒められた手段でないのは謝りましょう」

    神裂「ですが、これ以上のことは無いと誓いましょう……だからその子を――」

    浜面「嫌だね」

    浜面は口を開く。


    191: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:54:29.04 ID:K1NHkqdQo




    能力<チカラ>の有無など関係ない。




    才能など知った事ではない。


    192: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:55:02.43 ID:K1NHkqdQo


    浜面「何よりも守りたくて、でもそのたった一人の女の子を守ることも出来ない位弱っている奴がいた」

    浜面「誰に頼ることも出来ず、途方にくれていた女の子がいた!」

    浜面「お前らは!そんな奴らの中を引き裂くってのか?!」

    浜面「俺はそんなやり方は認められない」

    浜面「そいつらの笑顔を取り戻すまでの、たったそれだけの間くらいなら」

    浜面「『たった一人の大切な奴』以外の前でもヒーローだって何だってやってやるよ!!」


    193: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:55:38.19 ID:K1NHkqdQo

    神裂「そうですか……」

    神裂「どうしてこの子の周りには、こうも羨むべき信念を持った人間ばかり集まるのでしょうね」

    神裂「心苦しいですが、仕方ありません」



    鞘に入ったままの長大な日本刀が振り上げられる。

    浜面「くっ!」

    浜面は滝壺とインデックスを抱きとめ、神裂との間に割り込む。

    この程度で二人を守れるとも思わないが、そうせざるを得なかった。


    そして迸る鮮血が路面を濡らす。


    194: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:56:13.00 ID:K1NHkqdQo







    それは神裂の喉から溢れ出たものだった。


    195: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:56:55.16 ID:K1NHkqdQo


    神裂「がっ!……ぐふっ!!……聖人としての力の制御が安定しない?何が……?」

    困惑を隠せない神裂。

    だがそれは浜面も同様だった。


    浜面「おいおい……。一体どうしたってんだ?」

    見れば、傍らの滝壺が珠のような汗を額に浮かべている。

    浜面「滝壺?!どうした大丈夫か?!」

    滝壺「私だって……自分の居場所ぐらい守りたい」

    浜面「お前何か……っ!?」


    196: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:57:39.14 ID:K1NHkqdQo



    そこで浜面は幾つかの過去を思い起こす。

    滝壺が持つ大能力<レベル4>の能力追跡<AIMストーカー>

    それは他者の能力への干渉や乗っ取りも可能な能力であるらしいこと。

    かつて学園都市第二位の超能力者にすらそれを実行しようとし、失敗ながらも「順当に進めば八人目の超能力者になれたはずだった」とまで言わしめたこと。





    そしてその能力は、いずれは他者へ超能力を強制的に発現させることも可能になる可能性を秘めていること


    197: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 14:58:33.82 ID:K1NHkqdQo


    滝壺「はまづらだけじゃない」

    滝壺「わたしだって何かを守れる」

    インデックス「りこう?!凄く辛そうだけど大丈夫?!」



    学園都市の能力者に、ほんの微力でも魔術を使わせたらそれは紛れも無い致命傷だ。


    なら逆に、魔術師に無理やり、例えどんな小さな能力であろうとも強制的に超能力を植えつけてしまったら?


    その答えがこの現状。




    神裂の聖人としての力は制御を失い暴走した。



    神裂「何をしたかわかりませんが、私はここで退くわけには行きません!」

    神裂は先ほどの日本刀を振り下ろす。


    198: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 15:00:25.30 ID:K1NHkqdQo


    しかし力の制御を失った神裂の一撃は、普段から肉体を鍛えている男子学生ならばかろうじて受け止めきれる程にまで風化していた。





    浜面「タネも仕掛けもなくなりゃあ、ただの喧嘩だ!」


    浜面はその日本刀ごと神裂を地面に叩き伏せ、そして護身用に所持していた拳銃を向ける。



    浜面「才能の無ぇ能力者が、才能の塊の魔術師に打ち勝つ……魔術師と能力者の立ち位置が逆になっちまったなぁ?」


    199: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 15:00:55.67 ID:K1NHkqdQo







    浜面「楽勝だ――魔術師」


    200: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 15:01:26.10 ID:K1NHkqdQo

    浜面「いい加減諦めてくんねぇかな?」

    神裂「……」

    彼女は口を開かない

    浜面「諦めない、か」

    浜面は、人間は大切な物を守るためならどこまでも冷酷になれることを知っている。

    浜面「すまねぇが――」

    インデックス「待って!しあげ!」

    浜面「え?」

    インデックス「かおりは必要悪の教会、ええっと、私の所属する団体の同僚みたいなものなんだよ?」

    インデック「きっと、何か理由があるはずなんだよ?」

    インデックス「それを、教えてくれないかな?かおり?」

    神裂「それは……」


    201: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 15:02:25.25 ID:K1NHkqdQo


    「監督役の不在となったインデックスの回収、それに乗じて、魔術サイドの脅威となる『科学製の人工天使』を形成するミサカネットワークの破壊」

    神裂「っ?!」

    土御門「大方そんなところだろう?」

    会話に割り込んできたのは土御門だ。

    自分より20センチは大きいであろうステイルを軽々と抱えたまま近づいてくる。


    土御門「なぁ?イギリス清教、最大主教<アークビショップ>ローラ=スチュアート?」

    土御門がそこにいる筈のないイギリス清教の最高権力者の名を呼ぶと、そこかしこに撒かれ、「人払い」の役目を果たしていたルーンのカードの一枚から声が漏れる。


    202: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 15:04:00.32 ID:K1NHkqdQo


    ローラ『禁書目録のことは素直に褒めてやりけるけど、人工天使とは初耳なるのよ?』

    土御門「そうかい。じゃあこの際禁書目録についての話だけをさせてもらうよ」

    両者とも、同じ必要悪の教会に属する同胞だ。そして立場は格段にローラのほうが上だ。

    にも関わらずとても対等な話しぶりであり、そしてとても味方同士とは思えない程棘を含んだ空気に包まれている。

    土御門「監督役不在が理由なら、第三次世界大戦直後に回収を実行すればよかったはずだ」

    土御門「それがこのタイミング、監督役の不在にかこつけて、禁書目録を使った「何か」の準備ができただけじゃないのか?」

    ローラ『話が見えぬことになりけるのよ?』


    女狐が。

    内心土御門はそう吐き捨てる。


    203: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 15:05:19.94 ID:K1NHkqdQo


    土御門「それに、今回のイギリス清教から学園都市へ、明確な攻撃の意思だ。これ以上続け、事を公にするようなことになれば、統括理事長も黙っていないと思うぞ?」

    含みのある笑みで、言葉を紡ぐ

    土御門「案外、禁書目録についての行動も、黙っていないかも知れんな?」

    ローラ『……』

    ほんの一瞬だが、最大主教のふざけた雰囲気が姿を消す。

    土御門「近いうちに、監督役が戻ってくればいいんだろう?今捜索中だよ、きっと見つかる。そうしたら何も問題ないだろう?」

    ローラ『土御門』

    土御門「何だ」

    ローラ『お前は何故そのような情報を私にひけらかしけるの?』

    土御門「それは俺が『どこに所属する人間か』を考えれば考えるまでもないと思うがな?」

    ローラ『面白い事をいいけりしものね。いいわ。そうしたりけるなら私も今しばらく様子を見させて貰わんのことよ?』

    ローラ『神裂、ステイルを連れて一度ロンドンに戻りなさい』

    そこまで言うと、ルーンのカードは沈黙する。


    204: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 15:06:57.57 ID:K1NHkqdQo

    土御門「だとよ。ねーちん?」

    神裂「土御門。あなたは……」

    土御門「別に特別なことはしてないんだぜい?ありのままを話しただけだにゃー」

    土御門「それに上の命令だ、早く帰ったほうがいいんじゃないかにゃー?」

    神裂「あなたという人は……」

    とても小さな、土御門だけに聞こえるような声で呟く

    神裂「正直、私達もあの子を上条当麻から遠ざけるのはとても心が痛みました。ですがこちらにも、それをせざるを得ない理由がありました。それを止めてくれたことに、礼を言わせて下さい」

    言うと、神裂は土御門の返事を待たずに気を失っているステイルを受け取り、たった一歩の跳躍で一行の目の前から姿を消した。

    土御門「ひとまずは安心かにゃー?」

    浜面「前から思ってたけどお前何もんなんだよ?暗部でも働いてたみたいだし……」


    土御門「はっはっはー!俺はメイドの国の秘密警察なんだぜい!俺の行動はすべてメイド帝国の未来に繋がるんだにゃ―!!」

    浜面「だー!!何だこいつやっぱりろくでもねぇぇぇっ!!?」


    205: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/19(日) 15:07:46.82 ID:K1NHkqdQo



    ――




    土御門(この不安定な世界情勢の中で、イギリス清教まで行動を起こすとは……。今の世界ろくでもない思惑が渦巻き過ぎている)




    土御門(カミやん、お前は今どこにいるんだ――?)


    210: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:51:06.13 ID:ipBViuAFo

    11月23日
    イギリス、ロンドン市街――

    はっきりとしない空模様と、歴史を感じさせる街並みの中を三人の男女が歩いていた。

    一方通行、御坂美琴、番外個体。


    数日前、突如として立ちはだかった魔術師達に打ちのめされた彼らだが、幸い命に関わるような重症には至らず、また一方通行の能力のお陰もあって極めて良好な状態にまで回復していた。


    美琴「ほんとあんたの脳力って何でもありよね……。止血くらいは何とか理解できるけど細胞の分裂や傷の治癒の速度まで思いのままなんてねぇ」

    一方通行「元からそこに存在している物質で、向き(ベクトル)が存在し、俺が触れている。その条件が揃えばどォとでもなンだよ」


    211: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:51:38.24 ID:ipBViuAFo

    一方通行「それより」


    彼らは、先の魔術師達を探していた。

    詳しい理由は知らないが、彼らは上条当麻の存在を快く思っては居なかった。それどころか、「処分」しようとしている節すらあった。

    そんな人間達を野放しにしてはおけない。

    それが三人(主に美琴だったりするが)の見解だった。


    一方通行「あのクソ野郎共、誰相手に喧嘩売ったのか痛ェぐれェ思い知らせてやるよ」

    美琴「何よ?悔しかったの?」

    一方通行「あァ?二人がかりでもボコボコだった格下にゃ言われたくねェなァ?」

    番外個体「なになに?痴話喧嘩?」ニヘラ

    電磁通行「あ゛?」ギヌロ

    番外個体「~♪」クチブエー

    番外個体「て、っていうかさ、あの赤いのと青いのどうにかするっつったってどこに居るのさ?」

    美琴「えっと……あぅ」

    一方通行「ンなことも考えてなかったのかよ格下」

    美琴「だから格下言うな」

    一方通行「事実だ」

    美琴「だーもうっ!!じゃあどうするっていうのよ!教えろ下さいお願いします学園都市最高の頭脳サマ!!」


    212: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:52:18.91 ID:ipBViuAFo

    一方通行「『強制力のない居心地の良さ』を利用した網の目っつゥもンはこの地球上どこにだってあるもンだ」

    電磁番外「?」

    一方通行「簡単なもンで言えば、日の当たりの良い所と悪い所の違いでの地価の変動とかだなァ」

    一方通行「あいつら魔術師って奴らは、そいつに干渉することが出来る」

    一方通行「『地脈』や『龍脈』を利用した『風水』っつゥらしいな」

    一方通行「その干渉が本当に魔術なンてオカルトなもンなのか、統計学的に導き出される科学に基づく手法なのか、ンなもンはどうでも良ィし分からねェ」

    一方通行「だが、一定範囲内の人間の流れを観測し、明らかに普通じゃねェ違和感を見つけることぐれェは俺にも出来る」


    一定範囲内、といってもそれは一都市総てを見渡す程の物であるし、そもそもそれは彼の持つ「ベクトルを観測する能力」の範囲を逸脱して魔術の領域に達していると言っても間違ってはいないだろう。

    その「魔術のようなもの」を行使するのは3度目ではあったが、彼はその観測作業にあたって細心の注意を払って能力のバランスを調整していたし、その均衡を少しでも誤れば血風船の出来上がりだったことだろう。

    だがその事実は彼の口からは発せられない。言っても意味のないことだし、そもそもその程度で行動を改めるなどということはあり得ないことだ。

    一方通行「干渉された土地に何かの理由で俺ら、能力者が立ち入っちまうと一部能力の制御を乱されることもあるみてェだな」


    213: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:52:49.62 ID:ipBViuAFo

    美琴「うーん……もしかしてあの時のってそうだったのかしら?」

    一方通行「もっとも、無意識下で興味を逸らされてやがる土地に近づくことなンて……あァ?」

    美琴「いや、いつだったかあのバカを探してたら不自然なくらい人が居ない場所に出ちゃってね?結局会うことは出来たんだけどその時何だか能力の制御に違和感が……」

    番外通行「」ジトー

    美琴「な、何よ?」

    一方通行「いやァ……」

    番外個体「男追って魔法打ち消すってどうなの?おねーたまの重――い愛はオカルトを凌駕するの?」

    美琴「あ。あああああ愛ぃ?!な、なな何でそうなるのよ!?別にそういうので探してたわけじゃごにょごにょ……」

    一方通行「突っ込むのはそこ以外にもあると思うンだがなァ……」

    美琴「って、ていうか何であんたそんなに魔術?に詳しいのよ?この前話を聞いただけって言うにはちょっと博識すぎじゃないの?」

    番外個体(なんて無理のある話題のそらし方……)

    一方通行「ちっとばかし、なァ」

    一方通行「ともかく、あいつらがいると思わしき『違和感』はもう掴ンでる」

    美琴「っ!……どこなの?」

    場の空気から穏やかな色が失われてゆく。


    一方通行「だだっ広い荒野に道路が一本通ってる地域があるンだが、バスも一般車両も徒歩の人間も、不自然な周り道をして『そこ』を避けてやがる。俺らを誘き寄せた時と同じ力が、前とは逆に絶対に人を近づけねェ様に細工してやがる」

    一方通行「十中八九そこにいるだろうなァ」


    214: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:53:44.55 ID:ipBViuAFo



    ――


    一方通行が指し示した場所に赴くと、先の魔術師達が確かにそこにはいた。

    フィアンマは、何も無い虚空に向かって何事か喋りかけているし、その傍らでアックアは何やら仰々しい装飾の施された杖やら剣やらを無数に広げ何事か考えを巡らせている様だ。



    そこに


    一方通行「おい、愉快な色彩の三下共」

    電磁番外(どう考えてもあっちの青いのよりあんたが常軌を逸した色合いだけどね)



    一方通行「あの野郎に何する気か知らねェが」

    一方通行「オマエらの好きにはさせねェよ」



    アックア「……次は無いと言ったはずであるが」

    フィアンマ「余程死に急いでると見えるな」




    美琴「争いの芽だか何だか知らないけど、私ら多数の為に極少数を犠牲にするなんて大人な考え方はできないの」

    美琴「誰もが笑えるハッピーエンドってやつを望むのが頭の悪いことだって言うのなら」



    美琴「バカで結構よ」

    番外個体「えっと……同じく?」


    215: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:54:10.34 ID:ipBViuAFo

    アックア「貴様らの様な者たちには決して分からぬ事情もあるのであるが……どうやら何をしても退かぬようであるな?」

    フィアンマ「世界という物の広さも知らない野郎の戯言に付き合うつもりもないのだが」

    フィアンマ「これ以上邪魔立てするというのなら、二度とそんな気を起こさせない様にするまでだな?」



    それぞれの信念を掲げた2つの領域の怪物たちの狂宴が幕を開ける。


    216: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:54:53.83 ID:ipBViuAFo

    ゴッ!という轟音と共に一方通行がフィアンマへ弾丸のように突っ込む。

    前回と同じ光景だ。

    フィアンマ「当てる相手を見定めることも出来ぬか。アックアはお前との相性はなかなかだと思うがな」

    一方通行「生憎だが」

    一方通行「こちとらあの顔した一万弱のガキどものお守りしてンだよ」

    フィアンマ「大層な理由だが、俺様を止めれる理由になるとは思えんな」

    一方通行「倒せるかどォかはなンざ関係ねェ、叩き潰すだけの理由がありゃあ十分だ」


    217: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:58:10.67 ID:ipBViuAFo


    ――


    アックア「ふむ…。何度もしつこく向かってくる者は過去にも居たのであるが」

    アックア「覚悟しろ。我が戦場に立つというなら、蹴散らす他に道はない」



    美琴「勝てる勝てないじゃない、助けたいから立ち向かう…。あんたが一回叩きのめしたっていうどっかのバカも同じだったはずだけど?」

    アックア「それが余計に腹立たしいのである」

    美琴「悪いけど、これ以上あんたに道を譲る気は無いわ」

    アックア「笑わせるな」

    アックアが口を開くと、複数個の水で出来た球体が空中に生じ、大きさを増し美琴に向かってゆく。

    だが。


    美琴「あの時は魔術なんてもんに面食らっちゃったけれど、あんたのその水を操る力はそう常軌を逸した様な物じゃないわ」

    それは美琴の周囲でうねる無数の砂鉄で出来た蛇によって喰らい尽くされる。

    美琴「私達の物差しで言うところの大能力者<レベル4>ってところかしら?」

    アックア「これほどの魔術に対しその程度の認識なのは感心するのであるが」

    アックア「私は魔術師であると同時に、聖人でもあるのだよ!!」

    アックアが手にしたメイスを無造作に振りぬく。

    だがそれだけで十分過ぎる射程と速度を誇っている。


    218: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:58:52.89 ID:ipBViuAFo

    番外個体「おねーたま!」

    戦火の中心から離れた場所にいた番外個体が、アックアのメイスに対し磁力で干渉しその速度をほんの少しではあるが弱める。


    美琴は電磁波により周囲の状況を確認できるのだから、メイスを視認できる必要はない。

    能力の補助もあり、すんでの所での回避に成功する。

    美琴「そう簡単には行かないか……」

    番外個体「っていうか何あの馬鹿力?!おねーたまほどじゃないにしろ常人が力でねじ伏せれるような磁力だと思わないんだけど?!」

    それが聖人

    生まれ持っての多大な才能を余すところ無く発揮する「神の子」と同等の存在。


    アックア「なぜあの男のためを救う?あの男の右腕が原因で第三次世界大戦が起き、今もまたこの気付かれざる騒乱の中心にはあの男がいるのだ」

    アックア「争い、災いのもとでなくてなんと言う?」

    彼は、この状況にあっても、少女たちの真意を知ろうとした。

    知りたかった。


    219: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 19:59:43.32 ID:ipBViuAFo

    美琴「世界大戦がどう、争いがどうなんてのは私は知らないわ、ただ」

    美琴「何かのために摘まれなきゃならない命があるなんて認めるわけにはいかない」

    かつてそのような宿命を持って生まれた一万もの少女達すら、「生きる意味」という物が存在するのだ。
    いや、生き抜かせてやらなければいけない。

    アックア「それは世界を知ることのないものの戯言であろう?当人にその意思がなくとも、その存在が眼鏡となっているのだぞ?!」

    次第にアックアの語気も荒いものになってゆく。



    美琴「確かに世界なんてもの私は知らないわ……。そんな大それたものを見据えて物を言えるあんたは凄いと思う」

    アックア「ならなぜそうも言い切れる?理想論で塗り固められた笑顔だけの結末など、存在しないのである!」

    アックア「だから私はその流された涙の理由を変えると誓ったのである!!」


    220: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 20:00:19.71 ID:ipBViuAFo

    美琴「あんたも見たことあるんじゃないの?」

    美琴「どんなに最低な地獄の底のような場所からでも」

    美琴「ハッピーエンドをつかみとる馬鹿ってやつを」

    美琴「一度は自分の間違いに気づいたんじゃないの?本当に変えなきゃいけないものに気付いたんじゃないの?」

    美琴「あんたはきっと立派な人間だったんだと思う。きっと当たり前のように助けを求める人間を救ってきたんだと思う」

    美琴「争いを止めるためとは言いながらも二度も自分で納得しきれない、犠牲を出すような選択をした自分を呪っただろう。自分の非力さを恨んだだろう」

    アックア「貴様のような小娘にとやかく言われる筋合いはないのである!!」

    自然と発してしまう否定の言葉。
    だがそれは彼が認めたくないだけのことではないのだろうか?

    美琴「あんたの出した答えの内容に文句を言えるような人間じゃないし、何を言えば良いのかなんて分からないわよ」


    221: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 20:01:30.12 ID:ipBViuAFo



    美琴「でもね」

    美琴はそこで一旦言葉を区切ると、改めて強い眼差しでアックアを見据える。






    美琴「納得できない答えに無理やり納得しようとしてる人間の気持ちくらいわかるわ」


    妹達を救うために何も出来ず、最後には自分を犠牲にするなどという手段に訴えかけようとしたからこそ。

    その選択に真の意味で納得していなかったからこそ。

    美琴は魔術師にその言葉を紡げる。







    美琴「本当の自分押し殺して、最善策だと思って我を通し続けてんじゃないわよ!!」




    アックア「っ!!」

    美琴「あんたにはどっかの小娘に説教たれたような存在がいなかったのかもしれない。だから」

    美琴「私があんたを止めてみせる!!そんな悲しい選択なんてしなくても、笑顔は作れるって教えてあげる!!」


    222: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 20:02:03.67 ID:ipBViuAFo

    アックア「驕るなよ小娘が!!!」

    ゴバッ!!

    アックアの持つメイスが美琴のすぐ脇の地面を抉りとる。

    美琴も番外個体も、まるで反応など出来なかった。

    アックア「理想を語るのも結構であるが、貴様に私を止められるとは思わんな。事実今頃死んでいてもおかしくない状況である」


    223: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 20:02:28.00 ID:ipBViuAFo




    こんな人間に敵うわけがない。怖い逃げ出したい。

    今すぐこの圧倒的な暴力に屈してしまいたい。


    美琴「……いわよ」


    224: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 20:03:07.07 ID:ipBViuAFo






    だがそれは、あの少年が自分を助けようと学園都市が産み出した怪物へ立ち向かった時も同じではなかったのだろうか?


    225: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 20:03:49.73 ID:ipBViuAFo






    あの少年は自分と同じような人間とその周りの世界を幾つも救ってきたのではなかったか?





    そうならば





    その数だけこの恐怖と立ち向かったのではないのか?


    227: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 20:04:26.69 ID:ipBViuAFo



    美琴「ふざけんじゃないわよっ!!」



    それは目の前のどうしようもない現実に対する不満か、自分自身に対する糾弾か。

    美琴「例えあんたを止めることができなくても、私は退くわけにはいかない!!何千何万とあんたの前に倒れても、何度でも立ち上がる!!あのバカがそうしたように!!」


    228: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 20:05:18.95 ID:ipBViuAFo




    アックア「そうか」





    アックア「残念だ」


    今度こそメイスは、御坂美琴目掛けて無情にも振り下ろされる。


    233: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:06:31.57 ID:ipBViuAFo


    だがそれは、美琴の眼前でピタリと静止する。


    アックア「な……に……?」

    美琴「言ったでしょ?」

    美琴「退くわけにはいかない」

    アックア「先の少女より格上の能力者だとしても、聖人としての力を受け止めれるはずが……?」

    アックアの顔に、初めて明確な困惑の表情が浮き出る。



    美琴「学園都市第三位、舐めないでほしいわね」


    234: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:08:26.73 ID:ipBViuAFo

    これが超能力者。

    大能力者との間には圧倒的な壁があり、軍隊一つと互角に渡り合える戦力。

    美琴「未熟な末妹と比べられちゃ困るの」

    番外個体(微力ながら今も助力してるんだけどなミサカ。まぁそれでも10%に満たないとかミサカの存在意義あるの?あれ?こういう状況っていわゆる『ブーメラン』ってやつ?)

    番外個体(それにしても、さすがに超能力者のおねーたまでも、あんだけの馬鹿力を磁力で阻害するのは難しいと思うんだけど。恋は盲目、自分だけの現実にまで影響しちゃったかにゃーん?ぎゃは☆新しいネタじゃねこれ?)

    美琴はそのまま、超電磁砲の要領でアックアごとメイスを射出する。

    アックア「っ!!」

    アックアはすかさずメイスを手放し着地する。

    ほんの一瞬の事だったが既に美琴とアックアの距離は既に50メートル以上も離れていた。




    だがそれは聖人であるアックアにとってはほんの一瞬で詰められる距離。

    何より少女一人程度、素手でも問題なく粉砕できるだろう。


    対して美琴の方にはこの距離での有効な攻め手がない。






    番外個体がそんなことを考えたときには既に。美琴とアックアの間の地面が一直線に引き裂かれていた。


    235: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:08:52.69 ID:ipBViuAFo








    美琴からアックアに向かって。


    236: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:11:10.21 ID:ipBViuAFo

    番外個体「あ、地殻破断<アースブレード>?!」

    学園都市の超音速ステルス爆撃機に搭載された大型ブレードが、引き裂いた大気の刃に砂鉄を混ぜ、時速一万キロオーバーの速度を乗せることで摂氏8000度を超える気体状のブレードを生み、目標点を爆撃する学園都市の最新鋭兵器。



    それを美琴は、磁力により周囲数百メートルの砂鉄を手中に収めることで、人間一人で再現していた。


    番外個体「しかも、砂鉄のブレードを二重に撃ち出すことで初撃を大気を引き裂くブレードに代用してるとか……」



    番外個体「大能力者と超脳力者に間にもう3つくらい階級分け必要なんじゃないの?」




    ブレードが通過した後の地面はあまりの高熱にマグマと化し、オレンジ色に発光している。


    237: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:14:31.28 ID:ipBViuAFo

    アックア「近代兵器の力如きで神の子と聖母の二重聖人を超えられると思うな!!」

    アックアはそれをものともせずマグマの中を突き進む。

    美琴「超能力者を兵器なんかと同等と思うな!!」


    一度通り過ぎた相当量の砂鉄は、姿を巨大な竜巻に変えアックアに再度牙を剥く。

    それら総ては高速で微振動を繰り返し明確な殺意を秘める。

    過去に一方通行に対し同じ攻撃をし、その際は傷一つ付けられなかったが、常人が飲み込まれればミンチどころか肉片の一つも残らない代物だ。



    その攻撃は初めてアックアに対し効果を現す。

    アックア「ぐ……ぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!!」

    その衣服の端々や、顔には少しづつ、だが確実に着実に傷が付いてゆく


    アックア「こんなもの、目眩ましにしかならんのであるっっ!!」



    にも関わらず魔術師の歩みを止めることは叶わない。

    その青は壊滅的な視界の悪さにも関わらず真っ直ぐに美琴へ向かう。

    もうアックアと美琴の距離は5メートルもない。

    しかし


    238: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:15:40.25 ID:ipBViuAFo


    アックア「っ!?」



    そこでアックアは明確な「痛み」を感じる。

    その顔が初めて歪む。


    アックア「?何が……?!」

    周りで猛り狂う砂鉄の嵐により視界が遮られるアックアの耳に美琴の声が響く。


    239: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:16:54.61 ID:ipBViuAFo




    美琴「あんた、確か「聖人」ってやつなのよね?」


    240: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:17:59.20 ID:ipBViuAFo

    美琴「神の子だ、聖母だなんてオカルトなことを信じる気なんてさらさら無いけど、要はプロのスポーツ選手なんかと同じ。大きな力を持つ者に共通する身体的な特徴が、たまたま生まれつきあるだけじゃないの」

    美琴「決してそれは完全な非科学なんかじゃない、ある一定の法則に基づいてる物よ」

    美琴「言うなれば『ミチのてくのろじー』ってところかしら?私の友達がもの凄く好きそうな響きね」



    そう美琴が話している間も、アックアを襲う痛みは強さを増してゆく。


    241: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:19:10.91 ID:ipBViuAFo


    美琴「そして、その一定の法則にならって、あんたみたいな奴らにも弱点はある」

    美琴「確か、神の子の処刑を再現した刺殺の象徴としての「槍」なんかにも弱くて、その馬鹿みたいな規模の力の制御に影響を及ぼすとか?」

    アックア「それが分かった所で何の……ぐぅっ!」

    美琴「私が今バチバチやってるこの雷撃、一応『雷撃の槍』って呼んでるのよねー」

    アックア「っ?!」


    242: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:19:50.68 ID:ipBViuAFo


    美琴「魔術っていうのは……えっと、何だっけ、偶像の理論?」

    美琴「とにかく形の似たものに、元となった物の力が宿るとか何とか」

    美琴「それならこの雷撃の槍も十分な効果が見込めるわよね?」

    アックア「そんな付け焼刃でなんとかなるもの……では……っ!!」

    頭ではそう思うが、事実彼の体中は悲鳴を上げ、その力は今にも暴走寸前だ。


    243: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:20:31.70 ID:ipBViuAFo

    美琴「学園都市の超能力者舐めないで欲しいわね」

    美琴「超能力っていうのは、物理法則を捻じ曲げて超常現象を起こす力。自分だけの現実でミクロな世界を操る能力を土台とし、『起こりえない』ことを『起こる』と思い込むことで超常現象の実現に結びつける能力<チカラ>」


    244: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:21:00.95 ID:ipBViuAFo





    美琴「今この場は、紛れも無く神の子の処刑の瞬間そのものよ」


    245: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:21:36.08 ID:ipBViuAFo

    そう言うと、美琴はいっそう雷撃の槍の出力を強める。





    美琴「私達があのバカ取り戻すまで、そこで大人しく反省してなさい!!」





    全身全霊を込めた雷撃はアックアの聖人としての力の制御を暴走させ尽くす。


    アックア「ぐぉぉぉぁぁあああああああッッ!!」


    力の制御を失ったアックアは、その暴走により一時的に無防備になり。そこを美琴の雷撃に貫かれた。


    ただの人間に成り下がった後方のアックアを行動不能にするには、それで十分だった。


    246: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:22:27.49 ID:ipBViuAFo

    美琴「水に雷撃」



    美琴「こうかはばつぐんだ!!ってね」

    番外個体「電気使うし人気キャラだしおねーたままじピカty」

    美琴「おいばかやめなさい」





    アックア「私は……」

    美琴「っ!こいつ、まだ……?!」


    247: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:25:29.67 ID:ipBViuAFo

    アックア「私はまた、道を誤っていたのだろうか?」

    美琴「……」


    彼に先ほどまでの敵意はなくなっていた

    美琴との戦いの中で、彼自身も何か思うところがあったのだろうか。


    美琴「さあって、ね」

    美琴「私が力で正論を叩き潰した暴君だった、なんてこともあるかも知れないわよ?」

    アックア「口の減らない小娘である」

    美琴「そりゃどうも」

    アックア「私達の道を、言葉で分かれとは言わんし、この状況ではもう止めることも叶わないのである」






    アックア「行け、貴様は貴様が信じる行いをただ無言のままに実行すれば良いさ」

    美琴「……ありがとう」



    どちらが正で、どちらが負か。

    そんなものは表裏一体。

    見る角度が変われば幾らでも解釈は変わる。

    彼女はそれを理解した上でなお、少年を救うために青の魔術師に背を向ける。


    248: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:27:03.71 ID:ipBViuAFo



    ――


    フィアンマ「あの男を連れ戻しに行く、か。正気とは思えんな」

    フィアンマ「幻想殺しのあの男は既に別人言っても差し支えないと思うがな?」

    一方通行「あ?何言ってンだオマエ?」



    美琴と番外個体がアックアと交戦している同時刻、一方通行もまた、右方のフィアンマと対峙していた。


    フィアンマ「あの男には人として『誤差』が生じているよ」


    フィアンマ「第三次世界大戦で俺様と戦ったのちに何があったかは知らんが、戦争を集結させた『上条当麻』という人間はもう存在しないな。ある意味での『死』を迎えたとでも言うのかね?」

    フィアンマ「上条当麻を追い求め『グレムリン』が何やら行動を起こす。その裏に隠された真意など知らんし探る気もないが、やつらがあの男を狙っており、その過程で騒乱が起き、歴史は血塗られているのは明らかだろう」

    一方通行「それが何だってンだ?」


    249: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:28:01.73 ID:ipBViuAFo

    フィアンマ「そこであいつは、自分がある種特別な存在だから周囲に不幸をもたらしていると考えている。だからそこから繋がる悲劇を食い止めないことには自分には元いた世界に戻る資格は無いのだ、だから独りでケリをつける」

    フィアンマ「大方そんなことを考えているのだろうな」

    フィアンマ「しかしそんなものは、大きな力を持つ余りに『世界を救ってやる』等と考えて第三次世界大戦を引き起こしたどこかの大馬鹿者の思考と根本では変わらんよ」

    一方通行「……」

    特別なチカラを持つが故の過ち――

    それは一方通行自身にも経験のある話だ。

    それ自体は渦中の無能力者によって止められているが。


    250: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:30:14.49 ID:ipBViuAFo

    フィアンマ「そしてあの男は、決してそんな人間ではないはずだ」

    フィアンマ「例えあいつ自身だとしても、あいつが救った世界を踏みにじらせるのを認めはしない」

    その目に宿る強い意志。

    彼が第三次世界大戦を引き起こした当時には決して無かったもの。

    フィアンマ「だから俺様はあいつを止める、手段など選んで要られる状況ではない」


    一方通行「何やら大層な理由を並べ立ててるみてェだが」

    一方通行「自分が憧れた奴が、自分の描いたヒーロー像と食い違ったからってだだこねてるよォにしか見えねェなァ?」

    一方通行「もっともらしい事言いつつも、結局はそォだろ?」

    一方通行「あの無能力者に目ェ覚まして欲しいのはこっちも同じなンだよ。そンで言いてェことも山ほどあンだ。ここで止められるわけには行かねェし」

    一方通行「何よりオマエのやり方は気に入らねェよ」



    我ながら、柄に合わない。

    一方通行は冷めた眼線で自分を評価する。

    だが誓ったのだ。

    あの少女の日常を守るためならば似合わないことでも何でもすると。



    一方通行「おとなしく潰されてくンねぇかヤサ男?」

    フィアンマ「理由を聞いてもなお引かないか、余程頭が悪いと見えるよ」


    251: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/20(月) 23:31:34.98 ID:ipBViuAFo

    学園都市230万の頂点とローマ正教20億の頂点

    科学の怪物と魔術の怪物


    かつてその大きすぎる力故に道を誤った者

    そして右腕一本と揺るがない信念のみで挑んできたとある少年に暴走を止められ、その後の「自分」というものに大きな変化をもたらされたもの


    決して交わることのなかった二つの規格外が、たった一つの共通項から交差する――。


    257: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 19:54:30.52 ID:hiN/8Bluo


    フィアンマ「友のために身を挺するのは結構なことだが、そんな感情論でどうこうできる問題ではないと思うな?」


    フィアンマの右肩から歪で巨大な右腕が浮かび上がり鈍く輝く。


    聖なる右


    フィアンマの身に宿る、デタラメな力。



    それを初撃から惜しげもなく一方通行に向かって放つ。


    だが――


    フィアンマ「……ほう?」


    一方通行の衣服は乱れ、その白く整った顔立ちには擦り傷が目立っている。


    だがそれだけ。



    振られただけで全てが終わるその右手を受けて、一方通行は未だ二本の足で立っている。





    258: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 19:56:50.21 ID:hiN/8Bluo

    フィアンマ「何の考えも無かったわけではないようだな?」

    一方通行「そういうオマエは馬鹿の一つ覚えみてェだな?」



    フィアンマ(どういう原理かわからんが、俺様の聖なる右を受けてあのような中途半端な状態とは……無効化されたわけでも無ければ、通常の効果が望めたわけでもない様だ。理解に苦しむね)

    一方通行(一回喰らってるンだからもォちっと上手くあの右腕の『ベクトル』を掴めてると思ったんだがなァ。ったく、魔術ってのはどォなってンだクソ野郎?)



    一方右方(だが)



    二人の天才が目まぐるしく思考を展開させる。

    初めに動きを見せたのはフィアンマ。

    フィアンマ「反射、というやつか…。聞いた話の通りだ。お前がどの程度この右腕を理解しているかが如実に効果として現れるようだね」

    フィアンマ「一度喰らっただけでこの聖なる右を受けて立っていられるほどに理解するとはね……素直に褒めさせてもらうよ」

    無数の炎が一方通行へ噛み付いていく。



    フィアンマ「しかしあくまでそれは不安定だ、他の魔術に対しても同様。その証拠にある程度のダメージは通っているようだな?」

    一方通行「はっ。自慢の一番槍耐えられて負け惜しみかァ?」

    フィアンマの言葉通り、一方通行は無数の魔術の炎に「完全な反射」を適用することが出来ずにいた。

    それは時に彼自身の体に傷を残してゆく。


    259: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 19:58:29.00 ID:hiN/8Bluo

    フィアンマ「そして何よりそのチョーカー」

    フィアンマ「何でも貴様の能力はそのチョーカーの電力供給がないと使用できないそうじゃないか。稼働時間は最大で30分」

    一方通行「チィッ!!」



    一方通行はフィアンマのもと元へ音に迫る速度で迫る。

    自分の周囲の自然物のベクトルを操作して攻撃、とも考えたが彼の周囲にはフィアンマの放った魔術の炎が蠢いている。

    自分が手中に収められないベクトルを持った現象が干渉している以上。それを操ることで彼自身に反動が来ないとも言えない。

    それ故の選択。




    一方通行「その前に叩き潰しちまえば関係ねえだろ?」

    フィアンマ「逆に言えば俺様がその時間まで耐えれば何もしなくともお前は倒れるのだろう?」


    260: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 19:59:34.90 ID:hiN/8Bluo


    その速度を以ってしてもフィアンマを捉えきる事は出来ず、一方通行へのダメージは着実に蓄積してゆく。

    一方通行「がァァっ!!」

    膝を付く。

    その一瞬で、フィアンマの爆撃は何倍にも速度を増す。


    フィアンマ「時間制限付きの怪物とは……。能力者というのも随分と弱者へのハンディキャップがしっかりしているものだな?」


    そう言うフィアンマの頬に何かが掠る。


    フィアンマ「ん?」


    それは彼自身が撃った炎だ。


    たまたまうまい具合に反射が機能したのだろうか?

    炎の発射点であるフィアンマの左手へ向かっていない時点で完全な反射とは呼べないだろう。


    261: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:00:52.02 ID:hiN/8Bluo


    しかし、



    頬から始まり、肩、足元、首筋。

    様々な部位にフィアンマの炎が舞い戻ってくる。

    それはまるで


    「あえてフィアンマ自身を傷つけない様にする」意思が息づいている様な挙動


    フィアンマ「何……?」




    262: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:01:27.20 ID:hiN/8Bluo


    一方通行「どうしたヤサ男?俺ァ別段驚かれるよォな離れ技やった覚えはねェンだがなァ?」


    傷だらけの一方通行だが、その表情には不敵な笑みが張り付いていた。



    フィアンマ「馬鹿な……?完全な魔術の反射、いやベクトル操作だと……!?」

    フィアンマ「なぜ魔術を…いや、能力者に魔術は使えないはずだろう?!」



    一方通行「馬っ鹿じゃねェの?魔術なンざ使ってねェンだよ」


    263: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:02:57.52 ID:hiN/8Bluo

    一方通行「雷のベクトルを操るのに雷が使えなきゃいけねェ理由がどこにあンだよ?それと同じだろォが三下」

    フィアンマ「馬鹿な、俺様の術式を理解しているというのか?科学の者であるお前らが?!」

    極めて冷静だったフィアンマの落ち着きが薄れゆく。



    一方通行「知りゃあ良いだけの話だろォが」

    一方通行「まァもっとも、今は辞書引かねェとわからねェがな?」

    フィアンマ「魔術の辞書だと!?そんなもの――…」



    そこまで言いかけてフィアンマは思い当たる。

    魔術の辞書。

    量り知れない量の魔術の知識。




    それはかつてフィアンマ自身も恩恵を受けていた物だということを。


    264: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:04:50.33 ID:hiN/8Bluo

    フィアンマ「っ!まさか……禁書目録!?だが奴は今学園都市にいるはず…」


    一方通行「電子辞書って知ってるかァ?前時代人間?」


    フィアンマ「電子辞書……データ化だと?!ありえん!!そもそもあの精神汚染に直接触れられる人間がいる筈が無いだろう!!」

    一方通行「データってのは厳密に言やァ0と1の集まりだ」

    一方通行「あの暴食シスターの頭の脳波もな。内容まで触れる必要は無ェんだよ」

    一方通行「それをすべて観測、再現しあのガキを介してネットワークに保存すりゃァいつでも呼び出せる」

    一方通行「オマエの言うオレの弱点であるこのチョーカーがあるからこそ、なァ?」

    一方通行「ま、ネットワークを介してチョーカーから情報を受信する、なンてふざけた使い方、今まで一度だって試したこと無ェがな」

    それは、学園都市最高の頭脳を持つ彼にしては珍しいことに、分の悪い掛けだった。


    一方通行「ともかくあとは、オマエの攻撃を解析して検索かければヒットってわけだ」


    265: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:05:30.45 ID:hiN/8Bluo

    フィアンマ「103000冊を短期間の内に、あろうことかデータ化だと…!?そして即座に解析、検索、出力……」

    フィアンマ「なりほど……『粒子加速演算装置(アクセラレイター)』とは、良く言ったものだ……」

    焦りを通り越し、関心すらしてしまう。その頭脳に。


    266: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:06:10.37 ID:hiN/8Bluo



    一方通行「悪ィが――」





    一方通行「こっから先は一方通行だ」






    一方通行「オマエの攻撃はもう俺に届きゃしねェよ」







    267: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:08:38.76 ID:hiN/8Bluo

    刹那、一方通行の周囲で猛っていた炎は、主であるフィアンマへ牙を剥く。

    フィアンマ「ぐっ……!この……!」

    フィアンマ「忘れたか!俺様にはこの聖なる右があるんだよ!!」

    フィアンマの右肩に再び不恰好な巨人の腕が顕現し輝く。



    だが。



    今度こそ一方通行は聖なる右を受けつつも微動だにしない。


    それどころか、正体不明の光の帯が一方通行からフィアンマへ伸びていた。

    フィアンマは間一髪それを避ける。

    フィアンマ「何……?!今度は相手の認識は間違っていなかったはず、最適な出力で発動したはずだ!!」



    一方通行「そもそもよォ……」

    一方通行「そんなバランス崩壊のぶっ飛ンだ攻撃があンなら初めからそれだけしてりゃあ良いだろ。だがオマエはそォしなかった。そォしない理由があった」

    一方通行「例えば、攻撃できる回数に制限があるとかなァ?」

    フィアンマ「っ!」

    一方通行「残り少ない攻撃回数のみで俺を確実に叩き潰さねェと待っているのはワンサイドゲーム。そンな状態で攻撃すりゃあ普段通りの冷静な思考なンて出来ねェだろ?」

    フィアンマ「それが何の説明になる!!?」

    一方通行「オマエのそのふざけた右腕は、相手によって最適な出力を出すンだろ?その出力を見定めるためには、お前自身の対象への理解が必要なンじゃねェのか?」

    事実その通りだ、禁書目録による知識の補助を受けられなくなった聖なる右は複数回の使用に耐えられない以前通りの性能に戻っていたし、第三次世界大戦以後、その出力の決定にはフィアンマ自身の思考を若干だが要する物になっていた。


    268: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:11:24.73 ID:hiN/8Bluo

    一方通行「なら簡単なことだ、俺がお前の認識を外れた力になればいい、大方オマエは「反射を突き抜けるベクトルを持った魔術」を放ち、俺の反射の適用される膜そのものに対して「俺から離れるベクトルを持った魔術を発生」させて自動的にその魔術が俺に向かうよォな設定をしたンじゃねェのか?」

    一方通行「それこそ自分でも気づかねェうちに」

    フィアンマ(どういうことだ?!何故こいつは俺様の思考をこうまでも読める?!俺様自身が意識していない部分の認識までもだぞ?!)

    一方通行「だから俺は普段受け入れているベクトルをすべて反射に設定し、それに対する弊害を抑えつけるために能力を使用した」

    一方通行「そしてそれ以外の能力使用を一切停止した。ほんの一瞬なァ」


    重力を反射すれば大気圏外に飛んでいってしまうだろう。

    気圧の影響を受けないために全身の血液が沸騰し、体の内容物が全て外界へ飛び出し、体が破裂するだろう。

    そのような影響全てを、「自分の体が動こうとする』ベクトルを制御することで強引に耐えた、呼吸すらも止めた。

    精神的、肉体的に一方通行へかかった負担は尋常ならざる物であっただろう。


    一方通行「知ってるか?人間ってのは焦れば焦るほど単純な思考になるンだぜ?」

    一方通行の貼り付くような笑みは邪悪さをまし、唇は今にも裂けそうなほど鋭利な三日月を描いている。


    一方通行「お前が悪意やら敵意の捉え方が根本からネジ曲がってるようなやつじゃねェってつゥのは良かったなァ?」

    一方通行「そんな奴の思考、いくら何でも読めたもンじゃねェ」

    フィアンマ「だらだらと能書きを!!」


    269: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:12:12.99 ID:hiN/8Bluo

    フィアンマは、とうに限界など超えているであろうその右腕を酷使する。


    だがそれは、今度こそ本当の意味で何の意味も為さずに空中分解する。


    一方通行「回数制限付きの怪物……魔術師ってなァ随分と無能へのハンデを考えてくれてンじゃねェの」


    一方通行の腕がほんの一瞬でフィアンマへ伸びる・


    その手は苦手か毒手か。


    頭部へ振れだ瞬間に、フィアンマの全身の力が抜け、その場に崩れ落ちる。


    270: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 20:12:59.78 ID:hiN/8Bluo

    一方通行「残念だったなァ」

    一方通行「愉快な右腕とやンのは、初めてじゃねェンだよ」

    一方通行「まァ」

    一方通行「あの無能力者取っ捕まえたら、オマエにも詫びの一つぐれェはいれさせてやる……よ……」


    視界が揺らぐ。

    立っていることが出来ない。

    それが危険なことだと理解できるのに、そこからどう行動を起こすのかという判断へ結びつけることができない。



    一方通行もまた、荒野に崩れ落ちた――



    278: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 22:59:28.57 ID:hiN/8Bluo

    美琴「あら?赤いの倒れてるじゃない?何かド派手なことになってたみたいだったけど、どうやったらあんなのに対抗できんのよ、全くこの230万分の1の天災は……」

    美琴「ってあら?こいつまで寝てるじゃない……大丈夫かし――」

    番外個体「あぁ、こりゃ電池切れだね」

    美琴「電池切れ?」

    番外個体「そうそう電池切れ。っていうかおねーたまもしかして今この人のこと心配してた?」ニヤニヤ

    美琴「しっ、してないわよ?」

    番外個体「んー??」キコエナーイ

    美琴「だから別に心配してなんかないわよっ?!」

    美琴「ただこの後のこともあるしここでお荷物になられても困るじゃない!!」

    番外個体(≒心配じゃないの)

    美琴「って、ていうか電池切れって何よ?」

    番外個体「(相変わらず話題の逸らし方が下手なことで)おねーたまも能力使い過ぎてなっちゃったことあるでしょ?」

    美琴「なんであんたそれ知ってんのよ……?というかそもそもあれは電撃使い特有のものでしょ?」


    279: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 23:01:39.55 ID:hiN/8Bluo

    番外個体「この人の場合はもっと直接的な意味での電池切れかな?ほら、そのチョーカー」

    言いながら番外個体は地面に横たわっている一方通行の首元を指す。

    美琴「あぁ、そういえば能力を使用すると極端に稼働時間が減るんだっけ?」

    番外個体「もっとも、まだまだ充電は保ってても良いはずなんだけどにゃーん。『想定外の使い方』でもしたかねーこりゃあ?」

    美琴「私達の能力で充電くらい出来るんじゃないの?」

    番外個体「うんにゃ。ネットワークに繋がっている個体は接続障害が起きるかも知れないからやっちゃいけないんだと」

    美琴「じゃあ私は大丈夫なのかしら?」

    番外個体「問題ないんじゃない?……あぁちなみに充電の推奨環境は――」

    美琴「別にそんな事聞かなくても大丈夫よ」

    バヂィッ!!

    一瞬、凄まじい音と共に美琴の前髪から一方通行の首元に向かって閃光が奔る。

    一方通行「痛ってェな何しやがるクソ野郎?!」

    次の瞬間には一方通行は二本の足で立って美琴に掴みかかっていた。

    美琴「あんたそれ二回目なんだけど。コミュ障の上にボキャ貧なの?うわぁ救えない……」

    一方通行「あァっ?!」


    280: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 23:04:36.34 ID:hiN/8Bluo

    番外個体「バッテリーの残り稼働時間、通常モードで47:59;56…ひゅうっ♪学園都市最先端のテクノロジーと暗部の改造の賜物を説明も無しにあの一瞬でフル充電。さっすがおねーたま!」ケラケラ

    一方通行「オマエももっと他に言うことがあンだろォがクソ野郎!!」

    美琴「それ助けて貰った相手への態度なの?」

    一方通行「あの赤いの野放しにしてたら今頃オマエらこの世とオサラバだったはずなンだがそこンとこ分かってンのか格下ァ?」

    美琴「か、格下言うな!!」

    一方通行「じゃァ三下」シレッ

    美琴「何で基本的に蔑称なのよ?!」

    一方通行「この学園都市第一位の視界に入ってるだけでも光栄だと思って下さァい」

    美琴「こ、の、や、ろ、う」バチバチッ

    一方通行「?!オマエチョーカーの妨害電波出しやがったなコラ!!器用に歩行機能だけ奪いやがってこの……!!」

    美琴「ジャミング対策もしてるみたいだけど、電気操作系の最高位能力者にかかればちょろいもんよねぇぇ?この程度で学園都市第一位とは片腹痛いわっ!!」


    番外個体「もはやテンプレと化しているツンデレ×ツンデレの構図について」

    電磁通行「やかましい!!」


    281: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 23:05:41.46 ID:hiN/8Bluo


    そんなほんのひと時の安息(?)を過ごす三人。


    だがそれはものの数分で現実に引き戻されることとなる。


    「自分達の恩人を取り戻すために、他者の信念とぶつかり、自分なりの答えを出し、自分の信念を貫くか……美しいね、少年少女諸君」

    荒野に響く凛とした女性の声



    一方通行「あン?……っ!!」

    美琴「あんたは……?!」


    282: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/21(火) 23:06:40.19 ID:hiN/8Bluo

    レイヴィニア=バードウェイ

    僅か12歳の少女にして、一大魔術結社『明け色の陽射し』を束ねる存在。

    一方通行、御坂美琴、そして上条当麻らに対し『グレムリンの学園都市進行を阻止するため』と唆しハワイ出発を先導し、自分の目的のための道化として利用した魔術師。



    そして




    上条当麻失踪の直接の原因を作った存在――


    285: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 20:51:26.65 ID:m73RSCsao

    美琴「あんた……!人の想いを弄ぶような酷いことをことをしておいて、よくもこんな普通に出てきてくれたわね!」

    事の大元とも言える少女に、美琴は怒りを顕わにする。

    バードウェイ「私は正義の側に立っている等と言ったつもりはないがね」

    一方通行(あンな化物とやった後なンだぞ?!こンな状態で未知数の戦力が出てくンじゃねェよ……!どォする……?このガキ共だけでも……っ)

    バードウェイ「安心しろよヒーロー(笑)別にお前たちを叩きのめしに来たわけではないよ」

    一方通行「あァ?」

    バードウェイ「なに、ちょっとしたお説教だよ。どこぞの少年に比べれば大したことのない程度の、ね」

    バードウェイはそこで一度言葉を区切ると。3人を見据えて改めて口を開く。





    バードウェイ「妹達、量産能力者実験、絶対能力進化、ミサカネットワーク」


    286: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 20:53:59.69 ID:m73RSCsao

    美琴「何であんたがそれを?!」


    それは、御坂美琴自身が学園都市の闇と関わるきっかけとなった事件。

    闇の底にいた一方通行にとっては、それまでの生き方と明確に違う道を歩み始めるきっかけとなった事件。

    そして学園都市の部外者はもちろん、たとえ学園都市内の人間でも知ることのない様な出来事。


    それをこの少女は知っていた。

    バードウェイ「お前たちはそれらを通して、過去に自分の信念というものをあの幻想殺しの少年に変えられているはずだ」

    バードウェイ「それが正しいにか間違っているのか、なんてことは置いておくとしてもな」



    バードウェイ「お前たちは今後というものに絶望し、その未来を変えようと必死に考え答えを出した」

    バードウェイ「そしてもう戻れない様な所まで来てしまった、いやそう思っていた」


    バードウェイ「そこであの少年との邂逅があった。その少年は拳ひとつでお前たちと向き合い、誰もが笑えるハッピーエンド、当人が本当に誇れる選択なんてものを大真面目に示した」

    バードウェイ「わかるか」


    287: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 20:55:59.54 ID:m73RSCsao

    バードウェイは、特に二人の超能力者に向かって一層鋭い口調で言い放つ。

    バードウェイ「今の上条当麻は、かつての一方通行、御坂美琴と同じだ」

    バードウェイ「自分が犯した過ち、果ては自分自身の存在までをも呪い、それにケリをつけようと決心し、場合によっては自分自身を差し出すことも厭わないなんて事を考えている」

    バードウェイ「お前たちはその気持ちを嫌という程理解できるはずだな?」

    美琴「そんなことあんたに言われるまでも――」

    バードウェイ「まぁ話は最後まで聞いてくれよ。ちゃんと質問は受け付けるさ」

    たまらずといった様子で割り込んでくる美琴を、バードウェイは涼しげにあしらう。

    バードウェイ「お前達は上条当麻の目を覚まさせる、自分だけで突っ走らせるなんてことはさせない。なんて言っているようだが……」

    バードウェイ「それはあいつの信念を曲げるということだ」



    バードウェイ「これがどういうことが解るか?」

    一方通行「チッ……そォいうことかよ」

    一方通行は呆れたような様子で吐き捨てる。


    288: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 20:57:57.18 ID:m73RSCsao

    バードウェイ「過去のお前達に立ち向かった上条当麻の役目を、今度はお前達が果たすということだ」

    バードウェイ「人一人がそれこそ死ぬ程悩んで、悩み抜いて出した結果、自分を顧みない行動理念」

    バードウェイ「それを真っ向から半ば自己中心的とも言える意見で叩き伏せる……あいつはお前達にそういうことをしたんだ」

    バードウェイ「結果的に今はそれで良かったと思えるかもしれないさ」

    バードウェイ「しかし将来その選択がどういう結果をもたらすかなど誰にも分からないものだ」

    バードウェイ「お前たちはあいつに対して同じ事をする覚悟があるのか?」

    少女は一体何を思っているのだろうか?

    その表情から普段決して絶えることのなかった自信が、ほんの一瞬だが消えたような気がした。


    289: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 21:00:10.44 ID:m73RSCsao

    一方通行「何を言うかと思えば」

    その問いに対しまず答えを出したのは一方通行


    一方通行「あの無能力者は俺にタイマン挑ンできた時も、偉そォに俺に説教たれた時も、その後のめンどくせェ事情なンざ考えてねェンだよ」

    一方通行「自分がしてェことを自分に正直に、やりてェよォにしてやがンだ。それであとからなンかあってもグチグチ文句垂れるのは筋違いだろォが」

    バードウェイ「ほう?」



    一方通行「笑っちまう程似合わねェが、あいつにできて俺にできねェってこたァねェだろ?」

    一方通行「俺も自分のしたいよォにするだけだ。それ以外の言い訳も後付の理由も誤魔化しもねェよ」



    それは確固たる決意。

    自分の過去の罪に死ぬ程後悔したからこそ、今度は絶対にそんな結果を生み出したくはない。

    だから、自分が誇れる選択をしてみせる。

    それを、あの少年に必ず見せてやる。


    290: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 21:02:25.22 ID:m73RSCsao

    美琴「私は……」

    続くように、美琴も口を開く。

    美琴「あの馬鹿がいつかの私と同じように一人で突っ走ろうとしてるのが許せなくて、止めたいだけ」

    美琴「正直それからのことはまだ考えてないし、あいつの事情に関して何も知ってることは無いようなものよ?」

    美琴「けど!それはあいつだって同じだった!でもそんな不安を感じながらも私を止めてくれた!絶望的な状況から引きずり上げてくれた!!」



    美琴「今度こそあいつの力になる」

    美琴「その為ならどんな壁でも惨めったらしく登ってやるわよ」



    美琴もまた掴み取る。

    自分なりの選択を。

    今まで幾度もその少年の力になろうとした。

    しかしながら、それが自分の納得した形で叶う機会に恵まれることは無かった。


    今度こそ――

    今度こそあの少年の力になるのだ。


    あの少年の抱える重みを、想いを。

    今度こそ共に背負う。


    291: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 21:03:06.39 ID:m73RSCsao

    バードウェイ「……」

    バードウェイ「警告はしたが……聞く耳は持たない、か。まぁそれも一つだろうな」






    バードウェイ「ロシアへ行け」




    番外電磁通行「?」


    脈絡もなく突然発せられるその言葉に、3人は思わず眉をひそめる。


    292: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 21:04:31.56 ID:m73RSCsao

    バードウェイ「正確にはロシア国領土内に位置するエリザリーナ独立国同盟か」

    バードウェイ「そこにあのヒーロー崩れは居るよ、大方自分が終わらせた戦争の爪痕、その中心でも見に行ったんじゃないか?」


    一方通行「オマエ、何でンなこと……」

    バードウェイ「今までの私の行いを見てもらえれば分かると思うが、私は自分の益になるようにしか他人を動かさんよ。理由なんて聞くまでもないだろう?」

    美琴「あんた、まさかまたあのバカを都合よく利用するつもり……っ?!」

    バードウェイ「さて、ね」


    バードウェイ「ともかく道は示したよ。動くか動かないかはお前たちの勝手だ」


    言うだけ言うと、どういう原理かはまるで解らないが一枚のカードを残して姿を消す。


    293: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 21:06:42.90 ID:m73RSCsao

    取り残される3人。



    一方通行「チッ!わけの分かンねェ野郎だ」

    美琴「どうしようかしらね……これから」

    一方通行「他にアテもねェンだ。行ってみるしかねェだろ?第一あいつが何の意味もねェプラフで場所を示すとも思えねェしな」

    美琴「……そうね」

    番外個体「……あれ?本格的にミサカの存在食われてきてる?」




    レイヴィニア=バードウェイ

    謎多き彼女により道は示され、新たな決意を固める二人。


    彼らの「現実」を再び変える邂逅は、すぐそこまで迫っていた――


    294: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/22(水) 21:08:37.25 ID:m73RSCsao




    ――




    「結局、本当のところは言わずじまいですか?」

    バードウェイ「嘘を言わなかっただけ褒めて欲しいもんだな」

    「いずれあの子達が私たちに向かってくることもあるかもしれませんよ?」

    バードウェイ「その時はその時だよ。事実、私が学園都市やあの少年を窮地に追い込んだのは事実だ。それも自分の目的のために」

    バードウェイ「それは褒められるようなことではない」


    バードウェイ「何度でも言うが」





    バードウェイ「私は正義の側に立っている人間だなんて一言も言った覚えはないぞ、ヒーロー?」


    300: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:12:44.11 ID:rnD/QNmbo

    ただ目の前の人間を救いたかった。

    世界とか戦争とか、そんな規模の大きい物は自分がどうにかするものではないだろうし、そもそもそういう方向の力は自分には無い。



    そう、思っていた。





    けれど救いたいが故の行動は別の不幸を生み出し、負の連鎖を生み出した。。




    第三次世界大戦、敗戦国、戦後処理、ロシア、ハワイ、学園都市。


    301: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:14:52.12 ID:rnD/QNmbo

    「どうして……」


    「どうして、こうなっちまったかなぁ」


    ロシアの領土内に位置する、エリザリーナ独立国同盟。

    近年、ロシアのやり方に納得できず独立した小国の集まりで形成され同盟であり。その間接的支配から脱するために小さな国をいくつか繋げることによって、ロシア国外の東ヨーロッパの国々までのルートを自力で構築している国。


    そして偶然か必然か、第三次世界大戦の折には、様々な視点での戦争の重要人物が集結した地点。

    そこに一人の少年がいた。



    そこは戦時使われていた野戦病棟や軍事基地の廃墟が立ち並んでおり、その幾つかは酷い損壊具合だ。


    こんな所に好き好んで近づくものなどおらず、周囲には彼以外に人間の姿はない。



    302: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:17:35.81 ID:rnD/QNmbo

    少年の名は上条当麻。

    ツンツンした短めの黒髪が比較的特徴で、詰襟の学生服に赤とオレンジを基調としたボーダーのマフラーを着用している。


    上条「どうすれば、良いんだろうな」

    上条「分からねぇ……っ」

    上条「俺が招いた結果なのに、どうすりゃ良いか分からねぇよ!」


    そこへ






    美琴「何やってんのよ、あんた?」

    美琴「学園都市に大切な人ほっといて一人で突っ走って、連絡無しで、その……」

    美琴「心配、したじゃないの」



    御坂美琴、そして一方通行と番外個体が接触する。






    303: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:23:52.96 ID:rnD/QNmbo

    エリザリーナ独立国同盟には、一体どういう関係か一方通行の知り合いが数人いた。

    美人だが酷く痩けた顔色の悪い女性や、軍所属の男性。

    その関係を彼は結局明かそうとはしなかったが、ともかくその人物たちは数日前にこちらに来ていたという上条当麻の動向を知っていたため協力してもらったというわけだ。


    304: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:26:16.19 ID:rnD/QNmbo

    上条「……っ!」

    上条は一瞬驚いたような顔を見せるが、すぐにそれはなりを潜めてしまう。




    上条「何しに……来たんだよ?」

    美琴「決まってんでしょ」

    一方通行「オマエを連れ戻しに来たンだよ」



    だが、その想いは彼に届くことはない。



    上条「悪いけど」

    上条「まだ俺は学園都市には戻れないよ」

    上条「第三次世界大戦での俺の選択で苦しんでる人がいる、ハワイでの俺の行動で学園都市が被害を被った」

    上条「この結果から繋がる悪夢を、俺は断ち切らなきゃいけない」



    番外個体「あらあら、ほんとにヒーローさんだねこの人は」

    上条「自分の責任をどうすればいいかなんて今でもわからない様な大馬鹿だよ、どこにでも居る高校生だよ」


    305: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:27:58.95 ID:rnD/QNmbo

    上条「けど、今の状況は間違いなく俺が呼んだんだ」

    上条「だから俺がやらなくちゃいけない。だから止めないでく――」

    美琴「できるの?」

    上条を遮る、ある種棘のあるような言葉。

    美琴「あんた一人で、それができるの?」


    それは、彼を思うが故に感情的なものとなる。


    上条「やってみせるさ。俺がどうなってもこの流れは絶ち切ってみせる。それで問題ないだろ?」


    美琴「それじゃあ、あんたが救われない」



    上条「え……?」


    思わず間の抜けたような声を彼はあげる。


    306: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:32:55.23 ID:rnD/QNmbo

    美琴「あんたは目の前の人を救うために今まで走ってきた。その過程でもっともっと大きなものを救うこともあった」

    美琴「それだけのことをしてきて、今度は自分が一度失敗したくらいで、その総ての責任をあんたが負うの?ちょっとぐらいあんたも救われたって良いじゃない。そんなのってあんまり――」

    上条「これは俺の引き起こした問題だ」

    例え誰に引き止められようと、自分は止まらない。そんなことは許されない。

    そう思う上条もまた、引き下がることはない。

    上条「このままじゃ、俺に学園都市へ帰る資格なんて無いんだ」


    上条「俺がどうにかしなくちゃいけないんだ!!他の方法なんて無いだろう!?」


    上条の声色に交じる焦りと、大切な友人達を遠ざけてしまうことへの罪悪感。



    上条「御坂には他の方法があるっていうのか?!そんなものないだろっ?!」




    307: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:34:58.59 ID:rnD/QNmbo

    美琴「それでも――嫌なの」



    美琴「他に方法がない?笑わせないで、」

    美琴「何であんたがそこまで自分を犠牲にしなくちゃいけないのよ!!そんな悲しい結末にしなくたって良いじゃない!?」

    美琴「あんただって……救われて良いはずじゃないの?」



    この時恐らく初めて、上条は「救われる側」として「救う側」の言葉を聞くことになる。

    それは今まで散々口にすることはあっても、耳にすることはなかった言葉。

    そして、彼はそんな言葉を掛けて貰えるなんてことは欠片も思わなかった。




    上条「何を……言ってるんだ?」


    308: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:37:52.26 ID:rnD/QNmbo

    上条「俺には!今更そんな言葉を掛けてもらう資格は無いんだよ!」

    上条「仮に、誰もが笑っていられる幸せな世界が戻ってきたとして、そこに俺の居場所は無いんだ!!」

    上条「俺のせいで多くの人間が、何もしてないのに不幸になった!」

    上条「俺みたいな大罪人がのうのうと生き続けて良いわけが無いんだ!!」


    美琴「大罪人なんかじゃないわ」

    美琴「例えそんなことを言う奴が出てきたとしても、そんなの私が認めない」

    上条「……!」

    美琴「そんなやり方じゃ誰一人救われない、あんたが犠牲になって他の大勢が幸せな日常を取り戻したとしても」

    美琴「決して幸せになれない一握りが居る。涙を浮かべる極少数がいる」

    美琴「誰もが笑って暮らせるハッピーエンドじゃない」

    美琴「あんたが助けたい「世界」の中に、それで悲まない人間がいるなんてこと、本気で思ってるの?」

    上条「やめてくれ!!」


    309: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:40:43.58 ID:rnD/QNmbo

    自分の決意、美琴の言葉。


    自分が居なくなることで、自分の帰りを待つあの少女はどんな顔をするのだろうか?


    分からない。

    言葉の意味が、では無い。


    自分はどうすれば良いか。


    その答えが彼には見つからない。


    上条「被害者達だって、俺の犠牲で世界が救われるなら少しは気が楽になるさ!」

    上条「人一人の犠牲であの戦争が残した悪意から救われるなら、それは素晴らしいことだろ?!」

    上条「もうそれで十分だろ?!」



    上条「だから――」

    美琴「退かない」


    少々強引にでも、美琴は上条を阻む。


    彼がかつて自分に対してしてくれたように、救ってみせる。その考えを変えてみせる。


    決意を決めた人間の前に立ちはだかることは、こんなにも大変なことだったのだ。

    美琴は今更ながらに驚愕する。

    そして、それをやってのけた上条当麻を心の底から尊敬する。


    310: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:42:30.39 ID:rnD/QNmbo

    美琴「あんたはハワイでも、その前のロシアでの世界大戦なんてふざけた規模の騒乱でも、結果として多くの人間を守りきった!!その後何があったからって、それが間違いだなんて下らないことが許されていいはずがないの!」

    美琴「何度でも言うわ!!あんたがその重荷全てを負うこと必要なんて無い!背負わせてなんかやらない!!」


    美琴「同じ道を歩んでる私の、私たちの意見を無視されちゃ困るわ」

    美琴「だから、こんな所で私たちは退かない」


    声が震える。

    人一人の生き方そのものに関ることに対する重圧。

    それが重く、想くのし掛かる。


    上条「……っ!」

    上条「分からねぇ……分からないんだ、俺自身も……」

    上条「何をすれば良いのか、自分がどうしたいのか……!」

    美琴「……」

    やはり、この少年と、かつて絶望の底に落ちた自分は同じだった。

    美琴はそう思う。

    だから、必ずこの少年を救う。

    救ってみせる。


    美琴「今からでも遅くないわよ。皆で考えましょ?」

    美琴「何も独りで抱え込む必要なんか――」


    311: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:44:13.78 ID:rnD/QNmbo

    上条「やめろっ!!」

    美琴「っ!?」

    上条「『テメェ』の意見は聞かねぇって言ってるだろ?!黙れ!!黙ってくれよっ!!」


    美琴は初めそれが、自分に向けられた言葉と思い胸を痛める。

    しかしそれはよく見れば、聞けばそうではない。


    それどころか、一方通行に対してでも、番外個体に対してでもない。

    だがこの場にそれ以外の人間は存在しない。



    そこまで考えて美琴の思考は中断される。



    上条「うわぁぁぁぁぁぁぁああっっ!!!」


    上条の叫びと共に、彼自身を中心として謎の暴風が巻き起こる。

    風、と定義して良いのかもわからない不可思議な力場。


    その膨張に、極めて至近距離にいた美琴は巻き込まれる。



    美琴「きゃあああああぁぁぁっ?!」



    錐揉み状態で10メートル程吹き飛ばされながら、全方位から体を締め付けられるような激痛。


    312: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:46:07.67 ID:rnD/QNmbo

    美琴「何……今の……?」

    あのたった一瞬の出来事で、美琴の体力は相当に消耗していた。




    一方通行「感情の波と自分の中での使命感による葛藤。それに心が追いついていけなくなってるみてェだな」


    気付けば、上条からの謎の力場から守るように、一方通行と番外個体が美琴の目の前に立っている。


    一方通行「学園都市の能力者で言う暴走状態、俗に言う乱雑開放<ポルターガイスト>――RSPK症候群だな」

    一方通行「だがよォ…あいつのフザケタ能力が暴走するとどォなるってンだクソ野郎……っ」



    美琴「結局……」

    美琴「私じゃ駄目だったのかな?」

    美琴「妹達の実験の時にあいつに助けられて、だから私もあいつの力になりたくて」

    美琴「でもいつだってその手はあいつに届かなかった!!」


    313: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:47:28.21 ID:rnD/QNmbo

    一方通行「……おい、オリジナル」


    美琴「……何よ?」

    美琴の瞳は潤み、今にも涙が零れそうだ。

    一方通行「オマエがあいつの暴走を引き起こしたことがどォいうことかわかるか?」




    一方通行「…それだけの影響をオマエの言葉はあいつに与えたンだよ」

    美琴「……え?」

    一方通行「いいか?」




    一方通行「オマエの言葉はあいつに届いた」


    314: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:48:39.33 ID:rnD/QNmbo

    一方通行「オマエがあの無能力者に何度協力しよォとして、そして何度失敗したかなンて分からねェよ」


    一方通行「だがあいつは、危険なことはさせらンねぇだの何だのでお前の協力を断ってきた頑固者だろォなってのはよく解る」

    一方通行「今のオマエの言葉は、その頑固野郎を揺さぶった」

    一方通行「その結果があの暴走だろォな」



    その不器用な言葉は、美琴のことを真剣に認めた上での言葉だった。

    安易な慰めなどでは決してない。



    一方通行「だから、愉快に勘違いすンじゃねェぞ」


    315: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:49:11.51 ID:rnD/QNmbo




    一方通行「オマエの伸ばした手を。あいつは確かに掴もォとした。それも自分から」

    一方通行「オマエはそれを誇っていい」




    316: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/23(木) 19:51:49.66 ID:rnD/QNmbo

    美琴「一方通行……」

    一方通行「こっからは、俺があいつにリベンジする番だ、俺もあいつには言わなきゃなンねェことは山ほどあンだよ」



    一方通行「番外個体」

    番外個体「何かな?正直ミサカいなくて良いんじゃないかとか思い始めてたところなんだけど?」


    一方通行「オリジナルを頼めるか?流石に今までやりあって全戦全敗、しかも今回は暴走なンてしてやがるクソ野郎相手に、格下のお守りしながらやりあうなンて出来ねェよ」

    美琴「だ……から格下言うな」

    そういう美琴の息は荒く、酷く辛そうだ。


    番外個体「はいはい、おねーたま強い強ーい。あとは妹の後ろに隠れて、もやしに事を任せようねー」

    美琴「むぅ……」


    番外個体「それから」

    番外個体「あの第一位が素直におねーたまを褒めたんだよ?ぎゃは☆これって今世紀最大の面白ネタだよ?全部終わったら散々弄り倒してやろうZE☆」

    美琴「……ふふっ。あんたって子はこんな時まで」



    一方通行「……なにやらフザケタことほざいてるみてェだが」


    一方通行「ここにいろ、絶対にあいつを連れて帰ってきてやるよ」





    ――都合三度目。


    学園都市の「最強」と「最弱」が交差する――


    321: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:34:37.09 ID:y/IE1p0Xo

    一方通行「さァて」

    一方通行「……どうすっかなァ?」


    上条「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!黙れ、黙れよ!!『テメェ』は俺のやることに口を出さないでくれ!あいつらの想いを無駄にして良いわけがないだろ?!」



    一方通行「……一体誰と話してんだよあの馬鹿は?」

    そうしている間にも上条の周囲の大地には亀裂が入り、大気は揺らめいている。

    周囲に人間がいないのは幸いだが、まずは上条を沈黙させないことには始まらない。


    一方通行は意を決して上条の元へ向かって大地を蹴る。


    322: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:35:53.36 ID:y/IE1p0Xo

    だが、そのあらゆるベクトルを掌握した進撃は、上条に接近した瞬間速度を失う。

    一方通行の能力が機能しなくなる。



    一方通行自身の暴走ではなく、完全な相殺。

    そのままの速度で一方通行は無防備なまま地面に投げ出される。



    一方通行「がァァァァァァああァっ?!」

    一方通行「クソが!!どォなってやがる……電波障害も何もねェぞ!!何で能力が使えねェ?!」



    一方通行「まさか、あのふざけた右手の効果が広がってるとでも言いやがンのか……?!」



    上条「もう俺に構わないでくれ!!」

    その言葉は、今度こそ一方通行に向けられる。


    323: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:36:28.05 ID:y/IE1p0Xo

    上条「結局俺は最後は周りに不幸しか呼ばないんだよ!!いくら俺が救いたい人間がいたって!最後には不幸にさせちまうんだ!」

    上条「今の状態がそうだろ?!」

    一方通行「……不幸だァ?」




    上条の咆哮は、一方通行の「過去」を刺激する。


    324: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:38:28.90 ID:y/IE1p0Xo

    一方通行「笑わせンなよ?オマエみてェな文句の無い程に完璧に、誰かを救ったことのある人間が言う言葉じゃねェだろ?」

    一方通行「血みどろで最低な方法でしか誰かを救い上げられなかった野郎がいた。どォあがいても全てを救いきれない野郎がいた!」


    それは過去の自分自身への後悔


    一方通行「妥協して妥協して妥協して、それでも絶対に譲れねェたった一つの幻想を守りぬくのがやっとなクソ野郎がいた!!」

    一方通行「そんな馬鹿野郎と比べたらなァ!今のオマエの言ってることなンざ子供のわがままでしかねェンだよ!!」


    ゴバッ!!


    激昂する彼の背中から、黒の噴射が乱立する。

    短いもので数メートル、長いものは100メートルに届かんとする無数の噴射のような「翼」

    それが彼の背中に生じる。

    明確な感情の昂ぶりの象徴。

    だがそれは初めて。




    目の前の人間を救う為に向けられる。


    325: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:39:28.43 ID:y/IE1p0Xo

    一方通行「誰かが言った言葉をオマエにも言ってやる」



    一方通行「目的を一つに絞れ、妥協をしろよ上条当麻ァっ!!」

    一方通行「今までがそォだったからって、何でもかンでも無傷で救いだせると思ってンじゃねェ!!」



    一方通行「オマエが一番大切な物は何だ!?泣き顔なンざ死ンでも見たくねェ相手は誰だ!?」

    一方通行「それをもォ一度考えやがれ!!」


    326: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:42:18.90 ID:y/IE1p0Xo


    一方通行はその黒翼を操り、上条を拘束しようとする。

    しかしそれは時に受け流され、時に軌道をねじ曲げられ、芳しい成果は上がらない。



    一方通行「確かにオマエは今まで誰にもできねェよォなことをしてのけた、たくさんの奴を、俺みてェに善だ悪だクソ下らねェことにこだわらねェで自分の意志に従って助けてきた!」

    一方通行「けどなァ!ちっとばかし特殊だろォとそれでもオマエはただの人間だろォが!!どこにでもいる高校生だろォ?!」

    一方通行「自分で何でも抱え込めるなンて思い上がってンじゃねェぞ!!」


    上条から発せられる暴走した力は一方通行の反射も、その背に生える翼も無視して、身体を蝕んでゆく。


    上条「それでも、俺は、俺は……!!」

    上条「自分のせいで誰かが傷つくのなんて耐えられないんだ!!」

    一方通行「だからそれが間違いだって言ってンだろォが!!」

    一方通行「オマエのせいだァ?舞い上がったこと言ってンじゃねェぞ!!小僧一人の行動で戦争の行方が決まると思うか?!その後の事後処理が変わると思うか?!」

    ぶつかり合う2つの力は、その余波だけで廃墟をそれまで以上に荒廃させてゆく。


    327: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:44:46.41 ID:y/IE1p0Xo

    一方通行「ンなもンは各所の闇、暗部なンていうもンが最後にゃ関わってくるのが相場なンだよォ!!」

    一方通行「オマエが戦争の黒幕を叩き潰さずに終わったとしても、例えどちらの陣営が勝ったとしても!これくれェのことはいくらでも起きたンだよ!」

    一方通行「それになァ!こンな悲劇はいくらでもあンだ!!俺みてェな奴でも見たことあるぐれェだ。世界にゃゴマンとあるンだろう」


    上条は心が壊れていた、だがその身体は掠り傷すら存在しない。


    一方通行はその逆だった。

    気が付けばこちらの攻撃は掻き消え、その後には全身に激痛が走る。

    だが、この程度のことで沈むわけにはいかない。

    目の前の男のように、何度だって立ち上がってみせる。惨めだろうと何だろうと関係はない。




    328: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:46:27.65 ID:y/IE1p0Xo

    一方通行「オマエは!そンなに蔓延してる悲劇の中で、くだらねェ半ば逆恨みとも取れるよォな悪意をいちいち受け止めて生きていくのか?!」

    上条「それでも!俺はやらなくちゃいけない!!あの戦争の最深部を見た!ハワイの件だって俺がいたから皆がついてきたんだろう?!」

    上条「それがなかったら学園都市もあんなことにならなかったはずじゃないか?!」

    一方通行「いつまで自分の頑固を貫き通すつもりだ!!オマエ一人が特別な奴のつもりか?!」


    一方通行「たった一人のヒーローなンて必要ないって言った奴はどこのどいつだよ!?」

    一方通行「くだらねェ体裁になンてこだわらねェで、自分が誇れる選択をしてみろよって言ったのは?!」

    一方通行「他でもないお前自身だろォが!!!」

    上条「……っ!」

    上条を止めようと手を尽くし、そのすべてが打ち消され、何倍もの力が一方通行自身へ向う。

    何度も、何度も。


    329: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:48:17.54 ID:y/IE1p0Xo

    一方通行「自分だけが特別なンて思い上がってンじゃねェぞ!!自分が救ってみせるなンて偽善使い<フォックスワード>気取ってンじゃねェ!」

    一方通行「自分の周りを守りてェのはオマエだけじゃねェンだよ!!自分を犠牲にしてでも守りてェものがあるのはオマエだけじゃねェンだよ!!」

    一方通行「そして、そォいう奴らが犠牲になったところで!決して褒められるよォな結果が待ってねェのはオマエもよく知ってンだろォが!!」


    無数の翼は、やがてその数を減らしてゆく。



    一方通行「俺は、俺たちは自分が誇れる選択をしてここまで来た。いつものオマエってやつを取り戻しに来た!!」

    一方通行の膝が彼自身を嘲笑う。


    一方通行「それを蔑ろにしてでも、オマエは我を通して一人突っ走っていくっての……か?」


    そしてその膝は地と接する。


    つられて腹が、肩が、顔が。


    地面に崩れ落ちた。



    一方通行は動かない。


    330: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:50:26.25 ID:y/IE1p0Xo

    上条ももう薄々は分かっている。今の自分はきっと何処かで道を違えた。



    だが暴走した心と力は、歯止めが効かなくて。

    自分で自分が分からなくて


    その最後の鉄槌が、白の少年に向かう。



    そこに――




    美琴「待ちなさいよ!!」

    美琴「あんた!!自分が何してるかわかってんの?!」



    まだ終わらない。

    彼の救いを望む人間は、そんなに少ないものなどではない。


    331: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:51:54.42 ID:y/IE1p0Xo

    美琴「あんたの頑張りは凄い物だと思う。私が見てきた部分なんてほんの一部分だけれど、それでもそう思えるんだから相当なもんよ?」

    美琴「それを、こんな一度の失敗なんかで無駄にしていいの?!」

    美琴「まだあんたは引き返せる!!皆で学園都市に戻って!インデックスに死ぬほど謝って!それから皆で今後を考えて」


    美琴「いつものあんたが戻れば、それはハッピーエンドの近道じゃないの?!」

    美琴「そんな地獄の底で一人絶望してないで、私の手を取りなさいよ!!」


    上条「……!」

    上条の中の葛藤は更に大きなものとなる。

    自分の間違いに気付きつつも、そこで自分を改めることができない。

    その手を取りたいのに、取ることが出来ない。

    自分の中での矛盾に答えが出せない。


    332: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/24(金) 19:52:59.95 ID:y/IE1p0Xo

    そんな上条に、もう一本手が差し伸べられる。


    一方通行「オリジナルの言う通りだぜ」


    一方通行「オマエは昔の俺やオリジナルなんかより全然浅い地獄に居るンだよ。それで戻ってこれねェってンなら」

    一方通行「俺らが意地でも引きずり上げてやる」


    心は決して折れない。


    一方通行は、再び友の元へ向かう。


    339: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:45:24.25 ID:TAjwvv1jo


    ――


    美琴「ちょろっと」

    番外個体「何かな?」

    先程は思わず上条の元へ駈け出してしまっていたが、実際の所美琴は心身ともに極めて磨耗していた。

    そのため番外個体に肩を貸されるような状態で何とか立ち上がっていた美琴は、番外個体へ声を掛ける。


    美琴「私の目からだと微かにあいつの能力の展開されてる範囲とか、箇所によっての力場の強弱みたいなのが見えるみたいなのよね……。ほんの微量に電気的な性質とかあるのかしら?」

    美琴の目には、確かに上条の周囲に展開される謎の力場の展開状況が見えていた。


    それは、超能力者からこそ視認することの出来る僅かな電気的性質か。

    それとも、「御坂美琴」だからこそ見ることが出来る、もっと別の――


    番外個体「はぁぁ!!?あんなふざけた能力の?!ないない!ミサカは大能力者だけそんなもん見えないよ?!」

    ありえない、番外個体にしては珍しく素直に思ったことをそのまま口にする。


    340: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:47:34.99 ID:TAjwvv1jo

    美琴「超能力者の私でもほんの微かにしか見えないんだから無理ないわね……はぁ、正直、あんたが見えててくれれば話は早かったんだけど」

    番外個体「どういうことさ?」



    美琴「ミサカネットワークを通じてあのバカの能力の展開状況を一方通行に伝える」



    番外個体「なっ…!!それどういう意味かちゃんと理解してる?ミサカが見えない以上、おねーたまが脳波リンクにアクセスするってことだよ?!」



    美琴と番外個体は先日の魔術師達との戦いの際、どうして一方通行のチョーカー型電極があんなにも早くバッテリー切れを引き起こしていたのか。その理由を聞いていた。


    ミサカネットワークからの情報の受信。


    美琴はおろか、妹達の一人としてネットワークを形成している番外個体ですらそんな利用方法は思いつかなかった。

    それを彼は、学園都市を出発する前から考えついていたらしい。やはり根本から頭の作りが違うのだろうか?脳に損傷があって機能が制限されている現状が、神の手が介入したバランス調整か何かに思えてくる。

    ともかく、その仕組みを利用して美琴の視覚情報をネットーワークに経由させて、一方通行に送るらしい。

    しかしもともとネットーワークを構成していない美琴が介入することで、その難易度は何倍にも膨れ上がる。


    341: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:48:28.43 ID:TAjwvv1jo


    美琴「わかってるわよ。それにあんた達がクローン体で脳波の一致を測ってるから安定してるだけで、理論的には幻想御手<レベルアッパー>と同じ、私の脳がネットワークにアクセスすれば強引に脳波を合わせるわけだから危険なのも百も承知よ?」

    美琴「生憎、たったそれだけの理由で止まるようなお利口な頭は持ってないけどね」

    事の重大さを理解しつつも、美琴はいたずらっぽい笑みを浮かべる。


    番外個体「……この姉にしてミサカ達あり、か。いや誇れないけど」

    美琴「この……。まぁいいわ、さっさとネットワークに能力を利用して私の脳も繋げちゃうわよ?」

    番外個体「待ったまったまった待った!!気が早いよ死ぬ気?」


    342: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:49:26.79 ID:TAjwvv1jo

    番外個体「妹達はおねーたまのクローンだから元の脳波は同じっていっても、そこからさらに学習装置で整頓した脳構造があるからこそ脳波をつなぐネットワークが成り立ってるの」

    番外個体「元の脳が同じ事と、電気系統の最高峰の能力者だから幾分かはリスクは減るけど、それでもしくったら脳みそ焼き切れるんだよ?そこんとこほんっっとーに理解してんのかねこの子は!?」

    美琴「当たり前じゃない。それに……」

    美琴「あの白いのも今すぐにでも死にそうな状態なの。私だけ隅っこでのうのうとしてらんないわよ!!」

    美琴もまた、何度叩き伏せられても諦める気などさらさら無い。


    番外個体「はぁー……。わかったよやりますよミサカも協力させて頂きますお姉様!」

    根負けだ、番外個体は素直に協力することにする。


    343: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:50:24.91 ID:TAjwvv1jo

    番外個体「少しでも負担を軽減するために、おねーたまが脳波のネットワークを形成するのはこのミサカとだけにするよ?」

    番外個体「そんでおねーたまから貰った視覚情報のデータをミサカが最終信号<ラストオーダー>へ送り、そこから第一位のチョーカーへ情報を送る」

    番外個体「了解?」

    美琴「えー。この際だからあんた達のネットワーク内での会話とか傍受しようと思ったのに」

    番外個体「このバカ姉ほんとに脳みそ焼き切ってやろうかな?」

    美琴「ふふっ。冗談よ」



    美琴「心配してくれてありがとね?」

    番外個体「は、はぁ?ここであのヒーロさんどうにかしないとミサカの命も危ないし?それだけだし」アセアセ


    血、というか遺伝子というのは実に争えないものだ。


    そこまで言い合うと、二人はその表情を真面目なものと変える。


    344: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:51:36.53 ID:TAjwvv1jo


    美琴「……よし。いくわよ!」

    美琴の脳を、能力を使用し強引に妹達の構築するネットワークに接続してゆく。

    自分の脳波に干渉し、他のものとの一致を図る。

    それは外部からの刺激による脳波への干渉ではない。今も刻一刻と状況を変えている美琴本人の脳で演算される能力によるものだ。


    頭が痛い。

    脳が内側から食い破られるような、そんな錯覚。


    しかしここで能力の演算を誤れば、それは美琴の脳がその一生を終えることとなる可能性も秘めている。


    345: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:52:19.66 ID:TAjwvv1jo

    美琴「ぁ……ぐぅっ!!」

    苦悶に耐えきれす、声が漏れる。

    番外個体「おねーたま?!」


    美琴の脳からの情報を逃すまいと緊迫した面持ちを浮かべていた番外個体が、肩を貸している美琴へ思わず声をかける。


    番外個体「大丈……もががっ!」

    美琴は額にに珠のような汗を浮かべながら、自由になっている方の手でその妹の口を抑える。


    (大丈夫、大丈夫だからあんたはあんたの仕事に集中しなさい)

    そんな美琴の声が聞こえる。


    346: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:52:54.18 ID:TAjwvv1jo

    番外個体「そんな事言っても……って?!」

    その声は美琴の口から発せられていない。

    脳から直接脳へ、直接情報が送り込まれている。

    ネットワークを利用した意志の伝達。それが可能になっていた。

    番外個体(おいおいまじかよ、本当にやってのけたんですかこの人は?!)


    347: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:54:02.03 ID:TAjwvv1jo

    そう思った次の瞬間には、驚くべき量の情報の波が番外個体の脳に流れ込んでくる。

    超能力者<レベル5>としての並外れた演算能力。今ならそれすらも利用できそうな高揚感を番外個体は覚えるが、同時に少しでもその使い方を誤れば自らを滅ぼしかねない恐ろしさも感じさせる。

    その中から、今の自分達にとって必要な、ただひとつの情報を見つけ出す。



    上条当麻の不可思議な能力の展開状況。



    番外個体(……見っけ!)

    番外個体(へぇ……確かに見えるねぇ)


    まるで陽炎が揺らぐような、容器の中に入れられた2種類の液体により光が屈折しているような。

    透明なのに、「たしかにそこにある」と認識できる力場。

    ここまで来ればしめたものだ。


    あとは普段通りに最終信号へ情報を送り、そこから一方通行のチョーカーへ転送。


    348: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:54:36.13 ID:TAjwvv1jo

    番外個体「……」

    番外個体「よし、完了だよ。今頃あの人はヒーローさんの能力の見極めができるはず」

    その言葉を聞き。美琴は安心する。

    だが、一方通行が事を片付けるまでこの接続は維持しなければならない。

    先のことでの身体的なダメージもあり、美琴の体力は限界に近づく。

    美琴「……これで失敗したら、あいつ本当に許さないんだから」


    349: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:55:38.75 ID:TAjwvv1jo


    ――


    一方通行「あン?これは……?」

    先程から続いて上条と対峙していた一方通行は、独特な違和感を覚える。

    自分の知っている情報ではないのに、確かに正確な情報だとわかるような。


    ミサカネットワークからの情報だ。



    一方通行「どォやったが知らねェが、あいつのフザケタ能力の展開の状況か」


    一方通行「つーかよォ、こンなもン見せられたからってどうしろっつゥンだよ……?」

    一方通行「ほぼ全方位に展開、能力の薄い箇所は直線ですらねェ」

    一方通行「それを通して攻撃するなンざ動く針に一発で糸入れるよォなもンだろうが……出来るはずねェだろォがよ……」


    350: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:56:07.00 ID:TAjwvv1jo

    一方通行「俺以外には、なァ?」


    一方通行「とりあえず、俺の初勝利決定だクソ野郎」


    351: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:57:04.12 ID:TAjwvv1jo






    一方通行「歯ァ食いしばれヒーロー(三下)」


    一方通行「俺達の三下(ヒーロー性)は」


    一方通行「ちっとばっか響くぞ?」







    352: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 18:57:51.96 ID:TAjwvv1jo

    ひたすらに黒く、鋭角的な翼は今度こそ上条へ届く。


    かつてこの少年を襲った白く、緩慢な翼は、彼から多くの物を奪った。

    記憶、それまでの自分自身、大切な人間への「約束」



    この黒い翼は、反対に彼に何かを与えたのだろうか。


    353: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/25(土) 19:00:09.42 ID:TAjwvv1jo


    ――



    上条(何、やってんだよ。こいつらは)

    上条(こんな危険なこと、俺だけがやっていればお前たちは安全なままなのに)




    第三次世界大戦で。


    ハワイで。


    たくさんの人間が苦しんだ。


    それはきっと、上条だけの責任ではない。


    寧ろ他の者によるところの方が大きかっただろう。


    だけど周りを傷つけたくなくて。


    もう大切な何かを失いたくなくて。


    そうしていつしか、自分からそれらを遠ざけていた。


    上条当麻という人間の本質は、あの時から今の今まで「死んでいた」




    上条は、真後ろに倒れながら思う。



    上条(ほんと…何やってんだ、俺)



    上条当麻の中で、いつしか失われていた幻想が、形を取り戻すのを確かに感じていた。



    360: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 20:57:22.50 ID:1PNeqrbLo

    一方通行「頭冷えたかァ?」


    仰向けに倒れこんだ上条のもとに、一方通行は近づく。

    その背中にはもう漆黒の噴射は存在しないし、先程までの大気の揺らぎはもう無くなっていた。



    上条「なぁ」


    上条も一方通行も、先ほどまでが嘘のように穏やかだ。


    一方通行「あ?」

    上条「本当に、俺のせいだけじゃないのかな?」

    上条「俺がフィアンマを倒して、第三次世界大戦を終わらせたから敗戦国の人たちが不幸になったのも、今回のハワイの一件で学園都市が窮地に立たされたのも?」

    一方通行「何度も言わせンじゃねェ。オマエに直接の原因はねェよ。クソくだらねェ世界の暗部がオマエを利用しただけの話だ」


    面倒そうに答える一方通行だが、その目は普段より幾分か優しげだ。

    口調も心なしか棘が無い。


    361: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 20:58:39.84 ID:1PNeqrbLo

    一方通行「ハワイの時だってそォだ。それにハワイの件はオリジナルも言ったが俺らにも責任はあるだろォが」

    一方通行「俺や浜面の野郎なンかは、オリジナルよか叫弾させられる立場だろォなァ。直接あの女の話聞いてたわけだし」

    上条「そっか……」

    そこまで言うと、上条は力なく笑い出す。

    上条「はは、本当、偉そうなこと言ってたけど俺も世界なんて物、全然その事情を分かってなかったみたいだなぁ……」

    自嘲気味に笑う上条の顔は、何だか晴れ晴れとしていた。

    一方通行「ったく。はた迷惑な野郎だ、大体――」


    そこで、騒ぎが収まったことで様子を伺いに来た美琴と番外個体が近づいてくる。


    番外個体「……終わった?」


    362: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 20:59:23.62 ID:1PNeqrbLo

    上条「あぁ終わったよ……本当に悪かったな。御坂も――」


    美琴「ほんと……バッカじゃないの?!」

    食い気味に美琴は会話に参加しだす。

    美琴「皆……」

    美琴「みんなみんな、皆皆皆置いていって!一人で馬鹿みたいに突っ走って!!どんだけ心配かけんのよあんたは?!」

    美琴「帰ったらまず、インデックスに死ぬ気で謝りなさいよ?!」

    彼女は最初から、ハワイの騒乱の後上条が失踪したその瞬間から、本気の本気で心配していたのだろう。

    だから、その感情はとめどなく溢れる。

    上条「あぁ……そうだな。あいつには心配ばかり掛けちまった。それを、お前たちに気付かされたよ」

    上条「ほんとに……大馬鹿だ……!」



    363: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 20:59:59.55 ID:1PNeqrbLo


    美琴「……ったく。やっと人の話スルーしないでまともに聞いてくれたわね。こんなとんでもない状況になってにやっっっと!!」

    上条「本当に、口で言って許されるものじゃないけど、本当に悪かった」

    上条「それから……」

    美琴「?」




    上条「ありがとな。御坂」

    美琴「ぅえ?!」

    突然の感謝の言葉と、上条の笑みに、美琴は素っ頓狂な声を上げてしまう。


    364: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:00:31.54 ID:1PNeqrbLo

    上条「お前がくれた言葉、すごく嬉しかった」




    上条「自分で自分が分からなくて、こんな不幸を呼んだことの責任を取りたくて、でもそれは罪の意識から逃れたかったからで……」

    上条「そんな自分も嫌で、もう何もかも分からなくて、どうしたらいいか分からなくて」

    上条「そんな時にお前のの言葉ですごい救われた気がする。凄く嬉しかった」


    上条「ほんとにありがとう。それから酷いことしてゴメンな?」


    365: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:01:14.31 ID:1PNeqrbLo

    美琴「……~~~~~っ!!」

    番外個体(赤くなってる赤くなってる)

    一方通行(いつもあンな感じでなンとも思わねェ無能力者もある意味凄ェよな……)



    美琴「ほ、本当よ!!一歩間違ったら私脳焼き切れて死ぬところだったんだからね!!」

    美琴「ま、まぁこれからは?私の言葉もちゃんと聞いて考えてくれるなら許しやってもごにょごにょごにょ……」


    番外個体(ヒーローさんの帰還によりおねーたまのツンデレっぷりが絶好調です)



    上条「あぁ、そうだよな……」

    番外個体(スルー?!あのテンプレとも言うべき一種の様式美すら兼ね備えたツンデレを完全にスルーっ?!)

    一方通行(フラグブレイカーぱねェ)


    366: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:01:42.98 ID:1PNeqrbLo


    上条「俺が今までやったきた様に、俺のことを助けたい人間だって居る」

    上条「それを無理に止めるなんてこと、自分に置き換えて考えれば、どれだけ酷なことかわかったはずなのに」


    美琴「わ、分かってくれれば良いのよ?」

    美琴「それと!」

    上条「?」


    367: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:02:35.02 ID:1PNeqrbLo


    美琴「辛いなら辛いって言いなさいよ。誰かに頼りたかったら言いなさいよ」

    美琴の目から、これまで堪えていた涙がぼろぼろと零れ落ちる。

    後悔ではなく、安堵によって。

    美琴「あんたは一人じゃない、私も同じ道を歩んでる」

    美琴「それに私だけじゃないわ、あんたの力になりたい人間はそれこそいくらでもいるの」

    美琴「そのことを……忘れるんじゃないわよ……っ!」


    張り詰めた緊張の糸。これまでの非日常中の非日常。

    それがなくなったことで、彼女は感情を上手く扱えなかった。



    だから涙した。

    ひたすら泣いた。


    368: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:03:30.92 ID:1PNeqrbLo


    上条「……そうだな」

    上条「ありがとう。御坂。これからは皆のことをもっと真剣に思いやらないとな?」




    上条「って御坂どうした?!涙なんて流して……!」

    上条「まさかまだどこか傷が痛むのか?!くそ、俺があんなことしたから……っ!」


    一方通行(いや違ェよ)

    番外個体(\(^o^)/)



    美琴「」



    でもやっぱり待っている「お約束」に美琴の感情は平常運行を再開するわけで。


    369: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:04:23.62 ID:1PNeqrbLo

    美琴「あ、ん、た、はぁ~」

    美琴「そういう所はいつまでたってもそのままなのかぁーーッ!!?」ビリビリッ!!

    上条「うわぁぁぁぁ?!み、みみ御坂さん?!ちょっとその感情の変化に上条さんはついていけないのですがっ?!」

    上条「ちょっ、電撃と同時に背後から砂鉄剣とか聞いてな……いや上条さんの右腕は一本しか無いんだよぉぉぉぉっ!!」



    美琴「脳内の電気信号いじくってやろうかこんのド馬鹿ッッ!!」


    上条「だーもう!」





    上条「不幸だーーっ!!」


    370: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:05:26.41 ID:1PNeqrbLo


    ―数分後―




    一方通行「……ちったァ状況を鑑みて愉快な日常シーンを演出しやがれ。まだここはロシアの大地で、学園都市に帰りついたわけでもくっだンねェ日常にご帰宅したわけでもねェだろォが」ギヌロ

    上琴「すみませんでした」セイザ

    番外個体「ざまぁ」

    美琴「ぐぬぬ……」



    上条「そういえば一方通行、さっき何か言いかけてなかったか?」

    一方通行「あァ?つか何だっけか、忘れちまったよオマエらのせいで――」

    番外個体「『俺の言いてェことはオリジナルが全部言ってくれたからなァ。正直言うの恥ずかしかったから助かったわァ』」

    一方通行「……」


    上条「……お前も変わったんだなぁー」パチクリ

    美琴「~~~~っ!~っ!!」プ-クスクス



    番外個体「え、ちょ……ストップストップ。無言でチョーカーのスイッチを入れるのはなしだって。いやまじでまて話し合おう」アセアセ

    一方通行「……チッ。まァ良い」

    上琴(そこで許す辺り本当にあの「一方通行」と同一人物とは思えない)

    一方通行「なンか言ったかァ?」ギロリン

    上琴「いえ何も」キリッ


    371: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:06:51.65 ID:1PNeqrbLo

    一方通行「……まァ、これでくだらねェ日常ってヤツにもにも近づいたし、幻想<ラッキー>メイカーも復活だ。とっとと学園都市戻ンぞ」

    美琴「まったく時間がかかったわね、ともあれやっといつもの『上条当麻』が戻ってきたわね~」

    上条「それじゃあ改めて」



    番外上琴通行「久しぶり」



    一方通行「ったく、こっちはそれ聞くの二度目なンだっつゥの」

    上条「ま、まぁまぁ。あれは別ってことで……」

    一方通行「チッ」


    372: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:08:09.54 ID:1PNeqrbLo


    一方通行、御坂美琴、番外個体。


    そして上条当麻



    彼らはそれぞれの日常を取り戻すために戦った。

    そして答えを出した。


    もしかしたらその答えは、褒められるものではないのかもしれない。

    けれど彼らは後悔しない。


    自分の選んだ道だから、胸を張って生きてゆける。

    自分が悩んだ結果だから、誇りを持てる。



    彼らはこの先も壁にぶつかり、涙を流し、苦悩し、乗り越え、選択し、そしてまた掴みとる。


    その過程で、また地獄の底からの手招きもあるかもしれない。


    だがきっと戻ってこれる。



    一人じゃない。



    共にそれを背負う友がいる。


    自分でも相手でも、罪を赦せる友がいる。


    泣き声を聞けばどこへでも駆けつける友がいる。


    例え無様でも何でも、全てをかなぐり捨てて引きずり上げる友がいる。



    だから、大丈夫。




    彼らはどこまでも平凡で、だけれども実は非凡な日常へ最後の一歩を踏み出す。


    何があっても、取り戻すために――。


    373: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:09:10.82 ID:1PNeqrbLo



    ――


    番外個体「うまい具合に終わったけどさあ」

    番外個体「こんなボロボロになって時間掛けて、男子高校生一人連れ戻しただけって……」

    番外個体「おねーたまもあの人も、ヒーローさんのこと言えないくらい無茶しまくりだよね。まぁ、あまり言及したってもう仕方のないレベルの話なのかもしれなけどさ」

    番外個体「結局、おねーたま達は何のために戦ったことになるのかねー?」


    美琴「そんなの、決まってるじゃない」



    374: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/27(月) 21:09:43.41 ID:1PNeqrbLo





    美琴「自分のためでしょ」



    378: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:32:15.47 ID:ytrQCoN7o


    11月30日、学園都市――

    とある学生寮の一室に木霊する少女の声。

    長くしなやかな銀髪と人形のような碧眼をもつ14歳前後といった見た目の少女。

    白地に金の刺繍をあしらった修道服は、高級志向のティーカップの様な印象を放つが、所々が安全ピンで引っ詰められておりなんともアンバランスである。

    少女の名はインデックス。

    イギリス清教必要悪の教会に所属する「禁書目録」


    そして


    とある少年の「あるべき日常」の象徴。

    その少女は言葉を紡ぐ。


    379: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:32:41.48 ID:ytrQCoN7o








    インデックス「10万3000冊の『書庫』保護のため、敵対勢力の殲滅を優先します」

    と――






    380: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:33:36.62 ID:ytrQCoN7o

    学生寮の一室は現在半壊状態だった。


    「自動書記<ヨハネのペン>」により強制的に覚醒させられたインデックスの手によって。


    土御門「自動書記……?まさかローラの野郎が準備を進めていたのは……っ?!」


    土御門は、自分の中で一番信じたくなかった、だけれども目の前の光景のせいで限りなく正解に近づいた推論となってしまった可能性を口にする。


    土御門「インデックスの遠隔操作霊装による自動書記の完全な制御……!」

    土御門「くそっ!!これじゃあ何も知らない人間にとってはインデックスの独断での行動にしか見えないじゃないか!」


    そうなれば学園都市はインデックスを内包してはいられなくなる。

    そしてその責任を問われたイギリス清教はインデックスを連れ返さなければならなくなる。


    それが狙い。


    世界的なイギリスへのイメージに影響を及ぼそうともローラは禁書目録を欲している。


    381: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:34:42.23 ID:ytrQCoN7o

    土御門「恐らくこれは『清教派』……いや寧ろ『ローラ個人』の独断……騎士派も王室派もこんなやり方を勧めるはずがない」

    土御門「くそっ!何を考えてやがる!!」

    土御門にしては珍しく感情を隠さず顕わにする。

    だから土御門は気付くのが一瞬遅れてしまう。

    たとえそれが一瞬で、気付いた所でどうにもならないものだったとしても後悔する。


    土御門「……!遠隔操作により自動書記を起動するだけじゃない。遠隔操作特有ののノイズも無い……!遠隔操作でなく『首輪』によって自動起動するものと全く一緒じゃないか!!?」

    土御門「これでは……」


    正真正銘、完全な「魔神」という存在。

    10万3000冊もの魔道書の原典を保持し、それをあまつさえ通常の人間が生成する「ごくありふれた力」で制御する「人の身にて神々の住まう天界の片鱗に触れるもの」


    第三次世界大戦時はおろか、かつて上条当麻と対峙した「首輪」の損壊によるノイズのあった自動書記すら超越した存在。


    382: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:35:33.82 ID:ytrQCoN7o

    浜面「おい土御門っ!!一体何なんだありゃあ?!あれも魔術ってやつなのかよ?!」

    絶句する土御門だが、浜面のもはや怒声に近い呼びかけで現実に引き戻される。

    土御門「そうだな……詳しい説明はこの際省くが、あいつが尋常じゃない量の魔術の知識を保有しているのはわかるな?」

    浜面「まぁ、なんとなくは」

    土御門「今のインデックスはその知識を戦闘行為に総動員して学園都市に敵対している。他の何者かの意思に操られて」

    土御門「学園都市の戦力なんて、近代兵器やサイボーグ、駆動鎧はおろか、超能力者が全員束になっても蹴散らされるのがオチだろうな」

    浜面「おいおいまじかよ……」

    冗談を言うような状況ではないのだ。浜面は顔を蒼くする。


    383: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:36:27.12 ID:ytrQCoN7o

    土御門「こんなくそったれな破壊、絶対にあの子の意思なんかじゃない」

    土御門は拳を握り締める。

    世界の裏方の人間だろうと、自分に少女を救う程の力がなくとも関係ない。

    インデックスを救う。

    あの少年の日常を取り戻すために、惨めに無様に汚らしくても。


    土御門「こんな時に黒夜は今どこにいるかわからないし、戦力になりそうなのは俺と、せいぜいお前くらいだろうな」


    そこで土御門は部屋の隅になんとか逃げ延びていた滝壺と打ち止めに目をやる。

    土御門「まずはあいつらの安全の確保が先だ」

    土御門「まぁ、あんな怪物が相手だ、無理に協力しろとは――」

    浜面「みくびんじゃねぇ!!」

    土御門の提案を、浜面は全力で遮る。


    384: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:37:03.35 ID:ytrQCoN7o

    浜面「何でインデックスばかり、こんなに悲しい運命を背負わなきゃならねぇ?!」

    浜面「俺はあいつのことなんてここ数週間のことしか知らねぇし、大将と一緒にいたところなんて見たこともない」

    浜面「でも、これだけは言える」



    浜面「あの子は大将と一緒に笑顔になるべきだ!!」




    浜面「そのために俺みたいなろくでなしに何が出来るかなんて分からねぇが、最後の最後まであがいてやる!」

    浜面「逃げるなんて腑抜けた真似してたまるかってんだ!」


    385: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:37:50.47 ID:ytrQCoN7o

    土御門「……」

    目の前の少年もまた、自分と同じだった。

    土御門「悪かったな、いい意気だ」



    覚悟を決める二人。

    だが、


    気持ちだけで魔神は揺らがない。

    眩いばかりに輝く無数の虹色の球体が、突如として土御門と浜面に矛を向ける。




    ズガァァァァァッ!!



    動線上の総てを食い荒らし圧到的な破壊の奔流が発生する。

    浜面「うわぁぁぁぁあっ……って、あ?」


    その破壊は浜面の鼻先数ミリの所で引き返していく。

    無論その体に傷などない。


    しかし


    土御門「がっ……っ!ごぼっ!!」

    対照的に土御門はその身体の複数の箇所から血を吹き出し、片膝を地面についている。

    防御のための魔術行使。その反動が土御門を襲っていた。


    386: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:38:41.83 ID:ytrQCoN7o


    浜面「おい!!大丈夫かよ?!」

    土御門「こんなのは慣れっこだ。心配いらない」


    土御門「それより、来るぞ?」

    浜面「え?」

    土御門が指さす方向には、先ほどと変わらず立ち尽くす少女。

    その口から無機質で事務的なアナウンスが流れる。



    インデックス「第九章第二十一節、対象が防御に使用した術式の逆算が終了」

    インデックス「より効果のある術式を実行します」



    その明確な死への誘いが終わると共に、青白い色彩の光の帯が伸びる。



    今度は滝壺と打ち止めも巻き込むように。


    387: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:39:25.38 ID:ytrQCoN7o


    浜面「ば……っか野郎!!」

    土御門「っ!!」

    とっさに二人の少年は、二人の少女の元へ駆け寄り、光の帯を遮るように覆いかぶさる。



    だがそれが限界。



    そこで四人の視覚と聴覚は、破壊的な音と光によって塗り潰される。


    音が止んでいるのか、止んでいないのか。

    自分は今上を向いているのか、下を向いているのか。


    それすらもわからなくなる。


    だが、「分からないという意識」はあった。



    あれだけの攻撃が何の準備も無しに直撃した、だというのに意識を保っているのはおかしな事ではないか?


    そう思い、誰からとはなしにその目を開く。

    すると、


    光の進撃は、ある存在によってその歩みを阻まれていた。


    388: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:39:54.97 ID:ytrQCoN7o

    そこに立っていたのは黒と白。



    白の少年は片手をポケットに突っ込み、いかにも気だるげに立っていた。

    もう片方の手は首筋に添えられていて、彼に直撃したはずの光の帯はそのまま生みの親の少女の元に舞い戻る。


    黒の少年は右手を前に突き出し、いかにもおっかなびっくりといった面持ちで立っていた。

    その手に触れた光の帯は、四方八方に霧散し、最後にはその姿を消した。


    389: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:41:00.18 ID:ytrQCoN7o

    白の少年が、呆れたような驚愕したような、そんな声色で口を開く。

    一方通行「……チッ、何だありゃァ?あれが本当にあの暴食シスターかよ?」



    打ち止め「一方通行!!」

    目の前の少年に打ち止めはその顔を輝かせる。

    一方通行「おォクソガキ。また性懲りもなく地獄の底から戻ってきてやったぞ。感謝しやがれ」

    打ち止め「やっぱり、あなたはいつでも戻ってきてくれるんだね!ってミサカはミサカは再会の喜びを隠すこと無く表現してみる!」

    一方通行「はァ?つか学園都市最強舐めてくれてンじゃねェよ、こちとら第三次世界大戦すらどこぞの足手まとい抱えながら単独走破してンだよ」

    打ち止め「またまたー。そんな事言いながらロシアの極寒の大地ではきちんとお姫様抱っこしてくれて、瀕死の重傷になりながらもミサカを求めてくれたのに―このこのーってミサカはミサカはおちょくってみる!」

    一方通行「愉快な勘違いを生み出しそうな発言をしてンじゃねェぞクソガキ!!」


    場の空気にとんでもなく似合わない言い合いをそこで区切ると、一方通行は至って真面目な調子で口を開く。


    390: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:41:55.91 ID:ytrQCoN7o


    一方通行「……あとちょっとでクソッタレな日常に戻れンだ、どっか逃げとけ」

    打ち止め「戻ってきてくれるよね?ってミサカはミサカは恐る恐る聞いてみる」

    一方通行「……」

    危険な橋は今までもたくさん渡ってきた。目の前の少女を救い出すために。

    その橋からいつだって彼は帰還した。

    橋が崩れてなくなって、回り道ばかりだったけれども元の居場所に帰りついた


    だから、今度も帰ってみせる。取り戻してみせる。


    一方通行「あァ、約束する」

    一方通行「こっちには幻想<ラッキー>も、オマエたちのクソッタレな姉もついてンだからなァ」

    一方通行「必ず、戻る」

    打ち止め「うん!待ってる!ってミサカはミサカは元気な二つ返事!」


    391: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:42:27.24 ID:ytrQCoN7o

    ――


    上条「なんだよあれ?!どうしたんだよインデックスのやつ?!」

    土御門「カミやん!」

    上条「土御門!!大丈夫か?!色々話さなきゃいけないこともあるけど……」

    土御門「わかってる。まずはインデックスが先だ」


    感動的な友人との再開、とはどうやら行かなそうだ。

    土御門「あれは、遠隔操作霊装で強制的に自動書記を起動したインデックスだ、それも第三次世界大戦時よりも完全な状態で」


    土御門「カミやん」

    上条「どうした?」


    392: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:43:06.05 ID:ytrQCoN7o

    土御門「お前はあれと戦ったことがある」

    上条「何だって?!」


    それは、彼がそれ以前の彼を失うきっかけになった事件。


    土御門「お前は、あんな不条理を組み込まれたインデックスを助けだした。今までカミやんしてきたようにその右手一本で」

    そこまで話すと土御門は悔しそうに奥歯を噛み締め、噴出す血など気にせず握る拳の力を強める。

    土御門「……なんとも情けない話だが」

    土御門「頼む!お前たちしかいないんだ!インデックスを……」

    土御門「インデックスを、助けだしてやってくれ!!」

    上条「……」

    上条は何事かに思いを馳せる。

    それは、頭ではなく心に残る何か――


    393: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:43:40.30 ID:ytrQCoN7o

    上条「当たり前だ」

    そして彼は答えを出す。

    いつも通りの「上条当麻」として。

    上条「今まで散々インデックスに悲しい思いをさせてきたんだ」

    上条「絶対に助け出して、それからインデックスに謝るんだ。今までごめんって、約束守れてなくてごめんなって!」

    上条「だから、俺はここにいる」

    上条に戻る、上条当麻を上条当麻たらしめる「何か」

    大戦後北極海から帰還した上条が失っていた「何か」

    それが、少年の原動力になる。心の支えになる。


    394: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:44:17.12 ID:ytrQCoN7o

    土御門「カミやん……」

    土御門「ありがとう、そして本当にすまない。いつもカミやんにばかり……っ!」

    上条「気にするなよ」

    昼飯を代わりに買ってきたかのような気軽さで彼は応える。

    上条「それに、今は俺一人じゃない」

    上条「御坂も、一方通行もいる」

    一方通行「あァ?人が聞いてねェ所で何俺の名前出してやがる?とっととあの暴食シスター止めンぞ」

    美琴「そうよ。っていうかここあんたの部屋なんだから早くどうにかしないと消し炭になっちゃうわよ?」

    上条を地獄の底から引きずり上げてくれた、友。


    395: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:45:00.26 ID:ytrQCoN7o


    上条「ほらな?」

    土御門「お前って奴は……」

    気付けば周りに人がいる。

    そんな少年の在り方に、土御門は改めて感服する。


    番外個体「はいはーい。熱い友情♂はもっと平和な所でやってて下さいなー。ってか早くしないと、あのシスターちゃんまた攻撃してくるんじゃない?なんか第一位に攻撃反射されてからフリーズしてるけどさ」

    番外個体「ほらあなた達も急いだ急いだ!!」

    番外個体は言いながら、浜面と滝壺の背中を押し玄関に追いやる。

    浜面「お、おう」

    滝壺「ありがとう」


    396: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:46:09.86 ID:ytrQCoN7o

    美琴「打ち止めも大丈夫?」

    美琴もまた、自分とよく似た少女に駆け寄る。

    打ち止め「お姉様!うん!大丈夫だったよ!ってミサカはミサカは留守番も出来るビスコを食べて強い子アピール!!」

    美琴「良かった……!」

    美琴「あいつらに任せて、安全なところまで行くわよ」

    そう言い妹の手を握る姉。



    上条「御坂……お前」

    美琴「悔しいけど、私に出来るのはここまで」

    美琴「あんなのを止められるのは、あんたたちだけよ……」

    美琴「だから、私は私にできることであんたに協力する」

    美琴は二人をを送り出す。疑いもせずに。

    美琴「ただし!!」

    だがそこで、1つ条件をつける。


    397: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:46:48.05 ID:ytrQCoN7o

    美琴「無事に戻って来なさいよ?!インデックスはもちろんだし、実に不本意だけどあの白いのも」

    美琴「一人でも欠けてたら今度こそ承知しないわよ?」

    上条「あぁ、もちろんだ!」

    今までの罪滅ぼしとばかりに、約束する。

    今度こそ、目の前の少女も、今は心を囚われている銀髪の少女も、泣かせはしないと心に決める。

    美琴「ん!よろしい」

    美琴「ってことでさっさと行くわよほらほら」

    番外個体「へいへーい、人使いの荒いことで……」


    398: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:47:29.29 ID:ytrQCoN7o

    二人の少年は歩みだす。


    いつもの日常への最後の1ピースを取り戻すために。


    上条「さて、と」

    一方通行「これで好き勝手やっても文句は出ねェよなァ?」

    上条「一応ここ上条さんの部屋なんですが……」


    その部屋に残ったのは上条当麻と一方通行。



    そして


    399: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/02/29(水) 22:47:56.49 ID:ytrQCoN7o




    インデックス「第九章第二十六節、新たな敵兵の確認、戦闘思考の変更、戦場の検索を開始」



    インデックス「現状、上条当麻、及び一方通行の破壊を最優先します。



    403: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:37:07.02 ID:aBUCRRm9o


    一方通行「何やら物騒なことぬかしてやがるなァ」

    上条「あんなの……あんなのはインデックスじゃない!」

    一方通行「ンなの見りゃ分かンだがよォ……」

    一方通行「数日前までのお前見てると妙に説得力があるよなァ」

    上条「えー……」

    そこで二人の少年は他愛もない冗談をやめる。


    一方通行「冗談言ってンのもここまでだ、行くぞ」

    上条「ああ!」

    一人の少女を救うために。


    地獄の底から、引きずり上げるために。


    404: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:37:40.23 ID:aBUCRRm9o


    ――


    元々彼女、禁書目録は世界的な魔術結社の手に重要な知識や技術を渡さないために開発された防衛装置だ。


    そんなもの一対一万でもまだ甘い。

    一対二など愚の骨頂。

    彼女と戦闘行為に及ぶことは、一つの戦争を迎えることに等しい。


    405: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:38:17.60 ID:aBUCRRm9o

    上条「土御門の話では、俺が初めてあいつと相対した時、俺の右手で止められたらしい」

    一方通行「らしいってなァなんとも――」

    そこで二人の耳に、新たなアナウンスが飛び込む。

    それは無慈悲で無遠慮で、どこまでも冷たい切れ味を感じさせる。

    インデックス「警告、第二十八章第十六節、『硫黄の雨は大地を焼く』――完全発動まで2秒」

    その瞬間、半分以上が朽ち、安っぽい吹き抜けのようになった天井から、オレンジ色に灼熱する矢のような物の雨が降りそそいだ。

    上条「くっ!」

    一方通行「チッ、クソ野郎が」


    406: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:39:06.93 ID:aBUCRRm9o

    その数は実に50以上。吊り天井のように彼らを押し潰そうとしてくる。

    その術式に彼らの防御機構は機能したが。それだけ。



    とてもではないが近づくことなど叶わない。

    上条「くそっ!こんなのにどうやって近づけばいいんだよ?!」

    幻想殺しを頭上に掲げなければ焼き尽くされてしまう。

    一方通行「落ち着け三下が。俺らは自身にデフォで備わってる防壁を使ってるだけだ」

    反射が出来なければ命はない。だがこの魔術を反射しながら反射以外の能力使用の演算をすれば能力の制御を誤らないとも限らない。


    407: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:39:39.22 ID:aBUCRRm9o


    一方通行「比べてあの暴食シスターは馬鹿みてェに能力を放出し続けてる」

    一方通行「そして周囲に俺ら以外の人間がいねェ以上、自分だけを守ればいい」

    一方通行「急ぐンじゃねェ。どこかに活路があるはずだ」


    事実一方通行の言う通りだ。例えるならラミネート加工されたカードにドラム缶から水を注ぎ続けるようなもの。

    カードのサイズに対して水の量は絶大だが、それを総て注ごうともカードは破けてしまうことはない。

    だから安全。




    そう――




    今のままなら。


    408: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:40:31.71 ID:aBUCRRm9o

    インデックス「第二十八章第二十一節、有効な破壊力を確認。体制を立て直す暇を与えず、連撃で畳み掛けることが最善であると判断します」


    しかしその水の出所がドラム缶ではなく、一つの惑星に存在する水総てだったら?


    降り注ぐ灼熱はそれまでの倍以上の数に増大する。

    たった二人の人間を排除するために。




    そして



    インデックス「第三十一章第十二節、有効な破壊力であるものの決定打にはならないと判断。思考術式の変更を実行します」


    それがそもそも水ではなく、星の奥底で眠るマグマだったとしたら?


    409: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:41:26.50 ID:aBUCRRm9o


    インデックスの背中から、紅い、まるで血のような鮮やかさの翼が出現する。



    それらは形を自在に変え、上条達に牙を剥く。


    槍のような鋭さの翼が投擲される。

    上条「な……っ。右手で消しきれてない?!」

    それは彼の防壁を掻い潜り、食い荒らす。

    一方通行の反射も同様。


    一方通行(反射される角度が浅ェ……下手したら自分の体に食い込むぞ畜生!)


    だがそれで追撃が止むことはない。


    410: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:43:18.02 ID:aBUCRRm9o

    インデックス「第三十一章第十五節、現行の術式の効果を確認。威力と範囲を増長し、敵対因子の生命活動を停止させることが最も有効な解決策であると判断します」


    その翼は多大な衝撃波の弾幕と化す。


    上条「うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

    一方通行「ごっ、がァァァァァァあっ?!」


    二人はそのまま壁面まで吹き飛ばされ、突き破りそのまま十メートル以上も宙を舞い、やっとのことで地面に接する。


    上条「げほっ……。デフォルトの防壁が……何だって?」

    一方通行「チッ……うるせェよ。人の揚げ足とって喜んでンじゃねェ」

    その髪は乱れ、顔には幾筋もの血が滴っている。


    だがその足は止まらない。

    その顔は絶望で塗りつぶされはしない。



    在るべき所に戻るために、彼らは少女のために立ち上がる。

    何度でも。


    411: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:44:13.38 ID:aBUCRRm9o

    一方通行「上等じゃねェか。このぐれェの方がラスボスにゃ丁度いいだろ?」

    その背中から黒の噴射が現れる。

    謎のエネルギー源を誇る黒翼。



    だがその圧倒的な黒は、顕現した次の瞬間には姿を消してしまう。



    自身の色を眩いばかりの白に変えることによって。



    見れば頭上には光の粒子で形成された輪のようなものも浮いている。

    一方通行「その方がこっちも暴れがいがあるってもンだ」

    その姿はまるで天使。


    そして


    412: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:44:55.46 ID:aBUCRRm9o


    上条「『テメェ』は、毎度毎度俺に口出ししやがって、いい加減にしろよ……!」

    上条「なんどでも言う……ここでは黙ってろ!これは俺達の問題だ!!」

    上条の右腕に集まりかけていた何らかの力の収束が、別のそれ以上の力で強引に抑制される。


    幻想殺し。


    それが彼の右腕に宿る力であり、それが上条当麻の持つ唯一の「異能」

    そしてその右腕はこれまで無数の人間と世界を救い続けてきた。


    それ以外の他者の施しなど。きっと彼は受けない。


    413: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/03(土) 23:46:11.22 ID:aBUCRRm9o


    黒の龍神

    白の天使


    かつてロシアの大地に降り立った2つのイレギュラーが、史上最悪の魔神へ反旗を翻す。


    419: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:38:57.88 ID:t3XEOlNvo

    真紅の翼が、二人の少年へ無数の姿で牙を剥く。

    一方通行「はっ!大それたこと言っといてこンなもンかァ?!」

    純白の翼がそれを塞き止め押し返す。

    上条「おいおい、あんま挑発するようなことは……ってうわっ?!」

    幻想を砕く右腕が、その力で消しきれない翼を掴み、ねじ曲げ、そしてそれを別の攻撃と相殺させる。

    彼らの力は、魔神に限りなく迫っていた。


    上条「……大丈夫、か?」

    一方通行「お互い五体満足だ、これ以上の僥倖はねェだろ?」



    だが、魔神の力は増長を止めない。


    420: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:39:43.51 ID:t3XEOlNvo

    インデックス「警告、第三十五章第六節、首輪の機能に重大な問題を引き起こす因子を確認」

    インデックス「対侵入者用の特定魔術<ローカルウェポン>、聖<セント>ジョージの聖域を発動します」


    言い終わると、インデックスの瞳には魔方陣が描かれ、それと連動するように一回り大きな魔方陣がインデックスの前方に煌々と浮かび上がる。



    そして


    421: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:40:13.10 ID:t3XEOlNvo

    空間が裂ける。


    部屋全体を覆うようなその裂け目の中には何が蠢くのか。


    上条「何だよ……あれ……。っ?!」


    そこで上条は何かを思い出す。

    脳ではない何かに記憶された鮮明な「恐怖」



    一方通行「あン?ありゃあ……。ッ!!」


    そこで一方通行は何かを感じ取る。

    彼女の脳の情報を総て引き出せるが故の漠然とした「危機感」


    その微かな前兆は、彼らの身体を自然とその場から遠ざける。


    422: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:40:49.38 ID:t3XEOlNvo


    ――ッ!!


    あまりの爆音に音が消え去る。

    一瞬前まで二人がいた場所にあったのは直径数メートルにも及ぶ光の柱。


    それがインデックスの魔方陣から生じ地平線まで伸びている。


    上条「あの魔術……何だ?どこかで……」

    一方通行(あの柱を構成する無数の「光の粒子」、その総てが別々のベクトルをもってやがるだと?!)

    一方通行(あンなもン真正面から受け止めて処理しきれるわけねェだろ?!ふざけてやがる!!)



    圧到的過ぎる破壊の波。

    それは鋭さを突き詰めすぎて一種の美しさのようなものを持ち、彼らの思考を釘付けにする。



    だから気付けない。



    ほんの僅かな時間差で二撃目が狙いを定めていたことに。



    そしてそれは気づかれぬままに背後からヒーロー達を蹂躙する。


    423: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:42:43.95 ID:t3XEOlNvo




    はずだった。




    ズガァァァァァッ!!




    上条「なっ?!」


    突然の轟音。

    にも関わらず上条達の身体に負傷はない。


    何かまた新手の攻撃が来るのではないか。

    その恐怖からすぐに上条は振り返る。


    しかし


    見ればインデックスは足元のバランスを崩し仰向けに倒れ込んでいた。

    追随するように光の柱が上空へ投げ出され、軌道上の総てを破壊し尽くす。



    一方通行「こいつァ……?」


    一方通行「あのシスターの周囲の磁場が無理矢理に変質させられてやがンな」

    一方通行「その磁場に修道服の装飾が引きずられたのか……?」




    424: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:43:32.47 ID:t3XEOlNvo

    「さっきはあんなこと言って逃げ腰になっちゃったけど」

    一瞬無音になった室内に響く凛とした聲。



    「私の能力の真髄はあんたたちみたいな230万分の1の天災じゃないの」

    「どこにでもありふれた能力、それの最上位だからこその応用力」

    「圧倒的な出力や攻撃性、絶対的な有利や防御機構なんて無くたって戦えるの」



    「私には私のできることがある!!」



    学園都市の電気操作系能力者の頂点にして、七人しか存在しない超能力者。その第三位。



    御坂美琴。



    最後の戦場に、最後のヒーローが舞い降りる。


    425: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:44:02.16 ID:t3XEOlNvo


    上条「御坂!」

    その顔は、素直に喜びを表していた。

    一方通行「ったくよォ。あの顔したガキには命知らずしかいねェのか?」

    その顔は、仏頂面をさげながらも口元は微かにほころんでいた。


    426: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:44:30.72 ID:t3XEOlNvo

    美琴「私だって戦える」

    美琴「私だって――」




    美琴「あんた達の力になれる!!」





    彼女の少年を救うための手はいつも空を切っていた。

    それがついに少年を掴んだ。

    だから、もう離さない。

    不幸になど、させない。



    だから少女は再び少年たちに手を伸ばす。


    427: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:45:06.12 ID:t3XEOlNvo

    一方通行「はン。格下のくせに言うじゃねェか」

    美琴「う、うっさいわねこの馬鹿!少しは私にもいい格好させなさいよ?!」

    一方通行「つゥかなーンなンですかァ今のドヤ顔?俺達のピンチ救って救世主気取りかァ?」

    美琴「ばっ、馬鹿言わないでよ!別にあんたなんてどうでも良いし……」

    一方通行「じゃあやっぱり無能力者の方かァ?」ニヤニヤ

    美琴「~~~っ!!」

    上条「おい!誰のこと話してるか分からねぇけど早くしないとまたインデックスが起きちまう!!」

    電磁通行(えぇー……)


    428: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:45:34.98 ID:t3XEOlNvo


    美琴「ま、まぁそうね。早くどうにかしないとこの街自体もやばいし。って言ってもどうすんのよ?」

    上条「俺の右手で、インデックス頭の辺りの魔方陣に触れれば元に戻るらしい」

    美琴「らしいってどういう……ってまさかあんた?!」


    記憶喪失。



    上条本人の他には、美琴含め極少数の人間しか知らない彼の抱える事情。


    その元凶が目の前の少女だというのだ。


    上条「そういうこと。悪いな、こんな時に確実なこと言えなく――」


    そこで一方通行の足が二人を乱雑に蹴り飛ばす。


    429: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:46:27.50 ID:t3XEOlNvo

    一方通行「呑気にしゃべくってンじゃねェよ馬鹿野郎共」


    その直後、二人がいた場所へ光の柱が再び破壊を生み出した。


    美琴「痛ったいわね何すんのよ?!」

    一方通行「このやり取り何度目だクソ野郎?!」



    そこまで言い合うと、三人の表情から穏やかな色が抜ける。



    美琴「さて、おふざけはここまでにして」

    一方通行「囚われの姫サマ救出劇ってかァ?」

    上条「あぁ」

    上条「インデックスは今も震えてる。怖いって言ってる」

    上条「あの原典達を止めればインデックスは帰ってこれる!」

    上条「行くぞ!」



    三人は手を伸ばす。

    心を囚われた、日常の象徴たる少女へ。



    三人は歩を進める。

    今は歪に変質させられている、在るべき場所へ。


    430: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:47:07.52 ID:t3XEOlNvo

    インデックス「第三十五章第九章、能力者達の三位一体の構造を確認」

    インデックス「対象の力は三者でひとつの役割を持っていると推測」

    インデックス「対応策は一つ。三者の内の一つを集中的に攻撃し、三位一体の構造を崩してしまうことと断します」

    インデックス「同時に第四十四第四節、天使の力<テレズマ>に酷似した力の生成を確認」

    インデックス「十字教術式に対しての有効術式を代用し、上記の力の行使に対して最も有効な術式の構築を開始します」


    431: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:47:30.16 ID:t3XEOlNvo


    インデックス「命名」

    インデックス「神よ、何故私を見捨てたのですか<エリ・エリ・レマ・サバクタニ>」

    インデックス「発動準備完了。即時実行します」


    432: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:48:18.41 ID:t3XEOlNvo


    その瞬間、どこまでも深い漆黒と鮮血のような深紅の粒子の収束した光の柱が顕現する。


    それは真っ直ぐに上条を射ぬく為に突き進む。



    上条は思わず右手を眼前にかざす。

    しかしその行動は意味を為さない。



    美琴「力を変質させても根本は変わらずワンパターン」

    美琴「インデックス、あんたお腹空かしてんじゃないの?」

    美琴「とっとと『いつもの場所』に帰ってきて、このバカの手料理でも食べて元気出しなさい」



    美琴の磁力操作により、狙いが逸れる。

    二度目のそれは、インデックス側も予測していたようで先程よりも逸れる角度が浅く。修正は容易そうだった。


    433: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:49:03.54 ID:t3XEOlNvo

    上条「あ……ありがとう!」

    美琴「全く。言ったじゃないの、誰かに頼りたいときは素直に言いなさいって」



    美琴「それからね」

    美琴「特別なヒーローなんていらない。誰でも主人公になれる」

    美琴「あんたのその言葉、すごく素敵だと思ったし尊敬できるわよ?」



    美琴「でもね、あの娘の物語に限っては、あんたっていうたった一人の主人公<ヒーロー>が必要不可欠なの!」



    少年への精一杯のエール。

    言葉の力というものを御坂美琴は目の前の少年に教えられた。

    だから、自分も返す。


    434: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:49:34.68 ID:t3XEOlNvo

    上条「……!」

    美琴「ちょっと間違った道に進みかけたくらいで固まってんじゃないわよ?」

    上条「御坂……」


    美琴「早くあの娘を救ってきなさい!上条当麻!!」

    上条「あぁ!行ってくる!!」



    上条はインデックスの元へ駆ける。



    だが残酷にも光の柱はすぐさま軌道を戻し始める。


    そこへ、もう一人の主人公が割り込んだ。


    435: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:50:30.51 ID:t3XEOlNvo


    一方通行「おいおい、オマエに黒とか闇なンざ死ぬほど似合わねェンだよ」

    一方通行「やかましく騒いでたほうが『らしい』ぜェ?」

    軌道の戻りかけたその柱の進路に、彼の翼が立ちはだかる。



    一方通行「別にオマエやあの暴食シスターがどォなろうが知ったことじゃねェが」

    一方通行「ちっとばかし特殊なだけの人間を、勝手な事情で使い潰してる『闇』ってやつは気に入らねェな」

    一方通行「作り出された命だろォが、周りにクズしか居ねェ環境に捨て置かれよォが」

    一方通行「それで、あのガキが殺されてい良い理由になンか、ならねェよ」



    自分が変わるきっかけになったとある少女。

    その少女と、インデックスが何だかダブって見えた。

    らから一方通行は、放っておけなかった。


    436: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:51:14.94 ID:t3XEOlNvo

    上条「一方通行……!」

    一方通行「それから」

    一方通行「一つ、まだオマエの答えを聞いてなかったからもォ一度聞くぞ」

    上条「え?」




    一方通行「オマエが一番大切な物は何だ?泣き顔なンざ死ンでも見たくねェ相手は誰だ?」

    上条「そんなの、決まってる」




    上条「インデックスだ」

    上条「あいつをもう二度と泣かせなんかしない」

    上条「あいつをあんな風に扱う連中は、皆まとめてぶっ飛ばす!!」


    それは、記憶以外に眠る「一番最初の彼女との約束」


    一方通行「いい心がけだなァ」

    一方通行「行け!無能力者!!」


    上条「ああ!!」


    437: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:51:56.06 ID:t3XEOlNvo

    一方通行、御坂美琴

    二人の身にかかる重圧は相当なものだった。

    にも関わらずその二人の力では、インデックスの放つ魔術をある程度弱体化させ、食い止めることしか叶わない。

    ただそれだけ。


    彼らの力では、根本的に目の前の少女への勝利には届かない。


    438: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:52:21.96 ID:t3XEOlNvo

    美琴「でも、それで構わない」

    一方通行「その間に、あのどうしようもねェ馬鹿野郎がケリをつければ、それで俺たちの勝ち確定だ。クソッタレが」


    439: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:53:22.27 ID:t3XEOlNvo


    一直線に上条は駆ける。



    上条(インデックスに謝るんだ。今までごめんって。約束守れなくてごめんなって!)

    上条(その為に、絶対救ってやる)

    上条(どうしようもない組織のしがらみや、どこかの誰かの陰謀)

    上条(その全てから、何があってもインデックスだけは救ってみせる!!)




    上条「神様」

    上条「この世界が、相も変わらずあんたの掌の上<システム>で動いているっていうのなら」

    上条「まずは――」


    440: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:53:48.73 ID:t3XEOlNvo










    上条「その幻想をぶち殺す!!」







    442: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:55:21.86 ID:t3XEOlNvo


    ついに



    その右腕がインデックスに触れる。



    パキィィィィィィン!!



    まるでガラスが砕けるような澄んだ音が、部屋中に反響する。



    空間の亀裂は消え去り、魔方陣は不可視となる。



    赤黒い光の柱は霧散し、冷徹だったアナウンスは壊れたスピーカーのように途切れ途切れに言葉を紡ぐ。



    インデックス「警、告   第……五十………節…首輪………壊…………修復…………不可能…………」


    444: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:56:19.23 ID:t3XEOlNvo


    全身の力を無くし、だらりと倒れこむインデックスを上条は抱きとめる。



    もう二度と、離れないように。


    その空間に、破壊の権化はもう存在しなかった。



    そこにいるのは、在るべき日常。



    ――


    445: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:57:29.07 ID:t3XEOlNvo

    上条「インデックス!!」

    その呼びかけに、修道女はうっすらと瞳を開く。

    そしてその指は、宙を指し、口元は何かを訴えようとしていた。


    上条「え……何……?」


    そこで上条は気付く。

    先程までの破壊の傷痕が、無数の白い羽となり部屋中を舞っている。



    上条当麻の記憶喪失の原因。



    それが、今まさに上条に触れんとしていた。



    結局、最後に彼を嘲笑うのは「不幸」。

    どれだけ努力しても、積み重ねても。たった一つの不幸で水泡に帰す。



    上条(あぁ……結局、こうなるんだなぁ……)




    上条(まぁ、これもありかな?)




    上条(全くもって)




    上条(不幸だ)




    ゴッ――!!




    轟音と共に、彼の視界は塗りつぶされる。


    446: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:58:29.32 ID:t3XEOlNvo

    美琴「なーに悲劇のヒーロー気取ってんのよ?」


    上条「……え?」


    上条「あれ?俺……?」

    事態が飲み込めない。

    記憶すら破壊した羽が自分に降り注いで、右手なんてもう間に合わなくて、ぶつかって……??


    美琴「オカルトだー非科学だーなんて言っても『重力』なんていうごく一般的な物理法則に従って落下してるじゃないの」

    ふと辺りを見渡してみれば、不自然なほどに砂塵が舞っている。

    美琴「それなら、強い力をぶつけてやれば挙動は変わるし、危険な物なら遠距離から狙えば良い」

    美琴「警戒して損したわよ」

    気だるそうに髪をかき上げる少女。

    その少女の代名詞「超電磁砲」


    それが生み出す膨大な余波によって、方々に羽は散っていた。

    超能力が魔術に干渉、という歴史的な快挙な気もするが、その場の人間にその価値を理解するものはいなかったし、そもそもそんな問題は瑣末であった。


    448: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/06(火) 00:59:15.23 ID:t3XEOlNvo

    そして


    一方通行「おい暴食シスター。いつまでも寝てンじゃねェ」

    上条「あ、おい!」

    いつの間にか一方通行がインデックスの頭に触れている。

    インデックス「……う、うぅん……?」

    たったそれだけの動作で、一体何をどうすればそうなるのか、直後にはインデックスが目を覚ます。

    一方通行「こいつの頭ン中は、ネットワークを介せば全部俺が観測出来ンだよ」


    一方通行「俺らにもちっとぐれェ幻想<ラッキー>起こさせやがれ」


    上条「あ、えっと……ありが、とう」




    美琴「何間抜け面して呆けてるのよ?都合が良すぎて現実感無いのかしら?」

    一方通行「オマエが今までかっさらってきたハッピーエンドは、こンなもンじゃなかったはずだぜ?」


    458: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:33:20.06 ID:XnOpMes3o


    一方通行「おらよ、姫サマのお目覚めだぜ?」


    上条「!インデックス……!!」

    上条はふと我に返り、少女を一層強く抱きとめる。

    インデックス「とう……ま?」

    抱きとめられた少女のぼんやりとした瞳に、生気が舞い戻ってくる。。


    459: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:34:11.39 ID:XnOpMes3o


    インデックス「帰ってきてくれたんだね?」

    上条「ああ、ああそうだ。帰ってきたよ俺!」

    インデックス「良かった……」

    その表情はとても穏やかで、とても自然な笑顔だった。

    肩の荷が降り、もう決して強がる必要のない心の底から安心した少女のようにも見え、慈愛に満ち溢れた聖母のようにも見える笑顔。

    上条にとっての一つの「終点」




    だが彼には、まだやるべき事が、言うべき言葉が残っていた。


    460: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:34:56.25 ID:XnOpMes3o

    上条「ごめんな、インデックス」


    インデックス「え?」

    上条「俺……約束してたのに……忘れてた」


    上条「ロシアから必ず戻る。必ず戻ってお前に今までのことを謝るって言ってたのに……」

    上条「その約束を守らないどころか、ロシアから戻ってきてすぐに、またお前一人置いて出て行っちまって……」

    上条「ほんとに俺……大馬鹿だ」



    その声は震えていた。

    大切な少女をまた傷つけてしまったことへの後悔。

    それを考えつかずに行動してしまった自分への憤り。



    そしてやっと取り戻せた平穏への安堵。


    461: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:35:49.47 ID:XnOpMes3o


    その言葉に対して、少女は応える。


    インデックス「良いんだよ」

    上条「え?」


    インデックス「良いんだよ。もう」


    インデックス「私があの時ロシアで言ったことも忘れちゃったのかな?」

    インデックス「私は『いつものとうま』が戻ってきてくれればそれでいいって言ったんだよ?」

    上条「それは、そうだけど……」

    彼女の言わんとすることが、上条にはいまいち分からなかった。

    彼女の意図する所。


    それは。


    462: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:36:43.23 ID:XnOpMes3o

    インデックス「ロシアから戻ってきて私と会った時のとうまは、絶対『いつものとうま』なんかじゃなかったんだよ?」

    上条「……!」



    彼女は、気づいていたのだ。

    上条当麻という人間の根幹が、様々な思惑によって揺るがされていたこと。

    彼自身、もうどうしていいかわからなくなっていたこと。

    作為的に彼の心の在り方に「二度目の死」等と呼ばれるような事態が起こされていたことも。



    誰よりも早く。ロシアから戻ってきた上条当麻と再開したその時から。


    463: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:37:55.68 ID:XnOpMes3o

    インデックス「私こそ、悩んでるとうまに何もしてあげられなくてごめんね?」


    だから、彼女もまた謝る。

    助けられるばかりで、何も出来なかったから。

    苦しむ少年に手を差し伸べられなかったから。



    上条「インデックス……っ」

    上条「心配ばかり掛けちまってごめんな?」

    上条「本当に、ごめんな……!」


    少年の瞳から雫が零れ落ちる。

    ぼろぼろ、ぼろぼろと。大粒の涙が幾つも。


    464: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:38:41.83 ID:XnOpMes3o

    インデックス「……うん!」

    インデックス「いつものとうまが戻ってきてくれて、凄く嬉しいんだよ!」


    対照的に満面の笑み。

    すべてを照らし出すような明るさを持った、太陽のような最高の笑顔。


    それを見て彼は自覚する。


    どれだけの非日常に身を置いても、一度は自分というものを失っても。

    この部屋に戻り、この少女の笑顔を見れば、一瞬の内に自分は在るべき日常に戻れるのだ。

    この少女がいたから、闇の底のような戦場と陽の当たる日常を、何度も行き来することが出来た。

    隣り合えなかった時間も、離れた距離も関係ない。

    それほどまでにインデックスという少女は、彼にとって大切な存在だったのだ。と。


    465: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:39:35.60 ID:XnOpMes3o

    上条「俺は今まで、お前を騙し続けていたのに、一番最初の『インデックス』を知らなかったのに……」

    上条「本当に、許してくれるのか?」

    その問いに一秒とまたずインデックスは即答する。

    インデックス「記憶の有る無しなんて関係ないんだよ?」


    インデックス「とうまはとうま」

    インデックス「それ以外に理由が必要かな?」


    それが、彼女の答え。

    記憶を失ってまで一人の少女を地獄の底から引きずり上げた少年への。

    失ってからも、自分の内から沸き上がる衝動に従って、インデックスを守り続けた『上条当麻』への。


    466: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:40:15.83 ID:XnOpMes3o

    インデックス「それに、とうまはまた私を救ってくれた」

    インデックス「どうしようも無いしがらみも、面倒な組織の力関係も関係なく、あの時と同じように」

    インデックス「案外、とうまはまだ覚えているんじゃないのかな?」


    上条「覚えてるって……。脳細胞が壊れてるんだぜ?一体どこに……」


    そこまで言って彼は思い出す。

    「今」の自分になってから、あの病室で初めてインデックスという少女に会った時のことを。

    とある少年と少女の物語が始まった瞬間の光景を。



    インデックス「そんなの、決まってるんだよ?」


    467: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:40:42.08 ID:XnOpMes3o






    インデックス「心に――、じゃないのかな?」






    468: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/07(水) 21:41:12.59 ID:XnOpMes3o






    インデックス「お帰りなさい、とうま」

    上条「ただいま、インデックス」





    474: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:24:54.91 ID:KohMoEGlo

    11月30日、学園都市――

    冬の訪れも間近に迫り、冷たく澄んだ空気と昼下がりの青空がどこまでも透き通った印象を抱かせる。

    さて、人口の八割を学生が占めるこの街だが、今日はより一層学生の人数が多いように見受けられる。

    それもそのはず。


    今日は、一端覧祭。

    毎年十一月に行われる、世界最大の超巨大文化祭。

    大覇星祭とは異なり、外部向けのイベントではないためTVカメラなどのいわゆる「外」の報道機関の姿は伺えないが、入学希望者の学校見学やオープンキャンパスを兼ねているため著しく学生の数が多い。


    475: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:25:34.03 ID:KohMoEGlo

    実はこの一端覧祭、一部でまことしやかにとある噂が囁かれている。

    いわゆる都市伝説というやつで、とても進んだ未知の技術を持っており超能力開発なんてものまでやっているなどという性質上この街にはこの手の噂が絶えなかったりする。

    一部には事実も混じっているとかいないとか。

    そんな信憑性の欠片もない噂が、少し耳を澄ませばそこかしこから聞こえてくる。


    476: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:26:39.19 ID:KohMoEGlo

    「だからー。この一端覧祭は大覇星祭の時並みにきな臭い噂があるんですってー!」

    「また都市伝説ですの?飽きませんわねぇ……」

    「今までそれが原因で何度も危ない目にあってるんですけど、分からないんですかね?」

    「む!何二人共その目は?さては信用してないなー?」

    「当たり前ですの」ハァ…

    「ま、まずは聞いてくださいよ……」

    「まぁ聞くだけなら……」


    どこにでもいそうな女子中学生の三人組。どうやらその内の一人に熱心な都市伝説マニアがいるようだ。


    「今年の一端覧祭、準備期間にも怪しい事件が起きてるんです……!」

    「その名も『空白の第七学区』!!」

    「それってもしかしなくても……」

    「ま、まぁまぁ。とりあえず聞いてあげましょうよ……」


    477: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:27:54.62 ID:KohMoEGlo


    「11月20日、一端覧祭の準備真っ最中の学園都市の第七学区」

    「その日の午後の数時間、第七学区のとある学生寮にて大規模な爆発事故があったんですよ」

    「そして付近でも同じような爆発が多数あって、極めつけに天井の切り取られた軽自動車が発見されたんです!!」

    「しかもその現場を見た人間はどこにもいないって話じゃないですか!」

    「これはきっと何かの事件。事件ですよーっ!!きっと『ミチのてくのろじー』を持った組織が学園都市に侵攻してきたんですよッ!!」

    「それ……残念ですけれど事件でも何でもないんですの」ヤレヤレ

    「へ?」

    「私達二人は風紀委員<ジャッジメント>ですから、そういった話も耳にするんです」

    「なんでも、新しい兵器のデモンストレーションの予行練習をしていて暴走事故があったんですって」

    「被害のあった学生寮の住人や、車の持ち主には学園都市のお偉いさん方が直々に謝罪の後、賠償金を支払ったそうです」

    「そうなの……?」

    「加えて補足しますと、今日の午前中にも同じ場所で同様の事故があったようですの。先ほど私達も現場を見てきましたわ」

    「そ、それは知らなかった……です」ヨヨヨ…


    もっとも、その中枢には学園都市の少年少女が関わっていたりする。


    「そういえば御坂さんはどうしたんですか?確か今日アメリカから戻ってくるって連絡があったみたいですけど?」

    「同行した第一位の殿方と一緒のようですの。なにやらまだやることがあるようでして……」


    そして、その中には彼女らの親友の第三位の超能力者もいたりするわけで。


    478: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:28:37.80 ID:KohMoEGlo


    ――



    いくつもの屋台が立ち並ぶ通りを、数人の男女が賑やかに練り歩いている。


    美琴「ほんとあんたの能力って何でもありよねぇ……全治十五分の怪我ってどういうことなの?」

    打ち止め「この人はミサカの自慢の人なのでーってミサカはミサカは鼻たかだか―!!」

    番外個体「最終信号は何もしてないんだけどそこんとこどうなの存在価値あるの?」ゲラゲラ

    インデックス「お、同じ顔が三人並んでるんだよ……っ?!」

    上条「上条さんは右手付近だけ全然治ってないのですが……」

    一方通行「右手以外治っただけでも儲けもンだと思いやがれ。それかその馬鹿げた右腕今すぐ切り落とすか?」

    上条「う、うう嬉しいなー!健康って素晴らしいなーっ!!」


    479: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:29:19.22 ID:KohMoEGlo


    何の変哲もない、騒がしい日常。

    彼らはそのありがたみを、全力で味わっていた。



    インデックス「むむ!!あっちの方から美味しい食べ物の香りがするんだよっ?!これはすぐに確認せざるを得ないね?らすとおーだー?!」

    打ち止め「もちのろんだぜ相棒!ってミサカはミサカはインデックスに同意してみる!!」

    二人の少女が、人間の極めて原始的な欲求に負けて輪を離れていく。

    それにすぐさま反応して上条も後を追う。

    上条「ちょ!?お前らいつの間にそんな意気投合してるんだ?っていうかインデックス?!帰ってきて早々お前は上条さんのお財布事情に氷河期を告げるのか?!おい待ていや待って下さいちょっとぉぉぉぉ?!」


    480: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:29:52.20 ID:KohMoEGlo

    一方通行「……なンだありゃ?」

    番外個体「あなたは追っかけなくて良いの親御さん?」ニヤニヤ

    一方通行「知らねェ、つゥか面倒くせェ」



    美琴「……っていうか」


    美琴「何で結局この三人が残るのよ?」

    番外個体「あ、じゃあミサカどっか行ってるわ、後は若い二人でごゆるりと」ソソクサ

    美琴「待って勘弁してお願いこいつと二人とか罰ゲームなんだけど耐えられないお願いします」


    481: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:30:29.12 ID:KohMoEGlo

    番外個体「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」

    美琴「姉をからかうんじゃないわよ?!」

    番外個体「だって面白いしー?いじり甲斐あるしー?」

    美琴「この……!」

    番外個体「っていうかヒーローさんの所行かないのー?」ニヤニヤ

    美琴「なっ?!何であいつの所に行かなきゃならないのよ?!」

    番外個体「ちっ。タグリング渡さねぇのかよ」

    美琴「うわ何か凄い毒づいた?!元から毒まみれな気もするけど!」


    482: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:31:03.12 ID:KohMoEGlo

    その姉妹のやり取りを聞きながら一方通行は辺りに目をやる。


    にぎやかな会話。

    自然と生まれる笑顔。

    裏に潜む陰謀など無い善意。



    平穏で変化のない「日常」


    それを彼は、自分でも実に笑ってしまうが他人の分まで取り戻していた。


    483: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:31:42.31 ID:KohMoEGlo


    一方通行「……。似合わねェったらありゃしねェな」


    そんな彼の後ろから、少女の声。



    美琴「あら、そんなこと無いんじゃない?」


    番外個体に少々(と言っているのはあくまで美琴本人のみ)お灸を据えた美琴が近づいてきていた。


    一方通行「あン?」

    美琴「あんたにも十分似合ってるわよ『平和』」

    一方通行「オマエに何が分かンだよ?」


    484: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:32:11.78 ID:KohMoEGlo


    美琴「分かるわよ」



    美琴「第一印象は最悪だったし、一緒に居たのなんてほんの二、三週間」

    美琴「どうしようもなく性格が悪くて、コミュ障でボキャ貧だけど」



    美琴「あんたって少しだけ、優しいのよね」



    485: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:32:51.37 ID:KohMoEGlo


    一方通行「……」


    美琴「打ち止めが『不器用』っていうのも何となく分かるわ」

    その顔は、初めて一方通行という少年にあった時からは考えられないほど優しい微笑を浮かべていた。


    美琴「あんたが過去にやらかしたことを許す気はないし、これからも絶対に許してなんかやらない」

    美琴「でも」


    美琴「少しでも、優しさみたいな暖かいものを持ってるんなら、あんたみたいなのでも日常にいて、平和に過ごしてもおかしくはないんじゃない?」

    一方通行「はァ?何言って――」


    486: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:33:55.86 ID:KohMoEGlo

    番外個体「なになに?おねーたまデレたの?!」

    美琴「だ、誰がデレるか?!」

    番外個体「えー?乗り越えるべき障害が大きいほど愛っていうのは燃え上がるものなんだぜ?それを考えるとおねーたまとそこの第一位ってお似合ばばばばばばっ?!」

    美琴「お仕置きが足りなかったみたいね……?」ゴゴゴゴゴ

    番外個体「ちょっ?!最大出力のミサ電波カジャミングにミサよりネカミサットワークにカミエラーぶくぶくぶくぶく……」



    一方通行「……」

    番外個体の乱入により発言のタイミングを逃した一方通行は、誰にともなく呟く。

    周りの喧騒に消え入りそうなほどの声で。


    487: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:35:16.13 ID:KohMoEGlo


    一方通行「……まァ」

    一方通行「都合良く許されるよかその方が俺も助かるなァ」

    一方通行「……ありがとよ」



    一方通行「それに」

    一方通行「オマエ、ガキの癖に随分と人を救うのがうめェじゃねェか」




    一方通行「なんともヒーロー向きだなァ」



    その口元は、確かに綻んでいた。


    488: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:35:45.50 ID:KohMoEGlo

    美琴「え?何か言った?」

    番外個体と愉快な姉妹喧嘩ををしながら一方通行に顔を向ける。

    一方通行「……何でもねェよ」

    その問いに答えること無く一方通行は一人歩き始めてしまう。

    美琴「あ!ちょっと!人のこと無視すんじゃないわよ!!



    ――


    489: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:36:19.93 ID:KohMoEGlo

    一方通行。

    御坂美琴。


    彼らの溝は決して無かった事にはならないのかもしれない。

    彼女らが闇の底に居たという事実は変わらないのかもしれない。

    過去は変わることはないし。犯した罪は消えないのだから。



    だけど、未来がある。

    お互いが自分と相手を見つめ直した上で、新しい関係の持ち方ができる。



    そして、手は取り合える。

    誰かを助けたければ、手を差し伸べれば良い。

    誰かに助けて欲しければ、手を伸ばして自分を示せば良い。

    協力して欲しければ、お互いに手を伸ばせば良い。



    だから、取り戻せる。

    仕組まれた悲しい運命<サダメ>も、争いを呼ぶ能力<チカラ>も無い。



    ありのままの「一方通行」と「御坂美琴」としてのこれからを。


    490: >>1 ◆rVoI8UOL4Y 2012/03/08(木) 22:37:14.64 ID:KohMoEGlo


    美琴「ちょっと!待ちなさいってば!人の事をスルーしてんじゃないわよっ!?」




    一方通行「あァ?何だ格下?」


    美琴「格下言うな!」




    ―Fin―


    引用元: 一方通行「あァ?何だ格下?」 美琴「格下言うな!」

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