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    女神「魔王が人間界に攻め込んだようです」

    1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:23:03.66 ID:d3sHRN+E0

    従者「あれ和平とかは……」

    女神「人間界に対する不可侵は執り行われていません」

    女神「魔界と行った和平は飽くまで天界とのものですし、人間界は我々の管轄という訳ではありません」

    女神「異教徒扱いされてはいますが、魔王を崇拝する者達もいますからね」

    従者「それはまた面倒な……他の魔王達はどういう判断で?」

    女神「元々魔界でも浮いていた者らしく、侵略意思を持たない者達も傍観するようですね」

    従者「あー……面倒な」



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    3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:26:07.34 ID:d3sHRN+E0

    女神「それと、勇者と呼ばれる者が現れたようですね」

    従者「勇者、ですか……具体的には?」

    女神「どうも人間の中に神のお告げが、という類の者が定めたようでして」

    従者「完全に投げっぱなしの祭り上げじゃないですか」

    女神「ええ、流石に見かねた我々も少し力を授けたのですが……」

    女神「勇者として覚醒した! と更に周りが盛り上がってしまいまして」

    従者「それ駄目なパターンの援助じゃないですか」


    5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:29:23.12 ID:d3sHRN+E0

    従者「なんか見えてきた……俺が勇者の補佐をしろって事ですか?」

    女神「その通りです。今回は微弱ながらもリジェネレーションの効果もつけます」

    従者「矛と盾になれって事ですね」

    女神「……その勇者は女の子なのです。いくらなんでも最前線に立たせる等不憫で不憫で……」

    従者「あー……まあ女の子の盾になるのでしたら、気合入れて体を張りますよ」

    女神「……」ジト

    従者「そんな目で見ないで下さい。俺も男ですし生まれは人間なのです」

    女神「時折、貴方のその吹っ切れ方は誇らしく思えますね」

    従者「どうも」


    6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:32:17.30 ID:d3sHRN+E0

    女神「魔王城は南の樹海の国グリーングランドと、東の砂漠の国シーサンドとの間にある孤島に存在します」

    女神「当然ですが魔王城に近いほど魔物達も強い種族が多くなります」

    従者「シーサンドは軍事力高めだからいいとしても……グリーングランドは大丈夫なんですかね?」

    女神「鬱蒼とした樹海の地の利を生かし、上手く魔物を退けていますよ」

    女神「中央の川が集まる国ウェッブリバーは二ヶ国の決壊に備え、国境沿いに軍隊を配備。現状応援要請が無い為、それ以上の深入りはできないみたいですね」

    女神「西の洞窟の国ロックケイブ、北の雪国シーサンドはウェッブリバーに兵士を派遣している状態です」

    従者「グリーングランドとシーサンドは要請をしている暇は無い、と?」

    女神「このまま魔物勢の戦力を削ぎ落とし、弱まった所を叩くつもりでいるのでしょうが……」

    従者「魔王の周辺を固める魔人や魔物が出てきたりでもしたら、ですか」


    7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:35:18.11 ID:d3sHRN+E0

    女神「人間界への降臨は以前同様の方法で行います」

    従者「まあ、そうでしょうね」

    女神「また同様に帰還に際して人間として生きる事を強く望めば、以後そのまま人間界で生きる事もできます」

    従者「どうしたんですか? 今回は同じ事をそんな……」

    女神「……」

    従者「?」

    女神「これ、本来はその都度行わないといけない事で、叱られてしまいました」フルフル

    従者「えー……」


    8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:38:19.59 ID:d3sHRN+E0

    従者「あー……人間として、とか事前確認しておかないとなんか制約に引っかかるんですか?」

    女神「なんで分かるのですか?」

    従者「いや、今の話の中で一番重要そうなところですし、今だってそこだけ同様です、で終わりにしていないですし」

    女神「……その通りですよ。はあ……前回言わなかった事を口に出しさえしていなければ」

    従者「女神様の従者で、俺以外に降臨する人っていないのですか?」

    女神「人間界での制限を考えると、他の女神の従者の方が能力のバランスがいいのです」

    従者(回復特化でも制限かかると他の従者と並ぶもんなー)


    9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:41:35.93 ID:d3sHRN+E0

    女神「今回は相手が相手ですので、能力の制限を一時的に緩和させる事ができるようになっています」

    従者「リミッター解除! みたいなですか? 持続時間はどの程度ですか?」

    女神「五分です」

    従者「短っ!」

    女神「それと使用回数も制限がありまして五回までです」

    従者「五回のリミッター解除か……もう二度と服を身につけられなくてもいいという覚悟……!」

    女神「……はあ?」

    従者「いえ、お気にになさらずに。因みに無理して六回目を使うとどうなります?」

    女神「死ぬと思いますよ?」

    従者「そんなさらっと……おまけに疑問符つけて」


    11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:45:19.14 ID:d3sHRN+E0

    女神「制限を緩和するのですから、人間の体で耐えられる範囲を超える能力で活動する訳です」

    女神「五回を超えるとなると、体はその形を維持できず裂けてしまうでしょうね」

    従者「裂ける痛みあったりするんですかね?」

    女神「……人間の体に身が裂けるほどの痛覚を遮断する機能が備わっていましたか?」

    従者「裂ける痛みをそのまま味わうのか」ブルル


    12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:48:14.37 ID:d3sHRN+E0

    従者「……あ、その制限緩和ってどのくらいまで能力を引き出せるんです?」

    女神「貴方ですと人間の体でだいたい二割程度の実力が発揮できるようになっていますが、それが四割なるかならないかですね」

    従者「んーあれで二割で約二倍になれるのか」

    女神「くれぐれも慢心せず慎重に……いくら従者としての貴方が死ぬわけではないとは言え」

    女神「魔王に引き裂かれたなどという話、聞きたくはありませんからね」

    従者「分かっていますよ……」

    従者「魔界横断の時、耳にたこができるほど魔王と接触したら全力で逃げ出せ、と言われたのですから」

    従者「むしろ人間の体使って魔王倒すとか余計に無理そうな……もう体そのままで降臨させて下さいよ」

    女神「魔王が先手で人間界に被害を与えていなければ、むしろ我々神々が降臨して抹殺していましたよ」

    従者「今、平然と凄い事を言いましたね」


    13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:51:34.51 ID:d3sHRN+E0

    女神「ああそれと勇者の現在地は北部、シルバースノウ。私では降臨させられませんのでまた月の女神に頼みます」

    従者「また雪国から……ってまた吹雪を抜けなくちゃいけないのか」


    月の神「おお、来たか。何時でもシルバースノウにいけるぞ」

    従者「そうなのですか?」

    女神「元々、そこまで準備に時間はかかりませんからね」

    従者(うん……?)


    14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:54:26.47 ID:d3sHRN+E0


    月の神「ああ、そうだ……これを持って行きなさい」

    従者「回復薬ですか」

    月の神「あまり量は無いが少しくらいの助けにはなるだろう」

    女神「魔法が使えないですからねぇ」ハァ

    月の神「これで魔法が使えたら最強の従者の座を欲しいがままにしてしまうな」ハハ

    月の神「ではいくぞ」パァ


    従者「安定の猛吹雪」ビュアアアァァァ

    従者「変っ身っ!」パァ

    戦士「良し! 暖炉! 暖炉のあるどっかにぃ!」ガチガチ


    15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:57:29.54 ID:d3sHRN+E0

    店主「こんな昼間っから酒かい? 旅人さんにしちゃあ珍しいこった」コト

    戦士「俺が悪いんじゃない……昼間っからやっているバーが悪いのさ」グビリ

    店主「そりゃあいい。うちの所為にしてどんどん飲んでってくれ」

    戦士「そういえば勇者様ってこちらにいらっしゃったりするのか?」グビ

    店主「あんた、珍しいもの見たさにここまで来たのかい……?」ジロッ

    店主「あの子は可哀想だよ……ただの女の子なのに神様の啓示だがなんだが知らんが」

    店主「ただの押し付けだ。見てられないよ……そんな子を見物しに来たのなら俺はあんたを」

    戦士「マスター。そこに置いてあるのはゴミだろ? 俺に放り投げてくれ」

    店主「え?」


    17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:00:41.43 ID:d3sHRN+E0

    シュパン ポト
    戦士「無理やり勇者として旅立たせられそうになっている。勇者として力は覚醒した」

    戦士「それでも実戦経験は無い。これが稼げる話に聞こえなくて何に聞こえる」ニタァ

    戦士(まー魔物を片っ端から倒していれば十分な稼ぎになるんですけどねー)

    店主「……」

    店主「あんた、明日の朝八時にここにきな」

    店主「勇者ちゃんがここに挨拶に来る。きっと同行を認めてくれるだろうよ」


    18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:03:16.17 ID:d3sHRN+E0

    戦士(とりあえずこれで接触できそうか……というか一人旅立つのか?)

    戦士(魔法使いや剣士の一人や二人いても良さそうだが……)

    戦士(というか俺は魔法が使えないから、魔法使いはいてくれないと困る)

    戦士(まさか勇者のみ? それはそれできつそうだな)ムーン

    戦士(最悪、どっかの町で俺の方から探してみる事も考えておくか)

    戦士(追々考えるか……実際他にも仲間がいるかもしれないし)ボフッ

    戦士(ふあぁ……)


    19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:06:24.35 ID:d3sHRN+E0

    ――……
    「お兄ちゃん遅いよっ」

    「ほぉら! あと少しあと少し!」

    「ね、綺麗でしょ! えへへ、お兄ちゃんとあたしだけの秘密の場所だよ」ニコッ

    「……また、二人で来ようね」


    20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:09:20.99 ID:d3sHRN+E0

    戦士「……」ボケー

    戦士(この国に来ると必ずこの夢を見るな)ガシ

    戦士(まだ時間もあるし、少し素振りをしておくか……)


    戦士「やべぇ時間やべぇ!」バタバタ


    21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:12:25.80 ID:d3sHRN+E0

    戦士(八時半……まだか?)

    店主「八時って言っちまって悪かったな。世話になった人の所を回るって話なんだよ」

    戦士「来なかったりして」ハハハ

    店主「てんめぇ……」カラン

    勇者「お早うございます」

    店主「おう勇者ちゃん!」

    戦士(まだまだ子供じゃないか……いくら神の啓示とは言え、本気で魔王討伐をさせる気なのか? 狂ってるな)


    23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:15:36.60 ID:d3sHRN+E0

    勇者「あ、お店邪魔しちゃいましたか?」

    店主「いやいや違うんだよ。ほれ」ポム

    戦士「俺は戦士という者だ。もし君さえ良ければ魔王討伐の旅に同行させて」

    勇者「お断りします」キッパリ

    戦士(おいこらおっさん)ギロッ

    店主(私だって驚いてるわ)


    24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:18:13.21 ID:d3sHRN+E0

    勇者「あたしは神に選ばれただけの子供です……確かに謎の力は得られましたが」

    勇者「この程度では到底、魔王の下に辿り付く事すら……それでもあたしは行きます」

    勇者「だからこそ誰も連れてはいけません。こんな危険な旅に誰かを巻き込むだなんて」

    戦士「勇者になったから行く……危険だから誰も連れて行かない……なんだ? 自殺がしたいのか?」

    店主「なっ、おいてめ」

    戦士「違うだろう。だからこそ差し出された剣を受け取るのだろう。一人じゃ適わないから助力を求めるのだろう」

    戦士「それでも尚、一人で行くのなら今ここで自殺するといい。魔王討伐が適わないのならさして未来も変わらない」

    勇者「……」ツゥ

    勇者「あ……う、ぐす」ポロポロ

    戦士(やばいっ言いすぎたっ! 落ち着け俺! フォロー!)ダラダラ

    戦士(思いつかんっ!!)ダラダラダラ


    25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:21:17.75 ID:d3sHRN+E0

    勇者「ち、違い、ます……これは、違います」グス

    勇者「こんな風に諭してくれる人、いなくて、その……」グズグズ

    勇者「皆同行してくれるとは言うのですが、少し断るとそのすぐに……」

    勇者「だから皆、やっぱりそうだよね……て思ってしまって」

    勇者「それでも貴方はついて来てくれるって……嬉しくて……」グス

    店主「お前……悪いな、俺も言葉が悪かったりしてよ」

    戦士「いや、俺の言い方も悪かった。すまない」


    27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:24:15.69 ID:d3sHRN+E0

    戦士(しかし、これだと二人旅か……うーむ、もう一人サポート欲しいな)

    勇者「あの……これからよろしくお願いします!」ニコッ

    戦士「……」

    勇者「……戦士さん?」

    戦士「ああ、悪い。少しぼーっとしていた。こちらこそ宜しく頼むよ。勇者」

    勇者「はいっ!」


    28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:27:20.39 ID:d3sHRN+E0

    勇者「今分かっているのが……地図だとこのあたりの洞窟に大きな魔物がいるとの事ですっ!」

    戦士(いきなり中堅とは戦いたくないなぁ)

    戦士(せめて戦い慣れして貰わないと俺が苦しむ)

    戦士「勇者は戦った事はないんだよな? しばらくは町の近くで魔物と戦い、戦う感覚を覚えてもらう」

    勇者「お、おお……本格的だ」ドキドキ

    戦士「できるだけ君の事は守るつもりだが、戦わないという訳にもいかないだろう」

    戦士「何よりその大型の魔物と戦うとなればお互いがフォローし合い、自分で身を守らないといけなくなる」


    29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:30:46.99 ID:d3sHRN+E0

    勇者「やあっ! たあっ!」ビュンビュン

    戦士「違う! 手首の返しが足りないっ!」

    戦士「それと構えはこうだ。常にこの構えを意識しろ」ギュ

    勇者(あわわわ、後ろから抱きしめられれれ)カァァァ

    戦士「聞いているのか?!」

    勇者「はははははい!」

    戦士「よし、もう一度!」


    30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:33:25.89 ID:d3sHRN+E0

    戦士「まだ実践は早いな。今日の所は俺が戦うから見ていてくれ」

    勇者「わ、分かりましたっ」

    戦士「……ふっはっ」ズバスバン

    勇者(うわー向かい来る魔物を全部一太刀……凄いなぁ)

    戦士「こんなもんだな」シャーチン

    戦士「俺も動きは実践で覚えたから上手く教えられないからな」

    戦士「できるだけゆっくり動いたが、ちゃんと見えていたか?」

    勇者「え゛っ! あれでゆっくり?!」


    33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:36:13.27 ID:d3sHRN+E0

    勇者「やっ! たあ!」ヒュンズバ

    戦士(ようやく魔物も倒せるようになってきたか)

    戦士(そろそろ洞窟……いやまだ不安があるな)

    戦士「よし、今日はここまでだ。ゆっくり休むように」

    勇者「はい!」

    勇者(旅立つと決めた日から二週間……う~ん)モンモン


    35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:39:23.53 ID:d3sHRN+E0

    戦士「はっはっ……」ザザザ

    戦士「ここの洞窟か……」ハァッ

    戦士(どの程度の強さなのだろうか……? それ如何でどうするか変わってくるからな)

    魔物「ウウゥゥ」フーッフーッ

    戦士(ゴリラみたいな魔物だな……パワー特化か)サッ

    戦士(勇者を援護に回せば何とかいけるか?)ザザザ

    戦士(そろそろ旅に出れないフラストレーションも溜まっている頃合だろうし、一丁やってみるとするか)


    36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:42:11.80 ID:d3sHRN+E0

    勇者「いよいよ……」ゴクリ

    戦士「基本的には俺の援護に回ってくれ。絶対に前に出るなよ」

    勇者「わ、分かった」ゴクリ


    魔物「ガアアアアア!」ブンブン

    戦士(こりゃ一発でも貰ったら痛いな)ヒョイヒョイ


    37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:45:43.16 ID:d3sHRN+E0

    戦士「よっと」ズバン

    魔物「ガッ」ブシュァァ

    戦士「さて、これで」ヒュン

    魔物「ゥゥゥゥ!!」ブォン

    戦士「うぉ」ガッ

    魔物「アァァァァ!」ダッ

    戦士(しま油断っ)ドザ

    戦士「逃げろっ! 勇者!」

    勇者「え……あ……」

    魔物「ガアアアアアア!」ブォン


    39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:48:30.48 ID:d3sHRN+E0

    勇者「くっ!!」ズバン

    魔物「ガッ……アッ」ドザ

    勇者「……ぅ、ぁぁ」フルフル

    戦士「大丈夫か!」

    勇者「……は、はい」コクリ

    戦士「……今の一撃、見事だよ」ナデナデ

    勇者「あ、ありがとう、ございますっ」


    41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:51:59.48 ID:d3sHRN+E0

    戦士(土壇場とは言え顔目掛けての一撃か……ビギナーズラックと呼ぶにはタイミングが完全にあっていた)

    戦士(過保護すぎるのもあれかな……)

    戦士「明日はいよいよ旅立ちだな……」


    勇者(駄目だなぁあたしは……)

    勇者(運が良かっただけだ。殆どパニックの中闇雲に剣を振っただけ)

    勇者(明日からどうなるんだろう……洞窟の魔物を倒したから旅立ち? 足手まといだけはならないようにしないと)


    43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:56:06.66 ID:d3sHRN+E0

    戦士「そろそろ旅に入ろうと思うが、勇者はどう思う?」

    勇者「私は……自信が無いです。洞窟の魔物もまぐれと言うか奇跡的に当たっただけですし」

    戦士「だったらその奇跡の感覚を忘れるな。今は奇跡でも、実力に出来る範囲の事だ」

    戦士「始めから上手くできる奴なんていないし、今までどおりサポートも稽古もする」

    戦士「だからそんなに不安にならないでくれ」

    勇者「……はい」

    勇者「すみません、弱気になってしまって」


    44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:58:05.45 ID:d3sHRN+E0

    戦士(シルバースノウを囲う山脈……他国に行くにはこれを超えなくては行かないが)

    戦士(幾つか山中を突っ切る洞窟がある……しかし場所によっては天然の洞窟を利用していて)

    戦士(遭難者が出たりもしたが……)

    行商人A「もうすぐでシルバースノウだなぁ」パカラパカラ

    行商人B「早くうんまい酒っこのめべぇ」ガラガラ

    戦士(随分と内部が整理されたもんだ……まさか馬車が通るようになるとは)

    戦士(俺が死んでから何年だ? 300年? そりゃあ変わるか)

    勇者(さっきからしきりに黙ったまま頷いたり……どうかしたんだろうか)ドキドキ


    45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:00:04.24 ID:d3sHRN+E0

    戦士「やっと山越えか……」

    勇者「うわー。わあ~」キョロキョロ

    戦士「シルバースノウを出るのは初めてか?」

    勇者「はいっ! やっぱり山を抜けると暑くなりますねー」

    戦士(気候的には涼しいの分類なんだけどなぁ)

    戦士「確かこの先に宿があるな……今日は無理に進まずそこで一泊しよう」

    二人部屋
    勇者「……」ソワソワ

    戦士(路銀と部屋の事を忘れていた件)


    46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:03:22.77 ID:d3sHRN+E0

    戦士「あー……今後の方針を決めようか」

    勇者「は、はい! 方針?」

    戦士「どういうルートで魔王城を目指すかとかだな」

    勇者「あ、あの魔物の被害に対してあたし達はどう動くべきでしょうか」

    戦士「……話じゃ鉱山は瘴気の様な魔力が滞留して、魔物の住処になっているらしい」

    戦士「が、何処もかしこもだ。一つの国の領土内にどれだけ鉱山があると思う」

    勇者「え、えと……4、5ぐらいでしょうか?」

    戦士「俺も詳しくは知らんがもうちょっとあったな。まだ全部じゃないがかなりの数が魔物に占拠されている」

    戦士「それを一つ一つ片付けていったらきりが無い」

    戦士(まー魔王がガス抜きに魔力を放っているんだろうな。大した挑発だよ、何処の国にでも気付かれずにこれるって事なんだから)


    49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:06:29.96 ID:d3sHRN+E0

    戦士(そもそも、勇者は選ばれただけであって、魔物魔族に対し特別な力を持っていない)

    戦士(ぶっちゃけ各地で起こる被害は兵士達に任せ、勇者がいるからと放置されるであろう魔王を倒す事が最優先だが……)

    勇者「あたしは飽くまで魔王を見据えて行動しろ、という事でしょうか?」

    勇者「……人々を苦しめる魔物も討伐できないようで、魔王を倒せるのでしょうか?」

    戦士「魔王城は確か南東……シーサンドとグリーングランドの間ぐらいにある離島らしいな」

    戦士「長旅になる。例え、そういった魔物を倒さずとも、嫌でも自力はつくだろうな」

    戦士「それとそんなに焦るな。今日の明日で世界が滅ぶ訳じゃないし、勇者が全てをこなさないと滅ぶ訳でもない」ポム

    勇者「……はい」


    50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:09:24.94 ID:d3sHRN+E0

    戦士「とは言え今日は時間もあるし、みっちり稽古がつけられるな」

    勇者「わーぉ」


    勇者「づがれだー」グテー

    戦士「ああ、こら。そこでぐったりしない。上半身を起こせ」

    勇者「うー」ムク

    戦士「ほら、ストレッチを手伝ってやるから」グッグッ


    51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:12:38.17 ID:d3sHRN+E0

    勇者「そういえば……戦士さんはシルバースノウに来る前は何をしていたんですか?」

    戦士「旅をしながら傭兵まがいの事をしていたさ」

    勇者「そうなのですか……」

    戦士「どうかしたか?」

    勇者「いえ、戦士さんはあまり自分の事を語られないので、どうなんだろうと思いまして」

    戦士「あーそれは悪かったな」ナデナデ

    勇者「あはは、そういえば良くあたしの頭を撫でてくれますね」

    勇者「何でだろうなぁ……戦士さんに撫でられるとなんだか落ち着く気がします」

    戦士「……そうか」

    勇者(?)


    53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:15:09.62 ID:d3sHRN+E0

    勇者(これからは魔王城に向けて、魔物を倒しつつ進撃か……)

    勇者(それにしても……本当にあたしは魔王を倒せるのだろうか?)

    勇者(いや、今は何よりっ)ジー

    戦士「……ん? どうした?」

    勇者(うわあぁぁ緊張して眠れない! ていうかあたし女の子として魅力無いの?!)

    戦士(あーまずい。意識しちゃうなぁこれは。早く眠ってくれればいいが)


    54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:18:14.04 ID:d3sHRN+E0

    勇者「ふぁ……あれ? 戦士さん?」

    勇者「……外かな?」ガチャ

    戦士「……」ヒュンヒュン

    戦士「うん? お早う勇者」ピタ

    勇者「お早うございます……こんな朝から素振りですか?」

    戦士「ちょっとした習慣だ」

    勇者(これから長旅なのに……凄い人だなぁ)


    55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:21:18.50 ID:d3sHRN+E0

    戦士「右!」

    勇者「わわっ!」バッ

    魔物C「ガルル!」ビュ

    勇者「くっ! はっ!」ガッビュォ

    魔物C「ギャウゥ!」ブシュァ

    戦士「だいぶ様になってきたな」

    勇者「はぁ……はぁ……でも、戦士さんの支援無しだと、凄い心もとないです」

    戦士「じゃあそろそろ一人で三体いってみるか」

    勇者「わー……スパルタァ」


    57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:24:50.81 ID:d3sHRN+E0

    戦士「向こうで火の手が見えたな……」

    勇者「町……! ってこんな近くには何もなかったような」

    戦士「キャラバンか何かが魔物と戦っているのかもな」

    戦士「金さえあれば何か珍しい物でも買えたかもしれないが」チャラチャラ

    戦士「無駄使いはできないよなぁ」

    勇者「でも覗くだけ覗いていきませんか?」


    58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:27:17.96 ID:d3sHRN+E0

    行商「旅人さんかぁ?」ガラガラ

    戦士「そんなところだ」

    勇者「シルバースノウへ行かれるのですか?」

    行商「南も東も魔王城が近いのか、魔物が強くていけねぇ」

    戦士「やはりただの噂じゃないのか」

    勇者「うっ精進します」

    「あら……その声、勇者?」


    59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:30:12.68 ID:d3sHRN+E0

    勇者「え?」

    魔法使い「勇者じゃない! ああ良かった! 行き違いになるんじゃないかと不安だったのよ!」

    勇者「うわわっ! 魔法使いちゃん!? どうしてここに?!」

    戦士「知り合いなのか?」

    勇者「あたしの幼馴染なんです!」

    魔法使い「……勇者、その人は?」ピタ

    勇者「えと、あたしが勇者に選ばれて……」

    魔法使い「知ってる……まさかその男と二人旅」キョロキョロ

    勇者「うん……危険だから断っていたんだけど、この人はそれでもついて来てくれるって言ってくれて」

    魔法使い「……」ギロ

    戦士(なんでー?)


    62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:33:28.58 ID:d3sHRN+E0

    魔法「駄目よ勇者」バッ

    魔法「きっと勇者を誑かしあんな事やこんな事……果てには人気の無い所でこの男は勇者を……」ワナワナ

    勇者「ま、魔法使いちゃん? 剣も教えてくれるし頼もし」

    魔法使い「そう思わせているだけよ! 男なんて皮一枚剥げば下衆なものよ!!」

    戦士(まー言っている事は分からないでもないが)

    魔法「引きなさい下衆野郎! 魔王討伐は私と勇者で行うわ!」ギッ

    戦士「それはいいんだが、それだと勇者が一人で前衛務める事になるのだが?」

    勇者「わー死ねる」


    64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:36:26.68 ID:d3sHRN+E0

    魔法「チッ!」

    戦士「凄い悪意ある舌打ちをしたな」

    勇者「魔法使いちゃん……戦士さんは本当に良い人だからね?」

    勇者「戦士さんもその……信じられないかもしれませんが、魔法使いちゃんは本当に優しい人なんです」

    戦士「まあ俺はどちらでもいいさ」

    魔法「なに、喧嘩を売ってんの?」イラ

    戦士「仲間にならないならさようならだし、仲間になるんだったら運命共同体だ。後ろから刺すとか阿呆な真似はしないだろう」

    勇者「そういえばどうしてキャラバンに? ウェッブリバーで魔法を習いに出て行ったのに」

    魔法「貴女が勇者になったからよ。仲間のあてがあろうが無かろうが、私は貴女と共に旅をするつもりだったの」

    勇者「魔法使いちゃん!」ギュ


    66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:39:15.22 ID:d3sHRN+E0

    魔法「安心して……私が着たからにはもう大丈夫よ」ギュ

    勇者「ありがとう魔法使いちゃん」ギュゥ

    魔法「どんな魔物も私の魔法で吹き飛ばしてやるわ!」

    勇者「あたしも頑張ってもっと強くなるよ!」

    戦士「……」

    戦士(百合か……悪くないな)


    67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:41:53.08 ID:d3sHRN+E0

    魔法「という事でして、申し訳ありませんが私はここで」

    行商「おう、護衛ありがとうなぁ」ガラアラ

    勇者「シルバースノウへの行商に便乗に?」

    魔法「ええ。ま、多少の魔物程度なら蹴散らしてくれるわ」

    戦士(図らずとも優秀な魔法使いが見つかったか。悪くない流れだな)

    戦士(もう少し仲間がいてもいいが……勇者が強くなれば後衛がいいな)

    戦士(今動くとなると賭けだな。ちと長い目で見るべきか)フーム

    魔法「……こいつ本当に大丈夫なの?」

    勇者「と、時々押し黙る事はあるけど、頼りになるんだからね」


    68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:46:16.34 ID:d3sHRN+E0

    戦士「重心をもっと左に!」

    勇者「はいっ!」ズバ

    戦士「避ける時は次の攻撃を考える! 常に意識しろ!」

    勇者「よっ!」ヒラリ

    勇者「たぁ!」ズバ

    魔法「ふーん……意外と真面目に教えているのね」

    戦士「初めからそうだと話したよな」


    69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:48:54.84 ID:d3sHRN+E0

    戦士(この魔物の群れを一人で任すのは怖いな)

    戦士「魔法使い、すまないが勇者と二人で戦ってもらえるか?」

    魔法「あんたは戦わない気?」

    戦士「危なければ手を出すさ」

    勇者「頑張りますっ!」ギュ

    魔物A「ガアアアア!」

    勇者「よっはっ!」ヒラズバン

    魔法「そこっ!」スドドド

    戦士(一匹左に抜けたな)チャキ

    勇者「いかっせない!」シュバ

    戦士(ほう……)パッ


    70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:52:10.57 ID:d3sHRN+E0

    戦士「さて、このあたりで野宿とするか」

    魔法「何故馬を用意していないの?」

    戦士「魔物が現れたらどうやって馬をつないでおくんだ」

    勇者「あー……そういう理由だったんですね」

    戦士「馬車を引かせる馬番もいるならいいが、そういう訳じゃないからな」

    戦士「まあ……野営時の利便性は高いが、その為だけに用意する人数でもあるまい」

    魔法「意外と考えているのね」

    戦士「このくらい考えないでどうするんだ……ああ、火の魔法を頼む」


    71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:54:45.43 ID:d3sHRN+E0

    戦士「本日のメニューは……」

    魔法「ただのパンと干し肉ね」

    戦士「そう言うな。こいつをこう軽く炙ってだな、でこのパンに挟んでほら。案外美味しいから食べてみろ」

    勇者「わぁ……いい香り」

    戦士「デザートじゃないがそこら辺で取れた木の実だ」

    魔法「何時の間に……」

    戦士「サバイバル生活は慣れたものだからな」

    戦士(生きてる時は狩人だったし、一人で魔界を横断させられたりしたからなぁ)


    73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:57:13.97 ID:d3sHRN+E0

    勇者「初めて見る木の実ですが……これは?」

    戦士「そもそもシルバースノウじゃ自生していないからなぁ。ま、市場にも出ないような物だし」

    魔法「これ、町でも時々成っているけど本当に食べられるの?」

    戦士「茎は食べるなよ?」

    勇者「んー! 甘酸っぱい!」ムグ

    魔法「ほんと、結構酸味があるわね」パク

    戦士「うんうん、いい桑の実だ……ジャムでも、いや日持ちしないか」モグ

    勇魔(……)

    勇魔(料理できる人っ!?)クワッ

    戦士「ジャムくらい大した事ないぞー」モクモク


    74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:00:15.82 ID:d3sHRN+E0

    戦士「火の番は俺がしておくから二人はゆっくり休みな」

    勇者「えっいいのでしょうか……」

    戦士「明日には町に着くしな」

    魔法「こう言っているんだしいいじゃない」

    勇者「えぇー? だ、大丈夫でしょうか?」

    戦士「無理そうだったら寝るよ」

    勇者「火の番は?!」


    75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:03:11.44 ID:d3sHRN+E0

    勇者「ん……ふぁ」

    勇者「あー……朝か」フォンフォン

    勇者「……」フォンフォン

    戦士「……」フォンフォンフォン

    勇者「徹夜している上に素振りまでっ?!」

    魔法「あー……? ふあぁぁ」

    戦士「お早う。そうか、もうそんな時間か」


    76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:06:32.48 ID:d3sHRN+E0

    戦士「このまま進めば昼頃には町だ」

    戦士「着いたら宿を取って休もう」

    勇者「稽古の方は?」

    戦士「んーもう俺からしつこく教える事はないだろうな」

    戦士「自主的に素振りと型の練習をしろ」

    戦士「後は実践で反省会をしていこう」

    勇者「ちょ、ちょっと待って下さい! いくらなんでもそんな上達しているわけ無いじゃないですか!」

    戦士「自身ではそう思うだろうが、俺からは多少のアドバイスしかしようがないんだ」

    戦士「俺がちゃんと教わった部分なんてそんなものなんだよ」


    77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:09:30.66 ID:d3sHRN+E0

    勇者「わぁシルバースノウ以外の町っ! ここはウェッブリバーの領土内だよね?」

    魔法「町ぐらいじゃあ……でもそうね。銀世界の町に比べたらこの町だけでも随分と違うわね」

    勇者「見て見て! なにあの果物! 美味しそう!」

    魔法「それじゃあ買って、一緒に食べましょ」

    勇者「うん!」

    戦士(……)

    戦士(俺は……どうする? この旅の果てに……)

    勇者「戦士さんもどうですか?」サッ

    戦士「……っふ、はは。ああ、貰おうか」

    魔法「……?」


    79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:12:25.65 ID:d3sHRN+E0

    戦士『流石にこの面子だ。部屋を分けよう』

    勇者(……これが正しいはずなのに、少し寂しい気も)

    勇者(っは! な、何を考えてるんだ! 男性と同じ部屋で寝ていたのがおかしいんだぞあたし!!)ブンブン

    魔法「勇者、戦士とは出会ってどのくらいなの?」

    勇者「え゛っ! どどどういう事かなぁ?」

    魔法「ちょっと、ね……」

    勇者「……? ええと約三週間ぐらいかな」


    81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:15:24.61 ID:d3sHRN+E0

    勇者「どうかしたの?」

    魔法「何だろう……さっき貴女の様子を見ていた時の戦士の顔」

    勇者(あ、あたしの事を見ていた? 見つめられていた?!)ドキドキ

    魔法「あいつの事がよく分からなくなった。普通、三週間くらいの付き合いの相手にあんな……」

    勇者「……え? どんな表情だったの?」

    魔法「凄い優しい顔をしていた。父親、みたいな……」

    勇者「え、子供扱い?」


    82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:18:47.69 ID:d3sHRN+E0

    戦士「勇者……そうか、夢は叶ったって事なのか……」

    戦士「酷な話だな……俺は……どちらを……」スゥ


    『朝だよー起きてー』ユサ

    『お兄ちゃーん? あっさだよー』ユサユサ

    「朝ですよー? 出発するんですよー?」ユサユサ

    戦士「っ!」ガバ

    勇者「きゃあ!」ガッシ


    83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:22:02.52 ID:d3sHRN+E0

    戦士「……***」

    勇者「せ、戦士さん?」

    魔法「ちょっとあんた! いきなりなに勇者に飛びついているのよ!」

    戦士「……あ、いやすまない」パッ

    勇者「い、いえあたしは大丈夫です」

    勇者(***? 名前?)

    戦士「あー寝過ごしてしまったな。すまん、急いで支度するよ」

    魔法「私達は下で先に朝食を済ませておくからね」

    戦士「ああ、そうしてくれ」


    85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:24:56.82 ID:d3sHRN+E0

    戦士「さて次の町までは三日ほどかかるのだが……」

    商人A「ウェッブリバーの首都まで護衛してもらえるなんて助かるよ」

    商人B「荷台に余裕持たせておいて正解だぁよ」

    勇者「こちらこそ助かります」ペコ

    魔法「しばらくの間宜しくお願いします」ペコ

    商人A「おまけにこんな別嬪さんときたもんだ」

    商人B「幸運の女神様だぁ。今回の商い、大成功間違い無しだぁべ」

    戦士(まさか足が手に入るとは)


    86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:28:03.93 ID:d3sHRN+E0

    戦士(移動が早い分、交戦数も一気に落ちる……勇者とは軽く打ち合いした方がいいだろうか?)ガタガタ

    戦士(いやいや、対人間の動きが癖付いてしまっては……しかし魔王は魔人。役に立たないわけでもないが)ガタゴト

    勇者「のどかだなぁ……」グデー

    魔法「何時魔物に襲われてもいいよう臨戦態勢でいるのよ?」

    勇者「だってこんな陽気じゃぁ……シルバースノウじゃ滅多ないからなぁ」ノビー

    戦士「今のうちに体を起こしておけよ。次の町についたら軽く稽古をする」

    勇者「稽古っ」ピコン

    戦士「俺に打ってこい。勿論、反撃もするからかわすなり防ぐなりしろ」

    勇者「わぁ……スパルタ再発ぅ」


    88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:30:31.49 ID:d3sHRN+E0

    魔法「それ、流石に危険じゃないの?」

    戦士「流石に真剣じゃないし、俺は寸止めくらいで打ち込むさ」

    勇者「あ、あたしは全力でかからないと駄目でしょうか?」

    戦士「当たり前だ。何のための稽古だ」

    勇者「う、うわあ、本気で当てちゃったらどうしよう」

    戦士「そう簡単に当たらんさ」

    魔法「早すぎる杞憂ね」

    勇者「……分かってはいるけど魔法使いちゃんまで」

    魔法「少し見ればかなりの差があるくらい分かるわよ」


    90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:33:14.44 ID:d3sHRN+E0

    勇者「たああああああ!」ヒュンビュンフォン

    戦士「……」ガガガ

    魔法「へえ……」

    勇者「はあ!」ビュ

    戦士「……よ」ヒラリブォン

    勇者「っ!」ガッ

    戦士「もう一丁」ブァ

    勇者「ぐっ!」ガッ

    戦士「隙あり、過ぎっ」ゴツ

    勇者「あたっ!」


    91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:36:21.13 ID:d3sHRN+E0

    戦士「攻撃を受ける時は盾で受け止めろ」

    戦士「それでも剣で受けざるを得ない時は受け流すように受けるんだ」

    戦士「剣で真っ向から受け止めていたんじゃ、すぐに刃が駄目になるぞ」

    勇者「は、はいっ」

    戦士「それと対人であっても、防御と回避には常に次の行動を意識」

    戦士「あれじゃあ体勢を立て直せずに防戦一方になるぞ」

    勇者「わ、分かりました……」

    魔法「ふーん……」


    92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:39:44.87 ID:d3sHRN+E0

    戦士「何だ?」

    魔法「凄い強いのね」

    戦士「そりゃあ伊達で剣を振ってるわけじゃ無いからな」

    勇者「なんたってあたしのお師匠様だもの!」

    魔法「へー……剣なんか今までやっていなかったんでしょ? 戦士の教えがいいのかしら?」

    戦士「俺の教え以上に勇者の筋がいいかな」

    戦士「普通に考えたらこんなに早く上達する訳が無い。流石は勇者というべきか」

    戦士(まーこれは色んな神様が張り切っちゃったんだろうなぁきっと)


    93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:42:46.83 ID:d3sHRN+E0

    戦士「そうだ……後で君らの部屋に行くが構わないか?」

    勇者「えっ!」

    魔法「何で?」

    勇者(わーー! うわーーー! 入浴後にばったりとかだったらどうしよう!)ドキドキ

    戦士「馬車で移動する以上、戦闘は減るだろうからな……それに対する対策と」

    戦士「ウェッブリバー以降のをどうするか、だ。歩くのか馬車を引くのか便乗か」

    勇者(それとかそれとか暑くて薄着の所を見られてうわーー! きゃーー!)ドキドキ

    魔法「あー……確かに考えておかないといけないわね」

    戦士「夕食の後すぐでいいだろう」

    魔法「そうね、変に時間をあけられてもお風呂が困るわね」

    勇者(きゃーきゃー!)


    95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:45:22.45 ID:d3sHRN+E0

    夕食後
    勇者(どうしてこうなった)

    戦士「神妙な顔をしてどうした? 相談するぞと言っただろう?」

    魔法「もう乗せてもらう代わりに護衛するって言ってしまったしどうするの?」

    戦士「そこはもう」

    勇者「諦め?」

    戦士「スパルタだろう」

    勇者「わーぉ」

    魔法「仕方が無いわよね」

    勇者「フォローして!」


    96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:48:29.45 ID:d3sHRN+E0

    戦士「ウェッブリバーの首都から先の足はどうする?」

    魔法「私はできれば馬車のが快適なのだけどもねぇ」

    勇者「更に魔物が強くなる事を考えると、もう行商の人とかはいなさそうですね」

    魔法「そうなのよねぇ……私がウェッブリバーを発つ時点で、南への交易をどうするかって話題があったぐらいだし」

    魔法「は~徒歩かぁ。私は二人のように肉体派じゃないのだけども」

    勇者「……どうにかできないでしょうか?」

    戦士「……まあ、最終決定は首都についてからでないと判断はできないが」

    魔法「流石に馬を借りたりは資金不足だし……行商がいなければ徒歩よねぇ」


    97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:51:23.59 ID:d3sHRN+E0

    戦士(馬……馬かぁ……。俺はあんま乗馬した事無いし、勇者だってなさそうだし。そもそも魔法使いは乗れるのか?)コッコッ

    戦士(窓? おいおいここは二階だぞ?)ガラッ

    鳥「」ジー

    戦士(わぁー……凄い見た事ある鳥さんだぁ)

    戦士(また小規模の転移魔法の魔石がついてる……通信相手は誰だ?)


    98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:54:37.32 ID:d3sHRN+E0

    戦士「あーテステス。癒しの神の従者、勇者一行の戦士だ」

    『お、噂に聞いていたが本当にお前か』

    戦士「お、日の神様の」

    『よー五年ぶりだなっ』

    戦士「五年ぶりの久しい声は何を担いできた」

    『凶報』


    99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:57:36.15 ID:d3sHRN+E0

    戦士「そんな気はした……そんなフラグな感じだった」

    『そう落ち込むなよー』

    『で、だ。合わせて各国の状況とかも教えておこうかと』

    戦士「あー頼む」

    『一先ず他の従者は各国の防衛、または鉱山に対し攻撃を行っている』

    『勿論、人間の軍隊と共にな。あ、鉱山の話は知っているか?』

    戦士「魔王が魔力を放って魔力が滞留。それを餌に集まった魔物に色んな鉱山が占拠されつつあるってやつだろ」

    『残念』

    戦士「え?」

    『全部占拠された』

    戦士「えっ」


    102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:00:55.48 ID:kEkuwvhC0

    『一応、軍と従者で攻撃しているが、完全に篭城状態だからなぁ』

    『一部じゃ奴らを外に出さないようにして、撃破は諦めるかって流れだな』

    戦士「ぅゎぁ」

    『まー町とか村とか微妙に滅んでたりするけど、国が落ちるような事態はまずなさそうだ』

    戦士「とりあえず防衛は大丈夫か」

    『ただあまり長期化すると産業や貿易がって所だな。宜しく頼むぞ』

    戦士「ああ、任せてくれ」

    戦士(……まあ人間サイドからしたら、居住地滅ぼされて黙っていられないだろうけどなぁ)

    『あ、すまん。言い忘れていたが、もし鉱山内の魔物が一気に外へと流れ出したら決壊するから宜しく』

    戦士「死んででも守りぬいてくれ」


    103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:03:56.38 ID:d3sHRN+E0

    『で、本題の凶報なんだが』

    戦士「えっ」

    『おいおい、今までのは各国のお話だけだぞ?』

    『どうも魔王は空を飛べるらしい。それも結構な高度で結構な速度でだ。魔力を使った力技みたいなもの、と分析されたようだ』

    戦士「どうしろって言うんだ」

    『まあ、魔王城内での決戦ではその瞬発力に注意って程度だ。で本題の本題、魔力による超強力な障壁を展開している』

    戦士「詰んだ」

    『まだ安全だった鉱山で従者部隊が魔力を放出しに来た魔王と遭遇。男神従者という戦闘型PT為す術なく全滅』

    戦士「オワタ」


    106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:06:15.22 ID:d3sHRN+E0

    戦士「なになに、どうしろって? 死ねって?」

    『一時的に魔力を消滅させる何かを作っているらしい』

    戦士「それ使うと魔王の魔力が空っぽになるのか? とんでも兵器だな」

    『いや、外界に放出された魔力を分解し、その効力を消滅させるってものだとよ』

    『障壁を張り直されたらまた使うしかないってこった』

    戦士「それができるまではのんびり旅してろって?」

    『いや、急いで魔王城近辺まで向かって、待機しててほしいそうだ』ピシ

    『おっともう時間切れか。何かあったらまた』

    戦士「ああ、助かるよ」パキン


    109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:09:16.60 ID:kEkuwvhC0

    戦士「……ふう」

    戦士「勝てるのかなぁ……俺ら」


    魔法「勇者はさ……そんなに戦士の事が好きなの?」

    勇者「ま、まま魔法使いちゃんいきなりなにを!?」

    魔法「見てれば分かるわよ……あんなに異性に懐く貴女、見た事が無いもの」

    勇者「あ、あはは……何だろうね。何ていうか……近くにいてくれると凄い安心できるんだ」

    勇者「それにあの人に見られていると、その……凄い嬉しいんだ」

    魔法「はぁー……要するに一目惚れね」

    勇者「か、かなぁ?」アハハハ


    110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:12:15.41 ID:kEkuwvhC0

    商人A「ここから先は魔物の被害が多いらしい。何時でも出れるように頼むよ」

    戦士「おう、任せてくれ」

    勇者「うわー……緊張してきた」ドキマギ

    魔法「魔物と言っても格段に強いのが現れる訳じゃないから、リラックスしていなさい」

    戦士「まあ先制されないようにだけは気をつけるか」ギリギリ

    勇者「弓……」

    魔法「何時買ったのよ」

    戦士「昨晩作ったんだよ」ビッ ドッ

    勇者「……遠くの木に刺さった」

    魔法「戦士の本分は弓? 剣?」


    111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:15:24.98 ID:kEkuwvhC0

    戦士「敵だっ!」ビッ

    勇者「行くよ!」バッ

    魔法「はっ!」ゴォォォ


    戦士「何とかなるな」

    勇者「先制を取れるって凄いですね」

    戦士「そりゃあな。相手を怯ます事も出来るし、好機を生み出しやすいんだ」

    魔法(というより戦士の能力のポテンシャルが異常なのよねぇ)


    112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:18:20.14 ID:kEkuwvhC0

    戦士「よし、全力で打ってこい!」

    勇者「といやああああ!!」ガガガガ

    魔法「向こうは向こうで訓練ねぇ……」

    魔法「ウェッブリバーの首都まではあとどのくらい掛かりそうなのかしら?」

    商人A「後十日ってところかなぁ。いや、あんたらのお陰で順調だからな。1,2日短くなるかもな」

    魔法(後十日で徒歩旅かぁ)


    114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:21:27.56 ID:kEkuwvhC0

    ウェッブリバー首都
    商人A「それじゃあ俺らはこれでな」

    商人B「三人とも頑張るんだとぉ~」

    勇者「お世話になりました~」ブンブン

    魔法「ありがとうございました」フカブカ

    戦士「そちらも達者で」ペコ

    戦士(にしてもウェッブリバーか……前回の魔獣騒動の時は素通りだったから実質180年ぶりか)


    115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:24:23.64 ID:kEkuwvhC0

    戦士「一先ず宿は取ったしこれからの事だが……」

    勇者「馬車探し? 行商探し?」

    戦士「1,2日くらい休暇を入れよう」

    魔法「それは……いいのかしら?」

    戦士「俺達は超人じゃないんだ。睡眠だけの休息だけで延々と旅なんてできないだろう」

    戦士「ま、多少の訓練はするにしても」チラッ

    戦士「少し位休んで文句を言われるのであれば、手前がやれって言い返せばいいさ」

    勇者「あのー今の目配せは何でしょうか?!」

    戦士「休暇でやる分にはまあ、少し位みっちりやっても問題ないか、みたいな」

    勇者「みっちり?!」

    魔法「愛されているわねー」

    勇者「えーー!」


    116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:27:17.91 ID:kEkuwvhC0

    勇者「魔法使いちゃーん! 買い物行こーー!」

    魔法「そうね、折角首都に来たんだものね」


    勇者「こ、こんな服とかどうかな?」フワッ

    魔法「……」ブッ

    魔法「ダメよ、そんな過激な服」ガッシ

    勇者「え゛! 露出少ない、っていうか普通の服だよね!!」

    魔法「ダメよ、そんな過激な服! 勇者があまりにも可愛い過ぎて、危険な虫が多く寄ってくるわ!!」クワッ

    勇者「えー……」


    128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:00:29.50 ID:kEkuwvhC0

    戦士(ここら辺は花公園になったかー)

    戦士(……水の女神の従者が吹っ飛ばしてえらい騒ぎになったんだよなぁ)ウーム

    戦士(お、あの店まだやっている。あの当時はぱっとしない定食屋だったが、今じゃ立派な老舗かぁ)シミジミ

    戦士(うん? なんだあの人だかり……兵士か?)

    戦士(おいおい、結構重傷者多いな。鉱山勤務の交代とかか?)

    戦士(おー衛生兵達が慌しく駆けている……前線の衛生兵は魔力も薬剤も不足しているかも分からんね)

    衛生兵「そっちの患者はA棟に。もう二人来て、この人が危険。全力で回復魔法をかける」

    「は、はい!」

    戦士(噂をすれば何とやら……あの子はどうして毎回軍属なんだ)ゴクリ


    129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:03:54.49 ID:kEkuwvhC0

    衛生兵「ふう……後の方はB棟で治療を。皆お疲れ様」

    「一先ず三日は帰還する隊は無しかー」
    「束の間の休息ね」

    戦士「忙しそうだな」

    衛生兵「! ……兵……剣……戦士?」

    戦士「よく分かったな」

    衛生兵「戦士、剣だけじゃないから」

    戦士「生前は弓だもんなー」


    132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:06:17.19 ID:kEkuwvhC0

    衛生兵「えーと……勇者の護衛?」

    戦士「なんで皆知ってるの」

    衛生兵「風の噂?」

    戦士「随分と具体的な噂だなぁ」

    衛生兵「魔王討伐頑張ってね?」

    戦士「……キーアイテムがー」

    衛生兵「頑張れ~」ヒラヒラ

    戦士「あぁ、無情なっ」


    134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:09:57.42 ID:kEkuwvhC0

    戦士「それじゃあ俺はそろそろ」

    衛生兵「前線は厳しいみたい……気をつけてね?」

    戦士「ああ。まー首都にまで手が伸びるとは思わないが、魔物達の襲撃に気をつけてくれ」

    衛生兵「分かった」コクリ


    勇者「こ、これとかどうかな?」ヒラリッ

    魔法「ダメよ!! 絶対にダメよおお!!」ハァハァ

    勇者(よし、魔法使いちゃんとはもう一緒に買い物しない☆)


    136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:12:27.59 ID:kEkuwvhC0

    戦士「さて、そろそろ出発するか」

    勇者「休んだような鍛えられたようなよく分からない休日だった……」

    魔法「怒涛の打ち込みをしていたものね」

    魔法「で、旅の足は……」

    戦士「残念ながら行商とかは捕まらなかったよ」

    魔法「あー……」

    勇者「どうにかならないのですか?」

    戦士「確実ではないし運頼みでよければあるにはある」


    138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:15:22.14 ID:kEkuwvhC0

    魔法「首都を通らないコースで行く行商?」

    戦士「ロックケイブ方面から直接グリーングランドの方に向かったりする場合」

    戦士「ウェッブリバー首都の南部を通るコースがあるんだ。ほらここら辺が街道になっているだろう」

    勇者「おお、本当だ」

    戦士「勿論、直接グリーングランドに向かう事に比べれば遠回りになるが」

    戦士「もしも向かっている行商があれば向こうが勝手に追いついてくれるって算段だ」

    魔法「しかも私達を乗せてくれるかも分からない」

    戦士「そう、出会うのも乗せてもらうのも運頼みさ」


    139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:19:09.93 ID:kEkuwvhC0

    魔法「あー……なにか悪い気がしt」

    勇者「じゃあ南を通るルートで!」

    戦士「まあ、街道を行くとなると視界もある程度開けているし、多少は安全っちゃあ安全だしな」

    魔法「……そういう気の使い方はいらないのだけれど?」

    勇者「えー」

    戦士「えー」

    魔法「でもまあ……ありがとうね」

    戦士「デレた?」

    勇者「魔法使いちゃんはデレデレだよ?」

    魔法「勇者になら溶けきっても構わないわっ」キリッ

    戦士(百合か……)フゥム


    142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:21:41.01 ID:kEkuwvhC0

    魔物の群れ「アァー……ァー」

    勇者「ゾ、ゾンビ系……」

    魔法「グ口いわねぇ……」

    戦士「んー……」ノビー

    戦士「たまには俺も全力で切りかかってみるか。二人は休憩していてくれ」

    勇者「えっ?! これ全部一人で?!」

    魔法「二十体はいるわよ?」

    戦士「できない事はやらない主義なんでな」スラァ


    143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:24:41.33 ID:kEkuwvhC0

    魔物の群れ「」

    戦士「こんなもんか」ヒュン ッパァ

    魔法「全て一太刀から続く返す刃で切り伏せるだなんて」

    勇者「もう戦士さんが勇者を名乗って下さいよ」

    戦士「いやただの戦士だろう。元からただ単に戦っているだけだから」

    戦士「そら、休憩終わりだ。出発するぞ」


    146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:27:28.53 ID:kEkuwvhC0

    戦士「たあ!」ズバババン

    勇者「やあ!」ズバン

    魔法「……」ウズウズ

    戦士「魔力は温存しておくんだ。無闇に撃つんじゃないぞ」

    魔法「分かっているわ。分かってはいるのよ……」ウズウズ

    戦士(仕方が無いとは言え不憫だな)


    184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 10:33:57.62 ID:kEkuwvhC0

    戦士「うーむ、犬型の魔物が多いな」

    魔法「魔物なんて解体して何しているのよ」

    戦士「いや、食えそうな部分を……」

    勇者「……魔物、食べるんですか?」

    戦士「食えるようならな。こっからは町との間隔も開くから、今のうちに食料調達していた方が備えになるからな」

    戦士「うーん……ま、普通に食えそうだな」

    勇者「げっ」

    魔法「うえー」


    186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 10:36:20.72 ID:kEkuwvhC0

    パチパチ
    戦士「焼けたみたいだな」

    勇者「……」

    魔法「……」

    戦士「なんだその顔は。食いたくなければ無理に食わなくていいんだぞ」ジュー

    戦士「下拵えは十分に出来ないから香辛料で誤魔化しだが……」パク

    戦士「ウマイ! 良いレバーだ!」

    勇者「……」ゴクリ

    魔法「……」ゴクリ


    188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 10:39:49.31 ID:kEkuwvhC0

    戦士「……一応、もう二食は賄うつもりだったんだが」

    勇者「はぁ」サスサス

    魔法「悪くないわね」サスサス

    戦士「全部食べつくしてくれてまあ……」

    戦士「気に入ってもらえたのならそれでいいけどな」

    勇者「また食べたい!」

    魔法「犬型の魔物様様ね」


    190: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 10:42:59.26 ID:kEkuwvhC0

    ……
    勇者「ウェッブリバーを出て早五日……」

    戦士「明日には鉱山の近くまで行けそうだな」

    魔法「兵士達の駐屯地でもあればいいんだけども、ね」

    戦士「まああると思……」

    勇者「……? 空に何が」

    戦士「鳥型の魔物か? 苦戦するようだったら攻撃魔法を頼む」

    魔法「分かったわ」


    192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 10:45:30.83 ID:kEkuwvhC0

    魔物A「ギャア! ギャアア!」バッサバッサ

    勇者「で、でか!」

    魔物D「グギャアアア!」バッサバサ

    戦士(勇者と分断されたか……甘く見すぎだったか)

    戦士「魔法使……」

    魔物A「ギャアアア!!」バサバサ
    魔物B「グゲエエエエ!」バサバサ
    魔物C「ギエエエエ!」バサバサバサ

    勇者「はっ? ちょ、え!」

    魔法「勇者、振り払って! それだけ密着していては魔法も撃てないわ!」

    勇者「や、ちょ、うわわわ!」フワ

    魔法「え?」

    戦士「は?」


    194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 10:48:15.35 ID:kEkuwvhC0

    「いやああああぁぁ……」バッサバッサ

    魔法「攫……われた?」ポカーン

    戦士「……勇、者」ブル

    魔物D「ギャアアア!!」

    戦士「邪魔だ!!」ズバッ

    戦士「勇者! 勇者ぁ!」ダッ

    魔法「せ、戦士?!」

    戦士「糞! こんな、糞!! 俺は……!」ダダダ

    魔法「戦士、待って」タタタ

    戦士「勇者! 勇者!!」ダダダ

    魔法「風矢魔法・最弱!」ビュ

    戦士「ぐぉ!」ドッ


    196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 10:51:26.99 ID:kEkuwvhC0

    魔法「はぁ……はぁ……」タタタ

    戦士「う、ぐ、魔法使い! 何」パァン

    戦士「……ぇ」ビリビリ

    魔法「馬鹿! 落ち着きなさい!」ジンジン

    魔法「今ここで慌てて追いかけても無駄よ!」

    魔法「それよりも状況を確認し、体勢を立て直すのよ。勇者を殺すつもりだったら、あのまま攻撃するだけで良かった筈」

    魔法「連れ去ったのには意図があるはず。悠長な事は言えなくても、僅かでも猶予はあるはずよ」

    戦士「……」

    戦士「すまん……落ち着いたよ」

    魔法「お願いだから貴方がそんなにならないで……こんな所で貴方が自爆したら私も終わるのよ」


    198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 10:54:20.26 ID:kEkuwvhC0

    戦士「勇者が連れて行かれた方角は」

    魔法「今私達がいるのがこのあたりになるから……」ガサ

    戦士「……鉱山か」

    魔法「けれど勇者を連れて一体どうやって内部に入るつもりなのかしら?」

    戦士「もしかしたら周辺も魔物達が抑えているのかもしれない。だとすれば山頂なりなんなり、安定した足場のある場所に下ろすだけで済む」

    戦士「とにかく鉱山に向かうでいいな?」


    201: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 11:01:26.81 ID:kEkuwvhC0

    戦士「流石に一日じゃ無理か……」

    魔法「勇者……無事でいて」

    「なんだお前達は!」

    戦士「俺達は勇者と共に旅をしている者だ。昨日、魔物に攫われた少女がこっちに来たはずだ」

    「な……あれが勇者様だったのか」
    「おい! こうしちゃいられないぞ!」
    「全部隊、突撃準備にかかれ!」

    魔法「へ?」

    「我らの命運かかった勇者様をお助けするぞ!!」
    「「おおおーーーーー!!」」


    204: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 11:03:44.20 ID:kEkuwvhC0

    戦士(勇者に対する期待、でかすぎじゃないか?)ヒソ

    魔法(遠方じゃ元は町人Aだったのを知らないのかもしれないわね)ヒソ

    戦士(兎にも角にも……俺らもこの突撃に乗じて乗り込むぞ)ヒソ

    魔法(ええ)

    「全部隊突撃準備完了まで後五分!」
    「十分後、全部隊を突撃させよ!」

    魔法「早っ!」

    戦士「まあ、一人攫われてるのを見ていたんだ。何時でも突撃できる準備はあったんだろう」


    206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 11:06:13.38 ID:kEkuwvhC0

    「全部隊突撃開始ぃっ!」
    「「うおおおおおおお!!!」」ドドドドド

    魔法「私達はどうするの?」

    戦士「地図で見る限り、平坦そうな所はこことこことここ……だが」

    戦士「この辺りに道がある……下手をするとここから坑道に入れるのかもしれない」

    魔法「まさか……」

    戦士「兵士達はがんがん山登って行ってる。正面から入ったら、俺らだけで中を対処する事になるからなぁ」

    戦士「俺達は中腹の入り口を目指そう」

    戦士(無事でいてくれよ……勇者)


    208: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 11:09:10.75 ID:kEkuwvhC0

    勇者「……」ダラダラダラ

    鳥型「ギャアアアアア!!」

    犬型「バァウ! バゥ!」

    オーク「ガハハハハ! でかしたぞぉお前らぁぁ!!」

    オーク「しかも中々に美味そうな人間」ジュルリ

    勇者(いやあぁっ! 初めてがオークとか嫌過ぎるぅ!!)

    オーク「二日後は満月だったな……グフフ、月見酒をしながら人間の肝を肴とするかぁ」

    勇者(おわああああ! そっちかああああ!!)ガクガクブルブル


    210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 11:12:38.83 ID:kEkuwvhC0

    勇者(か、考えるんだ。現状を打破しうる方法をっ)

    勇者(あれはまだあたしが勇者である事を知らない……あたしが勇者だと知れば……)

    ケース1
    オーク「なにぃ!? ならばその首を魔王様に献上すれば俺も……グフフフ!!」ズドッ

    ケース2
    オーク「ゆ、勇者だとぉ! とんでもねぇ地雷だ! 今すぐにでも!!」ズドッ

    ケース3
    オーク「こいつぁ大手柄だぁ! 生け捕りした勇者を魔王様に差し出せば! よし、今すぐ魔王様にお伝えしろ」
    オーク「逃げられでもしたら厄介だからなぁ!!」

    勇者(うん? あれ? え? 詰んだ?)


    212: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 11:15:11.11 ID:kEkuwvhC0

    オーク「てめぇらぁぁ! 二日後は大宴会だぁ! 準備するぞぉ!!」

    「ギエエエエエエエエ!!」
    「オオオオォォォン!!」

    勇者(雉も鳴かずば撃たれまい……例え二日の延命でも)

    オーク「さぁて……こいつはしっかり下拵えをすべきか否か……」

    勇者(鳴かずとも撃たれるぅ?!)

    オーク「初めての人肉で生きてるときたらぁ鮮度を選ぶよなぁ!!」ゲラゲラ

    勇者(よし、延命!)ドギマギ


    戦士「」ユラァ

    魔法(せ、戦士がかつて無い形相を……)ブルブル


    214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 11:18:17.62 ID:kEkuwvhC0

    魔物の群れ「」
    オーク「」

    戦士「勇者!!」

    勇者「戦士さんっ!」バッ

    勇者「うわぁぁん!! ごわがっだでずよぉぉ!!」ギュ

    戦士「勇者! 勇者!」ギュウ

    勇者「せ、戦士さん?」

    魔法「戦士?」

    戦士「良かった……勇者、本当に。すまない……本当に」ギュウウ

    勇者「……あ、ありがとう、ございます」カァ


    215: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 11:21:25.11 ID:kEkuwvhC0

    戦士「怪我は無いか? 痛い所は?」

    勇者「は、はい。戦士さんが助けてくれたので」

    戦士「本当に大丈夫か? 何か酷い事をされていないか?」

    勇者「は、はい……」

    勇者(な、何これ?! どうなってるの?!)

    魔法(勇者が攫われた時、ほぼパニック状態だったわよ)

    勇者(ええぇぇ?!)

    戦士「何て事を……ああ、だが無事でよかった……俺が傍にいながら……本当にすまない」


    217: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 11:24:33.03 ID:kEkuwvhC0

    勇者(実はフラグ立ってるとか!!)wktk

    魔法(……以前の様子を踏まえ、何か違う気もするわね)

    戦士「……」ギュウ

    勇者(うぇひひ、戦士さんの熱い抱擁)ジュルリ

    魔法(されどお互い鎧姿)

    勇者(されている事に意味があるのっ)

    オーク「」ムクリ

    戦士「……」ピタ


    232: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 13:48:15.65 ID:kEkuwvhC0

    オーク「よぉくも、まあぁやぁってくれたなぁ?」

    勇者「ひぃっ!」ビク

    魔法「あの傷でまだ立ち上がるの?!」

    オーク「あんなぁんで死ぬぐらいじゃあぁ、とぉっくに陥落してるわぁ」

    オークゾンビ「ふぅぅざけた野郎がぁぁ!! ぶっ殺してやるぅ!」カッ

    ゾンビ鳥「ギギ、ギギャア! ギギャア!」ムク

    ゾンビ犬「グル、ググゥ! グルルル!」ムク

    勇者「そんな……倒した魔物まで!」

    戦士「」スラァン


    鳥首犬首「」

    勇魔(ですよねー)


    233: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 13:51:16.51 ID:kEkuwvhC0

    オークゾンビ「グハハハ! 所詮は雑兵か!」ブォン

    戦士「ぐっ!」ガキィン

    オークゾンビ「腐り爛れた身を魔力で補っている俺はぁ!」ガキィン

    オークゾンビ「身体が耐えられる以上の力が発揮できるんだよぉ!!」ガキィィン

    オークゾンビ「この重い一撃、何時まで受け止められるかぁぁ?!」ブァ

    戦士「……」ギィィン


    234: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 13:54:43.30 ID:kEkuwvhC0

    オークゾンビ(なんだこいつは? 今までの一撃は辛うじて受けていた癖に、大振りの一撃を簡単に)

    戦士(なるほど……魔王以外ならリミッター解除でどうとでもなるな)スゥ

    戦士「はああ!」ギィン

    オークゾンビ「えっ!」

    勇者「鍔迫り合いの状態から剣を弾いた!」

    魔法「完全に力技ね」

    戦士「……」ブォ

    オークゾンビ「へ、へへ、斬るがいいさぁ! だがなぁ、俺ぁ何度でも起き上」ドッ


    236: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 13:57:36.57 ID:kEkuwvhC0

    肉塊「」

    戦士(流石に限界を超えて力を出しているだけはある……体がだるい)フゥ

    勇者「す、凄い一撃……」

    魔法「剣圧で叩き潰した? そんな芸当できたのならさっさと使えばいいものを」

    戦士「体への負担が大きいんだ」ブル ブル

    戦士「おまけに生涯に行っていい回数なんてのもある」

    魔法「……なるほど。人の限界を超えた力の代償ね。その回数を超えたら人体が裂けるのかしら?」

    戦士(なんで分か……あれ)クラ

    魔法「……ちょっと待って。あなた、休憩時間も惜しんで私を負ぶってきて、そんな力を出して大丈夫なの?」

    勇者「なにそれ! 魔法使いちゃんっ!」

    魔法「あっ。あー……あれは仕方が無かっ」ドサ

    戦士「」


    237: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:00:43.35 ID:kEkuwvhC0

    戦士「……ん?」パチ

    戦士「宿屋か?」ムク

    戦士(状況を見るにあのまま気絶した感じか……)ガチャ

    勇者「戦士さん!!」

    魔法「あら、案外丈夫ね」

    戦士「丈夫ってお前……」

    魔法「力なく倒れた時はもう駄目かと思ったわよ」

    勇者「うわぁぁん! 戦士さーん!!」ガバァ

    戦士「あー……心配かけてすまなかったな」


    238: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:03:23.17 ID:kEkuwvhC0

    戦士「ああ、鉱夫達の宿所か」

    魔法「今日一日はゆっくり休んでいなさいよ」

    勇者「でも、明日も様子見たほうがいいよね?」

    魔法「そうねー……疲労とあの技の所為だとは思うけど、明日の朝の様子次第かしらね」

    戦士「そんな病み上がりみたく。言うほどの事じゃないだろう」

    勇者「……戦士さん、あたしを助けに来た日から二日経っているからね?」

    戦士「え?」

    魔法「丸二日寝ていたのよ」

    戦士「えっ?」


    239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:06:39.27 ID:kEkuwvhC0

    戦士(疲労があったとは言え、リミッター解除したら丸二日眠るって……)

    戦士(連続で使ったらどうなるんだろう? 丸四日? 反動膨れてもっと? いや体弾けと飛ぶとか?)ブルル

    戦士(だとしてもこんなデメリットがあるだなんて……女神様、こういうのはしっかりお願いしますよ)コンコン

    戦士「? どうぞ」

    兵士「よー。久しぶりだな」ガチャ

    戦士「日の神様のっ。なんだ、こんな所の勤務だったのか?」

    兵士「いんや、飽くまでウェッブリバーの兵士ってだけだ。初の鉱山陥落で内部の調査とか、残党がどうだとか、てので来たんだ」

    兵士「ま、何はともあれお疲れさん」


    240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:09:21.48 ID:kEkuwvhC0

    兵士「まだ調査段階だけどもな、多分お前の大手柄になると思うぞ」

    戦士「何がだ?」

    兵士「魔王が放つ魔力、その爆心地における鉱石が含む魔力が特殊みたいでな」

    兵士「恐らく魔王の結界を消滅させる手段となるだろうな」

    兵士「天界にはもう送ってある。何柱かの神様方が額を寄せ合っているって話だ」

    戦士「最後、あんまり良い話じゃなくないか?」

    兵士「進展はしているらしいから時間の問題だろう。俺達従者は、主の手腕を信じて命を遂行するだけさ」

    戦士「そりゃまあそうなんだけどな」


    241: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:12:09.81 ID:kEkuwvhC0

    戦士「じゃあなんだ? これからはどんどん鉱山を潰していけって事か?」

    兵士「どうだろうな。今回採取できた特殊魔石で、どれだけ多くの魔力分解兵器を作れるか、だな」

    兵士「まあ、潰したきゃあ潰してくれて構わないが、近くに他の従者がいないと天界にも魔石が送れないからな」

    兵士「お前、魔法が使えないしな。魔法使えたら自分で送れるのになー」

    戦士「悪かったな」

    兵士「ま、これを機に人手の薄いところを従者達で襲撃して、鉱山奪還を計るかって話も出てきているし無理しなくてもいいだろう」


    244: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:18:11.12 ID:kEkuwvhC0

    兵士「とりあえずこれ、回復薬だ」

    戦士「お、助かる」

    兵士「あとこれは滋養強壮剤」

    戦士「いらん」

    兵士「そういう意味じゃない。今回の件で体に負担かかってるだろう、て事で天界製の物を渡せっつわれたんだ」

    戦士「それなら頂くが」グビッ

    兵士「んじゃあ俺はこれでな。お前も頑張れよ」

    戦士「クハーーッ! おう、またな」


    245: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:21:52.25 ID:kEkuwvhC0

    ……
    戦士「良し、そろそろ行くか」

    勇者「昨日目覚めたばかりなのに、大丈夫なのですか?」

    魔法「無理をして倒れられても困るのよ」

    戦士「三日もゆっくり休んだんだ。もう平気だよ」

    戦士(そりゃあ天界の、それも神の酒さえも原料とした薬だからな」

    戦士(人間の体には過ぎるほどの効力だ)


    246: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:24:31.99 ID:kEkuwvhC0

    戦士「ふぅっ! たぁっ! ふっ! せっ!」ズババババン

    勇者「せ、戦士さん……」

    戦士「三日も休んだ分、体を慣らさないとな」

    魔法「だとしても前線で戦い過ぎじゃない?」

    戦士(俺自身強くならない事には、魔王も倒せないだろうからなぁ)


    249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:27:18.87 ID:kEkuwvhC0

    戦士(……とは言え、魔王に勝てる見込みが全く無い)ズゥゥン

    戦士(俺でさえ素のままじゃ、オークゾンビに押されていた訳だし)

    戦士(あれ、これ由々しき事態じゃないか? というか従者としてすら魔王には適わないものなのに)

    戦士(神々は何故人間に任せる事になったんだ? やばい……何で今まで楽観視していたんだ)

    戦士(開発中の兵器で魔王が弱体化……いや、俺が出撃した段階において、そういった道具の必要性は考慮されていなかった)

    戦士(それとも、人間界を襲っている魔王は、魔王の中でもとびきり弱い者なのか?)

    戦士(そうでもなければ……説明がつかないな)

    戦士(とは言え、今のままでは戦力不足なのは間違いないが……)


    250: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 14:33:13.64 ID:kEkuwvhC0

    勇者「馬車通りませんねー」

    魔法「気長に歩くわよ……」

    戦士「……」ヒョイヒョイ

    勇者(こ、この間から戦士さんがやたらと石を拾うようになったんだけども)ヒソ

    魔法(私に言われても知らないわよ)ヒソ

    戦士(今できる事なんぞ筋力上げとスタミナ上げくらいか……この先が不安で堪らないな)


    1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 14:37:18 ID:v7EcSoCM

    勇者「首都以降初めての町だね」

    魔法「ゆっくり宿屋で休みたいわぁ」

    勇者「稽古の方はどうします?」

    戦士「……」ウーム

    戦士「すまんが自主トレーニングで。俺は俺で鍛えなければならない」

    勇者(何だろう……ちょっと寂しい)シュン

    魔法「まーあれはあれで、勇者が攫われたのに相当堪えたみたいね」


    2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 14:38:08 ID:v7EcSoCM

    勇者「首都以降初めての町だね」

    魔法「ゆっくり宿屋で休みたいわぁ」

    勇者「稽古の方はどうします?」

    戦士「……」ウーム

    戦士「すまんが自主トレーニングで。俺は俺で鍛えなければならない」

    勇者(何だろう……ちょっと寂しい)シュン

    魔法「まーあれはあれで、勇者が攫われたのに相当堪えたみたいね」


    3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 14:40:22 ID:v7EcSoCM

    戦士「ふっ! たぁっ!」ズババン

    魔物の群れ「ギィギィ」ワラワラ

    戦士(従者の身であれば一撃で吹き飛ばせるものをっ!)

    戦士「ど、っけぇぇぇ!!」ブォッ

    魔物の群れ「ギッ」ドッ

    魔物達「ギギィ」ワラ

    戦士「はぁっはぁっ」

    戦士(何だ……? 半数近くが叩き潰れたぞ?)


    4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 14:42:17 ID:v7EcSoCM

    勇者「……」ビュビュビュン ビュッ

    魔法「随分と様になってきたわねー」ズズー

    勇者「うーん、でもまだまだだよなぁ……」

    勇者「せめて戦士さんの足を引っ張らないレベルにならないと、役立たずなレベルだし」

    魔法「それは言いすぎじゃないかしら?」

    勇者「いやいや……正直あたし要らないよねぇ、と思っているくらいだし」

    勇者「ぶっちゃければ出願者さえいれば、あたしでなくてもいいよね」

    勇者「神様がどうたらとか抜きに、戦士さんクラスの人達が集まった方がよっぽど魔王を倒せる気がするし」

    魔法「まーそれはそうでしょうね。けれども、それでも人はすがるものよ。諦めなさい」

    勇者「え? や、逃げ出したい……訳じゃないけど勝率考えるとさー」


    5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 14:45:05 ID:v7EcSoCM

    魔法「ふう……普通の食事はいいものね」モクモク

    戦士「喜んで犬型の魔物肉を食べていたじゃないか」

    勇者「いやーやっぱりこういう食事があると、こっちの方がいいですよねー」

    戦士「でも外じゃあ魔物肉に食らいつく、と」

    魔法「静かに食べたらどうなの?」

    勇者「女の子にそういう事言っちゃダメですよ」

    戦士「あれ、俺が悪いのか?」


    6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 14:48:05 ID:v7EcSoCM

    戦士(うーん年頃の女の子の考える事は分からない)

    戦士(そりゃあ周りに女性はいるが、従者と人間じゃあ価値観が変わってくるからなぁ)ドサ

    戦士(にしても体が裂けるくらいに痛い……一人で魔物の群れと大立ち回りはやり過ぎか)ギスギス

    戦士(もう休もう……明日に響、く)ウトウト


    勇者「そういえば、戦士さんはどんな稽古していたんだろう?」

    魔法「案外、一人で魔物と戦っていたりしてね」

    勇者「ありえそうだから困る。なんだか疲れていたみたいだし大丈夫かなぁ?」

    魔法「勇者が心配するほど柔じゃないでしょうに」


    7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 14:51:28 ID:v7EcSoCM

    数日後
    戦士「……」ヒュヒュン

    魔物の群れ「」

    勇者「戦士さんが異様に強くなっている気が」

    魔法「異常な速度ね」

    戦士(やはり素でも剣圧で敵を薙ぎ払えるようになっているな)

    戦士(もしかして人間の肉体と言えど、限界値はかなり高く設定されているのか?)フーム


    8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 14:55:54 ID:v7EcSoCM

    戦士「おー緑の壁が見えてきたな」

    勇者「うわぁ……凄い。あれがグリーングランド」

    魔法「樹海の国と言われるだけはあるわね。私達遭難しないわよね」

    戦士「道ならちゃんとある、が」

    勇者「が?!」

    戦士「魔物侵攻の関係で何処が安全なのやら」

    魔法「トラップとかがあるという事かしら?」

    戦士「グリーングランドは樹海という地の利を生かして魔物を退けているらしい」

    戦士「ともすれば樹海はトラップだらけだろう……」

    勇者「どうするんです? 迂回でもしますか?」

    戦士「それはそれで凄い時間がかかるんだよなぁ。近くに町があるはずだからそこで情報を集めて、かな」


    9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 14:58:10 ID:v7EcSoCM

    宿
    戦士「……」ウーム

    勇者「あ、お帰りなさい」

    魔法「どうだったかしら?」

    戦士「予想以上に面倒だな……一応ルートは分かったが」ガサ

    戦士「ここを入り口にこう行ってここを進んでここを登ってここを抜けるとグリーングランドの首都に着く」

    戦士「樹海内部は首都と大きな町がいくつかあるだけだからな。途中で補給もできないし、二人にとっては歩きなれない地だ」

    戦士「敵の事も考えて五日くらいかかると思ったほうがいいかもしれないな」

    魔法「そんなに?」

    戦士「地面は苔むしているからな。足を取られるだろうし起伏も激しいルートだ」

    勇者「うわー疲れそう」


    10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:01:21 ID:v7EcSoCM

    勇者「ひぃ! ひぃ!」

    魔法「はぁ……なん、なのよ、これ」

    戦士「だから言っただろう。ここを上りきれれば休めるぞ」

    勇者「し、死ぬぅ~」

    戦士「魔法使い手」

    魔法「あ、ありがと……」ガッシ

    勇者「」ゴァ

    魔法「こっちは……ギリギリだから……そんな目しない、でぇ」


    11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:04:28 ID:v7EcSoCM

    勇魔「」グッタリ

    戦士「ふう……ここらの敵も粗方片付いたし」

    戦士「こりゃあ五日でも着けるか分からないかもしれないな」

    勇者「な、なんで戦士さんは余裕なんですか?」」

    魔法「いくらなんでもおかしいわよ」

    戦士「いや、そんなもんだろう」


    12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:09:50 ID:v7EcSoCM

    魔法「蛇肉美味しいわ」

    勇者「初めはうえぇなんて思ったけど、悪くないね」

    戦士(野営マジックなんだけどな)

    戦士(にしてもあの上りが酷かっただけで結構安定した道だな)

    戦士(これなら五日でつけそうだな)

    勇者「にしても視界が遠くまで届かないってここまで辛いだなんて」

    魔法「町が近いのか遠いのか……」


    13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:12:07 ID:v7EcSoCM

    戦士「……」ザッザッ

    勇者「ふぅ……ふぅ」ザッザッ

    魔法「ひぃ……ひぃ」ザッザッ

    勇者「せ、戦士さん……そろ、そろ」

    戦士「……」キョロキョロ

    戦士「もうちょいだな」ザッザッ

    勇者「えぇー……」

    魔法「ひぃ……まだぁ?」


    14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:15:11 ID:v7EcSoCM

    戦士「……」ザッ ピリリ

    勇者「止ま……?」ピタ

    魔法「」ピタ

    勇者「ま、魔法、使いちゃん……」ヒィヒィ

    魔法「」ヒュー ヒュー

    戦士(グリーングランドの最終防衛ラインか)ピリリ

    戦士「こちらの少女は神より勇者の啓示を受けた者だ。魔王討伐の為旅をしている。こちらを通させていただきたい」


    15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:18:38 ID:v7EcSoCM

    狩人「……」ガザ

    戦士「流石にピリピリしているな」

    狩人「ここまでやってくる魔物はいないが油断はできんからな」

    狩人「それにしても……勇者様はこんな幼いとは」

    勇者「ど、どうも……」ハーハー

    狩人「我々は我々の国さえ守っていれば、勇者様が魔王を倒すだろうと思っていた」

    狩人「だが……何て愚かで浅ましい考えだったか」

    戦士「少しでも労わってくれるなら、先に進ませて宿」クイクイ

    勇者「無理……無理」プルプルフルフル

    魔法「」ゼェハァ

    戦士「……休ませてくれないか?」


    16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:21:26 ID:v7EcSoCM

    グリーングランド首都
    魔法「美味しい」モクモクモク

    勇者「凄い山菜鍋ですねー」パクパク

    戦士「名物だからな」モグモグ

    魔法「それにしてもこれからどうするの?」

    戦士「ここから樹海の外に出る最短コースを案内してもらるとさ」

    戦士「そこからは平地が続き……細く長い岬の先に魔王城がある」

    戦士「魔物との戦闘も激化するだろうから、時間はかかるだろうが目と鼻の先だ」

    勇者「き、緊張してきた」モグモグ

    魔法「プレッシャーで胃がどうにかなりそうね」モクモク

    戦士「どこがだ?」


    17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:30:45 ID:v7EcSoCM

    ……
    戦士「で、だ。樹海を抜けた訳だが」

    戦士「ここから南に町がある。一旦そこで休息を取った後、南東の岬に向かう」

    戦士「その町が最後の町になるからな……ゆっくり休むとしようか」

    魔法「ここからだとどのくらいかかるのかしら?」

    戦士「そうだなぁ……四日ぐらいで着くか」

    勇者「最後の町まで四日かぁ……」

    戦士「ま、慌てる事はないさ。何せ魔物も強いのが現れるだろう。心していこうか」


    18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:33:49 ID:v7EcSoCM

    魔物の群れ「グォォォォォン!」ドドド

    戦士「おー牛型の魔物か」

    勇者「うっわ強そう」

    魔法「これは辛そうね。戦士、少し時間を稼いでくれないかしら?」

    戦士「良しきた」バッ

    勇者「赤いマントなんて何時から持っていたんですか?!」

    戦士「元はただの布」

    魔法「その赤って……」


    19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:36:28 ID:v7EcSoCM

    戦士「うおおおおお!」ドドド

    魔物の群れ「オオオォォォォン」ズドドド

    魔法「……」キィーン

    魔法「火炎魔法・中!」ゴッ ドアアアアア

    戦士「うおおおおお?!」ゴォォォォォ

    勇者「うわー……全てを灰塵とする勢いだぁー」ゴゴゴゴゴ


    20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:39:27 ID:v7EcSoCM

    ヴェリー・ウェルダンな炭「」シュウウウ

    戦士「おい、俺までちょっと焦げたぞ! というか俺ごと焼き殺す気か!」チリチリ

    魔法「ご、ごめんなさい」

    戦士「というかなんだあの威力……本当に火炎魔法・中か? 今まで撃っていた魔法はなんだったんだ」

    勇者「魔法使いちゃんは先天的な大魔力の持ち主なんだよ」

    勇者「ウェッブリバーに魔法を学びに行ったんだけども、一番の目的は制御しきれなくなって暴発する魔力をどうにかする為だったの」

    戦士「暴発? そんな事あるのか?」

    戦士(人間の器じゃ零れる量の魔力? そうそう無いぞ)

    戦士「あーあれか? 勢い余って生活用魔法で人死に出したとか」ハハ

    魔法「……」プルプル

    戦士「……。え? ドンピシャ?」

    勇者「近くに人がいなかったら怪我人一人出なかったんだけども家が廃屋に……あれにはあたしもびっくりしたなぁ」

    戦士「え? マジで?」


    21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:42:29 ID:v7EcSoCM

    魔法「お願い……その話だけは止めて……」トラウマ

    戦士(なんだこの子……というか中であの威力って従者でもいないぞ?)

    戦士「因みに……魔力的には残りはどんなもんだ?」

    魔法「……? ……たかだか中一発撃ったぐらいじゃ、余裕だけども?」

    戦士「強クラスも撃てるのか?」

    魔法「一度だけなら撃った事はあるわ」

    戦士「一度?」

    魔法「……強が撃てる環境がないのよ」

    戦士「」


    22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:45:13 ID:v7EcSoCM

    戦士(おいおいこの子、人間の身で神様クラスの魔力なんじゃないか?)

    戦士(死んだら一柱増えたりして。おわー天界で会いたくねぇー)

    戦士(いや、落ち着け。冷静に考えればこれはとんでもない火力だぞ)

    戦士(というか魔王城ごと消し炭にできるんじゃないか?)

    戦士(あれ……勝ち戦?)

    魔法「ああ……言い忘れたけども、今まで私が撃っていた魔法はそこそこ力込めた生活用魔法ね」

    戦士「本来焚き火するのに火を起こす程度なのに、敵を燃してるってどういう事だ」


    23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:48:15 ID:v7EcSoCM

    戦士「……とりあえず最後の町を過ぎたら強を撃ってもらいたいな」

    勇者「あ、あたしも見てみたーい」

    魔法「私にとってある意味深刻な話なのよ……」

    魔法「年々魔力は増えるばかり……これから先どうしたらいいのか」

    戦士「現在進行形か……」

    戦士(なんか、神様が転生しているんじゃないかと疑いたくなるな)


    24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:51:19 ID:v7EcSoCM

    戦士「ご馳走様でした」フゥ

    勇者「あー美味しかったぁ」

    魔法「私は一足先に部屋に戻るけれども、勇者はどうするの?」

    勇者「うーん、ちょっと武器屋見てこようかな」

    戦士「なんだ? 買い忘れか?」

    勇者「いやーほら、魔法剣とかあったじゃん」ジュルリ

    魔法「元はただの町娘なのに……」

    戦士「頭の中まで剣士に育って……」

    勇者「えっ」


    25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:55:13 ID:v7EcSoCM

    戦士(最後の町に着いた訳だが)

    戦士(この後どうしたものか……なんかもう魔王城ごと蒸発させてしまえばいいような)

    戦士(障壁だってあれだけの威力を打ち込んだら破れるだろうし……)

    戦士(そういえば対障壁兵器ってどうなったんだろう?)

    戦士(魔王城まで一本道になったんだけ)コンコン

    戦士「どうかしたか?」ガチャ

    騎士「夜分遅くに失礼するよ」

    戦士「え、誰?」


    26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 15:58:29 ID:v7EcSoCM

    騎士「私は風の女神の従者、グリーングランドの騎士だ」

    戦士「ああ、そういう……俺は癒しの神の従者の戦士だ」

    騎士「件のものを持ってきたぞ」ジャラ

    戦士「なんだこれ……魔石か? こいつを魔王に当てれば障壁が消えるのか?」

    騎士「強い衝撃がかかると割れて半径5,6m以内の魔法が消滅」

    騎士「その範囲内であればしばらくの間は魔法そのものが使えなくなる」

    戦士「ほー……効果時間はどのくらいだ?」

    騎士「おおよそ10秒だ。可能であれば障壁消滅と共に攻撃し、10秒以内に張り直させられれば楽になるだろう」

    戦士「障壁を封じられた、と思い込ませるか?」


    27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:01:19 ID:v7EcSoCM

    戦士「にしても凄い量だな」ジャラ

    騎士「此度の魔王は魔力に優れるものの、身体能力は非常に低いらしい」

    騎士「インファイト限定だったら、人間の軍にも負けるレベルだそうだ」

    戦士「ひ弱すぎるな」

    騎士「全くだ。だというのに魔法学は滅法弱いらしい」

    戦士「可哀想だな……」

    騎士「全くだが魔力操作には長けている所為で、空を飛んだり障壁を張ったり出来るらしい。迷惑な話だ」

    戦士「天は二物を与えない、か」

    騎士「その癖、その魔力で魔法ゴリ押しで強いのだからな」

    戦士「死ねばいいのに」


    28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:03:08 ID:v7EcSoCM

    騎士「それと追加情報なのだが、魔王の側近は時を止める魔法というものを使えるらしい」

    戦士「時を? どんな効果なんだ?」

    騎士「それが詳しい事が分からないんだ。特定の対象なのか空間なのか。自己犠牲型なのか……すらな」

    戦士「魔王はどうにかできそうだが……側近か。変なところからイレギュラーが現れたな」

    騎士「魔王? お前、その体で一騎当千という訳にもいかんだろう?」

    戦士「あー……あのさ、仲間の魔法使いがとんでもない魔力持ちなんだ」

    戦士「従者でもトップクラス足り得るほどのなんだ。強クラスの魔法で魔王城が消し飛ぶんじゃないかってぐらい」

    騎士「……神が降臨しているという話は聞いていないのだが」

    戦士「それが人間なんだ……一週間前まで生活用魔法で援護されている事に気づかなかったよ」

    騎士「……良かったな。その者とは天界で末永い付き合いができるだろう」

    戦士「だろうな」


    29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:06:52 ID:v7EcSoCM

    戦士「あーあと一騎当千ってのはいけるかもしれない」

    騎士「?」

    戦士「なんか鍛えていたら剣圧で魔物を薙ぎ払えるようになってさ」

    騎士「そんな馬鹿な。いくら従者と言えどこの体は人間の肉体だぞ。多少、限界値が高めであっても、そこまではできまい」

    騎士「……いや待て、少し調べさせろ」

    戦士「調べる、てどうするつもりだ」

    騎士「大人しくしてろ」ガチャガチャ

    戦士「なにその機材怖い」


    30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:09:20 ID:v7EcSoCM

    騎士「……」

    戦士「で、診断結果は?」

    騎士「お前を天界に送るべきか否か悩むところだ」

    戦士「えっ」

    騎士「お前の体が変質しつつある……既に人間の壁を超えている」

    騎士「このままだと従者の肉体に近づいていくぞ」

    戦士「聞こえはいいな」

    騎士「人間からすれば人外になっていくのだぞ。何より変質が進んだ時、果たして天界に帰れるか否か」

    戦士「あれ? かなり不味い状況か?」

    騎士「仮住まいの肉体だからこそ、肉体の死や消滅でもって我々は天界に戻る。だと言うのに、器が定住できる形になってしまったらどうなる事か」


    31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:12:24 ID:v7EcSoCM

    騎士「だがこんな事……何故?」

    戦士「飽くまでこの体は容器だ。一度、それも神々が作った物がそう簡単に変質するだろうか? あ、この体不良品?」

    騎士「人間として作られた体とは言え、人ではなくなった我々の精神と魂を入れるのだし、ある程度は力が発揮できるように作られているはずだが」

    戦士「大き目の器って事か。うん? 待てよ? それだとリミッター解除なんて一度で肉体が破壊されかねないよな」

    騎士「リミ……? 何の話だ?」

    戦士「魔王討伐にあたって、五回までは一時的に出力を上げられるんだ」

    戦士「通常が従者の体の二割に対し、リミッター解除をすると五分間だけ四割まで発揮できるとさ」

    戦士「とは言えあれで筋力そのものが二倍なんて事は無いだろうし、飽くまで全能力を総合してって事だろうけど」

    騎士「そんな力が?」

    戦士「今回限りにして俺だけだろうがな。前回前々回と何にも無かったからな」


    32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:15:19 ID:v7EcSoCM

    騎士「なるほど……恐らくはそれが原因だな」

    戦士「どういう事だ?」

    騎士「お前の器はそのリミッター解除ができるよう伸縮性を富んだものなのだろう」

    騎士「違うとしたら何か、他にお前の力を膨らます要因が発生したか……」

    騎士「何れにせよ癒しの女神様は六回でその伸縮が限界を来たし、弾けるだろうと予想していたのだろうな」

    騎士「このままお前の力が膨らみ続けたらどうなるか」

    戦士「単純に考えて、まるっと俺が納まるサイズまで膨らんで帰れなくなるか、いきなり弾け飛ぶか」

    戦士「そうなると人間界に残る原理ってなんだ?」

    騎士「我々には理解できない話らしいが、簡単に言ってしまうと普通の人間と同じ大きさになるまで魂を削ってしまうんだそうだ」

    戦士「なにそれ怖い」


    33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:18:22 ID:v7EcSoCM

    戦士「だからあんな慎重に話をしたのか。そりゃそうか人間界に残って一世紀程で天界に戻れるんなら、そこまで深刻な話じゃないだろうからな」

    騎士「とにかくお前は気をつけろよ。帰れなくなるか弾け飛ぶか。どちらが先かは分からない」

    戦士「ああ、気をつけるよ」

    騎士「それでは私は失礼する」ガチャ

    戦士「魔王は任せてくれ。他の連中は頼んだぞ」

    騎士「心得ている」バタン

    戦士「……」

    戦士「ふぅ」ボフ

    戦士「やっべえぇぇぇ天界帰れないとかマジないからぁぁ」ゴロゴロ


    34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:21:25 ID:v7EcSoCM

    戦士「さて、しっかり休息も取ったし、そろそろ魔王城に殴りこむとするか」

    勇者「いよいよなんですね」ゴクリ

    魔法「でも魔王城まで距離換算で三日。戦闘を加味すれば五日、六日。そんなところかしら?」

    戦士「まあ焦らずじっくり先に進もう。ここで敵を倒していけば、町への被害も少なくなるわけだしな」ザッ

    勇者「ですね」ザッザッ

    魔法「ゆっくりと休息が取れない以上、小まめにとるしかないものね」ザッザッ

    軍隊「」ザッザッ

    戦士「……」ザッザッ

    勇者「……え、なん、え?」ダラダラ

    魔法「訳が分からないわ」ダラダラ


    35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:24:37 ID:v7EcSoCM

    兵士「我々は魔王城までの道中、勇者様方をお守りすべく馳せ参じた者です!」

    兵士「魔王城まで我々がお守りいたします! どうぞご安心を!!」

    勇者「ええ?! い、いいんですか?」

    戦士「……というか必要だろうか?」

    魔法「うーん、あら敵ね」

    魔物の軍隊「オオオォォォォ!」ゾロゾロゾロ

    軍隊「お控え下さい! ここは我々」

    魔法「結構な数ね、やってみようかしら」キィィン

    戦士「退避ぃ! 総員退避ぃぃ! 兵士ども、お前らもだ!!」

    魔法「爆破魔法・強」カッッ


    36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:27:58 ID:v7EcSoCM

    ゴゴゴゴゴ
    戦士「……」

    勇者「ゎー」

    軍隊「」

    魔法「あー久々に気持ちがいいわー!」ノビー

    勇者「あたし、これ本で読んだ事があります。クレーターって言うんですよね」

    戦士「じゃあ魔王城のところにもクレーターができるな」

    軍隊「」

    戦士「えーと、君ら。まだ付いてきたい?」

    軍隊「ゆ、勇者様方の力を温存させるべく、以降の戦闘は我々が全」

    魔法「物足りないわ……あと四十発は強が撃てるのに相手がいないだなんて」

    軍隊「帰ります」

    戦士「兵糧もタダじゃないからな」

    戦士「というかお前、今までの魔力温存ってなんだったの?」

    魔法「貴方が言い出したから従っただけよ。威力を抑えるのが面倒というのもあるけれども」


    37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:30:16 ID:v7EcSoCM

    戦士「うん? なんだあの海」

    勇者「何かが移動してますね? 巨大なイカダ?」

    戦士「いや……あれは魔物か! なるほど、陸路では迎撃されるから泳げる魔物を大々的に出撃させたのか」

    魔法「ふーん」キュィィン

    勇者「あ、凄い魔力」

    戦士「魔力100%チャージ。魔法使い砲……ってぇ!!」

    魔法「落石魔法・強っ」カッ

    戦士「……?」シーン

    勇者「あれ? 不はt」ォォォオオ


    38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:33:37 ID:v7EcSoCM

    ズゴゴゴゴ
    勇者「い、隕石……」ゴクリ

    戦士(あれーメテオって神様クラスの魔法じゃなかったけかなー)

    勇者「あ、凄い、お城よりおっきい」ドゥン

    戦士「あれ? これ俺達津波で死ぬんじゃないか?」ズドドドドド

    魔法「そうね、危ないわね」キュィィィィィン

    魔法「障壁魔法」カッ

    勇者「おおおおお! 凄い!! 波が壁に当たったかのように押し戻されていく!」ドドドドド

    魔法「しばらく波は引かないでしょうからこのままね」

    戦士「そうだな……いや。町、いや」


    39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:36:10 ID:v7EcSoCM

    勇者「建物が見えてきましたね」

    戦士「やっとで魔王城か」

    魔法「……」キュィィィィン

    戦士「せめてしっかりと辿り着いてからにしてやれよ!」

    魔法「それもそうね。海上にしておこうかしら。爆破魔法・強」カッ

    戦士「何て酷い宣戦布告」ドッ オオオオォォン

    勇者「わー涼しー」ゴオオオォォォ


    40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:39:08 ID:v7EcSoCM

    戦士「で、魔王城が見えてきた訳だが」

    魔法「……」キュィィィィン

    戦士「……もう好きにしてくれ」

    勇者「わーあたし何のためにいるんだろー」

    魔法「火炎魔法・強!」ゴアアアァァ

    戦士(これで終わりか……呆気ないが安全に片付くのだから喜ぶべきなんだろうな)チラ

    勇者「……」サァー

    戦士「どうした? そんな血の気の引いた顔をして」

    勇者「あ、あれ……」

    戦士「? なんだ? 魔王城は無傷だな。流石に対魔法用の障壁でも貼っているのか」

    魔法「……」キュィィィィン


    41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:41:14 ID:v7EcSoCM

    魔法「爆破魔法・強!」カッ プシュゥゥゥ

    勇者「なん、で……? どうなっているの?」

    戦士(閃光は見えたが爆発はしなかった……となると魔法そのものは正常に発動されたはず)

    戦士(であればこれは……まさか)

    戦士「魔法使い、落石魔法を撃ってくれ」

    魔法「え、ええ、分かったわ」キュィィィン

    魔法「落石魔法・強!」カッ

    勇者「そうか! 炎も爆発も効かなかったけど、この物理威力の魔法なら!」ズゴゴゴゴ

    戦士「いや……恐らく」ゴゴゴ シュゥン

    魔法「そんな……落石も消えた?」

    戦士(参ったな……状況はより深刻だったのか)


    42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:45:21 ID:v7EcSoCM

    戦士(魔王の障壁は対物じゃないんだ。全てに対して防御しきるものなのだろう)

    戦士(ああ、だからか……だから魔王の魔力が直撃した石からこの兵器が生まれたのか)

    戦士(一切の物理を通さなかったように、魔法さえも障壁に接触した瞬間に消滅させてしまうとんでも障壁)

    戦士(落石魔法は元ある岩を飛ばすんじゃない。魔力を元に岩を上空に生成しているだけだ)

    戦士(だから魔法の効力を消滅させれば岩も消える……いや、そもそも魔法の中で)

    戦士(魔法単体で何かに働きかけ、その何かで相手にどうこうする魔法は無い……実質、策を講じなければ魔王の障壁は魔法に対しても無敵な訳か)


    43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:48:08 ID:v7EcSoCM

    戦士「恐らくは魔王が障壁を張っているのだろうな」

    勇者「ええ?! 魔法使いちゃんの魔法も弾くほどの?!」

    戦士「噂には聞いていたが凄まじいな」

    魔法「知っていたの……?」

    戦士「勿論だ……そしてその上で託されたものもある」ジャラ

    魔法「……宝石かしら?」

    戦士「あの障壁を消し去る石だ。こいつを魔王に当てれば効果が発揮されるが、恐らくしばらくの間、お互い魔法が使えなくなるだろう」

    魔法「……魔法の効果を打ち消す、みたいなものかしら」

    勇者「ええと……つまり魔王倒すには普通に戦わなくちゃいけなくて、結局魔王城には乗り込まないといけないの?」

    戦士「そういう事だ。腹括って行くとするか」


    44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:51:19 ID:v7EcSoCM

    魔王城
    戦士「魔物がいないな……」シーン

    勇者「今までの戦いで全戦力を投入していたとか?」

    魔法「それでも右腕に当たる戦力はまだいそうね」

    戦士「城に残っているのはそうだろうな」

    戦士「兵士クラスじゃあ勝てないと踏んでるだろう。避難させた国々への侵略に向けて進軍させたか……」

    戦士「何れにせよ、ここで戦う事になるだろう相手は一筋縄じゃいかないだろうな」

    勇者「……」ゴクリ

    魔法「……」キィィィン

    戦士「早い早い」


    45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:54:38 ID:v7EcSoCM

    戦士「……」ギィ

    「不意打ちなどせん。中に入るがいい」

    勇者「うわー絶対戦闘のパターンだよ」

    魔法「この状況で戦闘じゃない方がおかしいでしょうに」

    戦士「……四人、四天王か?」

    四天王A「そんなところだ」

    B「貴様らを我が主の下へ行かせる訳にはいかぬ」

    C「大人しくここで死んで頂戴」

    D「盛大に葬儀を行ってやろう」


    46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 16:57:15 ID:v7EcSoCM

    戦士「二人は先に行け。魔法使いの魔力は温存したい」

    勇者「せ、戦士さん?!」

    戦士「なーに、すぐに追いつくさ」

    A「愚かな……我々の足止めを一人で? その間にその二人が魔王様を討つと?」

    B「下らんな。貴様らも如何なる魔法も効かぬ魔王様を見たのだろう」

    C「もしかして、あの障壁は城に張られたものだと思っているのかしら?」

    魔法(こちらには石がある……その殆どは私が預かっているし、最悪魔王と交戦する事になっても)

    戦士「二人とも、行け!」スラン

    勇者「必ず、必ず追い着いて下さい!」バッ

    魔法「任せたわよ」バッ


    47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:03:51 ID:v7EcSoCM

    A「三人は二人を仕留めて来い」

    戦士「おや? 四人がかりじゃ、俺を瞬殺できないと踏んだか」ザッ

    B「……この男を始末してから向かえばよかろう」

    C「挑発してくる辺り、何かあるんじゃないかしら?」

    D「だが、なめられたままというのも気分が悪いな」

    A「……仕方がない。一撃で終わらすぞ」ゴォ


    48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:06:32 ID:v7EcSoCM

    戦士(これでなら力が出せるな……)

    戦士(乱用はしたくないが、五分でこいつらを片付けられるのならば)

    戦士(屋内に入った以上、魔法使いも派手な魔法は使えないからぐいぐいと進む事はできないだろうし)

    戦士(後は魔王の間までに俺が追いつき、魔石を使い魔王の障壁を消滅させて魔法使いに魔法を撃たせれば終わりだ)

    戦士(……)

    戦士(待て、その状況だと魔法使いは魔法を撃てないぞ! 何の為の温存だ?!)ゴァ

    戦士(あ、向こう戦闘態勢に入った、やるっきゃねぇ!)


    49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:09:21 ID:v7EcSoCM

    勇者「うぅ……戦士さんがいないと不安だ……」

    魔法「用心するに越した事は無いけど、そこまで心配する事ないんじゃないかしら?」

    勇者「だってこんな場所じゃ魔法使いちゃんも全力で魔法は撃てないだろうし……あたしが頑張らないと!」

    魔法「あら、別にここでも使える魔法はあるわよ」キィィン

    魔法「電撃魔法・強!!」ビシャアァァ

    勇者「ゎー……狭い通路を稲妻が駆け巡っていった」

    魔法「一撃必殺ではないでしょうけども、よほどの耐性が無い限り麻痺はするでしょうね。さ、行くわよ」

    黒焦げの何か「」ブスブス

    勇者「何がないだろうって?」


    50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:12:18 ID:v7EcSoCM

    魔法「戦士、遅いわね」スタスタ

    勇者「戦士さん……」スタスタ

    魔法(考えてみれば大半の石を私に預けた事を考えると彼は……)

    勇者「魔法使いちゃん?」

    魔法「何でもないわ……物々しい扉ね」

    勇者「ここに魔王が……」

    魔法「……ここで待っていて不意打ちを食らう訳にもいかないわ。行くわよ」

    勇者「……戦士さん」クル

    勇者「うん……行こうっ」ギィ


    51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:15:18 ID:v7EcSoCM

    魔王「ふっ。仲間を捨石にしてまで来たか」

    魔王「だが貴様達二人で何が出来る?」

    側近「……」チャキン

    魔王「良い、人間二人程度で構える事もあるまい。下がれ」

    側近「……畏まりました」スッ

    勇者「……魔法使いちゃん」

    魔法「電撃魔法・強!」ビシャアァァ

    魔王「……」バシュゥゥ


    52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:24:08 ID:v7EcSoCM

    魔王「ほう……大した魔力だ。これほどの魔力、魔王でさえ持っている者はそうはいないだろう」

    魔法「それでも攻撃が通らない。それが貴方の魔力の障壁……」

    魔王「知っていて尚立ち向かうか。健気な者だ」

    魔法「そうね……だけども無策ではないわ」ジリ

    勇者「……」チャキン

    魔法「受けなさい!」ヒュンッ

    勇者「!」バッ


    53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:28:48 ID:v7EcSoCM

    魔王(なんだ? 周囲の魔力が消失していく?)ギュワァァ

    勇者「たあああ!!」ビュォ

    魔王「っぐ!」ガキィン

    側近「魔王様?!」

    魔王「なるほど……確かに無策ではないな」グググ

    勇者(……あれ?)

    魔王「側近よ、手を出すな。ここまで来たのだ。我一人で相手をするのが道理であろう」ガッ

    勇者(魔王って……まさか)ズザァ

    魔法(3……2……)


    55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:33:36 ID:v7EcSoCM

    魔王(大気中の魔力が?)

    魔法「電撃魔法・強!」ビシャアァァ

    勇者「流石魔法使いちゃん! 完全なタイミング!!」ブシュゥゥ

    魔王「なるほど、持続時間は10秒か……」ゥゥゥ

    勇者「なっ!」

    魔法「直撃する直前に障壁を張ったのね」

    魔王「少し焦げたがな……だが手の内を知ってしまえば、その魔力も恐れるに足らん」

    魔王「残るはそこの少女の剣と我の剣だけだ」

    勇者「……」ゴクリ


    56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:36:39 ID:v7EcSoCM

    戦士「くそ……天界の薬二つでやっと普通に動けるとは」タタタ

    戦士「そこか!」バァン

    勇者「せ、戦士さん?!」

    魔王「……なんと、四人を倒したのか」

    戦士「お前ら! なんでここまで来てんだ!」

    魔法「もうダメかと思ったのよ」

    戦士「すぐ追いつくって言っただろう!」

    勇者(だってそれ死亡フラグですし)

    魔法(それで本当に追いつくと思う奴の方が少ないわ)


    57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:39:46 ID:v7EcSoCM

    魔王「一人増えたところでどうとなると言う」チャキン

    戦士「石は?」

    魔法「まだまだ」ジャラ

    戦士「おっし」バッ

    魔王(早い!)ガキン

    戦士「なんだ? 魔王という割には力が弱いな。吹っ飛ばされるかと思ったぞ」ギリギリ

    魔王「吠えるだけの力はあるという事か」ググ ガキン


    58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:42:50 ID:v7EcSoCM

    戦士「勇者! 回りこめ!」

    勇者「了解です!」バッ

    側近「魔王様!」バッ

    魔王「我の顔に泥を塗るつもりかっ!!」

    側近「ぐ……」ビタッ

    魔王「人間二人如きで! 我が押されるなど!」キィンキィィン

    戦士(隙を見てリミッター解除すれば勝てるな……計三回か。意外と楽にいけそうだな)ガギィン

    魔王「ぐぬぅ!」


    59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:45:31 ID:v7EcSoCM

    勇者「たあ!」ギィィン

    魔王(この二人……一人は勇者だろうが、この男は!)キィィンギィン

    魔王(全力でない。この力で全力でないというのか? 人間ではない……?)ギィン

    戦士「考え事か? 余裕だな!!」ガッギィィィン

    魔王「ぬぁっ!?」.ィン ガラァン

    戦士(このタイミングだろう!)キュィン

    戦士「魔法使い!」

    魔法「ええ!」パキィン

    戦士「この10秒で終わりだ、魔王!」


    側近「お許し下さい、魔王様」


    60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:49:32 ID:v7EcSoCM

    側近「魔王様にとって屈辱な事でしょうが」キィィィン

    魔法「なに、この反応は?!」

    戦士「魔力、じゃない……」

    魔王「ここまで来て……また地を這い生き延びねばならんか……」

    魔王「思うようにはならんものだな」

    勇者「せ、戦士さん!」

    戦士「二人とも下がれ!!」

    戦士(まさかこれは……術式? 魔界ではいまだに残っていたのか!)

    側近「憎たらしい人間ども……次はお前達のいない世だ。後悔して生きろ」カッ


    61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:54:15 ID:v7EcSoCM

    戦士「……」

    勇者「消え、た?」

    魔法「どうなっているの?」

    戦士「……町に戻ろう」


    「突如魔物達が消えたんだ!」
    「勇者様が魔王を倒したのだ!」
    「勇者様万歳! 勇者様万歳!」

    勇者「な、なんで……?」

    戦士「……」


    62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 17:57:08 ID:v7EcSoCM

    戦士(あれは……なるほど。魔法ではないが確かに時を止めるものだな)

    戦士(俺が生きていた時代であっても幻に近い術式だが……魔界ではまだ残っていたのか)

    戦士(何より全ての魔物達と契りを交わし眷属にしていたとは……)

    戦士(対象者とその下に続く繋がり、部下丸ごとに作用する。発動すればその者は世界から消滅し)

    戦士(遥か未来にてまた現れる……封印魔法の最上位の術式)

    戦士(やはり魔族は恐ろしいな……人間だったら一流の術士十人が命を張ってもできないだろうに、たった一人それも生きたままやってくれて)

    勇者「せ、戦士さん……あたし、どうしたら」

    戦士「……一度、シルバースノウに戻ろう。今日の事については、宿で話し合おう」


    63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:00:47 ID:v7EcSoCM

    魔法「自らを封印……そんな馬鹿げた事を?」

    戦士「あれはそういうものなんだ……何十年、何百年かは分からないが」

    戦士「遠い未来の果てに封印が解ける。それまでは魔王による被害は起こらない。聞こえだけならいいものだな」フゥ

    勇者「あの……すこし思ったのですが、あの魔王って実は凄い弱いんじゃ?」

    魔法「そうね……一太刀で私達を吹き飛ばすぐらいできると思っていたけども」

    戦士「俺の与り知るところでは……あの魔王は巨大な魔力と魔力操作が突出しているだけらしい」

    戦士「だからああして障壁を張っていたのだろう。そして魔力の大きさだけを武器に魔法を撃つ戦い方をしていたらしい」

    戦士「何処かの鉱山では魔王と鉢合わせしてしまい、為す術無く全滅した軍の部隊がいたと聞く」

    勇者「そんな……」

    魔法「……」


    64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:03:26 ID:v7EcSoCM

    戦士「表向き魔王は死んだ事にすべきか、一時的な封印とすべきか。それは俺にも判断がつかない」

    戦士「今回の魔王討伐の命令はシルバースノウの国王だ。戻って相談する他ないだろうな」

    勇者「えぇー王様に相談かぁ」

    魔法「あら? 勇者はあの王様嫌いだったかしら?」

    勇者「いやいや、凄いあたし達人々の事を考えてくれるから大好きだけど、謁見だけでも凄い緊張したのに」

    戦士「現国王……というよりも歴史的に見てもシルバースノウの王は良き王だ」

    戦士「魔王を討った国、などという下らない名誉の為に、思慮の足らない行動はしないだろう」

    勇者「そこは……うん、信頼できるけどさー」


    65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:07:00 ID:v7EcSoCM

    戦士「それと早馬を用意してもらえるようだ。帰り道はぐっと楽になるな」

    勇者「魔物の襲撃も恐れなくていんですもんね」

    戦士「というか二人は馬に乗れるのか?」

    魔法「これでも私達は子供の頃から乗馬経験があるわよ」

    戦士「意外だな。シルバースノウでどうやってまた」

    勇者「行商の方達が乗ってくる馬に乗せてもらっていたんですよ」

    戦士(俺の時代はそもそも馬が洞窟を抜けられなかったからなぁ。ジェネレーションギャップ酷すぎるな)

    魔法「……むしろ戦士は乗れるの?」

    戦士「何とかなるだろ」


    66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:13:01 ID:v7EcSoCM

    シルバースノウ
    勇者「魔王は封印された、って線で各国に発表するってさ」

    戦士「そうか……まあそうなるよなぁ」

    魔法「この石の作り方は? 早めに作り方が確立していれば、未来の役に立つわ」

    戦士「それは……分からないんだ」

    勇者「……そもそもこれ、一体何処で手に入れたんですか?」

    戦士「夢で貰った」

    魔法「……は?」

    戦士「ローブを着た初老の男だ。氷の塔の賢者と名乗ったよ……」

    勇者「そんな……御伽噺じゃあるまいし」

    魔法「何百年と語られこそすれど誰一人目にした者はいない氷の塔……本当にここシルバースノウにあるのかしら」

    戦士「さあな。魔王が復活した時にまた力を貸してくれるだろう……」

    戦士(シルバースノウ大好き。伝承の氷の塔ガーとか最高の言い訳)


    67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:15:57 ID:v7EcSoCM

    戦士「祭りは一時間後か……」

    勇者「あ、あたし……演説させられる」ガタガタ

    魔法「頑張ってね」

    戦士「頑張れよー」

    勇者「かわ、変わって下」ガタガタ

    戦士「俺らじゃあな」

    魔法「私に至っては五年ぶりの里帰りだし」

    戦士「もうちょい帰ってきてやれよ……」

    魔法「結構お金がかかるのよ……子供の時なら行商の人達も簡単に相乗りさせてくれたけども」

    勇者「あたし! 今はあたしの事のが大事!」

    戦士「いや、どうしようもないだろう」


    68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:18:20 ID:v7EcSoCM

    戦士(祭りまでは勇者は準備、魔法使いはその付き添いか)ザッザッ

    戦士(シルバースノウの外れに住んでいたからなぁ……故郷を拝む事はできないが)

    魔獣による犠牲者の慰霊碑

    戦士(何だかんだでこの地には縁があるな……ん?)ガサ

    戦士(手紙か……)カサカサ

    戦士(あと四時間で天界に帰還か……)

    戦士(きっと今回の件は女神様が無理を通したのだろう……)

    戦士(勇者の事を、知っていたのだろうな)ガササ

    戦士(俺は……)


    69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:21:46 ID:v7EcSoCM

    勇者「あーいたいた!」

    戦士「演説、頑張ったな」

    勇者「え? 何の事かワッカラナーイ」

    魔法「途中完全に真っ白になっていたわね」

    戦士「誰がどう見ても話す内容を忘れたって顔だったな」

    勇者「もう止めてっ」


    70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:24:22 ID:v7EcSoCM

    魔法「……私はちょっと食べる物をとってくるわね」

    戦士「おう。にしても意外と早く来れたな」

    勇者「ええ?! 何処が! もうお祭りが始まって二時間は経っているよ!」

    戦士「早い早い。もっとこうもみくちゃにされて質問攻めだったりなんだったりするもんだろ」

    勇者「あー……そこは王様が気を利かせてくれてさ」

    戦士「そりゃ良かったな」ナデナデ

    勇者「……♪」


    71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:27:18 ID:v7EcSoCM

    勇者「戦士さん……あたし、戦士さんにずっと言いたかった事があるんです」

    戦士「なんだ? 言ってみろ」

    勇者「……」ジッ

    戦士「……」

    勇者「あたし、戦士さんの事が好きです。ずっと、ずっと貴方の事を慕っていました」

    勇者「戦士さんさえ良ければ……あたしとお付き合いして下さい」

    戦士「……」グッ


    72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:30:01 ID:v7EcSoCM

    戦士「……すまない、それはできないんだ」

    勇者「」ビクッ

    勇者「は、はは……そうですよね」

    戦士「違う、そう意味では」

    勇者「分かっています。戦士さん、神様の遣いの方、ですもんね……」

    戦士「何故、それを……」

    勇者「盗み聞きする気じゃなかったんです……でも、その別の方と話しているのを」

    戦士「……そうか」


    73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:33:34 ID:v7EcSoCM

    勇者「あ、あたしの傍に来てくれたのも、あたしの事を見ていてくれたのも、全部使命なんですよね」ハハ

    勇者「あたし一人で舞い上がって……戦士さんはその」

    戦士「違う!」

    勇者「!」ビクッ

    戦士「俺は……俺は」

    戦士「違うんだ……そうじゃない……」ギュウ

    勇者「戦士、さん?」


    74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:36:27 ID:v7EcSoCM

    戦士(俺はどうしたい……何を望む……)

    戦士「構わない……君になら……全てを」

    勇者「え? え?」

    戦士「俺は癒しの女神の従者だ……生前はシルバースノウで生き、三百年前の魔獣の暴走で死んだ」

    勇者「百年前に討伐された……?」

    戦士「そうだ。そして君は……君は」ギュウ

    戦士「当時、唯一の肉親だった俺の……妹の生まれ変わりなんだ」

    勇者「……」

    勇者「戦士さんは……あたしを通して妹さんを」

    戦士「ああ……だが違う」


    75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:40:38 ID:v7EcSoCM

    戦士「初めこそはそうだった。だが分かりきった事だ。君はあの子じゃない」

    戦士「例えその魂の本質的な部分が同じだったとしても君は君だ」

    戦士「それでも尚、俺は君を想わずにはいられなかったっ……」ギュウ

    勇者「戦士さん……」

    戦士「俺には……従者には人間界に降臨し、使命を果たした際に人間界に留まる選択肢が与えられる」

    戦士「だが俺にはこれが奇跡に思えてならないんだ……死して尚、こうして大切な人の生まれ変わりと出会えた事」

    戦士「従者だからこそ得られた神々の奇跡を受けて尚、人智を超えた奇跡を授かる事など……俺には出来ない」

    戦士「それに俺はもう……人間に戻るには長く生き過ぎた」


    76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:43:08 ID:v7EcSoCM

    戦士「すまない……勇者。俺と出会えた奇跡だけで、許してくれ」ギュ

    勇者「いいんです。覚悟はしていましたから……ただどうしても、伝えたかったんです」ポロポロ

    勇者「それに……幸せでした。戦士さんと過ごせたこの数ヶ月が」

    勇者「全てが新鮮で……時には色々な事を教えてくれて」

    勇者「少しでも戦士さんが見てきた世界を一緒に見れて楽しかったです」ギュウ


    77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:45:28 ID:v7EcSoCM

    魔法「あら、お帰り……目が真っ赤ね」

    勇者「えへへ……やっぱりね」

    戦士「……」

    魔法「何処かで座らないかしら。もうすぐこの通りにもパレードが来るわ」

    戦士「じゃああそこにするか」

    勇者「ちょっと離れているけども、よく見えそうですね」

    魔法「そうね」


    78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:48:15 ID:v7EcSoCM

    勇者「……そういえば」

    勇者「***って……妹さんの名前なんですか?」

    戦士「なんだ……寝ぼけて言ってしまっただけなのに、まだ覚えていたのか」

    魔法「あら、妹だったの。てっきり故郷に残した想い人かと思ったわ」

    戦士「……魔法使いは俺の事を勇者から聞いているのか」

    魔法「そりゃあね……」

    戦士「そうか……」


    79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:51:05 ID:v7EcSoCM

    戦士「死んで神の従者となって、これまでに数度降臨したが」

    戦士「死後、名乗るのは二人が最初で最後だろう」

    戦士「俺の名前は*****だ」

    勇者「……*****さん」

    戦士「なんだ?」

    勇者「ふふ、名前を呼びたかっただけです」

    魔法「*****」

    戦士「えっ?!」

    勇者「おお」


    80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:54:35 ID:v7EcSoCM

    魔法「なによ? 私が貴方を真名で呼んじゃいけないかしら?」

    戦士「いや、以外というか……」

    勇者「ほら、デレデレだって言ったじゃん」

    戦士「そんな素振り一度も無かったのになぁ」

    魔法「ま、私の知る男の中で貴方が一番まともだってだけよ」

    戦士「そりゃあどうも」

    勇者「……*****さんは、何時天界に戻るんですか?」

    戦士「内緒だ。俺自身名残惜しくなってしまうからな。静かに去るとするよ」

    魔法「……そう」


    81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 18:57:21 ID:v7EcSoCM

    ~♪ ~♪
    勇者「パレード、来ましたね」

    戦士「やはり……故郷の楽器の音は沁みるな」

    魔法「……そうね。十年も離れていないけど、私もそう思うわ」

    勇者「……♪」

    戦士「……」ボロ

    戦;";,`;. . ブァ

    ;`:."ありが う;`; , `

    勇者「*****さん? *****さん?!」バッ

    勇者「そんな……早すぎるよ。あたしもっと、貴方と……」

    勇者「う、うう……うあああ、うああああぁぁん!」

    魔法「*****……そう、さようなら」


    82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 19:00:04 ID:v7EcSoCM

    従者「……」バシャバシャ

    従者(目が赤いのはどうにもならないか。仕方もあるまい)

    従者「ただいま戻りました」

    女神「ぅぅ……こんな」

    従者A「ひぐっえぐ」

    従者B「うぅ、こんな事……」

    従者C「ぐす、ぐす……」ビー

    従者「なんだこの状況」


    83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 19:12:45 ID:v7EcSoCM

    酒場
    従者(大した謁見も無かったのは有り難いか)カラン

    女神「珍しいですね。こちらにいるだなんて」

    従者「そういう時の気分もあるんですよ」

    女神「……」

    従者「……」カラン

    女神「私のした事は貴方にとって正しかったのでしょうか?」


    84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 19:16:54 ID:v7EcSoCM

    従者「苦しい決断を迫られました」

    女神「……」

    従者「それでも……俺にとっては身に余る奇跡です。本当にありがとうございました」

    女神「……私は貴方に恨まれてもいいぐらいなのに」

    従者「そんな事はありませんよ」

    従者「体が弱かったあの子があの時に願った事、世界を旅する姿を見る事ができたんです」

    従者「幸せな……事ですよ」

    女神「……無理に堪える必要はないのですよ」

    従者「……」ボロ

    従者「……う、ぐっ」ボロボロ


    85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 19:18:49 ID:v7EcSoCM

    従者「見苦しいどごろをお見ぜじまじだ」ズビズビ

    女神「貴方には私の前で無理をしなくて結構ですよ」

    従者「それでも無理を通そうとするのが男なのですよ」

    女神「もう大丈夫そうですね」

    従者「そうですね十数分後には何時でもぶり返せるようになっているでしょうが」

    女神「……そうですか」

    従者「思った以上にきつくって」


    86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 19:20:24 ID:v7EcSoCM

    女神「ですが自棄酒というものは従者の身でも良くはありませんよ」

    従者「大丈夫ですよ。ちゃんと限度を見て飲んでます」

    従者「それにそろそろ休みますよ」

    女神「そうですか……ではその前に」

    従者「流石に今、人間界に何かを取って来いってのはナシで」

    女神「まさか。最後に一杯付き合いなさい」フフ

    従者「……それでしたら喜んで」カラン



          女神「魔王が人間界に攻め込んだようです」   終


    88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 19:23:58 ID:5nu2xGaI

    乙、面白かった!


    92: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 19:27:40 ID:kLoRxUMU

    お疲れさま

    あいかわらずのクオリティ
    もっと見たいよー


    93: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/24(月) 19:28:48 ID:5RRDOAuI


    流石だった


    引用元: 女神「魔王が人間界に攻め込んだようです」


    引用元: 女神「魔王が人間界に攻め込んだようです」

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