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    ヘッドライン

    モバP「白詰草に想いを込めて」智絵里「見捨てないで…!」

    1: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:20:15 ID:KXQ
    5作目です。
    よろしくお願いします。



    2: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:21:47 ID:KXQ

    3: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:22:54 ID:KXQ
    「あの~君、どうかしたの?受付はこっちだよ」

    初めて出会った時、あなたは優しく話しかけて来てくれた。

    「君は臆病者なんかじゃない、だって、今の自分を変えたいと思ったから、勇気を出してここまで来たんだろう?大丈夫、きっと上手くいくさ!」

    不安と恐怖で逃げ出しそうな私の背中を、あなたは優しく押してくれた。

    4: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:23:20 ID:KXQ
    「また会えて嬉しいよ!これから一緒に頑張っていこうね」

    ずっとひとりぼっちだった。そんな私に、あなたは手を差し伸べてくれた。

    「智絵里の信頼に足る男でいられるよう、努力するよ!だから…智絵里もレッスン、頑張ろう?僕も一緒に頑張るからさ」

    レッスンで何度も失敗して、心が折れそうになった。そんな私を、あなたはいつも応援してくれた。

    5: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:23:45 ID:KXQ
    「やったな!智絵里っ、大成功だよ!!よく頑張ったな!!!」

    デビューライブの成功、あなたは私以上に喜んでくれましたね。

    「智絵里はいい子だな~優しくて、いつも笑顔で…まるで天使だな!」

    あなたから優しさを貰ったんです。あなたが傍にいるから、笑顔でいられるんです。



    6: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:24:14 ID:KXQ
    「手を繋いで欲しい?まったく、智絵里は甘えんぼだな~いいよ」

    一緒にいると、どんどん堕ちていくのが分かる。あなたの魅力に。

    「響子の作る料理は世界一おいしいからな~ずっと食べていたいよ。いつもありがとう、響子」

    あなたが、他の女の子に笑顔を向けると心がざわつく。どうして…どうして……?

    7: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:24:46 ID:KXQ
    「わあぁ、本物の四葉のクローバーを見たの、初めてだよ。ありがとう!智絵里。この栞、大事にするね」

    あなたに振り向いてほしくて…女の子としてみてもらいたくて…私、あなたが必要なんです。あなたがいなくちゃ生きていけない。

    「僕にとって、みんな自慢の担当アイドルさ!君達なら、絶対にトップアイドルになれる!!」

    誰もがあなたの優しさに惹かれていく、その優しさを…独占したい、私だけに向けて欲しい……そう思うのは…いけない、ことでしょうか?なら…私は……

    8: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:25:13 ID:KXQ
    「智絵里…?」

    悪い子でも構わない

    9: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:26:23 ID:KXQ
    ~10年前 三重~
    ちえり「お母さん、みてみて!」

    ある日のこと、私はお母さんと一緒に、緑豊かな自然公園に遊びに来ていました。そこで、私は変わったものを見つける。

    母「どうかしたの?」

    ちえり「ほらっ、これだけはっぱが1枚おおいんだ~ほかのは3枚だけなのに!」



    10: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:28:31 ID:KXQ
    母「まぁ、四葉のクローバーをみつけたのね。すごいわ」

    ちえり「やっぱり、めずらしいのかな……?」

    母「そうよ、四葉のクローバーにはね、見つけた人には幸運が訪れる、という言い伝えがあるのよ」

    ちえり「へ~そうなんだぁ……。えへへ、うれしいな……♪」

    11: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:29:01 ID:KXQ
    母「それを持っていれば、きっと幸せになれるわ。大切にするのよ」

    ちえり「うんっ」

    家に持ち帰ったこのクローバーを使って、お母さんはお守りを作ってくれました。
    布を切って縫い、出来上がったお守り袋の中に、押し花にしたクローバーを入れただけの簡単なものでしたが、私にとっては、宝石以上の価値がある宝物でした。
    この出来事をきっかけに、四葉のクローバーは私にとって、特別なモノとなったのです。

    12: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:29:35 ID:KXQ
    お母さんはいつも優しく、物知りで、私に色々なことを教えてくれました。
    綺麗なお花のこと、珍しい植物のこと、お守りや栞の作り方……。
    とっても素敵で、大好きなお母さん。いつか私もこんな大人になれるといいなぁと思っていました。

    13: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:29:49 ID:KXQ
    でも、別れの日は突然やって来たのです。



    14: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:30:19 ID:KXQ
    ~外~
    ちえり「お母さんー、早く早く!」

    母「智絵里?そんなに慌てなくても大丈夫よ?」

    ちえり「だって、ずっと楽しみにしていたから……お菓子作りなんて、わたし初めてだもん!」

    その日、私はお母さんにお菓子作りを教えて貰う約束でした。
    いつもお母さんが作ってくれるおいしいクッキー。それを自分で作れるようになると思い、はしゃいでいたんです。

    15: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:30:43 ID:KXQ
    ちえり「早く来ないと置いてっちゃうよー!」ダッ

    母「…!待って!智絵里っ!」

    ちえり「え…?」クルッ

    母「…っ!」ダッ

    16: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:30:56 ID:KXQ
    キキーーーーッ!ドンッ!

    17: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:31:17 ID:KXQ


    ちえり「う、ううん……」

    地面に強く叩きつけられて、視界が揺れる……後ろから誰かに強く引っ張られたのです。目を開けると、そこには…

    ちえり「お母…さん……?」

    目の前に全身血だらけのお母さんが倒れていました。

    18: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:31:41 ID:KXQ
    母「よ…かっ……た…あなた…が無事………で」

    ちえり「赤い…血……?」フラッ ドサッ

    「誰か車に轢かれたぞ!!!」

    「救急車、救急車を呼べっっ!!!」

    19: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:31:55 ID:KXQ
    薄れゆく意識の中、誰かが大声をだしているのが聞こえました。

    ちえり(お母…さん……)



    20: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:32:24 ID:KXQ
    ~病院~
    ちえり「…あれ…?ここは……?」

    目を覚ますと、真っ白な天井が見えました。ほのかに香る消毒液の匂い。

    看護師「!良かった…!智絵里ちゃん!目を覚ましたのね!」

    ちえり「……わたし…たしか、お母さんとお家に帰る途中で……」

    21: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:32:39 ID:KXQ
    血だらけのお母さん。

    ちえり「―――!!」ゾクッ

    22: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:32:55 ID:KXQ
    看護師「先生に報告しないと…!」クルッ

    ちえり「ま、まってくださいっ!!!」ギュッ

    看護師「智絵里ちゃん?」

    ちえり「あ、あのっ、わたしのそばにお母さんが…お母さんが血だらけで倒れていて……お母さんは無事なんですか!?」

    23: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:33:18 ID:KXQ
    看護師「……それは」

    ちえり「わたしは大丈夫だから……だからっ!お母さんを助けてっ!!お願いっ!!」

    看護師「……」

    ちえり「看護師さん…?」

    24: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:33:34 ID:KXQ
    看護師「その…ね…智絵里ちゃんの…お母さんは…もう……」

    ちえり「……………………え」

    目の前が真っ暗になる。色鮮やかだった景色が黒く染まっていく。
    その時、幸せだった日常が終わりを告げたのです。



    25: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:59:02 ID:KXQ
    ~葬式~
    事故が起きた数日後、お母さんの葬式が行われました。
    数日前まで一緒に笑い合っていたお母さんが事故で帰らぬ人になった。
    その事実を、私は受け止めきることができませんでした。残酷な現実を直視するには、まだ幼すぎたのです。

    26: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)18:59:21 ID:KXQ
    「緒方さん家の奥さん交通事故でなくなったそうよ」

    「なんでも、娘さんを庇って轢かれたとか」

    「まだ若かったのに…旦那さんもお気の毒ですわね…」

    ちえり「……………」

    27: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:00:20 ID:KXQ
    ~緒方家~
    父「智絵里、もう寝なさい。今日は疲れただろう」

    ちえり「お父…さん……」

    葬式が終わり、お家に帰ってきていた私とお父さん。
    私は、お母さんがお家に帰ってくるのを玄関でずっと待っていました。
    ここにいれば、お母さんがいつもの優しい笑顔で帰ってきてくれる……そう信じていたんです。

    28: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:00:46 ID:KXQ
    父「明日から学校だろう?もう…寝た方がいい」

    ちえり「………いや…だ」

    父「智絵里?」

    ちえり「いやだっ!!!だって…だって……!約束したもん!!お家に帰ったら、一緒にお菓子作りするって!!美味しいクッキーの焼き方、教えてくれるって…約束したもんっ!!!」

    29: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:01:13 ID:KXQ
    父「……母さんはもう帰ってこないよ」

    ちえり「知らないっ!!絶対に帰ってくるもん……お母さんはわたしに嘘ついたこと、一度もないもん!お母さんは…お母さんは……!」

    父「……いい加減にしないかっ!!!!」

    ちえり「!」ビクッ



    30: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:01:42 ID:KXQ
    父「母さんはな…車に轢かれて死んだんだよっ!!!智絵里のことを庇ってな……!」

    ちえり「――あ」

    『よ…かっ……た…あなた…が無事………で』

    父「くそっ……!なんで…なんでっ……!!お前だけが生き残って、あの人は死ななくちゃならないんだっ……!!!」ダンッ

    31: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:02:08 ID:KXQ
    ちえり「あ、あ、ああ」

    父「…っ、すまん、言い過ぎた」

    ちえり「……」

    父「と、とにかく、明日も早い、もう寝るんだ、いいな?」スタスタ バタン

    32: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:02:24 ID:KXQ
    ちえり「……わ、わたしが…わたしが……?」

    お母さんを殺したんだ

    33: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:03:16 ID:KXQ
    どんなに悲しく、堪え切れない思いをしようが、変わらず次の日はやってきます。
    学校に通い始めた頃は、様々な人に声を掛けられました。
    同情する人、励ます人、興味本位で事故のことを聞いてくる人。
    人それぞれでしたが、それも数日間だけ。1週間もたてば、皆の関心は別の所に移り、すっかり忘れられてしまいました。
    かつて仲のよかった友達もいなくなり、それどころか、先生達までもが私のことを腫れもの扱いするようになりました。
    家にも、学校にも、自分を支えてくれる人は誰もいない。
    気がつけば、私はひとりぼっちになっていました。

    34: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:03:50 ID:KXQ
    数年後、私は、お父さんに連れられて、東京へ引っ越しすることになりました。
    多分、お父さんは、新たな地で一から人生をやり直そうとしていたのでしょう。
    三重には、お母さんとの思い出がたくさんあります。どこへ行っても、お母さんの事を思い出してしまう。
    きっと、お父さんにはそれが耐えられなかったんです。



    35: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:04:14 ID:KXQ
    ~緒方家~
    父「智絵里、大切な話があるんだ…聞いてくれるか?」

    ちえり「お父さん……?」

    お父さん「父さんな…再婚しようと思うんだ」

    ちえり「……再婚」

    36: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:04:34 ID:KXQ
    父「新しい職場の同僚なんだがな。彼女となら、きっと幸せな家庭を築けると思うんだ…どうかな……?」

    ちえり「……お父さんが決めた人なら…いいと思う……」

    父「そ、そうか!良かった。きっと、智絵里も気に入ってくれると思うぞっ」

    ちえり「………」

    ちえり(お母さん以外の人なんて……)

    37: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:05:12 ID:KXQ


    新母「初めまして!――といいます。智絵里ちゃん、これからよろしくね」

    ちえり「……よろしくお願いします」

    新母「そんなに固くならなくてもいいのよ?今日から、あなたのお母さんになるんだから」

    ちえり「………」

    新母「あ、あら?」

    38: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:05:58 ID:KXQ
    父「は、ははは、智絵里はシャイな子だから…ね。まだ突然のことで戸惑っているんだろう。これから仲良くなっていけばいいさっ、なっ?」

    新母「そ、そうねっ、これから時間はたくさんあるものっ」

    ちえり「………」

    数週間後、私とお父さん、再婚相手の女性、3人での家族生活が始まりました。
    話してみると、確かに明るく、丁寧で、綺麗な人でした。でも……

    39: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:06:13 ID:KXQ
    ちえり(わたしのお母さんは……ひとりだけだもん……)



    40: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:07:02 ID:KXQ
    それから、――さんは、積極的に私に話しかけてくるようになりました。
    多分、早く母親として認めてもらいたかったのでしょう。
    でも、私はどうしても彼女のことを母親として認めることができませんでした。
    むしろ、無理やり距離を詰めてくる彼女に対して、ある種の拒否感を抱いてしまっていました。
    それに気づいていたかどうかは定かではありませんが、彼女の方も私に対し、自然と、あまり関わり合わないようになっていきました。
    それでも、表面上は親しくしていたと思います。

    41: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:07:18 ID:KXQ
    ……数年後、そんな歪な家族関係に亀裂が走る

    42: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:07:48 ID:KXQ
    新母「ねえ、あなた…最近やけに帰りが遅いけど、もっと早く帰ってこれないの?」

    父「しょうがないだろう…仕事が忙しいんだ。その分遅くなるのは当たり前だろう」

    新母「でも…私達、結婚してもうだいぶ経つじゃない。そろそろ子供が欲しいのよ」

    父「子供って…智絵里がいるじゃないか」

    43: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:08:05 ID:KXQ
    新母「あの子は……私が産んだんじゃないもの…それに、全然懐かなかったじゃない…!私は、自分自身の子供が欲しいのよ」

    父「あのなぁ、今でさえ厳しい生活をしているのに、子供があと一人増えてみろ、どう養っていくつもりだ」

    新母「それは…あなたの稼ぎが少ないからこうなっているんでしょうっ!!」

    父「……なんだと」

    44: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:08:23 ID:KXQ
    新母「事実じゃない。そのせいで、碌な買い物もできやしない」

    父「おまえ…!俺がどんな思いをして、毎日働いているのか、理解してそんなこと言っているのかっ!!」

    新母「旦那が家のために働き、金を稼ぐのは当たり前のことでしょう?」

    父「…そんなに金金言うのなら、お前も働けばいいじゃないか…!」



    45: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:08:44 ID:KXQ
    新母「私はこの家の家事を全てやっているんです。仕事をしていないと言われる筋合いはありません。ただでさえ、お荷物の面倒も見なきゃいけないのに…これ以上どう働けっていうのよっ!!」

    父「……あの人なら…そんなことは言わなかったのに…」

    新母「……なんですって…?」

    父「あの人は、お前のようなワガママな女じゃなかった…って言ってるんだよ」

    46: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:09:36 ID:KXQ
    新母「また…あの女の話をするのね……!過去に囚われてばかり…情けない…」

    父「お前のような奴と一緒にいれば、嫌でも思い出すよ」

    新母「……っ…!」バタン

    47: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:10:12 ID:KXQ
    智絵里「!?――さん……」

    新母「……アンタが…アンタみたいな奴がいるから……!」ギリッ 

    智絵里「……あ」

    中学に通いはじめた頃、父と――さんは毎日のように喧嘩をするようになりました。
    でも、私には止める術はありません。その資格もない。
    私が…私なんかがいるから……こんなことが起きるようになってしまったんですから。

    48: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:10:39 ID:KXQ
    ~中学校~
    智絵里「……」ガラガラ

    「うわっ、また来たよ、あの根暗女…」

    「どの面下げて来ているんだろうね」

    「ホント、死ねばいいのに」

    智絵里「………」

    49: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:12:58 ID:KXQ

    中学2年の頃、私はとある男子生徒に告白されました。
    その人は、運動部で期待のエースと呼ばれていたらしく、女子生徒からの人気も高かった生徒でした。
    そういったことに興味がなかった私にとって、それは迷惑以外の何物でもありません。
    告白を断った次の日には、その話が学校中に知れ渡り、そのせいか、多くの女子生徒から顰蹙を買うようになったのです。

    智絵里(死ね…か……)

    学校では嫌われ者、家では邪魔者。私は誰にも必要とされないソンザイだったんです。
    消えたい、死んでしまいたいと思ったことは1度ではありません。
    それでも、お母さんが命を捨ててでも救ってくれた命、それを無駄にすることなんてできません。それに…




    50: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:13:22 ID:KXQ
    智絵里(私なんかが死んだところで……天国になんて、いけるはずがない……)

    今更死んだところで、もう二度とお母さんには会えないのですから。

    51: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:14:02 ID:KXQ


    高校生になり、同級生からのいじめはなくなりました。
    でも、今までずっと周囲との間で壁を作ってきた私に友達ができるはずもなく、学校ではずっと孤立していました。
    そんな私が16になった年のある日のこと…

    52: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:14:24 ID:KXQ
    ~高校~
    同級生A「ねえねえ!ちょっと見なさいよっ、これ!」

    同級生B「な、なんだよ、いきなり?」

    智絵里「……」

    同級生A「ほらっ、ここの記事っ!」

    53: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:14:52 ID:KXQ
    同級生B「え~なになに…シンデレラプロジェクト企画オーディション…君もアイドルとして輝こう…?」

    同級生A「すごくないっ!?応募すれば、あの有名な346プロでアイドルデビューできるかもしれないのよ!」

    同級生B「はぁ…346プロって、なに?」

    同級生A「は?あんた、そんなことも知らないの?」

    54: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:15:43 ID:KXQ
    同級生B「べ、別にいいじゃないか!アイドルなんて興味ないんだし…」

    同級生C「346プロダクション。老舗でありながら、常に新しい流行を取り入れることを信条としている芸能事務所。今日、新しくアイドル部門が設立され、シンデレラプロジェクトを発足。数々の人気アイドルを輩出している」

    同級生B「く、詳しいね」

    同級生C「勉強…したから…」



    55: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:16:04 ID:KXQ
    同級生A「ほらぁー!コイツでも知っているのに…あんただけよ?今時346プロを知らないのは」

    同級生B「う、う~ん…」

    同級生C「大丈夫。今からでも遅くないわ。これから一緒に知っていけばいいのよ」

    同級生B「そ、そうかな…」

    56: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:16:44 ID:KXQ
    同級生C「五十嵐響子のドキドキ?お料理教室……毎週録画しているの、一緒に見ましょう?」

    同級生B「ドキドキお料理教室?」

    同級生C「うん…私のお気に入りなの……美味しいお料理の仕方を教えてくれる人気番組よ……きっとB君も楽しめるわ」

    同級生B「料理かぁ~少し興味が湧いてきたかも。今日観に行ってもいいかな?」

    同級生C「うん…待ってる…」

    57: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:17:07 ID:KXQ
    同級生A「ちょっ、ちょっと、何勝手に話進めているのよ!アタシも混ぜなさい?」

    同級生C「……じゃま」

    同級生A「なんですってぇぇぇー!!」

    智絵里(………アイドル、かぁ…)

    58: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:17:25 ID:KXQ
    ~公園~
    智絵里「346プロダクション シンデレラプロジェクト企画 新人アイドルオーディション。経験、未経験を問わず大歓迎……」

    学校帰り、何の気なしに立ち寄った公園でスマホを起動し、クラスの人達が話していた346プロの公式サイトを見る。そこには、確かに新人アイドルの募集要項が掲載されていました。

    智絵里「………」

    59: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:18:01 ID:KXQ
    気がつけば、コンビニで履歴書を買い、証明写真ブースでぎこちない笑顔の写真を撮り、アイドルに応募するための書類を作成し終えた私は、ポストの前に立っていました。
    別に、本気でアイドルになれると思っていたわけじゃありません。
    思春期の子供が、親や先生に反発するため、髪の毛を染めたり、たばこを吸ったりするようなものだったんです。
    緒方智絵里という人間が、たしかに存在する、それを証明したい……たったそれだけのことでした。



    60: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)19:18:45 ID:KXQ
    震える手でポストに手を伸ばす。投入口に封筒を入れた瞬間、私は逃げるように家へ帰宅しました。
    私なんかが選ばれるはずがない、ちょっとした気まぐれで、後々笑い話になるようなこと。
    そんな思考が、家に着いてからもずっと頭の中でグルグルしていました。
    1週間後、そんな私宛に届けられた1通の手紙。一次審査通過、オーディションの開催日時を知らせるものでした。

    61: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:01:50 ID:KXQ
    ~346プロ 第1芸能課~
    P「新人アイドルのオーディション?」

    仕事の合間時間、担当アイドル達と一緒に休憩をしていた僕に、同僚のプロデューサーが話しかけてきた。

    同僚P「ああ、今度、ウチの課主催のオーディションが行われることは知っているよな?」

    P「ああ」

    62: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:02:26 ID:KXQ
    第1芸能課主催のオーディション…ここの課に所属するプロデューサー達が多数、面接官として参加するという話を聞いてはいた。

    同僚P「本当は俺も参加するつもりだったんだが…俺はもうLiPPSの5人を担当しているからな…辞退することにしたんだ。けど、せっかくだし、お前が代わりに参加してみないか?」

    346プロでは社長の意向により、プロデューサーとアイドルの間で強い信頼関係を結ぶことが重視されている。
    そのため、一部例外はあるものの、基本的には1人のプロデューサーにつき、5人までアイドルを担当するようにと定められている。

    63: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:03:02 ID:KXQ
    同僚P「別に無理強いするつもりはないよ。もし既に目星をつけている女の子がいたり、自分でスカウトしたいっていうのなら…この話は聞かなかったことにしてもいい。でも、少しでも気になるのなら…参加してみてもいいと俺は思う。きっといろいろ勉強になるはずだ」

    P「う~ん…」

    響子「ま、まさか、もう次の女の子に目星をつけているんですかっ!?」

    P「え?いや、そんなことはないけど」

    響子「…ほっ」

    64: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:03:49 ID:KXQ
    ゆかり「オーディション…そういったものもあるんですね…皆さんはどうでしたか?」

    卯月「私はプロデューサーさんにスカウトされたよ!」

    美穂「私は社長さんに…響子ちゃんも確か、プロデューサーさんにスカウトされたんだったよね?」

    響子「うん!」

    P「……」



    65: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:04:45 ID:KXQ
    今思えば、僕の担当アイドルは皆、スカウトされてここにいるんだよな…卯月はもともと他のプロダクションでアイドルとして活動していたから、例外かもしれないけど……よしっ!

    P「僕、参加してみるよ。そのオーディションに」

    オーディション参加者の大半は、自らアイドルになりたいという強い意志を持ってやって来る女の子達だろう。
    それらが、どういった存在なのか…プロデューサーとして、知っておくべきだと思う。

    66: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:05:12 ID:KXQ
    同僚P「そうか、わかった。それじゃあコイツを渡しておくよ」スッ

    P「これは…」

    同僚P「当日、俺が面接する予定だった子達の資料だ。一度、目を通しておくといい」

    P「そうか…ありがとう。参考にさせてもらうよ」

    67: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:05:41 ID:KXQ
    同僚P「ああ。さて、そろそろ昼だし俺も少し休もうかな。最近、近くに美味しい定食屋ができたんだ。お前も来るか?」

    P「いや、今日は遠慮しておくよ、世界一美味しいお昼ご飯が待っているからね」

    響子「…♪」ムフーッ

    美穂「響子ちゃんの手料理、すっごく美味しいもんね!」

    卯月「うんっ、頬っぺたが落ちそうになるよねっ」

    ゆかり「そうですね…わたしも、響子ちゃんが作るお料理…好きです…♪」

    68: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:06:05 ID:KXQ
    同僚P「そうか~いいなぁ、担当アイドルに手料理を作ってもらえるなんて…俺の担当達なんて、二言目にはジッケンに付き合えだの、買い物に連れていけだの、飯奢れだの、キスしろだの…問題児だらけさ。美嘉だけだよ、優等生なのは…」ブツブツ

    奏「あら?誰が問題児ですって?」

    同僚P「げっ」

    志希「どうも~問題児2号のしきちゃんで~す」ガバッ クンカクンカ

    同僚P「うわぁっ!どこから出てきやがった!?」ビクッ

    69: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:06:30 ID:KXQ
    フレデリカ「同じく、問題児3号のフレちゃんでーす♪」ハロー

    周子「プロデューサーさ~ん?今日もお昼おごって~、おなかすいた~ん」

    美嘉「や、やっほ~☆」

    同僚P「あのなぁ、お前らだってそれなりに稼いでるだろ!?わざわざ俺みたいな安月給にたかりに来るなよ…今月ピンチなんだって!!」



    70: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:06:53 ID:KXQ
    奏「うふ、なら、私が養ってあげてもいいのよ?代わりに、貴方の唇、戴くけど」スッ

    同僚P「や、やめないか//」

    志希「それならあたしだってー!プロデューサーのエキスがたーぷり滲み込んだシャツ、提供してくれるなら、面倒みてあげるよ~どう?悪くない取引でしょ~」

    同僚P「お前は面倒みられる側だろうがっ」

    71: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:07:20 ID:KXQ
    フレデリカ「だからさー。フレちゃんのお家に来ればいいんだってー!パパもママも大歓迎だよ~♪」

    同僚P「俺は宮本家に婿入りするつもりはないよ!」

    周子「…一緒に食べなきゃ、意味ないじゃん」ボソッ

    同僚P「は!?なんか言ったか!?」

    周子「な、なにも言ってないし///」アセアセ

    美嘉「プロデューサー…手料理食べたいんだ…頑張ってみようかな…?」ボソッ

    72: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:07:51 ID:KXQ
    奏「ほら、早く決めなさい?私にその唇を捧げるか、食事に連れていくか…」そ~

    同僚P「わかったわかったから!顔近づけんな//は・な・れ・ろ!」グイ

    奏「もう…つれない男ね」

    志希「イエ~イ!おごりですって、宮本さん?」

    フレデリカ「そうですわねー!一ノ瀬さん?」

    周子「ふふっ、ゴチになりま~す♪」

    同僚P「まったく…こいつら…」

    73: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:08:15 ID:KXQ
    美嘉「あ、あのさ、プロデューサー。アタシは自分の分、出すからさ」

    同僚P「いいっていいって、美嘉にはいつも色々世話になってるからさ。こんな時くらい大人しく奢られてろって」ポンポン

    美嘉「あ、ありがと…へへへ///」

    志希「ああっー!贔屓よくないんだー!あたしもあたしもー」

    フレデリカ「そうだそうだー!」

    同僚P「ああーうっさいうっさい!早く行くぞっ」スタスタ

    74: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:08:36 ID:KXQ
    周子「そんじゃ、またねーみんな~」フリフリ

    奏「ふふふ、またね?」スタスタ

    P「あ、ああ……すごいなぁ、同僚P…モテモテじゃないか…」

    響子「えっ」

    美穂「へ?」

    卯月「はい?」

    ゆかり「?」



    75: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:09:02 ID:KXQ
    P「え?な、なんかおかしなこと言ったか?僕」

    響子「………はぁ」

    美穂「………お兄さんの鈍感」ボソッ

    卯月「プロデューサーさん……」ヤレヤレ

    ゆかり「そんなことないです…プロデューサーさんも負けないくらい、素敵ですよ」ニッコ

    76: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:09:33 ID:KXQ
    ゆかり「そんなことないです…プロデューサーさんも負けないくらい、素敵ですよ」ニッコリ

    77: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:10:13 ID:KXQ
    P「そ、そうかな?あははっ!…て、照れるな」カアァ

    響子「…そうですよっ!プロデューサーは宇宙一かっこいいですからっ」ズイッ

    卯月「はいっ!プロデューサーさんは私達みんなの、大切な人ですから!」ニコニコ

    P「お、おう?ありがと?」

    美穂「筋金入りの鈍感ですけどっ…」ハァ~

    78: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:10:42 ID:KXQ
    ~オーディション会場~
    P「少し遅くなってしまったな…急がないと」タッタッタ

    オーディション当日、直前の営業が長引き、予定の時間より少し遅めに会場についた僕は急いでちひろさんや他のプロデューサーとの集合場所へと向かっていた。辺りを見渡せば、オーディションを受けに来たであろう少女達が数多くいた。

    P「みんな張り詰めた表情をしているな…当然か……あれ?」ピタッ

    79: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:11:14 ID:KXQ
    大勢が会場入りをする中、一人の女の子が出入り口であたふたしているのが見えた。
    受付の位置が分からなくて、困っているのかな?

    P「…放っておくことはできないよな…よしっ」スタスタ

    幸い、まだ時間はある。早めに済ませれば十分間に合うだろう。



    80: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:11:40 ID:KXQ


    智絵里「ううう……お、オーディション会場って…ここ……?ひ、人がいっぱいで……こ、こわい…」

    智絵里「やっぱり、私がアイドルを目指すなんて……無理かも……。このままこっそり帰ろう……。帰って、忘れちゃおう……」

    ひとりでやって来たオーディション会場。今まで、碌に人と関わってこなかった私にとって、人込みは恐怖以外の何物でもありませんでした。会場の空気を前にすっかり怖気づいてしまった私は受付もできず、オロオロしていました。そんな時です。

    81: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:12:12 ID:KXQ
    男性「あの~君、どうかしたの?受付はこっちだよ」

    智絵里「きゃぁっ!?す、すみませんっ!ごめんなさいっ!許してくださいっ!わたし、アイドルになりたいなんて……もう二度と言いませんからっ……!」アセアセ

    男性「お、落ち着いて」

    智絵里「あっ、はい……あの、大きい声を出してごめんなさい……。ここの、関係者ですか……?事務員さんかな……?」

    82: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:12:41 ID:KXQ
    男性「え~と、受付を探しているんだよね?場所はこっちだよ。早くしないと締め切っちゃうぞ」

    智絵里「受付はこっち……?い、いえ、私は……その……帰ろうかと……」

    男性「え!?ど、どうして」

    智絵里「そ、その……私、小さい頃から引っ込み思案な性格で……。暗くて……臆病者な……ダメな子なんです……。こんな私をみて、周りの人にも嫌われて……」

    男性「……」

    83: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:13:01 ID:KXQ
    智絵里「でも、いつか違う自分に……弱虫な私から変われたらって。だからって……アイドルになろうだなんて……そんなつもりはなかったんですけど……」

    智絵里「なので、書類をポストにいれるだけで勇気を使い果たして……まさか、オーディション審査に進むなんて思わなくって……。あのときは、どうかしていて……」

    男性(……この子)

    智絵里「あっ、あのっ、ごめんなさい、私、事務員さんにこんな話……。でも、お話聞いてくれて、ありがとうございました……。最後に、いろいろ話せてすっきりしました……」

    84: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:13:26 ID:KXQ
    男性「あ、あのさ、君、アイドルにはなりたくないの?」

    智絵里「なりたくないっていうか……なれるわけないと思います……。それに、受付時間ももう終わりだし……」

    男性「大丈夫!僕からも受付スタッフさんにお願いしてみるから!」

    智絵里「え……?でも……」



    85: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:13:51 ID:KXQ
    男性「君は臆病者なんかじゃない、だって、今の自分を変えたいと思ったから、勇気を出してここまで来たんだろう?大丈夫、きっと上手くいくさ!」ギュッ

    智絵里「わ、あ、あのっ」

    男性「ほらほら、いくよ~早くしないと本当に間に合わなくなってしまう」タッタッタ

    智絵里「え、えええっ!」とてとてとてとて

    86: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:14:18 ID:KXQ


    事務員さんに手を引かれて受付まで連れてこられた私は、なし崩し的にオーディションへと参加することになりました。少し強引な人だったけど、私なんかに親身になってくれた人は本当に久しぶりで……少し、嬉しい気持ちになりました。

    男性「緒方さ~ん!ファイト~!!君なら絶対に大丈夫だよー!!」ブンブン

    ……ちょっとだけ、子供っぽい人ですけど。

    87: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:14:40 ID:KXQ


    P「……行ったか」

    緒方智絵里さん、あの子ならきっと、最高のアイドルになれる。僕はそう確信していた。

    P「やれやれ、オーディション前にトップアイドルの卵、見つけちゃったかな」

    ちひろさん達にも報告しないと……素敵な子、見つけましたよって。

    88: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:15:15 ID:KXQ
    ~緒方家~
    オーディションを終え、私はお家に帰ってきていました。
    面接官との会話では、お世辞にも上手に話せていたとは言えなかっただろうけど、自分の正直な気持ちを話すことはできたと思います。
    これもすべて、あの事務員さんが私を応援してくれたおかげです。

    智絵里「……また…会えるといいなぁ……」

    89: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:15:54 ID:KXQ
    でも、一つだけ気になったことがあります。面接官が何人も並ぶ中、一人だけアルファベットのPの形をした被り物をしている人がいました。
    どうしてだろう……?

    智絵里「アイドルの面接をする時の決まり事なのかな……?」

    数日後、また私宛に一通の手紙が送られてきていました。中を開けると、そこには…



    90: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:16:29 ID:KXQ
    ~346プロ 第1芸能課~
    智絵里「し、ししし、失礼しますっ」

    まさかのオーディション合格通知を受け取ってから数日後、私は346プロの第1芸能課…?という場所に来ていました。
    途中で道に迷ってしまった時、親切な女の子が場所を教えてくれたりもしました。
    もしかして、アイドルの子だったのでしょうか。

    女性「あら?あなたは…」

    智絵里「お、緒方…智絵里……ですっ。あ、あの、通知をもらって…きょ、今日、事務所に来るように……と書かれていて……そ、その……」

    91: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:16:53 ID:KXQ
    ちひろ「ああ!あなたが例の…はじめまして、智絵里ちゃん。私は、ここでアシスタントを勤めさせてもらっている、千川ちひろといいます。ようこそ第1芸能課へ!」

    智絵里「は、はじめましてっ……」

    ちひろ「ふふっ、そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。今、あなたの担当になるプロデューサーを呼んできますから、そちらの控え室で少し待っていてくださいね」

    智絵里「は、はい……ありがとう……ございます……」

    92: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:17:23 ID:KXQ


    千川さんに案内された控え室に入り、息を整える。
    ほ、本当にアイドルの事務所に来ているんですね……

    智絵里「う、うう……緊張してきた……」

    トントン

    智絵里「は、はいっ!」ビクッ

    ドアを叩かれ、中に人が入ってくる。その人は…

    93: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:17:46 ID:KXQ
    智絵里「………えっ」

    変な人「失礼しますっ、よく来てくれたね!緒方智絵里さん」

    そこには、変な被り物を被った人が立っていた。アルファベットの……P……?

    智絵里「……え…あっ……」

    94: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:18:14 ID:KXQ
    変な人「あ、あれ?おかしいな、これを被れば、ウケ間違いないなしってアイツ、言っていたのに……」オロオロ

    智絵里「その……どちらさまです……か?」

    変な人「ご、ごめん!やっぱりPヘッドはないよな!あはは、あはははっ!すぐに外すから、ちょっと待ってね!」ゴソゴソ

    智絵里「は、はぁ…?」

    その人が急いで頭の被り物を外す、その下から出てきた素顔は……



    95: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:18:41 ID:KXQ
    智絵里「じ、事務員さんっ!?」

    なんと、先日オーディション会場で私を励ましてくれた優しい事務員さんではないですか!?
    突然の再会に、私は動揺を隠せませんでした。

    P「久しぶり!…といっても、たった数日だけどね…僕は、346プロダクション 第1芸能課所属のPといいます。この度、君のプロデューサーを担当することになりました」

    智絵里「ぷ、プロデューサーさんだったんですか……!ご、ごめんなさい、そうとは知らないで、とんだご無礼を……!」

    96: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:19:03 ID:KXQ
    P「いやいや、こちらこそ変なことしてごめんな…やっぱり普通が一番だよね」

    智絵里「は、はい……」

    P「また会えて嬉しいよ!これから一緒に頑張っていこうね」ニッコリ

    智絵里「!」ドキン

    97: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:19:30 ID:KXQ
    これが、私と事務員さん…プロデューサーさんとの2度目の出会いでした。
    この後、事務所の社長さんや、同じプロデューサーさんの担当アイドルである五十嵐響子ちゃん、小日向美穂ちゃん、島村卯月ちゃん、水本ゆかりちゃんを紹介されました。
    みんな、優しく、フレンドリーに接してくれたので、なんだか安心しました。
    新しい何かが、始まった気がする。

    98: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:19:48 ID:KXQ
    ~レッスン場~
    トレーナー「はいっ、そこまで!」

    智絵里「は、はい……!」ハァハァ

    トレーナー「う~ん…やっぱりまだ動きが固いですね…」

    智絵里「す…すみません……」

    99: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:20:13 ID:KXQ
    トレーナー「いえいえ、最初から完璧な人なんていないんですから。五十嵐さん達だって、たくさんレッスンをして、立派なアイドルになったんです。緒方さんもきっとすぐに上達しますよ!」

    智絵里「そう……でしょうか……」ハァハァ

    トレーナー「今日のレッスンはここまで。今日教わった内容は、次のレッスン日までしっかり復習しておくんですよ?」

    智絵里「は、はい……ありがとう……ございました」ハァハァ



    100: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:20:38 ID:KXQ


    P「智絵里、お疲れさま」

    智絵里「プロデューサーさん……おはようございます……」

    P「大丈夫?顔色が悪いよ?」

    智絵里「そう……ですか?すみません、ちょっと貧血気味で……。先ほど、スタジオでダンスレッスンをしたんですけど……思うように身体が動かなくて……何度も足がもつれて……」

    101: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:20:59 ID:KXQ
    智絵里「やっぱり……慣れないことをすると……ダメですね……身体を動かすのも苦手ですし……トレーナーさんにも、たくさん迷惑をかけてしまいました……」

    P「智絵里……」

    智絵里「せっかく、プロデューサーさんがくれたチャンスなのに……また期待に応えられなくて、本当に本当に……すみません……」

    P「そんなに落ち込まなくても…レッスンは始まったばかりじゃないか!大丈夫、まだまだこれからだよ」

    102: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:21:20 ID:KXQ
    智絵里「ありがとうございます。プロデューサーさんは優しいですね……。でも気休めだってことは、自分が一番、分かってます……」

    智絵里「何をやっても劣等生……私みたいな落ちこぼれがアイドルなんて……きっと無理ですよ……」

    P「……」

    智絵里「だから……だからプロデューサーさんも……わ、私なんか早く見切りをつけて……他の方のプロデュースに専n P「えいっ」むぎゅ!?」

    P「はい、そこまで」むぎゅー

    智絵里「うむ~…ぷはぁ!ぷ、プロデューサーさん!?いきなり頬っぺをつまむなんて……酷いですよぅ……」

    103: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:21:48 ID:KXQ
    P「智絵里、私“なんか”なんて…言っちゃダメだ。智絵里だって、他の子達に負けないくらい、可愛くて素敵な女の子なんだ……僕は、そう思ってる」

    智絵里「そんなこと……ありえないです……響子ちゃんは優しくて、美穂ちゃんは可愛くて、卯月ちゃんは頑張り屋さんで、ゆかりちゃんは綺麗……私は、根暗で、臆病で、弱虫な、ダメダメなんです……」

    P「う~ん、智絵里はまず、その自信のなさをどうにかしないといけないな…よしっ」

    P「智絵里っ、今日から毎日、君に会うたびに、かわいいって言い続けるぞ!」

    104: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:22:10 ID:KXQ
    智絵里「え、ええっ!だ、ダメですっ。そ、そんなの……恥ずかしい……」カアァ

    P「智絵里かわいい」

    智絵里「う、ううう///」

    P「もし、自分が信じられないのなら…智絵里のことを信じる僕を、信じてくれないか?」

    智絵里「プロデューサーさんを信じる……ですか……?」



    105: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:22:29 ID:KXQ
    P「うん!…どうかな…?」

    智絵里「……プロデューサーさんのことなら……信じられるかも……しれません」

    P「良かった…智絵里の信頼に足る男でいられるよう、努力するよ!だから…智絵里もレッスン、頑張ろう?僕も一緒に頑張るからさ」

    智絵里「……はい……!」

    106: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:22:53 ID:KXQ
    P「よしよし、いい子いい子」なでなで

    智絵里「ぷ、プロデューサーさんっ///」

    P「あははは!」

    その時のプロデューサーの笑顔は、今でも忘れられません。
    それくらい、あったかくて……お日様みたいな表情だったんです。

    107: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:23:30 ID:KXQ
    それからもたくさん…たくさん頑張りました。
    プロデューサーさんと一緒に毎朝ジョギングをしたり、公園でちょっとしたスポーツをしたり……プロデューサーさんは、私の負担にならない程度の軽い運動に毎日付き合ってくれました。
    プロデューサーさんだって忙しいはずなのに…嫌な顔一つせず、私と一緒にいてくれる。
    そのかいもあってか、だんだんと体力がついてきて、少しだけ…自分に自信が持てるようになっていきました。

    108: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:24:00 ID:KXQ
    でも、まだまだ問題はあります。知らない人の前に立つと、緊張で思うように話せなくなるところです。
    引っ込み思案な性格を理由に、碌に人と関わってこなかったツケが回ってきたのでしょう。
    これは、プロデューサーさんと一緒に、今後お世話になるであろう人達への挨拶回りを始めた直後の話です。

    109: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:24:21 ID:KXQ
    ~346プロ 第1芸能課~
    P「う~ん、初対面の人だと、やっぱり緊張しちゃうか」

    智絵里「す、すみません……私……相手の人の顔すらまともに見れなくて……」

    P「別に、男の人だけが苦手ってわけじゃないんだよね?」

    智絵里「えっと……それは……はい……」



    110: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:24:43 ID:KXQ
    P「ん~……少し練習してみるか…?」

    智絵里「練習……?」

    P「Pと!智絵里の!演技大作戦!!」

    智絵里「へ……!?」

    111: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:25:12 ID:KXQ
    P「今から僕はプロデューサーじゃなくて、幼い頃に離れ離れになったお兄さん役になります!智絵里はなるべく、お兄さんの顔を見ながら、妹になりきって会話を続けるんだ」

    智絵里「なるほど……?」

    P「おほんっ…始めるよ」

    智絵里「は、はいっ……!」

    112: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:25:48 ID:KXQ
    P「……智絵里…10年ぶりだね…」

    智絵里「う、うん……お兄ちゃん…」

    P「……………すぅぅぅぅ、落ち着け落ち着け……」ブツブツ

    智絵里「どうしたの……?お兄ちゃん……?」

    P「…………ゴフッ」

    113: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:26:08 ID:KXQ
    智絵里「きゃっ、ぷ、プロデューサーさん!?」ビクッ

    P「だ、大丈夫だ…続けてくれ…」

    智絵里「は、はい…じゃなかった……うん…」

    114: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:26:31 ID:KXQ
    智絵里「お兄ちゃん……私……ずっと…ずっと、寂しかったんだよ……?」

    P「ごめんよ、智絵里……でも、もう大丈夫だ…俺はもう…君の傍から一生離れない…約束するよ…」

    智絵里「お、お兄ちゃん……」ドキドキ

    P「智絵里…この10年間、君を忘れた日はなかった…ずっと…君のことだけを想っていたんだ」



    115: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:27:08 ID:KXQ
    智絵里「…………っ///」ふいっ

    P「目をそらさないで……!」ガシッ

    智絵里「!?」ドクン

    P「智絵里………俺は…俺はっ、君のことが大好きなんだ!(お兄さんとして)」

    智絵里「…………きゅう」ぱたっ

    116: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:27:36 ID:KXQ
    P「ち、智絵里!?だ、大丈夫か!?」ゆさゆさ

    智絵里「う、う~ん///」

    P「まいったな……気絶するほど怖かったのか…悪いことしたな…」クルッ

    美穂「………………」ジー

    117: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:27:58 ID:KXQ
    P「うわあっ!み、美穂!?いたなら声くらいかけてよ、ビックリしたじゃないか!」

    美穂「………私の時は、大好きなんていってくれなかったのに」ムスーッ

    P「えぇ…だって、気持ち悪くないか…?10年ぶりにあったお兄さんがいきなり大好きだなんて言ってくるの…正直、自分で演技してて鳥肌が立ったぞ?」

    美穂「………そんなこと…ないもん…大好きだった相手なら…」ボソッ

    P「???」

    118: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:28:35 ID:KXQ
    結局、プロデューサーさんと、私の演技大作戦は失敗に終わりました。
    この後、目が覚めた私は、同じく引っ込み思案だったらしい美穂ちゃんにアドバイスを受けました。
    目の前にいる人を自分の好きな動物に置き換えて想像するという方法でした。
    このアドバイスのおかげで、なんとか初対面の人でも、なんとか話せるようになりました。
    ……ドキドキしたな…あの時のプロデューサーさん…

    119: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:29:26 ID:KXQ
    ~デビューライブ当日 駅~
    智絵里「えっ、プロデューサーさん……一緒に来れないんですか……?」

    デビューライブ当日、駅でプロデューサーさんを待っている時、電話がかかってきました。

    ちひろ『そうなの…プロデューサーさん、営業先で少しトラブルが起きたみたいで…ライブ開始時間までには間に合うように急いでいるから、智絵里ちゃんは先に会場へ向かっていて欲しいって…』

    智絵里「そう……ですか……」



    120: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:29:51 ID:KXQ
    ちひろ『智絵里ちゃん…大丈夫?ひとりで行けそう?』

    智絵里「だっ、大丈夫ですっ、会場までの行き方はちゃんと覚えていますし、ライブの手順だって、何度も確認しましたから!だから…だからっ……大丈夫です…ひとりでも……できます……」

    ちひろ『…わかったわ。もし少しでも困ったことがあったら、すぐに電話してくださいね!出来る限りのサポートはしますからっ』

    智絵里「は、はいっ、ありがとうございます。ちひろさん……」ピッ

    121: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:30:14 ID:KXQ
    プロデューサーさんがいない初仕事、それがまさかデビューライブだなんて…

    智絵里「プロデューサーさん……」

    122: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:30:42 ID:KXQ
    ~ライブ会場 舞台袖~
    智絵里「……大丈夫…たくさん…たくさん、練習したもん……大丈夫、大丈夫。私はできる…絶対にできる…」

    ライブ開始直前、舞台袖で私は意識を集中させていました。
    歌の歌詞、ダンスの振り付け、お客さんに向けてのスピーチ内容などを、頭の中で確認していました。

    智絵里(いつまでもプロデューサーさんに頼るわけにはいかない……私ひとりでも頑張らないと……!)

    123: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:31:01 ID:KXQ
    スタッフ「緒方さ~ん、そろそろスタンバイお願いしま~す」

    智絵里「は、はいっ、わかりました……!」

    ライブが、始まる。



    124: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:31:26 ID:KXQ
    『さあさあ皆さんお待ちかね!ライブのお時間ですよ~。今日デビューするのは、346プロダクションの期待の新人、緒方智絵里ちゃんですっ!!』

    ワーワー ワーワー

    舞台袖から観客席を見ると、たくさんのお客さんがいました。

    智絵里(こ、この人達全員が私のライブを…!?)

    125: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:31:54 ID:KXQ
    会場の大きさ自体はそこまで大きいものではありません。
    それでも、私にとっては十分な人数のお客さんでした。

    『それでは!さっそくアイドルちゃんに登場してもらいましょう!緒方智絵里ちゃん、お願いしま~す!』

    智絵里「は、はい……!」

    ステージの真ん中へ向かってゆっくりと歩く。所定の位置に着き、まっすぐ観客席をみる。

    126: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:32:17 ID:KXQ
    智絵里「!?」

    観客席から数えきれない程の視線を感じる。あまりの威圧感に、私はすっかり怖気づいてしまいました。

    智絵里(か、カエルさん……カエルさん……目の前にいるのは…みんな…カエル…さん……?)

    『智絵里さん…?』

    127: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:32:44 ID:KXQ
    智絵里「あ、ああ…あ……」

    こわい、こわい、こわいこわいこわいこわいこわい……!

    「どうしたんだろ?あの子」

    「あれ~?」

    「ライブまだ~?」

    128: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:33:05 ID:KXQ
    あまりの恐怖に、私はもう、頭が真っ白になってしまっていました。

    智絵里(助けて…プロデューサーさん……!)ギュッ

    もうダメだ、そう思って、俯いたその時です。

    129: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:33:27 ID:KXQ
    「頑張れー!!!智絵里ぃぃぃぃぃぃ!!!!」



    130: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:33:49 ID:KXQ
    声がした。根暗で、臆病で、弱虫な私のことを、いつも励ましてくれる優しい声が。

    「今まで一生懸命練習してきたんだー!!智絵里なら絶対に大丈夫だー!!!自分に打ち勝てーーー!!!!!」

    少し子供っぽいけど、とてもあったかい、お日様みたいな…私の大好きなあの声が……!

    131: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:34:15 ID:KXQ
    「なんだなんだ?」

    「この人誰!?」

    「???」

    顔を上げると、そこには…

    132: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:34:33 ID:KXQ
    智絵里(プロデューサーさん……!?)

    息を切らし、全力疾走してきたであろうプロデューサーさんの姿があった。

    智絵里(プロデューサーさんが……プロデューサーさんがっ…!!来てくれたっ、ちゃんと私のことを、応援しに来てくれたんだ!!!)

    133: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:34:56 ID:KXQ
    智絵里「―――っ!!」

    全身に熱いほどの血が流れる。止まっていた時間が動き始める。

    智絵里「……今の私は……」

    負ける気がしないっ!!!

    134: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:35:14 ID:KXQ
    智絵里「初めまして……!緒方智絵里…ですっ!みなさんっ、今日は…私のデビューライブに来てくれて…ありがとうございますっ。たくさん…たくさん…練習したので…聞いてください…!!!」

    メロディーが流れ始める。この時初めて、アイドル緒方智絵里が誕生したのです。



    135: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:35:36 ID:KXQ
    ~ライブ終了後 控室~
    P「やったな!智絵里っ、大成功だよ!!よく頑張ったな!!!」

    ライブ終了後、控室に戻った私に、プロデューサーさんは真っ先に駆け寄って来てくれました。

    智絵里「はい…!で、でも…少し歌詞を間違えてしまいました……」

    P「ちょっとくらい間違えたっていいさ!そんな些細なこと、忘れちゃうくらい最高に可愛かったぞ!!」

    136: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:35:59 ID:KXQ
    智絵里「ぷ、プロデューサーさん……!」ウルッ

    P「智絵里、最高のライブだったよ…!本当にありがとな!」ニッコリ

    智絵里「!」ドクン

    智絵里(やっぱり……プロデューサーさんは、私のこと……)ドクン ドクン

    137: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:36:21 ID:KXQ
    絶対に見捨てない

    138: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:38:34 ID:KXQ
    デビューライブが無事終わり、私、緒方智絵里は晴れて、アイドルの仲間入りをすることができました。
    お世辞にも上手とはいえないライブでしたが、それがかえって話題になったのか、たくさんの仕事が舞い降りてくるようになりました。
    私自身、ライブ成功のおかげで自信がついたのか、以前よりも明るくなれた気がします。
    そして…

    139: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:38:55 ID:KXQ
    ~収録現場 帰り~
    P「いや~今日の撮影、すごく良かったぞ!!」

    番組収録の帰り道、私はプロデューサーと二人きりで歩いていました。

    智絵里「えへへ…本当ですか…!」

    P「ああっ!以前にも増して可愛くなったってスタッフの皆さんも褒めていたぞ!なにか秘訣でもあるのか?」



    140: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:39:14 ID:KXQ
    智絵里「ふふふっ、それはきっと…ファンのみんなや事務所のみんな、そしてなにより…プロデューサーさんが応援してくれているからですっ」

    P「智絵里はいい子だな~優しくて、いつも笑顔で…まるで天使だな!」

    智絵里「そう…ですか?わ、私っ…プロデューサーさんに褒められると、嬉しいです……!」

    P「よ~し、なにかご褒美でもあげないとな…ほらっ、なんでも言ってごらん?」

    141: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:39:32 ID:KXQ
    智絵里「い、いいんですかっ…!?」

    P「おう、智絵里は最近頑張っているからな。ほらほら、遠慮せずに」

    智絵里「それなら……手を…繋いでくれませんか」スッ

    P「へ?」

    142: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:39:59 ID:KXQ
    智絵里「ち、近頃、寒くなってきたじゃないですかっ!だ、だから、お互いの手を…手を……」もじもじ

    P「手を繋いで欲しい?まったく、智絵里は甘えんぼだな~いいよ」ギュッ

    智絵里「! えへへ…///」

    143: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:40:28 ID:KXQ
    最近は本当に楽しいことばかり、これもきっと、プロデューサーさんに出会えたおかげですよね……!
    これからもずっと、ずっ~と一緒にいられたらいいなぁ。
    きっと、いられますよね!だって……

    144: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:40:44 ID:KXQ
    Pさんは“私”のプロデューサーなんですから



    145: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:41:15 ID:KXQ
    ~346プロ 第1芸能課~
    智絵里「cherry merry cherry♪恋のおまじないっ♪どんな私も受け止めてくださいねっ♪
    」ルンルン

    今日はお仕事もレッスンもお休みの日、でも、プロデューサーさんに会いたくて、事務所に来てしまいました。

    智絵里「プロデューサーさん…喜んでくれるかなぁ……♪」

    手元には、可愛い巾着で包んだお弁当。色々なところでレシピを調べて、今日早起きして作ったんです!

    146: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:41:55 ID:KXQ
    智絵里「えへへ…おはようござ」ガチャ

    「わざわざすまないな、今日もお弁当作ってもらっちゃって」

    智絵里「」ピタッ

    147: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:42:20 ID:KXQ
    「全然大丈夫ですよ~!プロデューサーさんには、いつも栄養満点な響子のミラクルレシピ、味わってもらいたいですからっ…♪」

    「響子の作る料理は世界一おいしいからな~“ずっと”食べていたいよ。いつもありがとう、響子」

    「えへへ…い~ぱい、召し上がれ♪」

    智絵里「………」パタン

    148: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:42:33 ID:KXQ
    響子ちゃん……?

    149: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:43:48 ID:KXQ
    今まで、プロデューサーさんのことばかり考えていて気づかなかった…いえ、見えていなかった。
    彼の周りには、私以上に魅力的な女の子達がたくさんいたんです。
    ゆかりちゃん、卯月ちゃん、美穂ちゃん、そして……響子ちゃん。
    彼女達がプロデューサーさんを見つめるその表情は、全員一緒……私と同じでした。



    150: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:44:11 ID:KXQ
    プロデューサーさんは私達みんなに、あの優しい笑顔を向けてくれる。
    もちろん、プロデューサーとして、特定の担当アイドルを贔屓することはいけないことです。
    だから、プロデューサーさんは何も間違っていません……
    それでも、あの笑顔が、私だけに向けられていた物ではないと知った時……胸の奥の方から重く、黒い感情が湧き上がってくるのを感じました。

    151: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:44:52 ID:KXQ
    P「わあぁ、本物の四葉のクローバーを見たの、初めてだよ。ありがとう!智絵里。この栞、大事にするね」

    後日、私は近所の公園で見つけ出した四葉のクローバーを使い、作った栞をプロデューサーさんにプレゼントしました。
    プロデューサーさんは、よくプロデュースを勉強するための本を読んでいます。
    日常的に使う栞なら、常日頃から持ち歩く……“私”のことを、いつでも頭の片隅に置いておいてくれる。
    そう…思ったんです。

    152: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:45:14 ID:KXQ
    智絵里「……ふふっ、プロデューサーさんが喜んでくれて、嬉しいです」

    本当に…嬉しいです

    153: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:45:36 ID:KXQ


    P「いや~やっぱり嬉しいなぁ。担当アイドルからのプレゼントっていうのは…」

    「ふ~ん、四葉のクローバーかぁ、いいね」

    P「ん?君は…」クルッ

    振り返ると、そこには…

    154: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:45:57 ID:KXQ
    P「渋谷さんか、おはよう」

    凛「うん、おはよう、Pさん」

    最近、卯月と本田さん、3人でニュージェネレーションというユニットを組み始めた人気アイドル、渋谷凛さんがそこにいた。



    155: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:46:20 ID:KXQ
    P「いつもウチの卯月がお世話になってます…ありがとう!」ペコリ

    凛「よ、よしてよ、むしろ、私の方がいつも卯月には助けられているから」アセアセ

    P「そうか?君のことは卯月からよく聞いてるよ。今日の凛ちゃんはカッコよかったー!とか、可愛かったー!とか」

    凛「も、もう卯月ったら」テレテレ

    お?クールな子だと思ってたけど、こういう顔もするんだな…

    156: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:46:38 ID:KXQ
    凛「わ、私のことはいいからさ、それ、四葉のクローバーだよね」

    P「ん?ああ、これか?この栞、智絵里に貰ったんだ~なかなかいいデザインしているだろ?」

    凛「うん、作った人の想いが込められているのがよくわかる……悪くないね」

    P「だろ~、四葉のクローバーって結構珍しい物だよな?昔、美穂と一日かけて探し回った時は、結局1つも見つけられなかったからなぁ」

    157: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:47:08 ID:KXQ
    凛「へぇ…四葉のクローバーが自然発生する確率は、一万分の一、十万分の一とも言われているんだよ」

    P「そんなに珍しいのか!?探すの大変だっただろうなぁ…次会う時までに、ちゃんとしたお礼を考えておかないと…」

    凛「まぁ、環境や場所によって変わってくるけど…簡単に見つけ出せる物じゃないってことは確かだね……ふふ、慕われているんだね」

    158: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:47:25 ID:KXQ
    P「そっか…嬉しいな…」ニコニコ

    凛「……」

    凛(四葉のクローバーの花言葉…幸運、約束、復讐、think of me、Be Mine……)

    凛「まさか…ね」ボソッ

    159: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:48:00 ID:KXQ
    響子、美穂、卯月、ゆかり、智絵里。5人の女の子をプロデュースし始め、数ヶ月が経った。
    おのおのが、アイドルとして次々と新しい魅力を生み出していった。
    担当プロデューサーとして、彼女達の成長を誰よりも近くで見ることができて、本当に嬉しかった。
    そして、遂に彼女達にとって…いや、346プロの全アイドルにとって、一世一代の晴れ舞台がやってきた。



    160: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:48:16 ID:KXQ
    「「「「「シンデレラフェスタ?」」」」」

    P「ああ、ドーム一つを借り切って行われる、夢の祭典だ!今までの比じゃないくらい大きなライブイベントだぞ~それに、みんなも出演することになった!!!」

    161: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:48:36 ID:KXQ
    響子「ほ、本当ですかっ!?」

    美穂「うわぁー!!凄いっ!!」

    卯月「ドームですよっ!ドームっっ!」

    ゆかり「私達、とうとうここまで来たんですね…!」

    智絵里「……!」

    162: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:49:03 ID:KXQ
    P「出演するにあたって、ここにいる5人で、ユニットを組んでもらうことになった!一世一代の晴れ舞台だ…成功すれば、トップアイドルに大きく前進することができるぞ!!!」

    響子「プロデューサーさんプロデューサーさん!!ユニット名、ユニット名は何ですかっ」

    P「ああっ!ユニット名は・・・・・・」

    163: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:49:42 ID:KXQ
    こうして、響子ちゃん、美穂ちゃん、卯月ちゃん、ゆかりちゃん、そして私…5人の新ユニットが結成されました。
    本番は一ヶ月後、私達は、シンデレラフェスタが始まるまで、できる限りのレッスンに励みました。
    ……全員が、心の片隅で、かげがえのない“あの人”を想いながら……

    164: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:49:58 ID:KXQ
    響子(私が…プロデューサーさんの夢を叶えるんだ…みんなに愛される…トップアイドルに…!)

    美穂(おっきなステージ…緊張しちゃう…でも、プロデューサーさんと一緒なら…!)

    卯月(憧れの大舞台で、輝く姿を見せたい…!誰よりも、プロデューサーさんにっ…!)

    ゆかり(夢にまで見た舞台に、プロデューサーさんと立てる…なんて素敵なことでしょう…!)

    智絵里(私……誰にも負けたくない……私が…“私”が1番だって…想ってもらいたい……!)



    165: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:50:24 ID:KXQ
    ~シンデレラフェスタ当日 舞台袖~
    P「みんな、よくここまで頑張ってきてくれた」

    シンデレラフェスタ当日、私達の出番が次に控える中、舞台袖でプロデューサーさんと私達は向き合っていました。

    166: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:50:41 ID:KXQ
    P「みんな、アイドルになっていろいろな経験をしてきたと思う…嬉しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと、楽しかったこと…その一つ一つが君たちの糧になっただろう」

    P「シンデレラフェスタは、そんな今までの集大成ともいえるイベントだ…これを乗り越えれば、きっと更なる高みへと登れるはず…思う存分、アイドルとして培ってきた全てをぶつけてくるんだ!」

    P「僕がプロデューサーとして、ここまでこれたのは、みんながいてくれたからだ。本当に感謝している」

    P「僕にとって、みんな自慢の担当アイドルさ!君達なら、絶対にトップアイドルになれる!!」グッ

    167: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:51:01 ID:KXQ
    「「「「「はいっ!!!」」」」」

    P「よしっ、みんな、行っておいで!王子様達が君たちのことを待っているぞ!!!」

    168: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:51:18 ID:KXQ
    響子「はいっ!ファンのみんなにとびっきり美味しい私を…おなかいーぱいっ、味わってもらいますねっ!!」ダッ

    美穂「アイドル力マシマシな私の姿、ライブを観に来てくれたお客さん全員に…!見せつけてきますよ!!」ダッ

    卯月「世界で一番素敵な笑顔を、会場の皆さんに届けて魅せますっ!島村卯月っ、頑張りますっ!!」

    ゆかり「今日来てくれた全ての方々に、私の想いを届けてみせます…!光溢れる舞台の上で…!!」ダッ



    169: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:51:46 ID:KXQ
    智絵里「……」

    P「智絵里…?」

    170: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:51:53 ID:KXQ
    智絵里「はい……プロデューサーさん…行ってきますね」ダッ

    P「あ、ああ!…みんなーー!!頑張れーーー!!!」

    171: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:52:31 ID:KXQ


    智絵里(私……ゆかりちゃんよりも、卯月ちゃんよりも、美穂ちゃんよりも、そして……響子ちゃんよりも……会場の誰よりも、輝いてみせます……だから、プロデューサーさん…)

    172: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:52:48 ID:KXQ
    私のこと、“ずうっと“みていてくださいね?

    173: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:53:01 ID:KXQ
    終わり

    174: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:53:37 ID:KXQ
    以上で終わりです。このシリーズは、とりあえず今回で一区切りとさせていただきます。
    存在だけは匂わせていた他の芸能課を舞台にした大人組や小学生組、第1芸能課所属の別P達の話も書いてみたいです。
    どれを書くか分かりませんが、もし見かけたときは、よろしくお願いします!

    いつかは個別ルートも書いてみたいなぁ



    175: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:54:06 ID:KXQ



    大切なアイドル達…彼女達とならどこまでも登っていける…そう思っていた

    176: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:54:29 ID:KXQ
    ゆかり「プロデューサーさん…私の気持ち…受け取ってくれますか……?」

    智絵里「私は……天使なんかじゃない」

    美穂「ええっ!唇にキス!?」

    卯月「私…シンデレラ失格ですね……」

    響子「プロデューサーさん。貴方のことが……世界で一番、大好きです」

    177: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:54:51 ID:KXQ
    彼女達の、本当の想いを知ってしまった。もう、今までのようにはいられない
    プロデューサーとして、僕はどの道を選べばいいのだろうか

    178: ◆UpHOrkEMJ2 2018/09/27(木)20:55:18 ID:KXQ


    時計の針が12を指す時、魔法使いとシンデレラの物語が始まる



    引用元: モバP「白詰草に想いを込めて」智絵里「見捨てないで…!」

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