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    ヘッドライン

    男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」

    1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:20:37.58 ID:lF1ZecCgo



    第一話


    【謎のタクシー客】





    SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1468480837



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    2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:21:19.84 ID:lF1ZecCgo

    男「俺はタクシーの運転手をしてるんだけどさ」

    女「うん」

    男「この前の夜、女の人を一人乗せたんだよ」

    女「へえ、それで?」

    男「その女の人はとある住所を言って、そこまで乗せてってくれって言ったんだ」

    男「それっきり、その女の人は外の景色をずっと見ていてたから、俺も話しかけはしなかったんだ」

    女「うん」

    男「しばらくして、言われた住所まで辿り着いて」

    男「それで、料金を告げたんだよ」

    男「結構、距離があったから五千円を超えてた」

    男「そうしたらさ」

    女「うん」


    3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:21:55.83 ID:lF1ZecCgo

    男「その女の人は、お金が足りないって言うんだ」

    女「ああ……」

    男「だけど、家がすぐそこだから、取ってくる。ここで少し待っててくれって」

    女「それ、もしかして、乗り逃げとか?」

    男「俺もそれを考えた。だから、念の為に、家の前までついていってもいいかって尋ねたんだよ」

    女「そしたら?」

    男「別に構わないって事で、一緒に外に出たんだ」

    女「うん」


    4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:22:46.15 ID:lF1ZecCgo

    男「だけど、特に乗り逃げの心配をする事はなくてさ」

    男「その女の人と俺は、すぐ目の前のマンションに入って、一緒にエレベーターに乗って」

    男「四階の一番の端の部屋まで来たんだ」

    男「そして、そこの鍵を開けて、女の人は部屋の中に入っていったんだよ」

    女「じゃあ、本当に乗り逃げとかじゃなかったんだね」

    男「俺もそう思ったんだけどさ」

    女「?」

    男「それから十五分ぐらい経っても、家から出てこないんだよ」

    女「あー……」


    5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:23:26.40 ID:lF1ZecCgo

    男「だから、流石に俺もインターホンを押したんだ。あまりに遅いからさ」

    女「うん」

    男「そうしたら、しばらくして、インターホンから男の人の声が聞こえてきて」

    男「『どちら様ですか?』って」

    女「うん」

    男「だから俺は、『〇〇タクシーの者ですけど、そちらのお嬢さんからまだタクシー代を頂いてないので、お待ちしてるんですが』って返したら」

    女「返したら?」

    男「『うちにはそんな人はいませんけど』って返ってきてさ」

    女「ん?」


    6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:24:38.81 ID:lF1ZecCgo

    男「でも、こっちは実際に乗せてる訳だし、その家に入っていくところも見てる訳だろ」

    男「もう一度、『そんなはずはないんですけど』って言って」

    男「『確かに先程そちらの家に入られたお嬢さんから、まだタクシー代を貰ってないのでその事を伝えてもらえませんか』って言ったら」

    女「うん」

    男「『うちには、さっきから誰も入ってきてませんけど。そちらこそ、家を勘違いしてませんか?』って返ってきたんだ」

    女「変な話だね」

    男「でも、いくらなんでも、それは有り得ないよな」

    男「こっちはしっかりと目の前で見てるんだからさ」

    男「しらばっくれてるとしか思えなかったんだ。その女の人は鍵を開けて中に入ってる訳だし」

    女「あ、ちょっと待って、わかった!」

    男「?」

    女「ひょっとして、それ、その女の人が、事件か事故で死んだその人の娘さんってオチじゃない?」

    女「幽霊になっても、家に帰ってきたくなって、そういう事をしたとか」

    男「だったら、まだ良かったんだけどな」

    女「え?」


    7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:25:33.24 ID:lF1ZecCgo

    男「結局、向こうはずっと、そんな女の人は家に来てないって言い張って」

    男「でも俺も、確かにこの家に入っていくところを見た訳だから、はいそうですかなんて言えないだろ」

    男「水掛け論になって、最終的には、警察を呼ぶ事になったんだよ」

    女「うん」

    男「それで、まず、俺の方についての事なんだが」

    男「タクシーの車内カメラには、その女の人がちゃんと映ってたから、幽霊ではないはずだ」

    男「警察の話によると、エレベーターの監視カメラにも映ってたそうだ。俺とその女の人が四階で降りるところがな」

    男「だから、俺が嘘やデタラメを言ってる訳じゃないってのは、警察に信じてもらえたんだ」

    女「うん」


    8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:26:57.64 ID:lF1ZecCgo

    男「それなら、嘘をついてるのはその家の家族って事になるんだが」

    男「その家は父母息子の三人家族で、娘はいなかったんだ」

    男「そして、その女の人も家の中にはいなかった」

    女「え? いなかったの?」

    男「ああ。そこはマンションの四階だから出口は玄関しかない」

    男「俺はずっとそこに立っていたから、出てきたら見逃すはずがない」

    男「そして、警察の話によると、家の中で隠れる場所と言えば、せいぜい押し入れやクローゼットの中ぐらいだったそうだが」

    男「だけど、そこにも誰もいなかったんだ」

    男「そして、その家の家族三人ともが、誰も家の中には入ってきてないって証言したし」

    男「その女の人の映像を見せたところ、家族三人ともが、知らない、一度も見た事がない人だ、と言ったそうだ」

    女「……?」


    9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:27:57.58 ID:lF1ZecCgo

    女「それ、おかしくない? その女の人は部屋の鍵を開けて中に入っていったんでしょ?」

    男「ああ」

    女「なのに、その事に誰も気が付いてなくて、しかも家の中にいないって変じゃない」

    男「そうだな。確かに変なんだ」

    男「俺の言う事も、向こうの言う事も、どちらも本当だとしたら」

    男「その家には、見知らぬ女が鍵を開けて中に入っていった事になるし」

    男「その事に、家族全員が気が付かなかった事になる」

    男「そして、その女の人はどこかに忽然と消えた事になるんだ」

    女「…………」

    男「あの女の人は、一体どこに消えたんだろうな?」

    女「……うーん」


    10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:28:49.91 ID:lF1ZecCgo

    女「えっと……ベランダから、隣の家に移動したとかは?」

    男「有り得なくはない。というより、それ以外に方法がないと思う」

    男「実は、女の人は、その家族の知り合いで合鍵も渡されていた」

    男「そして、タクシー代を乗り逃げする為に、ベランダから隣の家に移動した」

    男「家族全員は、その事を隠していて嘘をついている」

    男「というのが一番筋道が通っている」

    男「だけど、隣の部屋の住人もその女の人を見てない、知らないと言ったし」

    男「警察が一応調べたところ、その隣の家の中にも女の人はいなかったそうだ」

    女「…………」

    男「もちろん、ベランダからベランダへと更に乗り移って移動したって可能性もあるけど」

    男「タクシー代を乗り逃げする為だけに、そこまでするかって疑問が残るよな」

    女「うーん……」


    11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:29:54.34 ID:lF1ZecCgo

    女「じゃあじゃあ、その女の人の指紋とかは?」

    女「それがドアノブに残ってれば、その女の人が確かにその家の中に入っていったっていう証拠になるでしょ。それはあったの?」

    男「いや、警察は指紋を調べてくれなかったから、それはわからなかった」

    女「どうして?」

    男「指紋ってのは、かなり長く残るんだそうだ。だから、ドアノブからその家の家族以外の指紋が出てきたとしても」

    男「それが、その女の人の指紋なのか、それともずっと前に別の誰かが触った指紋なのか、その判断が出来ないらしい」

    男「つまり、調べても無意味だって事を言われた。その女の人が見つからない限りは意味がないってな」

    男「そもそも五千円程度の乗り逃げだからな。警察もそこまでしてくれなかったんだ」

    女「むう……」


    12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:31:41.13 ID:lF1ZecCgo

    男「それで、この後、どうなったかと言えば」

    男「俺が勘違いしたという事で、その乗り逃げ代金の五千円を自腹で立て替える事で、終わりになった」

    女「何で? おかしいじゃない」

    男「仕方がなかったんだ」

    男「その部屋の家族が、かなり迷惑そうに俺の事を睨んでいたし」

    男「警察もそれを勧めてきたからな」

    男「あんたの事を疑う訳じゃないけど、ここはもう勘違いにしておかないか、って。あちらの家族も今ならそれでいいって言ってるし、って感じでな」

    男「五千円ぐらいで裁判沙汰とかになると色々面倒だよ、とか言われたら、そうするしかないだろ」

    女「う……まあね」

    男「だけど、その女の人が鍵を開けてその部屋の中に入っていったのを俺は確かにこの目で見ているし」

    男「それは、勘違いとかじゃない。まして、幽霊とかでもない」

    男「なのに、その女の人が誰で、どこへ消えたのかは、永遠に謎のままなんだ」

    女「…………」


    13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/14(木) 16:33:16.33 ID:lF1ZecCgo



    第一話


    【謎のタクシー客】


    終了



    23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:29:07.56 ID:9LNo3peso



    第二話


    【生きてますという電話】




    24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:29:35.72 ID:9LNo3peso

    女「次は私の話をしようか」

    男「ああ」

    女「私さ、携帯を初めて持ってから、もう十年以上になるんだけどね」

    男「うん」

    女「これまで、何百回もイタズラ電話を受けてるんだ」

    男「イタズラ電話?」


    25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:30:05.21 ID:9LNo3peso

    女「そう。イタズラ電話」

    女「しかも、普通のイタズラ電話じゃないんだよ」

    男「どんな電話なんだ?」

    女「普通さ、イタズラ電話って無言だとかさ」

    女「変○からの電話みたいなのとか」

    女「タチの悪いのだと、死ね、とかそんな事を言ってくる電話でしょ」

    男「ああ、そうだな」


    26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:30:34.86 ID:9LNo3peso

    女「でもね、その電話はそういうのじゃないんだ」

    男「うん」

    女「こっちが『もしもし』って出るでしょ。そうしたらね」

    女「『生きてます』って、そう一言」

    女「それだけ」

    女「それを言ったら、切れるの」

    女「意味がわからないよね」

    男「…………」


    27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:31:12.26 ID:9LNo3peso

    女「初めて電話がかかってきたのが、私が中学校の時だったかな」

    女「その頃、お母さんから、携帯電話を渡されてさ」

    女「早速、友達とかと電話番号を交換するでしょ」

    女「それで、しばらく経った頃に、その電話がかかってきたの」

    女「公衆電話からだった。画面にそう出てたから」

    女「何かなって思って、電話に出たら、女の人の声でね」

    女「『生きてます』って」

    女「暗い声なんだけど、ボソボソ喋ってる訳じゃなくて」

    女「はっきりと」

    女「こっちに、その事を伝える感じで、そう言ったの」

    女「それで電話は切れたんだ」

    男「…………」


    28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:33:42.07 ID:9LNo3peso

    女「最初は、間違い電話じゃないかって思った」

    男「だろうな」

    女「だけどさ」

    女「間違い電話だったとしても」

    女「『生きてます』って伝える用件って、何なんだろうって、思うよね」

    女「何かおかしいよね」

    女「それが十年近くも続いてるんだよ」

    女「不思議じゃない?」

    男「確かにな……。でも」

    女「でも?」

    男「俺は多分、その理由がわかった」

    女「?」


    29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:35:37.62 ID:9LNo3peso

    女「どういう理由?」

    男「昔、聞いた話だけどさ」

    男「アンデルセンって知ってるか? 童話で有名な」

    女「マッチ売りの少女とか人魚姫の絵本を作った人だよね、知ってるよ」

    男「そのアンデルセンなんだが」

    男「異常な程の心配性でさ」

    男「自分が寝てる時に、死んでると勘違いされて、墓に入れられるかもしれないって考えて」

    男「寝る前に必ず、『死んでません』って書いた紙を横に置いてたそうだ」

    男「それと似たような事を、誰かが電話でやってるんじゃないか? 生きてるって伝える為に」

    男「それが、間違えてお前にかかってきたとか、そういう話だと思う」

    女「ううん」

    女「それはないよ。絶対に」

    男「?」


    30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:36:24.60 ID:9LNo3peso

    女「ひょっとしたら、そういう事が理由でかけてきてるのかもしれないけどさ」

    女「でもね」

    女「その電話をかけてくるの、一人だけじゃないんだ」

    男「は?」

    女「毎回、声が違うの」

    女「男の人の時もあれば、女の人の時もあるし」

    女「たまに、子供の声の時もあるんだ」

    女「時間帯も、朝から夜中まで全部バラバラだしさ」

    女「なのに、その人たち全員が同じ様に」

    女「公衆電話から、私の番号にかけてきて」

    女「暗い声で、でもはっきりと」

    女「『生きてます』って一言だけ」

    男「…………」

    女「どうしてだろうね?」

    女「その事を私に伝えて、どうしたいんだろうね?」

    男「…………」


    31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:37:31.38 ID:9LNo3peso

    女「そんな電話が、週に一回か二回はかかってくるからさ」

    女「迷惑以前に、気味が悪いじゃない?」

    女「だから、私もこれまでに何回も携帯を変えたの」

    女「機種変更とかじゃないから、その度に、電話番号も変わってるんだけど」

    女「なのに、必ずかかってくるんだよね。私の携帯に」

    女「公衆電話から」

    女「色んな人達から」

    女「その人たちは、どうやって私の携帯の番号を知ったんだろう?」

    男「…………」


    32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:40:15.95 ID:9LNo3peso

    男「何かお前に恨みがあるやつがいて、そいつがどこかに携帯の番号を晒してるとかは?」

    男「『生きてますっていうイタズラ電話をかけて下さい』みたいなメッセージと一緒にさ」

    女「うん。普通、そう思うよね」

    女「でも、それも違うんだ」

    男「どうして?」

    女「さっき、携帯を何回も変えてるって言ったけどさ」

    女「その時にね、新しいのに変えたばかりの時。まだ誰にも電話番号を教えてなかった時にだよ」

    女「かかってきたんだ。また公衆電話から」

    女「『生きてます』って」

    男「…………」

    女「電話会社の人じゃないと、私の番号はわからないはずなんだけどね」

    女「でも、ドコモとかソフトバンクとか、会社も何回も変えてるんだよ」

    女「なのに、誰にも教えてなくても、絶対にその電話はかかってくるの」

    女「全部の電話会社の人達がグルになってない限り、そういう事は有り得ないんだよね」

    男「…………」


    33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:41:06.19 ID:9LNo3peso

    男「……警察とかに相談はしたのか?」

    女「したよ。でも、特に実害がないって事で、捜査はしてくれなかった」

    女「そのイタズラ電話をかけてくる人が、ずっと同じ人だったり」

    女「『お前を殺す』とかそういう事を言ってくるなら」

    女「ストーカーとか脅迫とかで対処してくれるそうなんだけど」

    女「でも、『生きてます』っていう言葉だけでさ」

    女「それに、かけてくる相手も毎回違うから」

    女「多分、あなたの知り合いにネットだとかで番号を書き込んでる人がいるはずだから、番号を教える人を選んで下さい、ってそれだけ」

    女「誰にも教えてないのにかかってきた、って事も話したんだけど、流石にそれは信じてくれなかったの」

    女「だから、警察への相談はムダだったんだ」

    男「……そっか」


    34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:41:59.53 ID:9LNo3peso

    男「なら、電話会社にイタズラを受けてるって事を相談してみたらどうだ?」

    女「うん、それもしたよ。そうしたらね、公衆電話を着信拒否にする事を勧められたの」

    男「ああ、そうか。全部、公衆電話だから、着信拒否に設定すればいいのか」

    女「うん、そう。だから、私もそれで解決したと思ったんだけどさ」

    男「?」

    女「着信拒否にしても、かかってくるんだよね」

    男「は?」

    女「公衆電話から」

    女「『生きてます』って」

    男「……有り得ないだろ、それ」


    35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:42:52.98 ID:9LNo3peso

    女「うん。電話会社の人も、そんな事は有り得ないって言ってた」

    女「『そもそも、そんな電話、本当にかかってきてるんですか?』とも言われたよ」

    男「何で?」

    女「その電話の通信記録がさ」

    女「向こうには残ってないんだって」

    男「は?」


    36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:44:12.91 ID:9LNo3peso

    女「電話会社の人が言うには」

    女「私の電話には、公衆電話からの着信が一回もなかったそうなの」

    男「…………」

    女「でも、かかってくるんだよ」

    女「着信音が鳴ってさ、画面を見ると、公衆電話からって出るの」

    女「私の携帯の着歴には、それがちゃんと残ってるんだよ。でも、しばらくするとそれが消えるの。私が消した訳じゃないのに」

    女「その事に気付いてから、もう怖くて出れなくなってさ」

    女「それからずっと、公衆電話からの着信は全部無視してるんだけど」

    女「それでも、今もかかってきてるんだよね」

    女「ずっと、十年間、違う人達から」

    女「あの電話は何なんだろうね?」

    女「何の目的で、どういう方法で、私の携帯に電話をかけてきてるんだろうね?」

    男「……さあな」


    37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/17(日) 15:44:50.97 ID:9LNo3peso



    第二話


    【生きてますという電話】


    終了



    45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:23:29.50 ID:o/dEAF/fo



    第三話


    【呪われてる部屋】




    46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:24:24.51 ID:o/dEAF/fo

    友「不思議な話?」



    友「ああ、あるよ」

    友「不思議っていうか、どっちかって言うと、ヤバイって言うかさ」

    友「そんな話が」



    友「ああ、うん。怖い話に入るのかな」

    友「少なくとも、俺はこれまであれが一番怖かった」



    友「ああ、そうだよ。実際に俺が体験した話なんだ」



    友「聞きたいのか?」



    友「ん。なら、話すけどさ」


    47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:25:33.08 ID:o/dEAF/fo

    友「わかりやすく、最初から話すと」

    友「あれは、俺が大学二年の時だ」

    友「通ってた学校が家から遠かったからさ」

    友「ちょっとした憧れもあって、一人暮らしを始めようって思ったんだ」



    友「まあな。それで、両親を説得して、大学近くに部屋を借りる事になったんだよ」



    友「ああ。でも、家賃は自分のバイト代で出せって言われたから」

    友「出来るだけ安いところを探してたんだ」

    友「で、とあるアパートを見つけた」

    友「六畳一間に、キッチン、バス、トイレ付きで、月々3万円」

    友「結構、綺麗だったし、敷金も礼金も必要なかったからさ」

    友「すぐに、そこに決めて」

    友「早速、そのアパートを借りて生活を始めたんだ」


    48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:26:21.98 ID:o/dEAF/fo



    友「ん?」





    友「ああ、そう思うよな」

    友「だけど、違うぞ」

    友「別に、心霊物件とかそういうのじゃなくてさ」

    友「普通の部屋だ。家賃も他と同じ。俺の部屋だけ安いとかはなかった」



    友「まあ、怖い思いをしたとか言ったら、普通はそう思うだろうからな」

    友「でも、そうじゃなくてさ」


    49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:27:09.48 ID:o/dEAF/fo

    友「多分、そこで半年ぐらい過ごした頃かな」

    友「丁度、一人暮らしが楽しくて仕方なかった頃だったんだけど」

    友「『それ』が起きてさ」



    友「ああ、あまり思い出したくもない話なんだがな」

    友「その日、俺は大学終わった帰りに」

    友「そのまま、ツレと飲み会に行って」

    友「それで、アパートに帰ってきたのが夜の十時頃だ」



    友「で、俺が住んでた部屋は、二階の端から三番目の部屋なんだけど」

    友「何故か、その部屋のドアの前に、真っ白な布がかぶせられてるんだよ」


    50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:28:01.82 ID:o/dEAF/fo

    友「そう、布」

    友「カーテンみたいなものかな。それですっぽりドアが隠されててさ」

    友「上にガムテープみたいなものが貼られてて、それでとめられてた」



    友「だよな。変なイタズラだろ?」

    友「一体、誰がこんな事をしたんだと思ってさ」

    友「とりあえずそのガムテープみたいなのをはがして、布を取り外すよな」

    友「そうしたらさ」

    友「書いてあるんだ」



    友「ドア全体に、びっしりと」

    友「赤黒い液体で」

    友「小さな文字でさ」

    友「『呪』って、大量に」


    51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:28:42.03 ID:o/dEAF/fo

    友「それを見て、流石に俺も血の気が引いた」

    友「鳥肌も全身に立ってさ」



    友「本当にその時は、どうすればいいのか、わからなくなったし」

    友「とにかく、怖かった。酔いなんか一気に冷めた」



    友「だから、とりあえず、すぐツレに電話をかけて」

    友「来てもらったんだよ、俺の家まで」


    52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:29:34.53 ID:o/dEAF/fo

    友「ツレも、かなり気味悪がってたけど」

    友「それでも、一人より二人の方が安心するだろ?」

    友「ある程度、時間が経った事もあって、俺も頭が回り始めてさ」

    友「ツレと相談して、警察に電話する事に決めたんだ」



    友「ああ、ドアに変なイタズラされたって話してさ」

    友「それで、『呪』って、びっしりと書き込まれてる事を伝えたんだ」

    友「そうしたら、『その部屋の近くで待っていて下さい』って言われて」

    友「あと、ドアにも触らない様に言われた」

    友「それと、一人かどうかも聞かれて」

    友「俺がツレと一緒にいるって伝えたら、『それなら、念の為、周辺には警戒していて下さい』って」

    友「まだ、犯人が近くにいるかもしれないからってさ」

    友「それで、俺とツレは言われた通り、周りを気にしながら、そこで警察が来るのを待ってたんだ」


    53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:30:34.52 ID:o/dEAF/fo

    友「それから、十分ぐらいしてからかな。警察が来た」



    友「警察の人は二人組で」

    友「ドアを見せると、二人とも、やっぱり最初は驚いてた。『酷いな、これは……』ってそんな事を言ってたのを覚えてる」



    友「それで、片方の警察官が、一旦パトカーに戻って無線で何か話してて」

    友「もう片方の警察官が、俺とツレに事情を聞いてきた」

    友「って、言っても、ツレはただ呼ばれただけだったから」

    友「ほとんど、俺だけが事情を聞かれたんだけどな」


    54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:31:19.55 ID:o/dEAF/fo



    友「そうだな。事情って言っても、こっちは帰ってきたらそうなってただけだし」

    友「何も知らないから、特に話す事もなかったんだけど」

    友「それでも、質問は多くて」

    友「特に俺が詳しく聞かれたのは、最後に家を出た時刻と」

    友「こんな事をする人物に心当たりはないかって事だった」



    友「いや、なかったな」

    友「そりゃ、俺を内心では嫌ってるやつもいたかもしれないし」

    友「知らない間に、恨みを買ってた事もあるかもしれないけどさ」

    友「でも、ここまでする奴には、流石に心当たりはなかった」


    55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:32:24.90 ID:o/dEAF/fo

    友「で、そういう質問をずっとされてる内にさ」

    友「パトカーがもう一台来て、更に三人、警察官が増えたんだ」

    友「その警察の人達は、白い手袋を両手につけて」

    友「まず、写真を撮り始めた」



    友「ああ、現場検証ってやつだと思う」

    友「それから、ドアについてた赤黒い液体を、ヘラみたいなものですくって、小さなビンに入れてたしな」

    友「他に多分、指紋とかもとってたと思う」

    友「俺も、とられたしな」



    友「ん?」

    友「ああ、違う違う」

    友「俺はその部屋に住んでるから、まず俺の指紋をとらないと、誰のものかわからないだろ。俺のが一番多い訳だし」



    友「そうだな。別に、俺が疑われてたとかそういうんじゃないはずだ」

    友「で、その後も警察の人達は色んな事をしてた。詳しい事はよくわからないけど、とにかく色々と調べてたと思う」


    56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:34:04.93 ID:o/dEAF/fo

    友「それでさ、そういうのを一通り終えた後にさ」

    友「警察の人が、部屋のドアを開けるから鍵を渡して欲しいって言うんだ」



    友「ん? ああ、そうそう」

    友「まだ一回も開けてなくってさ」

    友「それで、一応、部屋の中も確認しておきたいからって事を言われたんだ」

    友「だから、俺はその部屋の鍵を渡して」

    友「指紋がつかないようにって、白い手袋をしてたその警察官の人がドアを開けたんだ」

    友「そうしたらさ」



    友「あるんだよ」



    友「部屋の、内側のドアにもさ」

    友「びっしりと、『呪』って文字が」


    57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:34:58.50 ID:o/dEAF/fo



    友「そうだな。そうなる」

    友「そいつは、部屋の中にも入って、内側にも書いたんだ」

    友「『呪』って、大量にな」



    友「ああ、それでさ」

    友「もちろん俺が書いたやつじゃないから、犯人が不法侵入したって事になって」

    友「それで、また現場検証が始まった」

    友「俺も白い手袋を渡されて」

    友「出来るだけ、中の物に触らないようにしてくれって言われた上で」

    友「何か盗られた物とか、逆に増えてる物とかがないかを確認して欲しいって」

    友「そう言われた」


    58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:35:41.88 ID:o/dEAF/fo

    友「で、結果を言うと」

    友「盗られた物とか、増えた物とかは、何もなかった」

    友「ドア以外は何も異変がなかったんだ」



    友「たださ」

    友「部屋の鍵穴にピッキングされた痕跡があったらしい」



    友「そうだな。そうなる」

    友「多分、俺のいない間に誰かがピッキングでドアを開けて」

    友「それを書いたんだ」



    友「ああ。だから、これは心霊現象だとか、オカルトとかじゃなくて」

    友「間違いなく、人間の仕業なんだよ」


    59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:36:24.43 ID:o/dEAF/fo

    友「ただ、それだと不自然な事が一つあって」



    友「最初に、鍵がかかっていた事だ」



    友「犯人が部屋をピッキングで開けたんなら」

    友「その部屋には、鍵がかかってないはずなんだ」

    友「でないと、犯人が外に出れないだろ?」



    友「その部屋の窓は閉めてあって、鍵もかかってたから」

    友「そこは密室って事になる」

    友「どうやって犯人は外に出たんだろうな?」

    友「不思議だろ?」


    60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:37:30.45 ID:o/dEAF/fo






    友「ああ、うん」

    友「そういう方法もある」

    友「と、いうか、それぐらいしか方法がないと思う」

    友「警察の人も、多分、そういう事なんじゃないかって言ってた」



    友「だから、ドアに鍵がかかってた理由はそれで説明がつくんだけどさ」

    友「でも、それにしたって、余計に薄気味悪いよな」

    友「何でそんな事をしたんだって話になるし」

    友「嫌がらせやイタズラにしては、タチが悪すぎるからな」



    友「しかもさ」


    61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:38:10.71 ID:o/dEAF/fo

    友「その、ドアに書かれた赤黒い液体」

    友「俺も、それを聞いた時は鳥肌が立ったけど」



    友「調べた結果、本物の血なんだと」



    友「全部、同一人物の血で」

    友「染色体から判断して、女」

    友「使われた血液の量は、大体2リットル」

    友「成人女性でも、一気にそれだけ抜くとヤバイ量だ」

    友「何なんだろうな、一体」

    友「誰の血なんだろうな、あれ?」


    62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:41:00.41 ID:o/dEAF/fo

    友「そんな事がわかったもんだから」

    友「警察も事件として取り扱って」

    友「本格的な捜査をしてくれたんだ」



    友「だけど、目撃情報は一切なし」

    友「両隣の部屋の人も、ドアの事には気が付かなかったそうだ。いつのまにか布がかぶせられてて、何だろうとは思ったらしいけどな」

    友「だけど、聞き込みから犯行時刻はある程度絞れて」

    友「昼間の十一時から、午後四時までの間だと断定された」

    友「その頃には、俺の部屋のドアの前には布がかぶせられてたんだと。それを近所の人が見たそうだ」

    友「それで、俺の知り合いやアパートの住人に、その時のアリバイを確認したそうだが」

    友「誰一人、該当者なし」



    友「仕事とか学校に行ってる時間だったから、全員に確かなアリバイがあった。主婦はそのアパートにいなかったしな」

    友「だから、近所の誰かがイタズラでやったんじゃないかって話になったんだが」

    友「じゃあ、あの血は誰の血なんだろうって事になるし」

    友「警察の人は、ただのイタズラにしては、手が込みすぎてるとも言ってた」

    友「ピッキングだけでなく、誰のものだかわからない、本物の血まで使ってるんだからな」

    友「『本当に、誰か心当たりはいませんか?』って、警察に何回も聞かれたよ」


    63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:42:12.86 ID:o/dEAF/fo

    友「でも、そんな奴にはやっぱり心当たりがないし」

    友「俺の知り合いの女性で、その血液に該当した奴もいなかった」



    友「ああ。結局、その事件は未だに未解決のままだ」

    友「犯人が捕まるどころか、目星もついてないらしい」



    友「しかもさ」


    64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:43:30.38 ID:o/dEAF/fo

    友「俺はその事件の後、気持ち悪くて、すぐに実家にまた引っ越したんだけど」



    友「でもな」



    友「未だに続いてるらしいぞ」



    友「警察の人の話だと、大体、半年に一回ぐらいのペースで」

    友「そのアパートの、その部屋のドアに、『呪』って」

    友「びっしりと書かれてるらしい」

    友「本物の血で」

    友「毎回、違う人の血液でさ」

    友「共通してるのは、それが必ず女の血液だって事だそうだ」



    友「何なんだろうな、あれ?」

    友「犯人は何でその部屋にそんな事をするんだろうな?」

    友「そして、どうして未だに捕まらないんだろうな?」

    友「そんな目立つ事を何度もやってるのに、一回も目撃されてないらしいんだぞ」

    友「気味が悪いよな」


    65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:44:27.00 ID:o/dEAF/fo



    友「ん?」





    友「ああ、そうか。そういう方法があるか」

    友「それなら、確かに短時間で済むし」

    友「目立つ事もそうないよな。全部、まとめてカバンに入れられるんだからな」



    友「え?」



    友「…………」


    66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:45:07.10 ID:o/dEAF/fo



    友「ちょっと待て、お前、それって……」



    友「……は?」



    友「…………」



    友「……いや。でも、そんな……」

    友「冗談……だよな?」



    友「…………」


    67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/19(火) 18:45:35.00 ID:o/dEAF/fo



    第三話


    【呪われてる部屋】


    終了



    76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:20:43.09 ID:tY3eG+Nao



    第四話


    【消えた友達】




    77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:21:12.87 ID:tY3eG+Nao

    女友「不思議な話?」



    女友「あるよ。ホント、謎な話が」



    女友「何て言うのかな、色々と意味がわからない話」

    女友「本当に、あれは未だによくわからなくてさ」

    女友「ひょっとして、夢だったんじゃないか、みたいに思う時もあるんだ」



    女友「聞きたいの?」



    女友「そう。じゃあ、話すけどさ」


    78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:21:46.75 ID:tY3eG+Nao

    女友「よく、怪談とかでさ」

    女友「『いつのまにか一人増えてる』みたいな話ってあるでしょ?」





    女友「うん、そう。大体は、昔そこで死んだ幽霊だったってオチがつくやつね」

    女友「結構、ポピュラーな怪談だと思うんだけど」

    女友「私も、それと同じような経験をしたの」



    女友「うん。本当にあった事」

    女友「私が高校生の時にね」


    79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:22:13.71 ID:tY3eG+Nao

    女友「それが起きたのは、修学旅行の時でさ」

    女友「まず、グループ決めをするでしょ?」



    女友「うん。それで私は、友達と六人グループを組んだんだけど」

    女友「その時の一人がさ、何て言うのかな、霊感が強いって言うの?」

    女友「ミキっていう名前の子だったんだけど」

    女友「ちょっと、変わった子でさ」


    80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:22:40.93 ID:tY3eG+Nao



    女友「あー、うん。たまにさあ、ミキが何もないところを見てたりする時あるんだけど」

    女友「そういう時は、大体、そこに幽霊がいるんだって」



    女友「うん。幽霊」

    女友「ホントかウソかは知らないけどね」

    女友「私は、霊感なんてものがないし」

    女友「見えないんだから、確かめようがないしさ」


    81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:23:07.42 ID:tY3eG+Nao

    女友「でも、その子が言うには」

    女友「幽霊は、結構どこにでもいて」

    女友「たまに、私達、生きてる人間にも悪さをするから気を付けて」

    女友「なんて事をしょっちゅう言ってた」



    女友「さあ? 悪さは悪さでしょ」

    女友「なんか、とり憑いたりとかするんじゃない?」

    女友「詳しくは聞かなかったけどさ」


    82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:23:38.58 ID:tY3eG+Nao



    女友「あー、どうだろ」

    女友「それは、わかんない」

    女友「お祓いとかの力はないんじゃないかなあ。そんな事は一言も聞いた事がないし」



    女友「でも、その子から、お守りって言って、塩を渡されたのは覚えてる」



    女友「うん。普通の塩じゃなくて、お清めの塩なんだって」

    女友「神社とかで使うような、清められた塩」

    女友「なんかあった時は、これを使ってって」

    女友「小さな紙に包んで渡してくれたんだ」


    83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:24:05.94 ID:tY3eG+Nao

    女友「それで、話を戻すけど」

    女友「修学旅行の時ね」



    女友「私達が行ったのは、沖縄でさ」





    女友「うん。そうだね。ああいうのって、もう意味がなくなってるからね」

    女友「私達も、建前は、戦争の歴史を知るとかそんなんだったけど」

    女友「実際は、観光旅行みたいなものだったしさ」


    84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:24:33.24 ID:tY3eG+Nao



    女友「え?」

    女友「ああ、行ったよ。ひめゆり部隊のとこでしょ」





    女友「あー、違う違う」

    女友「だって、その時は、何もなかったもん」

    女友「ミキも、特に何も言わなかったしさ」

    女友「何もない場所を、じっと見てたりとかもしてなかったよ」



    女友「うん。その日は本当に何もなくて」

    女友「それが原因じゃないと思う」



    女友「そ。変な事があったのは、その次の日の事なの」


    85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:24:59.97 ID:tY3eG+Nao

    女友「その日は、ちょっとした自由行動の時間があって」

    女友「だから、私達のグループは、六人揃ってお土産とかを買いに出掛けたのね」

    女友「そしたらさ、しばらくして」



    女友「ミキがね、ぽつりと呟くの」

    女友「『一人、多くない?』って」



    女友「うん。そうなの」

    女友「『私達、五人グループだよね? なのに、六人いるんだけど……』って、言うの」



    女友「おかしいよね?」

    女友「元から六人だったのにさ」


    86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:25:27.51 ID:tY3eG+Nao

    女友「最初は、ミキのタチの悪い冗談だと思った」

    女友「だからさ、言ったの」

    女友「『やめてよねー、ミキ。あんたが言うと冗談に聞こえないんだから』って」

    女友「そうしたらね」



    女友「『ううん。冗談とかじゃなくて、本当に』って」

    女友「なんか、不安そうな顔でさ」

    女友「『変だよ、どうして六人いるの?』って」



    女友「不思議だよね」

    女友「何でミキは、五人グループだと思ったんだろう」

    女友「まず、これがよくわからなくてさ」


    87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:25:54.03 ID:tY3eG+Nao



    女友「うん、そうだよね。そう思うよね」





    女友「うん。だから、私もその事をミキに聞いたらね」



    女友「『それは、わかんないけど……』って、自信なさそうに言うんだ」

    女友「でもさ、『わかんない』なんて事、有り得ないじゃん?」

    女友「一人増えてるのが『わかる』のに、誰が増えたのかは『わかんない』なんて事、ないでしょ?」



    女友「だから、それは絶対にミキの妙な勘違いとしか思えなくて」

    女友「でも、それを言い出したのが、霊感があるミキでしょ?」

    女友「みんな、どこか不安になってさ」


    88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:26:20.99 ID:tY3eG+Nao

    女友「だからさ、出来るだけ明るく」

    女友「『ミキ、それもう冗談にしとこ』って」

    女友「『折角の修学旅行だってのに、怖いじゃない。この話はもう終わりにしよ』って」

    女友「そう言ったらさ」



    女友「ミキは納得してないような感じだったんだけど」

    女友「でも、わかってくれて」

    女友「その事については、それ以上、言うのをやめてくれたのね」


    89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:26:51.60 ID:tY3eG+Nao

    女友「それで、何事もなく、修学旅行は終わって」

    女友「家に帰ってくるでしょ」



    女友「で、お土産とかを家族に渡して」

    女友「その後、疲れてたのか、割と早い時間にすぐ寝ちゃったのね」



    女友「それで、次の日になって」

    女友「その日は休みだったから、家でゴロゴロしててさ」

    女友「修学旅行の時に、デジカメで撮った写真とか」

    女友「携帯とかで撮った写真を見直すじゃない?」



    女友「そうしたらさ」

    女友「おかしいんだよね」



    女友「写真に、四人しか写ってないんだ」


    90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:27:40.42 ID:tY3eG+Nao



    女友「うん。六人のはずなんだよ」

    女友「何枚も写真を撮ったのにさ」

    女友「どの写真も、四人しか写ってないの」

    女友「変なんだよ。写ってないはずがないのに」



    女友「うん、そうだよ。同じクラスだし、ずっと一緒だった」

    女友「ホテルでも、同じ部屋で六人で泊まったんだし」

    女友「六人でずっと行動してたんだよ」

    女友「なのに、写ってないって」

    女友「どう考えても、おかしいよね?」


    91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:28:11.82 ID:tY3eG+Nao



    女友「ううん、そうじゃない」

    女友「偶然や勘違いとかじゃないよ。覚えてるもん」

    女友「確かに皆で写真を撮ったし」

    女友「確かに六人いた」

    女友「夜に、お菓子を皆で分けようってなった時とかもさ」

    女友「そのお菓子が八個入りだったから、二つ余って」

    女友「だから、ジャンケンした事まで覚えてる」

    女友「四人なら二個ずつになって、ジャンケンにはならないでしょ? だから、あの時はちゃんと六人いたはずなのに」

    女友「写真には四人しか写ってないんだ」

    女友「どの写真も全部」

    女友「何でなんだろうね?」


    92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:28:43.91 ID:tY3eG+Nao





    女友「うん。それはすぐに確かめた」

    女友「ミキが『五人なのに六人いる』とか言ってたから」

    女友「ソッコーで、ミキに電話をかけたんだけど」

    女友「でも、出なかったのね」



    女友「だから、別の子にかけたの。カコって子に」

    女友「そしたら、カコはすぐに出てくれたから」

    女友「『一緒にカコも写真を撮ったよね、その写真を見て』って頼んで」

    女友「それで、そこに何人写ってるか、尋ねたの」



    女友「そうしたらね」


    93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:29:20.50 ID:tY3eG+Nao

    女友「最初はカコも、『なにそれ? ミキの一人増えてるとかいう話の続き?』って、苦笑いしてたんだけど」

    女友「実際に確かめてもらったらさ」

    女友「カコの写真にも、四人しか写ってなかったの」



    女友「うん。カコも声が震えてた」

    女友「そりゃそうだよね。六人で撮ったのに、四人しかいないって変だもん」

    女友「普通に怖いよ、そんなの」



    女友「名前? うん。全員、覚えてるよ」

    女友「あんな事があったんだもん。忘れようがないじゃん」

    女友「全員の名前を言うとね」

    女友「私、ミキ、カコ、マリコ、カスミ、ユカリの六人」

    女友「この内、写真に写ってなかったのは」

    女友「カスミとユカリの二人」

    女友「この二人は、どの写真にも写ってなかった」


    94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:30:07.70 ID:tY3eG+Nao



    女友「うん。それでね」

    女友「カコと相談して、マリコにも電話して」



    女友「うん。マリコは写真に写ってた子。だから、マリコにも写真を確かめてもらったんだけど」

    女友「やっぱり、カスミとユカリは写ってなくて」

    女友「それで、三人で話し合ったんだけど」

    女友「カスミとユカリにも、電話をかけてみようってなったの」



    女友「え? ああ、うん。そうだよ」

    女友「そりゃ、電話番号ぐらい知ってるよ。友達なんだもの」

    女友「でもさ」

    女友「実際、その二人に電話するのって、なんだか怖いじゃない? 電話に出なくても怖いし、出てもなんか怖いしさ」

    女友「だから、三人とも、ためらって」


    95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:30:52.14 ID:tY3eG+Nao



    女友「うん。だから、ミキにかけてもらおうっていう話になったの」

    女友「ミキは写真に写ってたし」

    女友「霊感があるから、私達がかけるよりいいんじゃないかって思って」

    女友「だから、先にミキに電話をかけたの」

    女友「もう一度ね」



    女友「そしたら、今度はミキ、普通に電話に出たからさ」

    女友「すぐにこれまでの事を話したの」



    女友「『ミキ、私達って修学旅行、六人グループだったよね? でも、今、写真見たら四人しか写ってなくて』って」

    女友「そう話したの。そしたらさ」

    女友「ミキが言うの」



    女友「『私達、元から四人だったじゃない』って」

    女友「不思議そうに」

    女友「何でそんな電話してくるんだろう? みたいな感じでさ」



    女友「何なんだろうね?」

    女友「やっぱり、何かおかしいよね?」


    96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:31:23.08 ID:tY3eG+Nao





    女友「うん、そう。元々は、ミキが『一人多い』って言い出したのに」

    女友「ミキは、その事を全く覚えてなくて」

    女友「初めから四人だったって言うの」



    女友「でも、その時は確かに、ミキは五人グループなのに一人多くて六人になってるって言ってたんだよ」



    女友「でも、実際に写真に写ってるのは、四人しかいなくて」

    女友「ミキは、『一人多い』って言った事を完全に忘れてるの」

    女友「もう何がなんだか、私達もわからなくてさ」

    女友「とにかく、カスミとユカリにも電話しようって話になったの」

    女友「それで、ミキに電話してくれるようお願いしたんだけど」

    女友「ミキはその二人を知らないって言ってるし、電話番号も知らないって言うから」

    女友「だから仕方なく、私がカスミに、カコがユカリに、それぞれ電話をかける事になったのね」



    女友「それで、実際にかけてみたらさ」



    女友「ううん。電話には出たよ」

    女友「でもね」

    女友「全然、知らない人に繋がったの」


    97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:32:08.91 ID:tY3eG+Nao





    女友「ううん、違う違う。その人は、幽霊とかじゃなくて、普通の人だった」

    女友「多分、若い男の人だったと思うけど、その人に繋がって」

    女友「『違います。番号、間違えてませんか?』って、そう言われたんだ」



    女友「カコもそうだったみたい」

    女友「知らない人に繋がったって、電話でそう報告されて」

    女友「私もそうだったんだけど、って言って」

    女友「念の為に、お互いの番号を確かめ合ったんだけどね」

    女友「合ってるの。番号を間違えたとかじゃなくて」



    女友「うん。カコもマリコも私と同じ番号を登録してたし」

    女友「それに、今までは普通にカスミとユカリに、その番号で繋がったのにさ」

    女友「今は、全然知らない人に繋がるし」



    女友「うん。ホントにもう訳がわからなくてさ」

    女友「スゴい不気味だった」

    女友「いつのまにか、友達二人が消えてるんだよ?」

    女友「怖いじゃない、そんなの」


    98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:33:11.82 ID:tY3eG+Nao





    女友「ああ、うん」

    女友「結論から言っちゃうとさ」



    女友「その二人は、どこにもいなかったの」

    女友「カスミもユカリも、どちらとも」

    女友「クラスの名簿にも載ってなかったし」

    女友「その二人の事を知ってる人は誰もいなかった」

    女友「だから、その二人が元からいなかった二人だったっていうのは、確かだと思うんだけど」

    女友「だったら、何で私達三人には、そのカスミとユカリの記憶があるのかがわからないんだよね」



    女友「うん。三人とも、全く同じ記憶で」

    女友「外見や癖や仕草とかまで、三人ともちゃんと覚えてたし」

    女友「同じ電話番号が、三人の携帯に登録されてたのにさ」

    女友「それが全部、『あるはずのない記憶』なんだよね」

    女友「これって、不思議じゃない?」


    99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:34:00.33 ID:tY3eG+Nao

    女友「あと、不思議な事は」

    女友「ミキだけ、その二人の事を覚えてないっていう事と」

    女友「ミキが言った、『五人グループなのに、六人いる』って言葉ね」

    女友「これもミキは覚えてないんだけどさ」

    女友「でも、何で『五人』なんだろうね? 四人だったのが、二人増えて六人になったんじゃないの?」

    女友「おかしいよね?」

    女友「あれも、未だにわかんない。何でミキは五人なんて言ったんだろ?」


    100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:34:57.66 ID:tY3eG+Nao





    女友「うん、そう。だからさ」

    女友「私達はカスミとユカリの事を、多分、幽霊だったんだろうなって思ってる」

    女友「その二人の幽霊が、私達が修学旅行に行った時に、どこかで紛れ込んで」

    女友「それで、私達の記憶を操作したんじゃないかって」

    女友「そういう風に思ってる」



    女友「でもさ、ミキだけはずっと、そんな事はないって言ってた」

    女友「修学旅行の時には、そういう事をしそうな霊の気配は全然なかったし」

    女友「もし、いたとしても、全員に清めの塩を渡してるから、大丈夫なはずだって」



    女友「うん、そうだよね。でもさ」



    女友「幽霊以外で、説明つかないじゃない?」

    女友「他に考えられないもん」

    女友「そうでしょ?」

    女友「だから、あの二人は幽霊としか思えないんだよね」


    101: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:35:32.77 ID:tY3eG+Nao

    女友「それとも、何?」

    女友「実は、本当は元から六人いたけど」

    女友「その内の二人が、いきなり社会から抹消されて」

    女友「初めからいなかった事にされてる」

    女友「なんて、言うの? そっちの方が有り得ないよね」



    女友「だから、カスミとユカリは幽霊」

    女友「そうとしか考えられないから」


    102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:35:59.54 ID:tY3eG+Nao





    女友「え?」

    女友「どんな風に?」





    女友「……それ、どういう事?」





    女友「…………」


    103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:36:43.68 ID:tY3eG+Nao





    女友「…………」



    女友「そんな、まさか」

    女友「それはないってば。絶対に」

    女友「確かにそれだと、あの二人は幽霊じゃなくなるかもしれないけどさ」



    女友「でも、皆そういう事、するような子じゃないし」

    女友「私も流石に気付くって、それ」



    女友「うん。絶対そう。だから、いくらなんでも、それはないってば」


    104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:37:34.74 ID:tY3eG+Nao

    女友「大体、それだとさ」

    女友「ミキだけ覚えてないって変じゃない?」

    女友「もし、そうだったとしたら、ミキもカスミとユカリの事を覚えてないと変だもん」





    女友「え?」

    女友「何?」



    女友「…………」



    女友「……ううん。違う」

    女友「私は、してない。そんな事」




    105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:38:31.48 ID:tY3eG+Nao



    女友「だから、違う。やってない」

    女友「あの二人は幽霊だったの。本当に」

    女友「そうでなきゃ、おかしいじゃない!」



    女友「違うってば! そうじゃないの!」

    女友「私はそんな事されてもいないし、してもいない! 違う!!」



    女友「……あの二人は、ただの幽霊なの」

    女友「本当に、ただそれだけ」


    106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/21(木) 20:38:58.43 ID:tY3eG+Nao



    第四話


    【消えた友達】


    終了



    117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:34:40.64 ID:K+b7Rviio



    第五話


    【他人の中に入った夢】




    118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:35:18.12 ID:K+b7Rviio

    女「今、思い出したけどさ」

    男「?」

    女「私、中学の時に不思議な夢を見た事があった」

    男「夢?」

    女「うん、夢。悪夢って訳じゃないけど、変な夢を見たの」

    男「ふうん。夢ねえ」


    119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:35:46.72 ID:K+b7Rviio

    男「でも、夢ってさ」

    男「大体、不思議なものじゃないか?」

    男「場面がころころ変わったり、普段なら有り得ない事が起きたり、そういうのが普通にあるだろ?」

    男「そんな珍しい事じゃないと思うんだけどな」

    女「うん、そうかもしれないけど」

    女「でも、私が昔見たあの夢はさ」

    女「かなり特別な夢だったと思うの」

    女「ちょっと、普通じゃない夢」

    女「奇妙な夢だった」


    120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:36:29.70 ID:K+b7Rviio

    男「奇妙?」

    女「うん。私は、普段あまり夢を見ない方で」

    女「夢も、そんなにリアルじゃないんだけど」

    男「リアルってのは?」

    女「ほら、夢って人によって色々じゃない」

    女「白黒で、音もないって人もいればさ」

    女「カラーで音もあって、匂いとか触った感触とかもあるって人、いるよね?」

    男「ああ、そういう事な」

    男「確かに、人によって、結構違うらしいな」

    女「うん。で、私の見る夢は、そんなにリアルじゃない方なの」

    女「カラーなんだけど、音はしなくて」

    女「匂いとか感触とかもないのね」

    女「音のない映画を観てる感じ?」

    女「これで何となく、どんな感じか伝わるかな?」

    男「ああ、伝わる。大丈夫だ」


    121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:37:19.07 ID:K+b7Rviio

    女「でもね、その時に見た夢だけは特別で」

    女「音もあったし、感触もあったし、匂いもあったの」

    女「夢じゃなくて、本当に現実に起きた事みたいだった」

    男「ふうん」

    女「場面もころころ変わらないし」

    女「起きても、その夢の事はしっかり覚えてたし」

    女「本当にさっきの事は夢だったの? って疑う感じの夢ね」

    男「確かに、たまにあるけどな、そういうリアルな夢」


    122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:38:01.25 ID:K+b7Rviio

    女「それで、その夢の中で私は」

    女「他人の体の中に、意識だけが入っていたの」

    男「意識?」

    女「そう。その夢を見たのは、私が中学校三年生の時でさ」

    女「卒業間近の時だった」

    男「うん」


    123: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:38:29.28 ID:K+b7Rviio

    女「その日は土曜日でね」

    女「明日は学校ないし、だから、少し夜更かしして」

    女「多分、寝たのは深夜の一時過ぎ頃だと思う」

    男「ああ」

    女「それでさ、朝に起きるじゃない?」

    男「うん」

    女「そしたらね」

    女「私は、全然知らない部屋にいたの」

    男「?」


    124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:39:01.35 ID:K+b7Rviio

    女「布団で寝てたはずなのに、ベッドに変わってるし」

    女「部屋の家具も見た事ないものだし」

    女「驚くでしょ?」

    男「それはな」

    女「しかもさ、体が勝手に動くんだよ」

    女「私が起きようとした訳じゃないのに、起き上がるし」

    女「それで、周りをきょろきょろ見渡すの」

    女「すごい変な感じだった。操られてるみたいにさ」

    男「…………」


    125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:39:28.71 ID:K+b7Rviio

    女「自分の意思じゃないのに、体が勝手に動きだすってね」

    女「実際に体験してみたらわかるだろうけど」

    女「あれ、メチャクチャ怖いよ。パニックになるよ」

    女「自分の体が、誰かに乗っ取られてる!」

    女「みたいに思っちゃうからさ」

    女「ホントにあの時は怖かったし、気持ち悪かったなあ」

    男「…………」


    126: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:40:11.30 ID:K+b7Rviio

    女「それで、そうやってパニクってたらね」

    女「なんか、頭の中に直接、女の子の声が聞こえるの」

    男「声?」

    女「『何、これ!? 誰!? 何なの!?』って」

    女「そんな風にさ」

    女「向こうも相当なパニックぶりで」

    女「ムチャクチャ怖がってたのが、自然とわかった。まるで、自分の事みたいに」

    女「でも、私もそんな声が聞こえてくるから、怖いじゃない?」

    女「しばらく、向こうも私もパニック状態でさ」

    女「二人とも、落ち着くまでに、メチャクチャ時間がかかったよ。大変だったんだから」

    男「…………」


    127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:41:11.12 ID:K+b7Rviio

    女「それで、とにかくお互いに、ある程度、落ち着いた後」

    女「向こうとも、色々と話して」

    女「自分の名前だとか、ここがどことか、そういう事をね」

    女「その辺は、詳しく話すほどの事でもないから、はしょるけど」

    女「それで、三十分ぐらい経った頃かな。ようやく状況が何となくわかってきたの」

    男「どんな状況だったんだ?」

    女「まず、そこは私の知り合いの家だったんだ」

    女「名前はアケミっていって」

    女「私と同じクラスの子ね。私とは仲が良くも悪くもなかった。単なるクラスメイトかな」

    女「それで、その子の体の中に、私の意識が入っちゃったみたいなのね」

    男「?」


    128: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:41:50.33 ID:K+b7Rviio

    男「意識が入るっていうのは?」

    女「簡単に言うと」

    女「アケミの体の中に、私もいる感じ」

    女「二人で一人の体を共有してるって言えばわかる?」

    女「ただし、体を動かせるのはアケミだけで」

    女「体もアケミのもの。これは鏡を見てもらったから確かだね」

    女「鏡を見たら、他人の顔が写ってる姿って、ちょっと衝撃だよ」

    女「一種のホラーみたいだった。あれも不気味だったなあ」

    男「…………」


    129: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:42:34.95 ID:K+b7Rviio

    女「だから、体がアケミのものなのは間違いなくて」

    女「その中に、私の心だけが入っちゃったみたいな感じ?」

    女「お互いに考えてる事はわかるし」

    女「脳の中で会話も出来るのね。テレパシーみたいに」

    男「ふうん」

    女「感覚も二人で共有してて」

    女「アケミの見た物は私にも見えるし」

    女「匂いだとか、触った感触とか、他の事も全部そう。わかるの」

    女「ただ、私がどうしても出来ないのは、アケミの体を動かす事だけで」

    女「それ以外は自分の体とまったく同じ」

    女「これで大体の事はわかってくれた?」

    男「ああ、一応な」


    130: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:43:36.87 ID:K+b7Rviio

    男「そういえば、前にそういう話を聞いた事があるぞ」

    女「そういう話って?」

    男「幽霊が乗り移ったってやつだ。とり憑いたと言ってもいい」

    男「怖い話で聞いた覚えがある」

    女「それ、どんな話なの?」

    男「ああ。ある日、親友が事故で亡くなるんだけど」

    男「しばらくしたら、自分の頭の中にその亡くなった親友の声が聞こえてくるんだ」

    女「幽霊なんだね」

    男「ああ。それで最初は、亡くなった後もこうして話が出来る、って喜んでたんだけど」

    男「段々とさ」

    女「段々と?」

    男「体の支配権が幽霊の方に移っていくんだ。夜に寝てたら勝手に体を動かされたりとかさ」

    男「最初はそれが寝ている時だけだったのに、起きてる時でも頻繁にそういう事が起こる様になって」

    男「そして、最終的には、自分の体を全部乗っ取られてしまうって話」

    女「…………」

    男「この話も、そういうオチじゃないのか?」

    女「ううん」

    女「そうじゃないんだ。全然違うよ」

    男「?」


    131: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:44:36.45 ID:K+b7Rviio

    女「そもそも、これは夢の中の話だしさ」

    女「それに、私はこうして生きてるし」

    女「それに、最後までアケミの体を動かす事は出来なかったんだから」

    女「アケミの体を乗っ取ったとか、そういうオチじゃないんだよね」

    男「じゃあ、どんなオチなんだ? 最終的にはどうなるんだよ?」

    女「順番に話すから、聞いて」

    女「まず、私の事から話すけど」

    女「私は意識がアケミの中に入ってるってわかったから」

    女「どうにかして、自分の体に意識を戻したいって思うよね?」

    女「そう思うのが当然でしょ」

    男「まあな」


    132: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:45:23.40 ID:K+b7Rviio

    女「だからさ」

    女「私は真剣に、どうしてこんな風になったのかっていう原因とか」

    女「どうやったら元に戻れるのかとか、そんな事を色々と考えてたんだけど」

    男「ああ」

    女「でもね」

    女「アケミはその時、まったく違う事を考えてたの」

    男「?」


    133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:46:09.70 ID:K+b7Rviio

    女「アケミはさ」

    女「自分の頭が変になったんじゃないかって、そう考えてた」

    男「…………」

    女「変って言うか、狂ってしまったんじゃないかって」

    女「何か精神的な病気になったんじゃないかって」

    女「脳の中で、知り合いの声が聞こえるなんておかしい。病院に行かなきゃ駄目なの、って」

    女「そんな風に、考えてたのね」

    男「ああ……なるほどね」


    134: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:47:04.31 ID:K+b7Rviio

    女「そりゃ、そうだよね」

    女「朝起きたら頭の中で変な声が聞こえる、ってなったらさ」

    女「テレパシーだとか、誰かの意識が自分の中に入ったとか、普通は考えないよね」

    男「……まあな」

    女「普通は、幻聴だとか」

    女「頭がおかしくなったんじゃないかって、そう思うよね?」

    男「……だろうな」

    女「アケミもそうだった」

    女「狂ってしまったんじゃないかって、そんな心配をして、ものすごく不安になってた」

    男「…………」


    135: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:47:54.88 ID:K+b7Rviio

    女「私の場合だと」

    女「鏡に写ってる姿が、自分の体じゃなかったし」

    女「自分の意思で、体を動かす事も出来なかったから」

    女「だから、意識だけがアケミの体の中に入ったんだって、すんなりそう信じられたんだけど」

    女「でも、アケミの場合はそうはいかないよね」

    女「自分の体なんだからさ」

    女「しかも、原因もわからないし、心当たりもまったくないんだから」

    女「私の意識だけが中に入ったって、そう脳内で言われてもさ」

    女「それを信じる方が無理があるよね。小説や漫画じゃないんだし」

    男「まあな」


    136: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:48:37.17 ID:K+b7Rviio

    女「でも、それを信じてもらわないとさ」

    女「私はずっと、アケミの脳が生み出した妄想の産物、って感じに決め付けられちゃうでしょ?」

    男「そうなるな」

    女「そんな風に思われちゃうと」

    女「私が困るじゃない」

    女「私だって、元の体に戻りたいんだし」

    女「それに、自分の体の事も気になるからさ」

    男「だろうな」


    137: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:49:56.37 ID:K+b7Rviio

    女「今、私の意識がアケミの中に入ってるって事は」

    女「私の体は今、空っぽって事でしょ?」

    女「それで、意識不明で救急車を呼ばれたりとかされたら、困るし」

    女「それに、元に戻る方法を一緒に考えてもらいたかったしさ」

    男「そうだな。自分で体を動かせないんだし、尚更そう思うよな」

    女「うん。だから、私は幻聴とかじゃないってアケミに必死で伝えたんだけど」

    女「でも、アケミはそれをなかなか信じてくれなかったんだ」

    男「ああ」

    女「だからね、私はこう言ったの」

    男「?」


    138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:50:47.36 ID:K+b7Rviio

    男「何て言ったんだ?」

    女「そんな難しい事じゃないよ」

    女「『アケミって、私の家の住所を知らないよね? それを私が教えたら信じてくれる?』って」

    女「そう言っただけ」

    男「ああ、なるほど」

    男「その住所に行って、そこが確かにお前の家なら、幻聴とかじゃないって信じてもらえるよな」

    男「幻聴とかだと、そんな事は有り得ないんだし」

    女「うん。でしょ」

    女「それに、私も自分の家に戻れば、私の体がどうなってるかを確認出来るから」

    女「これは、自分でも名案だと思ったんだけどね」

    男「だけど?」


    139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:51:37.62 ID:K+b7Rviio

    男「アケミはお前の家に行ってくれなかったのか?」

    女「ううん。最初は悩んでたけど、一生懸命に説得したらわかってくれて」

    女「私の家まで行く事になったの」

    男「…………」

    女「それで、私が道案内をして」

    女「アケミに、私の家まで行ってもらったのね」

    男「ああ」

    女「それで、実際に着いてインターホンを押したらさ」

    男「押したら?」


    140: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:52:58.93 ID:K+b7Rviio

    女「うちのお母さんが出てね」

    女「アケミが、自分の事を伝えるじゃない? 同じクラスの子だって」

    男「ああ」

    女「そしたら、お母さんが『ちょっと待っててくれる』って言って」

    女「それから、しばらく待った後にさ」

    女「出てきたの」

    男「何が?」

    女「私が」

    男「は?」

    女「『どうしたの? いきなり家に訪ねてくるなんて』って」

    女「目の前で、私が喋ってたの」

    女「私がここにいるのに、目の前にも私がいるんだよ」

    女「それが、普通に喋ってるの」

    女「そんなはずないじゃない、私の意識は今、ここにあるんだから」

    女「空っぽのはずなんだよ、私の体は」

    女「じゃあ、誰が私の体の中に入ってるの?」

    女「誰が私を動かしてるの?」

    女「訳がわからないでしょ?」

    男「…………」


    141: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:53:55.00 ID:K+b7Rviio

    女「私もそうだったけど」

    女「アケミも目の前の『そいつ』を怖がってた」

    女「だってさ、私の住所をアケミは知らなかったんだから」

    男「あ、そうか……」

    女「そう。私が教えなければ、アケミは私の家まで来る事は出来なかったのに」

    女「でも、『そいつ』がさ。私の体を動かしてるやつが家から出てきたでしょ」

    女「だから、アケミはどっちが『本物の私』なのか、判断がつけられなくなって」

    女「だから、怖くなって走って逃げ出したの。『そいつ』から」

    女「そして、私の方にも、叫び始めたのね」

    女「『やめて! もう話しかけないで! あんた一体誰なの!!』って、そんな風に」

    男「…………」


    142: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:54:48.81 ID:K+b7Rviio

    女「そうやって、アケミが叫びながら走ってたらさ」

    女「その途中で、足がもつれてね」

    女「アケミは転んだの、歩道で。下がコンクリートだったから、かなり痛かったはずだし」

    女「その痛みは私にも伝わってきた。実際、相当痛くって」

    女「その痛みで、私は目が覚めたの」

    男「…………」

    女「布団の中にいて、変な汗をびっしょりかいてた」

    女「おかしな夢だよね。ものすごくリアルな夢だったし」

    女「腕とか足とか、転んだ時の痛みがまだ残ってたしね。実際に転んだ訳じゃないのに」

    男「…………」


    143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:55:45.97 ID:K+b7Rviio

    男「一応、確認するけど」

    男「それ、夢だったんだよな?」

    女「うん、そうだよ。私が見た夢。実際に起きた事じゃないから」

    女「私はその時、お昼近くまで寝てたから」

    女「起きたら、お母さんに寝過ぎだって怒られたのを覚えてる」

    男「それ、お母さんに確認はしたのか? アケミって子が家に訪ねて来なかったかを」

    女「うん。それも聞いたけど」

    女「お母さんは、そんな子は訪ねて来なかったって言ってた。誰も来てないって」

    女「お母さんが嘘をつく理由なんかないから」

    女「だから、間違いなく夢のはずなんだよ」

    男「…………」


    144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:56:33.24 ID:K+b7Rviio

    男「変な夢だったんだな」

    女「うん。たださ」

    男「?」

    女「これだけなら、変な夢を見たなあで済んだんだけど」

    男「何かあったのか?」

    女「うん。あったって言うかさ」

    女「その日から、急にアケミが私の事を避け始めたんだよね」

    男「…………」

    女「目が合うとさ、顔をひきつらせて、逃げてくんだ」

    女「何か、化物や幽霊でも見るかのような感じで、私の事を見てさ」

    女「それで、『近寄らないで! 来ないで!』って言って、逃げていくの」

    女「あれは、何でなんだろうね?」

    男「…………」


    145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:59:02.35 ID:K+b7Rviio

    女「その理由を聞きたくて、私はアケミに何回も話しかけようとしたんだけど」

    女「私の顔を見るとアケミはすぐに逃げてくから、結局、話す事さえ出来なかったし」

    女「卒業間近で、高校も違うところに進学したから、それっきりアケミと会う事もなかった」

    女「電話番号も交換してなかったし、ホントに最後まで理由はわからず仕舞い」

    女「一体、どんな理由だったんだろうね?」

    男「…………」

    女「どうしてアケミはその日から私を避ける様になったんだろうね?」

    女「何も理由が思いつかなくてさ」

    女「不思議だよね。あれは夢のはずなのに」

    男「…………」

    女「もしもさ」

    女「アケミも私と同じ夢を見たんだったら、もっと不思議だよね」

    女「そんな事、あるはずないのにさ」

    男「…………」


    146: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 19:59:33.37 ID:K+b7Rviio



    第五話


    【他人の中に入った夢】


    終了



    155: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:40:43.60 ID:bgmstPv8o



    第六話


    【UFOに拐われた子供】




    156: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:41:11.10 ID:bgmstPv8o

    母「不思議な話ですか?」

    母「ええ、まあ……。ありますけども……」



    母「はい。うちの娘の事です……」

    母「もう十年以上も昔の話ですけどね」



    母「……いえ、それは」

    母「あまり話したくない事ですので」







    母「…………」


    157: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:41:38.87 ID:bgmstPv8o

    母「わかりました……」

    母「そういう事なら、仕方ありませんね……」



    母「はい。お話しします」



    母「ただ、その時、うちの娘は小学校三年生だったので」

    母「今とは、全く関係ないかもしれません」

    母「それに、子供の言う事です。少しぐらい変な事を言うのは珍しくありません」

    母「ですので、そのつもりで聞いて下さい」



    母「ええ、お願いします」

    母「その事で、娘に対して妙な先入観を持たないようにして下さい」

    母「それだけは、どうか宜しくお願いします……」




    158: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:42:10.52 ID:bgmstPv8o

    母「それでは、お話しますが」

    母「その前に、娘の小さい頃の事から話をさせて下さい。五歳ぐらいの時の事です」

    母「というのも、その頃の娘は、何て言ったらいいのか……」

    母「想像力が豊かだったとでも、言いますか……」



    母「……たまに聞きませんか? こういう話」

    母「子供が、誰もいない部屋で、一人で何か遊んでいて」

    母「会話みたいな、話し声も聞こえてくる」



    母「ええ。それで、気味が悪くなって親が呼んだら」

    母「『わかった。ちょっと待っててね、〇〇ちゃん』みたいに人の名前を呼んで」

    母「誰もいない空間に向かって、手を振ったりとかする」

    母「そういう話を聞いた事がありませんか?」


    159: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:42:48.32 ID:bgmstPv8o







    母「いえ、そうではなくてですね」

    母「幽霊と話してる訳ではないんです」

    母「『イマジナリーフレンド』って言いまして」

    母「想像の中の友達、なんだそうです」



    母「はい。本当にはいません」

    母「架空の友達なんです」


    160: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:43:17.02 ID:bgmstPv8o

    母「これは、子供なら誰でもそういう『想像の中の友達』を作る可能性があるそうで」

    母「そんなに珍しい訳でもないそうです」



    母「そうですね。ごっこ遊びの延長とでもいうのか……」

    母「遊ぶ友達を、自分で、脳内に作ってしまうんですね」

    母「子供には、実際に『その子』が見えていたり、話したりもするらしくて」

    母「それで、一緒になって遊ぶそうです。傍目から見たら一人で遊んでいる訳ですけど」





    母「はい。一人っ子だとか、そういう子供に多いそうで」

    母「寂しさを紛らせる為に、そういう友達を作り出すんだそうです」


    161: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:43:58.52 ID:bgmstPv8o

    母「それで、私のところも一人っ子で、共働きだったので」

    母「うちの娘にも、そういう想像の中の友達が一人いました」

    母「ユカリって娘は呼んでましたね」

    母「今は、その事も覚えてないみたいですけど」





    母「はい。成長するにつれて、大体、忘れてしまうそうで」

    母「よくわかりませんが、そういうものなんでしょうね。だから、幽霊とかと勘違いされる事が多いそうですが」

    母「特に心配する事はないそうです」

    母「ええ、別に特別な事でもないそうなので」

    母「五人に一人ぐらいは、子供の頃、イマジナリーフレンドと遊んでいるそうですよ」

    母「ただ、その事を覚えてないだけだとか」


    162: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:44:47.58 ID:bgmstPv8o

    母「ただ、その頃の私は、『イマジナリーフレンド』という存在を知らなかったものですから」

    母「小さい頃、よく『その子』とお人形遊びだとかをしているのを見て、ぞっとしたものです」

    母「誰もいない空間に向かって、娘が楽しそうに話をしてる訳ですからね」

    母「幽霊と遊んでいるんじゃないかって、普通、思いますよね?」



    母「ですので、恐ろしくなった私は、娘によく言って聞かせて、『その子』と遊ぶのを禁止にしました」

    母「娘は、納得出来ない様な顔を見せていましたが、私が何度も言って聞かせたので、次第に『その子』と遊ぶ様な事はなくなりました」

    母「そうしたら、ですね」


    163: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:45:28.02 ID:bgmstPv8o

    母「何故かはわかりませんが、その後、娘は魔法とか占いとか、そういったものに興味を持つようになりまして」

    母「私も『その子』と遊ぶよりはマシだと思いまして、そのままにしておきましたら……」

    母「いつのまにか、オカルトとか、そういうものにハマっていったんですね……」



    母「ええ、魔法だけでなく、幽霊とか、超能力とか、宇宙人だとか、そういったものまで」

    母「もう少し別なものなら良かったんですけど、妙なものに興味を持つようになってしまいまして……」



    母「ええ……そうですね。好奇心旺盛な子供の事ですからね」

    母「そういうのに興味を持つのは、そこまで珍しい事ではないんですけど……」

    母「ただ……」


    164: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:45:55.36 ID:bgmstPv8o

    母「それが少し、度が過ぎる傾向がありまして……」

    母「図書館とかから、宇宙人とかUFOだとかの本を借りてくるじゃないですか」

    母「そうすると、それをずっと熱心に読んでいて……」

    母「それで、遂にはね……」

    母「UFOを見ただとか、そんな事まで言い出す様になったんです……」


    165: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:46:23.06 ID:bgmstPv8o





    母「ええ、まあ……」

    母「子供の時ってそういうものですよね」

    母「大人に比べて、知識が少ないものですからね……」

    母「飛行機とか、流れ星とか、そういったものでも、UFOだとかと勘違いしてしまうんでしょうね……」





    母「ええ、よくある事だと思うんです、これも……」

    母「でも……」


    166: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:49:35.26 ID:bgmstPv8o

    母「ある日の事なんです」

    母「私がパートから帰ってくると、娘がまだ帰ってきてなくて」

    母「外で遊んでいるのかと思って、夕食の準備をしながら、しばらく待っていたら」

    母「突然、警察の方がうちに来られまして」



    母「はい。それで、その傍らには娘がいるんです」

    母「何事かと思うじゃないですか」

    母「何か事件に巻き込まれたとか、そういった風に」



    母「ところが、話を聞いてみますとね」

    母「うちの娘が交番まで行って」

    母「それで、お巡りさんに助けを求めたんだそうです」



    母「『私は四日後に、宇宙人に誘拐されちゃう。だから、助けて』って」


    167: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:50:02.88 ID:bgmstPv8o



    母「はい……」

    母「宇宙人だそうです」

    母「しかも、それを言ったのが、小学校三年生にもなるうちの娘ですよ」

    母「私はもう、顔から火が出るほど恥ずかしくなりまして……」

    母「その来てくださったお巡りさんに、ひたすら謝りました」

    母「『申し訳ありません。娘が訳のわからない事を言いって、御迷惑をおかけしました』と……」



    母「ところがですね」


    168: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:50:40.10 ID:bgmstPv8o

    母「そのお巡りさんが、少し真剣な表情で私に尋ねるんです」

    母「『宇宙人とかはともかくとして、娘さんがこういう事を言う理由に、何か心当たりがありませんか?』って……」



    母「何でも、話をよくよく聞いてみると」

    母「そのお巡りさんも、誘拐犯が宇宙人だという事を娘から聞いて、初めは困ったそうなんですが」



    母「ええ。もちろん、お巡りさんも、それを信じてはいませんでした」

    母「ただね……」


    169: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:51:37.30 ID:bgmstPv8o

    母「そのお巡りさんが言うには」

    母「娘が、ひどく真剣で嘘をついている様には見えないと、そう言われるんです」

    母「最初、お巡りさんが『大丈夫だよ。宇宙人に誘拐されるとか、そんな事はないから』と、言ったところ」

    母「娘は『本当なの! 本当に宇宙人に誘拐されちゃうの!』って」

    母「交番の前で涙を流して、必死にそう言ったらしくて」



    母「ええ、そうです」

    母「だから、お巡りさんも、少し気になったらしくて」

    母「わざわざ家まで来て、私にそういう質問をしたんですね」

    母「『娘さんには申し訳ないですけど、私は宇宙人だとかは信じてません。ただ』と、そう前置きをした上で」

    母「『少し、この子の怯えかたが気になったものですから』と」

    母「『ですので、家の近くで怪しい人物がうろついていたとか、妙な人影を見ただとか、そういった事はありませんでしたか?』」

    母「『もしくは、娘さんがそういう話をしていた事はありませんでしたか?』と、そう尋ねられました」


    170: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:52:04.93 ID:bgmstPv8o

    母「ですけど、そういう怪しげな人を見た記憶は、私にはありませんでしたし」

    母「娘が『宇宙人に誘拐される』と言い出した理由も、最近読んだ本の影響だと思ったんです」

    母「確か……アブダクション? でしたっけ?」

    母「宇宙人にUFOで連れ去られて、頭の中に変なICチップを埋められてしまったとか、そういう話……」





    母「ええ、そういう内容の事が娘の読んでいた本にも書いてありましたので」

    母「多分、それに影響されて、そんな事を言い出したんだと思ったんです」


    171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:52:32.71 ID:bgmstPv8o

    母「それで、そのお巡りさんにもその事を話して」

    母「『お騒がせして申し訳ありません。きっと娘の思い込みですから』と、もう一度丁寧に謝罪したんです」



    母「そうしたら、お巡りさんの方も苦笑いをされまして」

    母「『わかりました。ですが一応、用心はして下さいね』と」

    母「『子供に悪戯する変質者とかも、世の中にはいますので』と」

    母「そう言って帰られました」


    172: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:53:07.33 ID:bgmstPv8o



    母「その後、もちろん、私は娘を叱りました」

    母「もうこんな事は絶対にしないで、と。お巡りさんの仕事の邪魔をしちゃ駄目だから、と」

    母「もしまた同じ事をしたら、本とか全部、読むのを禁止するわよ、と」

    母「そうやって、かなりきつく叱ったんです」

    母「娘は涙をためて、『ごめんなさい……』と謝りました」

    母「『もう、しません』と、そう私と約束したんです」

    母「なのに」


    173: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:53:35.50 ID:bgmstPv8o



    母「ええ、そうです」

    母「その翌日にも、娘はまた、同じ事をしたんです」



    母「はい。次の日も交番に行って」

    母「『三日経ったら、私はUFOに連れてかれちゃうの! 助けて!』って」

    母「そうやってお巡りさんに泣きついたそうです」


    174: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:54:16.94 ID:bgmstPv8o



    母「はい。それで、また昨日と同じ様に、お巡りさんが家まで娘を連れてきてくれまして」

    母「私は、また平謝りしました。『申し訳ありません、昨日、娘にはよく言ってきかせたんですが……』と」

    母「そう釈明しました」



    母「ええ。お巡りさんも昨日と同じで、苦笑いをされまして」

    母「『パトロールのついでなので、構いませんよ』と、そう言ってくれたんですが」

    母「その次の日も、娘は同じ事をしたんです」

    母「『あと二日したら、私はUFOに拐われちゃうの! ホントなの!』って」

    母「また、涙混じりで、そう言ったらしく」

    母「それで、またお巡りさんが娘を家まで連れてきました」


    175: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:54:47.08 ID:bgmstPv8o



    母「はい。娘には、更にきつく叱って」

    母「お尻を叩いたりもしました。『どうして約束を破るの。二度としないって言ったでしょ』って」

    母「娘はその度に泣いて謝って、『もう、しません』とそう言うのですけど」

    母「その翌日も、また同じ事をしたんです」

    母「『明日、私は宇宙人に連れてかれちゃう! お願いだから、助けて!』って」



    母「はい。また涙をぼろぼろ流して、必死にそんな風に、お巡りさんにお願いしたそうです」





    母「ええ。ここまでくると、流石に私もお巡りさんも妙に思えて」

    母「変な不安が広がりました」

    母「もしかしたら、明日、本当に宇宙人に連れ去られてしまうんじゃないかって」

    母「そんな事はまず有り得ないはずなのに、ひょっとしたら、とそう思えてきたんですね」


    176: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:55:42.99 ID:bgmstPv8o



    母「理由ですか?」

    母「いえ、それはまるで……」

    母「どうして娘が、そんな風に思う様になったのかも」

    母「何で、明日連れ去られると考えているのかも」

    母「それを娘に尋ねても、答えないんです」

    母「娘が言う事はたった一つだけ」

    母「『明日、私は宇宙人に誘拐されちゃうの! だから、助けて!』と……」

    母「それだけなんです」

    母「理由を聞いても、言わないんです」

    母「なのに、ものすごい必死で」

    母「ふざけている様にも、イタズラの様にも思えないのだけは確かでした」


    177: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:56:16.70 ID:bgmstPv8o



    母「ええ。そうです」

    母「ですから、私も心配になりまして、一応、お巡りさんにお願いしたんです」

    母「明日一日だけでいいので、この子の通学路をパトロールしてもらえませんかと、そう頼みました」



    母「はい。その日は平日でしたので、学校がありましたから」

    母「行きと帰りは、私が一緒についていく事に決めまして」

    母「念の為に、お巡りさんにもそうお願いしたんです」

    母「この子の変な思い込みなら、まだ笑い話で済む話ですからね」



    母「はい。そうしたら、お巡りさんもそれを引き受けて下さいまして」

    母「なので、これで安心出来ると、その時の私はそう思っていたんですね」


    178: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:58:21.89 ID:bgmstPv8o





    母「はい」

    母「それで、その日、娘は無事に学校に行って、無事に帰ってきまして」

    母「それからずっと私が娘を見ていましたが、何も起こりませんでした」

    母「それでも、娘はまだ心配していました。私の服をつかんで『お母さん、今日はどこにも行かないでね』って、そう怯えたように言うんです」

    母「ですので、私もそれを約束して」

    母「その日は一日中、娘の近くにいました」

    母「娘も私から離れませんでした」


    179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 21:58:57.90 ID:bgmstPv8o

    母「それで、夜になって、夫が帰ってきて、三人で揃って夕食を食べて」

    母「それから居間で、やはり三人で揃ってテレビを見ていたんですね」

    母「それで、あっという間に時間が経ちまして」

    母「もう夜の遅い時間になっていたんです。娘が寝るような時間に」

    母「その頃になると、流石に娘も安心したのか、居間で眠そうにまぶたをこすっていました」



    母「ええ。ですので、私は一安心して」

    母「妙な取り越し苦労をしてしまったなと、そんな風に思っていました」


    180: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:00:04.20 ID:bgmstPv8o

    母「それで、お巡りさんにも改めて電話でお礼を言いまして」

    母「それが終わってから、娘を寝かしつけようと私はしたんです」

    母「そうしたら」



    母「娘が、いつのまにか居間からいなくなってるんです」



    母「はい。つい先程まで、そこでテレビを見ていたはずなのに」

    母「いないんです」

    母「見当たらないんです。さっきまでは確かにいたのに」

    母「ですので、そばにいた夫に娘の事を尋ねたら」

    母「『ついさっき、部屋から出ていったぞ。トイレじゃないのか』と」

    母「ですので、少し心配になって、私はトイレへと見に行ったんですが」

    母「そこにもいないんですね」



    母「まさかと思って、家中を探しました」

    母「部屋を全部回って、台所やトイレや風呂場や庭なども」

    母「でも、どこにもいなくて」

    母「いつのまにか、消えてしまったんです。娘が」


    181: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:01:56.26 ID:bgmstPv8o

    母「私の家は一軒家とはいえ、そんなに広くはないです。なので、主人と一緒になって家中を探したんですが」

    母「それこそ、物置の中や押し入れの中、タンスの中まで」

    母「それでも見つからなくて、だから、もしかして外に出ていったんじゃないかと思い、玄関の鍵を確認したところ」

    母「何故か、家の鍵はかかってませんでした……」





    母「いえ……。それはわかりません」

    母「単に、帰ってきた主人が鍵をかけ忘れたのかもしれませんし……」

    母「娘が鍵を開けて、外に出ていったのかもしれませんし……」

    母「もしかしたら、私達の知らない『誰か』が鍵を開けたのかもしれません……」





    母「それで、とにかく外を探そうという事になりまして」

    母「私と主人とで、手分けして近所を見て回ったんですが」

    母「それでも、娘はやっぱり見つかりませんでした」


    182: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:02:58.31 ID:bgmstPv8o





    母「はい……」

    母「突然、いなくなった事もそうですが」

    母「あれだけ怖がっていた娘が、勝手に一人で外に出るとは思えなかったので」

    母「その後、すぐに警察に電話しまして」

    母「娘がいなくなった事を伝えました。誰かに拐われたかもしれないと」



    母「そうですね。ええ。驚いていましたけど」

    母「すぐに家に来て下さいました」

    母「そして、私達から事情を聞くと共に」

    母「他の警察の方がパトカーで近所を巡回して、娘を探し回ってくれました」

    母「ですが、その甲斐なく、娘はずっと見つからず」

    母「ただ時間だけが過ぎていきました」


    183: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:03:41.13 ID:bgmstPv8o

    母「それで、深夜になった頃でしょうか」

    母「パトカーがもう一台来て、それで一緒に警察犬を連れてきてくれて」

    母「娘の匂いを追跡してくれたんです」



    母「はい……ですけど」



    母「警察犬は、玄関から出て」

    母「それで、二歩か三歩ほど歩いたところで、止まってしまいまして」

    母「そこで、ずっと右往左往してるんです」

    母「まるで、そこでいきなり娘の匂いが途切れたみたいに」

    母「匂いを辿れなかったんです」


    185: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:11:23.44 ID:bgmstPv8o



    母「はい。そうです」

    母「玄関から少し行った先で、止まってしまうんです」



    母「警察の方が言うには」

    母「ここで、何かの乗り物に乗せられた可能性が高いと」

    母「それで、娘の匂いが途切れてしまい、追跡出来なくなっているのではないかと」

    母「そう言われるんです」


    186: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:12:16.22 ID:bgmstPv8o





    母「ええ……」

    母「なので、娘は誘拐された可能性が高いという事で、誘拐事件として扱われました」



    母「それで、ひょっとしたら、犯人から身代金の要求がくるかもしれないという事で」

    母「家の電話には、逆探知が出来る機械が取り付けられたのですが」

    母「電話はそれから丸一日経ってもかかってきませんでした」

    母「そして、大勢の警察の方が捜査をしてくれたにもかかわらず、娘の行方もずっとわからないままで」

    母「それから、三日も過ぎてしまったんです」


    187: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:12:50.81 ID:bgmstPv8o

    母「ところが」





    母「ええ、三日目の朝方です」

    母「娘が見つかったんです」



    母「いたのは、家の中でした」



    母「ええ。娘は押し入れの中にいて」

    母「そこで寝ていました」

    母「昨日までは、確かにいなかったのに」

    母「いつのまにか、そこにいたんです」


    188: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:13:33.59 ID:bgmstPv8o



    母「……それは、わかりません」

    母「ですが……」



    母「今度は、家には鍵がかかっていたんです」

    母「窓も全部、鍵がかかっていました」

    母「間違いありません。確認しましたから」





    母「はい。うちの鍵は、全部、家の中にありましたし……」

    母「娘も鍵を持って、いなくなった訳ではないので……」

    母「娘がいつのまにか中にいる、というのは、有り得ないんです」





    母「ええ。ですので、娘を連れ去った犯人が、夜の間に家の鍵を開けて」

    母「娘を押し入れに入れて、また鍵をかけて帰ったとしか、考えられないんですね」


    189: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:14:19.78 ID:bgmstPv8o



    母「はい。それはもちろん」

    母「娘に、すぐに尋ねました」

    母「『この三日の間、どうしてたの? どこにいたの?』と」

    母「ですが、娘が言うには……」



    母「わからないと」

    母「それどころか、何も覚えてないと言うんです」

    母「娘は三日経ってた事も知らなくて」

    母「気が付いたら、ここで寝ていたと」

    母「そう言うんです」


    190: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:14:51.31 ID:bgmstPv8o



    母「はい。宇宙人の事も娘には尋ねました」

    母「ですが、それすらも娘は覚えてなかったんです」



    母「ええ、宇宙人に誘拐されると言っていた事も、何もかも」

    母「きょとんとした顔で、『私、そんな事言ってないよ』って」

    母「そう言うんです」

    母「他にも色々尋ねてみたんですが、それも忘れていて」

    母「ここ数日の記憶が、全部、なくなってたんです」


    191: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:15:34.82 ID:bgmstPv8o

    母「それで、私達は警察の方に連絡をした後で」

    母「娘を病院に連れていって、精密検査をお願いしました」

    母「警察の方が事情を話してくれたので、娘の検査は念入りに行われたのですが」



    母「特に、異常はないと」

    母「そうお医者様は言われました」

    母「記憶が消えている事も話したのですが、脳の方にも異常は一切見られないという事で」

    母「単に忘れてしまったとしか、考えられないと言われるんです」



    母「でも、いくら子供とはいえ、数日前の記憶全部を忘れるなんて事があるんでしょうか?」

    母「その前の事は覚えているのに」

    母「そこだけが綺麗に、まるで記憶を消されでもしたかの様に忘れてしまうなんて」

    母「そんな事、有り得るんでしょうか?」


    192: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:16:29.72 ID:bgmstPv8o

    母「結局、娘がその三日の間、どこで何をしていたのかはわかりません」

    母「警察の方が、家や娘の服などから犯人の痕跡が何かないかと調べたんですが」

    母「それも一切、出ませんでしたから」

    母「ただ、精密検査の結果、娘には何の異変もないとの事でしたし」

    母「無事に戻ってきたので、事件として大きく扱われる事もありませんでした」



    母「ええ、家の鍵も替えました。それからはそういった事はありませんでした」

    母「それが、家の鍵を替えたからなのかはわかりませんが……」



    母「不思議ですよね」

    母「娘は、本当に三日の間、一体どこへ行ってたんでしょうか」

    母「そして、どうして娘はUFOに拐われるなんて、思ったんでしょうか」

    母「何より、どうして娘は『いなくなる日付』を予め知っていたんでしょうか」

    母「そして、娘はどうして自分から外に出ていって」

    母「その時の記憶を一切なくしてしまっているんでしょうか……」

    母「未だにそれがわかりません」

    母「娘は何も覚えてませんから」


    193: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:17:27.98 ID:bgmstPv8o



    母「?」



    母「……え?」



    母「…………」





    母「……いえ、流石にそれはないと思います」

    母「第一、何の為にそんな事……」


    194: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:19:15.32 ID:bgmstPv8o





    母「……どういう事ですか」





    母「……!」

    母「まさか、そんなはずが……!」

    母「違います! それは有り得ません!」





    母「いいえ、ないです。そんなもの、うちには……」



    母「はい……。確かにそれならありますけど、でも、だからって……」





    母「いえ、そんなはずは……」


    195: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 22:19:44.28 ID:bgmstPv8o



    第六話


    【UFOに拐われた子供】


    終了




    204: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:26:30.76 ID:xiNpaiFuo



    第七話


    【声が変わる幽霊】




    205: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:26:58.75 ID:xiNpaiFuo

    警察官「不思議な話?」



    警察官「ん、まあ、なくはないけどな」

    警察官「こんな仕事についてると、時々、意味不明な事件に遭遇する事もある」

    警察官「本当に、ごく稀に、だけどな」





    警察官「……どうしてだ?」



    警察官「どうして、それを聞きたいんだ?」







    警察官「…………」


    206: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:27:26.73 ID:xiNpaiFuo

    警察官「……わかった」

    警察官「なら、話してやる」

    警察官「ただし」



    警察官「俺は警察官だからな」

    警察官「守秘義務というのがある」

    警察官「だから、実名も、場所も、何もかも話さない」

    警察官「それで構わないと言うなら」

    警察官「そして、お前も、さっきの約束を守ると言うなら」

    警察官「話してやる」

    警察官「その条件でいいか?」





    警察官「よし。なら、話すけどな」


    207: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:27:54.07 ID:xiNpaiFuo

    警察官「もう、二年ぐらい昔の話だけどな」

    警察官「幽霊の話だ」

    警察官「地名は出さないが、とある場所に小さな山があって」

    警察官「そこは、キャンプ場になっているんだ」



    警察官「ああ。バーベキューやら、川遊びやらが出来る様になってて」

    警察官「ロッジもあるし、テントを張れる場所もある。もちろん、駐車場もな」



    警察官「それで、そこから歩きで少し行った場所に」

    警察官「洞穴みたいなのがあってな」

    警察官「立ち入り禁止にはなっているが、ロープで張られているだけだから、簡単に中に入れるんだが」

    警察官「それが結構でかい洞穴でな。大人が歩いて通れるぐらいの大きさで」

    警察官「中も、それなりに深くてな。別れ道とかも幾つかある」



    警察官「そこは、元は、炭坑だったらしい」

    警察官「江戸時代だか、それよりも昔だかに、掘られた穴らしいが、俺も詳しい事は知らない」





    警察官「ああ。それが何の目的で掘られた穴かは、問題じゃないからな」

    警察官「問題なのは、ここからで」

    警察官「その洞穴には、幽霊が出るって噂が昔からあるんだよ」


    208: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:28:22.35 ID:xiNpaiFuo





    警察官「ああ。そうだな」

    警察官「どこにでもありそうな、ありがちな話だ」

    警察官「そもそも、洞穴の中ってのは暗いし不気味だしな」

    警察官「コウモリだって住み着いてる時もある」

    警察官「音が反響するから、小さな物音でも大きく聞こえるし、どこから物音がしたのかもわかりにくい」

    警察官「単純に、怖いんだな。中に入るっていうそれだけで」





    警察官「そうだな。トンネルとかもそうだが、洞穴とかにも怪談は多いよな」

    警察官「暗いし、狭い場所ってのは、人の恐怖心を煽るんだろう」





    警察官「ああ。だから、そういった幽霊だとかの噂が出てきても、ちっともおかしくはないんだが」

    警察官「そこだけ、少し特別でな」


    209: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:28:49.68 ID:xiNpaiFuo



    警察官「順番に話そうか」

    警察官「きっかけは、大学生グループからの通報だった」

    警察官「そいつら五人は、夏休みだって事で、車でその山に遊びに行ったそうで」

    警察官「それで、バーベキューやら川遊びやらをしてはしゃいでいたら」

    警察官「暗くなる前に帰るつもりだったのに、いつのまにかどっぷり日も暮れていて」

    警察官「帰る頃には、辺りはすっかり真っ暗になっていたらしい」


    210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:29:16.81 ID:xiNpaiFuo

    警察官「そうしたら、その中の一人が、例の幽霊が出るって噂の洞穴の事を思い出したらしくてな」

    警察官「丁度、乗ってきた車の中に懐中電灯も置いてあったし」

    警察官「肝試しがてら、そこに行こうという話になったそうだ」





    警察官「ああ、ある意味、お約束だろうな」

    警察官「それで、怪談にありがちな事にも」

    警察官「案の定、その大学生五人グループは、そこで妙な体験をする事になる」



    警察官「だろうな。よく聞く話だ」

    警察官「だけど、これは少し普通の怪談と違ってな」


    211: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:29:45.17 ID:xiNpaiFuo

    警察官「普通の怪談なら」

    警察官「その中で幽霊と出くわして」

    警察官「それで、必死になって洞穴の外へと逃げ帰ってみたら」

    警察官「外に停めていた車のガラスに、手の跡がびっしりついていただとか」

    警察官「中の一人が、いつのまにか行方不明になっていただとか」

    警察官「それ以来、幽霊にとり憑かれてしまっただとか」

    警察官「そういう感じで話は終わるんだがな」

    警察官「そうじゃなかったんだ」


    212: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:30:14.89 ID:xiNpaiFuo



    警察官「そいつらが、洞穴の中に、怖がりながらも全員で入るだろ?」

    警察官「それで、懐中電灯で照らしながら、ゆっくりと中へ進んでいくと」

    警察官「途中で、その中の一人がこう言い出したそうだ」

    警察官「『……なんか、声みたいなのが聞こえない?』ってな」



    警察官「それで、全員が耳をすませてみると」

    警察官「聞こえてきたんだと」

    警察官「何か堅いものを、手で何度も叩く様な音と一緒に」

    警察官「女の子供の声で」

    警察官「『助けて。助けて。助けて』って」

    警察官「そういう風にな」


    213: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:30:43.45 ID:xiNpaiFuo





    警察官「ああ。全員がそれを聞いたそうだから」

    警察官「嘘や聞き間違いって事はないとは思う」



    警察官「それで、その大学生達は」

    警察官「もちろん、怖くもあっただろうがな」

    警察官「とはいえ、本当に中で女の子が迷子になって困っているんじゃないかとも、思ったらしく」

    警察官「怖がりながらも、皆でかたまって奥へと進んでいって」

    警察官「呼びかけながら、中を探したそうだ」


    214: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:31:15.15 ID:xiNpaiFuo

    警察官「だけど、洞穴の中を全部探しても、その子はどこにも見つからなくて」

    警察官「ただ、何か固いものを叩く様な鈍い音と」

    警察官「『助けて』という声だけが、微かにどこからか聞こえてくるんだ」



    警察官「不思議だよな」


    215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:31:48.34 ID:xiNpaiFuo

    警察官「それで、その大学生達は、流石に不気味に思って」

    警察官「洞穴から出ると、携帯電話を使って、警察へと通報した」

    警察官「『女の子が、洞穴の中で迷子になってるかもしれない』とな」



    警察官「その時に、通報の電話を受けたのが俺だ」

    警察官「場所が幽霊が出るって噂の洞穴だっただけに、その通報には半信半疑だったんだが」

    警察官「ただ、もし本当だったとしたら、放置してはおけないから」

    警察官「もう一人の同僚と一緒に、パトカーでそこまで向かったんだ」

    警察官「懐中電灯やら、ロープやら、蛍光テープやら、そういった物を一緒に持ってな」


    216: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:32:19.49 ID:xiNpaiFuo

    警察官「それで、現場まで辿り着いて」

    警察官「大学生の中の一人にリーダーみたいなやつがいたから、そいつに案内を頼んで」

    警察官「声を聞いたって辺りまで、連れていってもらったんだ」



    警察官「それで、大体この辺だって場所まで来たもんだから」

    警察官「俺達は、そこで立ち止まって耳をすませたんだよ」

    警察官「そうするとだ」

    警察官「本当に聞こえるんだよ」

    警察官「固いものを叩く様な鈍い音と一緒に」

    警察官「『助けて。助けて。助けて』って」

    警察官「か細いけど、どこかから、微かにそう聞こえてくるんだ」

    警察官「小さな女の子の声がな」


    217: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:32:56.26 ID:xiNpaiFuo

    警察官「それで俺は、横にいた同僚にうなずいてみせたんだ」

    警察官「確かに聞こえるな、ってな」

    警察官「ところがだ」



    警察官「同僚は、その声が聞こえないって言う」

    警察官「何かカタカタと動く様な音は、微かにどこかから聞こえてくるそうなんだが」

    警察官「女の子の声は聞こえないってな」



    警察官「だけどな」

    警察官「俺には、その『カタカタと動く様な音』が聞こえなかったんだ」

    警察官「意味がわからないだろ?」


    218: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:33:24.56 ID:xiNpaiFuo

    警察官「そばにいた大学生も、そうだった」

    警察官「『女の子の声は聞こえますけど、カタカタとかいう音は聞こえません。何か叩く様な音は聞こえますけど……』ってな」

    警察官「だから、俺達が聞いたものは子供の声と鈍い音で合ってるはずなんだが」

    警察官「だけど、同僚にはそれが聞こえなくて」

    警察官「代わりに、何かが動く様な『カタカタ』という音が聞こえてくるんだ」



    警察官「どうして、同僚にはそんな音が聞こえて」

    警察官「女の子の声が聞こえないのか」

    警察官「それがわからなくてな」


    219: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:33:59.17 ID:xiNpaiFuo

    警察官「ただ、その時は聞こえる聞こえないをきちんと確かめ合ってる場合じゃないと判断したから」

    警察官「その事を同僚に伝えて、とにかく女の子を探そうって事になった」



    警察官「それで、俺と大学生は声が聞こえてくる方角がどっちからなのかを耳をすませながら聞いて」

    警察官「大体の見当をつけながら、歩いて探し回った」

    警察官「声が聞こえないという同僚には、既に探した場所をマーキングしてもらう事にした」

    警察官「暗闇の中でも光るテープあるだろ? あれを貼ってもらって」

    警察官「探した場所の目印にしたんだ。暗闇の中だし、洞穴の中だからな。似たような場所ばかりだったもんだから、間違えない様にとな」



    警察官「それで、そうやって声を頼りに捜索をし続けたんだが」

    警察官「それから、一時間近く経っても見つからなくて」

    警察官「そして、洞穴の中はマーキングしたテープだらけになっていた」

    警察官「それを見る限り、間違いなく、全部、探して回った事になるんだが」

    警察官「それでも見つからなくてな」

    警察官「でも、声と音だけは未だに聞こえてくるんだ」

    警察官「『助けて……。助けて……。助けて……』って、どんどん弱々しい声に変わりながらも」


    220: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:34:39.90 ID:xiNpaiFuo





    警察官「ああ、呼びかけても、こちらの声が聞こえないのか、返事は全くなかった」

    警察官「そして、声が聞こえてくる方角もわかりにくいんだ。洞穴の中だから音が反響するし、方向感覚も掴みにくいしな」

    警察官「だから、どこから聞こえてくるかは特定が難しかったんだが」

    警察官「それでも、マーキングを見返してみると、洞穴の中央辺り、そこの行き止まりの通路あたりが一番多く貼られていた」

    警察官「つまり、大体、その辺りから聞こえてくるってのは、わかったんだ」

    警察官「だけどな」



    警察官「そこら一帯をどれだけ見て回っても見つからないし」

    警察官「それに、それからしばらくしたら、遂にはその声が聞こえなくなってしまった」

    警察官「俺達は完全に手掛かりを失ったんだ」


    221: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:35:10.62 ID:xiNpaiFuo



    警察官「ああ、それで、これ以上はどうしようもなくなって」

    警察官「俺達は捜索を断念すると共に」

    警察官「本署の方に無線で連絡した」

    警察官「行方不明事件発生、ってな」





    警察官「同僚か?」

    警察官「ああ、あいつは最後まで首を傾げてたけどな」

    警察官「本当に、そんな女の子がいるんだろうか、って」

    警察官「あいつは、その子の声が聞こえなかったから、そう思って当然だろうが」

    警察官「聞こえないのが、あいつだけだったから、本署に応援を呼ぶ事に反対はしなかった」

    警察官「自分の耳が悪いんじゃないかって、そう思ったみたいでな」


    222: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:35:42.11 ID:xiNpaiFuo

    警察官「それで、実際に本署から応援が六人ほど来て」

    警察官「大型のライトや、赤外線カメラ、それに熱画像直視機なんかも運び込まれた」

    警察官「それで、再び捜索が始まったんだが」



    警察官「結局、見つからずに夜が明けたんだよ」

    警察官「最後まで、その子は見つからなかったんだ」


    223: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:36:11.37 ID:xiNpaiFuo






    警察官「ああ、もちろんその可能性も考えて」

    警察官「マーキングが多かった例の場所な。そこ付近を熱画像直視機なんかで徹底的に調べたし」

    警察官「壁をピッケルとかで叩いて、音とかも確かめたんだが」

    警察官「中が空洞になっているような箇所もなかった」

    警察官「結局、怪しげな場所はどこにも見つからず」

    警察官「徒労に終わったんだ」


    224: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:37:01.67 ID:xiNpaiFuo



    警察官「その後か?」

    警察官「最終的には、俺含めて、大学生達全員の空耳じゃないかって事になった」





    警察官「ああ。俺も当然、そんなのには納得出来なかったんだが」

    警察官「だけど、そうなった理由は二つあって」

    警察官「一つは、小さな女の子の行方不明の届け出が、どこにも出ていなかったという事だ」

    警察官「少なくとも、ここ最近の間ではな」

    警察官「行方不明者ってのは、毎年、かなりの数が出ていて、それが見つからないままの場合も多いから」

    警察官「何年も前の届け出を遡れば、あるにはあるんだが」

    警察官「ここ一年ほどはそれがなかったんだ」

    警察官「これが一つ目の理由だ」



    警察官「それで、もう一つが」

    警察官「同僚がその声を聞いてないって事だ」

    警察官「全員が聞いたなら、まず間違いないんだろうが、一人、聞こえないというやつがいたから」

    警察官「あれだけ捜索したにもかかわらず、見つからなかったという事も合わさって」

    警察官「空耳で片付けられた」





    警察官「ああ。俺は食い下がったんだが、無駄だった」

    警察官「上司が言うには」

    警察官「『誰も探していない子供で、しかも、本当にいるかどうかもあやふやなものに、これ以上の時間と人員は割けない』」

    警察官「そう言われてな」

    警察官「それを理由に、悔しいが、捜索はそこで打ち切られてしまったんだよ」


    225: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:37:51.28 ID:xiNpaiFuo

    警察官「だがな」



    警察官「そうやって悔しがっている俺を見て、本署の年輩の人が教えてくれたんだが」

    警察官「理由はその二つだけじゃなくて、もう一つあったんだ」



    警察官「ああ。実はな」

    警察官「その洞穴、三年に一回ぐらいだかの割合で」

    警察官「『助けを呼ぶ、子供の声が聞こえた』っていう、通報が必ず入るんだと」



    警察官「それで、不思議な事にも」

    警察官「状況はほとんど同じ」

    警察官「助けを呼ぶ声が聞こえてくる場所も、毎回のように同じで」

    警察官「誰か一人か二人は、その子供の声が聞こえない」

    警察官「行方不明届けが出ていないのも同じで」

    警察官「そして、毎回のようにその子供は見つからない」

    警察官「ただ、声だけが毎回違うそうだ」

    警察官「男の子の声だったり、女の子の声だったり、それはバラバラなんだと」


    226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:38:41.18 ID:xiNpaiFuo







    警察官「ああ。そうだろうな」

    警察官「もしも本当に空耳なら、何回も似たような通報は来ないだろうし」

    警察官「もしも本当にそこに子供がいるなら、あれだけ捜索してるんだから、見つかってもおかしくない」

    警察官「なのに、絶対に見つからないし」

    警察官「誰か一人か二人は、その声が毎回聞こえない」



    警察官「だから、幽霊なんじゃないかって噂が立ったんだろうが」

    警察官「もしもその声が幽霊のものだったとしたら、毎回、声が変わってる事になる」

    警察官「それに、そこの洞穴じゃ事件も事故も何も起きてないっていうのに」

    警察官「何故か決まって、『助けを呼ぶ子供の声』が聞こえる」



    警察官「どうしてこんな事が起こるんだろうな」

    警察官「不思議に思わないか?」


    227: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:39:12.69 ID:xiNpaiFuo



    警察官「ん?」







    警察官「さあな、どうだろうな……」

    警察官「もしかしたら、そういう事もあるかもな」

    警察官「でも、実際に声を聞いた俺からしてみれば」

    警察官「そういう事は絶対にないと思うぞ」



    警察官「…………」





    警察官「…………」


    228: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:40:17.11 ID:xiNpaiFuo



    警察官「……そういえば、誰かがそんな事を言ってたかもな」



    警察官「いや、覚えちゃいないが……」



    警察官「とはいえ、俺はそれを信じてはいないからな」

    警察官「あれは、本当に子供の声だった。間違いなくな」



    警察官「…………」





    警察官「まあ、ひょっとしたら、そういう事なのかもしれないな……」

    警察官「なんにしろ、この話はもうこれで終わりだ」



    警察官「それじゃ、今度は約束通り、俺が聞かせてもらう番だな」



    警察官「ああ。それじゃ、最初の質問なんだがな」

    警察官「お前、これまで何人殺してるんだ?」




    229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/05(金) 20:41:00.19 ID:xiNpaiFuo



    第七話


    【声が変わる幽霊】


    終了




    240: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:28:37.67 ID:N+SU8kaso



    最終話


    【殺害予告メール】




    241: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:29:09.93 ID:N+SU8kaso

    医者「やあ、こんにちは」



    医者「私かい? 私は、君を担当する事になった医師だよ」

    医者「これから、宜しく頼むよ」





    医者「いや、そんなに身構えないでくれ」

    医者「そういう規則になってるだけの事だからさ」

    医者「君は、特に気にする必要はないよ」





    医者「うん、わかってる」

    医者「大丈夫だから、安心してくれ」


    242: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:29:44.63 ID:N+SU8kaso





    医者「ん?」

    医者「ああ、今日はそういうのはないよ」



    医者「そう。今日は単に挨拶と」

    医者「軽い問診だけかな」



    医者「ああ、君は私の質問に答えてくれるだけでいい」

    医者「簡単だろ? それだけだよ」

    医者「それじゃ、早速いいかな?」



    医者「?」





    医者「不思議な話?」


    243: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:30:19.32 ID:N+SU8kaso

    医者「それはまあ……多少は知ってるけどね」

    医者「バミューダトライアングルとか、神隠しとか、そういうのだろ?」

    医者「そういう話は、生憎、人並み程度にしか知らないけどさ」





    医者「私自身が体験した事?」



    医者「うーん……何かあるかなあ」


    244: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:30:49.84 ID:N+SU8kaso

    医者「ああ、そういえば」

    医者「一個だけ、そういう話があったっけ」

    医者「あれは、不思議な話と言えば、不思議な話かもしれないな」



    医者「それは構わないけど……」

    医者「でも、どうしてまた不思議な話なんて聞きたいんだい?」





    医者「ふうん……。君の友達が」



    医者「まあ、そういう事ならいいよ。そんなに長い話でもないからね」

    医者「聞きたいなら、話すよ」


    246: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:31:21.28 ID:N+SU8kaso

    医者「あれは、私が大学生の時だね」

    医者「その頃、私には高校時代から付き合ってた彼女がいてね」

    医者「付き合って、三年目ぐらいの時だったかな」

    医者「変なメールが来たんだよ」




    247: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:32:04.91 ID:N+SU8kaso

    医者「その日は、本当なら彼女とデートの予定だったんだけど」

    医者「って言っても、付き合って三年にもなると、デート一つで浮かれたりとかもしないし」

    医者「それが流れたとしても、そこまで残念がる様なものでもなかったんだけどね」



    医者「うん。ただ、その日は彼女が見たがっていた映画を見に行く予定になってたから」

    医者「それが取り止めになったのは、やっぱり残念そうではあったよ」



    医者「ああ、理由?」

    医者「別に珍しくもない理由だよ」

    医者「私はその頃、病院での無給助手をやっていてね」

    医者「それで、その病院から人手がどうしても足らなくなったという連絡が入って」

    医者「何とか来てくれないかって、そう言われたんだ」

    医者「猫の手も借りたい状態だったらしくてさ」

    医者「それで、私が猫の手だった訳だ」

    医者「まあ、病院は人手が不足してる場合が多いからね。そういう事もあるよ」


    248: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:32:37.44 ID:N+SU8kaso

    医者「それで、その日は病院に手伝いに行って」

    医者「そこにいたのは六時間ぐらいかな。夜の十時頃にそれが終わって」

    医者「お疲れ様でしたって言って、病院を出て」

    医者「自分の原付に乗ってさ」

    医者「それで、家に帰る直前ぐらいかな」

    医者「そのメールが来たんだ」


    249: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:33:06.87 ID:N+SU8kaso

    医者「それは、彼女からのメールでね」

    医者「こういう文面が書いてあった」

    医者「『そろそろ殺します』

    医者「『だけど、どうする?』って」



    医者「ね? 不思議だろ?」

    医者「何で私は、彼女から殺害予告をされたんだろう?」

    医者「そして、何で彼女は『どうする?』って私にその事を聞いてきたんだろう?」

    医者「ちょっと不思議だよね」


    250: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:33:39.34 ID:N+SU8kaso

    医者「最初に言っておくけど」

    医者「もちろん、私にはそんな事をされる程の覚えはなかったよ」

    医者「そりゃ、デートの約束を破りはしたけど」

    医者「それにしたって、きちんと理由を説明したし」

    医者「彼女も、『それなら仕方ないね』って、言ってくれたしさ」

    医者「納得してくれたんだ。『また、今度にしよ』ってね」

    医者「だから、怒ってもいなかったはずなのに」

    医者「急にこんなメールが来たんだ」

    医者「どうしてだと思う?」


    251: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:34:06.88 ID:N+SU8kaso



    医者「ん?」



    医者「へえ、どういう理由かな?」





    医者「…………」





    医者「…………」


    252: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:34:42.33 ID:N+SU8kaso



    医者「ん、あ、ああ。ごめんごめん」

    医者「ちょっと驚いてね」



    医者「うん。実はさ」

    医者「この話は、今まで他に何人も話した事があって」

    医者「その度に、色々な理由を聞いてきたんだけどね」



    医者「ああ、うん。例えば、悪質な冗談だったとか」

    医者「そういうメールを送って、私がどうするか、その反応を見たかったからとか」

    医者「彼女が精神的に病んでたからとか」

    医者「まあ、色々だよ。でもさ」



    医者「『そんな理由』を答えた人は初めてでね」

    医者「それで、ちょっとびっくりしたというか」

    医者「そういう考えもあるのかと思ってさ。思い付きもしなかったから」


    253: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:35:27.15 ID:N+SU8kaso



    医者「ん?」



    医者「ああ、答えというか、真相ね」

    医者「彼女がどうしてそんなメールを送ってきたのかって事だよね」

    医者「そうだね、今、教えてもいいんだけど……」



    医者「出来れば、それは次のお楽しみという事にしないかい?」



    医者「うん。私は明日もまた問診しに来るからさ」

    医者「その間に、少し考えてみようか」

    医者「彼女はどうして、そんなメールを送ったのか」

    医者「そして、私がどうしたか」

    医者「ちなみに、君が言ったさっきの理由は不正解だよ」

    医者「彼女はそんな状態じゃなかったから」



    医者「うん。違うよ」

    医者「そうじゃないんだ。それ以外の理由だよ」


    254: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:36:18.54 ID:N+SU8kaso



    医者「そうだね、少し難しいかもね。今までピッタリと正解した人は誰もいなかったから」

    医者「でも、半分ぐらいまで正解の人は何人もいたから」

    医者「絶対にわからないって事はないと思うよ」



    医者「ヒント?」

    医者「ヒントねえ……うーん」

    医者「そうだね、これはヒントになるかどうかはわからないけど……」

    医者「『僕も彼女も、今、生きている』」

    医者「っていうのが、君にとってはヒントになるかもね」



    医者「え?」





    医者「…………」


    255: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:37:00.21 ID:N+SU8kaso

    医者「いや……そんな事はないよ」



    医者「うん。僕はそんな事をしてない」

    医者「考えた事もないし、思い付きもしないだろうね」



    医者「そう。彼女は今もちゃんと生きてるよ」

    医者「五体満足の状態でね」



    医者「うん。本当に」

    医者「彼女とはもう別れてしまったけど、元気にやってるはずだよ。友達からはそう聞いてる」



    医者「ああ、それと」



    医者「問診は、今日はやめておこうか」



    医者「話してたら、結構、時間が経ってしまったしね。また明日にしよう」



    医者「そうだね」

    医者「また、この時間に来るよ」

    医者「それじゃ」


    256: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:37:31.97 ID:N+SU8kaso











       


    257: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:38:23.08 ID:N+SU8kaso



    医者「ん?」



    医者「ああ、刑事さん。どうも」



    医者「容疑者ですか? ええ、大人しかったですね」

    医者「確かに、一見した限りでは、とてもあんな事をした犯人には見えませんでした」





    医者「さあ……。どうでしょうかね」

    医者「それは何とも言えません……」

    医者「まだ、軽く話しただけですから」


    258: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:38:59.31 ID:N+SU8kaso



    医者「?」





    医者「ああ、聞いていたんですか」





    医者「そうですか。刑事さんも、気になるんですね。あの話の真相が」







    医者「そうですね……。別に話しても構わないんですが……」

    医者「刑事さんが、その話の真相が気になる、というのであれば、逆に話さない方が良いかもしれませんね」




    259: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:39:46.76 ID:N+SU8kaso



    医者「はい。これは、私の持論なんですが……」

    医者「謎というのはね、刑事さん」

    医者「真相がわかってしまうと、つまらないものなんです」

    医者「何だ、そんな理由か、と思うはずですよ」

    医者「コロンブスの卵と同じです。自分でそこまでたどり着くのは難しいですが、誰かに教えられたら、下らないと片付けてしまうんです」



    医者「だから、刑事さん」

    医者「真相をどうしても知りたいというのであれば」

    医者「自分でたどり着いて下さい」

    医者「きっと、しばらくは暇が潰れると思いますよ」


    260: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:42:41.64 ID:N+SU8kaso







    医者「ああ、あの容疑者が考えた推理ですか?」





    医者「それは話しても構いませんよ」

    医者「あの容疑者はね、こんな推理をしたんです」



    医者「まず、私の事を好きな女の子がもう一人いて」

    医者「その女の子が、彼女を拉致して監禁した上で」

    医者「彼女の携帯を使って、私にメールを送ってきたと」

    医者「『そろそろ殺します』」

    医者「『だけど、どうする?』とね」



    医者「本来なら、その監禁されている彼女の画像も送るつもりだったけど」

    医者「それは、送り忘れてしまったんじゃないか、とね」

    医者「そう推理したんですよ、あの容疑者は」



    医者「ええ。ちょっと発想が『普通』じゃないですね」

    医者「ですので、ひょっとしたら……」

    医者「サイコパスの可能性もあるかもしれませんね」

    医者「あくまで可能性ですが……」




    261: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:43:46.66 ID:N+SU8kaso



    医者「いいえ、違いますよ」

    医者「容疑者の推理は、当たっていません」

    医者「ヒントを出すなら、あれは彼女本人が自分の意思で送ったメールですから」

    医者「誰か別の人間が送った訳でも、脅されてそういうメールを送った訳ではありません」



    医者「?」



    医者「ああ、それで私がどうしたかですか?」

    医者「もちろん、すぐに彼女に電話をかけて、どうしてそんなメールを送ったのかを尋ねましたよ」

    医者「そうしたら、どういう返事がきたかは、教えませんがね」

    医者「答えを言うのと同じですから」



    医者「それでは、私はこれで……」



    医者「ええ、失礼します」



    医者「お疲れ様でした」


    262: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:44:22.52 ID:N+SU8kaso



    最終話


    【殺害予告メール】


    終了




    263: !red_res saga 2016/08/06(土) 14:44:58.28 ID:N+SU8kaso




    【通知】




    264: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:45:59.05 ID:N+SU8kaso

    【真実1】



    この八話の中に

    オカルトや心霊現象の類いは

    一つも存在しない





    265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:46:40.21 ID:N+SU8kaso

    【真実2】



    各話の語り手、七人の中に

    一人だけ、嘘をついている人間がいる



    逆に言えば、

    その他の人間は

    一切、嘘をついていない





    266: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:47:26.25 ID:N+SU8kaso



    最終話


    【二つの真実】


    終了




    267: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:48:01.38 ID:N+SU8kaso




    男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」








    268: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 15:03:18.67 ID:h7DHbBE/0


    嘘つきがいるのかぁ


    270: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 15:56:11.06 ID:IuKSHEFq0

    面白い
    けど手がかりはどこにあるんだ・・・


    275: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 17:00:51.25 ID:JTXMb6sn0


    考察班頑張ってくれ


    276: とりあえず 2016/08/06(土) 17:14:03.52 ID:wcjum+ye0

    >>1
    第一話
    【謎のタクシー客】
    語り手:男(タクシーの運転手)
    聞き手:女

    ※人物消滅
    消えた人:女の人(タクシー客)

    >>23
    第二話
    【生きてますという電話】
    語り手:女
    聞き手:男

    >>45
    第三話
    【呪われてる部屋】
    語り手:友
    聞き手:不明

    >>76
    第四話
    【消えた友達】
    語り手:女友
    聞き手:不明

    ※人物消滅(増加?)
    消えた人:カスミとユカリ

    >>117
    第五話
    【他人の中に入った夢】
    語り手:女
    聞き手:男

    >>155
    第六話
    【UFOに拐われた子供】
    語り手:母
    聞き手:不明

    人物消滅(一時的)
    消えた人:娘

    >>204
    第七話
    【声が変わる幽霊】
    語り手:警察官
    聞き手:不明

    >>240
    最終話
    【殺害予告メール】
    語り手:医者
    聞き手:不明


    277: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 17:22:09.44 ID:h7DHbBE/0

    同一人物かは不明だが、第7話と最終話は同じ殺人犯かなぁと勝手に思ってたんだが


    278: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 17:26:23.26 ID:wcjum+ye0

    ・一部の話は多重人格で説明がつくかも?根拠は全くない
    ・女が二回語り手になっているので仮に女が嘘をついている場合、二話と五話両方が嘘である可能性もある
    ・七話と最終話の聞き手(容疑者)は同一人物?
    ・七話と最終話の「警察官」と「刑事さん」が同一人物かどうかも気になる


    自分で書いてて混乱してきた


    279: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 17:26:42.19 ID:ASCpQOiSO

    オカルトがないなら、嘘をついてんのは女とか?


    282: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 17:45:28.98 ID:d0+FNOzHO

    なるほど
    全くわからん


    283: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 18:32:21.04 ID:8YVaCz6OO

    なんもわかんねえ…


    289: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 19:54:55.37 ID:3R1I9+Lp0

    男が嘘をついてないなら「女の人を乗せた」と言ってるから女装はありえないんじゃない?
    こんな感じで考えていけば嘘吐きを絞れるはず


    291: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 20:16:51.48 ID:2HyFMnE1o

    オカルトがない、がヒントだとしたらオカルトでしか説明出来ない話が嘘なんじゃないかな

    一話→父親か息子が女装癖
    三話→話し相手が犯人
    最終話→単なる文章のミス

    六話については、子供が大人の気を引こうとわざと騒ぎを起こすなんとか症候群て病気があったはず
    七話は声が聞こえてない人が犯人で、地面にレコーダーか何か仕込んでるんじゃね?
    二、四、五が難しいな。あー…わかったかも


    295: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 20:43:34.29 ID:WOy7v52no

    第六話で
    母親が話してる相手は警察?

    母「今とは、全く関係ないかもしれません」
    母「その事で、娘に対して妙な先入観を持たないようにして下さい」


    娘=女=嘘つき=(何かの)犯人?


    292: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 20:28:40.46 ID:/WMcAnmao

    8話あるのに語り手7人って事は同一人物が居る

    電話会社関連はオカルト以外で説明できないと思うから嘘だと思う

    とか書きながら読み返して最終話殺害予告メールと最終話2つの真実っていうのを見て最終話2つあるやんけってなって語り手の>>1が嘘なんじゃねって思って思考放棄した
    駄文すまん


    296: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 20:44:52.00 ID:2HyFMnE1o

    >>292
    >>276見てみ。女は二回話してる

    >>201が正解だと思う。女は多分幻覚持ちで、生きてますという電話はイマジナリーフレンドが
    自分にまだ生きてるよとかけてきてる(という無意識の設定)。だから記録がない
    他人の中に入った夢も友達が自分を避けてるという思い込みで解決するし

    正解は女友じゃないかな。ミキが言った変な話を膨らませて怪談仕立てにしたとか
    女の話は女一人で解決するから妄想でいいけど、女友の話は友人三人が関わってるし
    本当だったらどう考えてもオカルトでしか説明出来ない。だから正解は女友


    298: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 20:51:26.36 ID:/WMcAnmao

    >>296
    やっと理解した
    なるほど確かにそれだと辻褄があうのかな

    これが正解なのかどうか知りたいね


    引用元: 男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」

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