喪黒「ほほう、あなた、そのアニメのキャラクターのことを愛しているのですね」
2019-08-22
1: 次でラスト 2017/05/04(木) 15:23:11.28 ID:11uG4bzJ0
喪黒「私の名は喪黒福造……人呼んで笑ゥせぇるすまん」
喪黒「ただのセールスマンじゃございません」
喪黒「私の取り扱う品物は心……人間のココロでございます」
喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり」
喪黒「そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします」
喪黒「さて、今日のお客様は――」
≪肝尾 琢郎 30歳 公務員≫
ホーッホッホッホッホ……
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1493878990
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ハルヒ「SOS団で恋の暴露大会をするわよ!」
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【悲報】Twitterで3年前に「令和」を予言してたものがいたwwwwwwwww
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:23:56.99 ID:11uG4bzJ0
【役所】
上司「何度言ったら分かるんだ!」
肝尾「すみません……すみません」
上司「君、もう三十にもなってちゃんと仕事を覚えられないなんて、恥ずかしくないのか!」
肝尾「すみません……」
同僚「肝尾って異動して半年になるのにまだ日常業務もまともにこなせないんだよね。しわ寄せは全部こっちに来るし参っちゃうよ」
非常勤女「こっちも大変ですよ。肝尾さんの指示って全然要領得ないですし。正直、いないほうが部署がうまく回るというかー。あの人暗いし、話すること自体嫌っていうか、不快なんですよね」
同僚「おいおい、そこまで言ってやるなって。可哀想だろ」
非常勤女「絶対、結婚できないタイプですよねー、あの人」
同僚A「結婚どころか、あいつ、女に相手にされないんじゃないの。顔もキモいし」
非常勤女「アハハハ、そこまで言ったらカワイソウですよー」
肝尾「……お先に失礼します」
上司「何度言ったら分かるんだ!」
肝尾「すみません……すみません」
上司「君、もう三十にもなってちゃんと仕事を覚えられないなんて、恥ずかしくないのか!」
肝尾「すみません……」
同僚「肝尾って異動して半年になるのにまだ日常業務もまともにこなせないんだよね。しわ寄せは全部こっちに来るし参っちゃうよ」
非常勤女「こっちも大変ですよ。肝尾さんの指示って全然要領得ないですし。正直、いないほうが部署がうまく回るというかー。あの人暗いし、話すること自体嫌っていうか、不快なんですよね」
同僚「おいおい、そこまで言ってやるなって。可哀想だろ」
非常勤女「絶対、結婚できないタイプですよねー、あの人」
同僚A「結婚どころか、あいつ、女に相手にされないんじゃないの。顔もキモいし」
非常勤女「アハハハ、そこまで言ったらカワイソウですよー」
肝尾「……お先に失礼します」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:24:54.42 ID:11uG4bzJ0
【街中】
肝尾(また陰口叩かれてた……。いいんだよ別に。リアルの女とか、マジで面倒臭くてウザいだけだろうし)
肝尾(相手にされないんじゃないんだよ、こっちが相手にしていないだけなんだって)
肝尾(つーか、何だよ結婚って。お前らにごちゃごちゃ言われる筋合いはねえよ)
肝尾(俺にはちゃんと嫁がいるんだし)スス
肝尾(はは、可愛いなあ。愛してるよ、OOO。俺を慰めてくれるのは君だけだよ)
肝尾「……はあ」
喪黒「ホッホ、そちらが、あなたの奥さんですか」
肝尾「ひっ!」
喪黒「スマートフォンの待ち受けに写った奥さんの写真。いいえ、写真というよりは、絵のように見えましたがねえ」
肝尾「だ、誰ですか……あなたは」
喪黒「ワタシですか。見ての通り、しがないセールスマンでございますよ」
肝尾「あの、キャッチセールスとかだったら他を当たってください」
喪黒「まあまあ、そう言わずに。こちら、ワタシの名刺です」
肝尾「はあ……。えっと、喪黒……さん?」
肝尾(ココロのスキマをお埋めします……?)
喪黒「肝尾さん。あなた、奥さんの待ち受けを眺めながら、ちょっぴり寂しそうな顔をしてましたね」
肝尾「い、いや……そんなことは……。というか、どうして僕の名前を?」
喪黒「まあまあ、細かいことはいいじゃありませんか。どうです? これから私の馴染みのバーで一杯。何か悩み事がおありなら、お話しの相手になりますよ」
肝尾「え、いや、でも……」
喪黒「でも、何です? これから何かご予定がおありですか? おうちでお嫁さんが夕飯の支度をしてお待ちだとか。それともデートのお約束でも?」
肝尾「………………」
肝尾「……いえ」
喪黒「そうですか。ではご案内しましょう。さあ、こちらへ」
肝尾(また陰口叩かれてた……。いいんだよ別に。リアルの女とか、マジで面倒臭くてウザいだけだろうし)
肝尾(相手にされないんじゃないんだよ、こっちが相手にしていないだけなんだって)
肝尾(つーか、何だよ結婚って。お前らにごちゃごちゃ言われる筋合いはねえよ)
肝尾(俺にはちゃんと嫁がいるんだし)スス
肝尾(はは、可愛いなあ。愛してるよ、OOO。俺を慰めてくれるのは君だけだよ)
肝尾「……はあ」
喪黒「ホッホ、そちらが、あなたの奥さんですか」
肝尾「ひっ!」
喪黒「スマートフォンの待ち受けに写った奥さんの写真。いいえ、写真というよりは、絵のように見えましたがねえ」
肝尾「だ、誰ですか……あなたは」
喪黒「ワタシですか。見ての通り、しがないセールスマンでございますよ」
肝尾「あの、キャッチセールスとかだったら他を当たってください」
喪黒「まあまあ、そう言わずに。こちら、ワタシの名刺です」
肝尾「はあ……。えっと、喪黒……さん?」
肝尾(ココロのスキマをお埋めします……?)
喪黒「肝尾さん。あなた、奥さんの待ち受けを眺めながら、ちょっぴり寂しそうな顔をしてましたね」
肝尾「い、いや……そんなことは……。というか、どうして僕の名前を?」
喪黒「まあまあ、細かいことはいいじゃありませんか。どうです? これから私の馴染みのバーで一杯。何か悩み事がおありなら、お話しの相手になりますよ」
肝尾「え、いや、でも……」
喪黒「でも、何です? これから何かご予定がおありですか? おうちでお嫁さんが夕飯の支度をしてお待ちだとか。それともデートのお約束でも?」
肝尾「………………」
肝尾「……いえ」
喪黒「そうですか。ではご案内しましょう。さあ、こちらへ」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:25:41.48 ID:11uG4bzJ0
【BAR―魔の巣―】
マスター「………………」キュッキュッ
喪黒「ほほう、あなた、そのアニメのキャラクターのことを愛しているのですね」
肝尾「はい。『俺の嫁』なんです」
肝尾「高校生の頃、試験勉強の合間にたまたま見た深夜アニメに出てきたキャラで。それまでは、たいしてアニメなんて見ることもなかったんですけど」
肝尾「この子を一目見た瞬間、もう、完全に惚れてしまったといいますか、もう好きで好きでたまらなくなって」
喪黒「つまり、このキャラクターの見た目に惹かれたと?」
肝尾「いえ、違います! 最初は確かに見た目でしたけれど、アニメを見続けるに従って、彼女の内面とか仕草とか、彼女の全部が好きになって!」
喪黒「具体的にどういうところが?」
肝尾「例えば……、いわゆるツンデレキャラっていったらテンプレっぽいですけど、本当は人見知りなのに、気を許した相手には乱暴な言葉を投げかけたりするんです」
肝尾「性悪とか呼ばれるけれど、素直になれないだけで、構ってもらえないと嫉妬するところも可愛いですし」
肝尾「本当は優しくて良い子で、大事な時にはいつも周りのことを想って行動するし、争い事は誰より嫌ってるところも」
肝尾「カラスが死ぬような卵焼きを作ったり字が下手でひらがなを間違ったりするところも、もう何もかも本当に可愛くて……!」
喪黒「……」
マスター「………………」キュッキュッ
喪黒「ほほう、あなた、そのアニメのキャラクターのことを愛しているのですね」
肝尾「はい。『俺の嫁』なんです」
肝尾「高校生の頃、試験勉強の合間にたまたま見た深夜アニメに出てきたキャラで。それまでは、たいしてアニメなんて見ることもなかったんですけど」
肝尾「この子を一目見た瞬間、もう、完全に惚れてしまったといいますか、もう好きで好きでたまらなくなって」
喪黒「つまり、このキャラクターの見た目に惹かれたと?」
肝尾「いえ、違います! 最初は確かに見た目でしたけれど、アニメを見続けるに従って、彼女の内面とか仕草とか、彼女の全部が好きになって!」
喪黒「具体的にどういうところが?」
肝尾「例えば……、いわゆるツンデレキャラっていったらテンプレっぽいですけど、本当は人見知りなのに、気を許した相手には乱暴な言葉を投げかけたりするんです」
肝尾「性悪とか呼ばれるけれど、素直になれないだけで、構ってもらえないと嫉妬するところも可愛いですし」
肝尾「本当は優しくて良い子で、大事な時にはいつも周りのことを想って行動するし、争い事は誰より嫌ってるところも」
肝尾「カラスが死ぬような卵焼きを作ったり字が下手でひらがなを間違ったりするところも、もう何もかも本当に可愛くて……!」
喪黒「……」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:26:10.36 ID:11uG4bzJ0
肝尾「あ、すみません。こんな話聞かされても気持ち悪いだけですよね。アニメキャラを愛してるだなんて」
喪黒「い~え~、そんなことはありません。肝尾さんがどれだけ彼女のことを愛しているのか、よぉく分かりました」
喪黒「愛にはさまざまな形があるものです。何も後ろめたく思うことはありません」
肝尾「……そうですか」ゴクゴク
肝尾「ふぅー」カラン
喪黒「肝尾さんは、そんな愛しの彼女と一途な愛をはぐくみ、めでたくご結婚されたと。なにせ、『俺の嫁』なんですからねえ」
肝尾「……は、はい」
肝尾「おやおやおや、そんな幸せの絶頂にあるはずのあなたが、どうしてそんな暗い顔をして、ため息をついてしまうのです?」
肝尾「その……。仕事が上手くいっていないこともありますけど」
肝尾「どうしても越えられない壁があるじゃないですか。彼女はどれだけ願っても、画面の外に出てきてくれない!」
肝尾「彼女が作ったお菓子を食べたり、一緒にデートに出掛けたり……それから、……とにかく世間のリア充どもが当たり前のようにやっていることを……」
肝尾「僕も……僕もそういうことが、したいんです……!!」
喪黒「ホホ……ナルホドナルホド、肝尾さんの気持ちはよぉく分かりました。アナタのお悩み、解決できるかも知れませんよ」
肝尾「解決って? そんなことできるわけ……」
喪黒「アニメのキャラクターと、現実の世界で付き合うことができればいいのでしょう?」
喪黒「あなたに、この眼鏡をお渡ししましょう」
肝尾「眼鏡? 何ですか、これは」
喪黒「この眼鏡をかければ、あなたの願いは叶います」
肝尾「こんな何の変哲もない眼鏡をかけたらって……。ちょっと、これって詐欺とかそういうのなんじゃ……」
喪黒「ホッホッホ、騙されたと思って使ってみてください。きっと、あなたのご期待に沿えること請け合いですよ。お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それがなによりの報酬でございます」
肝尾(タダなのか。タダなら別に……もらうだけならいいんじゃないか。胡散臭い話だけど)
喪黒「ただし」ズイッ
肝尾「は、はいっ?」
喪黒「その眼鏡をかけるのは、1週間に1回、30分間だけにするように。よろしいですね……約束ですよ」
――――――――
――――
喪黒「い~え~、そんなことはありません。肝尾さんがどれだけ彼女のことを愛しているのか、よぉく分かりました」
喪黒「愛にはさまざまな形があるものです。何も後ろめたく思うことはありません」
肝尾「……そうですか」ゴクゴク
肝尾「ふぅー」カラン
喪黒「肝尾さんは、そんな愛しの彼女と一途な愛をはぐくみ、めでたくご結婚されたと。なにせ、『俺の嫁』なんですからねえ」
肝尾「……は、はい」
肝尾「おやおやおや、そんな幸せの絶頂にあるはずのあなたが、どうしてそんな暗い顔をして、ため息をついてしまうのです?」
肝尾「その……。仕事が上手くいっていないこともありますけど」
肝尾「どうしても越えられない壁があるじゃないですか。彼女はどれだけ願っても、画面の外に出てきてくれない!」
肝尾「彼女が作ったお菓子を食べたり、一緒にデートに出掛けたり……それから、……とにかく世間のリア充どもが当たり前のようにやっていることを……」
肝尾「僕も……僕もそういうことが、したいんです……!!」
喪黒「ホホ……ナルホドナルホド、肝尾さんの気持ちはよぉく分かりました。アナタのお悩み、解決できるかも知れませんよ」
肝尾「解決って? そんなことできるわけ……」
喪黒「アニメのキャラクターと、現実の世界で付き合うことができればいいのでしょう?」
喪黒「あなたに、この眼鏡をお渡ししましょう」
肝尾「眼鏡? 何ですか、これは」
喪黒「この眼鏡をかければ、あなたの願いは叶います」
肝尾「こんな何の変哲もない眼鏡をかけたらって……。ちょっと、これって詐欺とかそういうのなんじゃ……」
喪黒「ホッホッホ、騙されたと思って使ってみてください。きっと、あなたのご期待に沿えること請け合いですよ。お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それがなによりの報酬でございます」
肝尾(タダなのか。タダなら別に……もらうだけならいいんじゃないか。胡散臭い話だけど)
喪黒「ただし」ズイッ
肝尾「は、はいっ?」
喪黒「その眼鏡をかけるのは、1週間に1回、30分間だけにするように。よろしいですね……約束ですよ」
――――――――
――――
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:26:47.83 ID:11uG4bzJ0
【肝尾の住むアパート】
肝尾「ただいま」
シ――――――ン
肝尾「……」
肝尾「はああああ……今日も嫌な一日だった」
肝尾「……」チラ
騙されたと思って使ってみてください。きっと、あなたのご期待に沿えること請け負いですよ。
肝尾(かけてみるか……この眼鏡)
肝尾(あのおっさん、30分だけって言ってたっけ。一応、アラームをセットしておくか。よし、これでいい)
肝尾「………………」スチャ
肝尾「……」
シ――――――ン
肝尾「何だよ。何だよ……何も変わらないじゃないか。あのオヤジ……やっぱり俺を騙し」
カタンッ
肝尾「ん」
肝尾「何だ、ドアの郵便受けに何かが……手紙? こんな時間に誰が?」
肝尾「て、手紙っ……! ま、まさか……!」
ビリッ パラパラ
肝尾「あ、あ、ああっ……」
≪ まきますか まきませんか ≫
――――――――
――――
肝尾「ただいま」
シ――――――ン
肝尾「……」
肝尾「はああああ……今日も嫌な一日だった」
肝尾「……」チラ
騙されたと思って使ってみてください。きっと、あなたのご期待に沿えること請け負いですよ。
肝尾(かけてみるか……この眼鏡)
肝尾(あのおっさん、30分だけって言ってたっけ。一応、アラームをセットしておくか。よし、これでいい)
肝尾「………………」スチャ
肝尾「……」
シ――――――ン
肝尾「何だよ。何だよ……何も変わらないじゃないか。あのオヤジ……やっぱり俺を騙し」
カタンッ
肝尾「ん」
肝尾「何だ、ドアの郵便受けに何かが……手紙? こんな時間に誰が?」
肝尾「て、手紙っ……! ま、まさか……!」
ビリッ パラパラ
肝尾「あ、あ、ああっ……」
≪ まきますか まきませんか ≫
――――――――
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7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:27:19.74 ID:11uG4bzJ0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「朝です!朝です!しゃっきり目ん玉開けやがれです!
寝るしか能がないですかー?寝てばっかりいるとブクブクのブタさんになっちゃうですよ?
もぉ~~~早く目を覚ますですぅ!」
「ん~~おいしいですぅ。やっぱりOOOの焼いたスコーンは最高ですぅ。
お前もさっさと食べるです!残したりしたら二度とお天道様を拝めなくしてやるです。
へ、食べさせてほしいですって?……しゃーねーなぁです。さっさと口を開けるです。はい、あ~~ん♪
て、やると思ったですか、このおバカ!」
「晴れた日は散歩に限るです。太陽の光を浴びないとひねくれた性格になっちゃうですぅ!
はあ、それにしても、日曜の公園は恋人ばっかりですぅー……。っ……なに、じっと見てるですか?キモいですぅ~!勘違いも甚だしいですぅ!
でも、お前がどうしてもと言うのなら……手ぐらい繋いでやってもいいです……。か、勘違いするなですよ!
お前がみじめでどうしようもないからOOOが救いの手を差し伸べてやっているですぅ~!」
「やりましたわねぇ~!寄るな触るな抱きつくなですぅ!このブタ人間っ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「朝です!朝です!しゃっきり目ん玉開けやがれです!
寝るしか能がないですかー?寝てばっかりいるとブクブクのブタさんになっちゃうですよ?
もぉ~~~早く目を覚ますですぅ!」
「ん~~おいしいですぅ。やっぱりOOOの焼いたスコーンは最高ですぅ。
お前もさっさと食べるです!残したりしたら二度とお天道様を拝めなくしてやるです。
へ、食べさせてほしいですって?……しゃーねーなぁです。さっさと口を開けるです。はい、あ~~ん♪
て、やると思ったですか、このおバカ!」
「晴れた日は散歩に限るです。太陽の光を浴びないとひねくれた性格になっちゃうですぅ!
はあ、それにしても、日曜の公園は恋人ばっかりですぅー……。っ……なに、じっと見てるですか?キモいですぅ~!勘違いも甚だしいですぅ!
でも、お前がどうしてもと言うのなら……手ぐらい繋いでやってもいいです……。か、勘違いするなですよ!
お前がみじめでどうしようもないからOOOが救いの手を差し伸べてやっているですぅ~!」
「やりましたわねぇ~!寄るな触るな抱きつくなですぅ!このブタ人間っ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:27:45.84 ID:11uG4bzJ0
【会社】
上司「肝尾! また同じミスの繰り返しか!つい昨日説明したじゃないか。お前は日本語も分からんのか、ええ!?」
肝尾「………………」
上司「おい! 何とか言ったらどうなんだ!」
肝尾「……へへ」
上司「ん?」
肝尾「ふひ、ふひひひひひひ……」
上司「っ」ゾクゥ
上司「も、もういい。自分の席に戻りなさい」
非常勤女「うわあ、肝尾さん。またひとりでニヤニヤ笑ってますよ……。気持ち悪。何か心ここにあらずって感じだし。同僚さん、何とか言ってあげてくださいよ」
同僚「嫌だよ、俺だって気持ち悪いし。はぁー、もうあいつにどんな業務振っても時間の無駄だわ。もう俺が全部やるよ」
非常勤女「ええー。大変ですねえ、同僚さん」
同僚「代わりにルーティンワークの一部を非常勤女さんたちに回すから、頼むよ」
非常勤女「ええー!? ちょっとそれはないですよー!」
上司「肝尾! また同じミスの繰り返しか!つい昨日説明したじゃないか。お前は日本語も分からんのか、ええ!?」
肝尾「………………」
上司「おい! 何とか言ったらどうなんだ!」
肝尾「……へへ」
上司「ん?」
肝尾「ふひ、ふひひひひひひ……」
上司「っ」ゾクゥ
上司「も、もういい。自分の席に戻りなさい」
非常勤女「うわあ、肝尾さん。またひとりでニヤニヤ笑ってますよ……。気持ち悪。何か心ここにあらずって感じだし。同僚さん、何とか言ってあげてくださいよ」
同僚「嫌だよ、俺だって気持ち悪いし。はぁー、もうあいつにどんな業務振っても時間の無駄だわ。もう俺が全部やるよ」
非常勤女「ええー。大変ですねえ、同僚さん」
同僚「代わりにルーティンワークの一部を非常勤女さんたちに回すから、頼むよ」
非常勤女「ええー!? ちょっとそれはないですよー!」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:28:42.79 ID:11uG4bzJ0
【肝尾の住むアパート】
肝尾「ただいま」
シ――――――ン
肝尾「ふ、ふふふへ……」
肝尾「あと一週間、あと一週間経てば……また彼女に会える」
肝尾「あと一週間……」
肝尾「一週間?」
肝尾「いっしゅう……かん……?」
肝尾「はぁ……はあ……はぁ……」
肝尾「一瞬間なんて……待てるわけないだろ」
肝尾「会いたい……会いたい……会いたい……彼女に会いたいっ」
肝尾「この眼鏡を……この眼鏡をかければ今すぐ……彼女に会えるっ……」
肝尾「約束なんか……知ったことかっ……!!」
スチャ
肝尾「……」
ツンツン
肝尾「! OOO!」クルッ
喪黒「はぁ~もう9時を回ってるですぅ。夜は眠りの時間ですぅ。さっさと電気を消すですぅ、ブタ人間!」(CV:大平透)
肝尾「ぎゃあああああああああっ!!?」
肝尾「ただいま」
シ――――――ン
肝尾「ふ、ふふふへ……」
肝尾「あと一週間、あと一週間経てば……また彼女に会える」
肝尾「あと一週間……」
肝尾「一週間?」
肝尾「いっしゅう……かん……?」
肝尾「はぁ……はあ……はぁ……」
肝尾「一瞬間なんて……待てるわけないだろ」
肝尾「会いたい……会いたい……会いたい……彼女に会いたいっ」
肝尾「この眼鏡を……この眼鏡をかければ今すぐ……彼女に会えるっ……」
肝尾「約束なんか……知ったことかっ……!!」
スチャ
肝尾「……」
ツンツン
肝尾「! OOO!」クルッ
喪黒「はぁ~もう9時を回ってるですぅ。夜は眠りの時間ですぅ。さっさと電気を消すですぅ、ブタ人間!」(CV:大平透)
肝尾「ぎゃあああああああああっ!!?」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:30:01.98 ID:11uG4bzJ0
肝尾「も、も、喪黒……さんっ……」
喪黒「いけませんねえ、肝尾さん。あれほど忠告したのに。アナタは約束をお破りになった」
肝尾「ひ、いや……これはその……だって!」
喪黒「たった一週間、待っていれば。あなたは至福の30分間をいつまでも享受することができた。その代償、アナタの身を以て受けていただきましょう」
肝尾「な、何をっ……!」
喪黒「ドーーーーーーーーーーン!!!!」
肝尾「うわああああああああああああああああああっ!!」
――――――――
――――
喪黒「いけませんねえ、肝尾さん。あれほど忠告したのに。アナタは約束をお破りになった」
肝尾「ひ、いや……これはその……だって!」
喪黒「たった一週間、待っていれば。あなたは至福の30分間をいつまでも享受することができた。その代償、アナタの身を以て受けていただきましょう」
肝尾「な、何をっ……!」
喪黒「ドーーーーーーーーーーン!!!!」
肝尾「うわああああああああああああああああああっ!!」
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12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:30:56.76 ID:11uG4bzJ0
【SHOP―虎のアナ―】
客A「お、ロー〇ンの同人だ。久しぶりに見た」
客B「お、この絵師さんの絵好きなんだよなー。折角だし買うか」
客B「おー、原作絵の再現度高いじゃん」
客A「それにしてもこのモブの名前、肝尾琢郎ってwww」
客B「見た目が典型的ななキモオタだなwwwお前かよwwww」
客A「は?wwお前だろwwww」
客A「お、ロー〇ンの同人だ。久しぶりに見た」
客B「お、この絵師さんの絵好きなんだよなー。折角だし買うか」
客B「おー、原作絵の再現度高いじゃん」
客A「それにしてもこのモブの名前、肝尾琢郎ってwww」
客B「見た目が典型的ななキモオタだなwwwお前かよwwww」
客A「は?wwお前だろwwww」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:32:54.92 ID:11uG4bzJ0
喪黒「オーホッホッホ……、これで肝尾さんもようやく、無制限に二次元と三次元の壁を超えることができましたね」
喪黒「キャラクターに現実世界に来てもらうか、自分が現実世界から二次元の世界に行ってしまうか」
喪黒「アニメオタクと称される種族の方々には、どちらの方が本望なのでしょうかねえ」
喪黒「もっとも、肝尾さんが眼鏡を通して見た世界は、仮想的で拡張的な、仮初の現実に過ぎなかったわけですが……」
喪黒「ホッホッホ……オーーーホッホッホッホ……」
〈 終 〉
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 15:37:42.88 ID:vd/qIYhVP
乙
ルイズのコピペを思い出した
ルイズのコピペを思い出した
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 17:18:55.34 ID:XuAM5U0Ho
あれ?ハッピーエンドじゃね?
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/04(木) 18:33:10.73 ID:qHRNovIOO
乙
笑うセールスマンSS増えてほしい
>>15
いくら二次元に入ったとしてもモブだぞ
笑うセールスマンSS増えてほしい
>>15
いくら二次元に入ったとしてもモブだぞ
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 09:06:11.32 ID:+0k51WT8o
現実世界でもモブ扱いやで
引用元: 喪黒「ほほう、あなた、そのアニメのキャラクターのことを愛しているのですね」
喪黒福造「私は、あなたに治験のアルバイトをお勧めしたいのです」 大学2年生「治験のアルバイト……」
2018-12-14
1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:30:30.452 ID:5yZhlcFKD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
石井芳彦(20) 大学2年生
【治験バイト】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
石井芳彦(20) 大学2年生
【治験バイト】
ホーッホッホッホ……。」
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:32:19.203 ID:5yZhlcFKD
東京。関東経済大学。教室内で、ミクロ経済学の講義を受ける学生たち。
教授「経済分析を正確に行うために用いられる概念が、需要の価格弾力性の概念です」
黒板にチョークで板書を行う教授。ノートに板書を書き写す男子大学生・石井。
石井(えーーと……。『需要の価格弾力性 = -需要量の百分比変化率/価格の百分比変化率』……か)
テロップ「石井芳彦(20) 関東経済大学2年」
教授「Rを収入、pを価格、Qを数量とすると、次のような式になります」
またも、黒板に板書を行う教授。石井は、黒板の板書を必死でノートに書き写す。
石井(『R=pQ』……か。難しすぎて、何を言ってるのかチンプンカンプンだ)
ミクロ経済学の授業を聞き続ける石井。
石井(でも、ミクロ経済学は必修だから単位を取っておく必要があるな……)
教授「経済分析を正確に行うために用いられる概念が、需要の価格弾力性の概念です」
黒板にチョークで板書を行う教授。ノートに板書を書き写す男子大学生・石井。
石井(えーーと……。『需要の価格弾力性 = -需要量の百分比変化率/価格の百分比変化率』……か)
テロップ「石井芳彦(20) 関東経済大学2年」
教授「Rを収入、pを価格、Qを数量とすると、次のような式になります」
またも、黒板に板書を行う教授。石井は、黒板の板書を必死でノートに書き写す。
石井(『R=pQ』……か。難しすぎて、何を言ってるのかチンプンカンプンだ)
ミクロ経済学の授業を聞き続ける石井。
石井(でも、ミクロ経済学は必修だから単位を取っておく必要があるな……)
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:34:17.632 ID:5yZhlcFKD
昼。学生食堂。大半の学生たちが、テーブルに向かって昼食を食べている。
とあるテーブルにいる石井。彼は、バッグからカレーパンを取り出す。
石井(今日の昼食は、このカレーパンだけにしよう。生活のために、金を切り詰めるしかない……)
カレーパンをかじる石井。
石井(バイトでもして、もう少し生活に余裕を持ちたいな……)
(学業に差し支えのない程度に、バイト生活をした方がいいだろうな)
午後。とある駅。駅の構内の壁には、アルバイト情報誌がいくつも棚に置かれている。アルバイト情報誌を見つめる石井。
石井(とりあえず、アルバイトの求人情報くらいは調べておこう)
アルバイト情報誌を次々と手に取る石井。石井の側に、例の男――喪黒福造が近づく。
喪黒「やぁ、もしもし……」
石井「な、何ですか!?あなたは……」
とあるテーブルにいる石井。彼は、バッグからカレーパンを取り出す。
石井(今日の昼食は、このカレーパンだけにしよう。生活のために、金を切り詰めるしかない……)
カレーパンをかじる石井。
石井(バイトでもして、もう少し生活に余裕を持ちたいな……)
(学業に差し支えのない程度に、バイト生活をした方がいいだろうな)
午後。とある駅。駅の構内の壁には、アルバイト情報誌がいくつも棚に置かれている。アルバイト情報誌を見つめる石井。
石井(とりあえず、アルバイトの求人情報くらいは調べておこう)
アルバイト情報誌を次々と手に取る石井。石井の側に、例の男――喪黒福造が近づく。
喪黒「やぁ、もしもし……」
石井「な、何ですか!?あなたは……」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:36:17.651 ID:5yZhlcFKD
喪黒「私ですか?私はこういう者です」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
石井「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
石井「は、はあ……。そうですか……」
喪黒「アルバイト探しの件で、あなたに役に立つかもしれない話があるんですよ」
「いい店を知っていますから、そこでゆっくり話でもしましょう」
BAR「魔の巣」。喪黒と石井が席に腰掛けている。
喪黒「ほう……。石井さんは、関東経済大学の学生さんですか」
石井「はい……。俺がこの大学を選んだのは、学費でメリットがあったからなんですよ」
喪黒「学費のメリットとは?」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
石井「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
石井「は、はあ……。そうですか……」
喪黒「アルバイト探しの件で、あなたに役に立つかもしれない話があるんですよ」
「いい店を知っていますから、そこでゆっくり話でもしましょう」
BAR「魔の巣」。喪黒と石井が席に腰掛けている。
喪黒「ほう……。石井さんは、関東経済大学の学生さんですか」
石井「はい……。俺がこの大学を選んだのは、学費でメリットがあったからなんですよ」
喪黒「学費のメリットとは?」
6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:38:16.207 ID:5yZhlcFKD
石井「関経大は、英検2級か簿記2級のどれかを持っていると、4年間授業料が免除されるんです」
「俺は英検2級を持っているから、授業料免除のためにこの大学を選んだんです」
喪黒「なるほど……。コストの良さを踏まえた上で、進学を行ったってことですか」
石井「その通りです。俺の実家はあまり裕福ではありませんし……。今の時代、大学を出ていないと就職で不利になります」
「それに、俺の学力でも入れる大学を探した結果……。ここしかなかったってことです」
喪黒「そうですか……。石井さんは、芯のしっかりした人のようですねぇ」
石井「でも、親の仕送りが少ないから、生活費を確保するだけでも一苦労ですよ」
「だから、生活のためにバイト先を見つける必要があるってわけです」
喪黒「……分かりました。そんな石井さんのために、私はいいアルバイト先を紹介したいのですよ」
石井「どんなアルバイトなんですか?それ?」
喪黒「治験のアルバイトですよ。私は、あなたに治験のアルバイトをお勧めしたいのです」
石井「治験のアルバイト……。まさか、新薬の実験とかその意味の『ちけん』ですか?」
「俺は英検2級を持っているから、授業料免除のためにこの大学を選んだんです」
喪黒「なるほど……。コストの良さを踏まえた上で、進学を行ったってことですか」
石井「その通りです。俺の実家はあまり裕福ではありませんし……。今の時代、大学を出ていないと就職で不利になります」
「それに、俺の学力でも入れる大学を探した結果……。ここしかなかったってことです」
喪黒「そうですか……。石井さんは、芯のしっかりした人のようですねぇ」
石井「でも、親の仕送りが少ないから、生活費を確保するだけでも一苦労ですよ」
「だから、生活のためにバイト先を見つける必要があるってわけです」
喪黒「……分かりました。そんな石井さんのために、私はいいアルバイト先を紹介したいのですよ」
石井「どんなアルバイトなんですか?それ?」
喪黒「治験のアルバイトですよ。私は、あなたに治験のアルバイトをお勧めしたいのです」
石井「治験のアルバイト……。まさか、新薬の実験とかその意味の『ちけん』ですか?」
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:40:18.506 ID:5yZhlcFKD
喪黒「はい。『治療の臨床試験』の略を意味する、その『治験(ちけん)』ですよ」
「短期間だけ関わって、高収入を得ることができるとっておきのアルバイトです」
「まあ、厳密にはアルバイトと言うよりボランティアですが……」
石井「うわっ……、やっぱりその意味の治験ですか。もしも、身体に影響とか出たらどうするんですか!?危ないですよ!」
喪黒「大丈夫です。治験の参加中に身体に副作用が出た時は、医療スタッフがしっかりした処置を行ってくれますよ」
「それに、治験は参加した後であっても、いつでも自由に辞めることが可能なんですよ」
石井「そ、そうなんですか……」
喪黒「それに治験の参加中は、規則正しい生活を送ることができます」
「何事もなく治験を終えれば、むしろ、以前よりも健康体になれる可能性もあるのですよ」
石井「なるほど……。そういうことなら、治験のバイトに参加してもいいかもしれませんね……」
喪黒「そうです!その調子!」
石井「とはいえ……。治験バイトは募集したとしても、参加できる倍率が高めらしいですよね。問題はそれですよ」
「短期間だけ関わって、高収入を得ることができるとっておきのアルバイトです」
「まあ、厳密にはアルバイトと言うよりボランティアですが……」
石井「うわっ……、やっぱりその意味の治験ですか。もしも、身体に影響とか出たらどうするんですか!?危ないですよ!」
喪黒「大丈夫です。治験の参加中に身体に副作用が出た時は、医療スタッフがしっかりした処置を行ってくれますよ」
「それに、治験は参加した後であっても、いつでも自由に辞めることが可能なんですよ」
石井「そ、そうなんですか……」
喪黒「それに治験の参加中は、規則正しい生活を送ることができます」
「何事もなく治験を終えれば、むしろ、以前よりも健康体になれる可能性もあるのですよ」
石井「なるほど……。そういうことなら、治験のバイトに参加してもいいかもしれませんね……」
喪黒「そうです!その調子!」
石井「とはいえ……。治験バイトは募集したとしても、参加できる倍率が高めらしいですよね。問題はそれですよ」
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:42:17.680 ID:5yZhlcFKD
喪黒は石井に右手の人差し指を向ける。
喪黒「心配いりません!石井さんは必ず、治験のアルバイトに参加します!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
石井「うわああああああああああ!!!」
とあるマンション、石井の部屋。スマホを操作し、ネットサーフィンをする石井。
石井(おっ、治験の案件が見つかった。申し込んでみるか……)
とある病院。待合室の椅子に腰かける石井。石井の周りにも、数人の人間がいる。
石井(これが事前検診か……。何か緊張するな……)
医者「今回の治験は、新薬の有効性や安全性を確認するために行われます」
「治験はあくまでもボランティアであり、社会貢献を目的としたものです」
ベッドの上に寝転び、心電図や血圧の測定を行う石井。女性看護師が注射器を使い、石井から採血を行う。
喪黒「心配いりません!石井さんは必ず、治験のアルバイトに参加します!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
石井「うわああああああああああ!!!」
とあるマンション、石井の部屋。スマホを操作し、ネットサーフィンをする石井。
石井(おっ、治験の案件が見つかった。申し込んでみるか……)
とある病院。待合室の椅子に腰かける石井。石井の周りにも、数人の人間がいる。
石井(これが事前検診か……。何か緊張するな……)
医者「今回の治験は、新薬の有効性や安全性を確認するために行われます」
「治験はあくまでもボランティアであり、社会貢献を目的としたものです」
ベッドの上に寝転び、心電図や血圧の測定を行う石井。女性看護師が注射器を使い、石井から採血を行う。
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:44:19.510 ID:5yZhlcFKD
病院を出て、道を歩く石井。
石井(事前検診に協力しただけで、小遣いが貰えた……。飯代が少し浮いたな……)
10日後。とあるマンション、石井の部屋。スマホで病院関係者と通話する石井。
石井「……はい。合格ですか?あ、ありがとうございます!」
通話を終え、スマホを握りしめたまま喜ぶ石井。
石井(やった!治験の応募に合格したぞ!)
入院1日目。とある病院。ベッドの上で、漫画の単行本を読む石井。彼は病院用のパジャマを着ている。
石井(いよいよ俺も入院か……)
夜。病室で夕食の弁当を食べる石井。ある程度時間が経った後、消灯時間とともに彼はベッドで目を閉じる。
石井(事前検診に協力しただけで、小遣いが貰えた……。飯代が少し浮いたな……)
10日後。とあるマンション、石井の部屋。スマホで病院関係者と通話する石井。
石井「……はい。合格ですか?あ、ありがとうございます!」
通話を終え、スマホを握りしめたまま喜ぶ石井。
石井(やった!治験の応募に合格したぞ!)
入院1日目。とある病院。ベッドの上で、漫画の単行本を読む石井。彼は病院用のパジャマを着ている。
石井(いよいよ俺も入院か……)
夜。病室で夕食の弁当を食べる石井。ある程度時間が経った後、消灯時間とともに彼はベッドで目を閉じる。
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:46:17.691 ID:5yZhlcFKD
入院2日目。朝。看護師により、紙コップに入った水を飲まされる石井。
待合室。ソファーに座る石井ら治験参加者たち。
看護師「石井芳彦様ーー」
石井「はーーい」
診療室。数人の関係者が見守る中、薬の錠剤を飲む石井。
石井(うっ……。俺は遂に、新薬を飲んじまった……。果たして、どうなることやら……)
心電図や血圧の測定、採血を行う石井。彼は、ボトルに入った尿を女性看護師に提出する。
石井(自分の尿を看護師に渡すなんて、何だか恥ずかしいな……)
昼。病室で、昼食の弁当を食べる石井。
石井(そうか……。治験の入院食は、幕の内弁当が出されるのか)
待合室。ソファーに座る石井ら治験参加者たち。
看護師「石井芳彦様ーー」
石井「はーーい」
診療室。数人の関係者が見守る中、薬の錠剤を飲む石井。
石井(うっ……。俺は遂に、新薬を飲んじまった……。果たして、どうなることやら……)
心電図や血圧の測定、採血を行う石井。彼は、ボトルに入った尿を女性看護師に提出する。
石井(自分の尿を看護師に渡すなんて、何だか恥ずかしいな……)
昼。病室で、昼食の弁当を食べる石井。
石井(そうか……。治験の入院食は、幕の内弁当が出されるのか)
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:48:17.057 ID:5yZhlcFKD
ロビー。漫画の単行本を、本棚から取り出す石井。本棚には、漫画本がこれでもかと詰まっている。
石井(ここの本棚は、置いてある漫画の種類が豊富だな……)
病室のベッドで横になり、漫画の単行本を読む石井。しばらくした後、女性看護師が注射器を使い、石井から採血を行う。
石井(また採血が行われるのか……。それにしても、1日に何度も採血を行っているな……)
夜。夕食を食べる石井。彼は病室で漫画を読み続けた後、早い睡眠をとる。
入院3日目。この日も、病室のベッドで漫画を読む石井。
石井(全く、暇で暇で仕方がない……)
夕方。裸になって、シャワーを浴びる石井。
石井(身体を洗うことができるなんて、気持ちいいな……)
入院4日目。この日も、石井はベッドで漫画を読んでいる。
石井(運動禁止のせいで、身体がなまってきたな……)
石井(ここの本棚は、置いてある漫画の種類が豊富だな……)
病室のベッドで横になり、漫画の単行本を読む石井。しばらくした後、女性看護師が注射器を使い、石井から採血を行う。
石井(また採血が行われるのか……。それにしても、1日に何度も採血を行っているな……)
夜。夕食を食べる石井。彼は病室で漫画を読み続けた後、早い睡眠をとる。
入院3日目。この日も、病室のベッドで漫画を読む石井。
石井(全く、暇で暇で仕方がない……)
夕方。裸になって、シャワーを浴びる石井。
石井(身体を洗うことができるなんて、気持ちいいな……)
入院4日目。この日も、石井はベッドで漫画を読んでいる。
石井(運動禁止のせいで、身体がなまってきたな……)
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:50:19.220 ID:5yZhlcFKD
BAR「魔の巣」。喪黒と石井が席に腰掛けている。
喪黒「治験のアルバイトはいかがでしたか?」
石井「まあ、その……。思っていたような危ないものではありませんでしたね」
「のんびり過ごすことができて、何事もないまま退院できましたから……」
喪黒「石井さん。治験に参加してよかったでしょう?」
石井「はい……。俺にとっては、いい人生経験になりましたよ」
喪黒「よかったですねぇ。石井さん」
石井「何よりも……。4泊5日入院しただけで20万円貰えるってのは、本当においしいバイトですよ」
「貧乏学生の俺にとっては、まさに一獲千金とでも言うべきバイトでした」
喪黒「そうですか……。だったら、あなたには約束していただきたいことがあります」
石井「約束!?」
喪黒「はい。治験を終えた後、再び治験に参加できるまでには数ヶ月間かかります」
「従って、治験のアルバイトを梯子するような真似は絶対にいけませんよ。いいですね!?」
石井「わ、分かりました……。喪黒さん」
喪黒「治験のアルバイトはいかがでしたか?」
石井「まあ、その……。思っていたような危ないものではありませんでしたね」
「のんびり過ごすことができて、何事もないまま退院できましたから……」
喪黒「石井さん。治験に参加してよかったでしょう?」
石井「はい……。俺にとっては、いい人生経験になりましたよ」
喪黒「よかったですねぇ。石井さん」
石井「何よりも……。4泊5日入院しただけで20万円貰えるってのは、本当においしいバイトですよ」
「貧乏学生の俺にとっては、まさに一獲千金とでも言うべきバイトでした」
喪黒「そうですか……。だったら、あなたには約束していただきたいことがあります」
石井「約束!?」
喪黒「はい。治験を終えた後、再び治験に参加できるまでには数ヶ月間かかります」
「従って、治験のアルバイトを梯子するような真似は絶対にいけませんよ。いいですね!?」
石井「わ、分かりました……。喪黒さん」
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:52:23.269 ID:5yZhlcFKD
とあるファミレス。テーブルで、分厚いステーキを食べる石井。
石井(今までの俺は粗食だったからな……。金があるから、多少は栄養のあるものを食うべきだな……)
翌日。関東経済大学。学生食堂でトンカツ定食を食べる石井。
石井(学食で定食が食えるなんて、夢みたいだ……。さすが、20万円様様だよ……)
夕方。スーパー銭湯。大浴場につかる石井。
石井(ふうっ……。俺は風呂代もケチっていたんだから、このくらい自分へのご褒美のようなものだ)
とあるマンション。部屋で、1万円札を数枚握りしめる石井。
石井(まだ金はたっぷり余っているから、もう少し贅沢をしてもいいだろう)
石井の金使いは前よりも荒くなっていく。
タイ焼き屋で、タイ焼きを箱詰めで買う石井。回転寿司屋で、寿司をたらふく食べる石井。
居酒屋チェーン店で、料理や酒に舌鼓を打つ石井。カラオケ屋で、1人カラオケに明け暮れる石井。
石井(今までの俺は粗食だったからな……。金があるから、多少は栄養のあるものを食うべきだな……)
翌日。関東経済大学。学生食堂でトンカツ定食を食べる石井。
石井(学食で定食が食えるなんて、夢みたいだ……。さすが、20万円様様だよ……)
夕方。スーパー銭湯。大浴場につかる石井。
石井(ふうっ……。俺は風呂代もケチっていたんだから、このくらい自分へのご褒美のようなものだ)
とあるマンション。部屋で、1万円札を数枚握りしめる石井。
石井(まだ金はたっぷり余っているから、もう少し贅沢をしてもいいだろう)
石井の金使いは前よりも荒くなっていく。
タイ焼き屋で、タイ焼きを箱詰めで買う石井。回転寿司屋で、寿司をたらふく食べる石井。
居酒屋チェーン店で、料理や酒に舌鼓を打つ石井。カラオケ屋で、1人カラオケに明け暮れる石井。
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:54:32.188 ID:5yZhlcFKD
夜。街を歩きながら、石井は考え込む。
石井(さすがに、早いペースで金を使いすぎたかな……。あの20万円の大金、思ったよりも減ってやがる……)
その後も、石井はこれでもかと豪遊を重ねていく。
パチ〇コ屋で、パチ〇コ台を打つ石井。マッサージ店で、全身マッサージを行う石井。
耳かき専門店で、女の子に耳かきをして貰う石井。アイドル喫茶で、アイドルたちの歌を楽しむ石井。
とある銀行。ATMで、預金の残高を確認する石井。彼の顔には、焦りの表情が現われている。
石井(うわあ……。治験で手に入れた20万円どころか、親の仕送りも使い込んでしまった……)
(俺の預金もかなり減ってる……。このままじゃ、にっちもさっちもいかない……)
とあるマンション、石井の部屋。石井はスマホを操作しながら、ネットサーフィンを行っている。
石井(治験の申し込みがあった……。よぉし……。もう1度、治験のバイトに参加して金を稼ごう)
石井(さすがに、早いペースで金を使いすぎたかな……。あの20万円の大金、思ったよりも減ってやがる……)
その後も、石井はこれでもかと豪遊を重ねていく。
パチ〇コ屋で、パチ〇コ台を打つ石井。マッサージ店で、全身マッサージを行う石井。
耳かき専門店で、女の子に耳かきをして貰う石井。アイドル喫茶で、アイドルたちの歌を楽しむ石井。
とある銀行。ATMで、預金の残高を確認する石井。彼の顔には、焦りの表情が現われている。
石井(うわあ……。治験で手に入れた20万円どころか、親の仕送りも使い込んでしまった……)
(俺の預金もかなり減ってる……。このままじゃ、にっちもさっちもいかない……)
とあるマンション、石井の部屋。石井はスマホを操作しながら、ネットサーフィンを行っている。
石井(治験の申し込みがあった……。よぉし……。もう1度、治験のバイトに参加して金を稼ごう)
16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:56:18.078 ID:5yZhlcFKD
石井の頭に、喪黒の忠告が思い浮かぶ。
(喪黒「治験を終えた後、再び治験に参加できるまでには数ヶ月間かかります」
「従って、治験のアルバイトを梯子するような真似は絶対にいけませんよ」)
石井(構うもんか。豪遊を続けたせいで、今の俺は金がないんだ……。やむを得ん……)
とある病院。事前検診に参加する石井たち。医者が、参加者たちに説明を行う。
医者「今回の治験は、場合によっては重大な副作用を引き起こす恐れがあります」
「そのことをご理解いただいた上で、参加するか否かを判断してください」
石井(何だって……!?)
医者「ただし、副作用が起きる確率は極めて低いものです」
「それに、万一健康が損なわれた場合には、スタッフによって適切な処置や治療が行われます」
石井(よかった……。副作用が起きる確率は極めて低い……か。それなら、まず大丈夫だろう)
心電図や血圧の測定、採血を行う石井。
(喪黒「治験を終えた後、再び治験に参加できるまでには数ヶ月間かかります」
「従って、治験のアルバイトを梯子するような真似は絶対にいけませんよ」)
石井(構うもんか。豪遊を続けたせいで、今の俺は金がないんだ……。やむを得ん……)
とある病院。事前検診に参加する石井たち。医者が、参加者たちに説明を行う。
医者「今回の治験は、場合によっては重大な副作用を引き起こす恐れがあります」
「そのことをご理解いただいた上で、参加するか否かを判断してください」
石井(何だって……!?)
医者「ただし、副作用が起きる確率は極めて低いものです」
「それに、万一健康が損なわれた場合には、スタッフによって適切な処置や治療が行われます」
石井(よかった……。副作用が起きる確率は極めて低い……か。それなら、まず大丈夫だろう)
心電図や血圧の測定、採血を行う石井。
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 23:58:19.132 ID:5yZhlcFKD
とある病院。病院用のパジャマを着た石井が、ベッドで漫画の単行本を読む。
石井(この漫画も読み終えてしまった……。新しい漫画を取りに行こう)
読み終えた漫画本を持ち、ロビーの中に入る石井。部屋の中には、病院用のパジャマを着た喪黒がいる。
喪黒「石井芳彦さん……。あなた約束を破りましたね」
石井「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私は言ったはずですよ。治験のアルバイトを梯子してはいけない……と」
「にも関わらず……。あなたは前の治験から時間が経っていないのに、今また治験に参加しましたねぇ……」
石井「す、すみません……!!どうしても金が必要なので、つい……」
喪黒「言い訳はよしてください。約束を破ったのだから、あなたにはペナルティーを受けて貰います!!」
喪黒は石井に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
石井「ギャアアアアアアアアア!!!」
石井(この漫画も読み終えてしまった……。新しい漫画を取りに行こう)
読み終えた漫画本を持ち、ロビーの中に入る石井。部屋の中には、病院用のパジャマを着た喪黒がいる。
喪黒「石井芳彦さん……。あなた約束を破りましたね」
石井「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私は言ったはずですよ。治験のアルバイトを梯子してはいけない……と」
「にも関わらず……。あなたは前の治験から時間が経っていないのに、今また治験に参加しましたねぇ……」
石井「す、すみません……!!どうしても金が必要なので、つい……」
喪黒「言い訳はよしてください。約束を破ったのだから、あなたにはペナルティーを受けて貰います!!」
喪黒は石井に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
石井「ギャアアアアアアアアア!!!」
20: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:00:18.974 ID:TpGxItTCD
翌日、午前。とある病院。診療室。数人の関係者が見守る中、薬の錠剤を飲む石井。
午後。石井は、ベッドの上で漫画を読もうとしたものの……。右手で頭を押さえる石井。
石井(うう……。頭が痛む……。漫画の内容が頭に入ってこない……)
漫画を返却するため、病室を出る石井。廊下を歩く石井は、白骨化した通行人を2人見かける。
石井「わああっ!!なんだ、こいつらは!?」
実際は、廊下には石井以外誰もいない。女性看護師Aが石井の元へ向かう。
女性看護師A「石井様、どうなされましたか!?」
脅えた表情で、廊下の蛍光灯を指差す石井。
石井「あれを見ろ!!あの蛍光灯から、俺に向かって電波が発射されてるんだ!!」
女性看護師A「そんなことはありません!!落ち着いてください!!」
石井「嘘だ!!電波を使って俺に攻撃するのはやめろ!!お前は、俺を監視するために送り込まれた魔女なんだろう!!」
女性看護師Bが、石井と女性看護師Aの元へ駆けつける。
午後。石井は、ベッドの上で漫画を読もうとしたものの……。右手で頭を押さえる石井。
石井(うう……。頭が痛む……。漫画の内容が頭に入ってこない……)
漫画を返却するため、病室を出る石井。廊下を歩く石井は、白骨化した通行人を2人見かける。
石井「わああっ!!なんだ、こいつらは!?」
実際は、廊下には石井以外誰もいない。女性看護師Aが石井の元へ向かう。
女性看護師A「石井様、どうなされましたか!?」
脅えた表情で、廊下の蛍光灯を指差す石井。
石井「あれを見ろ!!あの蛍光灯から、俺に向かって電波が発射されてるんだ!!」
女性看護師A「そんなことはありません!!落ち着いてください!!」
石井「嘘だ!!電波を使って俺に攻撃するのはやめろ!!お前は、俺を監視するために送り込まれた魔女なんだろう!!」
女性看護師Bが、石井と女性看護師Aの元へ駆けつける。
21: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:03:39.722 ID:TpGxItTCD
女性看護師B「石井様!!しっかりしてください!!」
石井「ここは水晶玉の中なんだ!!俺を水晶玉の中に閉じ込めて、洗脳電波で身体を乗っ取るつもりか!?」
女性看護師Aと女性看護師Bが、石井の両脇を押さえつける。
石井「ハハハハハハハ!!!ハーーハハハハハハ……!!!」
看護師たちにより、どこかの部屋へ連れて行かれる石井。彼は一人でけたたましい笑い声を発している。
とある病院。病院用のパジャマを着た喪黒が、ロビーの中でくつろいでいる。
喪黒「学生がアルバイトを行うのは、勉学を疎かにしているように見られがちですが……。実はアルバイトにも大切な意味があるのです」
「なぜなら、アルバイトを通して人生経験を積むことができますし……。その時の経験は、後で社会に出た時に必ず役に立ちます」
「従って、学生ならば勉学に励むのはもちろん大事ですが……。アルバイトを通じて社会の縮図を学ぶことも忘れてはいけません」
「ただし、これは言うまでもありませんが……。アルバイトといえども、おいしい話にはくれぐれも気をつけた方がいいですよ」
「ましてや、楽して大金を得ると人生が狂う恐れがありますからねぇ。とりあえず、大学生の石井さんにはいい薬になったでしょう」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
石井「ここは水晶玉の中なんだ!!俺を水晶玉の中に閉じ込めて、洗脳電波で身体を乗っ取るつもりか!?」
女性看護師Aと女性看護師Bが、石井の両脇を押さえつける。
石井「ハハハハハハハ!!!ハーーハハハハハハ……!!!」
看護師たちにより、どこかの部屋へ連れて行かれる石井。彼は一人でけたたましい笑い声を発している。
とある病院。病院用のパジャマを着た喪黒が、ロビーの中でくつろいでいる。
喪黒「学生がアルバイトを行うのは、勉学を疎かにしているように見られがちですが……。実はアルバイトにも大切な意味があるのです」
「なぜなら、アルバイトを通して人生経験を積むことができますし……。その時の経験は、後で社会に出た時に必ず役に立ちます」
「従って、学生ならば勉学に励むのはもちろん大事ですが……。アルバイトを通じて社会の縮図を学ぶことも忘れてはいけません」
「ただし、これは言うまでもありませんが……。アルバイトといえども、おいしい話にはくれぐれも気をつけた方がいいですよ」
「ましてや、楽して大金を得ると人生が狂う恐れがありますからねぇ。とりあえず、大学生の石井さんにはいい薬になったでしょう」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
引用元: 喪黒福造「私は、あなたに治験のアルバイトをお勧めしたいのです」 大学2年生「治験のアルバイト……」
喪黒福造「これは、究極のフェロモン香水です」 ホスト「胡散臭そうですね……」
2018-12-12
1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:08:14.951 ID:GRpk3KlxD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
咲斗(21) ホスト
【フェロモン香水】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
咲斗(21) ホスト
【フェロモン香水】
ホーッホッホッホ……。」
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:10:21.461 ID:GRpk3KlxD
テロップ「東京、新宿――」
夕方。「歌舞伎町一番街」の看板。歓楽街の中を歩く通行人たち。通行人の中には、とある若者の姿も交じっている。
咲斗(ここが歌舞伎町か……。さすが、東京は世界の大都市なだけあって人が多いな……)
テロップ「花岡剛(21) フリーター 後の咲斗」
街の中に溢れるホストクラブの看板。看板のキャッチコピーをいくつも目にする花岡――後の咲斗。
どの看板にも、整った顔立ちのホストの写真が写っている。自己顕示欲とナルシシズムに満ちた表情で――。
看板「究極のお・も・て・な・し」「仕事でやってるんじゃない。これは生き様なんだ」「イケメンは神が俺に与えた宝」
「一億円プレイヤーはここにいる」「何もかもが手に入る夢のような人生」「君もこの街で伝説になってみないか?」
咲斗(これがホストか。大金を稼ぎ、女性にモテモテ……。うらやましいなぁ……)
(俺もホストになれば、こういう人生を送ることだって夢ではないかもしれない……)
看板を見つめながら、決意する花岡――後の咲斗。
咲斗(よし、決めた!俺はホストになるぞ!)
夕方。「歌舞伎町一番街」の看板。歓楽街の中を歩く通行人たち。通行人の中には、とある若者の姿も交じっている。
咲斗(ここが歌舞伎町か……。さすが、東京は世界の大都市なだけあって人が多いな……)
テロップ「花岡剛(21) フリーター 後の咲斗」
街の中に溢れるホストクラブの看板。看板のキャッチコピーをいくつも目にする花岡――後の咲斗。
どの看板にも、整った顔立ちのホストの写真が写っている。自己顕示欲とナルシシズムに満ちた表情で――。
看板「究極のお・も・て・な・し」「仕事でやってるんじゃない。これは生き様なんだ」「イケメンは神が俺に与えた宝」
「一億円プレイヤーはここにいる」「何もかもが手に入る夢のような人生」「君もこの街で伝説になってみないか?」
咲斗(これがホストか。大金を稼ぎ、女性にモテモテ……。うらやましいなぁ……)
(俺もホストになれば、こういう人生を送ることだって夢ではないかもしれない……)
看板を見つめながら、決意する花岡――後の咲斗。
咲斗(よし、決めた!俺はホストになるぞ!)
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:12:16.023 ID:GRpk3KlxD
テロップ「2か月後――」
夜。新宿・歌舞伎町。ホストクラブ『ブレイジングサン』。女性客の前でシャンパンコールを行うホストたち。
ホストたち「いよいよ始まる♪ ショータイム♪ シャンパンコールの幕開けだ♪」
「あなたのために♪ シャンパンを♪ 感謝をこめて♪ 飲み干しまーーす♪」
咲斗こと花岡も、ホストの一員としてシャンパンコールに加わっている。彼は、高価でおしゃれなスーツを身にまとっている。
テロップ「咲斗(21) ホスト 本名は花岡剛」
盛り上がる女性客とホストたち。同僚のホスト・修也と一緒に、シャンパンを一気飲みする咲斗。
ホストたち「飲んで♪ 飲んで♪ 飲んで♪ 飲んで♪」
夜中。新宿・歌舞伎町。修也とともに道を歩く咲斗。彼は、右手で頭を押さえている。
咲斗「うぅーー、酒の飲み過ぎで頭が痛いよ……。修也……」
修也「俺もだよ、咲斗……。酒の消化班をやらされるの、マジ辛ぇわぁー」
夜。新宿・歌舞伎町。ホストクラブ『ブレイジングサン』。女性客の前でシャンパンコールを行うホストたち。
ホストたち「いよいよ始まる♪ ショータイム♪ シャンパンコールの幕開けだ♪」
「あなたのために♪ シャンパンを♪ 感謝をこめて♪ 飲み干しまーーす♪」
咲斗こと花岡も、ホストの一員としてシャンパンコールに加わっている。彼は、高価でおしゃれなスーツを身にまとっている。
テロップ「咲斗(21) ホスト 本名は花岡剛」
盛り上がる女性客とホストたち。同僚のホスト・修也と一緒に、シャンパンを一気飲みする咲斗。
ホストたち「飲んで♪ 飲んで♪ 飲んで♪ 飲んで♪」
夜中。新宿・歌舞伎町。修也とともに道を歩く咲斗。彼は、右手で頭を押さえている。
咲斗「うぅーー、酒の飲み過ぎで頭が痛いよ……。修也……」
修也「俺もだよ、咲斗……。酒の消化班をやらされるの、マジ辛ぇわぁー」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:14:18.625 ID:GRpk3KlxD
とある牛丼屋。修也と一緒に牛丼を食べる咲斗。店内には喪黒福造の姿もある。
咲斗「修也ぁ。俺、大丈夫かなぁ……。まだ1人も指名客取れてないんだよ……」
修也「俺だってそうさ。俺らは新人ホストなんだから、一朝一夕で指名客は取れねぇよ」
咲斗「でもなぁ、ホストの仕事ってのはよぉ……。3カ月過ぎて指名客が一人も取れないと、基本給がゼロになるんだぜ」
「俺、このままじゃマジでヤバいよ」
修也「諦めんなよ、咲斗!絶対、何とかなるって!俺と一緒に、歌舞伎町でテッペン目指そうよ!」
咲斗「お、おう……!」
喪黒「…………」
咲斗と修也の会話を聞く喪黒。どうやら、喪黒はまたしても何かの企みを思いついたようだ。
昼。とあるゲームセンター。 ゲーム『太鼓の名人』をプレイする咲斗。 彼はバチを持ち、和太鼓を叩いている。
ゲームを終えた咲斗の前に、喪黒が現れる。咲斗に声をかける喪黒。
咲斗「修也ぁ。俺、大丈夫かなぁ……。まだ1人も指名客取れてないんだよ……」
修也「俺だってそうさ。俺らは新人ホストなんだから、一朝一夕で指名客は取れねぇよ」
咲斗「でもなぁ、ホストの仕事ってのはよぉ……。3カ月過ぎて指名客が一人も取れないと、基本給がゼロになるんだぜ」
「俺、このままじゃマジでヤバいよ」
修也「諦めんなよ、咲斗!絶対、何とかなるって!俺と一緒に、歌舞伎町でテッペン目指そうよ!」
咲斗「お、おう……!」
喪黒「…………」
咲斗と修也の会話を聞く喪黒。どうやら、喪黒はまたしても何かの企みを思いついたようだ。
昼。とあるゲームセンター。 ゲーム『太鼓の名人』をプレイする咲斗。 彼はバチを持ち、和太鼓を叩いている。
ゲームを終えた咲斗の前に、喪黒が現れる。咲斗に声をかける喪黒。
6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:16:15.788 ID:GRpk3KlxD
喪黒「やぁ……。あなた、ホストの方だそうですねぇ?」
咲斗「は、はい……。どうして、俺がホストだって分かったんですか?」
喪黒「夜中に、牛丼屋であなたが仲間と会話をしているのを見たんですよ。確か、あなたの源氏名は『咲斗』さんですよねぇ?」
咲斗「そ、そうですよ……!記憶力がいいですね、あなた……」
喪黒「いやぁ……。仕事柄、長年、人間観察を行ってきた賜物ですよ。何しろ、私はこういう者ですから」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
咲斗「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
咲斗「あなた、セールスマンなんですか……」
喪黒「どちらかと言うと、ボランティアみたいなものですよ。何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
咲斗「は、はい……。どうして、俺がホストだって分かったんですか?」
喪黒「夜中に、牛丼屋であなたが仲間と会話をしているのを見たんですよ。確か、あなたの源氏名は『咲斗』さんですよねぇ?」
咲斗「そ、そうですよ……!記憶力がいいですね、あなた……」
喪黒「いやぁ……。仕事柄、長年、人間観察を行ってきた賜物ですよ。何しろ、私はこういう者ですから」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
咲斗「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
咲斗「あなた、セールスマンなんですか……」
喪黒「どちらかと言うと、ボランティアみたいなものですよ。何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:18:15.707 ID:GRpk3KlxD
BAR「魔の巣」。喪黒と咲斗が席に腰掛けている。
咲斗「実は俺、2か月前にホストになったばかりなんです」
喪黒「咲斗さんが、ホストになった目的は何ですか?」
咲斗「うーーん……。そりゃあ、お金をたくさん稼いで、女にモテモテになるためですけど……」
「何と言っても俺にとっては、人生の一発逆転を実現するためってことですよ」
喪黒「ホストで成功した人には、年収が億の人もいますからねぇ」
咲斗「そうです。ホストになれば、手っ取り早く成功できるかもしれないと思ったんですけど……」
「やっぱり、現実は厳しいですよね……」
喪黒「無理もありませんよ。ホストの世界は、競争が非常に厳しいのですから……」
咲斗「でも、俺にとっては死活問題なんです!なぜなら俺は……」
喪黒「ホストになってから、3カ月過ぎても指名客が取れないと、基本給がゼロになるのでしょう?咲斗さん」
咲斗「そ、その通りです……!そのおかげもあって、3か月以内で店を辞める新人ホストが多いんですよ」
咲斗「実は俺、2か月前にホストになったばかりなんです」
喪黒「咲斗さんが、ホストになった目的は何ですか?」
咲斗「うーーん……。そりゃあ、お金をたくさん稼いで、女にモテモテになるためですけど……」
「何と言っても俺にとっては、人生の一発逆転を実現するためってことですよ」
喪黒「ホストで成功した人には、年収が億の人もいますからねぇ」
咲斗「そうです。ホストになれば、手っ取り早く成功できるかもしれないと思ったんですけど……」
「やっぱり、現実は厳しいですよね……」
喪黒「無理もありませんよ。ホストの世界は、競争が非常に厳しいのですから……」
咲斗「でも、俺にとっては死活問題なんです!なぜなら俺は……」
喪黒「ホストになってから、3カ月過ぎても指名客が取れないと、基本給がゼロになるのでしょう?咲斗さん」
咲斗「そ、その通りです……!そのおかげもあって、3か月以内で店を辞める新人ホストが多いんですよ」
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:20:20.102 ID:GRpk3KlxD
喪黒「ねぇ、咲斗さん……。どうしてもダメだと思ったら、ホストから足を洗ったらどうです?」
咲斗「そんなわけにはいきません!!一発逆転を目指してホストになった以上、ここで諦めたくないんです!!」
喪黒「……分かりました。そんなあなたのために、いいものをあげましょう」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上に置かれたのは、透明な液体が入った小さな瓶だ。
咲斗「これ、もしかして香水ですか……?」
喪黒「なかなか察しがいいですね。これは、究極のフェロモン香水です」
咲斗「胡散臭そうですね……。フェロモン香水って、昔から雑誌の通販とかで紹介されてきたあれでしょう?」
喪黒「はい。でも、フェロモン香水の効果は、全く根拠がないわけじゃないんですよ」
咲斗「どういうことですか?」
喪黒「人間を含め、動物はフェロモンを身体から分泌しています」
「多くの種類があるフェロモンのうち、異性を引き付ける作用があるのが性フェロモンなのです」
咲斗「そんなわけにはいきません!!一発逆転を目指してホストになった以上、ここで諦めたくないんです!!」
喪黒「……分かりました。そんなあなたのために、いいものをあげましょう」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上に置かれたのは、透明な液体が入った小さな瓶だ。
咲斗「これ、もしかして香水ですか……?」
喪黒「なかなか察しがいいですね。これは、究極のフェロモン香水です」
咲斗「胡散臭そうですね……。フェロモン香水って、昔から雑誌の通販とかで紹介されてきたあれでしょう?」
喪黒「はい。でも、フェロモン香水の効果は、全く根拠がないわけじゃないんですよ」
咲斗「どういうことですか?」
喪黒「人間を含め、動物はフェロモンを身体から分泌しています」
「多くの種類があるフェロモンのうち、異性を引き付ける作用があるのが性フェロモンなのです」
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:22:15.989 ID:GRpk3KlxD
咲斗「そうなんですか……」
喪黒「フェロモン香水とは、ヒトフェロモンを混ぜて作った香水のことです」
「その数あるフェロモン香水の中でも、究極のものがここにある香水なんですよ」
咲斗「究極……ですか。じゃあ、これを使えば俺は……」
喪黒「今までとは比べ物にならないくらいに、女性にモテモテになれます」
「どうです?あなたのお仕事のために、これ以上なく優れものの道具でしょう?」
咲斗「まあ……。正直、半信半疑ですけど……。藁にもすがるような気持ちもありますからね……」
喪黒「よろしかったら、この香水を咲斗さんにプレゼントしますよ」
咲斗「えっ、いいんですか!?」
喪黒「構いません。これは、あなたがホストとして成功することを願う私の気持ちですから……」
咲斗「ど、どうも……。では、お言葉に甘えて、これ貰っときますよ……」
喪黒「香水の効果は本物ですよ。使用すれば、すぐに分かるでしょう」
喪黒「フェロモン香水とは、ヒトフェロモンを混ぜて作った香水のことです」
「その数あるフェロモン香水の中でも、究極のものがここにある香水なんですよ」
咲斗「究極……ですか。じゃあ、これを使えば俺は……」
喪黒「今までとは比べ物にならないくらいに、女性にモテモテになれます」
「どうです?あなたのお仕事のために、これ以上なく優れものの道具でしょう?」
咲斗「まあ……。正直、半信半疑ですけど……。藁にもすがるような気持ちもありますからね……」
喪黒「よろしかったら、この香水を咲斗さんにプレゼントしますよ」
咲斗「えっ、いいんですか!?」
喪黒「構いません。これは、あなたがホストとして成功することを願う私の気持ちですから……」
咲斗「ど、どうも……。では、お言葉に甘えて、これ貰っときますよ……」
喪黒「香水の効果は本物ですよ。使用すれば、すぐに分かるでしょう」
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:24:16.254 ID:GRpk3KlxD
ホスト寮、共同部屋。咲斗を含めた数人のホストたちが、床に座って会話をしている。考え事をする咲斗。
咲斗(フェロモン香水に、効果があるかどうかは分からない……。だが、俺はやるしかない)
(この香水を使用してから、例の作戦を行えば効果が本物かどうか分かる……)
修也「おい、咲斗……。お前、人の話ちゃんと聞いてるのか?」
咲斗「あ、ああ……」
夕方。新宿・歌舞伎町。通行中の女性に近づき、名刺を渡す咲斗。
さらに咲斗は、別の女性にも自分の名刺を渡す。次々と、通行中の女性に名刺を渡す咲斗。
咲斗(仕事前と仕事後に、道を歩く女性たちに声を掛けまくる。これが俺の作戦だ)
(あの香水の効き目が本物なら……。彼女たちは当然、俺の客になってくれるはずだ)
夜。ホストクラブ『ブレイジングサン』。咲斗は、女性客とともにソファーに座っている。
酒の入ったシャンパングラスを乾杯する咲斗と女性客。
咲斗(フェロモン香水に、効果があるかどうかは分からない……。だが、俺はやるしかない)
(この香水を使用してから、例の作戦を行えば効果が本物かどうか分かる……)
修也「おい、咲斗……。お前、人の話ちゃんと聞いてるのか?」
咲斗「あ、ああ……」
夕方。新宿・歌舞伎町。通行中の女性に近づき、名刺を渡す咲斗。
さらに咲斗は、別の女性にも自分の名刺を渡す。次々と、通行中の女性に名刺を渡す咲斗。
咲斗(仕事前と仕事後に、道を歩く女性たちに声を掛けまくる。これが俺の作戦だ)
(あの香水の効き目が本物なら……。彼女たちは当然、俺の客になってくれるはずだ)
夜。ホストクラブ『ブレイジングサン』。咲斗は、女性客とともにソファーに座っている。
酒の入ったシャンパングラスを乾杯する咲斗と女性客。
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:26:16.379 ID:GRpk3KlxD
夜中。新宿・歌舞伎町。仕事を終え、街の中を歩く咲斗と修也。
修也「咲斗……。お前、遂に指名客を獲得したのか。まさか、お前に先を越されるとは……」
咲斗「どうも、修也。気が付いたら、こうなっていたんだよ」
修也「でも、これだけは忘れるなよ。最後にお前に勝つのは、俺だからな」
ある日。とあるゲームセンター。店内を歩く咲斗を、女性の通行人たちがチラリチラリと見つめる。
咲斗(いつもより、女性の視線を感じる……。もしかすると、フェロモン香水の効き目は本物なのかもしれないな……)
夜。新宿・歌舞伎町。ホストクラブ『ブレイジングサン』。
複数の女性客たちと、咲斗を含めたホストたちが相席に座っている。女性客たちと仲良く話をする咲斗。
女性客A「咲斗ぉー。私もあなたを指名してあげる」
咲斗「ありがとうございます」
修也「咲斗……。お前、遂に指名客を獲得したのか。まさか、お前に先を越されるとは……」
咲斗「どうも、修也。気が付いたら、こうなっていたんだよ」
修也「でも、これだけは忘れるなよ。最後にお前に勝つのは、俺だからな」
ある日。とあるゲームセンター。店内を歩く咲斗を、女性の通行人たちがチラリチラリと見つめる。
咲斗(いつもより、女性の視線を感じる……。もしかすると、フェロモン香水の効き目は本物なのかもしれないな……)
夜。新宿・歌舞伎町。ホストクラブ『ブレイジングサン』。
複数の女性客たちと、咲斗を含めたホストたちが相席に座っている。女性客たちと仲良く話をする咲斗。
女性客A「咲斗ぉー。私もあなたを指名してあげる」
咲斗「ありがとうございます」
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:28:15.652 ID:GRpk3KlxD
ある日。ホストクラブ『ブレイジングサン』。オーナーがホストたちを集め、集会を行っている。
オーナー「たくさんの女性を笑顔にすることが、金と成功につながる……。それがホストの世界なんだ!!」
「お前たちもホストなら、金と成功を手にしたいだろう!?だったら、金と成功を掴み取れ!!」
ホストたち「はいっ!!」
ある程度話し続け、挨拶を終えるオーナー。彼は、咲斗に優しく声をかける。
オーナー「おめでとう、咲斗!お前が新人賞に選ばれたぞ」
BAR「魔の巣」。喪黒と咲斗が席に腰掛けている。
咲斗「喪黒さん。あの香水を使ってからは、俺の生活は一変しました!」
喪黒「ほら!フェロモン香水の効果は、やっぱり本物だったでしょう?」
咲斗「はい!俺は指名客に恵まれるようになりましたし、新人賞をとることもできたんです!」
喪黒「よかったですねぇ。咲斗さん」
オーナー「たくさんの女性を笑顔にすることが、金と成功につながる……。それがホストの世界なんだ!!」
「お前たちもホストなら、金と成功を手にしたいだろう!?だったら、金と成功を掴み取れ!!」
ホストたち「はいっ!!」
ある程度話し続け、挨拶を終えるオーナー。彼は、咲斗に優しく声をかける。
オーナー「おめでとう、咲斗!お前が新人賞に選ばれたぞ」
BAR「魔の巣」。喪黒と咲斗が席に腰掛けている。
咲斗「喪黒さん。あの香水を使ってからは、俺の生活は一変しました!」
喪黒「ほら!フェロモン香水の効果は、やっぱり本物だったでしょう?」
咲斗「はい!俺は指名客に恵まれるようになりましたし、新人賞をとることもできたんです!」
喪黒「よかったですねぇ。咲斗さん」
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:30:16.779 ID:GRpk3KlxD
咲斗「何もかも喪黒さんのおかげです!喪黒さんには感謝してもしきれません!」
喪黒「どういたしまして。ただし、私の方から忠告しておきたいことがあるんですよ……」
咲斗「どういうことですか?」
喪黒「今の咲斗さんは、フェロモン香水のおかげで女性客に恵まれています」
「ですが……。例の香水に頼らずに、自分の実力で女性客を掴んでこそ一流のホストといえるでしょう」
咲斗「確かに……」
喪黒「異性にモテるために必要なのは、外面の魅力や性フェロモンだけではありません」
「一番肝心なのは、その人の内面の魅力にあるのですよ」
咲斗「は、はい……」
喪黒「だから、咲斗さん。私と約束してください」
「これからは、フェロモン香水に頼らないでホストの仕事をやり遂げてくださいよ」
咲斗「わ、分かりました……。喪黒さん」
喪黒「どういたしまして。ただし、私の方から忠告しておきたいことがあるんですよ……」
咲斗「どういうことですか?」
喪黒「今の咲斗さんは、フェロモン香水のおかげで女性客に恵まれています」
「ですが……。例の香水に頼らずに、自分の実力で女性客を掴んでこそ一流のホストといえるでしょう」
咲斗「確かに……」
喪黒「異性にモテるために必要なのは、外面の魅力や性フェロモンだけではありません」
「一番肝心なのは、その人の内面の魅力にあるのですよ」
咲斗「は、はい……」
喪黒「だから、咲斗さん。私と約束してください」
「これからは、フェロモン香水に頼らないでホストの仕事をやり遂げてくださいよ」
咲斗「わ、分かりました……。喪黒さん」
19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:32:18.250 ID:GRpk3KlxD
ある日の夕方。新宿・歌舞伎町。いつも通り、通行中の女性に名刺を渡そうとする咲斗。
しかし、女性は咲斗の名刺を受取ろうとせず、素通りしていく。咲斗は別の女性に近づくも、彼女も名刺を受取らず素通りする。
咲斗(通行中の女性が相手にしてくれない……。今日の俺は、フェロモン香水を使っていないからな……)
夜。ホストクラブ『ブレイジングサン』。ソファーに座り、女性客Bと会話をする咲斗。突然、女性客Bが席を立つ。
女性客B「悪いけど、あたし帰る……」
「何か今日はね、咲斗と話をしても気分が乗らないのよ。ごめんなさい……」
夜中。新宿・歌舞伎町。仕事を終え、道を歩く咲斗と修也。咲斗はうつむいた状態だ。
咲斗(今日は客の反応がイマイチだ……。フェロモン香水を使っていないせいだな……)
修也は、咲斗の肩を軽く叩く。
修也「元気出せよ、咲斗……」
咲斗「ああ……」
しかし、女性は咲斗の名刺を受取ろうとせず、素通りしていく。咲斗は別の女性に近づくも、彼女も名刺を受取らず素通りする。
咲斗(通行中の女性が相手にしてくれない……。今日の俺は、フェロモン香水を使っていないからな……)
夜。ホストクラブ『ブレイジングサン』。ソファーに座り、女性客Bと会話をする咲斗。突然、女性客Bが席を立つ。
女性客B「悪いけど、あたし帰る……」
「何か今日はね、咲斗と話をしても気分が乗らないのよ。ごめんなさい……」
夜中。新宿・歌舞伎町。仕事を終え、道を歩く咲斗と修也。咲斗はうつむいた状態だ。
咲斗(今日は客の反応がイマイチだ……。フェロモン香水を使っていないせいだな……)
修也は、咲斗の肩を軽く叩く。
修也「元気出せよ、咲斗……」
咲斗「ああ……」
20: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:34:33.165 ID:GRpk3KlxD
ホスト寮、共同部屋。ベッドの上に座りながら、フェロモン香水の瓶を握りしめる咲斗。
咲斗(これからもフェロモン香水を使い続けよう。俺はそうするしかない……)
夜。新宿・歌舞伎町。ホストクラブ『ブレイジングサン』。ソファーで、女性客Bと一緒に座る咲斗。
女性客B「この間はごめんね。あたし、咲斗にそっけない態度をとって……」
咲斗(やっぱり、フェロモン香水の効果は本物だ……。これさえあれば、俺は……)
一方、別のホストと相席で座る女性客Cは……。
女性客C「ちょっとぉー!!私は咲斗に会いに、この店に来たのにぃ!!いつまで待たせる気なのぉー!!」
ホスト「すいません。あとしばらくすれば、咲斗が来ますから……」
さらに、他の席に座る女性客Dも……。
女性客D「咲斗はどうしたの!?私は咲斗と話をしたいんだよ!!」
咲斗(これからもフェロモン香水を使い続けよう。俺はそうするしかない……)
夜。新宿・歌舞伎町。ホストクラブ『ブレイジングサン』。ソファーで、女性客Bと一緒に座る咲斗。
女性客B「この間はごめんね。あたし、咲斗にそっけない態度をとって……」
咲斗(やっぱり、フェロモン香水の効果は本物だ……。これさえあれば、俺は……)
一方、別のホストと相席で座る女性客Cは……。
女性客C「ちょっとぉー!!私は咲斗に会いに、この店に来たのにぃ!!いつまで待たせる気なのぉー!!」
ホスト「すいません。あとしばらくすれば、咲斗が来ますから……」
さらに、他の席に座る女性客Dも……。
女性客D「咲斗はどうしたの!?私は咲斗と話をしたいんだよ!!」
22: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:36:31.192 ID:GRpk3KlxD
夜中。新宿・歌舞伎町。仕事を終え、道を歩く咲斗。彼は困惑した表情をしている。
咲斗(まさか、女性客たちが俺の取り合いをするとは……。これもフェロモン香水のおかげか……)
歩き続ける咲斗の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒「咲斗さん……。あなた約束を破りましたね」
咲斗「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私は言ったはずですよ。これからは、フェロモン香水に頼らないでホストの仕事をやり遂げろ……と」
「それにも関わらず、あなたは今もなおフェロモン香水に頼り続けているようですねぇ」
咲斗「だ、だって、喪黒さん……。俺はもう、この香水なしでは仕事も生活も成り立たなくなっています!」
「だから、香水を使わないで仕事をするなんて無理ですよ!!」
喪黒「弁解は無用です。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は咲斗に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
咲斗「ギャアアアアアアアアア!!!」
咲斗(まさか、女性客たちが俺の取り合いをするとは……。これもフェロモン香水のおかげか……)
歩き続ける咲斗の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒「咲斗さん……。あなた約束を破りましたね」
咲斗「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私は言ったはずですよ。これからは、フェロモン香水に頼らないでホストの仕事をやり遂げろ……と」
「それにも関わらず、あなたは今もなおフェロモン香水に頼り続けているようですねぇ」
咲斗「だ、だって、喪黒さん……。俺はもう、この香水なしでは仕事も生活も成り立たなくなっています!」
「だから、香水を使わないで仕事をするなんて無理ですよ!!」
喪黒「弁解は無用です。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は咲斗に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
咲斗「ギャアアアアアアアアア!!!」
23: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:38:21.036 ID:GRpk3KlxD
ある日。とあるゲームセンター。 ゲーム『太鼓の名人』をプレイする咲斗。しかし、彼はゲームに集中していないようだ。
咲斗が後ろを振り向くと……。そこには、自分の常連である女性客Cがいる。咲斗と目が合い、慌てて逃げる女性客C。
レストランで食事をする咲斗。しかし、別のテーブルの方から女性客Dが咲斗をじっと見つめている。女性客Dの存在に気付く咲斗。
さらに、道を歩きながらスマホを見る咲斗。スマホには、自分の常連客によるメールの着信がある。
メール「いつもあなたを見ているよ咲斗。大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き」
脅えた表情になる咲斗。
夜中。新宿・歌舞伎町。仕事を終え、街を歩く咲斗と修也。憂鬱そうな表情の咲斗。
修也「なるほど……。ストーカーの被害を受けているのか」
咲斗「ああ……。俺は本当に参っているんだ……」
修也「お前も大変だな……。咲斗」
咲斗と修也の前に、数人の女性たちが姿を現す。彼女たちはいずれも、咲斗の常連客ばかりだ。
女性たち「咲斗ぉおおお~~」
咲斗が後ろを振り向くと……。そこには、自分の常連である女性客Cがいる。咲斗と目が合い、慌てて逃げる女性客C。
レストランで食事をする咲斗。しかし、別のテーブルの方から女性客Dが咲斗をじっと見つめている。女性客Dの存在に気付く咲斗。
さらに、道を歩きながらスマホを見る咲斗。スマホには、自分の常連客によるメールの着信がある。
メール「いつもあなたを見ているよ咲斗。大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き」
脅えた表情になる咲斗。
夜中。新宿・歌舞伎町。仕事を終え、街を歩く咲斗と修也。憂鬱そうな表情の咲斗。
修也「なるほど……。ストーカーの被害を受けているのか」
咲斗「ああ……。俺は本当に参っているんだ……」
修也「お前も大変だな……。咲斗」
咲斗と修也の前に、数人の女性たちが姿を現す。彼女たちはいずれも、咲斗の常連客ばかりだ。
女性たち「咲斗ぉおおお~~」
25: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/12(水) 01:41:42.504 ID:GRpk3KlxD
女性たちは皆、手にナイフを握っている。咲斗に迫り来る女性たち。脅えた表情の咲斗。
咲斗「ま、待ってくれ……」
女性たちが一斉に、咲斗に襲い掛かる。身体中を刃物で刺され、地面に倒れる咲斗。
女性たち「これで咲斗はあたしのものぉおお!!」「咲斗の身体は、私が貰うからねぇええ!!」「咲斗ぉ、愛してるぅうう!!」
咲斗の全身を、ナイフで切り裂き続ける女性たち。彼女たちは血まみれになりながら、咲斗の内臓を手にして喜んでいる。
思わぬ惨劇を目にし、唖然とした顔つきになる修也。彼は、驚きと恐怖で言葉が出ない模様だ。
夜中。新宿・歌舞伎町。「歌舞伎町一番街」の看板の前にいる喪黒。
喪黒「世の中にいるたいていの人間は……。異性にモテたいという願望を、一度くらいは抱いたことがあるはずでしょう」
「異性にモテるためには、並大抵でない努力が必要ですし……。当然ながら、外見の良さはモテるために優位に作用します」
「しかし、肝心なのは……。自分の内面の魅力を磨くことや、相手との信頼を大切にすることを、常に心がけるべきなのです」
「従って……。たとえモテモテになれたとしても、みだりに色恋を消費し続けているようでは、本当の幸せは訪れません」
「だって、色恋は扱いを間違えると、時に悲劇を生み出しますから……。モテモテになり過ぎるのも考えものですよ。ねぇ、咲斗さん」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
咲斗「ま、待ってくれ……」
女性たちが一斉に、咲斗に襲い掛かる。身体中を刃物で刺され、地面に倒れる咲斗。
女性たち「これで咲斗はあたしのものぉおお!!」「咲斗の身体は、私が貰うからねぇええ!!」「咲斗ぉ、愛してるぅうう!!」
咲斗の全身を、ナイフで切り裂き続ける女性たち。彼女たちは血まみれになりながら、咲斗の内臓を手にして喜んでいる。
思わぬ惨劇を目にし、唖然とした顔つきになる修也。彼は、驚きと恐怖で言葉が出ない模様だ。
夜中。新宿・歌舞伎町。「歌舞伎町一番街」の看板の前にいる喪黒。
喪黒「世の中にいるたいていの人間は……。異性にモテたいという願望を、一度くらいは抱いたことがあるはずでしょう」
「異性にモテるためには、並大抵でない努力が必要ですし……。当然ながら、外見の良さはモテるために優位に作用します」
「しかし、肝心なのは……。自分の内面の魅力を磨くことや、相手との信頼を大切にすることを、常に心がけるべきなのです」
「従って……。たとえモテモテになれたとしても、みだりに色恋を消費し続けているようでは、本当の幸せは訪れません」
「だって、色恋は扱いを間違えると、時に悲劇を生み出しますから……。モテモテになり過ぎるのも考えものですよ。ねぇ、咲斗さん」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
引用元: 喪黒福造「これは、究極のフェロモン香水です」 ホスト「胡散臭そうですね……」
喪黒福造「あなたが再び、10代のころに戻ることは可能ですよ」 カラオケ喫茶ママ「さすがに、それは不可能ですよ……」
2018-12-12
1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:49:02.581 ID:mWBBTMOFD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
風間明日香(53) カラオケ喫茶ママ
【不良少女、再び】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
風間明日香(53) カラオケ喫茶ママ
【不良少女、再び】
ホーッホッホッホ……。」
2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:51:24.005 ID:mWBBTMOFD
夜。カラオケ喫茶『明日香』。この店の女性経営者は、ショートヘアをした中年女性だ。
店内に集まる中高年の客たち。客の中には、喪黒福造もいる。店にいる客たちの多くは、演歌や懐メロのファンだ。
機械の前でマイクを取る喪黒。店の経営者・風間明日香もマイクを持ち、喪黒とともにデュエット曲を歌う。
テロップ「風間明日香(53) カラオケ喫茶『明日香』経営者」
デュエット曲を歌い終わる喪黒と明日香。2人に拍手をする客の一同。
午後22時を過ぎ、営業を終えたカラオケ喫茶『明日香』。カウンター席に座る喪黒が、明日香と話をしている。
自身のアルバムを手にする明日香。
明日香「これ、あたしのアルバムなんですけど……。見てみますか?」
喪黒「はい……」
明日香からアルバムを貰う喪黒。彼がアルバムを開くと……。
喪黒「ほう……」
店内に集まる中高年の客たち。客の中には、喪黒福造もいる。店にいる客たちの多くは、演歌や懐メロのファンだ。
機械の前でマイクを取る喪黒。店の経営者・風間明日香もマイクを持ち、喪黒とともにデュエット曲を歌う。
テロップ「風間明日香(53) カラオケ喫茶『明日香』経営者」
デュエット曲を歌い終わる喪黒と明日香。2人に拍手をする客の一同。
午後22時を過ぎ、営業を終えたカラオケ喫茶『明日香』。カウンター席に座る喪黒が、明日香と話をしている。
自身のアルバムを手にする明日香。
明日香「これ、あたしのアルバムなんですけど……。見てみますか?」
喪黒「はい……」
明日香からアルバムを貰う喪黒。彼がアルバムを開くと……。
喪黒「ほう……」
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:53:15.263 ID:mWBBTMOFD
アルバムには、昔の明日香の写真がいくつも載っている。
制服を改造し、くるぶし丈までのロングスカートをはいた高校時代の明日香。
当時の彼女も、53歳の現在と同じくショートヘアをしている。
明日香「懐かしいですね……。昔のあたしは、スケバンだったんですよ」
喪黒「喧嘩とかはしてたんですか?」
明日香「はい……。いつも他校の不良と喧嘩しては、相手をボコボコにしていましたね」
「喧嘩相手が男であっても、情け容赦はしませんでしたよ」
20代前半のころの明日香。スーツ姿の彼女が、ビル屋上にいる。彼女のバックは、東京の夜景だ。
明日香「あのころはあたしは、ディスコを経営していました。当時は羽振りが良かったですね」
喪黒「おそらく、あの時期はバブル期とも重なっているでしょう」
明日香「ええ。バブルの崩壊でディスコの経営は次第に悪化し、あたしは店を潰しました」
制服を改造し、くるぶし丈までのロングスカートをはいた高校時代の明日香。
当時の彼女も、53歳の現在と同じくショートヘアをしている。
明日香「懐かしいですね……。昔のあたしは、スケバンだったんですよ」
喪黒「喧嘩とかはしてたんですか?」
明日香「はい……。いつも他校の不良と喧嘩しては、相手をボコボコにしていましたね」
「喧嘩相手が男であっても、情け容赦はしませんでしたよ」
20代前半のころの明日香。スーツ姿の彼女が、ビル屋上にいる。彼女のバックは、東京の夜景だ。
明日香「あのころはあたしは、ディスコを経営していました。当時は羽振りが良かったですね」
喪黒「おそらく、あの時期はバブル期とも重なっているでしょう」
明日香「ええ。バブルの崩壊でディスコの経営は次第に悪化し、あたしは店を潰しました」
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:55:17.435 ID:mWBBTMOFD
30代前半のころの明日香。ドレスを着た彼女が、スーツ姿の客と記念撮影をしている。
写真が撮影された場所は、とあるクラブの店内のようだ。
明日香「借金まみれになったあたしは、クラブでホステスとして働いていました」
「給料は借金の返済と衣装代に消えて、あまり残りませんでしたね……」
喪黒「いやぁ……。それは大変だったでしょう……」
明日香「はい……」
30代後半のころの明日香。彼女とある男の結婚写真が載っている。和風の花嫁衣装を着た明日香。
明日香「当時の夫とは、もう離婚しましたよ。ちなみに、彼は暴力団の組長でした」
喪黒「おそらく、あなたは結婚生活がうまくいかなかったのでしょう」
明日香「ええ……。彼のことは、思い出したくないですね……」
喪黒「なるほど……。あなたも辛い過去を背負っているようですねぇ」
写真が撮影された場所は、とあるクラブの店内のようだ。
明日香「借金まみれになったあたしは、クラブでホステスとして働いていました」
「給料は借金の返済と衣装代に消えて、あまり残りませんでしたね……」
喪黒「いやぁ……。それは大変だったでしょう……」
明日香「はい……」
30代後半のころの明日香。彼女とある男の結婚写真が載っている。和風の花嫁衣装を着た明日香。
明日香「当時の夫とは、もう離婚しましたよ。ちなみに、彼は暴力団の組長でした」
喪黒「おそらく、あなたは結婚生活がうまくいかなかったのでしょう」
明日香「ええ……。彼のことは、思い出したくないですね……」
喪黒「なるほど……。あなたも辛い過去を背負っているようですねぇ」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:57:18.185 ID:mWBBTMOFD
40代の明日香。今より若い彼女が、カラオケ喫茶『明日香』の店内にいる。
明日香「この店の経営を始めたのは、あたしが44歳のころでしたね」
「以来、あたしは、何事もなく店の経営を続けているわけですが……」
喪黒「風間さんにとっては、ようやく安住の地を手に入れたというわけですか……」
明日香「はい。でも、大人になってからは、ろくにいいことがありませんでしたね……」
喪黒「確かに、大人になってからのあなたは、波乱が多い人生を送っていますからねぇ」
明日香「今思えば、大人になる前は日々が楽しかったですよ。特に、10代の時期とか……」
喪黒「10代の時期とは……。あなたがスケバンだったころですか?」
明日香「はい。あのころは毎日のように、他の不良と喧嘩に明け暮れていましたけどね……」
「でも、今となってはそれが懐かしく感じられるんです」
喪黒「あなたも10代のころは、それなりに青春を謳歌しましたからねぇ」
明日香「失われた青春を取り戻すというか……。もう1度、10代のころに戻って人生をやり直すというか……」
「もしもそれがやれたらいいんでしょうけど……」
明日香「この店の経営を始めたのは、あたしが44歳のころでしたね」
「以来、あたしは、何事もなく店の経営を続けているわけですが……」
喪黒「風間さんにとっては、ようやく安住の地を手に入れたというわけですか……」
明日香「はい。でも、大人になってからは、ろくにいいことがありませんでしたね……」
喪黒「確かに、大人になってからのあなたは、波乱が多い人生を送っていますからねぇ」
明日香「今思えば、大人になる前は日々が楽しかったですよ。特に、10代の時期とか……」
喪黒「10代の時期とは……。あなたがスケバンだったころですか?」
明日香「はい。あのころは毎日のように、他の不良と喧嘩に明け暮れていましたけどね……」
「でも、今となってはそれが懐かしく感じられるんです」
喪黒「あなたも10代のころは、それなりに青春を謳歌しましたからねぇ」
明日香「失われた青春を取り戻すというか……。もう1度、10代のころに戻って人生をやり直すというか……」
「もしもそれがやれたらいいんでしょうけど……」
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 22:59:16.467 ID:mWBBTMOFD
喪黒「そうですか……。どうやら、風間さんの心にもスキマがおありのようですねぇ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
明日香「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
明日香「人生相談か、何かですか?」
喪黒「私のやっていることは、ボランティアみたいなものです」
「心に何かしらのスキマを抱え、人生が行き詰まった人たちを救うための仕事ですよ」
明日香「そ、そうなんですか……」
喪黒「風間さん。あなたが再び、10代のころに戻ることは可能ですよ」
明日香「さすがに、それは不可能ですよ……」
喪黒「私なら可能です。そのために、いい道具があるんですよ」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上に置かれたのは、ピンク色をした化粧用のコンパクトだ。
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
明日香「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
明日香「人生相談か、何かですか?」
喪黒「私のやっていることは、ボランティアみたいなものです」
「心に何かしらのスキマを抱え、人生が行き詰まった人たちを救うための仕事ですよ」
明日香「そ、そうなんですか……」
喪黒「風間さん。あなたが再び、10代のころに戻ることは可能ですよ」
明日香「さすがに、それは不可能ですよ……」
喪黒「私なら可能です。そのために、いい道具があるんですよ」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上に置かれたのは、ピンク色をした化粧用のコンパクトだ。
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:01:15.037 ID:mWBBTMOFD
明日香「何ですか、これ……?」
喪黒「変身コンパクトです。このコンパクトを使えば、あなたは17歳の自分に変身することができますよ」
明日香「冗談はよしてくださいよ」
喪黒「冗談ではありません。私は本気で言ってるのです」
明日香「フフッ、何か面白そうですね……」
喪黒「コンパクトを開いて、『ミラクルガール』と叫んでみてください!」
明日香「わ、分かりました。やってみますよ……」
変身コンパクトを手にする明日香。彼女はコンパクトを開き、例の呪文を唱える。
明日香「ミラクルガーール!!」
変身コンパクトの鏡が光り輝き、明日香の全身がみるみる光に包まれる。中年の明日香の顔が、次第に若返っていく。
コンパクトの鏡を見る明日香。彼女が鏡を覗き込むと、そこに映っているのは……。
明日香「!!!」
喪黒「変身コンパクトです。このコンパクトを使えば、あなたは17歳の自分に変身することができますよ」
明日香「冗談はよしてくださいよ」
喪黒「冗談ではありません。私は本気で言ってるのです」
明日香「フフッ、何か面白そうですね……」
喪黒「コンパクトを開いて、『ミラクルガール』と叫んでみてください!」
明日香「わ、分かりました。やってみますよ……」
変身コンパクトを手にする明日香。彼女はコンパクトを開き、例の呪文を唱える。
明日香「ミラクルガーール!!」
変身コンパクトの鏡が光り輝き、明日香の全身がみるみる光に包まれる。中年の明日香の顔が、次第に若返っていく。
コンパクトの鏡を見る明日香。彼女が鏡を覗き込むと、そこに映っているのは……。
明日香「!!!」
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:03:13.552 ID:mWBBTMOFD
喪黒「どうです?風間さんは、17歳のころの身体に変身できたでしょう?」
明日香「こ、こんなことが本当に起きるなんて……」
喪黒「おそらく、あなたの身体にも変化は起きているはずです」
明日香「そ、そういえば……。身体の中から、力が湧いてくるような感じがします……」
喪黒「10代のころの人間は、誰もが体力に恵まれていますからねぇ……」
明日香「でも、これじゃあ、今のあたしと見分けがつきませんよ……」
「それに、あたしはカラオケ喫茶の経営もありますし……。どうやって、元に戻るんですか?」
喪黒「変身コンパクトを開いて、『カレントエイジ』と叫んでみてください。そうすれば、あなたは元の年齢に戻れます」
明日香「そうですか……、やってみます。カレントエイジ!!」
変身コンパクトの鏡が輝き、光に包まれる明日香。彼女の身体の年齢は、元の53歳のものに戻る。
コンパクトの鏡を見る明日香。鏡には、カラオケ喫茶経営者としての明日香の顔が映っている。
明日香「あっ、元に戻った……」
明日香「こ、こんなことが本当に起きるなんて……」
喪黒「おそらく、あなたの身体にも変化は起きているはずです」
明日香「そ、そういえば……。身体の中から、力が湧いてくるような感じがします……」
喪黒「10代のころの人間は、誰もが体力に恵まれていますからねぇ……」
明日香「でも、これじゃあ、今のあたしと見分けがつきませんよ……」
「それに、あたしはカラオケ喫茶の経営もありますし……。どうやって、元に戻るんですか?」
喪黒「変身コンパクトを開いて、『カレントエイジ』と叫んでみてください。そうすれば、あなたは元の年齢に戻れます」
明日香「そうですか……、やってみます。カレントエイジ!!」
変身コンパクトの鏡が輝き、光に包まれる明日香。彼女の身体の年齢は、元の53歳のものに戻る。
コンパクトの鏡を見る明日香。鏡には、カラオケ喫茶経営者としての明日香の顔が映っている。
明日香「あっ、元に戻った……」
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:05:18.828 ID:mWBBTMOFD
喪黒「風間さん。あなたはこの変身コンパクトを使って、再び青春を謳歌してください」
「そうすることで、あなたはこれまでの人生のフラストレーションを解消できるでしょう」
明日香「なるほど……。やってみる価値はありますね……」
喪黒「ただし……。これを使用する際は、約束を必ず守ってください」
明日香「約束!?」
喪黒「そうです。変身コンパクトを使用するのは、1週間のうち1日だけが限度です。いいですね、約束ですよ!?」
明日香「わ、分かりました。喪黒さん」
ある日。スーツケースを引いて街を歩く明日香。彼女はビルの陰に隠れ、変身コンパクトを取り出す。
明日香「ミラクルガーール!!」
変身コンパクトの鏡が輝き、光に包まれる明日香。彼女の顔は、17歳のころのものとなる。
明日香「よし」
「そうすることで、あなたはこれまでの人生のフラストレーションを解消できるでしょう」
明日香「なるほど……。やってみる価値はありますね……」
喪黒「ただし……。これを使用する際は、約束を必ず守ってください」
明日香「約束!?」
喪黒「そうです。変身コンパクトを使用するのは、1週間のうち1日だけが限度です。いいですね、約束ですよ!?」
明日香「わ、分かりました。喪黒さん」
ある日。スーツケースを引いて街を歩く明日香。彼女はビルの陰に隠れ、変身コンパクトを取り出す。
明日香「ミラクルガーール!!」
変身コンパクトの鏡が輝き、光に包まれる明日香。彼女の顔は、17歳のころのものとなる。
明日香「よし」
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:07:26.129 ID:mWBBTMOFD
とある駅。女子トイレの中に入る明日香。しばらくした後、彼女はトイレから出てくる。
明日香が身につけているのは、女子高生風の制服だ。半そでの白いブラウス、短い丈のスカート……。
とある河原。不良の男子高校生と殴り合いをする17歳の明日香。2人の喧嘩を見守る不良たち。
不良たち「ふぇ~、あの女強ぇ~なぁ~」「どこの誰か知らんけど、あの女やるじゃん」
顔があざだらけの明日香と喧嘩相手。明日香による回し蹴りが、男子高校生の顎に命中する。
とある神社。境内の中で、他の不良少年と喧嘩をする17歳の明日香。彼女と不良の喧嘩を、2人の別の不良が見守る。
彼女によるパンチを腹に受け、地面に倒れる不良少年。
また、ある日。とある高校。運動場の中に、17歳の明日香と不良の男子生徒がいる。周りから2人を見物する不良少年たち。
不良「例のお前か?お前、結構強いんだってな」
明日香「まあね」
明日香が身につけているのは、女子高生風の制服だ。半そでの白いブラウス、短い丈のスカート……。
とある河原。不良の男子高校生と殴り合いをする17歳の明日香。2人の喧嘩を見守る不良たち。
不良たち「ふぇ~、あの女強ぇ~なぁ~」「どこの誰か知らんけど、あの女やるじゃん」
顔があざだらけの明日香と喧嘩相手。明日香による回し蹴りが、男子高校生の顎に命中する。
とある神社。境内の中で、他の不良少年と喧嘩をする17歳の明日香。彼女と不良の喧嘩を、2人の別の不良が見守る。
彼女によるパンチを腹に受け、地面に倒れる不良少年。
また、ある日。とある高校。運動場の中に、17歳の明日香と不良の男子生徒がいる。周りから2人を見物する不良少年たち。
不良「例のお前か?お前、結構強いんだってな」
明日香「まあね」
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:09:20.434 ID:mWBBTMOFD
ある日の夜。カラオケ喫茶『明日香』。いつも通り、店内で客たちを見守る53歳の明日香。
客たちの中には喪黒の姿もある。機械の前でマイクを手に取り、演歌を歌う喪黒。拍手をする一同。
営業を終えたカラオケ喫茶『明日香』。カウンター席に座る喪黒が、明日香と話をする。
喪黒「いかがですか、風間さん?再び青春を謳歌することはできましたか?」
明日香「はい。17歳になったあたしは、しょっちゅう各地の不良たちと喧嘩をしてるんです」
喪黒「喧嘩……とは、殴ったり蹴ったりとかの暴力のことですよね?」
明日香「そうですよ。10代のころのあたしは不良だったんだから、喧嘩といえばそれですよ」
「腕っぷしの強い不良と喧嘩ができて、本当に楽しいですし……。胸がスカッとしますよ」
喪黒「それはよかったですねぇ……と言いたいところですが」
「17歳に戻ったのなら、もう少し有意義な過ごし方をしてもよかったのではないですか?」
明日香「いいえ。あたしにとっては、これが有意義な過ごし方だと思っていますよ」
客たちの中には喪黒の姿もある。機械の前でマイクを手に取り、演歌を歌う喪黒。拍手をする一同。
営業を終えたカラオケ喫茶『明日香』。カウンター席に座る喪黒が、明日香と話をする。
喪黒「いかがですか、風間さん?再び青春を謳歌することはできましたか?」
明日香「はい。17歳になったあたしは、しょっちゅう各地の不良たちと喧嘩をしてるんです」
喪黒「喧嘩……とは、殴ったり蹴ったりとかの暴力のことですよね?」
明日香「そうですよ。10代のころのあたしは不良だったんだから、喧嘩といえばそれですよ」
「腕っぷしの強い不良と喧嘩ができて、本当に楽しいですし……。胸がスカッとしますよ」
喪黒「それはよかったですねぇ……と言いたいところですが」
「17歳に戻ったのなら、もう少し有意義な過ごし方をしてもよかったのではないですか?」
明日香「いいえ。あたしにとっては、これが有意義な過ごし方だと思っていますよ」
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:11:18.928 ID:mWBBTMOFD
喪黒「そうですか……。あなたがそう考えるのなら、私から言うことは何もありません」
「ただし、気をつけてくださいよ。17歳になった風間さんが相手にしているのは、不良の人間たちですから……」
明日香「それは承知していますよ」
喪黒「いくらあなたが強いからと言っても、気を抜くと彼らに何をされるか分かりませんよ。油断は禁物です」
明日香「大丈夫ですよ。あたしはいつも、喧嘩では勝っていますから……」
とある公園。17歳の身体となった明日香が、例の如く不良少年と殴り合いをしている。
喧嘩は、彼女がやや優勢のままで展開していたが……。ふと、異変に気がつく明日香。
明日香と喧嘩相手の周りには、他の不良少年が何人も集まっている。
数人の不良が、体力を消耗した明日香へ一斉に襲い掛かる。喧嘩で劣勢に追い込まれていく明日香。彼女は足元がふらつき、息が上がる。
明日香「ハア……、ハア……、ハア……」
突然、2人の不良に両脇を掴まれる明日香。彼女を見て、にやつく他の不良たち。
「ただし、気をつけてくださいよ。17歳になった風間さんが相手にしているのは、不良の人間たちですから……」
明日香「それは承知していますよ」
喪黒「いくらあなたが強いからと言っても、気を抜くと彼らに何をされるか分かりませんよ。油断は禁物です」
明日香「大丈夫ですよ。あたしはいつも、喧嘩では勝っていますから……」
とある公園。17歳の身体となった明日香が、例の如く不良少年と殴り合いをしている。
喧嘩は、彼女がやや優勢のままで展開していたが……。ふと、異変に気がつく明日香。
明日香と喧嘩相手の周りには、他の不良少年が何人も集まっている。
数人の不良が、体力を消耗した明日香へ一斉に襲い掛かる。喧嘩で劣勢に追い込まれていく明日香。彼女は足元がふらつき、息が上がる。
明日香「ハア……、ハア……、ハア……」
突然、2人の不良に両脇を掴まれる明日香。彼女を見て、にやつく他の不良たち。
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:13:30.627 ID:mWBBTMOFD
明日香「な、何するんだよ!!離せ!!」
不良たちによって、公衆便所の中へ連れ込まれる明日香。そのまま、時間が経過していく……。
満足そうな表情を浮かべながら、公衆便所から姿を現す不良たち。そして、不良たちが公園から立ち去った後……。
公衆便所から、ふらふらと出てくる明日香。彼女の白いブラウスはボタンが全て飛び散り、胸の下着があらわになっている。
悔しさで顔を歪め、すすり泣く明日香。
テロップ「次の日――」
日付が変わって間もない夜中。マンション。ベッドで眠る53歳の明日香。彼女は夢を見ている。公園で起きたあの出来事の夢を――。
公衆便所。2人の不良に両脇を掴まれた明日香。他の1人の不良が、明日香のブラウスのボタンを引きちぎる。彼女を眺める別の不良たち。
明日香「い、嫌!!それだけはやめて!!」
ある程度、時間が経ったころ……。ブラウスがはだけた状態で、公衆便所の床に横たわる明日香。彼女は目から涙を流している。
夜中。マンション。ベッドの上で、例の夢から目覚める53歳の明日香。彼女は起き上がり、布団を握りしめたまま泣き出す。
明日香「ウッ……、ウウウ……」
不良たちによって、公衆便所の中へ連れ込まれる明日香。そのまま、時間が経過していく……。
満足そうな表情を浮かべながら、公衆便所から姿を現す不良たち。そして、不良たちが公園から立ち去った後……。
公衆便所から、ふらふらと出てくる明日香。彼女の白いブラウスはボタンが全て飛び散り、胸の下着があらわになっている。
悔しさで顔を歪め、すすり泣く明日香。
テロップ「次の日――」
日付が変わって間もない夜中。マンション。ベッドで眠る53歳の明日香。彼女は夢を見ている。公園で起きたあの出来事の夢を――。
公衆便所。2人の不良に両脇を掴まれた明日香。他の1人の不良が、明日香のブラウスのボタンを引きちぎる。彼女を眺める別の不良たち。
明日香「い、嫌!!それだけはやめて!!」
ある程度、時間が経ったころ……。ブラウスがはだけた状態で、公衆便所の床に横たわる明日香。彼女は目から涙を流している。
夜中。マンション。ベッドの上で、例の夢から目覚める53歳の明日香。彼女は起き上がり、布団を握りしめたまま泣き出す。
明日香「ウッ……、ウウウ……」
16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:15:24.030 ID:mWBBTMOFD
涙を流す明日香の顔に、憤怒と憎悪の表情が浮かんでいく。
明日香「ゆ、許さない……!!あいつら……」
その日の夕方。道を歩く不良少年A。公衆便所で、明日香をなぶりものにした人間の一人だ。彼の目の前に、17歳の明日香が姿を現す。
不良A「お、お前は……」
明日香「実は、あんたと話したいことがあるんだよ……」
とある河原。明日香に叩きのめされ、脅えた表情で横たわる不良少年A。
明日香「ありがとう。あんたたちの仲間の名前は、ちゃんと覚えたよ」
両手で、不良少年Aの首を絞める明日香。不良少年Aは苦しみ続け、遂に息絶える。不良少年Aの遺体を川へ放り込む明日香。
明日香「あいつらは、あたしの手で全員始末してやる……」
テロップ「その次の日――」
とある高校。体育館の中に、17歳の明日香と不良少年たちがいる。右手に金属バットを握った明日香。
彼女が相手にしているのは、あの日、公衆便所で自分を辱めた例の男たちだ。
明日香「ゆ、許さない……!!あいつら……」
その日の夕方。道を歩く不良少年A。公衆便所で、明日香をなぶりものにした人間の一人だ。彼の目の前に、17歳の明日香が姿を現す。
不良A「お、お前は……」
明日香「実は、あんたと話したいことがあるんだよ……」
とある河原。明日香に叩きのめされ、脅えた表情で横たわる不良少年A。
明日香「ありがとう。あんたたちの仲間の名前は、ちゃんと覚えたよ」
両手で、不良少年Aの首を絞める明日香。不良少年Aは苦しみ続け、遂に息絶える。不良少年Aの遺体を川へ放り込む明日香。
明日香「あいつらは、あたしの手で全員始末してやる……」
テロップ「その次の日――」
とある高校。体育館の中に、17歳の明日香と不良少年たちがいる。右手に金属バットを握った明日香。
彼女が相手にしているのは、あの日、公衆便所で自分を辱めた例の男たちだ。
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:17:15.454 ID:mWBBTMOFD
不良B「俺らのダチを殺したのはお前か……」
明日香「そうだよ。あいつを含め、あんたたちのせいで、あたしの人生はメチャクチャだよ……」
涙目で、不良たちを睨みつける明日香。金属バットを振り回し、不良たちに向かっていく明日香。
不良少年Bの頭に、彼女の金属バットが命中する。頭から血を流し、倒れる不良少年B。
さらに、残りの不良たちも、明日香が持った金属バットの餌食となっていく。次々と倒れる不良たち。
明日香は、床に倒れた不良たちをさらに金属バットで殴る。彼らの顔が、金属バットで潰されていく。
明日香「終わった……」
こと切れた不良たちを見つめる明日香。彼女は金属バットを床に置き、体育館を去る。
住宅街。17歳の明日香が、道を歩く。思いつめた表情の明日香。歩き続ける明日香の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒「風間明日香さん……。あなた約束を破りましたね」
明日香「も、喪黒さん……!!」
明日香「そうだよ。あいつを含め、あんたたちのせいで、あたしの人生はメチャクチャだよ……」
涙目で、不良たちを睨みつける明日香。金属バットを振り回し、不良たちに向かっていく明日香。
不良少年Bの頭に、彼女の金属バットが命中する。頭から血を流し、倒れる不良少年B。
さらに、残りの不良たちも、明日香が持った金属バットの餌食となっていく。次々と倒れる不良たち。
明日香は、床に倒れた不良たちをさらに金属バットで殴る。彼らの顔が、金属バットで潰されていく。
明日香「終わった……」
こと切れた不良たちを見つめる明日香。彼女は金属バットを床に置き、体育館を去る。
住宅街。17歳の明日香が、道を歩く。思いつめた表情の明日香。歩き続ける明日香の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒「風間明日香さん……。あなた約束を破りましたね」
明日香「も、喪黒さん……!!」
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:19:23.029 ID:mWBBTMOFD
喪黒「私は言ったはずですよ。変身コンパクトの使用は、1週間のうち1日だけが限度だ……と」
「それにも関わらず、あなたは3日連続で変身コンパクトを使用しましたねぇ」
明日香「あ、あたしにだってやむを得ない事情があったんですよ!!」
喪黒「やむを得ない事情……ですか。私は、あなたが犯罪を行うために変身コンパクトを渡したのではありませんよ」
明日香「あなたに、あたしの気持ちが分かってたまりますか!!あたしが、あいつらにされたことを考えると……」
喪黒「ねぇ、風間さん。不良に戻って、再び喧嘩三昧の生き方をするからこうなるんですよ」
明日香「くっ……」
喪黒「約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は明日香に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
明日香「キャアアアアアアアアアアア!!!」
「それにも関わらず、あなたは3日連続で変身コンパクトを使用しましたねぇ」
明日香「あ、あたしにだってやむを得ない事情があったんですよ!!」
喪黒「やむを得ない事情……ですか。私は、あなたが犯罪を行うために変身コンパクトを渡したのではありませんよ」
明日香「あなたに、あたしの気持ちが分かってたまりますか!!あたしが、あいつらにされたことを考えると……」
喪黒「ねぇ、風間さん。不良に戻って、再び喧嘩三昧の生き方をするからこうなるんですよ」
明日香「くっ……」
喪黒「約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は明日香に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
明日香「キャアアアアアアアアアアア!!!」
19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/10(月) 23:22:25.924 ID:mWBBTMOFD
喪黒のドーンを受け、疲労困憊した状態で道を歩く明日香。
明日香「ハア……、ハア……。疲れた……。しばらく横になって休もう……」
彼女の目の前に、土手が見える。ふらついた状態で、土手へ向かう明日香。
明日香は歩き続けるが、身体はみるみる縮んでいく。両足から靴が脱げ、制服のスカートがずり落ちる。
土手の草むらに転げ落ちる変身コンパクト。変身コンパクトは、ひび割れた状態となっている。
幼児の姿となり、仰向けで倒れる明日香。半そでの白いブラウスは、明日香のほぼ全身を覆っている。
そのまま眠り込む明日香。ひび割れた変身コンパクトが、粉々に砕け散る。
住宅街の中を歩く喪黒。
喪黒「いつの時代も、何かしらの形で不良は存在してきましたし……。不良文化も時代を経るごとに変遷を重ねていきました」
「一部の漫画やドラマでは、不良を美化して描いていますが……。これはあくまでもフィクションであり、現実ではありません」
「なぜならば……。不良が不良と呼ばれるのも、不良が一般人たちから疎まれるのも、それなりの理由があるからなのです」
「従って、不良は決してかっこいい存在ではありませんし……。ましてや、不良に憧れるなんて愚の骨頂そのものですよ」
「不良少女だった風間明日香さん。あなたは10代から人生をやり直すのではなく、幼いころから人生をやり直したらどうですか?」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
明日香「ハア……、ハア……。疲れた……。しばらく横になって休もう……」
彼女の目の前に、土手が見える。ふらついた状態で、土手へ向かう明日香。
明日香は歩き続けるが、身体はみるみる縮んでいく。両足から靴が脱げ、制服のスカートがずり落ちる。
土手の草むらに転げ落ちる変身コンパクト。変身コンパクトは、ひび割れた状態となっている。
幼児の姿となり、仰向けで倒れる明日香。半そでの白いブラウスは、明日香のほぼ全身を覆っている。
そのまま眠り込む明日香。ひび割れた変身コンパクトが、粉々に砕け散る。
住宅街の中を歩く喪黒。
喪黒「いつの時代も、何かしらの形で不良は存在してきましたし……。不良文化も時代を経るごとに変遷を重ねていきました」
「一部の漫画やドラマでは、不良を美化して描いていますが……。これはあくまでもフィクションであり、現実ではありません」
「なぜならば……。不良が不良と呼ばれるのも、不良が一般人たちから疎まれるのも、それなりの理由があるからなのです」
「従って、不良は決してかっこいい存在ではありませんし……。ましてや、不良に憧れるなんて愚の骨頂そのものですよ」
「不良少女だった風間明日香さん。あなたは10代から人生をやり直すのではなく、幼いころから人生をやり直したらどうですか?」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
引用元: 喪黒福造「あなたが再び、10代のころに戻ることは可能ですよ」 カラオケ喫茶ママ「さすがに、それは不可能ですよ……」
喪黒福造「社長、例の牧場で超良血馬が手に入りますよ」 ベンチャー起業家「もしも、その馬が手に入れば……」
2018-11-10
1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:44:55.768 ID:ryPhDPdID
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
馬渡速雄(42) ベンチャー起業家
【競馬の王道】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
馬渡速雄(42) ベンチャー起業家
【競馬の王道】
ホーッホッホッホ……。」
2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:48:17.725 ID:ryPhDPdID
菱沼GFJ銀行・虎ノ門支店。とあるベンチャー起業家が、応接室で支店長と会話をしている。
その起業家は、スーツ姿だがノーネクタイで、日焼けした浅黒い顔をしている。
テロップ「馬渡速雄(42) ソニックフュージョン社長」
支店長「馬渡社長、ありがとうございます。今回も、返済をしっかり果たしてくださって――」
馬渡「いえいえ。こちらこそ、支店長には本当に感謝していますよ。毎回、融資の頼みを引き受けてくださって――」
支店長「馬渡社長とは、これからも末長くお付き合いしていきたいですね」
馬渡「私の方も、望むところですよ」
菱沼GFJ銀行・虎ノ門支店。執務室で、机に向かう支店長。
支店長(馬渡速雄、ソニックフュージョン社長。広告やイベントの総合プロデュース業……か)
(アイドルブームの波に乗ったおかげで、ヒルズ族の一人にまでなるとはな……)
その起業家は、スーツ姿だがノーネクタイで、日焼けした浅黒い顔をしている。
テロップ「馬渡速雄(42) ソニックフュージョン社長」
支店長「馬渡社長、ありがとうございます。今回も、返済をしっかり果たしてくださって――」
馬渡「いえいえ。こちらこそ、支店長には本当に感謝していますよ。毎回、融資の頼みを引き受けてくださって――」
支店長「馬渡社長とは、これからも末長くお付き合いしていきたいですね」
馬渡「私の方も、望むところですよ」
菱沼GFJ銀行・虎ノ門支店。執務室で、机に向かう支店長。
支店長(馬渡速雄、ソニックフュージョン社長。広告やイベントの総合プロデュース業……か)
(アイドルブームの波に乗ったおかげで、ヒルズ族の一人にまでなるとはな……)
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:50:27.063 ID:ryPhDPdID
道路。運転手つきの車の後部座席に乗る馬渡。
馬渡「はい、馬渡です。今、会場に向かっているところですよ」
東京、渋谷区。代々木公園。アイドルグループが、野外ステージで熱唱している。
アイドルグループに声援を送るファンたち。ファンたちがサイリウムを振り回す。
ステージの後ろのパネルには、スポンサー企業の名前がいくつも記されている。「ソニックフュージョン」もその一つだ。
グループのライブを見守る関係者たち。関係者たちの中には、馬渡の姿もある。
馬渡(よし、今日のイベントはうまくいったな……)
夜。東京、銀座。高級クラブで酒を飲む馬渡。馬渡の側には、友人の実業家やホステスがいる。
馬渡「この間のレース、駒田さんの馬が重賞で勝利したそうですね」
馬渡「はい、馬渡です。今、会場に向かっているところですよ」
東京、渋谷区。代々木公園。アイドルグループが、野外ステージで熱唱している。
アイドルグループに声援を送るファンたち。ファンたちがサイリウムを振り回す。
ステージの後ろのパネルには、スポンサー企業の名前がいくつも記されている。「ソニックフュージョン」もその一つだ。
グループのライブを見守る関係者たち。関係者たちの中には、馬渡の姿もある。
馬渡(よし、今日のイベントはうまくいったな……)
夜。東京、銀座。高級クラブで酒を飲む馬渡。馬渡の側には、友人の実業家やホステスがいる。
馬渡「この間のレース、駒田さんの馬が重賞で勝利したそうですね」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:52:18.214 ID:ryPhDPdID
駒田「馬主になって12年、待望の初勝利ですよ」
テロップ「駒田直人(47) IT企業社長」
ホステス「駒田社長、おめでとうございます」
駒田「ありがとう。重賞の勝利で、競馬の魅力をますます実感しましたよ」
馬渡「何と言っても、馬主になると馬への思い入れが増しますからね」
ホステス「ところで、馬渡社長も確か馬主でしたよね?」
馬渡「ええ。私の馬主歴は3年ですよ。私の馬は、何度もG1レースに出場してはいるんですけど……」
店内で、別のホステスとともに酒を飲む喪黒福造。喪黒は、店の遠くの方にいる馬渡たちの姿を目にする。
喪黒「…………」
どうやら、喪黒はまたしても何かの企みを思いついたようだ。
テロップ「駒田直人(47) IT企業社長」
ホステス「駒田社長、おめでとうございます」
駒田「ありがとう。重賞の勝利で、競馬の魅力をますます実感しましたよ」
馬渡「何と言っても、馬主になると馬への思い入れが増しますからね」
ホステス「ところで、馬渡社長も確か馬主でしたよね?」
馬渡「ええ。私の馬主歴は3年ですよ。私の馬は、何度もG1レースに出場してはいるんですけど……」
店内で、別のホステスとともに酒を飲む喪黒福造。喪黒は、店の遠くの方にいる馬渡たちの姿を目にする。
喪黒「…………」
どうやら、喪黒はまたしても何かの企みを思いついたようだ。
6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:54:18.268 ID:ryPhDPdID
銀座のクラブを出て、夜の街を歩く馬渡。馬渡の側に喪黒が近寄る。
喪黒「こんばんは、馬渡社長」
馬渡「あなたは一体……」
喪黒「私ですか?実はさっき、お店であなたを見たんですよ。実は私、こういう者なんです……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
馬渡「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
馬渡「セールスマン?この私に何を売りつける気なんですか?」
喪黒「あなたにいい話があるんですよ。競馬のことで、役に立つかもしれない話が……」
馬渡「競馬……。クラブの中で、私の会話を聞いていたのですね」
喪黒「はい。いい店を知っていますから、そこでゆっくり話でもしましょう」
喪黒「こんばんは、馬渡社長」
馬渡「あなたは一体……」
喪黒「私ですか?実はさっき、お店であなたを見たんですよ。実は私、こういう者なんです……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
馬渡「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
馬渡「セールスマン?この私に何を売りつける気なんですか?」
喪黒「あなたにいい話があるんですよ。競馬のことで、役に立つかもしれない話が……」
馬渡「競馬……。クラブの中で、私の会話を聞いていたのですね」
喪黒「はい。いい店を知っていますから、そこでゆっくり話でもしましょう」
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:56:20.498 ID:ryPhDPdID
BAR「魔の巣」。喪黒と馬渡が席に腰掛けている。
喪黒「馬渡社長は、自身の競走馬を所有しているそうですよね?」
馬渡「はい。馬主になることは、社会的なステータスと言っても過言ではありませんよ」
喪黒「まあ、馬主になる有名人は多いですよねぇ」
「競馬は日本ではギャンブルのイメージが強いですが、ヨーロッパでは高級なスポーツとされているのですから……」
馬渡「そうです。競馬は本当に面白いスポーツですよ」
「単なる馬と馬との競争ではなく、ドラマであり、ロマンでもありますから……」
喪黒「ええ。競走馬は、多くの人たちの想いを乗せて走っているのです」
「調教師や厩舎スタッフ、馬主や騎手、そして馬を応援するファンたち……」
「これらの人々の想いを乗せて、馬は走っていますからねぇ」
馬渡「おっしゃる通りです。ですが、それだけではありません。競馬の魅力とは、代々受け継がれる血統の魅力にもあります」
「全ての馬に血統書が存在していますし、配合するのはサラブレッド同士だけです」
「だから、血統が織りなすドラマを感じながら応援することができるのです」
喪黒「馬渡社長は、自身の競走馬を所有しているそうですよね?」
馬渡「はい。馬主になることは、社会的なステータスと言っても過言ではありませんよ」
喪黒「まあ、馬主になる有名人は多いですよねぇ」
「競馬は日本ではギャンブルのイメージが強いですが、ヨーロッパでは高級なスポーツとされているのですから……」
馬渡「そうです。競馬は本当に面白いスポーツですよ」
「単なる馬と馬との競争ではなく、ドラマであり、ロマンでもありますから……」
喪黒「ええ。競走馬は、多くの人たちの想いを乗せて走っているのです」
「調教師や厩舎スタッフ、馬主や騎手、そして馬を応援するファンたち……」
「これらの人々の想いを乗せて、馬は走っていますからねぇ」
馬渡「おっしゃる通りです。ですが、それだけではありません。競馬の魅力とは、代々受け継がれる血統の魅力にもあります」
「全ての馬に血統書が存在していますし、配合するのはサラブレッド同士だけです」
「だから、血統が織りなすドラマを感じながら応援することができるのです」
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:58:25.129 ID:ryPhDPdID
喪黒「だから、奥が深いスポーツなんですよ。競馬というものは……」
馬渡「ええ。馬好きが高じて、私は3年前に馬主にまでなりました。ですが、まだG1レースで1勝もできていないんですよ……」
喪黒「馬主として成功をするというのは、非常に難しいですからねぇ」
馬渡「そうなんですよ。有名人が馬主になった場合は、レースで結果を残せずに撤退した例が多いんです」
「ある大物の演歌歌手なんかは、馬主歴47年でようやくG1レースを初制覇したらしいですから……」
喪黒「社長も、馬主としてG1レースを制覇したいですよね?」
馬渡「もちろんですよ。馬主になるのは経費がかかりますけど、賞金の大半を手にする権利も得ることができます」
喪黒「レースで勝つことができれば、莫大な資金を手にすることだって夢ではありませんからねぇ」
馬渡「ええ。一獲千金の夢……。これは、起業家としての魂にも通じますからねぇ」
喪黒「私が何とかしましょう」
馬渡「えっ!?」
馬渡「ええ。馬好きが高じて、私は3年前に馬主にまでなりました。ですが、まだG1レースで1勝もできていないんですよ……」
喪黒「馬主として成功をするというのは、非常に難しいですからねぇ」
馬渡「そうなんですよ。有名人が馬主になった場合は、レースで結果を残せずに撤退した例が多いんです」
「ある大物の演歌歌手なんかは、馬主歴47年でようやくG1レースを初制覇したらしいですから……」
喪黒「社長も、馬主としてG1レースを制覇したいですよね?」
馬渡「もちろんですよ。馬主になるのは経費がかかりますけど、賞金の大半を手にする権利も得ることができます」
喪黒「レースで勝つことができれば、莫大な資金を手にすることだって夢ではありませんからねぇ」
馬渡「ええ。一獲千金の夢……。これは、起業家としての魂にも通じますからねぇ」
喪黒「私が何とかしましょう」
馬渡「えっ!?」
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:00:19.264 ID:ryPhDPdID
喪黒「実はですねぇ、私はある牧場と知り合いなんですけど……。そこには、優秀なサラブレッドの馬がたくさんいるんです」
馬渡「……ということは、まさか」
喪黒「そう、『まさか』ですよ。社長、例の牧場で超良血馬が手に入りますよ」
馬渡「もしも、その馬が手に入れば……」
喪黒「G1レースの初制覇だって夢ではありません。どうです、私の話に乗りませんか?」
馬渡「いいでしょう!あなたの話に乗ってみますよ!」
喪黒「そうです!その調子!」
ある牧場。スタッフに案内され、厩舎の中を歩く喪黒と馬渡。
馬渡「ここにいるのが、良血馬の集まりですか……」
厩舎スタッフ「はい。活きのいいサラブレッドが、あちこちにいますよ」
馬渡「……ということは、まさか」
喪黒「そう、『まさか』ですよ。社長、例の牧場で超良血馬が手に入りますよ」
馬渡「もしも、その馬が手に入れば……」
喪黒「G1レースの初制覇だって夢ではありません。どうです、私の話に乗りませんか?」
馬渡「いいでしょう!あなたの話に乗ってみますよ!」
喪黒「そうです!その調子!」
ある牧場。スタッフに案内され、厩舎の中を歩く喪黒と馬渡。
馬渡「ここにいるのが、良血馬の集まりですか……」
厩舎スタッフ「はい。活きのいいサラブレッドが、あちこちにいますよ」
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:02:18.831 ID:ryPhDPdID
喪黒「この馬なんかどうです?これは特別な血統なんですよ。実は……」
とある馬を指差し、血統について話す喪黒。
馬渡「そうなんですか?それほど優秀な血統なら、将来大きく化ける可能性がありますよ!」
喪黒「馬渡社長。よろしかったら、この馬をただでプレゼントしてもいいですよ」
馬渡「えっ、いいんですか!?こんな値打ちものを、ただで貰い受けるなんて……」
喪黒「構いませんよ。社長が馬主として成功することを願う、私からの気持ちですから……」
「その代わり、あなたには約束していただきたいことがあります」
馬渡「約束!?」
喪黒「そうです。良血馬の馬主となったからには、正々堂々とした勝負を心がけてください」
「不正な手段を使って、自分の馬を勝たせるような真似は絶対にしてはいけません。いいですね!?」
馬渡「わ、分かりました……。喪黒さん」
とある馬を指差し、血統について話す喪黒。
馬渡「そうなんですか?それほど優秀な血統なら、将来大きく化ける可能性がありますよ!」
喪黒「馬渡社長。よろしかったら、この馬をただでプレゼントしてもいいですよ」
馬渡「えっ、いいんですか!?こんな値打ちものを、ただで貰い受けるなんて……」
喪黒「構いませんよ。社長が馬主として成功することを願う、私からの気持ちですから……」
「その代わり、あなたには約束していただきたいことがあります」
馬渡「約束!?」
喪黒「そうです。良血馬の馬主となったからには、正々堂々とした勝負を心がけてください」
「不正な手段を使って、自分の馬を勝たせるような真似は絶対にしてはいけません。いいですね!?」
馬渡「わ、分かりました……。喪黒さん」
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:04:16.288 ID:ryPhDPdID
とある競馬場。馬主席にいる大勢の観客たち。観客の中には、喪黒と馬渡もいる。
馬渡「緊張しますよ。この間、貰った馬の初出走なのですから……」
喪黒「大丈夫です。必ずいい成績を収めてくれるでしょう」
馬渡「そうであって欲しいですよ……。今は祈るのみです」
競馬のレースが始まる。競走馬たちを見つめる喪黒と馬渡。とある騎手が操縦する馬が、先頭を走る。
馬渡(おおっ!俺の馬がトップにいるぞ!さすがは、超良血馬なだけのことはあるな……)
一貫して先頭を走り続ける馬渡の馬。自分の馬をじっと見つめる馬渡。
馬渡(よしっ、いいぞ……!このまま逃げ切ってくれ……!)
馬渡の馬がゴールに差し掛かろうとしていた時――。先頭にいたその馬は、別の馬に追い越されていく。
馬渡(ああっ!!)
レース終了の直前に起きた一瞬の出来事を見て、愕然とする馬渡。
馬渡「緊張しますよ。この間、貰った馬の初出走なのですから……」
喪黒「大丈夫です。必ずいい成績を収めてくれるでしょう」
馬渡「そうであって欲しいですよ……。今は祈るのみです」
競馬のレースが始まる。競走馬たちを見つめる喪黒と馬渡。とある騎手が操縦する馬が、先頭を走る。
馬渡(おおっ!俺の馬がトップにいるぞ!さすがは、超良血馬なだけのことはあるな……)
一貫して先頭を走り続ける馬渡の馬。自分の馬をじっと見つめる馬渡。
馬渡(よしっ、いいぞ……!このまま逃げ切ってくれ……!)
馬渡の馬がゴールに差し掛かろうとしていた時――。先頭にいたその馬は、別の馬に追い越されていく。
馬渡(ああっ!!)
レース終了の直前に起きた一瞬の出来事を見て、愕然とする馬渡。
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:06:18.296 ID:ryPhDPdID
食堂。喪黒と馬渡が日替わり定食を食べている。
馬渡「いやぁ、さっきのレースは本当に惜しかったですよ。全く、悔しくてたまらないです」
喪黒「まあまあ……。それでも、初レースで2着でしょう?華麗なデビューを果たしたと言えますよ」
馬渡「それは、そうなんですが……」
喪黒「例の馬が超良血馬だったことは、今回のレースで証明済みなのです」
「だから、これからじっくりあの馬の成長を見守りましょうよ」
馬渡「はい。そうするつもりですよ」
喪黒「社長。あなたも馬のオーナーならお分かりでしょう?」
「馬主になれば、馬に対して愛情や親近感を持つことができますから。もちろん、あの馬に対しても……」
馬渡「そりゃあ、もう……。どの馬にも個性がありますし、牧場で間近に馬を見ると可愛いと感じますからね」
喪黒「馬が可愛いならば、成長が楽しみになりますし……。レースで勝った時の感慨は、何とも言えないでしょう」
馬渡「ええ。当然ながら、馬の成長やレースの初勝利を望んでいますよ」
馬渡「いやぁ、さっきのレースは本当に惜しかったですよ。全く、悔しくてたまらないです」
喪黒「まあまあ……。それでも、初レースで2着でしょう?華麗なデビューを果たしたと言えますよ」
馬渡「それは、そうなんですが……」
喪黒「例の馬が超良血馬だったことは、今回のレースで証明済みなのです」
「だから、これからじっくりあの馬の成長を見守りましょうよ」
馬渡「はい。そうするつもりですよ」
喪黒「社長。あなたも馬のオーナーならお分かりでしょう?」
「馬主になれば、馬に対して愛情や親近感を持つことができますから。もちろん、あの馬に対しても……」
馬渡「そりゃあ、もう……。どの馬にも個性がありますし、牧場で間近に馬を見ると可愛いと感じますからね」
喪黒「馬が可愛いならば、成長が楽しみになりますし……。レースで勝った時の感慨は、何とも言えないでしょう」
馬渡「ええ。当然ながら、馬の成長やレースの初勝利を望んでいますよ」
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:08:21.335 ID:ryPhDPdID
喪黒「それならば……。やはり、正々堂々とした手段でレースに勝利してこそ、本物のうれしさを感じるはずです」
「インチキな手でレースに勝利をしても、心の奥底では後ろめたさを隠せませんから……」
馬渡「もちろん、そのことは承知していますよ……」
喪黒「そうですか……。馬渡社長。私との約束、覚えていますよね?」
馬渡「はい。例の馬の馬主になったなら、正々堂々とした勝負を心がけろ……ってことですよね」
喪黒「その通りです。約束はちゃーんと守ってくださいよ」
馬渡「ええ……」
とあるビル。ソシャゲ会社関係者と商談を行う馬渡。
ソシャゲ会社関係者「なるほど……、馬の擬人化ですか」
馬渡「これは絶対ヒットしますよ。ゲームだけでなく、アニメ化もしてメディア展開をしてみたらどうですか?」
ソシャゲ会社関係者「面白そうですね。やってみましょう」
「インチキな手でレースに勝利をしても、心の奥底では後ろめたさを隠せませんから……」
馬渡「もちろん、そのことは承知していますよ……」
喪黒「そうですか……。馬渡社長。私との約束、覚えていますよね?」
馬渡「はい。例の馬の馬主になったなら、正々堂々とした勝負を心がけろ……ってことですよね」
喪黒「その通りです。約束はちゃーんと守ってくださいよ」
馬渡「ええ……」
とあるビル。ソシャゲ会社関係者と商談を行う馬渡。
ソシャゲ会社関係者「なるほど……、馬の擬人化ですか」
馬渡「これは絶対ヒットしますよ。ゲームだけでなく、アニメ化もしてメディア展開をしてみたらどうですか?」
ソシャゲ会社関係者「面白そうですね。やってみましょう」
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:10:28.779 ID:ryPhDPdID
ネット広告に表示させる、馬の擬人化ゲーム『ダービースターズ』。スマホを操作し、『ダービースターズ』を楽しむオタクの青年。
ある日の深夜。スーパー銭湯。サウナ室にあるテレビが、『ダービースターズ』のアニメ版を放送している。テレビを見つめる客たち。
六本木ヒルズ。ソニックフュージョン本社。
馬渡(ゲームもアニメも順調にヒットしている。馬の擬人化ものの企画は、成功だったようだ。だが……)
馬渡の頭の中に、これまでの競馬レースの光景が思い浮かぶ。競馬場の馬主席で、自ら持ち馬を見守る馬渡。
彼の馬は、どのレースでもゴール直前で別の馬に抜かれていく。
馬渡(俺の馬は、いつもいつもあと一歩というところで1着を逃している……)
夜。とある料亭。和室の中で、関係者たちと酒を酌み交わす馬渡。
馬渡「今度のレースでは、私が所有する馬を1着にしてくださいよ」
関係者A「いいでしょう、馬渡社長。ところで、例のものは持ってきましたか?」
ある日の深夜。スーパー銭湯。サウナ室にあるテレビが、『ダービースターズ』のアニメ版を放送している。テレビを見つめる客たち。
六本木ヒルズ。ソニックフュージョン本社。
馬渡(ゲームもアニメも順調にヒットしている。馬の擬人化ものの企画は、成功だったようだ。だが……)
馬渡の頭の中に、これまでの競馬レースの光景が思い浮かぶ。競馬場の馬主席で、自ら持ち馬を見守る馬渡。
彼の馬は、どのレースでもゴール直前で別の馬に抜かれていく。
馬渡(俺の馬は、いつもいつもあと一歩というところで1着を逃している……)
夜。とある料亭。和室の中で、関係者たちと酒を酌み交わす馬渡。
馬渡「今度のレースでは、私が所有する馬を1着にしてくださいよ」
関係者A「いいでしょう、馬渡社長。ところで、例のものは持ってきましたか?」
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:12:23.312 ID:ryPhDPdID
馬渡「もちろんです」
部屋の隅にあるトランクを開ける馬渡。トランクの中には、札束が詰まっている。
関係者B「さすがは馬渡社長。ヒルズ族の一人と呼ばれているだけのことはありますね」
馬渡「私の馬が1着になれば、競馬界にとってはいい宣伝になりますよ」
「何しろ……。私の会社は、『ダービースターズ』のアニメ版のスポンサーの一つですから……」
関係者C「分かりました。馬渡社長が所有する馬を、必ず1着にして見せますよ」
料亭の和室で会話をする一同。机の下には、盗聴器が仕組まれている。
一方、建物の外では、藪の中に喪黒がいる。ヘッドホンを装着し、一同の会話を盗聴する喪黒。
とある競馬場。コースを走る競走馬たち。先頭を走り続ける馬渡の馬。
声援を送る一般客たち。馬主席でも、金持ちの観客たちがレースの行方を見守る。1着のまま、ゴールインする馬渡の馬。
歓声を上げる入場者たち。調教師、オーナーの馬渡、騎手が手を取り合って万歳をする。
部屋の隅にあるトランクを開ける馬渡。トランクの中には、札束が詰まっている。
関係者B「さすがは馬渡社長。ヒルズ族の一人と呼ばれているだけのことはありますね」
馬渡「私の馬が1着になれば、競馬界にとってはいい宣伝になりますよ」
「何しろ……。私の会社は、『ダービースターズ』のアニメ版のスポンサーの一つですから……」
関係者C「分かりました。馬渡社長が所有する馬を、必ず1着にして見せますよ」
料亭の和室で会話をする一同。机の下には、盗聴器が仕組まれている。
一方、建物の外では、藪の中に喪黒がいる。ヘッドホンを装着し、一同の会話を盗聴する喪黒。
とある競馬場。コースを走る競走馬たち。先頭を走り続ける馬渡の馬。
声援を送る一般客たち。馬主席でも、金持ちの観客たちがレースの行方を見守る。1着のまま、ゴールインする馬渡の馬。
歓声を上げる入場者たち。調教師、オーナーの馬渡、騎手が手を取り合って万歳をする。
16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:14:29.492 ID:ryPhDPdID
ある牧場。厩舎の中で、スタッフと握手をする馬渡。彼の側には喪黒がいる。
厩舎スタッフ「馬渡社長、G1初制覇おめでとうございます」
馬渡「ありがとうございます。これも、みんなが私の馬に関わってくださったおかげですよ」
「なによりも、喪黒さんがここを紹介してくれたおかげでもあります」
厩舎の外に出る喪黒と馬渡。
喪黒「馬渡社長。これについては、どう思いますかねぇ」
バッグの中から、ICレコーダーを取り出す喪黒。ICレコーダーから、録音された音声が流れる。
そう、料亭の中での馬渡たちの会話が――。
馬渡「ああっ!!」
喪黒「馬渡社長……。あなた約束を破りましたね」
馬渡「も、喪黒さん……!!」
厩舎スタッフ「馬渡社長、G1初制覇おめでとうございます」
馬渡「ありがとうございます。これも、みんなが私の馬に関わってくださったおかげですよ」
「なによりも、喪黒さんがここを紹介してくれたおかげでもあります」
厩舎の外に出る喪黒と馬渡。
喪黒「馬渡社長。これについては、どう思いますかねぇ」
バッグの中から、ICレコーダーを取り出す喪黒。ICレコーダーから、録音された音声が流れる。
そう、料亭の中での馬渡たちの会話が――。
馬渡「ああっ!!」
喪黒「馬渡社長……。あなた約束を破りましたね」
馬渡「も、喪黒さん……!!」
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:16:30.534 ID:ryPhDPdID
喪黒「私は社長に言ったはずですよ。良血馬の馬主となったならば、正々堂々とした勝負を心がけろ……と」
「にも関わらず……。あなたは不正な手段を使って、自分の馬を勝たせましたねぇ」
馬渡「すみません……!!どうしても、G1レースで勝ちたかったもので……!!だから、つい……」
喪黒「言い訳はよしてください。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は馬渡に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
馬渡「ギャアアアアアアアアア!!!」
喪黒のドーンを受け、うつ伏せに倒れる馬渡。馬渡の衣服が破れ、彼の身体はみるみる姿を変えていく。
肥大化し、黒色の身体になった馬渡。そう……。彼は人間ではなく、馬そのものになっている。
喪黒の側にやって来る厩舎スタッフ。喪黒と厩舎スタッフは、笑みを浮かべながら黒い馬――馬渡を見つめる。
異変に気付き始め、脅えた表情をする黒い馬こと馬渡。
「にも関わらず……。あなたは不正な手段を使って、自分の馬を勝たせましたねぇ」
馬渡「すみません……!!どうしても、G1レースで勝ちたかったもので……!!だから、つい……」
喪黒「言い訳はよしてください。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は馬渡に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
馬渡「ギャアアアアアアアアア!!!」
喪黒のドーンを受け、うつ伏せに倒れる馬渡。馬渡の衣服が破れ、彼の身体はみるみる姿を変えていく。
肥大化し、黒色の身体になった馬渡。そう……。彼は人間ではなく、馬そのものになっている。
喪黒の側にやって来る厩舎スタッフ。喪黒と厩舎スタッフは、笑みを浮かべながら黒い馬――馬渡を見つめる。
異変に気付き始め、脅えた表情をする黒い馬こと馬渡。
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:19:42.345 ID:ryPhDPdID
とある競馬場。馬主席で、双眼鏡を持ちながらレースを眺める喪黒。
レースでは、ある騎手が操縦する黒い馬が、先頭を走っている。黒い馬は両目に涙を浮かべており、泣いているように見える。
なぜならば、黒い馬の正体は馬渡速雄なのだから――。
馬渡(競走馬になるなんて嫌だ!!俺を人間に戻してくれーーーっ!!)
泣きながら、トップを走り続ける黒い馬こと馬渡。
レースを終えた競馬場。たった1人の状態で馬主席にいる喪黒。
喪黒「競馬は、賭け事のイメージがつきものですが……。よく調べてみると、奥が深いスポーツであることに気づかされます」
「なぜなら……。近代競馬は長い歴史の中に、数え切れないほどのドラマやロマンが詰まったスポーツでもあるからです」
「競走馬の人生は、多くの人たちとの関わりがあってのものですし……。その血統は、今後も受け継がれていくでしょう」
「従って、競走馬は、多くの人たちの想いを乗せて走っているわけですから……。正々堂々と勝負をして欲しいものです」
「ところで、馬渡さん。あなたは馬好きなだけあって、優秀な競走馬になれたようですねぇ。馬主の私も、実に誇らしいですよ」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
レースでは、ある騎手が操縦する黒い馬が、先頭を走っている。黒い馬は両目に涙を浮かべており、泣いているように見える。
なぜならば、黒い馬の正体は馬渡速雄なのだから――。
馬渡(競走馬になるなんて嫌だ!!俺を人間に戻してくれーーーっ!!)
泣きながら、トップを走り続ける黒い馬こと馬渡。
レースを終えた競馬場。たった1人の状態で馬主席にいる喪黒。
喪黒「競馬は、賭け事のイメージがつきものですが……。よく調べてみると、奥が深いスポーツであることに気づかされます」
「なぜなら……。近代競馬は長い歴史の中に、数え切れないほどのドラマやロマンが詰まったスポーツでもあるからです」
「競走馬の人生は、多くの人たちとの関わりがあってのものですし……。その血統は、今後も受け継がれていくでしょう」
「従って、競走馬は、多くの人たちの想いを乗せて走っているわけですから……。正々堂々と勝負をして欲しいものです」
「ところで、馬渡さん。あなたは馬好きなだけあって、優秀な競走馬になれたようですねぇ。馬主の私も、実に誇らしいですよ」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
引用元: 喪黒福造「社長、例の牧場で超良血馬が手に入りますよ」 ベンチャー起業家「もしも、その馬が手に入れば……」
喪黒福造「着きましたよ、ここはロボットサーカスです」 スポーツライター「ロボットサーカス?」
2018-11-05
1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:32:39.503 ID:oiz6yl/fD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
知念潔(56) スポーツライター
【ロボットサーカス】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
知念潔(56) スポーツライター
【ロボットサーカス】
ホーッホッホッホ……。」
2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:34:49.096 ID:oiz6yl/fD
午後。東京、港区。帝国テレビ。ワイドショー「情報ワイド ミヤノ堂」の撮影が行われている。
今日、この番組で特集されているのは、とある横綱による後輩力士への暴行問題だ。
あれやこれやと批評を行う司会者や出演陣。コメンテーターには、スポーツライター・知念もいる。
知念「今回の横綱による暴行事件、相撲協会はしっかりした対応をしていますよ!」
「問題なのは、独断専行で警察に被害届を出した尊鉄山親方の方です!」
テロップ「知念潔(56) スポーツライター」
知念の主張に対し、反論を行うある文化人。知念は文化人と言い合いになる。
文化人「しかしですね、知念さん……。横綱による暴力は、決して許せる行為ではありません!」
「親方が被害届を出していなかったら、このまま事件が隠蔽されていたかもしれませんよ!」
知念「元はといえば、後輩の力士による不作法が招いた事件ですよ!あの温厚な横綱が怒るのは、よほどのことです」
文化人「知念さん!あなたは横綱の暴力をかばうのか!」
知念「私はそんなことは言っていない!人の主張を曲解するな!」
今日、この番組で特集されているのは、とある横綱による後輩力士への暴行問題だ。
あれやこれやと批評を行う司会者や出演陣。コメンテーターには、スポーツライター・知念もいる。
知念「今回の横綱による暴行事件、相撲協会はしっかりした対応をしていますよ!」
「問題なのは、独断専行で警察に被害届を出した尊鉄山親方の方です!」
テロップ「知念潔(56) スポーツライター」
知念の主張に対し、反論を行うある文化人。知念は文化人と言い合いになる。
文化人「しかしですね、知念さん……。横綱による暴力は、決して許せる行為ではありません!」
「親方が被害届を出していなかったら、このまま事件が隠蔽されていたかもしれませんよ!」
知念「元はといえば、後輩の力士による不作法が招いた事件ですよ!あの温厚な横綱が怒るのは、よほどのことです」
文化人「知念さん!あなたは横綱の暴力をかばうのか!」
知念「私はそんなことは言っていない!人の主張を曲解するな!」
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:37:10.322 ID:oiz6yl/fD
夜。東京のとある下町。居酒屋「黄金豹」。酒を飲む年配の客たち。客の中には、知念と喪黒福造がいる。
関西弁を話す客たちの中に溶け込む知念。知念の言葉も関西弁混じりになる。一方、周囲から浮いた状態で酒を飲む喪黒。
客A「最近の知念さん、評判悪いでぇ。暴力をふるった横綱をひいきし過ぎやと……」
知念「あれは仕事で言うとるんです。私にもしがらみがありますさかい……。本心は別ですよ」
客B「ホンマか?そりゃあ、すごい爆弾発言やなーー。いっそのこと、テレビで言うてみたらどうや!」
知念「そんなこと、テレビで言えるわけありませんよ。この店やから、本音が言えるんです」
客C「そやったなーー。この居酒屋は、関鉄ファンが集まる店やからなーー」
知念「そうとも!関鉄パンサーズを応援する私の気持ちだけは、嘘偽りが一切ありませんよ!」
「大阪で生まれ、筋金入りの『豹党』として育った私としては!」
喪黒「知念さんは、大阪市の大正区生まれですよねぇ?苗字が知念なのも、そういうことでしょう?」
知念「はい。私は大正区で生まれ育ちました。私の祖父は、戦前に沖縄から大阪へ移住してきたんです」
居酒屋「黄金豹」の店内には、プロ野球チーム「関鉄パンサーズ」のグッズがいたるところに置かれている。
関西弁を話す客たちの中に溶け込む知念。知念の言葉も関西弁混じりになる。一方、周囲から浮いた状態で酒を飲む喪黒。
客A「最近の知念さん、評判悪いでぇ。暴力をふるった横綱をひいきし過ぎやと……」
知念「あれは仕事で言うとるんです。私にもしがらみがありますさかい……。本心は別ですよ」
客B「ホンマか?そりゃあ、すごい爆弾発言やなーー。いっそのこと、テレビで言うてみたらどうや!」
知念「そんなこと、テレビで言えるわけありませんよ。この店やから、本音が言えるんです」
客C「そやったなーー。この居酒屋は、関鉄ファンが集まる店やからなーー」
知念「そうとも!関鉄パンサーズを応援する私の気持ちだけは、嘘偽りが一切ありませんよ!」
「大阪で生まれ、筋金入りの『豹党』として育った私としては!」
喪黒「知念さんは、大阪市の大正区生まれですよねぇ?苗字が知念なのも、そういうことでしょう?」
知念「はい。私は大正区で生まれ育ちました。私の祖父は、戦前に沖縄から大阪へ移住してきたんです」
居酒屋「黄金豹」の店内には、プロ野球チーム「関鉄パンサーズ」のグッズがいたるところに置かれている。
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:39:17.966 ID:oiz6yl/fD
大型の液晶テレビを見る客たち。テレビには、関鉄の野球中継が映っている。
関鉄のバッター・糸谷が、相手チームのピッチャーから球を打つ。ホームベースへと帰還する2人の選手。
実況「糸谷のタイムリーで、2点が入りました!関鉄、逆転に成功です!」
一同「やったーーーーっ!!!」
客たちとともに、大喜びをする知念。それに対し、喪黒はずっと静かなままだ。
居酒屋「黄金豹」を出て、道を歩く知念。知念の側に喪黒が寄ってくる。
喪黒「ねぇ、知念さん……。あなた、さっきの店の常連なんですか?」
知念「ええ……、そうですよ。もしかして、あなたも関鉄ファンなんですか?」
喪黒「いえいえ……、私は違います。ただ……。関鉄ファンが集まる店とは、どんなものかと興味があったもので……」
知念「ああ、そうなんですか……。あなた、好奇心旺盛な方なんですね」
喪黒「それはそうと……。お店の中でのあなたは、いつもと違って楽しそうでしたね」
関鉄のバッター・糸谷が、相手チームのピッチャーから球を打つ。ホームベースへと帰還する2人の選手。
実況「糸谷のタイムリーで、2点が入りました!関鉄、逆転に成功です!」
一同「やったーーーーっ!!!」
客たちとともに、大喜びをする知念。それに対し、喪黒はずっと静かなままだ。
居酒屋「黄金豹」を出て、道を歩く知念。知念の側に喪黒が寄ってくる。
喪黒「ねぇ、知念さん……。あなた、さっきの店の常連なんですか?」
知念「ええ……、そうですよ。もしかして、あなたも関鉄ファンなんですか?」
喪黒「いえいえ……、私は違います。ただ……。関鉄ファンが集まる店とは、どんなものかと興味があったもので……」
知念「ああ、そうなんですか……。あなた、好奇心旺盛な方なんですね」
喪黒「それはそうと……。お店の中でのあなたは、いつもと違って楽しそうでしたね」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:41:16.793 ID:oiz6yl/fD
知念「ええ、まあ……。あの店の中なら、本心を開けっ広げにできますから。でも、普段の私はそういうわけにはいきませんよ」
喪黒「なるほど。私の仕事柄、今のあなたを放っておくわけにはいきませんねぇ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
知念「ココロのスキマ、お埋めします!?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
知念「か、変わったお仕事ですね……」
喪黒「見たところ、知念さんの心にもスキマがおありのようです。何なら、相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と知念が席に腰掛けている。
喪黒「それにしても、本当にびっくりしましたよ」
「あの横綱の暴行事件での知念さんのご意見は、本心によるものではなかったのですよねぇ?」
知念「はい。あれは仕事のための発言ですから……。私も何かと相撲協会の世話になっていますし……」
喪黒「なるほど。私の仕事柄、今のあなたを放っておくわけにはいきませんねぇ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
知念「ココロのスキマ、お埋めします!?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
知念「か、変わったお仕事ですね……」
喪黒「見たところ、知念さんの心にもスキマがおありのようです。何なら、相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と知念が席に腰掛けている。
喪黒「それにしても、本当にびっくりしましたよ」
「あの横綱の暴行事件での知念さんのご意見は、本心によるものではなかったのですよねぇ?」
知念「はい。あれは仕事のための発言ですから……。私も何かと相撲協会の世話になっていますし……」
6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:43:21.785 ID:oiz6yl/fD
喪黒「でも、それはあなたの生活のためにやむを得ないでしょう?何しろ、評論家とは巧みに言葉を並べるのがお仕事……」
「それに……。あんまりズバズバと過激な本音を口にしたら、業界から干されかねませんよ」
知念「ええ、まあ……。今の時代は、出版不況で本がろくに売れませんし……。雑誌も休刊が相次いでいます」
「だから、もの書きとして生き残るのも必死なんですよ。カネや利権の話があれば飛びつかざるを得ません」
喪黒「ですがねぇ……。どんなに嘘の言葉を並べても、良心の呵責の気持ちは消せないでしょう?」
知念「そうですよ!そもそも、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのものですよ!」
「その気持ちさえも偽って、しがらみや利権のためのポジショントークを行う……」
「それじゃあ、スポーツへの冒涜そのもので……。お天道様に申し訳ない気持ちでいっぱいになりますよ!!」
喪黒「しかしながら、そんなあなたも心からスポーツを楽しめるのが関鉄の応援なのですよねぇ?」
知念「はい。私は小さいころから、筋金入りの関鉄ファンとして育ったのですから……」
喪黒「なるほど……。知念さんが関鉄を応援しているのは、小さいころからの純粋な気持ちの延長なのでしょう」
「だから、嘘偽りを一切感じられませんでしたし……。あの居酒屋の中でのあなたは、本当に楽しそうでした」
知念「ええ。あの居酒屋の中なら、私はありのままの自分でいられますから……。とはいえ……」
喪黒「何やら、複雑な事情がありそうですなぁ」
「それに……。あんまりズバズバと過激な本音を口にしたら、業界から干されかねませんよ」
知念「ええ、まあ……。今の時代は、出版不況で本がろくに売れませんし……。雑誌も休刊が相次いでいます」
「だから、もの書きとして生き残るのも必死なんですよ。カネや利権の話があれば飛びつかざるを得ません」
喪黒「ですがねぇ……。どんなに嘘の言葉を並べても、良心の呵責の気持ちは消せないでしょう?」
知念「そうですよ!そもそも、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのものですよ!」
「その気持ちさえも偽って、しがらみや利権のためのポジショントークを行う……」
「それじゃあ、スポーツへの冒涜そのもので……。お天道様に申し訳ない気持ちでいっぱいになりますよ!!」
喪黒「しかしながら、そんなあなたも心からスポーツを楽しめるのが関鉄の応援なのですよねぇ?」
知念「はい。私は小さいころから、筋金入りの関鉄ファンとして育ったのですから……」
喪黒「なるほど……。知念さんが関鉄を応援しているのは、小さいころからの純粋な気持ちの延長なのでしょう」
「だから、嘘偽りを一切感じられませんでしたし……。あの居酒屋の中でのあなたは、本当に楽しそうでした」
知念「ええ。あの居酒屋の中なら、私はありのままの自分でいられますから……。とはいえ……」
喪黒「何やら、複雑な事情がありそうですなぁ」
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:45:21.177 ID:oiz6yl/fD
知念「妻が何かと口うるさいんですから……。外で一杯飲んで、帰りが遅いと妻がガミガミ叱るんです」
「しかも、娘も私のことを毛嫌いしていて……」
喪黒「知念さんは奥様や娘さんと不仲なんですか?」
知念「はい。それだけでなく、最近は関鉄にも明るいニュースが少ないので憂鬱なんです」
「2003年の優勝監督だった星田さんは今年亡くなりましたし……。おまけに、今年の関鉄は低迷しているんです」
喪黒「負けている試合を見ると、気が滅入るでしょう?」
知念「ええ。関鉄の負けを連日のように目にするのは、ファンにとっては本当に辛いですよ……」
喪黒「いやはや……。あなたの気苦労、察するに余りあります」
「ですが……。私は、知念さんのストレス解消に役に立つものを知っているんですよ」
知念「何ですか?それは……」
喪黒「詳しいことは、明日話すことにしましょう」
住宅街、知念の自宅。玄関に入る知念。それに対し、妻・慶子が鬼のような形相で知念を出迎える。
知念「ただいま……」
「しかも、娘も私のことを毛嫌いしていて……」
喪黒「知念さんは奥様や娘さんと不仲なんですか?」
知念「はい。それだけでなく、最近は関鉄にも明るいニュースが少ないので憂鬱なんです」
「2003年の優勝監督だった星田さんは今年亡くなりましたし……。おまけに、今年の関鉄は低迷しているんです」
喪黒「負けている試合を見ると、気が滅入るでしょう?」
知念「ええ。関鉄の負けを連日のように目にするのは、ファンにとっては本当に辛いですよ……」
喪黒「いやはや……。あなたの気苦労、察するに余りあります」
「ですが……。私は、知念さんのストレス解消に役に立つものを知っているんですよ」
知念「何ですか?それは……」
喪黒「詳しいことは、明日話すことにしましょう」
住宅街、知念の自宅。玄関に入る知念。それに対し、妻・慶子が鬼のような形相で知念を出迎える。
知念「ただいま……」
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:47:28.016 ID:oiz6yl/fD
慶子「あなた……。こんな遅くまでどこに行ってたの!?」
テロップ「知念慶子(52) 知念潔の妻」
知念「そ、それは……」
慶子「また、どこかで一杯飲んできたのね!?あなたは、人付き合いだけは巧みなんだから……」
知念「で、でも……。人付き合いを大事にしたおかげで、俺は仕事や収入が保障されとるし……」
「一家も飯を食っていけるんやろが……」
慶子「仕事?どうせ、立場の強い人に、おべっかやゴマすりをすることなんでしょ!」
「ほら……。横綱の暴行事件では、徹頭徹尾、加害者や相撲協会の味方をして……」
知念「うう……」
妻の剣幕に対し、押され気味の知念。言い争いをする2人の前に、娘・美織が現れる。
美織「パパとママ、うるさい!受験勉強の邪魔!」
テロップ「知念美織(18) 高校生、知念潔の娘」
知念「す、すまない……」
テロップ「知念慶子(52) 知念潔の妻」
知念「そ、それは……」
慶子「また、どこかで一杯飲んできたのね!?あなたは、人付き合いだけは巧みなんだから……」
知念「で、でも……。人付き合いを大事にしたおかげで、俺は仕事や収入が保障されとるし……」
「一家も飯を食っていけるんやろが……」
慶子「仕事?どうせ、立場の強い人に、おべっかやゴマすりをすることなんでしょ!」
「ほら……。横綱の暴行事件では、徹頭徹尾、加害者や相撲協会の味方をして……」
知念「うう……」
妻の剣幕に対し、押され気味の知念。言い争いをする2人の前に、娘・美織が現れる。
美織「パパとママ、うるさい!受験勉強の邪魔!」
テロップ「知念美織(18) 高校生、知念潔の娘」
知念「す、すまない……」
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:49:22.268 ID:oiz6yl/fD
慶子「ねぇ、美織。こんな時間まで飲み歩くパパがいけないのよ」
美織「うん」
知念(慶子どころか、最近では美織まで俺のことを見下しおって……)
翌日。東京、赤坂。銀河テレビ。昼のワイドショーに出演する知念。この番組でも、知念は横綱の暴行問題で持論を述べる。
知念「尊鉄山親方は警察に被害届を出す前に、相撲協会に事前に連絡をすべきでしたね!」
知念の発言に対し、番組出演者のある弁護士が反論をする。
弁護士「相撲協会に連絡なんかして、まともな対応が行われたと思いますか?」
知念「思いますよ!現に、相撲協会は今回の事件で……」
弁護士「知念さん!過去に、力士が親方の暴行で死亡した事件で、相撲協会はどんな対応を取ったと思いますか!?」
「そういう体質が続いてきた組織が、おいそれと変わるとは思えませんよ!!」
知念「それとこれとは別ですよ!」
美織「うん」
知念(慶子どころか、最近では美織まで俺のことを見下しおって……)
翌日。東京、赤坂。銀河テレビ。昼のワイドショーに出演する知念。この番組でも、知念は横綱の暴行問題で持論を述べる。
知念「尊鉄山親方は警察に被害届を出す前に、相撲協会に事前に連絡をすべきでしたね!」
知念の発言に対し、番組出演者のある弁護士が反論をする。
弁護士「相撲協会に連絡なんかして、まともな対応が行われたと思いますか?」
知念「思いますよ!現に、相撲協会は今回の事件で……」
弁護士「知念さん!過去に、力士が親方の暴行で死亡した事件で、相撲協会はどんな対応を取ったと思いますか!?」
「そういう体質が続いてきた組織が、おいそれと変わるとは思えませんよ!!」
知念「それとこれとは別ですよ!」
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:51:13.504 ID:oiz6yl/fD
番組の収録を終え、控室に戻る知念。控室の中には、喪黒の姿がある。
喪黒「こんにちは、知念さん」
知念「ああ、喪黒さん……」
銀河テレビを出て、タクシーに乗る喪黒と知念。タクシーは高速道路の中を走り抜けていく。
喪黒「これから、とっておきの場所へ案内しますよ。あなたのストレス解消に役立つ、特別なところへ……」
とある山の中に入るタクシー。草木が生い茂る中、銀色のピラミッド型の建物が立っている。タクシーを降りる喪黒と知念。
喪黒「着きましたよ、ここはロボットサーカスです」
知念「ロボットサーカス?」
喪黒「そうです。さあ、中に入りましょう」
玄関の自動ドアが開き、建物の中に入る喪黒と知念。2人を、受付嬢の姿をしたロボットが出迎える。
喪黒「こんにちは、知念さん」
知念「ああ、喪黒さん……」
銀河テレビを出て、タクシーに乗る喪黒と知念。タクシーは高速道路の中を走り抜けていく。
喪黒「これから、とっておきの場所へ案内しますよ。あなたのストレス解消に役立つ、特別なところへ……」
とある山の中に入るタクシー。草木が生い茂る中、銀色のピラミッド型の建物が立っている。タクシーを降りる喪黒と知念。
喪黒「着きましたよ、ここはロボットサーカスです」
知念「ロボットサーカス?」
喪黒「そうです。さあ、中に入りましょう」
玄関の自動ドアが開き、建物の中に入る喪黒と知念。2人を、受付嬢の姿をしたロボットが出迎える。
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:53:13.607 ID:oiz6yl/fD
受付嬢ロボット「イラッシャイマセ……」
知念「ロボットの受付嬢ですか……。よくできてますね、これ……」
喪黒「驚くのはまだ早いですよ。知念さん」
案内ロボットに先導され、廊下を歩く喪黒と知念。彼らが行き着いた先で、さらに自動ドアが開く。
広めの観客席に入る喪黒と知念。観客席には、大勢の客がいる。室内に鳴り響く音楽。ステージ上で挨拶をするサーカス団。
サーカス団を構成しているのは、全てロボットたちばかりだ。サーカスのロボットは皆、全身が銀色の身体をしている。
知念「ロボットのサーカス団……。まるで、SFの世界みたいな光景ですよ……」
喪黒「この光景は、SFではなく現実のものですよ。何しろ、今は21世紀になって久しいですから……」
知念「うーーん……。科学の進歩は、予想以上にすさまじいようですね」
喪黒「さぁ、知念さん。ロボットサーカスを思う存分楽しみましょう!」
知念「ロボットの受付嬢ですか……。よくできてますね、これ……」
喪黒「驚くのはまだ早いですよ。知念さん」
案内ロボットに先導され、廊下を歩く喪黒と知念。彼らが行き着いた先で、さらに自動ドアが開く。
広めの観客席に入る喪黒と知念。観客席には、大勢の客がいる。室内に鳴り響く音楽。ステージ上で挨拶をするサーカス団。
サーカス団を構成しているのは、全てロボットたちばかりだ。サーカスのロボットは皆、全身が銀色の身体をしている。
知念「ロボットのサーカス団……。まるで、SFの世界みたいな光景ですよ……」
喪黒「この光景は、SFではなく現実のものですよ。何しろ、今は21世紀になって久しいですから……」
知念「うーーん……。科学の進歩は、予想以上にすさまじいようですね」
喪黒「さぁ、知念さん。ロボットサーカスを思う存分楽しみましょう!」
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:55:13.317 ID:oiz6yl/fD
サーカスを行うロボットたち。ロボットを見つめる喪黒と知念。
知念(おおっ……、ロボットが一輪車で綱渡りをしている)
人型のロボットが、アクロバットな動きを次々と行う。ロボットの動きを食い入るように見つめる知念。
知念(ああっ!!ロボットがブランコからネットに飛び移った!)
いくつものワイングラスを頭に載せた人型ロボットが、ステージ上を歩く。
知念(こんなことまでできるのか!信じられない!!)
トランポリンの上で飛んだり跳ねたりする人型ロボット。さらに、フラフープを自在に操る人型ロボット。
知念(すごいな!!機械なのに、人間以上に身体が柔らかいぞ!)
サーカスは、人型ロボットだけでなく、動物型ロボットも登場する。
炎の輪をくぐり抜けるライオン型ロボット。自転車を乗り回す熊型ロボット。ボールの上に乗る象型ロボット……。
ステージ上のサーカス団に拍手をする観客たち。喪黒と知念も、ロボットたちに惜しみない拍手を送っている。
知念(おおっ……、ロボットが一輪車で綱渡りをしている)
人型のロボットが、アクロバットな動きを次々と行う。ロボットの動きを食い入るように見つめる知念。
知念(ああっ!!ロボットがブランコからネットに飛び移った!)
いくつものワイングラスを頭に載せた人型ロボットが、ステージ上を歩く。
知念(こんなことまでできるのか!信じられない!!)
トランポリンの上で飛んだり跳ねたりする人型ロボット。さらに、フラフープを自在に操る人型ロボット。
知念(すごいな!!機械なのに、人間以上に身体が柔らかいぞ!)
サーカスは、人型ロボットだけでなく、動物型ロボットも登場する。
炎の輪をくぐり抜けるライオン型ロボット。自転車を乗り回す熊型ロボット。ボールの上に乗る象型ロボット……。
ステージ上のサーカス団に拍手をする観客たち。喪黒と知念も、ロボットたちに惜しみない拍手を送っている。
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:57:14.580 ID:oiz6yl/fD
ピラミッド型の建物の外へ出る喪黒と知念。知念は、感極まった表情をしている。
知念「喪黒さん!今の私は、猛烈な感動を覚えていますよ!!」
「何しろ、ロボットたちのアクロバットな動きは、手に汗を握る場面の連続で……」
「もう、アドレナリンが出まくりでしたよ!!こんなに面白いものが、この世にあったのかと……」
喪黒「あなたいわく、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのもの……」
「だから、見方によってはサーカスもスポーツの一種と言えるでしょう」
知念「ええ。そりゃあ、もう……。おかげさまで、日ごろのストレスを発散できました!喪黒さんには、本当に感謝しますよ!」
喪黒「どういたしまして……。ただし、知念さんには約束していただきたいことがあります」
知念「約束!?」
喪黒「そうです。あなたがロボットサーカスを見るのは、今回の1度きりにしておいてください」
「たった1度しか味わえない感動を胸にしまうからこそ、この経験は貴重なものとして生き続けるのですよ」
知念「分かりました……。あのサーカスの感動のおかげで、私は、スポーツライターの魂が再び目覚めたような気がするんです!」
喪黒「そうですか。でも、現実の生活にそれが生かせるといいですけどねぇ……」
知念「もちろん、生かして見せますよ!!これからの私は、生まれ変わったつもりで仕事をしますから!!」
知念「喪黒さん!今の私は、猛烈な感動を覚えていますよ!!」
「何しろ、ロボットたちのアクロバットな動きは、手に汗を握る場面の連続で……」
「もう、アドレナリンが出まくりでしたよ!!こんなに面白いものが、この世にあったのかと……」
喪黒「あなたいわく、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのもの……」
「だから、見方によってはサーカスもスポーツの一種と言えるでしょう」
知念「ええ。そりゃあ、もう……。おかげさまで、日ごろのストレスを発散できました!喪黒さんには、本当に感謝しますよ!」
喪黒「どういたしまして……。ただし、知念さんには約束していただきたいことがあります」
知念「約束!?」
喪黒「そうです。あなたがロボットサーカスを見るのは、今回の1度きりにしておいてください」
「たった1度しか味わえない感動を胸にしまうからこそ、この経験は貴重なものとして生き続けるのですよ」
知念「分かりました……。あのサーカスの感動のおかげで、私は、スポーツライターの魂が再び目覚めたような気がするんです!」
喪黒「そうですか。でも、現実の生活にそれが生かせるといいですけどねぇ……」
知念「もちろん、生かして見せますよ!!これからの私は、生まれ変わったつもりで仕事をしますから!!」
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:59:26.340 ID:oiz6yl/fD
昼。帝国テレビ。ワイドショー「情報ワイド ミヤノ堂」に出演する知念。彼の主張は、いつもと正反対になっている。
知念「今回の暴行事件、悪いのは横綱と相撲協会の方です!私は、尊鉄山親方の対応を心から支持します!」
司会者「どうしたんですか、知念さん……」
知念「私はこれまで、相撲協会と仕事で何かとしがらみがありました!でも、今の私は目覚めて、真人間になったんです!」
番組収録を終え、控室にいる知念。知念は、相撲協会関係者と会話をする。相撲協会関係者に脅され、息をのむ知念。
相撲協会関係者「知念さん。あなた余計なことを言ってくれましたね……。ただじゃ済みませんよ」
夜。居酒屋「黄金豹」。常連客たちとともに酒を飲む知念。いつも通り、テレビで関鉄パンサーズの野球中継を見る一同。
実況「試合終了!パンサーズ、力つきました!宿敵・巨神を前に、無念の逆転負けです!」
大型の液晶テレビを見ながら、落ち込む一同。
一同「あああ……」
知念(関鉄が負けた。ロボットサーカスは、負けや挫折がなくて気持ちいいままでいられるのに……。現実のスポーツチームはそうじゃない)
知念「今回の暴行事件、悪いのは横綱と相撲協会の方です!私は、尊鉄山親方の対応を心から支持します!」
司会者「どうしたんですか、知念さん……」
知念「私はこれまで、相撲協会と仕事で何かとしがらみがありました!でも、今の私は目覚めて、真人間になったんです!」
番組収録を終え、控室にいる知念。知念は、相撲協会関係者と会話をする。相撲協会関係者に脅され、息をのむ知念。
相撲協会関係者「知念さん。あなた余計なことを言ってくれましたね……。ただじゃ済みませんよ」
夜。居酒屋「黄金豹」。常連客たちとともに酒を飲む知念。いつも通り、テレビで関鉄パンサーズの野球中継を見る一同。
実況「試合終了!パンサーズ、力つきました!宿敵・巨神を前に、無念の逆転負けです!」
大型の液晶テレビを見ながら、落ち込む一同。
一同「あああ……」
知念(関鉄が負けた。ロボットサーカスは、負けや挫折がなくて気持ちいいままでいられるのに……。現実のスポーツチームはそうじゃない)
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 02:02:30.369 ID:oiz6yl/fD
知念家。居間で、妻・慶子と娘・美織になじられる知念。
慶子「あなた、とんでもないことをしてくれたわね……!」
知念「とんでもないこと?昼のワイドショーでの発言のことか?」
慶子「そうよ!相撲関係の仕事がなくなったら、収入が大きく落ち込むでしょ!」
知念「でも、俺は正義感と自分の良心に従ったまでで……」
美織「あのねぇ。私は来年、大学に行かなきゃいけないんだよ!大学の学費、どうするの?」
「私のことも考えてから、行動すればよかったのに……。バカじゃないの、パパ!!」
慶子「あなたはコネだけが取り柄の人だったのに……。全く、余計なことをしてくれて……」
美織「ホント……。お金を稼げないパパなんか、家から出ていけばいいのに!」
知念「分かった!!こんな家、出て行ってやる!!」
堪忍袋の緒が切れ、家を飛び出す知念。住宅街を歩く知念の前に、喪黒が姿を現す。
知念「も、喪黒さん……。もう1度、ロボットサーカスに連れて行ってください!」
喪黒「いいえ、なりません。ロボットサーカスを見るのは1回だけ……。それが私との約束でしたよねぇ」
慶子「あなた、とんでもないことをしてくれたわね……!」
知念「とんでもないこと?昼のワイドショーでの発言のことか?」
慶子「そうよ!相撲関係の仕事がなくなったら、収入が大きく落ち込むでしょ!」
知念「でも、俺は正義感と自分の良心に従ったまでで……」
美織「あのねぇ。私は来年、大学に行かなきゃいけないんだよ!大学の学費、どうするの?」
「私のことも考えてから、行動すればよかったのに……。バカじゃないの、パパ!!」
慶子「あなたはコネだけが取り柄の人だったのに……。全く、余計なことをしてくれて……」
美織「ホント……。お金を稼げないパパなんか、家から出ていけばいいのに!」
知念「分かった!!こんな家、出て行ってやる!!」
堪忍袋の緒が切れ、家を飛び出す知念。住宅街を歩く知念の前に、喪黒が姿を現す。
知念「も、喪黒さん……。もう1度、ロボットサーカスに連れて行ってください!」
喪黒「いいえ、なりません。ロボットサーカスを見るのは1回だけ……。それが私との約束でしたよねぇ」
16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 02:04:41.275 ID:oiz6yl/fD
知念「でも、喪黒さん……!!これは私の一生の願いなんです!!実は今日、私は……」
喪黒「そうですか。そんなことがあったんですか……」
知念「喪黒さん!私は、ロボットサーカスをどうしても見たいんです!あの建物の中に、ずっといてもいいくらいです!」
喪黒「分かりました……。あなたの望みをかなえてあげましょう!!ですが……、どんなことになっても私は知りませんよ!!」
喪黒は知念に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
知念「ギャアアアアアアアアア!!!」
夜空に浮かび上がるピラミッド型の建物。建物を目にし、驚く知念。建物の入り口の自動ドアが開き、知念に光を発射する。
光とともに、建物の入口へと吸い込まれていく知念。
1か月後。高速道路を走るタクシー。助手席に乗る喪黒。後部座席には知念慶子と娘・美織が乗っている。
慶子「あなた、主人の知り合いですよね?主人は一体、どこに行ったんですか?」
喪黒「知念さんですか?彼は例の場所にいるはずですよ」
喪黒「そうですか。そんなことがあったんですか……」
知念「喪黒さん!私は、ロボットサーカスをどうしても見たいんです!あの建物の中に、ずっといてもいいくらいです!」
喪黒「分かりました……。あなたの望みをかなえてあげましょう!!ですが……、どんなことになっても私は知りませんよ!!」
喪黒は知念に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
知念「ギャアアアアアアアアア!!!」
夜空に浮かび上がるピラミッド型の建物。建物を目にし、驚く知念。建物の入り口の自動ドアが開き、知念に光を発射する。
光とともに、建物の入口へと吸い込まれていく知念。
1か月後。高速道路を走るタクシー。助手席に乗る喪黒。後部座席には知念慶子と娘・美織が乗っている。
慶子「あなた、主人の知り合いですよね?主人は一体、どこに行ったんですか?」
喪黒「知念さんですか?彼は例の場所にいるはずですよ」
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 02:09:51.091 ID:oiz6yl/fD
とある山の中。ピラミッド型の建物。観客席に座る喪黒と、慶子・美織親子。この3人以外の観客は、皆、ロボットになっている。
信じがたい光景を目にし、驚く慶子と美織。
慶子・美織「あーーーーーっ!!」
サーカス団の中には、ロボット化した知念も加わっている。そう……。顔は人間風だが、首から下は銀色の機械となった状態で――。
慶子「あ、あなた……!!」
美織「パ、パパァーーッ!!」
悲壮な顔で悲鳴を上げる慶子と美織。ロボット特有のうつろな表情で、アクロバットな動きをこなす知念。
ピラミッド型の建物の前にいる喪黒。
喪黒「そもそも人間は……。長い歴史をかけてスポーツを文化として発展させ、一大産業として社会に根付かせてきました」
「スポーツは、身体を動かす欲求を満たすものであり……。行う側と見る側に夢と感動を与えることが醍醐味と言えます」
「しかしながら、プロスポーツの世界は商業主義が進みましたし……。興行と化したものは利権や問題が生まれるものです」
「ただし……。感情を一切持たないロボットが関わった興行ならば、それらの問題はたちまち解決してしまうでしょう」
「え?感情がなければ、感動は生まれない?なぁに、スポーツの感動もまた幻ですよ」
「知念さんが追い求めていたものも、所詮は幻なのですから……。オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
信じがたい光景を目にし、驚く慶子と美織。
慶子・美織「あーーーーーっ!!」
サーカス団の中には、ロボット化した知念も加わっている。そう……。顔は人間風だが、首から下は銀色の機械となった状態で――。
慶子「あ、あなた……!!」
美織「パ、パパァーーッ!!」
悲壮な顔で悲鳴を上げる慶子と美織。ロボット特有のうつろな表情で、アクロバットな動きをこなす知念。
ピラミッド型の建物の前にいる喪黒。
喪黒「そもそも人間は……。長い歴史をかけてスポーツを文化として発展させ、一大産業として社会に根付かせてきました」
「スポーツは、身体を動かす欲求を満たすものであり……。行う側と見る側に夢と感動を与えることが醍醐味と言えます」
「しかしながら、プロスポーツの世界は商業主義が進みましたし……。興行と化したものは利権や問題が生まれるものです」
「ただし……。感情を一切持たないロボットが関わった興行ならば、それらの問題はたちまち解決してしまうでしょう」
「え?感情がなければ、感動は生まれない?なぁに、スポーツの感動もまた幻ですよ」
「知念さんが追い求めていたものも、所詮は幻なのですから……。オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
引用元: 喪黒福造「着きましたよ、ここはロボットサーカスです」 スポーツライター「ロボットサーカス?」
喪黒福造「ゴブモンGOをやれば、あなたのニート生活も解消されますよ」 ニート「ゴブモンGOでニート脱却!?」
2018-10-20
1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:13:42.293 ID:y6gjIiBaD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
田尻茂(27) ニート
【レアゴブモンとの遭遇】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
田尻茂(27) ニート
【レアゴブモンとの遭遇】
ホーッホッホッホ……。」
2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:16:19.975 ID:y6gjIiBaD
朝。とある住宅街。塀には「田尻」の表札が見える。
田尻家、居間。初老の両親と、若い男性が朝食をとっている。若い男を心配そうな顔で見つめる両親。
俊太郎「茂。実は、お前にどうしても言いたいことがあるんだが……」
テロップ「田尻俊太郎(64) 大企業部長」
茂「言わなくても分かるよ。どうせ今日も、俺が働くよう言いたいんだろ」
テロップ「田尻茂(27) ニート」
俊太郎「ああ。分かってるなら、なぜ働こうとしないんだ……?」
茂「今の俺の年齢と学歴じゃあ、どの会社も雇うわけないじゃん」
達子「アルバイトなら、いくらでもあるでしょ。茂がその気になれば、アルバイトくらいはできるはずよ」
テロップ「田尻達子(60) 専業主婦」
茂「残念だね。現在の俺は、働きたいという気持ちは全然ないから」
俊太郎「なぁ、茂。父さんは来年で定年を迎えるんだぞ。父さんが会社を辞めた後も、お前を養うのは楽じゃないんだからな」
田尻家、居間。初老の両親と、若い男性が朝食をとっている。若い男を心配そうな顔で見つめる両親。
俊太郎「茂。実は、お前にどうしても言いたいことがあるんだが……」
テロップ「田尻俊太郎(64) 大企業部長」
茂「言わなくても分かるよ。どうせ今日も、俺が働くよう言いたいんだろ」
テロップ「田尻茂(27) ニート」
俊太郎「ああ。分かってるなら、なぜ働こうとしないんだ……?」
茂「今の俺の年齢と学歴じゃあ、どの会社も雇うわけないじゃん」
達子「アルバイトなら、いくらでもあるでしょ。茂がその気になれば、アルバイトくらいはできるはずよ」
テロップ「田尻達子(60) 専業主婦」
茂「残念だね。現在の俺は、働きたいという気持ちは全然ないから」
俊太郎「なぁ、茂。父さんは来年で定年を迎えるんだぞ。父さんが会社を辞めた後も、お前を養うのは楽じゃないんだからな」
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:18:24.334 ID:y6gjIiBaD
茂「もちろん、分かってるよ。でも、俺はどうしても働きたくないんだ……」
働くつもりがない茂に対し、うんざりした表情の俊太郎と達子。
俊太郎「行ってくる……」
達子「行ってらっしゃい」
玄関を出る俊太郎を、達子が見送る。一方、茂はベッドに寝そべりながら小型のゲーム機を操作している。
茂(昔から、巷で言われているだろ。『働いたら負け』だってな……)
昼。居間で昼食をとる茂と母・達子。
達子「ねぇ、茂……。仲のいい友達とか作ったらどう?」
茂「一人の方が気楽でいいさ」
達子「友達がいれば、外に出る機会も増えるでしょ」
茂「友達なんか欲しくないよ。昔、俺は人間関係でひどい目にあったんでね」
言い訳を繰り返す茂に対し、達子は困った顔をする。
働くつもりがない茂に対し、うんざりした表情の俊太郎と達子。
俊太郎「行ってくる……」
達子「行ってらっしゃい」
玄関を出る俊太郎を、達子が見送る。一方、茂はベッドに寝そべりながら小型のゲーム機を操作している。
茂(昔から、巷で言われているだろ。『働いたら負け』だってな……)
昼。居間で昼食をとる茂と母・達子。
達子「ねぇ、茂……。仲のいい友達とか作ったらどう?」
茂「一人の方が気楽でいいさ」
達子「友達がいれば、外に出る機会も増えるでしょ」
茂「友達なんか欲しくないよ。昔、俺は人間関係でひどい目にあったんでね」
言い訳を繰り返す茂に対し、達子は困った顔をする。
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:20:15.341 ID:y6gjIiBaD
茂は、部屋で漫画の単行本を読んでいる。彼が読んでいるのは、ラブコメを題材にした学園漫画だ。
茂(友人や恋人に恵まれた楽しい生活か……。こんなのは、俺の人生とは無縁のものでしかないな)
漫画の単行本を本棚にしまう茂。茂は、本棚にある少年漫画雑誌の束を見つめる。
茂「お、そうだ……。今日は、『週刊少年ジャングル』の発売日だったな」
夕方。コンビニ。雑誌『週刊少年ジャングル』と発泡酒の缶を手にし、レジの前にいる茂。
コンビニを出る茂。彼は、ゴミ箱の側でレジ袋から発泡酒の缶を取り出す。
茂(たまには一杯やるか……)
一方、コンビニの近くには、喪黒福造もいる。何かに夢中になった様子で、スマホの操作を行う喪黒。
発泡酒を飲んでいる茂の姿を見つける喪黒。喪黒は茂に近づき、彼の隣に座る。
喪黒「おや?あなた、こんな所でお酒を飲んでいるのですか?」
茂「ええ。そうですけど……。一体俺に何の用なんですか?」
喪黒「あなたの飲みっぷりが見事だったもので、つい気になって……」
茂(友人や恋人に恵まれた楽しい生活か……。こんなのは、俺の人生とは無縁のものでしかないな)
漫画の単行本を本棚にしまう茂。茂は、本棚にある少年漫画雑誌の束を見つめる。
茂「お、そうだ……。今日は、『週刊少年ジャングル』の発売日だったな」
夕方。コンビニ。雑誌『週刊少年ジャングル』と発泡酒の缶を手にし、レジの前にいる茂。
コンビニを出る茂。彼は、ゴミ箱の側でレジ袋から発泡酒の缶を取り出す。
茂(たまには一杯やるか……)
一方、コンビニの近くには、喪黒福造もいる。何かに夢中になった様子で、スマホの操作を行う喪黒。
発泡酒を飲んでいる茂の姿を見つける喪黒。喪黒は茂に近づき、彼の隣に座る。
喪黒「おや?あなた、こんな所でお酒を飲んでいるのですか?」
茂「ええ。そうですけど……。一体俺に何の用なんですか?」
喪黒「あなたの飲みっぷりが見事だったもので、つい気になって……」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:22:13.923 ID:y6gjIiBaD
茂「俺は精神的に参っているんです。だから、飲まずにはいられないんですよ」
喪黒「ほう……。おそらく、あなたはご両親からこう言われたのでしょう。『早く仕事に就いてくれ』と……」
「見たところ、あなたは働いているような人間の雰囲気ではありませんから……」
茂「そ、そうですよ……!よく気がつきましたね……!」
喪黒「いやぁ……。仕事柄、長年、人間観察を行ってきた賜物ですよ。何しろ、私はこういう者ですから」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
茂「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
茂「聞いたことのないお仕事ですね……」
喪黒「あなたのような人を救うのが、私の仕事なんです。何なら、相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と茂が席に腰掛けている。
茂「実は俺、20代後半になっても定職に就いていないんですよね……」
喪黒「ほう……。おそらく、あなたはご両親からこう言われたのでしょう。『早く仕事に就いてくれ』と……」
「見たところ、あなたは働いているような人間の雰囲気ではありませんから……」
茂「そ、そうですよ……!よく気がつきましたね……!」
喪黒「いやぁ……。仕事柄、長年、人間観察を行ってきた賜物ですよ。何しろ、私はこういう者ですから」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
茂「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
茂「聞いたことのないお仕事ですね……」
喪黒「あなたのような人を救うのが、私の仕事なんです。何なら、相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と茂が席に腰掛けている。
茂「実は俺、20代後半になっても定職に就いていないんですよね……」
6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:24:20.380 ID:y6gjIiBaD
喪黒「しかしながら、あなたは辛うじて外へ出ることができるわけですから……」
「だから『引きこもり』ではなく、いわゆる『ニート』でしょう」
茂「まあ、定義的にはそうなりますよね。恥ずかしい話ですが……」
喪黒「田尻さん。あなたがニートになったのも、それなりの事情があったのでしょうなぁ……」
茂「はい。俺は大学に入ったけど卒業できず、23歳の時に中退したんですよ」
喪黒「大学の授業についていけず、無気力になったのですか?」
茂「それだけではありません。俺は大学でも人間関係がうまくいかなかったんです」
喪黒「つまり、あなたは友達ができなかったのですねぇ」
茂「はい。まあ、俺は中学や高校のころも周りから浮いていましたし……」
「大学ではサークルに入ったものの、ある出来事をきっかけにサークルをやめました」
喪黒「学業と人間関係が行き詰まった結果……。大学を中退し、今に至るまでニート生活というわけですか……」
茂「そうです。年齢的にも、学歴的にも、今の俺はどの会社も雇ってくれないでしょうから……」
喪黒「それなら、アルバイトでもしたらどうです?」
「だから『引きこもり』ではなく、いわゆる『ニート』でしょう」
茂「まあ、定義的にはそうなりますよね。恥ずかしい話ですが……」
喪黒「田尻さん。あなたがニートになったのも、それなりの事情があったのでしょうなぁ……」
茂「はい。俺は大学に入ったけど卒業できず、23歳の時に中退したんですよ」
喪黒「大学の授業についていけず、無気力になったのですか?」
茂「それだけではありません。俺は大学でも人間関係がうまくいかなかったんです」
喪黒「つまり、あなたは友達ができなかったのですねぇ」
茂「はい。まあ、俺は中学や高校のころも周りから浮いていましたし……」
「大学ではサークルに入ったものの、ある出来事をきっかけにサークルをやめました」
喪黒「学業と人間関係が行き詰まった結果……。大学を中退し、今に至るまでニート生活というわけですか……」
茂「そうです。年齢的にも、学歴的にも、今の俺はどの会社も雇ってくれないでしょうから……」
喪黒「それなら、アルバイトでもしたらどうです?」
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:26:17.318 ID:y6gjIiBaD
茂「俺はコミュニケーション能力がないですから……。アルバイトをやってもうまくいくとは思えません」
喪黒「でも、あなたは外へ出ることはできるのでしょう?外出する気力があれば、仕事探しもできるはずですが……」
茂「まあ、その……。俺はよほど特別な用事がない限り、外へ出ることはありませんよ……」
「ほら……。今現在、外へ出ているのは、コンビニで漫画雑誌を買うためなんですから……」
喪黒「じゃあ、外へ出る機会を増やしてみたらどうです?身体を動かすことは、肉体面や精神面での健康にいいですし……」
「外出が増えて気力が充実すれば、あなたもニート生活から抜け出せるかもしれませんよ」
茂「とはいえ……。外へ出るのは、何かと面倒くさいんですし……」
喪黒「大丈夫ですよ。あるものを使えば、間違いなくあなたの外出は増えるでしょう」
茂「そんなもの、本当にあるんですか?」
喪黒「はい。見てください、これですよ」
ズボンのポケットからスマホを取り出す喪黒。喪黒の操作で、スマホにある画面が表示される。
茂「へぇ……、ゴブモンGOですか。世間で話題になっている、あの有名な……」
喪黒「そうです。私もこのゲームを始めたのですが、意外と面白くて夢中になってしまいましたよ」
喪黒「でも、あなたは外へ出ることはできるのでしょう?外出する気力があれば、仕事探しもできるはずですが……」
茂「まあ、その……。俺はよほど特別な用事がない限り、外へ出ることはありませんよ……」
「ほら……。今現在、外へ出ているのは、コンビニで漫画雑誌を買うためなんですから……」
喪黒「じゃあ、外へ出る機会を増やしてみたらどうです?身体を動かすことは、肉体面や精神面での健康にいいですし……」
「外出が増えて気力が充実すれば、あなたもニート生活から抜け出せるかもしれませんよ」
茂「とはいえ……。外へ出るのは、何かと面倒くさいんですし……」
喪黒「大丈夫ですよ。あるものを使えば、間違いなくあなたの外出は増えるでしょう」
茂「そんなもの、本当にあるんですか?」
喪黒「はい。見てください、これですよ」
ズボンのポケットからスマホを取り出す喪黒。喪黒の操作で、スマホにある画面が表示される。
茂「へぇ……、ゴブモンGOですか。世間で話題になっている、あの有名な……」
喪黒「そうです。私もこのゲームを始めたのですが、意外と面白くて夢中になってしまいましたよ」
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:28:15.707 ID:y6gjIiBaD
茂「確か、ゴブモンGOは大人がハマるゲームと言われていますよね……」
「そのおかげもあって、世界各国で社会現象になっているらしいですが……」
喪黒「何よりも、ゴブモンGOの元になった『ゴブリンモンスター』は知名度が高いですから」
「ゲームやアニメなど、ゴブモンは世界的な人気を誇っていますからねぇ……」
茂「世界においては言わずもがな……。日本国内でも、ゴブモンは多くの人間になじみがあるでしょう」
「ゴブモンなら、俺もテレビゲームでやったことがありますし……」
喪黒「でも、田尻さんはゴブモンGOをやったことはないでしょう?」
茂「ええ、まあ……。俺は外出が少ないですから……。ほら、ゴブモンGOって外出が多いゲームですよね」
「町中に出没しているゴブモンを捕まえるためのゲームでしょう?ゴブモンGOって……」
喪黒「田尻さん。ゴブモンGOをやれば、あなたのニート生活も解消されますよ」
茂「ゴブモンGOでニート脱却!?どういうことなんですか!?」
喪黒「ゴブモンGOは、健康面でプラスの効果がたくさんあります」
「なぜなら、ゴブモンGOは何かと外に出ることが多いゲームであり、運動不足の解消にもなります」
茂「それは言えるかもしれませんね……」
喪黒「引きこもりの解消や糖尿病の治療に、ゴブモンGOが役に立ったという報告もあるんですよ」
茂「そうなんですか……」
「そのおかげもあって、世界各国で社会現象になっているらしいですが……」
喪黒「何よりも、ゴブモンGOの元になった『ゴブリンモンスター』は知名度が高いですから」
「ゲームやアニメなど、ゴブモンは世界的な人気を誇っていますからねぇ……」
茂「世界においては言わずもがな……。日本国内でも、ゴブモンは多くの人間になじみがあるでしょう」
「ゴブモンなら、俺もテレビゲームでやったことがありますし……」
喪黒「でも、田尻さんはゴブモンGOをやったことはないでしょう?」
茂「ええ、まあ……。俺は外出が少ないですから……。ほら、ゴブモンGOって外出が多いゲームですよね」
「町中に出没しているゴブモンを捕まえるためのゲームでしょう?ゴブモンGOって……」
喪黒「田尻さん。ゴブモンGOをやれば、あなたのニート生活も解消されますよ」
茂「ゴブモンGOでニート脱却!?どういうことなんですか!?」
喪黒「ゴブモンGOは、健康面でプラスの効果がたくさんあります」
「なぜなら、ゴブモンGOは何かと外に出ることが多いゲームであり、運動不足の解消にもなります」
茂「それは言えるかもしれませんね……」
喪黒「引きこもりの解消や糖尿病の治療に、ゴブモンGOが役に立ったという報告もあるんですよ」
茂「そうなんですか……」
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:30:18.618 ID:y6gjIiBaD
喪黒「それだけではありません。ゴブモンGOは、精神面でもプラスの効果があるんです」
「何しろ、ゴブモンGOは大の大人でも楽しめるような作りになっていますから……」
「うつ病の改善や認知症の予防にも、ゴブモンGOは効果があるらしいですよ」
茂「そんなにすごいんですか、ゴブモンGOって……」
喪黒「そうです。ゴブモンGOをやれば、田尻さんの生活もいい方に変化するでしょう」
茂「でも、仕事探しに役に立つんですか?外に出ることが増えれば、健康にはいいんでしょうけど……」
喪黒「頻繁に外へ出て、身体を動かすことが増えれば、あなたの気力も充実します」
「それにより、仕事を探そうという気持ちも自然と起きるでしょう」
茂「うーーーん……」
喪黒「さあ、田尻さん。あなたもゴブモンGOをやってみたらどうですか?」
茂「じゃあ、騙されたと思ってやってみますよ……」
喪黒「そうです、その調子!」
翌日。田尻家。自分の部屋で、スマホを操作する茂。
茂(マジかよ……。ニックネームを登録しなきゃならんのか。面倒くさいな……)
「何しろ、ゴブモンGOは大の大人でも楽しめるような作りになっていますから……」
「うつ病の改善や認知症の予防にも、ゴブモンGOは効果があるらしいですよ」
茂「そんなにすごいんですか、ゴブモンGOって……」
喪黒「そうです。ゴブモンGOをやれば、田尻さんの生活もいい方に変化するでしょう」
茂「でも、仕事探しに役に立つんですか?外に出ることが増えれば、健康にはいいんでしょうけど……」
喪黒「頻繁に外へ出て、身体を動かすことが増えれば、あなたの気力も充実します」
「それにより、仕事を探そうという気持ちも自然と起きるでしょう」
茂「うーーーん……」
喪黒「さあ、田尻さん。あなたもゴブモンGOをやってみたらどうですか?」
茂「じゃあ、騙されたと思ってやってみますよ……」
喪黒「そうです、その調子!」
翌日。田尻家。自分の部屋で、スマホを操作する茂。
茂(マジかよ……。ニックネームを登録しなきゃならんのか。面倒くさいな……)
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:32:22.471 ID:y6gjIiBaD
茂はスマホの操作を続ける。
茂(よし、ゴブモンGOをインストールできた。さっそく、外へ出てみるか)
スマホを持ち、街を歩く茂。彼はハンバーガー屋の中に入る。
茂(この店が、ゴブストップか……。よし、アイテムをゲットしたぞ)
とある公園の中にいる茂。茂のズボンのポケットの中で、スマホが振動する。スマホの画面を見つめる茂。
茂(おっ……。こんなところに、ゴブモンがいたとは……)
公園のあちこちを巡り、ゴブモン探しに夢中になる茂。
茂(いやぁ、それにしてもなかなか面白いゲームだな……。道理で、大人がハマるはずだよ……)
茂は、自宅にいるよりも充実した表情をしている。
夕方。田尻家、浴室。風呂に入る茂。
茂(外に出て太陽の光を浴び、身体を動かすってのは……。実に気分がいいもんだなぁ)
(ゴブモンGOのおかげで、俺もこれからは外出が増えそうだ……)
茂(よし、ゴブモンGOをインストールできた。さっそく、外へ出てみるか)
スマホを持ち、街を歩く茂。彼はハンバーガー屋の中に入る。
茂(この店が、ゴブストップか……。よし、アイテムをゲットしたぞ)
とある公園の中にいる茂。茂のズボンのポケットの中で、スマホが振動する。スマホの画面を見つめる茂。
茂(おっ……。こんなところに、ゴブモンがいたとは……)
公園のあちこちを巡り、ゴブモン探しに夢中になる茂。
茂(いやぁ、それにしてもなかなか面白いゲームだな……。道理で、大人がハマるはずだよ……)
茂は、自宅にいるよりも充実した表情をしている。
夕方。田尻家、浴室。風呂に入る茂。
茂(外に出て太陽の光を浴び、身体を動かすってのは……。実に気分がいいもんだなぁ)
(ゴブモンGOのおかげで、俺もこれからは外出が増えそうだ……)
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:34:18.870 ID:y6gjIiBaD
部屋。風呂からあがり、机に向かう茂。茂は考え事をする。
茂(しかし、だ……。ゴブモンGOのために外出をするのも、意外と金がかかる……)
(ゴブストップとされる店での飲食代がそうだ。それに、ゴブモン探しを本格的にやると交通費もいる……)
(電車代とか、バス代とか……。あと、スマホのバッテリーの費用……)
BAR「魔の巣」。喪黒と茂が席に腰掛けている。
茂「喪黒さん。ゴブモンGOを始めたことにより、俺の生活はすっかり一変しました」
喪黒「ゴブモンGOをプレイすることで、外へ出る機会が増えたでしょう」
茂「それだけではありません。この俺も、ようやくニート生活から抜け出せたんです!!」
喪黒「仕事を探そうという気力が起きたのでしょうねぇ」
茂「まあ、それもありますが……。ゴブモンGOを本格的に楽しむためには、金がいるんですよ」
「飲食代とか、交通費とか、スマホのバッテリーの費用とか……」
「だから、小遣い稼ぎのためにアルバイトを始めたんです」
喪黒「アルバイトはうまくいっていますか?」
茂「もちろんです。ドラッグストアの倉庫で、棚卸しをやる作業ですから……。俺でも無難にこなせています」
喪黒「よかったですなぁ、田尻さん」
茂(しかし、だ……。ゴブモンGOのために外出をするのも、意外と金がかかる……)
(ゴブストップとされる店での飲食代がそうだ。それに、ゴブモン探しを本格的にやると交通費もいる……)
(電車代とか、バス代とか……。あと、スマホのバッテリーの費用……)
BAR「魔の巣」。喪黒と茂が席に腰掛けている。
茂「喪黒さん。ゴブモンGOを始めたことにより、俺の生活はすっかり一変しました」
喪黒「ゴブモンGOをプレイすることで、外へ出る機会が増えたでしょう」
茂「それだけではありません。この俺も、ようやくニート生活から抜け出せたんです!!」
喪黒「仕事を探そうという気力が起きたのでしょうねぇ」
茂「まあ、それもありますが……。ゴブモンGOを本格的に楽しむためには、金がいるんですよ」
「飲食代とか、交通費とか、スマホのバッテリーの費用とか……」
「だから、小遣い稼ぎのためにアルバイトを始めたんです」
喪黒「アルバイトはうまくいっていますか?」
茂「もちろんです。ドラッグストアの倉庫で、棚卸しをやる作業ですから……。俺でも無難にこなせています」
喪黒「よかったですなぁ、田尻さん」
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:36:17.456 ID:y6gjIiBaD
茂「何もかも、喪黒さんのおかげです!俺にゴブモンGOを紹介してくださって、本当に感謝していますよ!」
喪黒「どういたしまして……。ただし、私の方から忠告しておきたいことがありましてねぇ……」
茂「どういうことですか?」
喪黒「田尻さんはニート生活を脱却して間もないですから、世間に対して不慣れなことも多いはずです」
「ですから、少しずつ段階を重ねた上で社会に適応していくべきなのですよ」
茂「確かに……」
喪黒「そこでです……。あなたには、約束していただきたいことがあります」
茂「約束!?」
喪黒「そうです、田尻さん。誰かと恋をするような真似は、当分の間、控えてください」
「なぜなら……。ニートをやめたばかりのあなたに、恋愛は何かと刺激が強すぎるんですよ」
茂「わ、分かりました……。喪黒さん」
喪黒「約束は、ちゃーーんと守ってくださいよ」
茂「はい……」
喪黒「どういたしまして……。ただし、私の方から忠告しておきたいことがありましてねぇ……」
茂「どういうことですか?」
喪黒「田尻さんはニート生活を脱却して間もないですから、世間に対して不慣れなことも多いはずです」
「ですから、少しずつ段階を重ねた上で社会に適応していくべきなのですよ」
茂「確かに……」
喪黒「そこでです……。あなたには、約束していただきたいことがあります」
茂「約束!?」
喪黒「そうです、田尻さん。誰かと恋をするような真似は、当分の間、控えてください」
「なぜなら……。ニートをやめたばかりのあなたに、恋愛は何かと刺激が強すぎるんですよ」
茂「わ、分かりました……。喪黒さん」
喪黒「約束は、ちゃーーんと守ってくださいよ」
茂「はい……」
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:38:17.043 ID:y6gjIiBaD
とあるドラッグストア。店の上の階では、アルバイトたちが倉庫作業を行っている。
バイト作業には、軍手をはめた茂も加わっている。荷台の上に、薬局の商品を次々と積む茂。
さらに別の階で、茂たちは棚卸しを行っている。カッターナイフを使い、商品の入った段ボール箱を開ける茂。
バイト仲間の遥成玲奈(はるか・せれな)が、茂に声をかける。
成玲奈「田尻さん。上にあるあの商品、取ってください」
テロップ「遥成玲奈(27) フリーター」
棚の上の方にある商品を取り、成玲奈に渡す茂。
成玲奈「ありがとうございます」
夕方。バイトを終えて店を出る茂に、成玲奈が声をかける。
成玲奈「田尻さんは確か、ゴブモンGOが趣味だそうですね?」
茂「ああ……。そうですけど……」
成玲奈「今度の日曜日、私と一緒にゴブモン探しをしませんか?私、レアゴブモンが出没する場所を知っているんです」
バイト作業には、軍手をはめた茂も加わっている。荷台の上に、薬局の商品を次々と積む茂。
さらに別の階で、茂たちは棚卸しを行っている。カッターナイフを使い、商品の入った段ボール箱を開ける茂。
バイト仲間の遥成玲奈(はるか・せれな)が、茂に声をかける。
成玲奈「田尻さん。上にあるあの商品、取ってください」
テロップ「遥成玲奈(27) フリーター」
棚の上の方にある商品を取り、成玲奈に渡す茂。
成玲奈「ありがとうございます」
夕方。バイトを終えて店を出る茂に、成玲奈が声をかける。
成玲奈「田尻さんは確か、ゴブモンGOが趣味だそうですね?」
茂「ああ……。そうですけど……」
成玲奈「今度の日曜日、私と一緒にゴブモン探しをしませんか?私、レアゴブモンが出没する場所を知っているんです」
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:40:15.644 ID:y6gjIiBaD
日曜日。とある自然公園。敷地内でゴブモンGOをプレイする茂と成玲奈。
茂「おおっ!!野生のレアゴブモンが、ここにもいますよ!」
成玲奈「田尻さん、私もレアゴブモンを見つけましたよ!」
茂「この自然公園は、レアゴブモンの宝庫ですよ!!こんな場所を知っているとは、君もなかなかやりますね……」
スマホを持った茂と成玲奈は、さらに自然公園の奥へ奥へと進んでいく。
植物がうっそうと生い茂る中、2人だけになる茂と成玲奈。2人は打ち解け、いい雰囲気になる。
成玲奈「あの……。前から言おうと思っていたんですけど……」
茂「何ですか、遥さん?」
成玲奈「私、あなたのことが好きなんです!!」
茂「えっ!?」
突然、成玲奈から告白され、困惑した表情になる茂。
成玲奈「田尻さん!!私と付き合ってください!!」
茂「おおっ!!野生のレアゴブモンが、ここにもいますよ!」
成玲奈「田尻さん、私もレアゴブモンを見つけましたよ!」
茂「この自然公園は、レアゴブモンの宝庫ですよ!!こんな場所を知っているとは、君もなかなかやりますね……」
スマホを持った茂と成玲奈は、さらに自然公園の奥へ奥へと進んでいく。
植物がうっそうと生い茂る中、2人だけになる茂と成玲奈。2人は打ち解け、いい雰囲気になる。
成玲奈「あの……。前から言おうと思っていたんですけど……」
茂「何ですか、遥さん?」
成玲奈「私、あなたのことが好きなんです!!」
茂「えっ!?」
突然、成玲奈から告白され、困惑した表情になる茂。
成玲奈「田尻さん!!私と付き合ってください!!」
16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:42:19.878 ID:y6gjIiBaD
茂「……分かった」
迷った末に、成玲奈による告白を受け入れる茂。次の瞬間、茂の後ろから例の男の声がする。
喪黒「田尻茂さん……。あなた約束を破りましたね」
茂と成玲奈が後ろを振りむと、そこには喪黒が立っている。
茂「も、喪黒さん!!」
喪黒「私はあなたに言ったはずです。誰かと恋をするような真似は、当分の間、控えるべきだ……と」
「にも関わらず、田尻さんは今ここで……」
茂「だ、だって喪黒さん……。遥さんがせっかく俺に好意的に接してくれたのに……」
「彼女の善意を無にするのは、申し訳ないじゃないですか!!」
喪黒「弁解は無用です。約束を破ったのだから、あなたにはペナルティーを受けて貰います!!」
喪黒は茂と成玲奈に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
茂「ギャアアアアアアアアア!!!」 成玲奈「キャアアアアアアアアア!!!」
迷った末に、成玲奈による告白を受け入れる茂。次の瞬間、茂の後ろから例の男の声がする。
喪黒「田尻茂さん……。あなた約束を破りましたね」
茂と成玲奈が後ろを振りむと、そこには喪黒が立っている。
茂「も、喪黒さん!!」
喪黒「私はあなたに言ったはずです。誰かと恋をするような真似は、当分の間、控えるべきだ……と」
「にも関わらず、田尻さんは今ここで……」
茂「だ、だって喪黒さん……。遥さんがせっかく俺に好意的に接してくれたのに……」
「彼女の善意を無にするのは、申し訳ないじゃないですか!!」
喪黒「弁解は無用です。約束を破ったのだから、あなたにはペナルティーを受けて貰います!!」
喪黒は茂と成玲奈に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
茂「ギャアアアアアアアアア!!!」 成玲奈「キャアアアアアアアアア!!!」
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:44:16.044 ID:y6gjIiBaD
夕方。街の郊外。自販機から飲み物を取り出すため、成玲奈は一瞬しゃがみこむ。
ペットボトル飲料のふたを開け、何かの粉薬を入れる成玲奈。彼女は、細工したペットボトル飲料を茂に渡す。
成玲奈「田尻さん。喉乾いたでしょ」
茂「サンキュー」
成玲奈から貰ったペットボトル飲料を飲む茂。
茂「それにしても、今日は疲れたな……」
茂は猛烈な睡魔に襲われ、次第に意識が遠ざかっていく……。にやりと笑みを浮かべる成玲奈。
ある程度時間が経ち、意識を取り戻す茂。どうやら彼は、ガウン姿でベッドに横たわっているようだ。
茂は異変に気がついたものの、身体を思うように動かせない。
成玲奈「さっき、あなたの飲み物に薬を入れておいたからね……」
茂が横たわるベッドの側に、同じくガウンを身にまとった成玲奈が立っている。
茂「は、遥さん……。一体、どういうことなんだ……」
ペットボトル飲料のふたを開け、何かの粉薬を入れる成玲奈。彼女は、細工したペットボトル飲料を茂に渡す。
成玲奈「田尻さん。喉乾いたでしょ」
茂「サンキュー」
成玲奈から貰ったペットボトル飲料を飲む茂。
茂「それにしても、今日は疲れたな……」
茂は猛烈な睡魔に襲われ、次第に意識が遠ざかっていく……。にやりと笑みを浮かべる成玲奈。
ある程度時間が経ち、意識を取り戻す茂。どうやら彼は、ガウン姿でベッドに横たわっているようだ。
茂は異変に気がついたものの、身体を思うように動かせない。
成玲奈「さっき、あなたの飲み物に薬を入れておいたからね……」
茂が横たわるベッドの側に、同じくガウンを身にまとった成玲奈が立っている。
茂「は、遥さん……。一体、どういうことなんだ……」
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/20(土) 19:46:23.628 ID:y6gjIiBaD
成玲奈「こういうことよ」
身に着けていたガウンを脱ぐ成玲奈。成玲奈の裸を見て、驚く茂。
茂「うわあっ!!よ、よりによって、君の股間に俺と同じものがあるなんて!!」
成玲奈「実は私、ニューハーフなのよ。でも、田尻さんのこと気にいっちゃった……」
茂「ということは、君はここで俺を……」
成玲奈「そうよ。私のレアゴブモンを、あなたの身体の中に入れてみたくなったの……」
茂「レアゴブモンって……、そういう意味か!!や、やめてくれえ!!!」
茂は必死で嫌がるものの、為すすべがない。彼の身体のあちこちを、ゆっくりとまさぐる成玲奈。そして……。
ラブホテル街の前にいる喪黒。
喪黒「外に出るという習慣は、一見当たり前のように見えますが……。実は、人間にとっては大切な役割を果たしています」
「なぜなら、外出をすることは、適度に身体を動かすことでもあり……。肉体面の健康維持のために役に立つ行為だからです」
「さらに、外出をすることは、人間に様々な刺激を与えますから……。精神面の健康維持にもいい効果がもたらされます」
「だから、外出を恐れる必要など全くありませんし……。むしろ、人間の健康のために外出は不可欠な行為と言えましょう」
「それに、外に出れば、どこかで未知なるものが見つかるかもしれませんよ。そう、レアゴブモンを発見した田尻茂さんのように……」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
身に着けていたガウンを脱ぐ成玲奈。成玲奈の裸を見て、驚く茂。
茂「うわあっ!!よ、よりによって、君の股間に俺と同じものがあるなんて!!」
成玲奈「実は私、ニューハーフなのよ。でも、田尻さんのこと気にいっちゃった……」
茂「ということは、君はここで俺を……」
成玲奈「そうよ。私のレアゴブモンを、あなたの身体の中に入れてみたくなったの……」
茂「レアゴブモンって……、そういう意味か!!や、やめてくれえ!!!」
茂は必死で嫌がるものの、為すすべがない。彼の身体のあちこちを、ゆっくりとまさぐる成玲奈。そして……。
ラブホテル街の前にいる喪黒。
喪黒「外に出るという習慣は、一見当たり前のように見えますが……。実は、人間にとっては大切な役割を果たしています」
「なぜなら、外出をすることは、適度に身体を動かすことでもあり……。肉体面の健康維持のために役に立つ行為だからです」
「さらに、外出をすることは、人間に様々な刺激を与えますから……。精神面の健康維持にもいい効果がもたらされます」
「だから、外出を恐れる必要など全くありませんし……。むしろ、人間の健康のために外出は不可欠な行為と言えましょう」
「それに、外に出れば、どこかで未知なるものが見つかるかもしれませんよ。そう、レアゴブモンを発見した田尻茂さんのように……」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
引用元: 喪黒福造「ゴブモンGOをやれば、あなたのニート生活も解消されますよ」 ニート「ゴブモンGOでニート脱却!?」
喪黒福造「警察や暴力団の追跡から逃亡を果たし、別人になってみませんか?」 詐欺師「なるほど、別人になるんですか」
2018-10-14
1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:38:21.824 ID:IxXTn36nD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
豊島和成(49) 詐欺師
【逃亡者】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
豊島和成(49) 詐欺師
【逃亡者】
ホーッホッホッホ……。」
2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:40:31.416 ID:IxXTn36nD
あるホテル。宴会場で大勢の人間たちによる集会が行われている。
マイクを持った一人の参加者が、壇上に立って何かを話している。
参加者「以前の私は、うだつの上がらないサラリーマン生活をしていました」
「しかし、HLレボリューションに出会ったことにより、私は勝ち組になることができたのです!!」
「HLレボリューションのHLは、『ハッピーライフ』の頭文字ですが……」
「今の私は文字通り、幸せな生活を送っています!!」
この参加者に対し、拍手を行う別の参加者たち。さらに、他の人間が成功体験を話し、参加者たちが拍手を行い……。
壇上には、遂にあの男が姿を現す。
テロップ「豊島和成(47) HLレボリューション会長」
司会者「本日は、HLレボリューションの創業者である豊島和成会長にお越しいただきました!!」
歓声が上がり、拍手が起きる会場。会場は独特な高揚感に包まる。マイクを持ち、講演を行う豊島。
豊島「HLレボリューションは、一人ひとりがビジネスオーナーになれる画期的なシステムです!!」
「私は、この画期的なシステムを至るところに広め……。ネットワークビジネス革命を必ず成し遂げます!!」
豊島に拍手をする参加者たち。
マイクを持った一人の参加者が、壇上に立って何かを話している。
参加者「以前の私は、うだつの上がらないサラリーマン生活をしていました」
「しかし、HLレボリューションに出会ったことにより、私は勝ち組になることができたのです!!」
「HLレボリューションのHLは、『ハッピーライフ』の頭文字ですが……」
「今の私は文字通り、幸せな生活を送っています!!」
この参加者に対し、拍手を行う別の参加者たち。さらに、他の人間が成功体験を話し、参加者たちが拍手を行い……。
壇上には、遂にあの男が姿を現す。
テロップ「豊島和成(47) HLレボリューション会長」
司会者「本日は、HLレボリューションの創業者である豊島和成会長にお越しいただきました!!」
歓声が上がり、拍手が起きる会場。会場は独特な高揚感に包まる。マイクを持ち、講演を行う豊島。
豊島「HLレボリューションは、一人ひとりがビジネスオーナーになれる画期的なシステムです!!」
「私は、この画期的なシステムを至るところに広め……。ネットワークビジネス革命を必ず成し遂げます!!」
豊島に拍手をする参加者たち。
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:42:24.615 ID:IxXTn36nD
テロップ「2年後――」
テレビのニュースで、HLレボリューションの詐欺事件が報道される。
アナウンサー「HLレボリューションは、参加者たちに健康食品を販売していましたが……」
「消費者庁から一部業務停止命令を受け、事実上の倒産状態にありました」
「豊島会長はグループの破綻を隠し、会員たちから出資金を騙し取った疑いが持たれています」
全国紙「警視庁、HLレボリューションを強制捜査 出資法違反容疑」
「出資法違反 HLレボリューション幹部から聴取へ 警視庁」
警察により、証拠の入った段ボール箱がHLレボリューション本社から次々と運び出される。
さらに、逮捕されるHLレボリューション幹部たち。
とある暴力団本部。和室の中で、組の最高幹部たちが話し合いをしている。
最高幹部A「豊島和成のケツ持ちはうちの組だった。そもそも、あいつは俺たちの傀儡だったのだからな」
最高幹部B「豊島は、俺たちに都合の悪いことをいろいろ知りすぎている。今のあいつは、もはや邪魔者だ」
最高幹部C「あいつにはこの世から消えて貰うしかないな。口封じのために――」
テレビのニュースで、HLレボリューションの詐欺事件が報道される。
アナウンサー「HLレボリューションは、参加者たちに健康食品を販売していましたが……」
「消費者庁から一部業務停止命令を受け、事実上の倒産状態にありました」
「豊島会長はグループの破綻を隠し、会員たちから出資金を騙し取った疑いが持たれています」
全国紙「警視庁、HLレボリューションを強制捜査 出資法違反容疑」
「出資法違反 HLレボリューション幹部から聴取へ 警視庁」
警察により、証拠の入った段ボール箱がHLレボリューション本社から次々と運び出される。
さらに、逮捕されるHLレボリューション幹部たち。
とある暴力団本部。和室の中で、組の最高幹部たちが話し合いをしている。
最高幹部A「豊島和成のケツ持ちはうちの組だった。そもそも、あいつは俺たちの傀儡だったのだからな」
最高幹部B「豊島は、俺たちに都合の悪いことをいろいろ知りすぎている。今のあいつは、もはや邪魔者だ」
最高幹部C「あいつにはこの世から消えて貰うしかないな。口封じのために――」
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:44:19.282 ID:IxXTn36nD
ある都市のビジネスホテル。客室のベッドに座り、頭を抱え込んでいる豊島。
テロップ「豊島和成(49) 元HLレボリューション会長」
豊島は着のみ着のままの姿であり、憔悴した顔をしている。
彼がいる客室のドアがゆっくりと開く。
豊島(鍵をかけたはずのドアが開いた……!……ということは、まさか!)
客室の中に、例の男――喪黒福造が入る。喪黒の顔を見る豊島。
豊島「お、お前は現地の暴力団の人間か!!どうせ、口封じのために私を殺しに来たんだろう!!」
喪黒「私は暴力団の人間ではありません。こういう者ですよ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
豊島「……ココロのスキマ、お埋めします!?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
テロップ「豊島和成(49) 元HLレボリューション会長」
豊島は着のみ着のままの姿であり、憔悴した顔をしている。
彼がいる客室のドアがゆっくりと開く。
豊島(鍵をかけたはずのドアが開いた……!……ということは、まさか!)
客室の中に、例の男――喪黒福造が入る。喪黒の顔を見る豊島。
豊島「お、お前は現地の暴力団の人間か!!どうせ、口封じのために私を殺しに来たんだろう!!」
喪黒「私は暴力団の人間ではありません。こういう者ですよ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
豊島「……ココロのスキマ、お埋めします!?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:46:20.602 ID:IxXTn36nD
豊島「胡散臭い奴だな。つまり、お前も私の同業者ってことか……」
喪黒「いえいえ。私のやっていることはボランティアみたいなものですから……」
「心に何かしらのスキマを抱え、人生が行き詰まった人たちを救うための仕事ですよ」
「ほら……、豊島和成さんも心にスキマがおありのはずでしょう?」
豊島「ああ。見ての通り、今の私は……」
喪黒「よろしかったら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
喪黒に心を開き、話をする豊島。
豊島「現在の私は、八方ふさがりの状態なんですよ。警視庁からは逮捕状が出され……」
「おまけに、全国各地の闇社会人脈からは命を狙われているんです」
喪黒「そうですか……。それは大変ですなぁ……」
豊島「私は警察に逮捕されたくないし、闇社会の連中に命を奪われるのもごめんですよ……!!」
「何で、私がこんな目にあわなければいけないんですか!!」
喪黒「だって、豊島さん……。あなたのやったことは紛れもなく犯罪ですから……」
「自分のやったことが自分に返ってきたまでのことでしょう」
喪黒「いえいえ。私のやっていることはボランティアみたいなものですから……」
「心に何かしらのスキマを抱え、人生が行き詰まった人たちを救うための仕事ですよ」
「ほら……、豊島和成さんも心にスキマがおありのはずでしょう?」
豊島「ああ。見ての通り、今の私は……」
喪黒「よろしかったら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
喪黒に心を開き、話をする豊島。
豊島「現在の私は、八方ふさがりの状態なんですよ。警視庁からは逮捕状が出され……」
「おまけに、全国各地の闇社会人脈からは命を狙われているんです」
喪黒「そうですか……。それは大変ですなぁ……」
豊島「私は警察に逮捕されたくないし、闇社会の連中に命を奪われるのもごめんですよ……!!」
「何で、私がこんな目にあわなければいけないんですか!!」
喪黒「だって、豊島さん……。あなたのやったことは紛れもなく犯罪ですから……」
「自分のやったことが自分に返ってきたまでのことでしょう」
6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:48:46.008 ID:IxXTn36nD
豊島「あなたに言われたくありませんよ。どうせ、喪黒さんも私の同業者か何かでしょうから……」
喪黒「私は詐欺師ではありませんよ」
豊島「ふん。詐欺師の人間ってのは皆、『私は詐欺師ではない』と自己紹介するんですよ」
「何よりも、かく言う私もその典型例だったのだから……」
喪黒「ねぇ、豊島さん。あなたは、自分がやってきたことを反省していますか?」
豊島「そんなわけありませんよ。騙された人間が悪いんです。私の言葉を信じたバカどもに落ち度があったんですよ」
「強い人間が弱い人間を喰らい、賢い人間が愚かな人間を騙す。それが世の中なんですから……」
喪黒「でも……。あなたは警察に逮捕状を出された上、頼みとしていた暴力団に切り捨てられたでしょう」
豊島「まあ……。この私も、より強い人間にやられたってことです。結局、世の中が弱肉強食であることを証明したまでですから……」
喪黒「ですがねぇ……。あなた、こんな生き方をしていたら畳の上で死ねませんよ」
豊島「現に、そうなりかかっているから仕方ありませんよ」
喪黒「豊島さん。もう一度人生をやり直したいでしょう?犯罪歴とは無縁の、普通の人間として……」
豊島「できれば、そうしたいですね。だが、それは不可能というものですから……」
喪黒「私は詐欺師ではありませんよ」
豊島「ふん。詐欺師の人間ってのは皆、『私は詐欺師ではない』と自己紹介するんですよ」
「何よりも、かく言う私もその典型例だったのだから……」
喪黒「ねぇ、豊島さん。あなたは、自分がやってきたことを反省していますか?」
豊島「そんなわけありませんよ。騙された人間が悪いんです。私の言葉を信じたバカどもに落ち度があったんですよ」
「強い人間が弱い人間を喰らい、賢い人間が愚かな人間を騙す。それが世の中なんですから……」
喪黒「でも……。あなたは警察に逮捕状を出された上、頼みとしていた暴力団に切り捨てられたでしょう」
豊島「まあ……。この私も、より強い人間にやられたってことです。結局、世の中が弱肉強食であることを証明したまでですから……」
喪黒「ですがねぇ……。あなた、こんな生き方をしていたら畳の上で死ねませんよ」
豊島「現に、そうなりかかっているから仕方ありませんよ」
喪黒「豊島さん。もう一度人生をやり直したいでしょう?犯罪歴とは無縁の、普通の人間として……」
豊島「できれば、そうしたいですね。だが、それは不可能というものですから……」
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:50:52.424 ID:IxXTn36nD
喪黒「私ならできますよ」
豊島「えっ!?」
喪黒「警察や暴力団の追跡から逃亡を果たし、別人になってみませんか?」
豊島「なるほど、別人になるんですか。さしずめ、身元不明のまま死んだ人間の戸籍を買い取り……」
「その上……。闇医者によって整形手術をして、別人になり済ますってことでしょうな」
喪黒「まあ、それに近いかもしれませんがねぇ……。私のやり方はもっと簡単ですよ」
豊島「一体、どういうことです?」
喪黒「豊島さんが別人になる手続きは、何から何まで無料で済むんですよ」
豊島「じゃあ……」
喪黒「私は、死亡したホームレスの戸籍を持っていますけどねぇ……」
「豊島さんに、それをただでプレゼントしますよ。今すぐに……」
豊島「そうなると……。私の整形手術の費用も、喪黒さんが負担してくれるってことですか」
喪黒「もっと手っ取り早い方法があります。さっさとこのホテルを出ましょう」
豊島「えっ!?」
喪黒「警察や暴力団の追跡から逃亡を果たし、別人になってみませんか?」
豊島「なるほど、別人になるんですか。さしずめ、身元不明のまま死んだ人間の戸籍を買い取り……」
「その上……。闇医者によって整形手術をして、別人になり済ますってことでしょうな」
喪黒「まあ、それに近いかもしれませんがねぇ……。私のやり方はもっと簡単ですよ」
豊島「一体、どういうことです?」
喪黒「豊島さんが別人になる手続きは、何から何まで無料で済むんですよ」
豊島「じゃあ……」
喪黒「私は、死亡したホームレスの戸籍を持っていますけどねぇ……」
「豊島さんに、それをただでプレゼントしますよ。今すぐに……」
豊島「そうなると……。私の整形手術の費用も、喪黒さんが負担してくれるってことですか」
喪黒「もっと手っ取り早い方法があります。さっさとこのホテルを出ましょう」
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:53:18.612 ID:IxXTn36nD
喪黒と豊島は街を歩き、人気のいない路地裏に辿り着く。鞄から何かを取り出す喪黒。
彼が持っているのは、目の穴が開いた白色の仮面だ。仮面には、鼻と唇の部分が浮き出ている。
喪黒「さあ、豊島さん。この仮面を顔に付けてください」
豊島「こ、これをですか?」
喪黒「そうです」
仮面を顔に装着する豊島。喪黒は豊島に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
豊島「ギャアアアアアアアアア!!!」
豊島「豊島さん。仮面を外してください」
仮面を外す豊島。喪黒から渡された手鏡を、豊島が覗き込むと……。
豊島「あーーーっ!!」
手鏡に映っている顔は、豊島とは別人のものだ。そう、彼がさっき付けていた仮面の顔が、今の豊島の顔になっている。
彼が持っているのは、目の穴が開いた白色の仮面だ。仮面には、鼻と唇の部分が浮き出ている。
喪黒「さあ、豊島さん。この仮面を顔に付けてください」
豊島「こ、これをですか?」
喪黒「そうです」
仮面を顔に装着する豊島。喪黒は豊島に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
豊島「ギャアアアアアアアアア!!!」
豊島「豊島さん。仮面を外してください」
仮面を外す豊島。喪黒から渡された手鏡を、豊島が覗き込むと……。
豊島「あーーーっ!!」
手鏡に映っている顔は、豊島とは別人のものだ。そう、彼がさっき付けていた仮面の顔が、今の豊島の顔になっている。
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:55:21.125 ID:IxXTn36nD
喪黒「さあ、あなたは豊島和成から内村俊男になりましたよ」
豊島「内村俊男……。これが今の私ですか」
「さしずめ……。本物のそいつは、ホームレスとしてとっくの昔に死んでいるんでしょうね」
喪黒「その通りです」
線路を走る新幹線。いつの間にか、喪黒と豊島は新幹線に乗って駅弁を食べている。
喪黒「これからあなたは、内村俊男としての新天地での生活が待っていますよ」
博多駅に到着する新幹線。新幹線を降り、駅の構内を歩く喪黒と豊島。
喪黒「しばらく、博多見物でもしましょうか」
豊島「ええ」
大濠公園。池を眺める喪黒と豊島。
豊島「私は福岡市で暮らすんですか。まあ、私は首都圏で派手に悪さをやりすぎましたからねぇ……」
喪黒「そうです。福岡は首都圏から遠いので、いい逃亡先になるでしょうなぁ」
豊島「内村俊男……。これが今の私ですか」
「さしずめ……。本物のそいつは、ホームレスとしてとっくの昔に死んでいるんでしょうね」
喪黒「その通りです」
線路を走る新幹線。いつの間にか、喪黒と豊島は新幹線に乗って駅弁を食べている。
喪黒「これからあなたは、内村俊男としての新天地での生活が待っていますよ」
博多駅に到着する新幹線。新幹線を降り、駅の構内を歩く喪黒と豊島。
喪黒「しばらく、博多見物でもしましょうか」
豊島「ええ」
大濠公園。池を眺める喪黒と豊島。
豊島「私は福岡市で暮らすんですか。まあ、私は首都圏で派手に悪さをやりすぎましたからねぇ……」
喪黒「そうです。福岡は首都圏から遠いので、いい逃亡先になるでしょうなぁ」
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:57:17.688 ID:IxXTn36nD
豊島「私のために、わざわざここまでしてくださって……。本当に、何とお礼を言ったらいいか……」
喪黒「いえいえ……。私が豊島さんの逃亡の手助けをしたのは、あなたの人生のやり直しのため……」
「あなたを人間として更生させるためであって、犯罪者として生き延びさせるためではありませんよ」
豊島「そうなんですか……」
喪黒「だから、あなたには約束していただきたいことがあります」
豊島「約束!?」
喪黒「そうです。これからのあなたは、普通の人間として真面目に人生を送ってください」
「詐欺や犯罪に再び関わるような真似は、絶対にしてはいけませんよ。いいですね!?」
豊島「わ、分かりました。喪黒さん……」
とある小さなビル。作業服を着た中年女性と面接する豊島。内村俊男こと豊島の履歴書を見つめる中年女性。
中年女性「内村俊男さん……。ですね?」
豊島「はい」
喪黒「いえいえ……。私が豊島さんの逃亡の手助けをしたのは、あなたの人生のやり直しのため……」
「あなたを人間として更生させるためであって、犯罪者として生き延びさせるためではありませんよ」
豊島「そうなんですか……」
喪黒「だから、あなたには約束していただきたいことがあります」
豊島「約束!?」
喪黒「そうです。これからのあなたは、普通の人間として真面目に人生を送ってください」
「詐欺や犯罪に再び関わるような真似は、絶対にしてはいけませんよ。いいですね!?」
豊島「わ、分かりました。喪黒さん……」
とある小さなビル。作業服を着た中年女性と面接する豊島。内村俊男こと豊島の履歴書を見つめる中年女性。
中年女性「内村俊男さん……。ですね?」
豊島「はい」
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 18:59:25.480 ID:IxXTn36nD
翌日。ワンボックスカーに、作業服姿の清掃アルバイトたちが乗っている。
清掃アルバイトの中には、内村俊男になり済ました豊島の姿がある。
とある企業ビル。ブラシを持って階段の清掃を行う内村こと豊島。
豊島(それにしても、久しぶりの肉体労働は身にこたえる……)
休憩中にタバコを吸う豊島。内村こと豊島に声をかけるバイト仲間。
清掃アルバイト「へぇ。内村さん、東京に住んでいたんですか」
豊島「そうですよ。ずっと、日雇いで食いつないできたんですけどね……」
「東京は何かと物価が高いから生活がきつくて……」
清掃アルバイト「それで、福岡に引っ越したというわけですね」
豊島「まあ、そういうことです」
仕事を終え、ワンボックスカーで帰りに向かう一同。後部座席にいる豊島。
豊島(俺が清掃の仕事を選んだのは、心の汚れを洗うためだったのかもしれんな……)
清掃アルバイトの中には、内村俊男になり済ました豊島の姿がある。
とある企業ビル。ブラシを持って階段の清掃を行う内村こと豊島。
豊島(それにしても、久しぶりの肉体労働は身にこたえる……)
休憩中にタバコを吸う豊島。内村こと豊島に声をかけるバイト仲間。
清掃アルバイト「へぇ。内村さん、東京に住んでいたんですか」
豊島「そうですよ。ずっと、日雇いで食いつないできたんですけどね……」
「東京は何かと物価が高いから生活がきつくて……」
清掃アルバイト「それで、福岡に引っ越したというわけですね」
豊島「まあ、そういうことです」
仕事を終え、ワンボックスカーで帰りに向かう一同。後部座席にいる豊島。
豊島(俺が清掃の仕事を選んだのは、心の汚れを洗うためだったのかもしれんな……)
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 19:01:29.411 ID:IxXTn36nD
自宅アパート。コタツに向かい、ノートパソコンを使って求人情報を探す豊島。
豊島(清掃の仕事だけでは、暮らしがきつい……。何か、バイトの掛け持ちでもしなくてはな……)
博多駅近くのビル。とある階の室内では、人材派遣会社の登録会が行われている。登録会に参加する豊島。
派遣の登録会で、参加者一同に対し女性スタッフが説明をしている。
豊島(ここにいる女性スタッフは、OLというよりは水商売風だ……。つまり、この会社は……)
翌日。豊島ら派遣社員を乗せたバスが仕事現場へ向かっている。
派遣社員たちに仕事の説明を行うバイトリーダーの男性。バイトリーダーの男は、チンピラのような風貌をしている。
豊島(やはり、この派遣会社は暴力団のフロント企業の可能性が高いな)
(さしずめ、このバイトリーダーの男も……。どうせ末端組員のヤクザか、準構成員の半グレなんだろうな)
とある工場。防塵服を着た豊島が、何かの製品の組み立てを行っている。
豊島(この間まで、高級車を乗り回していた俺が……。こんな身分に落ちぶれるとは……)
(それでも警察に逮捕されたり、ヤクザに殺されたりするよりはマシってことか……)
豊島(清掃の仕事だけでは、暮らしがきつい……。何か、バイトの掛け持ちでもしなくてはな……)
博多駅近くのビル。とある階の室内では、人材派遣会社の登録会が行われている。登録会に参加する豊島。
派遣の登録会で、参加者一同に対し女性スタッフが説明をしている。
豊島(ここにいる女性スタッフは、OLというよりは水商売風だ……。つまり、この会社は……)
翌日。豊島ら派遣社員を乗せたバスが仕事現場へ向かっている。
派遣社員たちに仕事の説明を行うバイトリーダーの男性。バイトリーダーの男は、チンピラのような風貌をしている。
豊島(やはり、この派遣会社は暴力団のフロント企業の可能性が高いな)
(さしずめ、このバイトリーダーの男も……。どうせ末端組員のヤクザか、準構成員の半グレなんだろうな)
とある工場。防塵服を着た豊島が、何かの製品の組み立てを行っている。
豊島(この間まで、高級車を乗り回していた俺が……。こんな身分に落ちぶれるとは……)
(それでも警察に逮捕されたり、ヤクザに殺されたりするよりはマシってことか……)
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 19:03:32.278 ID:IxXTn36nD
テロップ「1年後――」
ある日の昼。清掃会社社員として、オフィス内の絨毯の清掃を行う内村こと豊島。彼は、何かの機械を持っている。
豊島(今の俺は、仕事も身分も何もかも不安定だ……)
(年を取って身体が衰えたら、肉体労働さえもできなくなるだろうな……)
ある日の夜。とある工場。防塵服姿の派遣社員たち。あのバイトリーダーが、誰かと喧嘩をしている。
バイトリーダーの男が、相手の胸ぐらを掴んで罵詈雑言を叫んでいる。
豊島(俺は、このバイトリーダーが嫌いでたまらない……。何て品性下劣な奴なんだ……)
(こいつは社会の底辺のチンピラのくせに、自分を一角の男と勘違いしてやがる……)
内村こと豊島の顔は防塵服に隠れているが、目つきからはうんざりした表情が見てとれる。
派遣会社のバス。居眠りをする派遣社員たち。後部座席に座りながら、考え事をする豊島。
豊島(口八丁で他人を騙せば、簡単に大金が手に入るのに……。真面目に働いても、金はなかなか儲からない……)
(世の中って本当に理不尽だな……。何も考えずただ真面目に働く人間は、所詮負け組ってことか……)
ある日の昼。清掃会社社員として、オフィス内の絨毯の清掃を行う内村こと豊島。彼は、何かの機械を持っている。
豊島(今の俺は、仕事も身分も何もかも不安定だ……)
(年を取って身体が衰えたら、肉体労働さえもできなくなるだろうな……)
ある日の夜。とある工場。防塵服姿の派遣社員たち。あのバイトリーダーが、誰かと喧嘩をしている。
バイトリーダーの男が、相手の胸ぐらを掴んで罵詈雑言を叫んでいる。
豊島(俺は、このバイトリーダーが嫌いでたまらない……。何て品性下劣な奴なんだ……)
(こいつは社会の底辺のチンピラのくせに、自分を一角の男と勘違いしてやがる……)
内村こと豊島の顔は防塵服に隠れているが、目つきからはうんざりした表情が見てとれる。
派遣会社のバス。居眠りをする派遣社員たち。後部座席に座りながら、考え事をする豊島。
豊島(口八丁で他人を騙せば、簡単に大金が手に入るのに……。真面目に働いても、金はなかなか儲からない……)
(世の中って本当に理不尽だな……。何も考えずただ真面目に働く人間は、所詮負け組ってことか……)
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 19:05:29.478 ID:IxXTn36nD
夜の街を歩く豊島。内村の顔としての現在の彼は、豊島の顔だったころに比べるとしょぼくれた表情だ。
電柱の陰に隠れ、内村こと豊島を遠くから眺める喪黒。喪黒は金属のトランクを持っている。
歩道に金属のトランクを置き、そのまま立ち去る喪黒。当然、豊島は喪黒の存在に気づいていない。
豊島「お、何だこれは……」
金属のトランクが目に入る豊島。豊島がトランクの中を開けると……。
豊島「おおっ!!トランクの中に札束が詰まっているぞ!!」
慌ててトランクを閉じ、周囲を見渡す豊島。豊島はトランクを持ち、そのまま家路を急ぐ。
自宅アパート。トランクを開け、札束を数える豊島。
豊島「間違いない……。俺の目の前に1億円がある……。うーーん、1億か……」
思いがけない形で突然手に入れた大金を目にし、考え込む豊島。
豊島(この1億円を元手にすれば、何かしらの大きなことをやれそうだ……)
電柱の陰に隠れ、内村こと豊島を遠くから眺める喪黒。喪黒は金属のトランクを持っている。
歩道に金属のトランクを置き、そのまま立ち去る喪黒。当然、豊島は喪黒の存在に気づいていない。
豊島「お、何だこれは……」
金属のトランクが目に入る豊島。豊島がトランクの中を開けると……。
豊島「おおっ!!トランクの中に札束が詰まっているぞ!!」
慌ててトランクを閉じ、周囲を見渡す豊島。豊島はトランクを持ち、そのまま家路を急ぐ。
自宅アパート。トランクを開け、札束を数える豊島。
豊島「間違いない……。俺の目の前に1億円がある……。うーーん、1億か……」
思いがけない形で突然手に入れた大金を目にし、考え込む豊島。
豊島(この1億円を元手にすれば、何かしらの大きなことをやれそうだ……)
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 19:08:33.068 ID:IxXTn36nD
とある工場、喫煙室。内村こと豊島が、バイトリーダーのあのチンピラ――木内と会話をしている。2人は休憩中のようだ。
木内「内村。なんや、いきなり……」
テロップ「木内崇哉(42) 派遣会社バイトリーダー」
豊島「木内さん、いい話があるんですよ。私と組みませんか」
とある室内。参加者たちに講習を行う内村こと豊島。彼は、高級そうなスーツと腕時計を身にまとっている。
豊島「私は今まで職を転々とし……。少し前までは、清掃アルバイトと派遣社員の仕事を掛け持ちしていました」
「しかし、例のメソッドを開発したことにより……。私は成功者となることができたのです!!」
「あなたたちは、必ず大金持ちになれます!!未来を切り開くための鍵は、ここにあるのです!!」
内村こと豊島に、参加者たちが一斉に拍手をする。
高級ホテル。ラウンジでコーヒーを飲みながら、窓を眺める豊島と木内。豊島と同じく、木内もスーツ姿だ。
木内「内村さん……。いえ、内村先生。高額塾を主宰し、情報商材を販売するとはなかなかやりますね……」
豊島「おかげで私たちは、今や勝ち組だ。もっとも、商材を購入した末端の会員は破産への道まっしぐらだがな……」
木内「内村。なんや、いきなり……」
テロップ「木内崇哉(42) 派遣会社バイトリーダー」
豊島「木内さん、いい話があるんですよ。私と組みませんか」
とある室内。参加者たちに講習を行う内村こと豊島。彼は、高級そうなスーツと腕時計を身にまとっている。
豊島「私は今まで職を転々とし……。少し前までは、清掃アルバイトと派遣社員の仕事を掛け持ちしていました」
「しかし、例のメソッドを開発したことにより……。私は成功者となることができたのです!!」
「あなたたちは、必ず大金持ちになれます!!未来を切り開くための鍵は、ここにあるのです!!」
内村こと豊島に、参加者たちが一斉に拍手をする。
高級ホテル。ラウンジでコーヒーを飲みながら、窓を眺める豊島と木内。豊島と同じく、木内もスーツ姿だ。
木内「内村さん……。いえ、内村先生。高額塾を主宰し、情報商材を販売するとはなかなかやりますね……」
豊島「おかげで私たちは、今や勝ち組だ。もっとも、商材を購入した末端の会員は破産への道まっしぐらだがな……」
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 19:10:56.065 ID:IxXTn36nD
ラウンジを離れ、トイレに入る豊島。彼が用を足し、手を洗って外に出ようとしたその時――。 トイレの中に喪黒が入る。
喪黒「内村俊男さんこと、豊島和成さん……。あなた約束を破りましたね」
豊島「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私はあなたに言ったはずです。詐欺や犯罪に再び関わってはいけない……と」
「にも関わらず……。豊島さんは私との約束を無視し、情報商材詐欺に手を染めたようですねぇ」
豊島「私のやったことの、何がいけないんですか!!騙される方が悪いんですよ!!世の中は所詮、弱肉強食です!!」
喪黒「ほう……、それがあなたの答えですか。豊島さん、あなたの逃亡生活は今日で終わりです」
豊島「なっ……!?」
喪黒「約束を破った以上……、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は豊島に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
豊島「ギャアアアアアアアアア!!!」
喪黒のドーンを受け、倒れる豊島。内村俊男としての彼の顔は……、元の豊島和成の顔へと徐々に戻っていく。
喪黒「内村俊男さんこと、豊島和成さん……。あなた約束を破りましたね」
豊島「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私はあなたに言ったはずです。詐欺や犯罪に再び関わってはいけない……と」
「にも関わらず……。豊島さんは私との約束を無視し、情報商材詐欺に手を染めたようですねぇ」
豊島「私のやったことの、何がいけないんですか!!騙される方が悪いんですよ!!世の中は所詮、弱肉強食です!!」
喪黒「ほう……、それがあなたの答えですか。豊島さん、あなたの逃亡生活は今日で終わりです」
豊島「なっ……!?」
喪黒「約束を破った以上……、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は豊島に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
豊島「ギャアアアアアアアアア!!!」
喪黒のドーンを受け、倒れる豊島。内村俊男としての彼の顔は……、元の豊島和成の顔へと徐々に戻っていく。
19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/13(土) 19:14:27.867 ID:IxXTn36nD
木内がいるラウンジに戻る豊島。彼は、自分の顔が元に戻ったことに気づいていない。
豊島の顔を見て、表情が変わる木内。木内は急いでラウンジを離れ、スマホで誰かと通話をする。
木内「……例の男が見つかりました!……はい!あいつです!!」
ラウンジで途方に暮れる豊島。しばらくした後、彼の元にカタギとは思えぬ男たち――福岡在住のヤクザたちが現れる。
ヤクザたち「豊島和成さん。一緒に来て貰おうか」
豊島「豊島和成だと?私は内村俊男だ!」
ヤクザたち「とぼけるな!!お前は豊島和成ちゃろうが!!」
ヤクザたちに両脇を掴まれる豊島。豊島はヤクザたちにより、ラウンジから連れ出されていく。
豊島がいなくなったラウンジの前にいる喪黒。
喪黒「私たちが暮らしている社会では……。『逃げる』という言葉は、何かと否定的な意味合いで使われがちです」
「しかしながら……。事と次第によっては、『逃げる』という行為が人生の活路につながる場合もあります」
「なぜなら、『逃げる』という行為もまた……。現実に対処するために本人が下した決断の一つなのですから……」
「自分自身と向き合い、自分で責任を持った上での判断ならば……。『逃げる』という決断もたまには必要でしょう」
「もっとも……、自分のやったことや、現実そのものから逃げることは不可能です。豊島さん、あなたはもう逃げられませんよ」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
豊島の顔を見て、表情が変わる木内。木内は急いでラウンジを離れ、スマホで誰かと通話をする。
木内「……例の男が見つかりました!……はい!あいつです!!」
ラウンジで途方に暮れる豊島。しばらくした後、彼の元にカタギとは思えぬ男たち――福岡在住のヤクザたちが現れる。
ヤクザたち「豊島和成さん。一緒に来て貰おうか」
豊島「豊島和成だと?私は内村俊男だ!」
ヤクザたち「とぼけるな!!お前は豊島和成ちゃろうが!!」
ヤクザたちに両脇を掴まれる豊島。豊島はヤクザたちにより、ラウンジから連れ出されていく。
豊島がいなくなったラウンジの前にいる喪黒。
喪黒「私たちが暮らしている社会では……。『逃げる』という言葉は、何かと否定的な意味合いで使われがちです」
「しかしながら……。事と次第によっては、『逃げる』という行為が人生の活路につながる場合もあります」
「なぜなら、『逃げる』という行為もまた……。現実に対処するために本人が下した決断の一つなのですから……」
「自分自身と向き合い、自分で責任を持った上での判断ならば……。『逃げる』という決断もたまには必要でしょう」
「もっとも……、自分のやったことや、現実そのものから逃げることは不可能です。豊島さん、あなたはもう逃げられませんよ」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
引用元: 喪黒福造「警察や暴力団の追跡から逃亡を果たし、別人になってみませんか?」 詐欺師「なるほど、別人になるんですか」
喪黒福造「この青汁はダイエットにも効果があるんですよ」 ベテラン投手「そ、そうなんですか!?」
2018-10-12
1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:17:27.808 ID:FjKiBatpD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
松枝泰平(37) プロ野球選手
【天然の青汁】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
松枝泰平(37) プロ野球選手
【天然の青汁】
ホーッホッホッホ……。」
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:19:52.368 ID:FjKiBatpD
テロップ「2016年10月――」
コボスタ宮城。球場ではパ・リーグのプロ野球の試合が行われている。
テロップ「パ・リーグ 福岡ソフトビジョンファルコンズ ― 仙台楽年フェニックス」
実況「ノーアウト満塁です!さあ松枝、このピンチをどう切り抜けるか……」
ソフトビジョンの投手・松枝が、楽年の外国人バッターを見つめる。彼の身体は、力士のように丸々太っている。
テロップ「松枝泰平 福岡ソフトビジョンファルコンズ投手・元メジャーリーガー」
渾身の一球を投げる松枝。しかし、彼が投げたボールは明らかにワイルドピッチである。
ホームベースへ帰還する三塁の選手。歓声が上がる楽年側の観客席。ため息が起きるソフトビジョン側の観客席。
実況「松枝の暴投で、またも楽年に点が入りました!」
焦りの表情を浮かべる松枝。この後も、彼は楽年の打者たちに次々と球を打たれていく。
ソフトビジョン側の観客席からブーイングが沸き起こる。うつむいた表情のまま、マウンドを降りる松枝。
実況「松枝、まさかの大乱調で5点を失いました!!平成の怪物、無念の降板です!!」
コボスタ宮城。球場ではパ・リーグのプロ野球の試合が行われている。
テロップ「パ・リーグ 福岡ソフトビジョンファルコンズ ― 仙台楽年フェニックス」
実況「ノーアウト満塁です!さあ松枝、このピンチをどう切り抜けるか……」
ソフトビジョンの投手・松枝が、楽年の外国人バッターを見つめる。彼の身体は、力士のように丸々太っている。
テロップ「松枝泰平 福岡ソフトビジョンファルコンズ投手・元メジャーリーガー」
渾身の一球を投げる松枝。しかし、彼が投げたボールは明らかにワイルドピッチである。
ホームベースへ帰還する三塁の選手。歓声が上がる楽年側の観客席。ため息が起きるソフトビジョン側の観客席。
実況「松枝の暴投で、またも楽年に点が入りました!」
焦りの表情を浮かべる松枝。この後も、彼は楽年の打者たちに次々と球を打たれていく。
ソフトビジョン側の観客席からブーイングが沸き起こる。うつむいた表情のまま、マウンドを降りる松枝。
実況「松枝、まさかの大乱調で5点を失いました!!平成の怪物、無念の降板です!!」
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:22:43.542 ID:FjKiBatpD
翌日のスポーツ紙「松枝炎上 5失点」「松枝 大乱調で降板」「平成の怪物 見る影なし」
あるテレビ番組。スポーツコーナーで、野球評論家の老人が険しい表情で小言を言う。
野球評論家「すごいピッチャーだったけど、面影がないね!それとね、文句言うんだったら太り過ぎ!」
「ピッチャーはあんなに太っちゃダメ!」
ネット掲示板「松枝オワタ」「平成の怪物から平成の置物へ」「12億円持ち逃げ野郎」「さっさと引退したらどうだ」
テロップ「2018年1月――」
ナゴヤ球場、室内練習場。中部クロコダイルズの球団関係者たちが見守る中、松枝が入団テストを行っている。
テロップ「松枝泰平(37) プロ野球選手、2017年にソフトビジョンを戦力外となる」
振りかぶり、力を込めて球を投げる松枝。彼が投げたボールは、それなりの球威を見せる。
球団関係者たち「おおっ!!」
感心した表情をする球団監督。
テロップ「森木繁之(63) 中部クロコダイルズ監督」
あるテレビ番組。スポーツコーナーで、野球評論家の老人が険しい表情で小言を言う。
野球評論家「すごいピッチャーだったけど、面影がないね!それとね、文句言うんだったら太り過ぎ!」
「ピッチャーはあんなに太っちゃダメ!」
ネット掲示板「松枝オワタ」「平成の怪物から平成の置物へ」「12億円持ち逃げ野郎」「さっさと引退したらどうだ」
テロップ「2018年1月――」
ナゴヤ球場、室内練習場。中部クロコダイルズの球団関係者たちが見守る中、松枝が入団テストを行っている。
テロップ「松枝泰平(37) プロ野球選手、2017年にソフトビジョンを戦力外となる」
振りかぶり、力を込めて球を投げる松枝。彼が投げたボールは、それなりの球威を見せる。
球団関係者たち「おおっ!!」
感心した表情をする球団監督。
テロップ「森木繁之(63) 中部クロコダイルズ監督」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:24:41.634 ID:FjKiBatpD
さらに一球を投げる松枝。室内練習場の入り口には、大勢の報道陣が集まっている。
記者A「それにしても、今の松枝を獲得するとは中部も物好きだよな……」
記者B「ああ、全くだよ。衰えた松枝を獲得しても、戦力になりそうにもないのに……」
記者C「まあ、あいつは一応平成の怪物と呼ばれた男。客寄せパンダにはなるってことか」
ナゴヤドーム。中部のユニフォームを着た松枝が、グラウンドを走っている。
松枝「ハアッ……、ハアッ……」
(めんどくせぇ……。何で、走り込みなんかしなきゃいけないんだよ……)
松枝はどことなく息が上がっている。さらに、キャッチャーを相手に投球練習を行う松枝。
東都ドーム。ドーム内ではセ・リーグのプロ野球の試合が行われている。
テロップ「セ・リーグ 読朝ギガンツ(巨神) ― 中部クロコダイルズ」
一球を投げる松枝。しかし、彼の様子はどことなく変だ。投球を中断し、手で右足をさする松枝。
記者A「それにしても、今の松枝を獲得するとは中部も物好きだよな……」
記者B「ああ、全くだよ。衰えた松枝を獲得しても、戦力になりそうにもないのに……」
記者C「まあ、あいつは一応平成の怪物と呼ばれた男。客寄せパンダにはなるってことか」
ナゴヤドーム。中部のユニフォームを着た松枝が、グラウンドを走っている。
松枝「ハアッ……、ハアッ……」
(めんどくせぇ……。何で、走り込みなんかしなきゃいけないんだよ……)
松枝はどことなく息が上がっている。さらに、キャッチャーを相手に投球練習を行う松枝。
東都ドーム。ドーム内ではセ・リーグのプロ野球の試合が行われている。
テロップ「セ・リーグ 読朝ギガンツ(巨神) ― 中部クロコダイルズ」
一球を投げる松枝。しかし、彼の様子はどことなく変だ。投球を中断し、手で右足をさする松枝。
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:26:35.743 ID:FjKiBatpD
中部のコーチが、ベンチで誰かと電話をしている。しばらくした後、マウンドを去る松枝。
実況「松枝、この回でマウンドを降りることとなりました!」
ネット掲示板「足つったのか」「知ってたwww」「松枝『痛いよー痛いよー』」「これが1500万円分の働き」
ある夜。名古屋市内の回転寿司屋。黙々と寿司を食べる松枝。松枝の席には、空の皿が山のように積まれている。
客たち「こいつ、すげえ食欲だな……」「ああ。さすがの俺もここまでは食えん……」
異様な目で松枝を見つめる客たち。客たちの中には、例の男――喪黒福造がいる。
回転寿司屋を出て、街を歩く松枝。松枝の側に喪黒が寄ってくる。
喪黒「それにしても、さっきはお店でかなりの量の寿司を食べていましたねぇ。あなた……」
松枝「俺のこと、見ていたんですか?」
喪黒「はい。確か、あなたは中部の松枝泰平投手でしょう?」
実況「松枝、この回でマウンドを降りることとなりました!」
ネット掲示板「足つったのか」「知ってたwww」「松枝『痛いよー痛いよー』」「これが1500万円分の働き」
ある夜。名古屋市内の回転寿司屋。黙々と寿司を食べる松枝。松枝の席には、空の皿が山のように積まれている。
客たち「こいつ、すげえ食欲だな……」「ああ。さすがの俺もここまでは食えん……」
異様な目で松枝を見つめる客たち。客たちの中には、例の男――喪黒福造がいる。
回転寿司屋を出て、街を歩く松枝。松枝の側に喪黒が寄ってくる。
喪黒「それにしても、さっきはお店でかなりの量の寿司を食べていましたねぇ。あなた……」
松枝「俺のこと、見ていたんですか?」
喪黒「はい。確か、あなたは中部の松枝泰平投手でしょう?」
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:28:50.525 ID:FjKiBatpD
松枝「そうですよ。俺があの松枝泰平ですよ」
喪黒「確か……。回転寿司屋に入る前のあなたは、焼き肉屋の中にいましたよねぇ?」
松枝「はい。どうやら、付きまとわれてるみたいですね。俺……」
喪黒「いえいえ。そんなつもりはありません。ただ、あなたの食生活がどうも気になりまして……」
松枝「人が何を食べようと、それは本人の自由でしょう?」
「だから、俺は気が向いた時に好きなものを思う存分食べているんですよ」
喪黒「ですがねぇ……。はっきり言って、今のあなたは太り過ぎですよ」
「プロ野球のピッチャーが、あそこまで太るのはさすがにまずいでしょう!?」
松枝「それは言えてるかもしれませんね……」
喪黒「よろしかったら、私が松枝さんのお力になりたいところですよ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
松枝「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
喪黒「確か……。回転寿司屋に入る前のあなたは、焼き肉屋の中にいましたよねぇ?」
松枝「はい。どうやら、付きまとわれてるみたいですね。俺……」
喪黒「いえいえ。そんなつもりはありません。ただ、あなたの食生活がどうも気になりまして……」
松枝「人が何を食べようと、それは本人の自由でしょう?」
「だから、俺は気が向いた時に好きなものを思う存分食べているんですよ」
喪黒「ですがねぇ……。はっきり言って、今のあなたは太り過ぎですよ」
「プロ野球のピッチャーが、あそこまで太るのはさすがにまずいでしょう!?」
松枝「それは言えてるかもしれませんね……」
喪黒「よろしかったら、私が松枝さんのお力になりたいところですよ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
松枝「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:31:27.135 ID:FjKiBatpD
松枝「へぇ……。セールスマンの方なんですか……」
喪黒「どちらかと言うと、ボランティアみたいなものですよ。何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
とある居酒屋。店の隅の席にいる喪黒と松枝。
喪黒「この間の試合の降板、残念でしたなぁ……」
松枝「もうね……。昔の俺は、こんな情けない姿をさらすことはなかったんですけどね……」
喪黒「そりゃあ、松枝さんは『平成の怪物』と呼ばれた大投手ですよ。何しろあなたは昔、甲子園のスターでした」
「それだけでなく……。松枝さんはプロ野球やメジャーで活躍し、おまけにWBCではMVPを獲得していますから……」
松枝「でも……。今の俺は見る影もなく落ちぶれ、すっかり球界の笑いものですよ……」
喪黒「とはいえ、松枝さんはまだ潜在能力はあるはずですよ。だから、中部入団を果たせたのでしょう?」
松枝「そんなことはないです」
喪黒「いえいえ。松枝さんには潜在能力がありますが、十分に発揮しきれていないのが今の状態です」
「その原因は、極度の肥満による身体の不調にあるのではないですか!?」
喪黒「どちらかと言うと、ボランティアみたいなものですよ。何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
とある居酒屋。店の隅の席にいる喪黒と松枝。
喪黒「この間の試合の降板、残念でしたなぁ……」
松枝「もうね……。昔の俺は、こんな情けない姿をさらすことはなかったんですけどね……」
喪黒「そりゃあ、松枝さんは『平成の怪物』と呼ばれた大投手ですよ。何しろあなたは昔、甲子園のスターでした」
「それだけでなく……。松枝さんはプロ野球やメジャーで活躍し、おまけにWBCではMVPを獲得していますから……」
松枝「でも……。今の俺は見る影もなく落ちぶれ、すっかり球界の笑いものですよ……」
喪黒「とはいえ、松枝さんはまだ潜在能力はあるはずですよ。だから、中部入団を果たせたのでしょう?」
松枝「そんなことはないです」
喪黒「いえいえ。松枝さんには潜在能力がありますが、十分に発揮しきれていないのが今の状態です」
「その原因は、極度の肥満による身体の不調にあるのではないですか!?」
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:33:53.548 ID:FjKiBatpD
松枝「……ですよね。まあ何というか、俺もうすうす自覚してはいるんですけど……」
喪黒「おそらく、松枝さんは若いころから暴飲暴食を続けてきたのでしょう」
松枝「そりゃあ、もう……」
「おかげで、アメリカ滞在中に俺の体重は一気に増加し……。帰国後の現在も痩せることができていません……」
喪黒「松枝さん。痩せたいという気持ちはありますか?」
松枝「もちろん、痩せたいですよ。でも、ついドカ食いしてしまうもんだから、なかなか痩せなくて……」
喪黒「それと……。松枝さんの身体の不調は、食生活の偏りの影響もあるはずです」
松枝「まあ、それは当てはまってますよね。何しろ、俺の食生活は、どうしても野菜不足になりがちで……」
喪黒「……分かりました。そんなあなたのために、いいものがあるんですよ」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上に置かれたのは、青汁の写真が付いた小さな箱だ。箱には「天然有機青汁」の文字がある。
松枝「これは……」
喪黒「特別な青汁ですよ。ケールを中心に、栄養のある野菜が豊富に含まれているんです」
喪黒「おそらく、松枝さんは若いころから暴飲暴食を続けてきたのでしょう」
松枝「そりゃあ、もう……」
「おかげで、アメリカ滞在中に俺の体重は一気に増加し……。帰国後の現在も痩せることができていません……」
喪黒「松枝さん。痩せたいという気持ちはありますか?」
松枝「もちろん、痩せたいですよ。でも、ついドカ食いしてしまうもんだから、なかなか痩せなくて……」
喪黒「それと……。松枝さんの身体の不調は、食生活の偏りの影響もあるはずです」
松枝「まあ、それは当てはまってますよね。何しろ、俺の食生活は、どうしても野菜不足になりがちで……」
喪黒「……分かりました。そんなあなたのために、いいものがあるんですよ」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上に置かれたのは、青汁の写真が付いた小さな箱だ。箱には「天然有機青汁」の文字がある。
松枝「これは……」
喪黒「特別な青汁ですよ。ケールを中心に、栄養のある野菜が豊富に含まれているんです」
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:36:07.212 ID:FjKiBatpD
松枝「青汁……。苦くてまずいあれですか……」
喪黒「『天然有機青汁』は健康にいいんです。これを飲むことで、松枝さんの野菜不足は解消されるでしょう」
松枝「確かに……」
喪黒「それ以外にも、『天然有機青汁』には特別な作用があります。あなたにピッタリの……」
松枝「何ですか、それは?」
喪黒「実はですねぇ……。この青汁はダイエットにも効果があるんですよ」
松枝「そ、そうなんですか!?」
喪黒「ええ。『天然有機青汁』を飲み続けるだけで、松枝さんはみるみる痩せて健康な体形になれます」
松枝「マジっすか!?」
喪黒「本当ですよ。野菜不足は解消され、ダイエットにも効果があり、そのおかげでピッチャーとしても立ち直れる……」
「松枝さんにとっては、まさに一石三鳥の宝になるでしょう」
松枝「そこまで言われると……。この青汁、欲しくなってきましたよ……」
喪黒「じゃあ、あなたにこの『天然有機青汁』を無料でプレゼントしますよ」
喪黒「『天然有機青汁』は健康にいいんです。これを飲むことで、松枝さんの野菜不足は解消されるでしょう」
松枝「確かに……」
喪黒「それ以外にも、『天然有機青汁』には特別な作用があります。あなたにピッタリの……」
松枝「何ですか、それは?」
喪黒「実はですねぇ……。この青汁はダイエットにも効果があるんですよ」
松枝「そ、そうなんですか!?」
喪黒「ええ。『天然有機青汁』を飲み続けるだけで、松枝さんはみるみる痩せて健康な体形になれます」
松枝「マジっすか!?」
喪黒「本当ですよ。野菜不足は解消され、ダイエットにも効果があり、そのおかげでピッチャーとしても立ち直れる……」
「松枝さんにとっては、まさに一石三鳥の宝になるでしょう」
松枝「そこまで言われると……。この青汁、欲しくなってきましたよ……」
喪黒「じゃあ、あなたにこの『天然有機青汁』を無料でプレゼントしますよ」
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:38:20.373 ID:FjKiBatpD
松枝「えっ、いいんですか!?こんな高そうなものを、ただで貰うなんて……」
喪黒「これは私からの気持ちですよ。平成の怪物であるあなたの復活を願ってのことですから……」
松枝「ありがとうございます!帰ったらさっそく、この青汁飲んでみますよ」
喪黒「そりゃあ、どうも……。あと、私の連絡先も渡しておきますよ」
喪黒が松枝に渡したメモには、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。
翌朝。自宅マンション。台所には、パジャマ姿の松枝がいる。例の箱を開け、青汁の粉末入りの袋を取り出す松枝。
青汁の粉が入ったコップに、ミネラルウォーターが注がれる。緑色になった水を、一気飲みする松枝。
松枝「ハァーーーッ……。やっぱり青汁はまずいな……」
ナゴヤドーム。中部クロコダイルズの選手たちに交わり、投球練習をする松枝。
松枝の投げた球が、捕手のグローブに勢いよく収まる。
キャッチャー「松枝さん、今日はいつもより球が速いですね……」
喪黒「これは私からの気持ちですよ。平成の怪物であるあなたの復活を願ってのことですから……」
松枝「ありがとうございます!帰ったらさっそく、この青汁飲んでみますよ」
喪黒「そりゃあ、どうも……。あと、私の連絡先も渡しておきますよ」
喪黒が松枝に渡したメモには、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。
翌朝。自宅マンション。台所には、パジャマ姿の松枝がいる。例の箱を開け、青汁の粉末入りの袋を取り出す松枝。
青汁の粉が入ったコップに、ミネラルウォーターが注がれる。緑色になった水を、一気飲みする松枝。
松枝「ハァーーーッ……。やっぱり青汁はまずいな……」
ナゴヤドーム。中部クロコダイルズの選手たちに交わり、投球練習をする松枝。
松枝の投げた球が、捕手のグローブに勢いよく収まる。
キャッチャー「松枝さん、今日はいつもより球が速いですね……」
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:40:20.770 ID:FjKiBatpD
練習中の松枝を見守る森木監督。
森木(もしかすると、平成の怪物はまだ健在かもしれんな……)
1か月後――。ナゴヤドーム。中部は、ソフトビジョンとの交流戦の試合を控えている。
グラウンドの上で、松枝と会話するソフトビジョンの選手。
ソフトビジョンの選手「松枝さん……。気のせいか、少し痩せたように見えますけど……」
松枝「ハハハ、そう見えるか?もしかすると、あれのおかげかもしれんな」
ソフトビジョンの選手「ダイエットでも始めたんですか?」
松枝「まあな……。今日の試合、楽しみにしてくれよ」
テロップ「交流戦 中部クロコダイルズ ― 福岡ソフトビジョンファルコンズ」
マウンドに立つ松枝。バッターボックスに立つソフトビジョンの打者・柳本。
実況「バッターは4番の柳本です!さあ松枝、どう乗り切るか……」
森木(もしかすると、平成の怪物はまだ健在かもしれんな……)
1か月後――。ナゴヤドーム。中部は、ソフトビジョンとの交流戦の試合を控えている。
グラウンドの上で、松枝と会話するソフトビジョンの選手。
ソフトビジョンの選手「松枝さん……。気のせいか、少し痩せたように見えますけど……」
松枝「ハハハ、そう見えるか?もしかすると、あれのおかげかもしれんな」
ソフトビジョンの選手「ダイエットでも始めたんですか?」
松枝「まあな……。今日の試合、楽しみにしてくれよ」
テロップ「交流戦 中部クロコダイルズ ― 福岡ソフトビジョンファルコンズ」
マウンドに立つ松枝。バッターボックスに立つソフトビジョンの打者・柳本。
実況「バッターは4番の柳本です!さあ松枝、どう乗り切るか……」
16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:42:21.316 ID:FjKiBatpD
古巣の4番を相手に、渾身の球を投げる松枝。空振りする柳本。
審判「ストライーーーク!!バッターアウト!!」
中部側の観客席から歓声が起きる。松枝を応援するプラカードを抱える中部ファンたち。
東京。メモを持ちながら、路地裏を歩く松枝。
松枝「えーーと……。BAR『魔の巣』という店は……。ここか……」
BAR「魔の巣」に入店する松枝。店の席には、松枝を待つ喪黒が座っている。
喪黒「お待ちしていましたよ。松枝さん」
松枝が喪黒の隣の席に腰掛ける。
喪黒「松枝さん。この間の試合も、実に鮮やかな投球でしたねぇ」
松枝「いやぁ、何もかもあの『天然有機青汁』のおかげですよ!!」
「あれを飲み始めてから、身体の調子がすこぶるいいんです!!」
喪黒「見たところ……、松枝さんは前よりもスリムな体形になったようですなぁ」
審判「ストライーーーク!!バッターアウト!!」
中部側の観客席から歓声が起きる。松枝を応援するプラカードを抱える中部ファンたち。
東京。メモを持ちながら、路地裏を歩く松枝。
松枝「えーーと……。BAR『魔の巣』という店は……。ここか……」
BAR「魔の巣」に入店する松枝。店の席には、松枝を待つ喪黒が座っている。
喪黒「お待ちしていましたよ。松枝さん」
松枝が喪黒の隣の席に腰掛ける。
喪黒「松枝さん。この間の試合も、実に鮮やかな投球でしたねぇ」
松枝「いやぁ、何もかもあの『天然有機青汁』のおかげですよ!!」
「あれを飲み始めてから、身体の調子がすこぶるいいんです!!」
喪黒「見たところ……、松枝さんは前よりもスリムな体形になったようですなぁ」
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:44:21.362 ID:FjKiBatpD
松枝「分かりますか?最近では、人に会うたびによく言われるんですよ」
喪黒「どうです?『天然有機青汁』の効果は本物だったでしょう?」
松枝「もちろんですよ!まさか、あの青汁を飲むだけで本当に痩せるなんて……。もう、びっくりです!!」
喪黒「『天然有機青汁』は、数ある青汁の中でも特別なものなのです」
松枝「いやぁ……。今の俺は、『天然有機青汁』なしの生活は考えられません」
喪黒「だったら、松枝さん……。あなたには、約束していただきたいことがあります」
松枝「約束!?」
喪黒「そうです。あなたが愛飲する青汁は、この『天然有機青汁』だけにしてください」
「それ以外の青汁は、絶対に服用してはいけません。いいですね、約束ですよ!?」
松枝「変わった約束ですけど……。まあ、いいでしょう……」
夏。ナゴヤドーム。
テロップ「セ・リーグ 中部クロコダイルズ ― 横浜シューティングスターズ」
松枝の投げたボールに対し、空振りをする横浜の打者。
喪黒「どうです?『天然有機青汁』の効果は本物だったでしょう?」
松枝「もちろんですよ!まさか、あの青汁を飲むだけで本当に痩せるなんて……。もう、びっくりです!!」
喪黒「『天然有機青汁』は、数ある青汁の中でも特別なものなのです」
松枝「いやぁ……。今の俺は、『天然有機青汁』なしの生活は考えられません」
喪黒「だったら、松枝さん……。あなたには、約束していただきたいことがあります」
松枝「約束!?」
喪黒「そうです。あなたが愛飲する青汁は、この『天然有機青汁』だけにしてください」
「それ以外の青汁は、絶対に服用してはいけません。いいですね、約束ですよ!?」
松枝「変わった約束ですけど……。まあ、いいでしょう……」
夏。ナゴヤドーム。
テロップ「セ・リーグ 中部クロコダイルズ ― 横浜シューティングスターズ」
松枝の投げたボールに対し、空振りをする横浜の打者。
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:46:35.192 ID:FjKiBatpD
審判「ストライーーーク!!バッターアウト!!」
別の横浜の打者が、松枝の投球を打つ。しかし、球は守備側の選手のグローブへと収まる。
試合が終わり、ヒーローインタビューを受ける松枝。翌日、地元スポーツ紙が松枝の勝利をトップで伝える。
ある日。球団オーナーに呼ばれる松枝。執務室で2人は会話をしている。
オーナー「松枝君。君に、健康食品会社からCM出演の依頼が来ているぞ」
松枝「俺がCMに出るんですか?」
オーナー「ああ。何でも、君を青汁のCMに出したいとのことだ」
松枝「えっ……!?」
松枝の頭の中に、喪黒の忠告が思い浮かぶ。
(喪黒「あなたが愛飲する青汁は、この『天然有機青汁』だけにしてください」)
オーナー「ダイエットに成功し、ピッチャーとして復活した君には打ってつけの仕事だ」
「しかも……。この健康食品会社は本社が名古屋にあって、全国での知名度もそこそこある」
「君がこの企業のCMに出ることは、球団がある愛知県への貢献にもなるんだぞ」
別の横浜の打者が、松枝の投球を打つ。しかし、球は守備側の選手のグローブへと収まる。
試合が終わり、ヒーローインタビューを受ける松枝。翌日、地元スポーツ紙が松枝の勝利をトップで伝える。
ある日。球団オーナーに呼ばれる松枝。執務室で2人は会話をしている。
オーナー「松枝君。君に、健康食品会社からCM出演の依頼が来ているぞ」
松枝「俺がCMに出るんですか?」
オーナー「ああ。何でも、君を青汁のCMに出したいとのことだ」
松枝「えっ……!?」
松枝の頭の中に、喪黒の忠告が思い浮かぶ。
(喪黒「あなたが愛飲する青汁は、この『天然有機青汁』だけにしてください」)
オーナー「ダイエットに成功し、ピッチャーとして復活した君には打ってつけの仕事だ」
「しかも……。この健康食品会社は本社が名古屋にあって、全国での知名度もそこそこある」
「君がこの企業のCMに出ることは、球団がある愛知県への貢献にもなるんだぞ」
19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:48:51.242 ID:FjKiBatpD
松枝(困ったな……。オーナーの頼みとあれば、断れそうな雰囲気ではないな……)
オーナー「どうだね、引き受けてくれるか?」
松枝「わ、分かりました……」
とある家。居間にある液晶テレビを見つめる主婦。テレビには、青汁を飲む松枝と女性タレントが映っている。
秋。中部の選手たちは移動中のバスに乗っている。
森木「松枝。今度の試合では、そろそろお前を登板させようと思う。お前にとって甲子園は思い出の地だろう?」
松枝「はい。だから、この試合……。何が何でも勝って見せますよ」
あるホテルの客室。洗面所の中で、『天然有機青汁』の粉末をコップに入れて飲む松枝。
青汁を飲み終わった松枝が客室に戻ると……。そこには喪黒の姿がある。
喪黒「松枝泰平さん……。あなた約束を破りましたね」
松枝「も、喪黒さん……!!」
部屋にあるテレビのリモコンを取り、電源を入れる喪黒。液晶テレビの画面に、松枝の青汁CMが映る。
松枝「ああっ!!」
オーナー「どうだね、引き受けてくれるか?」
松枝「わ、分かりました……」
とある家。居間にある液晶テレビを見つめる主婦。テレビには、青汁を飲む松枝と女性タレントが映っている。
秋。中部の選手たちは移動中のバスに乗っている。
森木「松枝。今度の試合では、そろそろお前を登板させようと思う。お前にとって甲子園は思い出の地だろう?」
松枝「はい。だから、この試合……。何が何でも勝って見せますよ」
あるホテルの客室。洗面所の中で、『天然有機青汁』の粉末をコップに入れて飲む松枝。
青汁を飲み終わった松枝が客室に戻ると……。そこには喪黒の姿がある。
喪黒「松枝泰平さん……。あなた約束を破りましたね」
松枝「も、喪黒さん……!!」
部屋にあるテレビのリモコンを取り、電源を入れる喪黒。液晶テレビの画面に、松枝の青汁CMが映る。
松枝「ああっ!!」
21: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:51:15.736 ID:FjKiBatpD
喪黒「私はあなたに言ったはずですよ。『天然有機青汁』以外の青汁は、絶対に服用してはいけない……と」
松枝「だ、だって喪黒さん……。青汁のCM出演は、球団オーナーからの頼みもあったものだから……」
「どうしても断りきれなくて……」
喪黒「弁解は無用です。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は松枝に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
松枝「ギャアアアアアアアアア!!!」
次の日。甲子園球場。
テロップ「セ・リーグ 中部クロコダイルズ ― 関鉄パンサーズ」
関鉄の選手たちを相手に、力投を続ける松枝。歓声が上がる観客席。試合は中部優勢のまま続いていたが……。
いつの間にか……。マウンドに立つ松枝は、全身が緑色になっている。松枝を見て、不安な顔になる関鉄の打者と中部の捕手。
関鉄側のベンチでも、中部側のベンチでも、一同は恐怖と不安で言葉を失う。緑色の身体の松枝をじっと見つめる一同。
松枝「だ、だって喪黒さん……。青汁のCM出演は、球団オーナーからの頼みもあったものだから……」
「どうしても断りきれなくて……」
喪黒「弁解は無用です。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は松枝に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
松枝「ギャアアアアアアアアア!!!」
次の日。甲子園球場。
テロップ「セ・リーグ 中部クロコダイルズ ― 関鉄パンサーズ」
関鉄の選手たちを相手に、力投を続ける松枝。歓声が上がる観客席。試合は中部優勢のまま続いていたが……。
いつの間にか……。マウンドに立つ松枝は、全身が緑色になっている。松枝を見て、不安な顔になる関鉄の打者と中部の捕手。
関鉄側のベンチでも、中部側のベンチでも、一同は恐怖と不安で言葉を失う。緑色の身体の松枝をじっと見つめる一同。
22: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 03:55:41.783 ID:FjKiBatpD
松枝「何だか、眠くなってきたな……」
松枝の足が地面にめり込む。緑色になった身体から、何かの葉が次々と生えてくる。顔へ……、首へ……。両手へ……。
彼が着ていた中部のユニフォームが破れ、身体だった部分から次々と葉が生える。次第に人型でさえなくなっていき……。
中部側ベンチ「お、おい……!!こ、これ……!!」
関鉄側ベンチ「い……、一体何が起きたんやあっ!!」
松枝が立っていたマウンド上には、巨大なケールが束で生えている。突然起きた異常な現象に、ただ驚愕するしかない一同。
甲子園の観客席から悲鳴が上がる。当然のことながら、テレビで野球中継を見ていた関西在住の住人たちからも――。
甲子園前にいる喪黒。彼の周囲は人でごった返している。
喪黒「地上にいる動物は、主に肉食、草食、雑食に分類することができますが……。人間は雑食動物と言えるでしょう」
「肉以外にも野菜を食べることにより、身体に満遍なく栄養を取り入れてきた生き物……。それが人間の一大特色です」
「そもそも、野菜には豊富な栄養が含まれていますし……。野菜は、人間の健康の維持にこれ以上なく役に立っています」
「従って、人間の食生活に野菜は不可欠な存在ですし……。野菜があったからこそ人間は地上に生き残れたのかもしれません」
「まぁ、それにしても……。野菜の栄養を身体に取り入れる究極の方法は、自分自身が野菜そのものになることですよ」
「まさに、平成の怪物ここにありですねぇ。松枝さん……。オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
松枝の足が地面にめり込む。緑色になった身体から、何かの葉が次々と生えてくる。顔へ……、首へ……。両手へ……。
彼が着ていた中部のユニフォームが破れ、身体だった部分から次々と葉が生える。次第に人型でさえなくなっていき……。
中部側ベンチ「お、おい……!!こ、これ……!!」
関鉄側ベンチ「い……、一体何が起きたんやあっ!!」
松枝が立っていたマウンド上には、巨大なケールが束で生えている。突然起きた異常な現象に、ただ驚愕するしかない一同。
甲子園の観客席から悲鳴が上がる。当然のことながら、テレビで野球中継を見ていた関西在住の住人たちからも――。
甲子園前にいる喪黒。彼の周囲は人でごった返している。
喪黒「地上にいる動物は、主に肉食、草食、雑食に分類することができますが……。人間は雑食動物と言えるでしょう」
「肉以外にも野菜を食べることにより、身体に満遍なく栄養を取り入れてきた生き物……。それが人間の一大特色です」
「そもそも、野菜には豊富な栄養が含まれていますし……。野菜は、人間の健康の維持にこれ以上なく役に立っています」
「従って、人間の食生活に野菜は不可欠な存在ですし……。野菜があったからこそ人間は地上に生き残れたのかもしれません」
「まぁ、それにしても……。野菜の栄養を身体に取り入れる究極の方法は、自分自身が野菜そのものになることですよ」
「まさに、平成の怪物ここにありですねぇ。松枝さん……。オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
23: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 04:04:04.402 ID:H3dgMy7B0
面白かった!
ハンカチで見たいです
ハンカチで見たいです
24: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/11(木) 04:10:58.912 ID:O/c9Pp+20
乙
引用元: 喪黒福造「この青汁はダイエットにも効果があるんですよ」 ベテラン投手「そ、そうなんですか!?」
喪黒福造「あなたも記者ならば、一級品のスクープを手にしてみたいでしょう?」 新聞記者「そうに決まってますよ!!」
2018-09-27
1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:11:37.177 ID:DTqDnszTD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
長谷川丸男(41) 新聞記者
【報道最前線】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
長谷川丸男(41) 新聞記者
【報道最前線】
ホーッホッホッホ……。」
2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:13:57.321 ID:DTqDnszTD
東京、千代田区。大手町エリアにそびえ立つ巨大ビル。
テロップ「読朝新聞東京本社ビル、地上33階、地下3階建て」
眼鏡の奥から鋭い眼光を飛ばす老人の男。高値なスーツを身にまとい、杖をついている。
テロップ「鍋島弘道(92) 読朝新聞本社・代表取締役主筆」
長谷川のモノローグ「鍋島弘道主筆は、『ナベヒロ』の通称で知られる大物だ」
盟友である元首相と握手をする鍋島。さらに、読朝新聞社が保有する球団・巨神の監督と会う鍋島。
長谷川のモノローグ「鍋島主筆は、メディア界だけでなく、政界やスポーツ界にも強い影響力を持っている」
読朝新聞の朝刊紙面。「読朝新聞」の題字がアップで映る。リーグ優勝をし、選手たちに胴上げされる過去の巨神監督。
長谷川のモノローグ「世界一の発行部数・840万部を誇り、プロ野球の巨神こと読朝ギガンツでも知られる……。それが読朝新聞だ」
夜。読朝新聞東京本社。仮眠室の中で、一人の男が毛布にくるまって寝ている。
テロップ「長谷川丸男(41) 読朝新聞・社会部記者」
テロップ「読朝新聞東京本社ビル、地上33階、地下3階建て」
眼鏡の奥から鋭い眼光を飛ばす老人の男。高値なスーツを身にまとい、杖をついている。
テロップ「鍋島弘道(92) 読朝新聞本社・代表取締役主筆」
長谷川のモノローグ「鍋島弘道主筆は、『ナベヒロ』の通称で知られる大物だ」
盟友である元首相と握手をする鍋島。さらに、読朝新聞社が保有する球団・巨神の監督と会う鍋島。
長谷川のモノローグ「鍋島主筆は、メディア界だけでなく、政界やスポーツ界にも強い影響力を持っている」
読朝新聞の朝刊紙面。「読朝新聞」の題字がアップで映る。リーグ優勝をし、選手たちに胴上げされる過去の巨神監督。
長谷川のモノローグ「世界一の発行部数・840万部を誇り、プロ野球の巨神こと読朝ギガンツでも知られる……。それが読朝新聞だ」
夜。読朝新聞東京本社。仮眠室の中で、一人の男が毛布にくるまって寝ている。
テロップ「長谷川丸男(41) 読朝新聞・社会部記者」
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:16:14.940 ID:DTqDnszTD
仮眠をとっている長谷川を叩き起こす同僚・高木。
高木「おい長谷川、起きろ。事件だぞ」
長谷川「ああ、高木……」
本社の廊下を急ぎ足で歩く長谷川と高木。
長谷川のモノローグ「俺は、この新聞社の社会部に所属する遊軍記者だ」
真夜中の街。車を運転する長谷川。助手席には高木がいる。
長谷川のモノローグ「遊軍記者は、記者クラブにも所属していないし、決まった担当も持っていない」
殺人現場で取材をする長谷川。地震で自宅が倒壊した街にいる長谷川。また、選挙運動中の候補者の取材をする長谷川。
長谷川のモノローグ「大きな事件、事故、災害があれば、取材テーマに応じて臨機応変に動く『何でも屋』が遊軍記者だ」
夕方。高速道路で、車を運転する長谷川。
長谷川のモノローグ「世間一般の認識では、社会部の記者は正義感が強くて熱血肌の人間が多いとされる」
高木「おい長谷川、起きろ。事件だぞ」
長谷川「ああ、高木……」
本社の廊下を急ぎ足で歩く長谷川と高木。
長谷川のモノローグ「俺は、この新聞社の社会部に所属する遊軍記者だ」
真夜中の街。車を運転する長谷川。助手席には高木がいる。
長谷川のモノローグ「遊軍記者は、記者クラブにも所属していないし、決まった担当も持っていない」
殺人現場で取材をする長谷川。地震で自宅が倒壊した街にいる長谷川。また、選挙運動中の候補者の取材をする長谷川。
長谷川のモノローグ「大きな事件、事故、災害があれば、取材テーマに応じて臨機応変に動く『何でも屋』が遊軍記者だ」
夕方。高速道路で、車を運転する長谷川。
長谷川のモノローグ「世間一般の認識では、社会部の記者は正義感が強くて熱血肌の人間が多いとされる」
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:18:39.720 ID:DTqDnszTD
夜。読朝新聞東京本社。デスクに向かい、原稿を執筆する長谷川。
長谷川のモノローグ「……それは、建前の話だ。世の中で起きた出来事で話題性が強い事件を記事にするので……」
「社会部の報道は、大衆受けを狙った娯楽色が強いものになりがちだ」
主筆の執務室。かしこまった様子で、鍋島主筆に頭を下げる記者。記者を叱る鍋島。
長谷川のモノローグ「何よりも……。わが社は『ナベヒロ』こと鍋島主筆のおかげで、いろいろ報道に制約がある」
ソファーで横になり、考え事をする長谷川。
長谷川(果たして……。これが記者として、まっとうなあり方なのだろうか……)
夜。あるカラオケ喫茶。中高年の客たちが店の中に集まっている。客の中には、長谷川や喪黒福造がいる。
機械の前でマイクを取る長谷川。店内のテレビの画面には、「谷村新司 天狼」のタイトルが映し出される。
長谷川は渋い声で、谷村の「天狼」を歌う。サビの部分を熱唱する長谷川。拍手をする客の一同。
カラオケ喫茶を出る長谷川。長谷川の隣には、喪黒がいる。
喪黒「あなたの年齢で谷村新司を歌えるとは、意外と渋いですなぁ」
長谷川のモノローグ「……それは、建前の話だ。世の中で起きた出来事で話題性が強い事件を記事にするので……」
「社会部の報道は、大衆受けを狙った娯楽色が強いものになりがちだ」
主筆の執務室。かしこまった様子で、鍋島主筆に頭を下げる記者。記者を叱る鍋島。
長谷川のモノローグ「何よりも……。わが社は『ナベヒロ』こと鍋島主筆のおかげで、いろいろ報道に制約がある」
ソファーで横になり、考え事をする長谷川。
長谷川(果たして……。これが記者として、まっとうなあり方なのだろうか……)
夜。あるカラオケ喫茶。中高年の客たちが店の中に集まっている。客の中には、長谷川や喪黒福造がいる。
機械の前でマイクを取る長谷川。店内のテレビの画面には、「谷村新司 天狼」のタイトルが映し出される。
長谷川は渋い声で、谷村の「天狼」を歌う。サビの部分を熱唱する長谷川。拍手をする客の一同。
カラオケ喫茶を出る長谷川。長谷川の隣には、喪黒がいる。
喪黒「あなたの年齢で谷村新司を歌えるとは、意外と渋いですなぁ」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:20:56.767 ID:DTqDnszTD
長谷川「まあ、何というか……。私は彼の歌を気にいっているので……。特に、『天狼』を……」
喪黒「あなた、谷村新司の『天狼』がお好きなのですか?」
長谷川「はい……。年老いた白き狼が、誇りを捨ててねぐらへ帰るっていう世界観が……」
「私の胸を打つんですよ……。中年になった人間の悲哀や挫折感というものもあって……」
喪黒「若いころは誰もが理想や使命感に燃えているものですよ」
「しかし……。様々な形で壁にぶつかることにより、現実の厳しさを味わうわけです」
長谷川「おっしゃる通りです」
喪黒「見たところ、あなたにも心にスキマがおありのように見えますなぁ……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
長谷川「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
長谷川「人生相談か、何かですか?」
喪黒「どちらかというと、ボランティアみたいなものですよ。何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
喪黒「あなた、谷村新司の『天狼』がお好きなのですか?」
長谷川「はい……。年老いた白き狼が、誇りを捨ててねぐらへ帰るっていう世界観が……」
「私の胸を打つんですよ……。中年になった人間の悲哀や挫折感というものもあって……」
喪黒「若いころは誰もが理想や使命感に燃えているものですよ」
「しかし……。様々な形で壁にぶつかることにより、現実の厳しさを味わうわけです」
長谷川「おっしゃる通りです」
喪黒「見たところ、あなたにも心にスキマがおありのように見えますなぁ……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
長谷川「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
長谷川「人生相談か、何かですか?」
喪黒「どちらかというと、ボランティアみたいなものですよ。何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:23:21.799 ID:DTqDnszTD
BAR「魔の巣」。喪黒と長谷川が席に腰掛けている。
喪黒「ほう……。長谷川さんは社会部の遊軍記者なのですか。なかなかのエリートですなぁ……」
長谷川「とんでもありません。私は、うだつが上がらないヒラの記者ですし……。本社では末端兵に過ぎませんよ」
喪黒「そんなことはないでしょう。新聞記者は、ペンで社会の不正をただすことを使命としているのですから……」
長谷川「それは表向きの話ですよ。我が読朝新聞社は、鍋島主筆の意向に逆らった報道などできませんから……」
喪黒「しかしながら……。記者である以上、何かしらのスクープを報道する人もいるはずですよねぇ?」
長谷川「あのぅ、実はですね……。読朝新聞社では、スクープを連発する記者には『禁止令』が出されているんです」
「他紙よりも突出せず、無難な報道に徹しろというのが鍋島主筆の方針ですから……」
喪黒「なるほど……。今の読朝新聞社は、そんなことになっていたんですか……」
「それじゃあ、あなたにとっては面白くないでしょうねぇ」
長谷川「もちろんですよ。ペンの力によって社会の不正を追及し、真実に迫るのは記者の使命ですよ……」
「それだけでなく……。一級品のスクープを手にすることは、記者としての夢なのですから……」
「会社に飼い殺され、当たり障りのない報道に徹するなんて……。記者として、たまったもんじゃありません!」
喪黒「長谷川さん。あなたも記者ならば、一級品のスクープを手にしてみたいでしょう?」
喪黒「ほう……。長谷川さんは社会部の遊軍記者なのですか。なかなかのエリートですなぁ……」
長谷川「とんでもありません。私は、うだつが上がらないヒラの記者ですし……。本社では末端兵に過ぎませんよ」
喪黒「そんなことはないでしょう。新聞記者は、ペンで社会の不正をただすことを使命としているのですから……」
長谷川「それは表向きの話ですよ。我が読朝新聞社は、鍋島主筆の意向に逆らった報道などできませんから……」
喪黒「しかしながら……。記者である以上、何かしらのスクープを報道する人もいるはずですよねぇ?」
長谷川「あのぅ、実はですね……。読朝新聞社では、スクープを連発する記者には『禁止令』が出されているんです」
「他紙よりも突出せず、無難な報道に徹しろというのが鍋島主筆の方針ですから……」
喪黒「なるほど……。今の読朝新聞社は、そんなことになっていたんですか……」
「それじゃあ、あなたにとっては面白くないでしょうねぇ」
長谷川「もちろんですよ。ペンの力によって社会の不正を追及し、真実に迫るのは記者の使命ですよ……」
「それだけでなく……。一級品のスクープを手にすることは、記者としての夢なのですから……」
「会社に飼い殺され、当たり障りのない報道に徹するなんて……。記者として、たまったもんじゃありません!」
喪黒「長谷川さん。あなたも記者ならば、一級品のスクープを手にしてみたいでしょう?」
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:25:29.302 ID:DTqDnszTD
長谷川「そうに決まってますよ!!」
喪黒「そのお言葉、待っていました……。私があなたの潜在願望をかなえてあげますよ!」
長谷川「なっ……」
喪黒は、長谷川に右手の人差し指を向ける。
喪黒「あなたは、近いうちに大スクープを必ず見つけます!!そして、それを記事にして全国へ報道します!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
長谷川「ギャアアアアアアアアア!!!」
テロップ「北関東、鰐船山――」
夜。森の中でテントを張り、一人で焚き火を見つめる長谷川。
長谷川(久々の休日だ……。たまには、ソロキャンプもいいな……)
突然、夜空一体に閃光が走る。ピカアッ!!!
長谷川「ま、眩しいっ……!!」
空気を切り裂くような音がしばらく続いた末、轟音が響きわたる。キイイイイイイン……、ドゴオオオオオ!!!
喪黒「そのお言葉、待っていました……。私があなたの潜在願望をかなえてあげますよ!」
長谷川「なっ……」
喪黒は、長谷川に右手の人差し指を向ける。
喪黒「あなたは、近いうちに大スクープを必ず見つけます!!そして、それを記事にして全国へ報道します!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
長谷川「ギャアアアアアアアアア!!!」
テロップ「北関東、鰐船山――」
夜。森の中でテントを張り、一人で焚き火を見つめる長谷川。
長谷川(久々の休日だ……。たまには、ソロキャンプもいいな……)
突然、夜空一体に閃光が走る。ピカアッ!!!
長谷川「ま、眩しいっ……!!」
空気を切り裂くような音がしばらく続いた末、轟音が響きわたる。キイイイイイイン……、ドゴオオオオオ!!!
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:27:56.470 ID:DTqDnszTD
長谷川「な……、何が起きたんだ!?」
轟音がした方角へ足を運ぶ長谷川。彼は、手で鼻を押さえる。
長谷川「それにしても、焦げ臭いにおいがする……」
向かった先で、長谷川が目にしたものは……。
長谷川「こ、これは……!!!」
大破し、炎上する黒焦げの自衛隊機。辺りには金属の破片がいくつも見える。事故現場を見て、長谷川は驚愕する。
急いで自らのテントへと戻り、カメラを手にする長谷川。彼はカメラを持ち、事故現場に再び向かう。
一心不乱で、墜落した自衛隊機をカメラで撮影する長谷川。カシャッ!!カシャッ!!
翌日。読朝新聞朝刊。自衛隊機の墜落事故が、一面トップで報道されている。事故現場の写真は、長谷川が撮影したものだ。
読朝新聞東京本社、社会部。読朝新聞の朝刊を手に取り、記者たちが会話をしている。
記者A「それにしても、長谷川がこんなスクープを手にするとは……。意外だな」
記者B「ああ……。平凡で目立たない男だったはずの長谷川にしては、大金星だ」
轟音がした方角へ足を運ぶ長谷川。彼は、手で鼻を押さえる。
長谷川「それにしても、焦げ臭いにおいがする……」
向かった先で、長谷川が目にしたものは……。
長谷川「こ、これは……!!!」
大破し、炎上する黒焦げの自衛隊機。辺りには金属の破片がいくつも見える。事故現場を見て、長谷川は驚愕する。
急いで自らのテントへと戻り、カメラを手にする長谷川。彼はカメラを持ち、事故現場に再び向かう。
一心不乱で、墜落した自衛隊機をカメラで撮影する長谷川。カシャッ!!カシャッ!!
翌日。読朝新聞朝刊。自衛隊機の墜落事故が、一面トップで報道されている。事故現場の写真は、長谷川が撮影したものだ。
読朝新聞東京本社、社会部。読朝新聞の朝刊を手に取り、記者たちが会話をしている。
記者A「それにしても、長谷川がこんなスクープを手にするとは……。意外だな」
記者B「ああ……。平凡で目立たない男だったはずの長谷川にしては、大金星だ」
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:30:15.432 ID:DTqDnszTD
記者C「ライバルの新聞社の連中は、今ごろ悔しがっているだろうなぁ……」
社会部部長「…………」
記者たちを眺める社会部の部長。自社の新聞記者がスクープを掴んだ快挙に対し、面白くなさそうな表情だ。
BAR「魔の巣」。喪黒と長谷川が席に腰掛けている。机の上には、読朝新聞の朝刊が置かれている。
喪黒「長谷川さん。あなたもとうとう、一級品のスクープを掴むことができたようですねぇ」
長谷川「い、いえ……。私はあの日、たまたま墜落現場に居合わせただけですから……。あれはマグレですよ」
喪黒「……とはいえ、あなたが大がかりなスクープを手にしたことは紛れもない事実です。それは誇ってもいいですよ」
長谷川「まあ……。私は、新聞記者としてやるべきことをやれたわけですから……」
喪黒「そこでです……。私は長谷川さんに、どうしても忠告しておきたいことがあるのですよ」
長谷川「は、はい……」
喪黒「今回のような大掛かりなスクープは、そう滅多にあるものではありません」
「しかも……。あなたの新聞社は、スクープを連発する記者には『禁止令』を出していますからねぇ」
社会部部長「…………」
記者たちを眺める社会部の部長。自社の新聞記者がスクープを掴んだ快挙に対し、面白くなさそうな表情だ。
BAR「魔の巣」。喪黒と長谷川が席に腰掛けている。机の上には、読朝新聞の朝刊が置かれている。
喪黒「長谷川さん。あなたもとうとう、一級品のスクープを掴むことができたようですねぇ」
長谷川「い、いえ……。私はあの日、たまたま墜落現場に居合わせただけですから……。あれはマグレですよ」
喪黒「……とはいえ、あなたが大がかりなスクープを手にしたことは紛れもない事実です。それは誇ってもいいですよ」
長谷川「まあ……。私は、新聞記者としてやるべきことをやれたわけですから……」
喪黒「そこでです……。私は長谷川さんに、どうしても忠告しておきたいことがあるのですよ」
長谷川「は、はい……」
喪黒「今回のような大掛かりなスクープは、そう滅多にあるものではありません」
「しかも……。あなたの新聞社は、スクープを連発する記者には『禁止令』を出していますからねぇ」
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:32:19.043 ID:DTqDnszTD
長谷川「え、ええ……。要するに、喪黒さん。『出る杭は打たれる』ってことですよね?」
「しばらく私は、おとなしくしてろってことでしょ……」
喪黒「そうですよ。さすがは新聞記者だけあって、頭の良さと勘の鋭さを持ち合わせていますねぇ……」
長谷川「いやぁ……」
喪黒「長谷川さん、私と約束してください。墜落事故の取材を行うのもいいですが、あまり深入りはしないでくださいよ」
長谷川「それは、私も承知していますよ……」
喪黒「特に……。取材のために、あの事故現場へ再び足を運ぶようなことをしてはいけません。いいですね、約束ですよ!?」
長谷川「分かりました……。喪黒さんがそこまでおっしゃるのなら……」
テロップ「埼玉県、防衛医科大学校病院――」
全身を包帯に包まれた状態で、ベッドで横たわる自衛隊員・佐久間。彼の側にいる長谷川記者。
佐久間「俺は見たんですよ……!!あれを……!!あいつを……!!」
長谷川「佐久間さん……。あの墜落が起きる前、一瞬、夜空がパッと光り輝きましたよね……」
「しばらく私は、おとなしくしてろってことでしょ……」
喪黒「そうですよ。さすがは新聞記者だけあって、頭の良さと勘の鋭さを持ち合わせていますねぇ……」
長谷川「いやぁ……」
喪黒「長谷川さん、私と約束してください。墜落事故の取材を行うのもいいですが、あまり深入りはしないでくださいよ」
長谷川「それは、私も承知していますよ……」
喪黒「特に……。取材のために、あの事故現場へ再び足を運ぶようなことをしてはいけません。いいですね、約束ですよ!?」
長谷川「分かりました……。喪黒さんがそこまでおっしゃるのなら……」
テロップ「埼玉県、防衛医科大学校病院――」
全身を包帯に包まれた状態で、ベッドで横たわる自衛隊員・佐久間。彼の側にいる長谷川記者。
佐久間「俺は見たんですよ……!!あれを……!!あいつを……!!」
長谷川「佐久間さん……。あの墜落が起きる前、一瞬、夜空がパッと光り輝きましたよね……」
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:34:14.200 ID:DTqDnszTD
とある喫茶店。机に向かってコーヒーを飲む長谷川の姿を、一人の男が見つける。
斎藤「よぉ、長谷川」
テロップ「斎藤寿男(41) 写真週刊誌『サースデー』記者」
長谷川のモノローグ「こいつは、俺の大学時代の同期で今も親友の一人だ」
斎藤「それにしても、お前もすごいスクープを掴んだものだな。写真週刊誌の記者として実にうらやましい」
長谷川「俺こそ、お前がうらやましいよ。組織にがんじがらめの俺とは違い、自由気ままに報道をしているのだから……」
斎藤「なぁ……。ところで、来週の『サースデー』には面白い写真が載るぞ」
「あの日、鰐船山の上空で撮影されたとっておきの奴がな……。楽しみにしてくれよ」
数日後。防衛医科大学校病院。病室で、入院中の佐久間と会話する長谷川。
佐久間「お……、教えてくれ……!!俺は一体誰なんだ……!?」
長谷川「あなたは佐久間という名前でしょう……!航空自衛隊のパイロットで……」
佐久間「お、思い出せない!!何もかも忘れてしまった!!」
斎藤「よぉ、長谷川」
テロップ「斎藤寿男(41) 写真週刊誌『サースデー』記者」
長谷川のモノローグ「こいつは、俺の大学時代の同期で今も親友の一人だ」
斎藤「それにしても、お前もすごいスクープを掴んだものだな。写真週刊誌の記者として実にうらやましい」
長谷川「俺こそ、お前がうらやましいよ。組織にがんじがらめの俺とは違い、自由気ままに報道をしているのだから……」
斎藤「なぁ……。ところで、来週の『サースデー』には面白い写真が載るぞ」
「あの日、鰐船山の上空で撮影されたとっておきの奴がな……。楽しみにしてくれよ」
数日後。防衛医科大学校病院。病室で、入院中の佐久間と会話する長谷川。
佐久間「お……、教えてくれ……!!俺は一体誰なんだ……!?」
長谷川「あなたは佐久間という名前でしょう……!航空自衛隊のパイロットで……」
佐久間「お、思い出せない!!何もかも忘れてしまった!!」
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:36:23.235 ID:DTqDnszTD
街を歩く長谷川。彼はスマホを手にし、社会部の同僚と通話をしている。
長谷川「ああ、もしもし……。長谷川です……。えっ!?斎藤が自動車の中で練炭自殺!?」
とある病院。ベッドに横たわる斎藤の遺体に向かい、彼の妻が泣き崩れる。長谷川も涙を流している。
斎藤の妻「ウッ……、ウウウ……。あなたぁーーーっ!!」
長谷川「どうして死んだんだ……!俺と会った時は、あんなに元気そうだったのに……」
斎藤の葬儀。参列者の中に、喪服を着た長谷川が加わっている。悲しげな表情で斎藤の遺影を見つめる長谷川。
読朝新聞東京本社、社会部。社会部部長に呼ばれる長谷川。
社会部部長「長谷川……。鍋島主筆がお前をお呼びだ」
長谷川「えっ!?主筆が!?」
執務室。鍋島主筆と長谷川が会話をする。かしこまった様子の長谷川。
鍋島「長谷川君。今回のスクープ、でかしたものだな」
長谷川「ああ、もしもし……。長谷川です……。えっ!?斎藤が自動車の中で練炭自殺!?」
とある病院。ベッドに横たわる斎藤の遺体に向かい、彼の妻が泣き崩れる。長谷川も涙を流している。
斎藤の妻「ウッ……、ウウウ……。あなたぁーーーっ!!」
長谷川「どうして死んだんだ……!俺と会った時は、あんなに元気そうだったのに……」
斎藤の葬儀。参列者の中に、喪服を着た長谷川が加わっている。悲しげな表情で斎藤の遺影を見つめる長谷川。
読朝新聞東京本社、社会部。社会部部長に呼ばれる長谷川。
社会部部長「長谷川……。鍋島主筆がお前をお呼びだ」
長谷川「えっ!?主筆が!?」
執務室。鍋島主筆と長谷川が会話をする。かしこまった様子の長谷川。
鍋島「長谷川君。今回のスクープ、でかしたものだな」
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:38:37.173 ID:DTqDnszTD
長谷川「は、はい……」
鍋島「だから、しばらくの間……。君は、例の墜落事故の報道から外れたらどうかね?たまには休養も必要だろう……」
本社の廊下を歩きながら、考え事をする長谷川。
長谷川(あの墜落事故の核心に触れようとした人間に対し、次々と不可解な出来事が起きている……)
(どうも、事故の裏側で何かとんでもない動きがあるようだな……)
とある休日、夕方。鰐船山。山道を一人で歩く長谷川。彼はソロキャンプの服装だが、思いつめたような顔をしている。
長谷川(もう一度、あの墜落現場に行けば……。必ず何かの証拠が見つかるはずだ……)
喪黒「お待ちなさい!!」
長谷川の行く手を阻む例の男の姿……。その男は、そう……喪黒福造だ。
喪黒「長谷川丸男さん……。あなた約束を破りましたね」
長谷川「も、喪黒さん!!」
喪黒「私はあなたに忠告しました。例の墜落事故の取材を行うのもいいが、あまり深入りはするべきではない……と」
長谷川「で、ですが……。私は……」
鍋島「だから、しばらくの間……。君は、例の墜落事故の報道から外れたらどうかね?たまには休養も必要だろう……」
本社の廊下を歩きながら、考え事をする長谷川。
長谷川(あの墜落事故の核心に触れようとした人間に対し、次々と不可解な出来事が起きている……)
(どうも、事故の裏側で何かとんでもない動きがあるようだな……)
とある休日、夕方。鰐船山。山道を一人で歩く長谷川。彼はソロキャンプの服装だが、思いつめたような顔をしている。
長谷川(もう一度、あの墜落現場に行けば……。必ず何かの証拠が見つかるはずだ……)
喪黒「お待ちなさい!!」
長谷川の行く手を阻む例の男の姿……。その男は、そう……喪黒福造だ。
喪黒「長谷川丸男さん……。あなた約束を破りましたね」
長谷川「も、喪黒さん!!」
喪黒「私はあなたに忠告しました。例の墜落事故の取材を行うのもいいが、あまり深入りはするべきではない……と」
長谷川「で、ですが……。私は……」
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:41:07.544 ID:DTqDnszTD
喪黒「取材のために、あの事故現場へ再び足を運ぶようなことはしない……。それが、長谷川さんと私との約束でした」
「にも関わらず……。あなたは約束を破り、ここへ……」
長谷川「私は本当のことが知りたいんです!!なぜなら、あの墜落事故の後で、不気味な出来事が何度も起きたからです!!」
「墜落した自衛隊機のパイロットは突然、不自然な形で記憶喪失になり……」
「その上、私の友人の写真週刊誌記者は、自殺を装って何者かに殺されました!!」
「おまけに、例のスクープを掴んだ私は……。鍋島主筆に呼び出されて、直接圧力をかけられたんです!!」
「『墜落事故の報道から外れてくれ』……と」
喪黒「だったら……。これ以上、あの墜落事故に深入りするのはやめたらどうです?あなたの身の安全のために……」
長谷川「そんなわけにはいきません!!記者である以上、真実が何かを私は知りたいんです!!」
「それに、私の友人のことを思うと……。真実を知ることで、死んだ友人の無念を晴らしたいんです!!」
喪黒「長谷川さん。どうしても、墜落事故の現場へもう1度行くのですね?」
長谷川「もちろんですよ!!」
喪黒「分かりました……。そこまで言うのなら、私はあなたを止めません」
「ですが……、どのようなことになっても私は知りませんよ!!」
喪黒は長谷川に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
長谷川「ギャアアアアアアアアア!!!」
「にも関わらず……。あなたは約束を破り、ここへ……」
長谷川「私は本当のことが知りたいんです!!なぜなら、あの墜落事故の後で、不気味な出来事が何度も起きたからです!!」
「墜落した自衛隊機のパイロットは突然、不自然な形で記憶喪失になり……」
「その上、私の友人の写真週刊誌記者は、自殺を装って何者かに殺されました!!」
「おまけに、例のスクープを掴んだ私は……。鍋島主筆に呼び出されて、直接圧力をかけられたんです!!」
「『墜落事故の報道から外れてくれ』……と」
喪黒「だったら……。これ以上、あの墜落事故に深入りするのはやめたらどうです?あなたの身の安全のために……」
長谷川「そんなわけにはいきません!!記者である以上、真実が何かを私は知りたいんです!!」
「それに、私の友人のことを思うと……。真実を知ることで、死んだ友人の無念を晴らしたいんです!!」
喪黒「長谷川さん。どうしても、墜落事故の現場へもう1度行くのですね?」
長谷川「もちろんですよ!!」
喪黒「分かりました……。そこまで言うのなら、私はあなたを止めません」
「ですが……、どのようなことになっても私は知りませんよ!!」
喪黒は長谷川に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
長谷川「ギャアアアアアアアアア!!!」
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:43:18.032 ID:DTqDnszTD
自衛隊機の墜落現場に立つ長谷川。周囲には今も自衛隊機の破片が残り、あちこちの草に焦げ跡が残る。
長谷川「俺は、再びここへ戻ってきたんだ……。ここへ来れば、何かの手がかりがつかめるはずなんだ……」
突然、辺りに閃光が走る。右手で顔を覆う長谷川。夜空に浮かぶ楕円形の光。目を丸くし、息をのむ長谷川。
光は次第に大きくなり、長谷川の方へ向かう。長谷川が目にしたものは――。
1週間後。街の人ごみの中を歩く長谷川。彼の後ろを、怪しい2人組が付きまとう。
長谷川が一人になったその時……。後ろにいる2人組が、彼を力づくで抑え込む。
長谷川「ムウッ……!!」
2人組によってクロロホルムの布を顔に当てられ、意識を失う長谷川。黒塗りの車が、眠り込む長谷川をどこかへ運ぶ。
テロップ「横田基地、在日米軍司令部――」
長谷川は、会議室のような部屋の中にいる。米軍幹部たちや自衛隊幹部たちに囲まれ、萎縮した様子となる長谷川。
長谷川「俺は、再びここへ戻ってきたんだ……。ここへ来れば、何かの手がかりがつかめるはずなんだ……」
突然、辺りに閃光が走る。右手で顔を覆う長谷川。夜空に浮かぶ楕円形の光。目を丸くし、息をのむ長谷川。
光は次第に大きくなり、長谷川の方へ向かう。長谷川が目にしたものは――。
1週間後。街の人ごみの中を歩く長谷川。彼の後ろを、怪しい2人組が付きまとう。
長谷川が一人になったその時……。後ろにいる2人組が、彼を力づくで抑え込む。
長谷川「ムウッ……!!」
2人組によってクロロホルムの布を顔に当てられ、意識を失う長谷川。黒塗りの車が、眠り込む長谷川をどこかへ運ぶ。
テロップ「横田基地、在日米軍司令部――」
長谷川は、会議室のような部屋の中にいる。米軍幹部たちや自衛隊幹部たちに囲まれ、萎縮した様子となる長谷川。
19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:46:44.428 ID:DTqDnszTD
長谷川の席の机の上には、複数の写真がある。とある1枚の写真には、大型の円盤と、墜落前の自衛隊機が写っている。
もう1枚の写真には……。円盤から光線が発射され、攻撃を受ける自衛隊機が写っている。
自衛隊幹部A「あなたは、これに見覚えがあるはずですよね?」
自衛隊幹部がさらにもう1枚、写真を机の上に置く。写真に写っているのは、灰色の肌に黒い眼をした、得体の知れぬ人型の生物だ。
長谷川「こ、こいつは……!!」
自衛隊幹部B「長谷川さん。2度目にあの墜落現場へ向かった際、あなたはあるものを目にしたはずです」
「そう……。円盤型飛行物体と、乗物から降りた謎の生命体を……」
長谷川「知ってたんですか!?てっきり、あれは幻覚だと思っていました……。私の頭がおかしくなったのかと……」
米軍幹部「幻覚デハアリマセン。アナタハ正常デス。長谷川サンハ、コノ世界ノタブーニ触レテシマッタンデスヨ」
「ロズウェル事件以来、世界各地デ起キテイル怪現象ノ一部デアリ……」
「各国ノ政府ヤ軍ガ隠シ続ケテイル、トップシークレットノ情報デモアリマス」
長谷川「じゃあ、私が目にしたものは……」
米軍幹部「ソウデス。地球外生命体ノ存在ガ知ラレテシマッタラ、世界中ノ人タチガパニックヲ起コスデショウ。デスカラ……」
もう1枚の写真には……。円盤から光線が発射され、攻撃を受ける自衛隊機が写っている。
自衛隊幹部A「あなたは、これに見覚えがあるはずですよね?」
自衛隊幹部がさらにもう1枚、写真を机の上に置く。写真に写っているのは、灰色の肌に黒い眼をした、得体の知れぬ人型の生物だ。
長谷川「こ、こいつは……!!」
自衛隊幹部B「長谷川さん。2度目にあの墜落現場へ向かった際、あなたはあるものを目にしたはずです」
「そう……。円盤型飛行物体と、乗物から降りた謎の生命体を……」
長谷川「知ってたんですか!?てっきり、あれは幻覚だと思っていました……。私の頭がおかしくなったのかと……」
米軍幹部「幻覚デハアリマセン。アナタハ正常デス。長谷川サンハ、コノ世界ノタブーニ触レテシマッタンデスヨ」
「ロズウェル事件以来、世界各地デ起キテイル怪現象ノ一部デアリ……」
「各国ノ政府ヤ軍ガ隠シ続ケテイル、トップシークレットノ情報デモアリマス」
長谷川「じゃあ、私が目にしたものは……」
米軍幹部「ソウデス。地球外生命体ノ存在ガ知ラレテシマッタラ、世界中ノ人タチガパニックヲ起コスデショウ。デスカラ……」
20: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/09/25(火) 19:49:54.484 ID:DTqDnszTD
黒塗りの車が横田基地を出る。後部座席にいる長谷川は、すっかり神妙そうな表情になっている。
長谷川のモノローグ「俺は、自衛隊幹部たちや米軍幹部たちと密約を結んだ。あの例のタブーは絶対に口外しない……と」
「あのタブーについて黙ってさえいれば、手厚い支援のもとで俺を出世させる……と彼らは言った」
「一連の真相を隠蔽した上で、墜落事故に関する書籍を俺名義で発表する……」
「その後、俺は御用ジャーナリストとして独立し、ゆくゆくは大学教授のポストに収まる……」
「それが、彼らが俺に与えた余生だ。もしもあのタブーを口外したら、当然俺は殺されるだろう……」
夕方。覇気のない虚ろな表情で、街の中を歩く長谷川。
長谷川(新聞記者としての俺は……。会社に縛られてはいたものの、まだ生き生きと活動できた……)
(しかし、これからの俺は……。巨大な権力の監視下で、仕事のやりがいも自由も全くない人生が待っている……)
(これじゃあ、透明な牢屋に入れられた囚人と変わらない……。一体何のための人生なんだ……)
道を歩く長谷川の後ろ姿を見つめる喪黒。
喪黒「世の中には様々な謎がありますが……。一方で、人間は何かしらの形で探究心を持ち合わせているものです」
「『真実を知りたい』というのは、人間にとって当たり前の欲求であり……。文明の発展はそのおかげとも言えましょう」
「しかしながら……。社会が複雑化したことに伴い、世の中や人々は何かしらの形でタブーを抱えることとなりました」
「なぜなら……。人間は一方で、『真実を知りたくない』『物事を秘密にしておきたい』という気持ちも同時に持っているからです」
「真実を知ってしまい、タブーに触れてしまった重みに……。果たして人間は耐えられるのでしょうか?ねぇ、長谷川さん」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
長谷川のモノローグ「俺は、自衛隊幹部たちや米軍幹部たちと密約を結んだ。あの例のタブーは絶対に口外しない……と」
「あのタブーについて黙ってさえいれば、手厚い支援のもとで俺を出世させる……と彼らは言った」
「一連の真相を隠蔽した上で、墜落事故に関する書籍を俺名義で発表する……」
「その後、俺は御用ジャーナリストとして独立し、ゆくゆくは大学教授のポストに収まる……」
「それが、彼らが俺に与えた余生だ。もしもあのタブーを口外したら、当然俺は殺されるだろう……」
夕方。覇気のない虚ろな表情で、街の中を歩く長谷川。
長谷川(新聞記者としての俺は……。会社に縛られてはいたものの、まだ生き生きと活動できた……)
(しかし、これからの俺は……。巨大な権力の監視下で、仕事のやりがいも自由も全くない人生が待っている……)
(これじゃあ、透明な牢屋に入れられた囚人と変わらない……。一体何のための人生なんだ……)
道を歩く長谷川の後ろ姿を見つめる喪黒。
喪黒「世の中には様々な謎がありますが……。一方で、人間は何かしらの形で探究心を持ち合わせているものです」
「『真実を知りたい』というのは、人間にとって当たり前の欲求であり……。文明の発展はそのおかげとも言えましょう」
「しかしながら……。社会が複雑化したことに伴い、世の中や人々は何かしらの形でタブーを抱えることとなりました」
「なぜなら……。人間は一方で、『真実を知りたくない』『物事を秘密にしておきたい』という気持ちも同時に持っているからです」
「真実を知ってしまい、タブーに触れてしまった重みに……。果たして人間は耐えられるのでしょうか?ねぇ、長谷川さん」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
引用元: 喪黒福造「あなたも記者ならば、一級品のスクープを手にしてみたいでしょう?」 新聞記者「そうに決まってますよ!!」