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    メリー「今あなたの後ろにいるの」武術家(殺気ッ!?)

    1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 19:32:51.65 ID:mO0vpL2x0

    友人「いよいよ一ヶ月後だな」

    友人「全日本格闘大会!」

    武術家「ああ、日頃からの鍛錬の成果を満天下に知らしめる絶好の機会だ」

    友人「優勝候補は俺とお前、あとは……空手家と紳士ってとこか」

    友人「実質この四人での大会になりそうだな」

    武術家「油断していると、意外な相手に足をすくわれるかもしれんぞ」

    友人「ハハ、分かってるって」

    友人「俺としては、お前とは決勝で当たりたいもんだぜ」

    友人「──ところで、こないだお前の家の前を小さな女の子がうろうろしてたけど」

    友人「もしかして、お前のファンなんじゃないか?」

    武術家「女の子が? まさか……たまたまだろう」



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    4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 19:38:39.11 ID:mO0vpL2x0

    三日後──

    友人「オイ、大変だ!」

    武術家「どうした?」

    友人「空手家が……襲撃を受けて、病院送りにされたってよ!」

    武術家「襲撃?」

    友人「ああ、全治三ヶ月の重傷らしい。これじゃ大会出場は無理だ」

    武術家「残念だな……大会では彼とも戦いたかったのに」

    友人「まったくだ、だれがこんなことを……!」


    5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 19:43:57.18 ID:mO0vpL2x0

    武術家の自宅──

    武術家(どうやら空手家は、背後からの一撃で昏倒した後──)

    武術家(全身を打ちのめされたようだ)

    武術家(不意打ち、しかも気を失った相手を打ちのめすという外道ぶりは捨て置けんが)

    武術家(なによりも警戒すべきは、やはりその技量)

    武術家(空手家ほどの達人の背後に忍び寄り、しかも一撃で昏倒せしめるとは……)

    武術家(こんなことが可能な使い手は、日本でも数えるほどしかいないだろう……)


    7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 19:48:59.31 ID:mO0vpL2x0

    プルルルルル……

    武術家(電話か)

    武術家(こんな時間に、いったいだれだ?)ガチャッ

    武術家「はい、もしもし」

    『私メリーさん、今××駅にいるの』

    武術家「?」

    ツーツー……

    武術家(メリーさん……? 外国人?)

    武術家(女の声だったが……切れてしまった……)

    武術家(××駅といえば、この近くの駅だが──)


    8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 19:52:53.43 ID:mO0vpL2x0

    プルルルルル……

    武術家(またか)ガチャッ

    武術家「もしもし」

    メリー『私メリーさん、今コンビニにいるの』

    武術家「なんなんだ、あなたは──」

    ツーツー……

    武術家(また切れてしまったか……)


    9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 19:57:33.48 ID:mO0vpL2x0

    プルルルルル……

    武術家「もしもし」

    メリー『私メリーさん、今△△医院にいるの』

    武術家「おい──」

    ツーツー……

    武術家(△△医院は、すぐ近くにある診療所だ……)

    武術家(──まさか!)

    武術家(徐々にこの家に近づいている……?)


    13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:00:44.69 ID:mO0vpL2x0

    プルルルルル……

    武術家「……もしもし」

    メリー『私メリーさん、今あなたの家の前にいるの』

    武術家「!」

    ツーツー……

    武術家(家の前に……!?)

    武術家(出てみるか? いや、しかし──)


    14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:06:42.86 ID:mO0vpL2x0

    プルルルルル……

    武術家(来た……! 次にかけてくるとしたら、どこからだ……?)

    武術家(まさか家の中に入ってくるなんてことは……)ガチャッ

    武術家「もしもし!」

    メリー『私メリーさん』

    メリー「今あなたの後ろにいるの」

    武術家(殺気ッ!?)


    16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:14:42.38 ID:mO0vpL2x0

    ブオンッ!

    武術家が振り返りざまに、裏拳を放つ。

    武術家(外したッ! ──殺気の主はどこだ!?)

    メリー「声をかけてから反撃まで、0.2秒とかかってない」

    メリー「さっすが、いい反応だね」

    武術家(お、女の子……!?)

    メリー「えいやっ!」

    ベシィッ!

    メリーのローキックが、武術家の足にぶつかる。

    武術家(お、重いっ……!)ビリビリ…

    武術家(この子、ただの女の子ではない……いったい何者なんだ!?)


    18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:20:01.38 ID:mO0vpL2x0

    武術家「君が……」

    武術家「君が、空手家を襲撃したのか?」

    メリー「……だとしたら、どうするの?」

    武術家「空手家がやられたのは、仕方ないことだ」

    武術家「彼とて格闘家、どんな形であれ敗北したことに言い訳はできん」

    武術家「だがそれと、君の行為が許せるものかどうかは別問題だ」

    武術家「背後から不意打ちをしかけ、昏倒した相手を叩きのめす……」

    武術家「格闘家以前に、人として到底許せる行為ではない」

    武術家「もし君が犯人というのなら、君を止めるために、戦わねばなるまい!」ザッ

    メリー「じゃあ始めよっか」ザッ

    武術家(──俺と、同じ構え!?)


    19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:25:53.10 ID:mO0vpL2x0

    武術家(とはいえ相手は子供、なるべく手加減して──)

    ドズゥッ!

    武術家「おぶっ!」

    メリーのボディブローが、武術家のミゾオチをえぐった。

    武術家「ぐ……(なんて突きだ……!)」ゲホッ

    武術家(空手家がやられたのは仕方ない、などといっておいてなんてザマだ)

    武術家(手加減して制圧できる相手ではない!)

    武術家(本気で……やらなくては!)ギンッ

    メリー(うわ……すっごい気迫……)ゾクッ

    メリー「そうこなくちゃね!」サッ


    20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:32:33.66 ID:mO0vpL2x0

    ガッ! パシィッ! ガガッ! ドカッ! ビシッ!

    鋭い攻防が続く。

    武術家「せやぁっ!」シュッ

    リーチで有利な武術家は、蹴りを巧みに使いメリーを懐に入らせない。

    メリー「うぅ~……」

    武術家(思い通りに攻められず、じれてきているな……そろそろ──)ビュッ

    バッ!

    武術家のローキックをかわし、メリーが飛び上がった。

    武術家(──読み通りッ!)

    メリー「!」


    21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:36:41.35 ID:mO0vpL2x0

    メリー(しまった、読まれてたのっ!?)

    武術家(スキだらけだ、あとはこの拳を、この子に──)

    武術家(この子に──)

    一瞬のためらい。

    ガキィッ!

    メリーの飛び蹴りが、武術家の顔面を直撃した。

    武術家「ぐはぁっ!」ザザッ


    23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:42:54.29 ID:mO0vpL2x0

    メリー「あ~あダメだよ、ためらっちゃ」

    武術家「……君こそな」

    メリー「!」ギクッ

    武術家「今の蹴り……全力で放ってたら、俺は今こうして立っていなかったはずだ」

    武術家「攻撃をためらった俺に対し、君もまたためらってしまった」

    武術家「ちがうか?」

    メリー「うっ……」

    武術家「そしてこれでハッキリした」

    武術家「空手家を襲撃したのは、君ではない」

    武術家「よくよく考えたら、本気で俺を倒すつもりなら──」

    武術家「わざわざ電話などかけず、奇襲をかけてきたはずだからな」


    25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:46:43.40 ID:mO0vpL2x0

    武術家「さあ、話してくれ」

    武術家「君の目的はなんだ? なぜ俺と戦い方がソックリなんだ?」

    メリー「…………」

    メリー「あ~あ、もうちょっと手合わせしたかったんだけどな」

    メリー「私はね」

    メリー「あなたを助けに来たの」

    武術家「!?」

    武術家(俺を……助けに……!?)


    26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:52:41.80 ID:mO0vpL2x0

    メリー「この間、この家の近くに怖そうな人がいっぱいいたの」

    武術家「怖そうな人?」

    メリー「うん」

    メリー「で、その人たち、『ここを襲うのか』とか『命令があった』とか話してたの」

    武術家「なんだって……!?」

    メリー「空手家って人が大怪我したニュースは知ってたから」

    メリー「もしかしたら、次はあなたかも……って思ったの」

    武術家「……だからここに来てくれたのか」


    29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 20:57:57.05 ID:mO0vpL2x0

    武術家「だがなぜだ……? なぜ俺を助けに来てくれたんだ?」

    武術家「悪いが、俺は君を全く知らないのだが」

    メリー「知らないのは当然だよ。だって私、元々は人形だったんだもん」

    武術家「人形?」

    メリー「うん……私、持ち主だった女の子にゴミ捨て場に捨てられちゃったの」

    メリー「すっごく憎んだわ、絶対許さないって」

    メリー「動けるようになって、絶対仕返ししてやるんだって」

    メリー「でも、そんな時──」


    30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:03:58.94 ID:mO0vpL2x0


    ──
    ───

    武術家(もうそろそろ10kmか……)タッタッタ

    武術家「ん?(人形が捨ててあるな)」

    武術家(可愛げのある人形だが、ずいぶん雑に捨てられているな)

    武術家(こんな風に捨てられては、人形としても無念だろう)

    武術家「あいにく俺は拾ってやることはしないが──」

    武術家「たとえ捨てられるにしても、せめてキレイなままでいたいだろう」パッパッ

    武術家は人形の汚れを払い、ポーズを整えた。

    武術家「さてと、もう10km走るか」タッタッタ

    人形「…………」


    32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:11:00.65 ID:mO0vpL2x0

    武術家(ああたしかに……そんなことがあったな)

    メリー「とっても嬉しかった……」

    メリー「私、あなたのおかげで恨みがすっかりなくなっちゃったの」

    武術家「そうだったのか……」

    武術家「なんにせよ、恨みが晴れたのであればなによりだ」

    メリー「だから、あなたの家に近づいて、トレーニングを眺めたりしたの」

    メリー「あなたのマネをしてたら、けっこう武術を覚えられたんだよ」

    武術家「!?」

    武術家「まさか……俺のマネをしてただけで……あれだけの実力を備えたのか!?」

    メリー「うん」

    武術家(どうりで構えや戦い方が俺にソックリなハズだ……)

    武術家(正直いって、今の話が一番衝撃的だった)


    33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:15:56.95 ID:mO0vpL2x0

    武術家「話は分かった」

    武術家「ところで……ここに来た時、俺と戦ったのはなんでだ?」

    メリー「えぇ~と、つい今の私がどれぐらい強いか、たしかめたくなっちゃって……」

    武術家「ああ、たしかにその気持ちはよく分かる」

    武術家(これも格闘家のサガか……)

    メリー「ねえねえ、私の武術どうだった?」

    武術家(どうって……)

    武術家(人間ではないとはいっても、女の子がマネだけであそこまで──)

    武術家「な、なかなかだった……まだ俺には及ばないがな」

    メリー「ホント? 嬉しいっ!」

    武術家(他人の才を素直に認められぬとは……俺もまだまだ未熟だ)


    34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:20:22.48 ID:mO0vpL2x0

    食卓に並ぶご飯とみそ汁、アジの開き。

    武術家「ほら、できたぞ」

    メリー「わぁ~! 美味しそう!」

    武術家「わざわざ人間になってまで訪ねてきてくれたんだ。歓迎しよう」

    武術家「恩返しとかは考えなくていい」

    武術家「しばらくゆっくりしていくといい」

    メリー「うん……ありがとう!」

    メリー(よかった……私の思ったとおり、強くて優しい人だった……)


    36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:28:02.37 ID:mO0vpL2x0

    メリー「ところで、今度大会があるんだよね?」

    武術家「全日本格闘大会、か」

    メリー「どういう大会なの?」

    武術家「日本中の実績ある格闘家を集めて行われる大会だ」

    武術家「日本一を決める大会といっても過言ではない」

    武術家「もしいい成績を残せれば、世界大会への道も開かれる」

    メリー「ふぅ~ん、そんなにすごい大会なんだ」

    メリー「あなたの他には、どんな人が出るの?」

    武術家「日本の名だたる格闘家はだいたい参加するが……」

    武術家「優勝候補だといわれていたのは、四人」

    武術家「俺と友人、あとは紳士と空手家だ」

    武術家「だが空手家は、襲撃を受けて出場は絶望的になってしまった……」


    37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:32:55.18 ID:mO0vpL2x0

    メリー「つまり、優勝候補が一人減ったってこと?」

    メリー「ラッキーだって思ってる出場者もいるかもしれないね……」

    武術家「あまり健全な考えではないが、中にはいるだろうな」

    武術家「…………」ハッ

    武術家(まさか……大会出場者の誰かが、優勝する確率を上げるために……!?)

    武術家(だとするなら、俺を狙う理由も理解できる)

    武術家(いやしかし……大会出場者にこんなことをする人間がいるとは思いたくない)

    武術家(だがもし犯人の狙いがそれだとするなら──)

    プルルルルル……


    39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:37:53.75 ID:mO0vpL2x0

    プルルルルル……

    武術家「電話……?」

    メリー「こ、これは私じゃないよ!?」オドオド

    武術家「分かっているよ」ガチャッ

    武術家「もしもし」

    友人『俺だ……』

    武術家「(やけに弱々しい声だが──)友人、どうしたんだ!」

    友人『俺も、やられちまった……』

    武術家「!」


    41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:44:07.77 ID:mO0vpL2x0

    友人の家──

    友人は右腕に大きなギプスをはめ、全身包帯まみれであった。

    友人「よう」

    武術家(なんてことだ……!)

    武術家「入院しなくても大丈夫なのか?」

    友人「動けるっちゃ動けるし、無理いって脱け出してきた」

    友人「……ところで、そっちの嬢ちゃんは?」

    武術家「えぇと──」

    メリー「私メリーさん、武術家さんの親戚なの!」

    友人(ファンじゃなく、親戚だったのか……ハーフか?)

    友人「へえ、お前にこんな可愛い親戚がいたなんてな」

    メリー「やだぁ、可愛いだなんて……やっぱりあなたの親戚になろうかな」

    武術家「お、おいおい……」


    42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:49:19.74 ID:mO0vpL2x0

    武術家「ところで……やられたのはいつだ?」

    友人「さっきお前と別れて、すぐだったな」

    友人「家に帰る途中、後ろからガツンと……」

    友人「──で、目を覚ましたらこのザマになってたってワケだ」

    友人「んでもって、とりあえず金だけ払って病院を出て、お前に電話をかけたんだ」

    武術家「しかし、お前ほどの男が相手を見ることもできずに……」

    友人「ああ、犯人はかなりの達人のハズだ」

    友人「……にしても、情けねえ。くそったれ……!」


    43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:53:50.58 ID:mO0vpL2x0

    友人「大会まで、あと一ヶ月ある」

    友人「完治とはいかねえだろうが、俺は必ず戦えるようになる」

    友人「だから……このことは大会関係者には伏せておいてくれ、頼む!」

    友人「このことがバレたら、出場停止になっちまうかもしれねえから……」

    武術家「ああ、分かっている」

    武術家「お前なら、そういうだろうと思っていた」

    友人「……ありがとよ」

    友人「だが気をつけろよ、もし犯人が大会出場者の誰かだとしたら──」

    友人「次に狙われるのは、お前か紳士のどっちかだろう」


    46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 21:59:31.42 ID:mO0vpL2x0

    帰り道にて──

    メリー「ねえねえ」

    武術家「ん?」

    メリー「さっきの人も、あなたぐらい強いんでしょ?」

    武術家「ああ、あいつはパンチが得意でな」

    武術家「特に疲れ知らずの連打は、浴びた方がうずくまってしまうほどの威力だ」

    メリー「そんな人がやられちゃったんだ……」

    武術家「空手家や友人ほどの格闘家を相手に、こうまでできる人間か……」

    武術家「心当たりがあるとすれば──」

    武術家(いや、やめておこう。証拠もないのに、疑ってはいかん)

    メリー「ねえねえ、私しばらくあなたの家にいてもいい?」

    武術家「ああ、せっかく来てくれたんだ。かまわないぞ、メリー君」

    メリー「君なんてつけないでよ。メリーでいいよ」


    48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:08:02.95 ID:mO0vpL2x0

    武術家はメリーをしばらく家に置くことにした。

    武術家「──道着も似合ってるじゃないか」

    武術家(俺の子供の時のお下がりだが、とっておいてよかったな)

    メリー「私、こういうの着るのはじめてなんだけど……よかった」

    武術家「じゃあメリー、まずは柔軟体操からだ」

    武術家「ちゃんとやっておかないと、怪我をするからな」

    メリー「うん!」

    武術家(わざわざ人形から姿を変えてまで、会いに来てくれたんだしな)

    武術家(それにこの子の強さはホンモノだ)

    武術家(この子と稽古をすれば、きっと俺自身も強くなれるはずだ)

    武術家(本当に俺が狙われているとするなら、戦いに巻き込みたくはないが──)


    49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:10:59.61 ID:mO0vpL2x0

    メリー「ねえねえ私、新しい技を考えたの!」

    武術家「ほう、どんな技だ?」

    メリー「まずね……私が少しずつこの家に近づいていったみたいに」

    メリー「こうやって、少~しずつ相手に近づくの」ソロ…

    メリー「動きはゆっくりなのに、意外と手を出せないでしょ?」ソロ…

    武術家「ああ、カウンターを警戒してしまうな」


    50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:17:01.27 ID:mO0vpL2x0

    メリー「で、相手の間合い近くになったら」ソロ…

    メリー「こうやってステップで──」スタタンッ

    武術家「!」

    メリー「一気に背後に回り込むの!」バッ

    メリー「そしたら“あなたの後ろにいるの”っていって、振り返った相手を──」

    メリー「パンチ!」ビュッ

    メリー「……どう? 名づけて、“メリー拳”!」

    武術家「ハハハ、メリー拳か。なかなか面白いかもしれんな」

    メリー「わぁい、ありがとう!」

    武術家「ただ、一度見られてしまうと、効果が半減してしまうがな」

    メリー「うぅ、たしかに……」

    武術家(背後に回る時の独特なステップ……まったく動きを追えなかった)

    武術家(つくづく恐ろしい才能だ)


    52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:23:48.78 ID:mO0vpL2x0

    大会まで残り一週間となった。

    武術家「では今日の稽古はここまでだ」

    メリー「じゃあ私、お風呂たいてくる!」パタパタ…

    武術家(大会まであと七日……メリーがいっていた襲撃者が来る気配はない)

    武術家(だが、もし大会の優勝候補が狙いであるなら)

    武術家(そろそろ──)

    ガッシャアンッ!

    武術家(ガラスが割られた!?)

    ダダダッ! ダダダッ!

    武術家(複数の足音! 侵入者かッ!)


    54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:30:31.70 ID:mO0vpL2x0

    現れたのは、金属バットを持った覆面二人。

    覆面A「へっへっへ……」

    覆面B「これも仕事なんでな」

    武術家「お前たちは何者だ?」

    覆面A「答える義務はねえなっ!」ブンッ

    覆面B「オラァッ!」ブンッ

    武術家「ハァッ!」

    ズドォ!

    武術家「どりゃあッ!」

    バキィ!

    覆面A「ぐげぇ……!」ドサッ

    覆面B「がはっ……!」ドサッ

    武術家(この二人だけじゃない、まだかなりの数がいるな……!)


    55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:33:33.89 ID:mO0vpL2x0

    バキッ! ドカッ! ガスッ! ベシッ! ドゴッ!

    武術家(一人一人は大したことないが──数が多すぎる!)ハッ

    武術家(しまった、こっちにもいたのか!?)

    覆面C「もらった!」ブンッ

    武術家(いかん──!)



    「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの」



    覆面C「え?」

    ドゴッ!

    覆面Cは後ろから現れたメリーに、一撃で倒された。

    武術家「メリー、すまん! 助かった!」

    メリー「いいのいいの、全部やっつけちゃおう!」


    57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:38:38.53 ID:mO0vpL2x0

    続々と現れる覆面集団。

    武術家(かなり倒したが、まだ10人以上残っていたか……)

    武術家「メリー、背中合わせになって、互いに前方だけに集中するぞ!」ザッ

    メリー「うんっ!」

    メリー「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの!」バッ

    覆面D「ちくしょう、あんなガキがいるなんて聞いてねえぞ!」

    覆面E「こいつら、強すぎるぜ……」

    白覆面「ええい、ひるんでんじゃねえ! てめえら、やっちまえ!」

    武術家(あの白い覆面が、リーダー格のようだな)

    ドゴッ! ボスッ! バシッ! ベキッ! ドゴッ!

    武術家とメリーの実力は、覆面たちを全く寄せつけない。

    武術家(昔はこうやって、友人と一緒に荒くれ者相手に戦ったもんだ)

    武術家(まさかまた、こうして背中を任せられる格闘家に出会えるなんてな)

    武術家(しかもそれが小さな女の子だとは……不思議なこともあるものだ)


    60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:42:44.18 ID:mO0vpL2x0

    武術家「だりゃッ!」

    ドズッ!

    覆面D「ぐへぇっ!」ドサッ

    メリー「あなたの後ろにいるの」

    バキィッ!

    覆面E「ぎゃふっ!」ドサッ

    白覆面(武器を持った30人が、あっという間に全滅だとぉ……!?)

    白覆面(くそっ、せめて命令通り怪我だけでもさせねえと……)

    白覆面(そうだ! やられた奴らのバットをかき集めて──)


    61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:45:46.61 ID:mO0vpL2x0

    白覆面「これでも喰らえッ!」ブオンッ

    白覆面はメリーめがけて、バットをまとめて投げつけた。

    メリー「え!?」

    武術家「危ない、メリー!」ダッ

    ガスッ! ガンッ!

    武術家の右ヒザと左脇腹に、バットが当たってしまった。

    武術家「ぐっ……!」

    白覆面「ヒャハハ、ざまあみやがれ!」

    メリー「よくもやったなぁ!」スタタンッ

    白覆面(えっ、一瞬で後ろに回り込まれ──)

    メリー「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの!」グイッ

    白覆面「ちょっ、待っ──」

    メリーは白覆面を後ろから持ち上げると、ジャーマンスープレックスを決めた。

    ──ズガァン!


    63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:51:06.18 ID:mO0vpL2x0

    武術家「……警察に突き出す前に聞いておこう」

    武術家「なぜ、こんなマネをした?」

    武術家「空手家や友人をやったのも、お前たちの仕業なのか?」

    白覆面「空手家、友人……? なんのことだ?」

    白覆面「俺らはただ……今日アンタを襲撃しろって雇われただけのチンピラ集団だ……」

    白覆面「もっとも、ほとんどが格闘家崩れだがな……」

    武術家「だれに雇われた!?」グイッ

    白覆面「し、知らねえ……本当だ!」

    白覆面「なにしろ、こっちからは一切連絡が取れねえんだ……!」

    白覆面「勝ちは期待してねえから、せめて怪我だけでもさせろっていわれて」

    白覆面「絶対ブッ潰してやるって意気込んでたんだが……やっぱアンタつええな……」

    白覆面「いや……アンタらか」


    64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:55:13.13 ID:mO0vpL2x0

    武術家「メリー」

    メリー「なあに?」

    武術家「今から……紳士の家に行ってみようと思う」

    メリー「たしか、優勝候補の人だよね?」

    武術家「ああ……俺の読みでは、おそらく彼が黒幕だ」

    武術家(空手家と友人を倒す実力者……)

    武術家(それに怪我だけは負わせろ、という指示も明らかに大会を意識したものだ)

    武術家(仮にちがうとしても、疑念を晴らすために行ってみた方がいいだろう)

    武術家「……ぐっ!」ズキッ

    メリー「どうしたの!?」

    武術家「いや、なんでもない」


    66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 22:59:04.30 ID:mO0vpL2x0

    紳士の自宅──

    ピンポーン……

    ピンポーン……

    武術家「反応がないな」

    メリー「出かけてるか、寝てるかしてるんじゃないの?」

    武術家(……失礼)ガチャッ

    武術家(ドアが……開いている……)

    武術家「…………」クンクン

    武術家(かすかに……血の臭い!?)

    メリー「入ろう!」


    70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:06:31.45 ID:mO0vpL2x0

    ダダダッ!

    武術家&メリー「!」

    中では、紳士が血まみれで倒れていた。

    武術家「おい、しっかりしろ!」

    メリー「ひどい……」

    武術家「メリー、救急車を頼む!」

    メリー「うん!」

    紳士「き……君は……武術家君……?」

    武術家「今救急車を呼んだ。安静にしていてくれ」


    71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:10:44.84 ID:mO0vpL2x0

    紳士「この私とした……ことが……うぅっ!」

    武術家(あちこちの骨を折られている……)

    武術家「大した怪我ではないが、しゃべらない方がいい」

    紳士「き、気をつけるのだ……」

    紳士「時計を見る限り……私が気絶させられてから……さほど時間はたってない」

    紳士「私をやった者は……(まだ、近くに……)」ガクッ

    武術家(紳士は犯人ではなく、むしろ狙われる側だったとは……)

    武術家(ではいったい犯人はだれなんだ!?)

    パシャッ

    武術家(ん、今なにか音が──)


    72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:14:27.66 ID:mO0vpL2x0

    119番するメリー。

    メリー「もしもし私メリーさん、今紳士さんの家にいるの!」

    メリー「紳士さんが大怪我してるの!」

    メリー「救急車をお願いしたいの!」

    メリー「!」ハッ

    メリー(今、窓の外にかすかに気配が──)チラッ

    ガサッ……

    メリー(あ……!)


    73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:18:38.20 ID:mO0vpL2x0

    ピーポー…… ピーポー……

    メリー「あの人……大丈夫かな?」

    武術家「俺の見立てでは命に別状はないが、手ひどいやられ方なのはまちがいない」

    武術家「大会直前で、俺と紳士を同時に襲う算段だったのだろう」

    武術家「恐ろしく狡猾で、非道な犯人だ……。許せん……!」

    メリー「…………」

    武術家「ん、どうした?」

    メリー「私……さっき見ちゃったの」

    武術家「なにをだ?」

    メリー「窓の外に──」

    メリー「友人さんがいたのを」


    76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:26:26.71 ID:mO0vpL2x0

    武術家「友人が!?」

    武術家「メリー、下らないウソをつくんじゃない!」

    メリー「で、でも──」

    武術家「…………!」

    武術家「メリー、先に家に戻っていろ!」

    武術家「俺はすぐ友人のところに行ってくる!」

    武術家「だってアイツはすでに襲われているんだぞ!」

    武術家「アイツは……内気でいじめられがちだった俺に、格闘技を教えてくれた!」

    武術家「今の俺があるのも、アイツのおかげなんだ!」

    武術家「こんなことをするワケがないんだ!」

    武術家「アイツのハズがない!」ダダダッ

    メリー「…………」


    77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:30:34.77 ID:mO0vpL2x0

    武術家(アイツのワケが──)ダダダッ

    武術家(なあ、そうだろう!?)ダダダッ



    友人『君に、ケンカのやり方教えてやるよ』

    友人『おぉ! なかなかいいパンチ打てるようになったじゃんか』

    友人『ちっ、囲まれちまったな……お前は俺の後ろを頼む!』

    友人『この団体戦のトロフィーは、俺とお前の一生の宝だな!』

    友人『俺としては、お前とは決勝で当たりたいもんだぜ』



    武術家(友人……)ダダダッ

    武術家(友人、お前はこんなことしないだろう!?)ダダダッ


    81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:35:27.05 ID:mO0vpL2x0

    友人の家──

    武術家は戻ってくる友人と鉢合わせになった。

    武術家「友人……」ハァハァ

    友人「!?」ギョッ

    友人「……どうしたんだ、こんな時間に」

    武術家「お前……包帯とギプスはどうした……」ハァハァ

    友人「ん……ああ、こないだ取れたんだよ。俺、回復が早いからさ」

    ビュッ! パシィッ!

    武術家のパンチを、右手で受け止める友人。

    武術家「今……ためらいもなく右手で拳を受けたな」

    武術家「あれほどの怪我をしていた人間の反応じゃない」

    武術家「──お前なのかっ!?」


    82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:38:41.83 ID:mO0vpL2x0

    友人「なにか証拠でもあるのか?」

    武術家「証拠はない……が、だったらなんで怪我もしてないのにあんな芝居をした!」

    友人「怪我をしてなきゃ包帯やギプスをしてはいけないなんて法はないだろ?」

    友人「それに……仮に俺が犯人だとして、どうする?」

    友人「証拠がなくともお前が騒げば、大会側も俺を出場停止にするかもしれないな」

    友人「俺を出場停止に追い込めば、お前の優勝はほぼ決定的だ」

    友人「やるか? やるのか? え?」

    武術家「お、俺は……お前をずっと親友だと──」

    友人「よせよ」

    友人「いっとくが、俺はお前を友と思ったことはない」

    友人「俺の行く道をジャマする……ただの石っころだ」


    83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:41:44.11 ID:mO0vpL2x0

    武術家「…………」

    友人「話は終わりか? 一仕事終えたばかりで、疲れてるんだ」

    友人「どいてくれ」

    ドンッ

    武術家「うぅっ……!」ズキッ

    友人「今度は大会で会おうや」

    友人「多分俺らは決勝で当たるように組まれるだろう」

    友人「もっとも……その体で勝ち上がってこれたら、だけどな」ニィッ

    バタンッ


    84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:45:58.34 ID:mO0vpL2x0

    武術家の自宅──

    武術家「…………」

    メリー「ねえねえ」

    メリー「友人さんが犯人だったのはショックだと思うけど……」

    メリー「気を取り直さないと!」

    メリー「ほら、大会であの人に勝って、目を覚まさせるとか……!」

    武術家「──うるさいっ!」

    メリー「!」ビクッ

    武術家「子供の頃からずっと親友だと思っていた奴に裏切られたんだ!」

    武術家「気を取り直すなんて……そう簡単にできるものかッ!」


    87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:49:27.78 ID:mO0vpL2x0

    武術家「頼むから一人に……一人にしておいてくれ!」

    メリー「だけど──」

    武術家「ちょっと優しくされたぐらいで捨てられた恨みを忘れるような奴に」

    武術家「俺の気持ちは分かるまい!」

    武術家「……あ」ハッ

    メリー「…………」

    メリー「……ごめんなさい」タタタッ

    武術家「メリー!」

    武術家(くっ……怒りにまかせてなんてバカなことをいってしまったんだ、俺は!)

    武術家(武を志しておきながら、感情の制御もできぬとは……!)

    武術家(メリー……すまん……!)

    この日、メリーが戻ってくることはなかった。


    89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:52:35.94 ID:mO0vpL2x0

    全日本格闘大会、当日──

    武術家も、選手として会場入りする。

    武術家(結局、メリーは戻ってこなかった……)

    武術家(当然だ、どう考えても俺に非がある)

    武術家(今メリーがどうしているのか、俺には見当もつかないが……)

    武術家(せめてメリーがいっていたことだけはやり遂げよう)

    武術家(大会で友人に勝ち、目を覚まさせる!)

    武術家(せめてそれだけは……!)


    90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:55:43.21 ID:mO0vpL2x0

    大会が始まった。

    武術家「だあッ!」

    ベキィッ!

    友人に裏切られ、メリーを傷つけ──

    武術家「はッ!」

    ズドォッ!

    心も体もとても本調子とはいえなかったが──

    武術家「せいッ!」

    バキィッ!

    悪戦苦闘しつつ、武術家はどうにか決勝まで勝ち進んだ。


    91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 23:59:34.24 ID:mO0vpL2x0

    もう一人の決勝進出者は──

    友人「ふん……」

    友人「やはり武術家が上がってきたか」

    友人(精神的にも肉体的にも最悪のコンディションだろうに)

    友人(よくもまあ、勝ち上がってこれたもんだ。腐っても鯛、ってことか)

    友人(だが、あんな動きで通用するのはせいぜい二流まで)

    友人(この俺には通用しねえ)

    友人(このままでも勝利はまちがいないが、念には念をだ)

    友人(お前にはさらなる絶望を味わわせてやる!)


    93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:08:36.31 ID:1tGoSodF0

    決勝戦──

    まもなく試合開始というところで、観客の一部が騒ぎ出す。

    「空手家や紳士に出場できなくしたのは、そいつだ!」

    「武術家がやりやがったんだ!」

    「ふざけんな!」

    武術家「──な、なんだ!?」

    友人(始まったか)ニヤッ

    観客席に次々と「倒れている紳士の横にいる武術家」の写真がばら撒かれる。

    「なんだこりゃ!?」

    「アイツが犯人だったのかよ!」

    「俺は紳士のファンなのに……ふざけんな!」

    友人(チンピラどもに襲われたお前が、紳士の家に来るのは読めていた)

    友人(だから俺は紳士を叩きのめした後、お前の到着を待ち、写真を撮った)

    友人(あとは雇ったサクラどもに写真をばら撒かせれば……四面楚歌の完成だ)

    友人(もうお前を応援してくれる奴なんざ、いないんだよ)


    95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:15:29.51 ID:1tGoSodF0

    ブーブー…… ブーブー…… ブーブー……

    「犯人は武術家だっ!」 「卑怯者めっ!」 「失格にしろ、失格に!」

    サクラに乗せられて、ヒートアップする観客が次々出てくる。

    大会委員が抑えにかかるが、一向に鎮まらない。

    すると──

    友人「みんな、待ってくれ!」

    ピタッ

    友人「武術家がやったことは、たしかに許されないことではある」

    友人「だからこそ俺は、友として必ず彼の優勝を食い止めてみせる!」

    友人「ここはひとつ、どうか俺と彼の試合を見守っていて欲しい!」

    ワァァァァ……! ヒューヒュー……!

    武術家への罵声が、友人への声援にかわる。

    武術家「お前っ……!」ギリッ

    友人「こういう自己演出も、プロ格闘家には必須のスキルだぜ?」

    友人「引き立て役になってもらって悪いなァ、ありがとよ親友」


    96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:21:37.82 ID:1tGoSodF0

    まもなく混乱は収まり、試合が始まった。

    友人「せりゃあっ!」ブンッ

    武術家「くっ」サッ

    武術家は友人のパンチをかわし、蹴りを放とうとするが──

    武術家「ぐう……っ!」ズキッ

    ペシッ

    友人「なんだぁ、そりゃ?」

    バキィッ!

    武術家「ぐはっ……!」

    友人「試合を見てたら分かるぜ、傷んでんだろ? ……右ヒザと左脇腹」

    ドズッ!

    友人の拳が、武術家の脇腹をえぐる。

    武術家「ぐあ……っ!」ガクッ

    友人「決勝戦の試合時間は15分──」

    友人「お前だけは特別にこの大舞台で、たっぷり痛めつけてやるよ」


    98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:29:44.21 ID:1tGoSodF0

    友人の下段蹴りが、武術家の右ヒザにヒット。

    バシィッ!

    武術家「うぐぁぁっ!」

    友人「どうしたどうした? 軽く蹴っただけなのに、痛がりすぎだろォ~?」ニィッ

    友人「ほら、どんどん強くしてくぞ!」

    バチィッ! ドガァッ!

    武術家(ダ、ダメだ……)ヨロッ

    武術家(俺の体は、決勝に来るまでで精一杯だった……!)

    武術家(とても友人にはかなわない……!)

    ワアァァァ……! ワアァァァ……!

    友人「聞こえるか?」

    友人「みぃ~んな、俺を称えている。お前の味方なんざ一人もいやしねえ」

    友人「お前はここで出場者潰しと負け犬の汚名をかぶり、格闘技界から消えるんだ」

    友人「あばよ親友……これからは俺が世界で羽ばたく姿を見ててくれ」


    99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:32:28.72 ID:1tGoSodF0

    友人の目つきが変わる。

    得意の猛ラッシュが始まる。

    ズドッ! ドスッ! ドボッ! バキッ! ドガッ!

    武術家(こ、ここまでか……)

    武術家(俺に、もう味方は一人もいない……)

    武術家(友人……お前に倒されるなら、本望だ……お前は、親友なのだから)

    バシッ! ドゴッ! ベキッ! ガンッ! バゴッ!


    100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:35:28.31 ID:1tGoSodF0

    武術家(メリー……)

    武術家(これもお前にひどいことを、いった報いかな……)

    武術家(謝れなかったのが、せめてもの心残り、か……)

    ズンッ! ガゴッ! バキッ! ベシッ! ドゴッ!

    武術家(もう、次の一撃で倒れ──)グラッ…



    「私メリーさん」



    武術家「!」



    「今あなたの後ろにいるの」


    103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:43:17.62 ID:1tGoSodF0

    武術家(メリー……戻って来たのか……? 今、後ろにいるのか……?)

    武術家「うおあああっ!!!」

    ドゴォッ!

    友人「がはぁっ!」ドザァッ

    武術家の右ストレートがカウンターで決まった。

    友人「な、な、な……!?」

    試合場の外──武術家の後ろにメリーが立っていた。

    武術家「メリー……どうして……!?」

    メリー「ごめんね、遅れちゃって」

    メリー「私が後ろにいるから……最後まで諦めないで!」

    武術家「──ああ!」

    友人「あ、あれは……!?(たしか親戚の子供……!)」

    友人「……ふん」

    友人「たった一人に応援されたぐらいで、どうにかなるもんかよっ!」ダッ


    106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:46:45.87 ID:1tGoSodF0

    メリー「私メリーさん、今あなたの後ろにいるのっ!」

    メリーの応援で、戦況を盛り返す武術家。

    武術家(メリーが後ろにいるのなら、恥ずかしい試合はできない!)バシッ

    友人(くそったれ……! ここに来て、今日で一番いい動きになりやがった!)ガッ

    友人(だったらこっちも戦法を変えるまでだ!)スッ

    友人は無理に攻め込まず、防御主体のスタイルに切り替える。

    武術家「せいっ!」ビュッ

    友人「ふん」サッ

    武術家(くそっ、蓄積してるダメージの差が大きすぎる!)

    武術家(守りに入られては、逆転するのは難しい……!)

    友人(お前の技は全て熟知してる。慎重に戦えば、どうとでも対処できる)

    友人(お前になにか新技でもあれば別だが、んなもんあるわけねえ!)

    武術家(なにか……友人を出し抜く手はなにかないか!?)

    武術家「…………」ハッ

    武術家(あの技なら……通用するかもしれない!)


    107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:52:28.62 ID:1tGoSodF0

    武術家「…………」ソロー…

    友人(な、なんだ!? じわじわとこっちに近づいてきやがる!)

    友人(俺の知らない奥の手か!? ──だとしたらうかつに手は出せねえ!)

    武術家(間合いに入る──寸前!)スタタンッ

    友人(消えた!? ど、どこへッ!?)

    メリー「あ、あの技ってもしかして──」

    一瞬で友人の背後に回り込んだ武術家。

    武術家「俺は武術家、今お前の後ろにいる」

    友人「──ちぃっ!」バッ

    振り返ろうとする友人の顔面に──

    ガゴォッ!

    会心の“メリー拳”が炸裂した。



    武術家(メリー、俺に技を教えてくれてありがとう!)

    メリー(武術家さん、私の技を使ってくれて……ありがとう……)ウルッ


    113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 00:59:27.45 ID:1tGoSodF0

    だが──

    友人「ふっ、ふざけんなぁっ!」ガバッ

    友人「ここまでやったんだ! 負けてたまるかよ……お前なんかに!」ギリッ

    友人「俺は……いつもいつも……お前がうっとうしかったんだよォッ!」ダッ

    持てる力を振り絞り、友人が猛攻に出る。

    ガガガッ! パシッ! ガキッ! ドガッ! ズドドッ!

    しかしそんな友人の意地を、武術家の気迫が一歩も二歩も上回る。

    友人(なんでだ……!)

    友人(身も心もボロボロなはずなのに……なぜ倒れない!?)

    友人(後ろに……あの嬢ちゃんがいるからなのか……!?)

    友人(ならば俺の後ろには……誰かいるのか?)

    友人(いない……)

    友人(金で雇った連中や、俺の本性を知らない観客だけ……誰もいない……)

    友人(いや……)


    116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:07:47.28 ID:1tGoSodF0

    武術家『俺は武術家、今お前の後ろにいる』



    友人(──いた)

    友人(ガキの頃から、お前はずっと俺の後ろにいてくれた)

    友人(なのに、俺は──……)



    ズドンッ!!!



    武術家、渾身の突き。

    友人の体は場外まで吹っ飛び──

    ドザァッ……!

    ──立つことはできなかった。


    118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:13:20.82 ID:1tGoSodF0

    友人「俺の……負けだ……」

    武術家「友人……」

    友人「俺は……俺より後から格闘技を始めて……」

    友人「俺と肩並べるくらい、強くなった……お前に、嫉妬してたんだ……」

    友人「そんなしみったれたことを考える……自分にもずっとムカついてた……」

    友人「気がついたら、俺はどうしたいのか、自分でもワケが分からなくなってた……」

    友人「だから……この大会でどんな手を使っても優勝しよう、お前を潰そうと……」

    友人「他人の力を認める度量もねぇ、ちっぽけな男だ……」

    友人「俺は……お前に友じゃねえといったが……そのとおりだった」

    友人「こんな俺に……友達を作る資格なんて……あるわけ、ねえ……もんな」

    メリー(この人……私にそっくりだ)

    メリー(私も捨てられた時、持ち主だった女の子を恨んだけど……)

    メリー(同時に恨んでいる私自身にも、腹が立ってた)

    メリー(でも──)

    メリー(私が武術家さんに止めてもらったみたいに、やっと止めてもらえたんだね)


    123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:20:48.72 ID:1tGoSodF0

    メリー「ねえねえ」

    メリー「私ね、この一週間で色々とあなたのことを調べてたの」

    友人「俺を……?」

    メリー「うん」

    メリー「で、あなたの家に忍び込んだりしちゃったの」

    メリー「本当は襲撃事件の証拠を探そう、って思ってたんだけど」

    メリー「そしたらあなた──武術家さんと取ったトロフィーとか賞状とか」

    メリー「ちゃんととっておいたでしょ」

    メリー「本当に憎んでるなら……とっくに捨ててるハズだよ」

    友人「……ふっ」

    友人「ふははっ……! すまねえ、俺は、俺は──」

    武術家「もうなにもいうな」

    武術家「俺は今でも、お前を親友だと思っている」

    友人「この……お人好しが……」ツ…


    125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:26:04.60 ID:1tGoSodF0

    一週間後──

    メリー「友人さん……自首しちゃったね」

    武術家「友人なら、ちゃんと罪を償って出てくるだろう」

    武術家「そうしたらまた、これまでのようにアイツと切磋琢磨するつもりだ」

    メリー「そうだよね!」

    武術家「幸いなことに、空手家と紳士も順調に回復しているようだ」

    武術家「今回の件が格闘技界に与えたダメージは大きいが──」

    武術家「きっとまた盛り上がってくれることを祈るよ」

    メリー「だったら、優勝したあなたは世界で活躍して、みんなを引っ張らないとね!」

    武術家「……そうだな!」


    126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:32:40.63 ID:1tGoSodF0

    メリー(でも、もう武術家さんが狙われることはないから)

    メリー(私がここにいる理由もない……)

    メリー(私は……ここから去らなきゃならない……)

    メリー(だってこれ以上いると、迷惑だもんね……)

    武術家「おしゃべりはこの辺にして、と」

    武術家「メリー、今日も稽古を始めるか」

    メリー「え!? でも私はもう──」

    武術家「ん、もしかして、もう他のところに行かねばならないのか?」

    武術家「だとしたら引き止めはせんが……そうか、残念だ」

    武術家「メリーが編み出したメリー拳がなければ、俺は友人に敗れていただろう」

    武術家「だからもっと、色々と教えてもらいたかったのだが──」

    メリー「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」


    128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:39:30.04 ID:1tGoSodF0

    メリー「本当は他に行くところがあるんだけど、そこまでいわれちゃあね」

    メリー「私、しばらくここにいてあげるの」

    武術家「本当か? ありがとう!」

    メリー「そういえば私、メリー拳をさらに速くする方法を思いついたの!」

    メリー「光ぐらい速いって意味を込めて、名づけて……“メリー拳・光”!」

    武術家「“メリー拳・光”!?」

    武術家(なんだか小麦粉を連想させるネーミングだが……)ゴクリ…

    武術家「ぜひ伝授してほしい!」

    メリー「う~ん、ホントは企業秘密なんだけど、しょうがないなぁ~」


    129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:45:27.52 ID:1tGoSodF0

    そして一年後──

    アナウンサー『いよいよ始まりました、世界格闘技選手権!』

    アナウンサー『日本の若きエースが、ついに世界のトップファイターたちに挑む!』

    アナウンサー『武術家の登場だぁーっ!』

    ワァァァァ……! ワァァァァ……! ワァァァァ……!

    武術家「ついにこの時が来た……行くか!」ザッ

    その後ろには、常に一人の少女がいた。



    メリー「私メリーさん、いつだってあなたの後ろにいるの!」



                                         <完>


    130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:46:07.41 ID:VeE3dqEA0


    やるじゃん


    131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:47:14.12 ID:qgQcgUfy0


    うん、あんたのSS好きだわ


    132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:47:19.69 ID:xMuUhigj0


    熱いSSだったぜ


    133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:48:02.71 ID:IXStqNTf0

    乙!!


    134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:48:03.74 ID:8NEqW/L4O

    シンプルだが良かったよ


    135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 01:48:16.80 ID:tE0bfxWX0



    139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 02:00:31.69 ID:lHqrWIvDO

    メリーさん乙!


    140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 02:03:51.92 ID:HQYn8v/P0

    良作だった。また書いてくれよな!


    141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 02:04:17.48 ID:aIw5Q0NX0

    今見つけて最後まで読んだ
    よかった


    142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 02:08:03.43 ID:X10f7qV5O

    乙!
    面白かったぜ。


    143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 02:08:40.29 ID:a/vFbhlN0


    燃えたぜ


    引用元: メリー「今あなたの後ろにいるの」武術家(殺気ッ!?)

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