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    346はいつも晴のちありす

    1: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)16:54:06 ID:38l
    ◆作者からの大事なお知らせ◆

      怒らないでください。
     ※ギャグSSです。


    ―――――――
    ―――


     ある晴れた日の夕方。
     事務所に顔を出したら、ソイツはそこにいた。

    ありす「…………」

    晴「お前、だれ?」



    2: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)16:55:34 ID:38l
    ちひろ「あら、晴ちゃん。おはようございます」

    晴「あー、ちひろさん。おはようございます」

    ちひろ「今日はオフでしたよね。どうしたんですか?」

    晴「いや、宿題だれかに手伝ってもらおうと思って来たんだけど」

    ありす「…………」

    晴「ソイツ、だれ?」

     そう言ってオレは、広くない事務所の端っこ、ちひろさんの席の横に立っているヤツを指差した。

    ちひろ「そうでした。紹介しないといけませんね」

     うつむきがちにモジモジと手を動かすソイツの背中をポンと叩き、ちひろさんはにこりと笑って、黙りこくるソイツに自己紹介を促す。

    ちひろ「今日から私たちの新しい仲間になる、橘ありすちゃんです♪」

    ありす「あの…、こんにちは、橘ありすです。よろしくお願いします」

    晴「ぅぁ…………」

     今度は、自分が黙る番だった。はにかみながら、でも、まっすぐオレを見て話すコイツの声を聞いて驚いた。


     こんな可愛いヤツが、この世にいるのかと思った。

    3: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)16:56:50 ID:38l
    晴「お、おう。よろしく」

     こんなセリフしか言えない自分が情けない。
     ここはアイドル事務所だから、見てくれが可愛いやつはうじゃうじゃいる。でも、声を聞いて可愛いと思うやつは、そんなに多くはない。

    ありす「私、音楽が好きで、音楽を仕事にするのが夢なんです。だから、アイドルになって、たくさんの人に歌を聞いてもらえたらなって」

    晴「へー…。ま、まあ! オレは良い夢だと思うぜ」

    ありす「本当ですか? 嬉しいです!」

     満面の笑顔で喜ぶありすを見て、正直、胸がときめいた。
     この顔は反則だ。イエローカードだ。同じ女だっつーのに、本気で惚れちまいそうになる。

    4: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)16:57:40 ID:38l
    ちひろ「そうだ。もし晴ちゃんが良かったら、ありすちゃんに事務所を案内してあげてくれませんか?」

    晴「オレが?」

    ちひろ「はい。今日晴ちゃんはオフですし、年の近い子の方が、ありすちゃんも気が楽かなと思ったので」

     チラッとありすに目を向けると、遠慮がちに、少しだけ期待を込めた目でオレを見てくる。
     あーくそ、こんなん、絶対断れねー。

    晴「し、しょーがねーな! じゃあ、オレがその役引き受けてやるよ」

    ちひろ「ありがとうございます、助かります♪」

    ありす「あの…、えっと……」

    晴「オレの名前は晴、結城晴。お前と同じアイドルの仲間だ。よろしくな」

    ありす「はい。あの、よろしくお願いします、晴さん」

    晴「よし、じゃあ行くぞありす。しっかりついてこいよ!」

    ありす「はいっ!」



    5: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)16:58:30 ID:38l
     そしてオレたちは、レッスン場や写真スタジオなど、これからしばらく世話になるだろう場所を巡った。
     ありすは、どこに行っても目を輝かせ、ワクワクした気持ちを隠せずにいる。

    ありす「すごいです。私、これからここで、いろんなお仕事ができるんですね」

    晴「おう。オレもアイドルになったばっかだし、割とすぐに同じ仕事ができるかもな」

    ありす「はい、楽しみです! 私、晴さんと、ずっと、ずっと一緒にお仕事がしたいです!」

     ありすにつられて、オレまで自然と笑顔になる。
     コイツと一緒に仕事ができたら、すげー楽しいだろうな。無邪気にはしゃぐありすを見てると、心の底からそう思える。

     だから、

    晴「ああ。オレも、ありすと一緒に仕事できるの楽しみだ!」

     お返しとばかりに、全力の笑顔で、そう答えた。




     ちなみに、宿題は忘れた。

    6: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)16:59:25 ID:38l
     次の日。

    晴「おはよーございまーす」

    ちひろ「晴ちゃん、おはようございます♪」

     事務所の扉を開けると、ちひろさんが出迎えてくれた。

    晴「この、昼でも夜でも“おはようございます”っての、まだ慣れねーな」

    ちひろ「芸能界の慣習ですからね。もうしばらくすれば、自然と言えるようになりますよ」

     相変わらずの笑顔でアドバイスしてくれるちひろさんの言葉を聞き、オレは、昨日ありすが“こんにちは”と言っていたのを思い出した。

    晴「そういやこういうのも、ありすに教えてやらねーとな」

    ちひろ「あら、もう先輩気分ですか?」

    晴「はあ!? そんなんじゃねーって。ただ、昨日も世話したし、ついでに他の面倒もオレが見た方がいいかなってさ」

    ちひろ「ふふ、意外と晴ちゃんって、独占欲が強いんですね」

    晴「だから、そんなんじゃねーって!」

    ちひろ「それなら晴ちゃんには、ありすちゃんのお世話係をやってもらいましょうか♪」

    晴「だからー!!」

    7: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:00:15 ID:38l
     ちひろさんと言い合っていると、扉がガチャっと音を立てて開き、

    「こんにちは」

     と、後ろから声が聞こえた。

    ちひろ「噂をすれば影、ですね」

     この事務所で、出社して一言目に“こんにちは”と言うのは、昨日アイドルになったばかりの、ありすぐらいだろう。

    晴「おう、おはようありす」

     そう言って後ろを振り返ると、そこには、

    橘「は?」

     ジト目で、無愛想に一言だけ言葉を返す、可愛げのカケラもないヤツが立っていた。



    8: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:01:15 ID:38l
    晴「……、ちょちょ、ちひろさんちょっと!」

    ちひろ「はい? 何ですか?」

    晴「アイツ、だれ?」

    ちひろ「だれって、ありすちゃんじゃないですか」

    晴「あれが!? どこが!?」

    ちひろ「どこがって……、どこから見てもありすちゃんだと思いますけど」

    晴「いや、だってさあ!」

     絶対におかしいだろ! ていうか別人だろ!
     オレは必死に、昨日見たありすを思い浮かべながら、身振り手振り交え、ちひろさんに早口で抗議する。

    晴「まずありすって、髪が長いだろ!」

    ちひろ「はい、長いですね」

    晴「それでキレイなストレートでリボンつけてて、服が青っぽくて、いかにも女の子なスカート履いてて!」

    ちひろ「髪がストレートでリボンつけてて、服が青くてスカート履いてて」

    橘「…………」←今言った通りの髪と服装

    ちひろ「やっぱり、ありすちゃんじゃないですか」
    ちひろ&橘『ねー』

    晴「ねー、じゃねえよ!」

    9: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:02:12 ID:38l
    晴「だって、昨日と全然、見た目も雰囲気も違うじゃねーか」

    ちひろ「晴ちゃん。女性っていうのは、化粧や仕草一つで、全く印象が変わるものなんですよ」

    晴「いや、化粧とか仕草とか、そんな問題じゃねーって! 昨日の方が全然可愛かったっていうか、今日は全っ然可愛くねーっていうか」

    ちひろ「もう、失礼ですよ。同じ女とはいえ、相手の容姿をとやかく言うのは」

    橘「そうですよ。だいたいあなただって、人のことあれこれ言えるほど、キレイな格好していないじゃないですか」

    晴「んなっ」

     確かに、いつも事務所に来る前に学校の友達とサッカーやったりしてるから、土埃や汚れであまりキレイな格好じゃないのはその通りだ。
     だからって、昨日今日あったばかりの後輩に、ナメた事言われて黙っていられない。

    晴「お前、昨日オレが事務所の案内してやったこと忘れたのか?」

    橘「覚えてはいますけど、それが何か関係あるんですか?」

    晴「無いけどさ! いや、ないこともねーけどさ!!
     お前新人なんだし、昨日世話になった恩もあるなら、もう少し謙虚な物言いした方がいいんじゃねえか?!」

    橘「はっ、早速先輩ヅラですか。あなたもさほど謙虚ではないところを見ると、さぞかし有名で誰もが知っている大物アイドルなんでしょうね。
     えーっと、結城“雨”さん、でしたっけ?」ニヤニヤ

    晴「てんめー!!」

    10: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:03:08 ID:38l
    ちひろ「はいはい、そこまでそこまで」

     パンパンと手を叩いて、ちひろさんがオレとありすの間に割って入ってくる。

    ちひろ「ほら、晴ちゃんそろそろレッスンの時間ですよ」

    晴「でもちひろさん、コイツが!」

    ちひろ「コイツが、何ですか? ありすちゃんはまだアイドルになったばかりなんですから、もう少し優しくしてあげなくてはダメですよ」

    晴「いや、でも!」

    ちひろ「でもも何もありません!」

     ピシャッと、ちひろさんはオレの言葉を遮り、口答えばかりしてないで、早くレッスンに行きなさいと叱ってきた。



    11: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:03:56 ID:38l
    ちひろ「ありすちゃんも、今日は基礎体力や歌、演技などの素地を見るための個人レッスンです。お二人とも、スタジオに移動してください」

    晴「ちぇ、はーい」 橘「はい」

    ちひろ「それと、晴ちゃん。まだありすちゃんは入ったばかりなので、スタジオまで一緒に連れて行ってあげてください」

    晴「げー、何でオレが」

    ちひろ「ちょうどたまたま、二人のスタジオが隣同士ですから。よろしくお願いしますね」

    晴「絶対たまたまじゃねーだろ。オレは嫌だね。昨日案内してやったんだから、一人で行けばいいんだ」

    ちひろ「晴ちゃん、あまりワガママ言わないでくださいね。これ以上、私を困らせるようでしたら――」

    晴「なんだよ……」

     途端、ちひろさんの顔から笑顔が消え、地に響くような低い声で、言った。

    ちひろ「スタドリ、飲ませますよ」

    晴「はい! 喜んでスタジオまで連れて行きます!」

    12: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:05:13 ID:38l
     そして、スタジオへ向かう道中。

    晴「ったく。なんでオレがこんな役目引き受けなきゃならねーんだ」

     ぶつくさ文句を言いながら、オレはありすを連れて歩いていた。文句は言いたくなるが、でも、スタドリだけは飲みたくない。
     あれは、無限に仕事ができるようになる代わりに、

     人格が壊れる
     金銭感覚が崩壊する
     男が男を好きになる
     髪が抜ける
     ブサイクになる

     などなど、
     ヤバいうわさが絶えない飲み物だからだ。

    晴「お前だって、オレなんかと一緒に歩いても面白くないだろ。なー、ありす」

    橘「馴れ馴れしく私を名前で呼ばないでください。橘と呼んでください」

    晴「またお前、そういう生意気な口ききやがって」

    橘「何か言いたいことでも? お望みでしたら、結城さんにいじめられたと、ちひろさんに告げ口しますが」

    晴「んのやろー…」

     オレの後ろを歩きながら、オレの目を見ることもなく、ありすが淡々と言い返してくる。
     いや、ありすじゃないな。アイツは橘だ。本人がそう呼べと言ってるんだから、それでいいだろ。

    13: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:14:17 ID:38l
    晴「それにしても……」

     昨日のあの橘はなんだったんだ? やたら可愛い奴だって思った記憶はあるけど、今はまっっったく可愛くねーし。

    橘「………………」テシテシ

    晴「昨日のは、何かの勘違いだったんかな」

     初対面で緊張してたから、見た目以上に可愛く見間違えた、みたいな。
     あー、多分それだな。きっとそうだ。どう考えたって橘は可愛くねーし、今だって、仏頂面で何か黒いノート?みたいなので遊んでるし。

    14: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:17:52 ID:38l
    晴「って、おい橘、さっきからいったい何いじってんだ?」

    橘「あなたにそれを教える義務はありません」

    晴「義務はないだろーけど、レッスンにおもちゃを持ち込むのを見過ごすわけにはいかねーよ」

    橘「…………」

    晴「んな、めんどくさそうな顔してにらむんじゃねーって。オレだってめんどくせーけど、後でバレたらオレも叱られるんだから、仕方ねーだろ」

    橘「…タブレットです。色々と記録して、後で見返したりするためです」

    晴「ふーん」



    15: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:18:37 ID:38l
     言われて、少しだけ橘のことを見直した。
     トレーナーがそういった機材を持ち込むことはよくあるけど、アイドルになったばかりの奴が、いきなりそういうことまで気が回るのは素直に感心した。

    晴「意識高い系ってやつか? まあ、別にいいんじゃねーの」

    橘「結城さんは、こういうのを持っていないんですね。まあ、いかにも意識低い系ですし、当然のことですね」

    晴「んにゃろー」

     反論したくはなるが、またちひろさんに怒られるのが嫌なのと、アイドルにあまり前向きではないのも事実なので、言い返さない。

    晴「…………」

    橘「…………」

     こうして、ギスギスした空気のまま黙って廊下を歩いていると、前の方から、

    フレデリカ「ふんふんふふーん♪ ふんふふーん♪」

     騒がしい奴が歩いてきた。

    16: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:19:38 ID:38l
    晴「おー、フレデリカ。お疲れ様ー」

    フレデリカ「おつかれー♪ 晴ちゃん元気してる?」

    晴「まあまあだな。フレデリカはレッスン帰りか?」

    フレデリカ「そうだよー、たっくさん歌って踊ってきたよ」

     そう言った後、フレデリカはその場でクルリと綺麗なターンを1つ決めて、金色の髪をたなびかせた。

    フレデリカ「そしてー」

     そのターンの勢いを残したままビシッとオレの方を指差し、フレデリカは、まん丸な目を見開いてオレに尋ねてくる。

    フレデリカ「晴ちゃんの後ろにいる、カワイイ女の子は誰かな?」

    晴「あー……」

     お世辞にも可愛げの無い橘を見てカワイイだなんて。
     気づかい屋のフレデリカらしい優しい一言だな。そう思いながら、後ろを振り返ったオレは、

    ありす「昨日アイドルになった、橘ありすです♪ よろしくお願いします♪♪」ニコッ

     固まった。

    17: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:20:39 ID:38l
    フレデリカ「ワオ! じゃあありすちゃんは、新人中の新人ちゃんなんだ?
     新人なのにこんなにカワイイ新人なんて、もう新人じゃなくて新カワイイ人だねー」

    ありす「はい! まだまだアイドルの勉強中ですけれど、いつかフレデリカさんと一緒にライブやお仕事ができるよう、一生懸命頑張ります!」

    フレデリカ「うんうん! フレちゃんも楽しみにしてるよ♪ 二人はこれからレッスンかな?
     あまり無理して頑張っちゃうとフラフラのフラデリカになっちゃうから、気をつけてねー」

    ありす「はい、ありがとうございます!」

    晴「…………」

     ぼーぜんとしながら、フンフンと鼻歌を歌って去っていくフレデリカを遠目に見送る。
     え? 昨日の橘は今の橘で、やっぱり昨日の橘は可愛い橘で合ってたってことか? じゃあさっきまでの可愛くない橘はいったい?

    晴「お…、おー、お前……」

     何がなんだかよく分からねーが、とりあえず、どういうことか問い詰めようと橘の方へ振り向くと、そこには、

    橘「は?」

     元の憎たらしいジト目の橘が立っていた。



    18: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:21:34 ID:38l
    晴「いや、は? じゃなくて! さっきのは何なんだよあの可愛子ぶりっ子っていうか何かの変身かってくらい見た目が変わるあれは!」

    橘「何って…」







    ありす「これのことですか?」キャルン

    晴「そうそれだよそれ!」

    ありす「んー、何て言うか、キャラ作り?」

    晴「はあ?」

    ありす「アイドルといえばキャラが命だから」キラッ

    橘「こうやってギャップを作ると言うか」ジトー

    ありす「まあ売れるためなら手段は選ばないようにって」イェイッ

    橘「ちひろさんに教えてもらったので」イ゙エ゙ーイ゙

    晴「ちひろさーん?!」

    19: ありす<ルンルンルーン♪ 2018/11/15(木)17:22:51 ID:38l

    まったくなんなんだよちひろさんはいつもいつも
    優しい笑顔の裏でずるいことばっかり考えてるし
    確かにオレらアイドルを大切にしてくれてるけど
    結局はそれも長く働けるようにしてるってだけで

    20: 橘<ルンルンルーン 2018/11/15(木)17:23:37 ID:38l

    だいたい新人にキャラが命だとかギャップだとか
    変に不純なこと吹き込む前にもっと心構えだとか
    教えた方が大切でそもそも別人じゃねってくらい
    キャラを変えられるこいつがおかしいっていうか

    晴「変なとこで遊んでんじゃねえ橘ぁ!」

    21: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:26:11 ID:38l
    フレデリカ「ノンノン。乱暴な言葉遣いは、あまり感心しないよー」

    晴「うおっ! フレデリカ!?」

     めっちゃビビった。いきなり後ろから声をかけられ、思わず声が裏返る。

    晴「なんだよ、戻ってきたのか」

    フレデリカ「これからレッスンに行く二人に、プレゼントしようと思ってね~」

     そう言ってフレデリカは、オレと橘に、スポーツドリンクのペットボトルを2本差し出した。
     多分、すぐ先の休憩スペースに置いてある自販機で、買ってきてくれたのだろう。

    晴「おー、サンキュー。ありがたく頂くよ」

    橘「…………」

     そう言ってオレは、フレデリカからボトルを受け取る。橘も、黙ったまま、仏頂面でボトルを手に取った。

    晴「おいっ、橘、ちゃんとお礼言えって」

    橘「……ありがとうございます」

    フレデリカ「気にしないでシルブプレ~。それより、ありすちゃんは、さっきとずいぶん雰囲気が変わったねー」

    晴「え、ええーっとそれは……」



    22: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:26:50 ID:38l
     やっべえ、さすがにツッコミ入るよなあ。何か都合のいい言い訳はないものか。
     さて、何と答えればいいやら……。

    橘「あの」

    フレデリカ「ん?」

    橘「フレデリカさんを、 てもいいですか?」

    フレデリカ「んー? そのタブレットで、写真を撮りたいのかな?」

    橘「……はい」

    フレデリカ「オッケー♪ かわいーく撮ってね~」

    橘「…………」

    フレデリカ「はい、エクレア♪」

    23: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:27:30 ID:38l





    パシャモグ




                        .

    24: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:28:05 ID:38l
     うーーーん、いい言い訳、いい言い訳……。
    (いい言い訳いってもいいわけ?)イマイチー
     誰だ今の。まあいいや、とりあえず、別の話題で気をそらせれば――

    晴「よし、そうだ! フレデリカ、次のライブについて聞きたいことが!」

     振り向くと、フレデリカの姿は、廊下のどこにもなかった。

    晴「……ん?」

     橘と写真撮影してたと思ってたけど、どこ行っちまったんだ?
     グルグルと考えごとをしていてよく見ていなかったけど、橘に写真を撮らせた後、すぐに帰ったんだろうか。

    晴「まあ、変な言い訳しなくてすんだから助かったけど……」

     律儀なフレデリカにしては、あいさつもなしに居なくなるのは珍しいな。まあ、たまにはそんな気分の日もあるか。



    25: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:29:05 ID:38l
    橘「…………」

     横を見ると、橘が変わらぬ無表情でタブレットを見つめていた。

    晴「橘、ぼさっしてんなよ。レッスン行くぞ」

    橘「………はい」

     生返事をしながら、橘はタブレットから目を離さない。

    晴「おい、いったいなに見てんだ?」

     気になったオレは、橘の脇に回り、タブレットをのぞき込もうとした。すると、橘は素早くタブレットを胸に抱き、

    橘「……………………」

    晴「なんかしゃべれよ」

     何歩か後ろへ下がってオレから離れ、ジッとこっちをにらんでくる。そして、おもむろにタブレットの背中をオレの方に向けて、

    晴「なんだよ、オレの写真でも撮るつもりか?」

     人差し指をタブレットへ動かし、画面の下の方に触れた瞬間、タブレットのカメラが光り、目の前が真っ白になって、

    26: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:29:39 ID:38l





    パシャモグ




                        .

    27: マタダレカキタヨ! フウキガ! 2018/11/15(木)17:31:05 ID:38l

























                     ヘーイ

    28: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:31:51 ID:38l
    晴「…………………」

     気づくとオレは、事務所の仮眠室で寝ていた。
     後から様子を見に来たちひろさんが、レッスン室近くの休憩所で気を失っていたオレを見つけて、仮眠室まで運んでくれたらしい。

    晴「……、いったい、何があったんだ?」

     目を覚ましてからちひろさんに軽く事情を聴かれたけど、橘とレッスン室へ向かっている途中から、オレの記憶はあいまいだった。
     正直、全く何も覚えていない。

    晴「……、ま、いっか」

     今日のレッスンは、体調不良で休みと連絡してもらえていた。大事を取って、明日も休みになるらしい。
     何が起こったのか全く分からないけど、とりあえず体に変なところはないみたいだし。

    晴「……帰ろ」

     明日のことは明日のことだ。ひと晩寝て起きて学校でサッカーでもすれば、この不安も消えてなくなるだろ。

     とりあえずオレは、家へ帰ることにした。



    29: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:32:54 ID:38l
    ―――――――
    ―――


     そして、数日後。

    晴「おっはよーございまーす」

    ちひろ「おはようございます。あら、晴ちゃん、そのサッカーボールは何ですか?」

    晴「これ? いやー、事務所で暇つぶしするときにちょうどいいかなーって」

    ちひろ「私物を事務所に持ち込むのは、あまり感心しませんね」

    晴「やっぱダメ? でも、ちょこっと、たまーに使うだけだから、ここに置いておきたいなって」

    ちひろ「んー、部屋の中では遊ばない、お仕事に支障がでないようにする、これを守れるなら特別に許します」

    晴「おっしゃ! さっすがちひろさん! サンキューな!」

    ちひろ「調子いいんですから、まったくもう」

    30: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:33:28 ID:38l
     よっし! これでなんもやることねー時でも好きな遊びができるぜ。
     今まではレッスンの空き時間なんか、テレビずーっと見るくらいしかできなかったからな。

    『でねー、フレちゃん、何だかよく分からないとこに行って帰ってきたんだよー』

     そして、いつも見ているそのテレビには今、フレデリカが出演してる番組が映っていた。

    『そこではねー、すっごいナイスバディーな女の人が乾布摩擦して踊ってたリー、
     おっきなオムライスが歩いてたり、なんか腕につける輪っかが空飛んだりしてるんだー』

     アハハハハ フレチャン ウソツイタラアカンデー

    『ほんとだもん、フレちゃん嘘つかないもん!』

    晴「なんかもう、鉄板ネタになってるよなー」

    ちひろ「フレデリカちゃんのことですか? そうですね、すっかり定番になりましたね」

    31: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:34:06 ID:38l
     ここ数日、フレデリカの新しい持ちネタが話題になっている。
     いわく、見たこともない不思議な世界に突然連れていかれ、いつの間にかこっちに帰ってきたらしい。

    ちひろ「いつもフワフワと嘘か本当か分からない話をするフレデリカちゃんが、あんなにキッパリと本当だって言い切る姿は珍しいですからね」

    晴「そのギャップが受けてるんだよな。まあ、そん時にプクってむくれるのが可愛いってのが、一番の理由みたいだけど」

     フレデリカの不思議な話を聞いて、それは嘘だと周りがフレデリカにつっこむ。それを聞いたフレデリカは、嘘じゃないと頬を膨らませて拗ねる。
     そこまでが1セットの単純なネタが大受けし、今やお茶の間の人気者だ。

    橘「おはようございます」

    ちひろ「あら、ありすちゃん。おはようございます♪」

     フレデリカ本人はその話を嘘ではないと強く否定するけど、普通に考えてそんな変な世界があるわけない。
     夢で見た景色を現実と勘違いしているんだろうと、みんなが思っている。つまり、みんな、フレデリカの話は嘘だと思ってる。

    ちひろ「待っていたんですよ、ありすちゃん。実は少し、お願い事が」

    橘「はい、なんでしょうか?」

     たしかに、誰がどう聞いても嘘の話としか思えない。でもオレは、オレだけは、フレデリカの話を嘘だと思えない。
     だって、あの時フレデリカは、橘と話している最中に突然消えて…。そしてオレも、そこで気を失って……。まさか、あのとき橘が何か――

    ちひろ「あそこにある段ボール、ありすちゃんのタブレットにしまってもらえませんか?」

    ありす「分かりました」パシャモグ

    晴「待てまてまてまて」

    32: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:35:14 ID:38l
    晴「いや、本当に待てって!
     ここは、フレデリカの話から橘に疑いを持ったオレが、少しづつ橘の正体に気づいていく場面だろ!? 盛り上がりどころだぞ!
     なのになんでそんな、橘の不思議能力が当たり前のように使われてんだ!?」

    ちひろ「それと、あそこの荷物も少しの間ありすちゃんのタブレットに」

    橘「はい」パシャモグ

    晴「だから、さも当然のようにそのタブレットに物をしまうな!」橘「うるさいなあ」晴「うるさいなあ?!」

    ちひろ「晴ちゃん、ちょっと静かにしてください。ここは事務所なんですから、騒がしいのはダメですよ」

    晴「でもちひろさん!」

    ちひろ「晴ちゃん」ニコッ

    晴「ヒッ! ……えっと、またスタドリ、ですか?」

    ちひろ「うふふ」

    晴「あはは」

    ちひろ「エナドリ、です♪」

    晴「静かにしてます」



    33: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:36:05 ID:38l
    晴「ったく。橘のせいで怒られたじゃないか」

    橘「ヒドイ言いがかりです」

    ちひろ「それにしても、最近のタブレットはすごいですね。なんでも収納できる、こんなに便利なカメラがついてるなんて」

    晴「ふつうのタブレットに、そんな機能はないだろ」

    橘「まったく、結城さんは、なぜそんなに私のタブレットを変な物あつかいするんですか」

    晴「いや、実際変だって!」

    橘「だいたい、すでに私のタブレットに入ったことがあるあなたが、それを疑うこと自体おかしいです」

    晴「は? おれが、橘のタブレットに入った? いつ??」

    橘「どうやら、すっかり忘れてしまっているみたいですね。お望みであれば、今すぐ思い出させてあげますよ」

    晴「いや別に思い出したくな「ではどうぞ」パシャモグ

    34: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:36:41 ID:38l

    ―――
    ―――――――

    「……るちゃん、晴ちゃん」

    晴「…、う、うーん」

    晴「なんだ、オレ、気を失って……」

     ヘーーーーーーーーーーーーーーーイ!!
     フォウッ! フォウッ!
     テクテクテクテク パタパタパタパタ

    「あ、晴ちゃん! やっと起きてくれた、心配したんだよ。大丈夫? オムライス食べる?」

    晴「…………、ここ、どこ」

    「風紀が乱れてますよ! もっと元気出してください!」

    晴「あんた達…、だれ。なんでオレの名前知って……」

    「あー、ほんとに忘れちゃったんだ」

    「まったく。あれだけ濃密に風紀を正してあげたというのに、またも風紀を乱すとは何事ですか」

    晴「え…? いったい、何の話……」

    「んー、どうします?」

    「仕方ありません、もう一度自己紹介から始めましょう」

    「そうですね、では私から」

    35: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:37:25 ID:38l
    響子「私は五十嵐響子、家事手伝いが趣味の15歳です♪」

    清美「私は冴島清美。沖縄出身の15歳、そしてなんと、超☆風紀委員ですっ!」

    晴「……よろしく」

    響子「それで、どうする? オムライスより、ハンバーグのほうが良い?」

    清美「超☆風紀委員ですよ! 超☆! 超☆なんですっ!!」

    晴「いや、何のことかよく分からないけど……」

     イッツアダンサブルッ!!
     もっと熱く、もっとホットに!
     もっと、もっと!!
     ヘーーーーーーーーーーイッッッ!!!
     エクスプロージョンッ! ドカーン

    晴「……ここ、なんなの」

    響子「何って言われても」

    清美「あの子のタブレットの中、としか言えないですね」



    36: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:37:54 ID:38l
    晴「中? ここはやっぱり、タブレットの中なのか? ていうか、タブレットの中になんでこんな広い場所があって、変なものがそこら中にいるんだ!?」

    晴「なんでオムライスが歩いていて!」
     テクテクテクテク

    晴「なんで腕章が空を飛んでいて!」
     パタパタパタパタ

    晴「なんでサッカーボールがカズダンス踊ってるんだよ!」
     シュバババッ、フォウッ!

    晴「て、あれオレのボールじゃねえか?!」

     まさに世界レベルのダンスね!
     イッツァベリーソウルフルッッ!!!
     ユアマイベストパートナー!!

    晴「うるせー! あれはオレのボールだッ!」

    37: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:38:29 ID:38l
    晴「ていうかあんた達、なんでこんなところにいるんだ? 帰らないのか?」

    響子「うーん、それがですね」

    清美「あの子が帰してくれないんですよ。なんでも、管理人が必要とかで」

    晴「誰だよそのひでー奴は。オレがいっちょ文句言ってやろうかって、ちょっと待て…」

    響子「でも、ここも結構居心地が良いんですよね。作りたいお料理は何でも作れますし」

    清美「正しても正しても風紀が乱れますので、正しがいがあります!」

    晴「もしかしてその帰してくれないやつって…、あんた達が言うあの子ってまさか…」

    響子「そういえば、ずっとあの子って言ってきましたけど、最近あの子の名前が分かったんですよ」

    清美「そうですそうです、ここ最近、外であの子が名前で呼ばれるようになりましたから」

    晴「一応聞くけど、あの子の名前って、やっぱり…」

    清美「えっと、たしか――」

    清美&響子『橘ありすちゃん』



    晴「橘ぁ!!」ガバッ

    38: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:39:15 ID:38l
    晴「…………あれ?」

     体を起こし周りを見渡せば、そこは静かな、いつもの事務所だった。もたれかかっていた黒いソファーから、尻がずり落ちる。

    橘「………………」スー スー

     隣を見れば、橘がソファーの反対側で目を閉じ横になっていた。どうやら、寝ているようだ。
     そうか、オレも寝ていたのか。それで、あんな変な夢を見たんだ。

    晴「はは、なんだ夢か。そりゃそうだよな、あんなオカシな世界、あるわけないもんな」

     あははははは。乾いた笑いが口からもれる。そうだ、あんな変な場所、この世に絶対あるわけない。あれは夢に決まって

    『晴ちゃーん』

     バッ!
     自分でも驚くくらい素早く、オレは、オレを呼ぶ声の方に首を振り向けた。そこには、橘のタブレットが転がっていて、

    パッ『あ、画面ついたかな? やっほー』

    『無事に戻れたみたいですね、よかったです!』

    『またいつでも遊びに来てくださいね! たっくさんお料理作って待ってるから♪』

    『こちらへ来るときは、このサッカーボールのように何かお土産をよろしくお願いします! ではまたっ』ブツッ

    39: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:39:55 ID:38l
    晴「……え、何、タブレットの中の世界は、やっぱり現実だったってことか?
     じゃあ、オレがレッスン前に気を失って倒れたのも橘のタブレットに捕まったせいで、てことはオレは、あまりのショックにそのことを忘れてて……」

     ガチャ

    ちひろ「ただいま戻りましたー。って、晴ちゃん、どうかしたんですか?」

    晴「これは夢だ、夢に決まってる、夢に違いないんだ」ブツブツブツブツ

    ちひろ「何か変なものでも食べたのでしょうか…。あ、それより、喜んでください!」

    晴「へ?」

    ちひろ「晴ちゃんのステージデビューが、ついに決まりました!!」

    晴「…はあ。いや、今はそれどころじゃ「ありすちゃんと一緒に!」

    晴「…………は?」



    40: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:40:34 ID:38l
    ちひろ「晴ちゃんとありすちゃんがユニットを組んでデビューすることが、正式に決まったんですっ!
     強く推薦したかいがありました。私、晴ちゃんとありすちゃんはお似合いのペアだって、一目見た時から思ってましたので!」

     ……いやいやいや、どーゆーことだよ。なんでオレが、こんな訳わかんないヤツと一緒に?

    晴「え…っと、…ちなみに、拒否権みたいなのって」

    ちひろ「あると思いますか?」

    晴「いえ…、はい…」

    ちひろ「ということで晴ちゃんは、ありすちゃんを独占してお世話できるようになりました! よかったですね、望みがかなって♪」

    橘「ま、ひとつよろしく頼みますってことで」ポンッ

     いつの間にか起き上がっていた橘が、オレの肩に手をのせる。
     え、なに? オレは、これからずっと橘と一緒ってことか? ていうか、オレはずっと橘の面倒を見続けなきゃいけないのか!?

    橘「これで、“ずっと一緒に”、私とお仕事ができますね」ニヤッ 

     そして、この得体の知れない橘のせいで、これからもずっと、理不尽な目にあい続けなきゃいけないってことか!?!?

    晴「そんなのイヤだああああああ!!!」

    ドザーーーーッ

    ちひろ「あら、ゲリラ豪雨」

    橘「ほら、天気もあなたの名前にちなんで祝ってくれてますよ、結城“雨”さん」

    晴「オレは“晴”だー!!!」



    (多分)続かない

    41: 名無しさん@おーぷん 2018/11/15(木)17:43:35 ID:38l
    終わり!
    ハレグゥパロったSSでした!
    OVA面白いからみんな見てね!



    引用元: 346はいつも晴のちありす

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