【ペルソナ5】春「美少女怪盗を名乗る前の話」
2020-08-12
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 03:22:31.54 ID:/e4K++fi0
感情から切り離した笑顔は得意だった。
「美味しいです。素材の味が生きていて、素敵ですね」
実際は単に薄味なだけだったけど、大人たちは笑っていたから自分も笑顔で合わせていた。
「奥村さんとこの娘さんはよくできていますなあ。うちのドラ息子とは大違いだ」
「父さんはいつもそう言うんだ」
ははは、と何が面白いのかわからない会話。ドラ息子は単なる謙遜であって、それが事実だとは思いもしていない親バカの言葉。
奥村春は、どんどん心が冷えていくのが自分でもわかっていた。
今時政略結婚だなんて。
くだらないと思う。だけど会社の経営のためだと言われれば仕方がなかった。
父がオクムラフーズをここまで再建するのに、どれほどの努力を、あるいは執念を燃やしていたか、自分は知っている。強引なやり方でたくさんの人が泣いてきたことも、身を以て知っている。
その犠牲の搾取としての富に浴してきた者としては、犠牲を無駄にするわけにはいかない。富は維持してこそ意味があるのだから。だから経営に必要ならば、奥村春には義務がある。
本当に、必要ですか? お父様。
「春」
「はい、お父様」
「式場の打ち合わせがある。お前は帰っていいぞ」
「でしたら僕が送りましょう」
「お前と春さんの披露宴だ、お前がいなくてどうする」
私の意思は必要ないのですね。
どうでもいいことだったから構いはしない。それよりは、この空間を早くに脱出できることの方がありがたかった。
父が、婚約者が、せせら笑った気がした。
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関連
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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 03:23:12.32 ID:/e4K++fi0
タクシーを捕まえて帰ろうと思ったけど、今日はどうも捕まらない。
本社まで行けば送ってくれる人はいるけど、電車を使うべきか迷う。
本社はすぐ近くだ。……うん、本社まで歩こう。
今日は、今は、一人に――少しでも人と接触を減らしたい。
『怪チャン』を開く。そこには奥村社長――私の父の改心を望む大衆の声が、異様なほどに届いている。
私は――そこに書き込むぐらいしか勇気が出なかった。
誰か、助けてください。
声にしていないのだから、届くわけもなかった。
書き込みは大量の怨嗟の声で埋もれていく。
「……」
本社前。
すごく寂しそうな、黄色い首輪をした黒猫が歩いていた。
頼るものが何もなさそうな、今の自分と同じような。
黒猫は本社の中に入ろうとする。
「あ、待って」
声をかけたのが、いけなかった。
黒猫は走って逃げる。
「待って――!」
ブォン、と空間が歪んだ気がした。
そして――
「…………」
「!!??」
私、さっきまで本社の前にいたはずなんだけど……
宇宙、かな、宇宙船? かな?
あ、夢かな、これ。
「リアルな夢……」
頬をつねってみた。痛い。これで覚めるわけじゃないみたい。
「アリスはウサギを追って不思議の国に迷い込んだんだっけ」
ネコを追いかけて不思議な夢に入ったなら、ネコを追いかければいいのかな?
他に当てもないから、そうするしかなかった。
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 03:23:43.46 ID:/e4K++fi0
くそ、くそ! バカ竜司め!
ワガハイ一人でも、やっていける。ギブアンドテイクが成り立たないなら取引は解消する、当然のことだ。
オクムラは改心すべきだ。パレスがあるのだから。何をビビっているんだ、あいつらは、ワガハイよりも強いくせに!!
(だからワガハイは、役立たずで……)
違う!
ワガハイから蹴ってやったんだ!
「威を示せ、ゾロ!」
くそ、ここのパレスのシャドウはかなり強い!
正面突破は無謀、ならどうする?
(ステルスで行くしかない、が……)
元々はそれがワガハイのやり方だ。
人数がいたころは、このぐらいのシャドウは平気だったのに。
(いないんだ、しっかりしろモルガナ!)
――シャドウが通り過ぎていく。ある扉の前に差し掛かった。
「仕掛け扉か?」
前に立ってみる。
『生体認証、エラー』
「生体認証……」
今自分にできることはなんだ?
強行突破? 現実的じゃない。現実で認知を変える? 現実ではネコのワガハイが、どうやって――
「排除シマス」
「がっ!?」
――不意打ち。
ロボットのくせに、くそ!
「ワガハイは、ここまで、なのか?」
――……。
「誰、だ? ……」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 03:25:36.08 ID:/e4K++fi0
どどど、どうしよう、なんかロボットにさっきのネコ? あれさっきのネコ!?が襲われてる!
「だめっ!」
理由はわからないけど、あのネコは悪いネコじゃないと思った。
悪いネコだとしても、問答無用でとどめを刺されるのを見過ごすなんて、ありえない。
いや、多分理屈じゃなかった。
助けようと思ったのは、きっと。
役立たずだからと捨てられる人を、たくさん見てきたから。
あのコは同じ目をしているから。
未来の私と、同じ目をしているから――
「違う!」
きちんとは自覚できてはいなかった。
反逆の心は自分のためであって、誰かのためではないから。
けどこの時、助けるという誰かのための行動をしていたから、
だから、覚醒は中途半端だった。
「ネコちゃん!」
ロボットを蹴り飛ばす。え?
疑問より早く、ネコ?を抱きしめ、開いた扉に潜り込む。
素早く閉まった扉は、開く様子はない。
「どうしよう……」
予想よりケガが酷そうだ。苦しそう……
と、そこでようやく違和感に気付いた。
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 03:26:48.39 ID:/e4K++fi0
「え? 私、服、何、仮面? え?」
「――誰だ!?」
ネコ?が起き上がってびっくりするほど早く間合いを取った。
「あ。えっと、私、奥村春って言います、えっと、えっと」
「……オクムラ? 奥村社長の関係者か?」
「え、はい。奥村は父です」
「父、ってお前、奥村の娘か!?」
奥村の娘。
そのフレーズは、とても嫌なものだった。
夢の中でまで嫌な思いをしたくない。
「娘です。それが何か?」
「…………」
自分で思った以上に冷淡な声が出た。取り繕うために、私は笑顔を作る。
「あ、えっと。ネコちゃんの名前は?」
「ワガハイは猫じゃねえ!」
「え、あ、ごめんなさい」
「……すまない、助けてくれたんだな。ここは、あの扉の向こうか」
「あ、ケガ、どうしよう?」
「…………ケガは大丈夫だ、心配すんな。ペルソナッ!」
幻影のようなものが出てきて、するとあっという間にケガが治っていった。
「すごい……」
「いや、お前も出せるだろ? 怪盗服になってるじゃねえか」
「かいとうふく?」
「反逆の心を持つ者が纏いし装束さ」
「ね、ねえ、かいとうって、あの怪盗? あなたは心の怪盗団なの?」
「……まあ詳しい話はあとにしようぜ。いったんここから脱出しないとな」
「あ、はい。そうですね」
「敬語じゃなくていいぞ。お前、ペルソナ使えるんだろ?」
「ぺるそな?」
聞き慣れない言葉だった。でもさっき、このコが叫んでいた気もする。
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 03:27:18.45 ID:/e4K++fi0
「さっきワガハイが使うところ見ただろう? もう一人の自分、心の力と言えばわかりやすいか」
「え、え? 私、使えるんですか?」
「怪盗服になってるんだから使えるだろ」
「どうやって!?」
「え、わからないのか? ペルソナを自覚できてないのは初めて見たな……とりあえずペルソナって叫んでみろよ」
「は、はい……ペールーソーナー!」
シーン
「…………」
「まあ、夢って思い通りにならないですよね」
「え、お前これが夢だと思って……ああそれでなんか落ち着いてるのか」
ネコ?は何か困っているようだった。けど「まあ取り乱されるよりかはいいか」と納得したのか、
「ハル、ここを出ようぜ。ワガハイは、コードネームはモナだ。本名はここを無事に出れたら教えてやるからな」
「は、はい! モナちゃん」
「ちゃんはいらねえ!」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 03:27:52.45 ID:/e4K++fi0
――――
不思議な夢だった。体が重い。なんでだろう。
(私、そうだ、本社の人に送ってもらおうと思ったんだ)
不思議なネコを追いかけたら、不思議な世界に迷い込んで――本当にアリスになった気分。
「でも楽しい夢だったな」
「いやまだ夢と思ってんのかよ。お前、大物だろ絶対」
「!?」
「ここだ、ここ。足元だ」
足元を見てみると……あの黒猫。
「え、え? しゃ、しゃべって?」
「言っとくが、夢じゃねえぞ。周りが聞いたら変に思うから、声は小さくしろよな」
トン、と器用に私の肩に黒猫は乗ってきた。
「ワガハイはモルガナ。春、お前に話さないといけないことが山ほどあるんだが、とりあえず――」
黒猫が、モルガナが、笑った。
「ありがとうな、春。お前のおかげで助かった」
私の、おかげ。
成り行きだったけれど、私が助けたいと思ったのは間違いなくて。
私の意思の結果、ありがとうと言われ――
「春?」
「な、何でもない……」
「淑女を泣かせるのはワガハイの趣味じゃないぞ。それに、泣く暇はない」
モルガナは、強い視線で問うた。
「お前は父親の改心を望むか? お前の手で、改心させられるか?」
私の、手で?
「……できるんでしょうか」
「お前がいないならまず無理だ。だけどお前がやりたくないなら、他の手を探す」
「あては、あるんですか?」
「…………」
いや、あると答えられても、きっと私はこう言うのだ。
「やります。私はお父様のために最善を尽くす」
改心した後の人たちは、みんな苦しそうだった。罪の意識に苛まれていた。
改心させるというのは、自分の父親を苦しめるのと同義。
それでも、私は。
「よろしく。モナちゃん、でいいかな?」
「あっちの世界ではモナで呼べよ。お前、名前どうする?」
「コードネーム、って言ってたよね。やっぱり、付けた方が怪盗っぽいよね!?」
「その前に春はペルソナがないからな、戦い方を覚えるのが大変だな、こりゃ」
二人で、笑った。
今はまだ鳥籠でしかない我が家だけど、
おうちに、帰ろう。この不思議な黒猫と一緒に。
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 03:32:55.39 ID:/e4K++fi0
The End or To be Continued.
モルガナがいない間をモルガナ目線で書きたかった。
ほとんど春目線になってしまった、反省していない。春ファンだから
orになっているのはモルガナがいない間っていうのがもう少し期間あるので、書くかもしれないっていうレベル
これで完結でもいいような話の作りにしているつもりです。春ちゃん先輩はギャップ萌えLOVE。
モルガナがいない間をモルガナ目線で書きたかった。
ほとんど春目線になってしまった、反省していない。春ファンだから
orになっているのはモルガナがいない間っていうのがもう少し期間あるので、書くかもしれないっていうレベル
これで完結でもいいような話の作りにしているつもりです。春ちゃん先輩はギャップ萌えLOVE。
【P5をかってに改蔵で】蓮「緊急"辞退"宣言です!」
2020-06-07
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/17(日) 09:11:46.83 ID:ppldUf+P0
ー四軒茶屋 武見診療所ー
妙「緊急事態宣言を出すのはいいけど、いつまで続くのかしらねぇ?」
三島「先の見通し立たないだけでかなり不安になっちゃいますよね」
杏「皆で集まって遊びにも行けないしつまんないよね」
三島「高巻さん友達いないんじゃ…」
杏「何か言った?」
三島「別に何も…」
バンッ!!
蓮「博士!大変です!ついに我々にも緊急の宣言が発令されてしまいました!」
妙「博士って私のこと?」
蓮「こちら側であのポジションを探した結果こうなりました」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1589674306
妙「緊急事態宣言を出すのはいいけど、いつまで続くのかしらねぇ?」
三島「先の見通し立たないだけでかなり不安になっちゃいますよね」
杏「皆で集まって遊びにも行けないしつまんないよね」
三島「高巻さん友達いないんじゃ…」
杏「何か言った?」
三島「別に何も…」
バンッ!!
蓮「博士!大変です!ついに我々にも緊急の宣言が発令されてしまいました!」
妙「博士って私のこと?」
蓮「こちら側であのポジションを探した結果こうなりました」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1589674306
関連
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【悲報】Twitterで3年前に「令和」を予言してたものがいたwwwwwwwww
2: 1 2020/05/17(日) 09:16:38.70 ID:ppldUf+P0
妙「ポジションで言うならアレを杏ちゃんがやるってミスキャストじゃない?」
杏「仕方ないですよ部長。私ヒロインだから」
三島「自分で言うんだ…というか部長って…」
蓮「…本当は黒髪ロング繋がりの一二三でやるつもりだったけど一二三は喋りが敬語がなのでやむなくのキャスティングです」
杏「やむなくって何よ!?」
杏「仕方ないですよ部長。私ヒロインだから」
三島「自分で言うんだ…というか部長って…」
蓮「…本当は黒髪ロング繋がりの一二三でやるつもりだったけど一二三は喋りが敬語がなのでやむなくのキャスティングです」
杏「やむなくって何よ!?」
3: 1 2020/05/17(日) 09:20:39.79 ID:ppldUf+P0
三島「同じ黒髪なら鈴井さんじゃダメだったの?」
蓮「志帆はほら、キャラ的にね…。猟奇的な志帆も見てみたかったけど猟奇的なまでに人気の無い杏ならキャラ変しても許されるだろうという結論に」
杏「誰が不人気よ!?」
妙「そろそろ先に進めてくれない?」
蓮「志帆はほら、キャラ的にね…。猟奇的な志帆も見てみたかったけど猟奇的なまでに人気の無い杏ならキャラ変しても許されるだろうという結論に」
杏「誰が不人気よ!?」
妙「そろそろ先に進めてくれない?」
4: 1 2020/05/17(日) 09:23:41.76 ID:ppldUf+P0
杏「ムカつくわ……で、何が発令されたって?」
蓮「そうでした!我々に【 緊 急"辞退"宣 言 】が発令されてしまったのです!」
杏「あーなるほど…そう来るかぁ」
三島「辞退って…」
蓮「そうでした!我々に【 緊 急"辞退"宣 言 】が発令されてしまったのです!」
杏「あーなるほど…そう来るかぁ」
三島「辞退って…」
5: 1 2020/05/17(日) 09:29:14.73 ID:ppldUf+P0
妙「よくわからないけどそれが今回のテーマなのね?」
蓮「はい!我々に課されたこの"緊急辞退宣言"なるテーマ。これを久米田節に乗せ、かつ我々の世界観でというのは難しいかもしれません…」
蓮「ですが今回このタイトルとテーマを同時に思い付いたのだから仕方ありません。それぞれ与えられた配役をこなして上手く話を転がさねばならんのです!」
杏「見切り発車感すごいけどちゃんとやれるわけ?」
三島「思い付きだけの勢いで上手くやれるのかなぁ…?」
蓮「黙れ下っぱ!」ぴしっぴしっ
三島「ええっ?!下っぱって何だよ!?」
蓮「はい!我々に課されたこの"緊急辞退宣言"なるテーマ。これを久米田節に乗せ、かつ我々の世界観でというのは難しいかもしれません…」
蓮「ですが今回このタイトルとテーマを同時に思い付いたのだから仕方ありません。それぞれ与えられた配役をこなして上手く話を転がさねばならんのです!」
杏「見切り発車感すごいけどちゃんとやれるわけ?」
三島「思い付きだけの勢いで上手くやれるのかなぁ…?」
蓮「黙れ下っぱ!」ぴしっぴしっ
三島「ええっ?!下っぱって何だよ!?」
6: 1 2020/05/17(日) 09:33:56.49 ID:ppldUf+P0
蓮「あの作品に順ずる配役を検討した結果、最も下っぱに相応しい"下っぱ・オブ・ペルソナ5"に選ばれたのはお前だ。無個性ザコ陰キャを卒業出来るぞおめでとう」パチパチ
妙「おめでとう」パチパチ
杏「おめでとう」パチパチ
三島「全然嬉しくないよ!?」ぶんぶん
妙「おめでとう」パチパチ
杏「おめでとう」パチパチ
三島「全然嬉しくないよ!?」ぶんぶん
7: 1 2020/05/17(日) 09:39:52.44 ID:ppldUf+P0
妙「それでモルモットくん?緊急辞退宣言って何なの?」
蓮「博士、ここは"蓮くん"でお願いします」
杏「それこだわるとこ?」
三島「一応あちらの流れを追いたいんじゃないかな?僕も気をつけないとなじられそう…」
蓮「博士、ここは"蓮くん"でお願いします」
杏「それこだわるとこ?」
三島「一応あちらの流れを追いたいんじゃないかな?僕も気をつけないとなじられそう…」
8: 1 2020/05/17(日) 09:48:04.05 ID:ppldUf+P0
蓮「とにかく!21世紀最初の世界的な有事を乗り切るためにも、我々に課された緊急辞退宣言を体良く退けねばならんのです!」
杏「辞退辞退って言うけど具体的にどうしろってのよ?」
三島「そうだよ。僕らが辞退しなきゃならない事なんて何もないじゃないか」
蓮「お前は出会い厨を辞退しろ」
三島「なぜ知ってる!?」きょーっ
杏「うわぁキモっ」
杏「辞退辞退って言うけど具体的にどうしろってのよ?」
三島「そうだよ。僕らが辞退しなきゃならない事なんて何もないじゃないか」
蓮「お前は出会い厨を辞退しろ」
三島「なぜ知ってる!?」きょーっ
杏「うわぁキモっ」
9: 1 2020/05/17(日) 09:54:00.87 ID:ppldUf+P0
蓮「人をダシに出会い厨かまそうとする下っぱは置いといて。皆さんも辞退せねばならん事、多々あるのでは?」
杏「私は別にないし」
妙「私も無いわねぇ」
三島「僕だってないよ」しれっ
蓮「つまり皆さん、身に覚えなどないと?」
杏「そうよ」
杏「私は別にないし」
妙「私も無いわねぇ」
三島「僕だってないよ」しれっ
蓮「つまり皆さん、身に覚えなどないと?」
杏「そうよ」
10: 1 2020/05/17(日) 09:57:47.08 ID:ppldUf+P0
蓮「ここにある動画を用意しました」すっ
三島「何か嫌な予感が…」
杏「出会い厨のアンタはともかく私は何もないし」
妙「杏ちゃん自分でフラグ立てるのね」
蓮「まずはこちらをご覧ください」ぽちっ
三島「何か嫌な予感が…」
杏「出会い厨のアンタはともかく私は何もないし」
妙「杏ちゃん自分でフラグ立てるのね」
蓮「まずはこちらをご覧ください」ぽちっ
11: 1 2020/05/17(日) 10:03:23.70 ID:ppldUf+P0
動画「好き!好き好き大好き!」
杏「!?」
蓮「本編中唯一の見せ場とまで言われた杏との告白シーンです」
杏「唯一じゃないから!いっぱいあるから!」
三島「え…そこ?」
杏「!?」
蓮「本編中唯一の見せ場とまで言われた杏との告白シーンです」
杏「唯一じゃないから!いっぱいあるから!」
三島「え…そこ?」
12: 1 2020/05/17(日) 10:06:51.69 ID:ppldUf+P0
蓮「数々のプレイヤーが杏の名シーンを挙げろと言われた際には高確率でこのシーンをあげます」
動画「好き好き!大好き!大、大、大好き!」
杏「やめてえぇぇぇーーー!!!!」
三島「杏ちゃんメインメンバーなのにこのイジリ…」
妙「他に良いとこなかったのねぇ」しれっ
動画「好き好き!大好き!大、大、大好き!」
杏「やめてえぇぇぇーーー!!!!」
三島「杏ちゃんメインメンバーなのにこのイジリ…」
妙「他に良いとこなかったのねぇ」しれっ
13: 1 2020/05/17(日) 10:15:02.67 ID:ppldUf+P0
蓮「ちなみにこのシーン以外を挙げろと言うと大半のプレイヤーが押し黙ります」
杏「なんだと!?取り消せ!」くわっ
三島「そうだよそんな事ないでしょ!?鈴井さんとのシーンとかすっごい良かったじゃないか!」
蓮「そう、確かに下っぱの言う通り志帆・杏の絡みには良いシーンが多い……ですが!」
妙「ようやく流れと雰囲気があのまんがぽくなって来たねぇ」
杏「なんだと!?取り消せ!」くわっ
三島「そうだよそんな事ないでしょ!?鈴井さんとのシーンとかすっごい良かったじゃないか!」
蓮「そう、確かに下っぱの言う通り志帆・杏の絡みには良いシーンが多い……ですが!」
妙「ようやく流れと雰囲気があのまんがぽくなって来たねぇ」
14: 1 2020/05/17(日) 10:24:16.36 ID:ppldUf+P0
蓮「ですが志帆とのシーンを思い返して下さい。数々の志帆・杏のシーンでプレイヤーが注目していたのは志帆と杏のどちらでしたか?」
三島「そ、それは…」
蓮「そう!志帆・杏のシーンを思い出せば思い出すほど各シーンの主役は志帆であり、杏は添え物でしかないのです!」
杏「ぶっ殺してやるぅー!!!」
三島「やめなよ杏ちゃん落ち着いて!」がしっ
妙「酷い言われ様ねぇ」
三島「そ、それは…」
蓮「そう!志帆・杏のシーンを思い出せば思い出すほど各シーンの主役は志帆であり、杏は添え物でしかないのです!」
杏「ぶっ殺してやるぅー!!!」
三島「やめなよ杏ちゃん落ち着いて!」がしっ
妙「酷い言われ様ねぇ」
15: 1 2020/05/17(日) 10:28:12.72 ID:ppldUf+P0
蓮「志帆なら杏と入れ替えても違和感なく立ち回れるし、むしろ本編の"反逆"というテーマからしてペルソナ覚醒してもおかしくない。よって、杏の辞退1つで我々はまだまだ売れるに違いないのです!」
杏「きいぃぃぃぃぃぃーーー!!!!」
三島「蓮くん言い過ぎだって!もうやめたげてよぉ!」
妙「三島くんもすっかりあのキャラになりきれてるわね」
杏「きいぃぃぃぃぃぃーーー!!!!」
三島「蓮くん言い過ぎだって!もうやめたげてよぉ!」
妙「三島くんもすっかりあのキャラになりきれてるわね」
16: 1 2020/05/17(日) 10:30:56.81 ID:ppldUf+P0
蓮「このように我々は辞退を上手く利用してこの事態を退けねばならんのです!」
杏「私を例にするな!」
三島「ほんとにただの例にされちゃったね…」
妙「災難ねぇ。でも久米田節をやるならこの流れで正解よね」
杏「私を例にするな!」
三島「ほんとにただの例にされちゃったね…」
妙「災難ねぇ。でも久米田節をやるならこの流れで正解よね」
17: 1 2020/05/17(日) 10:38:07.43 ID:ppldUf+P0
蓮「あぁ!数々の緊急事態を退けた辞退者たちよ!」
・木村くんのおかげで辞退
・おクスリで女優生命を辞退
・おクスリで歌手生命を辞退
・恫喝でママタレ生命を辞退
・古巣を売って闇営業を辞退
・2枚のマスクでお怒りを辞退
・相方の公開説教で失言を辞退
・中国マネーで世界の安全を辞退
・木村くんのおかげで辞退
・おクスリで女優生命を辞退
・おクスリで歌手生命を辞退
・恫喝でママタレ生命を辞退
・古巣を売って闇営業を辞退
・2枚のマスクでお怒りを辞退
・相方の公開説教で失言を辞退
・中国マネーで世界の安全を辞退
18: 1 2020/05/17(日) 10:48:40.73 ID:ppldUf+P0
妙「あの人は確実に歴史に名が残るわよね」
杏「中国の犬ですね」
三島「あれはなぁ…」
蓮「さて、ここにいてもオチは見えません。腕の確かな先人たちに辞退の教えを請いに行きましょう!」だっ
杏「中国の犬ですね」
三島「あれはなぁ…」
蓮「さて、ここにいてもオチは見えません。腕の確かな先人たちに辞退の教えを請いに行きましょう!」だっ
19: 1 2020/05/17(日) 10:50:43.03 ID:ppldUf+P0
ー新宿ー
蓮「新宿に来ました」
杏「あんまり人いないね」
三島「出禁命令出てるもんね」
蓮「何を言う!お前たちには見えないのか?往来を闊歩するあのお方が!」
杏「誰もいないじゃない」
蓮「新宿に来ました」
杏「あんまり人いないね」
三島「出禁命令出てるもんね」
蓮「何を言う!お前たちには見えないのか?往来を闊歩するあのお方が!」
杏「誰もいないじゃない」
20: 1 2020/05/17(日) 10:54:11.94 ID:ppldUf+P0
蓮「バカやろぉ!そんな事言ったらあのお方に辞退させられるぞ!?」
三島「さっきから何言っ…」
??「おい」ぬっ
三島「ひぃ!?」
三島「さっきから何言っ…」
??「おい」ぬっ
三島「ひぃ!?」
21: 1 2020/05/17(日) 10:56:47.07 ID:ppldUf+P0
蓮「き、来た…来てしまわれた!おぉ…何と奥ゆかしく退かしいお姿!」
??「ふむ。貴様は私を知っているようだな。結構結構」
蓮「もちろんでございます!」
杏「ねぇ、誰?このおじさん」
??「ふむ。貴様は私を知っているようだな。結構結構」
蓮「もちろんでございます!」
杏「ねぇ、誰?このおじさん」
22: 1 2020/05/17(日) 11:00:35.20 ID:ppldUf+P0
蓮「ばかやろー!こちらにおわすお方をどなたと心得る!?かの大老、"辞伊退助"様であらせられるぞ!」
退助「ふふふ。小僧、よい退きじゃ」
蓮「はっ!ありがたき退き!」
三島「変なの出てきた…」
退助「ふふふ。小僧、よい退きじゃ」
蓮「はっ!ありがたき退き!」
三島「変なの出てきた…」
23: 1 2020/05/17(日) 11:04:13.95 ID:ppldUf+P0
蓮「退助様の"ハブれた門外の辺"、とても見事な退きにございました!」
退助「あれを知っているとはな。なかなか見所のある小僧ではないか。気分が良いわ!好きに退けぃ!」
蓮「ははーっ!」
杏「ねぇ、その何とかの辺って何なの?」
蓮「ぷっ……やれやれですね退助様?」
退助「ぷっ……やれやれよのう小僧?」
杏「なんかムカつく…」
三島「まあまあ…」
退助「あれを知っているとはな。なかなか見所のある小僧ではないか。気分が良いわ!好きに退けぃ!」
蓮「ははーっ!」
杏「ねぇ、その何とかの辺って何なの?」
蓮「ぷっ……やれやれですね退助様?」
退助「ぷっ……やれやれよのう小僧?」
杏「なんかムカつく…」
三島「まあまあ…」
24: 1 2020/05/17(日) 11:09:10.01 ID:ppldUf+P0
蓮「無知な杏に教えてやろう。時は江戸末期。辞退で事態を洗う退き志士が暗躍しようとしていた時代……」
杏「いきなり嘘から始まんの…?」
三島「退き志士ってなに…」
妙「随分ダイナミックな話ねぇ」
退助「………」じーっ
杏「いきなり嘘から始まんの…?」
三島「退き志士ってなに…」
妙「随分ダイナミックな話ねぇ」
退助「………」じーっ
25: 1 2020/05/17(日) 11:12:58.10 ID:ppldUf+P0
蓮「実家のねりけし屋を追い出され、海を渡って浦賀へ退いて来たペリーの『シリゾカセテクダサーイ』の一言が日本中に混乱を振り撒いた頃……」
杏「もうわけわからん」げそっ
三島「何が何だか…」げそっ
退助「前髪内巻きの君、私とベッドに退かない?」ほれっ
妙「あらあらイヤですわ大老ともあろうお方が城下の町娘などに」
杏「もうわけわからん」げそっ
三島「何が何だか…」げそっ
退助「前髪内巻きの君、私とベッドに退かない?」ほれっ
妙「あらあらイヤですわ大老ともあろうお方が城下の町娘などに」
26: 1 2020/05/17(日) 11:17:17.95 ID:ppldUf+P0
蓮「そんなペリーを哀れんだ時の将軍、徳川良し悪しは彼を城へ招き大層手厚くもてなしたそうです。問題の事件はその帰りに起きました……」
杏「長い…」
三島「まだ続くのかなぁ…」
退助「3万で私と退かない?」
妙「イヤですわ大老ともあろうお方がそんな小銭しかないだなんて」
杏「長い…」
三島「まだ続くのかなぁ…」
退助「3万で私と退かない?」
妙「イヤですわ大老ともあろうお方がそんな小銭しかないだなんて」
27: 1 2020/05/17(日) 11:19:41.67 ID:ppldUf+P0
蓮「『せっかくだから皆で写真でもどう?』と退助様は提案なされ、すぐさま桜田門の辺りで集合写真を撮る事になったのですが……」
杏「濡れカツサンドが美味しいのよ」
三島「ヨンジェルマンのだよね?何で雨の日しか買えないんだろうね」
退助「お妙ちゃんこれほんとに体に良いの?買うけどさぁ」
妙「もちろんよ。これは水素水と言って」
杏「濡れカツサンドが美味しいのよ」
三島「ヨンジェルマンのだよね?何で雨の日しか買えないんだろうね」
退助「お妙ちゃんこれほんとに体に良いの?買うけどさぁ」
妙「もちろんよ。これは水素水と言って」
28: 1 2020/05/17(日) 11:24:11.84 ID:ppldUf+P0
蓮「撮影後すぐに日本からも退かされたペリーは実家へとんぼ返り。悲しい事に彼は出来上がった写真をその目にする事なく、溜まりに溜まったねりけしを苦にこの世を去りました……」
杏「何かアンタって異世界転生したがってそう」
三島「誰だって行きたいよね!?異世界の僕が本体だから!あっちが僕の本気だから!」
退助「ねぇお妙ちゃんまだホテルに退かないの?もう生命保険ぐらいしかないよ?」かきかき
妙「あ、そこ受取人の名前書き間違えないようにしてね」
杏「何かアンタって異世界転生したがってそう」
三島「誰だって行きたいよね!?異世界の僕が本体だから!あっちが僕の本気だから!」
退助「ねぇお妙ちゃんまだホテルに退かないの?もう生命保険ぐらいしかないよ?」かきかき
妙「あ、そこ受取人の名前書き間違えないようにしてね」
29: 1 2020/05/17(日) 11:31:20.24 ID:ppldUf+P0
蓮「その集合写真を見ると、事もあろうに退助様の姿はなく『お前どこにいたの?』となじられた際に『門外らへんに…』とイジられるようになった悲しき大事件!それが"ハブられ門外の辺"なのです!」
杏「あ、やっと終わった?」
三島「長かったね」
退助「お、お妙ちゃん…?さっき買った薬…ほんとに精力剤、なの…かな……?」ぜーぜー
妙「もちろんよ。あの薬で天国行き間違いなし」
杏「あ、やっと終わった?」
三島「長かったね」
退助「お、お妙ちゃん…?さっき買った薬…ほんとに精力剤、なの…かな……?」ぜーぜー
妙「もちろんよ。あの薬で天国行き間違いなし」
30: 1 2020/05/17(日) 11:36:27.24 ID:ppldUf+P0
蓮「将軍ばかりか同僚に部下、果ては小市民たちにまで"ハブられ大老"などとなじられながらも『私は自ら退いたのだ!』と強気に邁進されるその勇ましき辞退に感動を禁じ得ません!」
退助「あーうあーうーあー」もそもそ
三島「何かゾンビみたくなってる!?ひいっ!こっち来るなぁ!」
妙「要するに修学旅行とかを欠席して右端とかに顔写真だけ置かれてるみたいな事ね?」
蓮「いいえ、顔写真すら無しのただの"非写体"です」
杏「非写体って何それ…」
退助「あーうあーうーあー」もそもそ
三島「何かゾンビみたくなってる!?ひいっ!こっち来るなぁ!」
妙「要するに修学旅行とかを欠席して右端とかに顔写真だけ置かれてるみたいな事ね?」
蓮「いいえ、顔写真すら無しのただの"非写体"です」
杏「非写体って何それ…」
31: 1 2020/05/17(日) 11:41:44.50 ID:ppldUf+P0
退助「貴様、辞退せんのか?」
三島「えっ!?辞退って何を…?」
蓮「いかん!何らかのおクスリで辞退ゾンビと化した退助様が仲間を求めている!早く答えろ下っぱ!大変な事になるぞ!?」
三島「蓮くんまで何言っ」
三島「えっ!?辞退って何を…?」
蓮「いかん!何らかのおクスリで辞退ゾンビと化した退助様が仲間を求めている!早く答えろ下っぱ!大変な事になるぞ!?」
三島「蓮くんまで何言っ」
32: 1 2020/05/17(日) 11:45:27.59 ID:ppldUf+P0
退助「貴様!辞退せんのか!?せんのか!?」ぐわんば
三島「だから何をだよぉ!?」
退助「辞退させてやる!来いっ!」ぐいっ
三島「助けてぇぇぇーーー!!」
蓮「面白そうなので行きましょう」
妙「そうね」
杏「あんたらねぇ…」
三島「だから何をだよぉ!?」
退助「辞退させてやる!来いっ!」ぐいっ
三島「助けてぇぇぇーーー!!」
蓮「面白そうなので行きましょう」
妙「そうね」
杏「あんたらねぇ…」
33: 1 2020/05/17(日) 11:48:20.30 ID:ppldUf+P0
ーにゅうカマーー
ララ「あらぁ退ちゃんいらっしゃい」
退助「ララちゃんにお土産連れて来たよ」
三島「離せっ!離せっ!」きょーっ
杏「大老ここの常連なんだ…」げそっ
妙「お馴染んでるわねぇ」
ララ「あらぁ退ちゃんいらっしゃい」
退助「ララちゃんにお土産連れて来たよ」
三島「離せっ!離せっ!」きょーっ
杏「大老ここの常連なんだ…」げそっ
妙「お馴染んでるわねぇ」
34: 1 2020/05/17(日) 11:51:05.96 ID:ppldUf+P0
退助「聞いてよララちゃーん。こいつ童貞なんだよ」
ララ「あら。そうなのボウヤ?食べちゃおうかしら」
三島「違う!俺は非童貞だ断じて童貞などではない!近寄るなバケモノ!」
退助「じゃあお前チューとかした事あんのかよぉー?」
三島「チューなどいくらでもあるわ!」
ララ「あら。そうなのボウヤ?食べちゃおうかしら」
三島「違う!俺は非童貞だ断じて童貞などではない!近寄るなバケモノ!」
退助「じゃあお前チューとかした事あんのかよぉー?」
三島「チューなどいくらでもあるわ!」
35: 1 2020/05/17(日) 11:56:06.56 ID:ppldUf+P0
退助「じゃ証拠見してみろよぉー?キース!キース!キース!キース!」ぱんぱんぱん
三島「やってやるわー!来いっバケモノ!ちゅちゅるちゅる」んべろんべろ
ララ「ちゅるるちゅちゅるちゅ」んべろんべろ
杏「きっつぅ……おえっ」
蓮「さすがは退助様だぁ…ご自身も童貞であるにも関わらず下っぱを盾に上手くこの場を退かれた!」
妙「退けた事になってるんだ?」
三島「やってやるわー!来いっバケモノ!ちゅちゅるちゅる」んべろんべろ
ララ「ちゅるるちゅちゅるちゅ」んべろんべろ
杏「きっつぅ……おえっ」
蓮「さすがは退助様だぁ…ご自身も童貞であるにも関わらず下っぱを盾に上手くこの場を退かれた!」
妙「退けた事になってるんだ?」
36: 1 2020/05/17(日) 12:02:37.95 ID:ppldUf+P0
三島「ぷはっ!マズい。もっと美味そうな……ヘーイ妙ちゅわーん。こんな非辞退者たちはほっといて俺とホテルに退かない?妙ちゃんで童貞辞退したいなぁ!」
妙「……いいわよ。じゃあまずはこの童貞辞退契約書にサインを」
三島「いくらでもするよぉ~」かきかきっ
蓮「いやぁどうにかオチそうですね」
杏「それ言っちゃう?」
妙「……いいわよ。じゃあまずはこの童貞辞退契約書にサインを」
三島「いくらでもするよぉ~」かきかきっ
蓮「いやぁどうにかオチそうですね」
杏「それ言っちゃう?」
37: 1 2020/05/17(日) 12:06:03.43 ID:ppldUf+P0
~数十年後~
ーにゅうカマーー
三島「それでこの業界に売り飛ばされたってわけ。ほんと、バカだったと思うわ…でもね、こんなバカなアタシだからこそわかる事もあるのよ」
三島「いくら嘆いても悔やんでもね、アタシ達はこの世界に生きてるの。この世界でこそ生きられるの」
三島「だから今を楽しみなさいな。止まない雨はない、明けない夜はない。じっと耐えれば晴れた明日がアタシたちを待ってるわ…」さーっ
杏「なんだこれ…」げそっ
ーにゅうカマーー
三島「それでこの業界に売り飛ばされたってわけ。ほんと、バカだったと思うわ…でもね、こんなバカなアタシだからこそわかる事もあるのよ」
三島「いくら嘆いても悔やんでもね、アタシ達はこの世界に生きてるの。この世界でこそ生きられるの」
三島「だから今を楽しみなさいな。止まない雨はない、明けない夜はない。じっと耐えれば晴れた明日がアタシたちを待ってるわ…」さーっ
杏「なんだこれ…」げそっ
38: 1 2020/05/17(日) 12:09:46.72 ID:ppldUf+P0
蓮「バレンタインアニメでツンツンお姉さんキャラを辞退してデレお姉さんと化したとこ大評判でしたね」
妙「人生辞退のお注射する?」すっ
オチてない気もしますが改蔵感あるの書けた気になれたのでこのSSを辞退します
おわり
妙「人生辞退のお注射する?」すっ
オチてない気もしますが改蔵感あるの書けた気になれたのでこのSSを辞退します
おわり
39: 1 2020/05/17(日) 12:13:08.59 ID:ppldUf+P0
叔父さんの影響で前から好きだったけど自粛引きこもりで読み返したらまた好きになったんでやりました
P5要素薄い気がするけど後悔はない
あと過去にもペルソナ5x俺ガイルとかペルソナ5x嫌パンとか色々書いてます
良かったらそっちも見てくださいね
P5要素薄い気がするけど後悔はない
あと過去にもペルソナ5x俺ガイルとかペルソナ5x嫌パンとか色々書いてます
良かったらそっちも見てくださいね
引用元: ・【P5をかってに改蔵で】蓮「緊急"辞退"宣言です!」
美鶴「女子会?」アイギス「女子会です」
2019-09-17
1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 22:14:57 ID:ajTA/fNo
ゆかりの部屋
アイギス「皆さん、おかしの用意はよろしいですか?」
ゆかり「オッケー」
風花「飲み物はこれで足りるかな?」
美鶴「足りなくなったら自販機で買い足せばいいさ」
アイギス「それではこれより女子会を始めます」
ゆかり「いえーい!」
アイギス「皆さん、おかしの用意はよろしいですか?」
ゆかり「オッケー」
風花「飲み物はこれで足りるかな?」
美鶴「足りなくなったら自販機で買い足せばいいさ」
アイギス「それではこれより女子会を始めます」
ゆかり「いえーい!」
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3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 22:25:35 ID:ajTA/fNo
アイギス「かんぱーい!」
みんな「「「かんぱーい!」」」
ゆかり「んぐ・・・んぐ・・・ぷはぁ!」
風花「いい飲みっぷりだね」
美鶴「女子会なんて初めてだ・・・。緊張するな」
アイギス「噂によるとだべって盛り上がればいいみたいです」
ゆかり「まぁー、適当にやりましょ」
みんな「「「かんぱーい!」」」
ゆかり「んぐ・・・んぐ・・・ぷはぁ!」
風花「いい飲みっぷりだね」
美鶴「女子会なんて初めてだ・・・。緊張するな」
アイギス「噂によるとだべって盛り上がればいいみたいです」
ゆかり「まぁー、適当にやりましょ」
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 22:35:06 ID:ajTA/fNo
風花「ポテチどうぞー」
ゆかり「やった!のり塩」
アイギス「のり塩が好きなんですか?」
ゆかり「うん。歯にのりが付いちゃうのが難点だけどねー」
風花「のり塩も好きだけど私はうす塩のほうがいいかな」
ゆかり「アイギスは?」
アイギス「私はコンソメですね。くせになる味です」
風花「先輩はどうですか?」
美鶴「え?・・・すまない、ポテトチップスというのを食べたことがなくて・・・」
ゆかり「・・・」
風花「・・・」
アイギス「・・・」
美鶴「あれ?」
ゆかり「やった!のり塩」
アイギス「のり塩が好きなんですか?」
ゆかり「うん。歯にのりが付いちゃうのが難点だけどねー」
風花「のり塩も好きだけど私はうす塩のほうがいいかな」
ゆかり「アイギスは?」
アイギス「私はコンソメですね。くせになる味です」
風花「先輩はどうですか?」
美鶴「え?・・・すまない、ポテトチップスというのを食べたことがなくて・・・」
ゆかり「・・・」
風花「・・・」
アイギス「・・・」
美鶴「あれ?」
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 22:39:43 ID:ajTA/fNo
ゆかり「ふーん、へー・・・まあお金持ちの美鶴先輩には分からないかもですね」
美鶴「・・・」
風花「・・・」
アイギス「・・・さ、飲みましょう」
風花「・・・うん」
美鶴「あ、ああ、そうだな・・・」
ゆかり「・・・」グビッ
美鶴「・・・」
風花「・・・」
アイギス「・・・さ、飲みましょう」
風花「・・・うん」
美鶴「あ、ああ、そうだな・・・」
ゆかり「・・・」グビッ
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 22:46:00 ID:ajTA/fNo
風花「お鍋も煮えてきたね」
美鶴「寄せ鍋か。おいしそうだ」
アイギス「あっ、よそいますね。ゆかりさん、何がいいですか?」
ゆかり「私お肉多めで!」
アイギス「はい・・・はいどうぞ。風花さんは?」
風花「私はお豆腐を・・・」
アイギス「了解・・・はいどうぞ」
風花「ありがとう」
アイギス「いただきまーす」
美鶴「・・・」
美鶴「・・・あれ?」
美鶴「寄せ鍋か。おいしそうだ」
アイギス「あっ、よそいますね。ゆかりさん、何がいいですか?」
ゆかり「私お肉多めで!」
アイギス「はい・・・はいどうぞ。風花さんは?」
風花「私はお豆腐を・・・」
アイギス「了解・・・はいどうぞ」
風花「ありがとう」
アイギス「いただきまーす」
美鶴「・・・」
美鶴「・・・あれ?」
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 22:49:14 ID:ajTA/fNo
美鶴「ア、アイギス・・・私のは?」
アイギス「・・・ああ、忘れてました。はい」ドンッ ガシャッ
美鶴「・・・ありがとう」
風花「・・・」
ゆかり「さ、飲も飲も。コーラ温くなっちゃうよ」
アイギス「・・・ああ、忘れてました。はい」ドンッ ガシャッ
美鶴「・・・ありがとう」
風花「・・・」
ゆかり「さ、飲も飲も。コーラ温くなっちゃうよ」
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 22:56:55 ID:ajTA/fNo
ゆかり「んぐ・・・んぐ・・・ぷっはぁ!」
アイギス「飲みますねぇ」
風花「ねー」
ゆかり「風花、今日の服可愛いね」
風花「本当?先週買ったばっかりなの」
アイギス「ゆかりさんの服も可愛いですね」
ゆかり「ありがとー。アイギスの髪留めも新しいやつだね」
美鶴「あ、私も今日の服・・・」
風花「・・・」
美鶴「新しいやつ・・・なん・・だ・・」
アイギス「・・・」
ゆかり「・・・へぇ」
美鶴「・・・」
アイギス「飲みますねぇ」
風花「ねー」
ゆかり「風花、今日の服可愛いね」
風花「本当?先週買ったばっかりなの」
アイギス「ゆかりさんの服も可愛いですね」
ゆかり「ありがとー。アイギスの髪留めも新しいやつだね」
美鶴「あ、私も今日の服・・・」
風花「・・・」
美鶴「新しいやつ・・・なん・・だ・・」
アイギス「・・・」
ゆかり「・・・へぇ」
美鶴「・・・」
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:03:01 ID:ajTA/fNo
美鶴「あ、あの・・・」
アイギス「なんです?」
美鶴「さっきから皆、私にだけキツくないか・・・?」
ゆかり「そりゃあそうですよ」
風花「私たち、先輩に恨みがありますからね」
美鶴「う、恨み・・・。すまない、身に覚えが・・・」
アイギス「分かりませんか?」
美鶴「ああ・・・」
風花「じゃあ教えてあげますよ・・・」
ゆかり「それはね・・・」
美鶴「・・・ゴクリ」
ゆかり「私たちからキタロー君を奪ったことですよーー!!!」
アイギス「なんです?」
美鶴「さっきから皆、私にだけキツくないか・・・?」
ゆかり「そりゃあそうですよ」
風花「私たち、先輩に恨みがありますからね」
美鶴「う、恨み・・・。すまない、身に覚えが・・・」
アイギス「分かりませんか?」
美鶴「ああ・・・」
風花「じゃあ教えてあげますよ・・・」
ゆかり「それはね・・・」
美鶴「・・・ゴクリ」
ゆかり「私たちからキタロー君を奪ったことですよーー!!!」
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:05:38 ID:ajTA/fNo
美鶴「あぇ?」
風花「知らないうちに付き合いだしちゃって!!」
アイギス「ずるいです!この破廉恥女!」
美鶴「なんだそんなことか」ホッ
ゆかり「そんなこととはなんだー!」
風花「抜け駆け反対!」
アイギス「はんたーい!」
風花「知らないうちに付き合いだしちゃって!!」
アイギス「ずるいです!この破廉恥女!」
美鶴「なんだそんなことか」ホッ
ゆかり「そんなこととはなんだー!」
風花「抜け駆け反対!」
アイギス「はんたーい!」
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:09:58 ID:ajTA/fNo
ゆかり「まあそれだけです。ごめんなさい」
風花「ちょっとイジワルが過ぎちゃいました」
美鶴「まったく・・・皆から嫌われたかと思ったぞ」
アイギス「あ、ちょっと涙目」
ゆかり&風花「「可愛い~!!」」
美鶴「かっ、からかうなッ!!///」
風花「ちょっとイジワルが過ぎちゃいました」
美鶴「まったく・・・皆から嫌われたかと思ったぞ」
アイギス「あ、ちょっと涙目」
ゆかり&風花「「可愛い~!!」」
美鶴「かっ、からかうなッ!!///」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:15:39 ID:ajTA/fNo
アイギス「それじゃあ飲み直しです」
皆「「「かんぱーい!!!」」」
美鶴「ぷっはぁ!」
風花「よっ、いい飲みっぷり!」
ゆかり「ヤケ飲みっぽいけどね」
アイギス「ぐびぐび」
皆「「「かんぱーい!!!」」」
美鶴「ぷっはぁ!」
風花「よっ、いい飲みっぷり!」
ゆかり「ヤケ飲みっぽいけどね」
アイギス「ぐびぐび」
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:20:23 ID:ajTA/fNo
ゆかり「で、彼との関係はどうなんですかぁ~?」
風花「どこまで進みました?」ドキドキワクワク
美鶴「どこまでって・・・それは・・・///」
アイギス「工ッチなことしました?」
美鶴「エ、工ッチな!?///」
ゆかり「ちょっ///」
風花「アイギス直球すぎるよ!///」
風花「どこまで進みました?」ドキドキワクワク
美鶴「どこまでって・・・それは・・・///」
アイギス「工ッチなことしました?」
美鶴「エ、工ッチな!?///」
ゆかり「ちょっ///」
風花「アイギス直球すぎるよ!///」
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:22:32 ID:ajTA/fNo
アイギス「どうせしたんでしょう?工口いこと」
ゆかり「ど、どうなんですか・・・?」
美鶴「え、ま、まあな・・・///」
風花「きゃーん///」
アイギス「けっ!」
ゆかり「ど、どうなんですか・・・?」
美鶴「え、ま、まあな・・・///」
風花「きゃーん///」
アイギス「けっ!」
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:29:01 ID:ajTA/fNo
美鶴「そ、そんなことはいいから!」
アイギス「グビッ・・・グビッ・・・ぶはぁ!!」
風花「ひ、控えめにね?」
アイギス「コーラだから問題ないですよ」
ゆかり「・・・吐かないでよ?」
アイギス「グビッ・・・グビッ・・・ぶはぁ!!」
風花「ひ、控えめにね?」
アイギス「コーラだから問題ないですよ」
ゆかり「・・・吐かないでよ?」
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:35:27 ID:ajTA/fNo
風花「はぁー、こたつ暖かい」
美鶴「本当だな・・・。私の部屋にも置こうかな」
ゆかり「先輩の部屋には似合わないかなぁ」
美鶴「そうかな?」
ゆかり「あのロイヤル調の部屋に和風はなぁ・・・」
アイギス「ロイヤルなこたつだったら?」
皆「「「wwwww」」」」
ゆかり「それはないw」
風花「ロイヤルなこたつ・・・想像できないw」
アイギス(あれ、結構マジで言ってみたんだけどな・・・)
美鶴「本当だな・・・。私の部屋にも置こうかな」
ゆかり「先輩の部屋には似合わないかなぁ」
美鶴「そうかな?」
ゆかり「あのロイヤル調の部屋に和風はなぁ・・・」
アイギス「ロイヤルなこたつだったら?」
皆「「「wwwww」」」」
ゆかり「それはないw」
風花「ロイヤルなこたつ・・・想像できないw」
アイギス(あれ、結構マジで言ってみたんだけどな・・・)
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:47:20 ID:ajTA/fNo
ゆかり「最近シャドウ討伐にも余裕がでてきたよね」
美鶴「それだけ私たちのレベルが上がったってことさ」
風花「昨日は三人とも大活躍だったよね」
アイギス「昨日はフロアボスも倒しましたしね」
ゆかり「でも、皆がスリップしたときは焦ったよね・・・」
アイギス「キタローさんがいなかったら危なかったです」
風花「ねー」
ゆかり「次々と敵をなぎ倒していく姿・・・かっこよかったなぁ」
美鶴「いやぁ・・・///」
アイギス「美鶴さん、気持ち悪いんでニヤニヤしないでください」
美鶴「それだけ私たちのレベルが上がったってことさ」
風花「昨日は三人とも大活躍だったよね」
アイギス「昨日はフロアボスも倒しましたしね」
ゆかり「でも、皆がスリップしたときは焦ったよね・・・」
アイギス「キタローさんがいなかったら危なかったです」
風花「ねー」
ゆかり「次々と敵をなぎ倒していく姿・・・かっこよかったなぁ」
美鶴「いやぁ・・・///」
アイギス「美鶴さん、気持ち悪いんでニヤニヤしないでください」
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/13(月) 23:54:48 ID:ajTA/fNo
ゆかり「そういえば、美鶴先輩がスリップした時って工口いよね」
美鶴「ええっ!?」
風花「確かに、パンツ見えそう」
アイギス「絶対誘ってますよね」
美鶴「誘ってなんかない!」
ゆかり「でも他の男子メンバーがいる時といない時じゃスカートの上がり具合違うよね」
美鶴「それ・・は・・・たまたまだよ・・・」
風花「昨日なんかパンツ丸見えでしたよね?」
アイギス「・・・ヘン夕イ」ボソッ
美鶴「今聞こえたぞ!」
アイギス「ピューピュピュ~♪」
美鶴「ええっ!?」
風花「確かに、パンツ見えそう」
アイギス「絶対誘ってますよね」
美鶴「誘ってなんかない!」
ゆかり「でも他の男子メンバーがいる時といない時じゃスカートの上がり具合違うよね」
美鶴「それ・・は・・・たまたまだよ・・・」
風花「昨日なんかパンツ丸見えでしたよね?」
アイギス「・・・ヘン夕イ」ボソッ
美鶴「今聞こえたぞ!」
アイギス「ピューピュピュ~♪」
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 00:01:08 ID:aXTGhTYM
美鶴「こっちは必死なんだぞ・・・」
ゆかり「確かに転ぶと焦りますよねー」
アイギス「そういえば私たち女子勢が転んだときの真田先輩って・・・」
ゆかり「あっ!すっごいイヤらしい目してるよね~!」
美鶴「何ッ!?」
アイギス「美鶴さんのときなんてかなりジロジロ見てますよ」
風花「うわぁ・・・」
美鶴「後で処刑だな」
ゆかり「確かに転ぶと焦りますよねー」
アイギス「そういえば私たち女子勢が転んだときの真田先輩って・・・」
ゆかり「あっ!すっごいイヤらしい目してるよね~!」
美鶴「何ッ!?」
アイギス「美鶴さんのときなんてかなりジロジロ見てますよ」
風花「うわぁ・・・」
美鶴「後で処刑だな」
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 00:08:55 ID:aXTGhTYM
風花「ちょっと引いちゃうよね~」
みんな「「「ね~」」」
ゆかり「はぁ・・・ポッキーうま」
アイギス「あ、ポッキーといえば・・・」ガサゴソ
風花「ん?」
アイギス「王様ゲームしましょう!盛り上がるといえばこれであります」
ゆかり「ええ~・・・それって男子が一緒にいるから面白いんじゃ・・・」
アイギス「いいからやるぞ!」
みんな「「「ね~」」」
ゆかり「はぁ・・・ポッキーうま」
アイギス「あ、ポッキーといえば・・・」ガサゴソ
風花「ん?」
アイギス「王様ゲームしましょう!盛り上がるといえばこれであります」
ゆかり「ええ~・・・それって男子が一緒にいるから面白いんじゃ・・・」
アイギス「いいからやるぞ!」
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 00:17:46 ID:aXTGhTYM
アイギス「はい、引いてください」
風花「じゃあ・・・私これ」
美鶴「私はこれで」
ゆかり「皆やるの?じゃあ・・・これで」
アイギス「それじゃあ・・・いきますよ」
ゆかり「王様だーーれだ!!」
アイギス「え?なんですかそれ・・・」
ゆかり「え、知らないの?王様ゲームやる時はこれ言うんだよ」
美鶴「へぇ、そうなのか」
ゆかり「それじゃあいきますよー!」
ゆかり「王様だーーれだ!!」
アイギス「・・・」
風花「・・・」
美鶴「・・・」
ゆかり「言えよ!!」
風花「じゃあ・・・私これ」
美鶴「私はこれで」
ゆかり「皆やるの?じゃあ・・・これで」
アイギス「それじゃあ・・・いきますよ」
ゆかり「王様だーーれだ!!」
アイギス「え?なんですかそれ・・・」
ゆかり「え、知らないの?王様ゲームやる時はこれ言うんだよ」
美鶴「へぇ、そうなのか」
ゆかり「それじゃあいきますよー!」
ゆかり「王様だーーれだ!!」
アイギス「・・・」
風花「・・・」
美鶴「・・・」
ゆかり「言えよ!!」
24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 00:22:30 ID:aXTGhTYM
風花「あ、私王様だ・・・」
美鶴「おっ」
アイギス「王様、ご命令を」
風花「じゃあ・・・2番の人が1階ロビーで一発ギャグ」
美鶴「えげつない!?」
アイギス「誰ですか2番・・・」
ゆかり「あたしだ・・・」
みんな「「「www」」」
ゆかり「笑うな!!」
美鶴「おっ」
アイギス「王様、ご命令を」
風花「じゃあ・・・2番の人が1階ロビーで一発ギャグ」
美鶴「えげつない!?」
アイギス「誰ですか2番・・・」
ゆかり「あたしだ・・・」
みんな「「「www」」」
ゆかり「笑うな!!」
25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 00:49:21 ID:aXTGhTYM
ゆかり「えええ・・・あたしやだよ?」
アイギス「王様の言うことは~?」
美鶴&風花「ぜったーい!」
ゆかり「くっそー・・・」
アイギス「王様の言うことは~?」
美鶴&風花「ぜったーい!」
ゆかり「くっそー・・・」
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 00:55:03 ID:aXTGhTYM
1階ロビー
順平「あー・・・暇ッスね」
真田「暇だな・・・」
ゆかり「・・・///」
順平「ん?ゆかりッチ・・・どうしt」
ゆかり「そんなの関係ねぇ!あ、そんなの関係ねぇ!」シュッシュッ
順平「え・・・?」
真田「お、おい・・・」
ゆかり「はいっ!オッパッピーー!!」
順平「・・・」
真田「・・・」
アイギス「wwwwwwwww」
順平「あー・・・暇ッスね」
真田「暇だな・・・」
ゆかり「・・・///」
順平「ん?ゆかりッチ・・・どうしt」
ゆかり「そんなの関係ねぇ!あ、そんなの関係ねぇ!」シュッシュッ
順平「え・・・?」
真田「お、おい・・・」
ゆかり「はいっ!オッパッピーー!!」
順平「・・・」
真田「・・・」
アイギス「wwwwwwwww」
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 00:58:10 ID:aXTGhTYM
ゆかりの部屋
ゆかり「もおおおおおお!!!////」
アイギス「wwwwwww」
風花「お疲れwwww」
ゆかり「笑うな!!」
美鶴「お、面白かったぞw」
ゆかり「うわあああもおおおおお・・・恥ずかし////」ジタバタジタバタ
ゆかり「もおおおおおお!!!////」
アイギス「wwwwwww」
風花「お疲れwwww」
ゆかり「笑うな!!」
美鶴「お、面白かったぞw」
ゆかり「うわあああもおおおおお・・・恥ずかし////」ジタバタジタバタ
28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 01:05:41 ID:aXTGhTYM
ゆかり「はいもう、次次!!」
風花「あ、まだ続くのか・・・」
ゆかり「王様だーーれだ!!!」
美鶴「私だ」
風花「命令は~・・・」
美鶴「1番が2番とポッキーゲーム」
アイギス「1番・・・」
風花「2番・・・」
ゆかり「ざまあwww」
風花「あ、まだ続くのか・・・」
ゆかり「王様だーーれだ!!!」
美鶴「私だ」
風花「命令は~・・・」
美鶴「1番が2番とポッキーゲーム」
アイギス「1番・・・」
風花「2番・・・」
ゆかり「ざまあwww」
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 01:17:37 ID:aXTGhTYM
ゆかり「はいポーーッキーー!ポーーッキーー!」パンパン
風花「えええ・・・」
アイギス「仕方がないです。やりましょう風花さん」
ゆかり「ポッキー!ポッキー!ポッキー!」
風花「・・・」ポリポリ
アイギス「・・・」ポリポリ
美鶴「なんか地味だな」
アイギス「・・・」ポリポリ
風花(あ、もうすぐ・・・)
ゆかり「どーんwww」
アイギス「んむぅ!?」
風花「んんん!?」
ゆかり「wwwwww」
美鶴「うわぁ・・・」
風花「えええ・・・」
アイギス「仕方がないです。やりましょう風花さん」
ゆかり「ポッキー!ポッキー!ポッキー!」
風花「・・・」ポリポリ
アイギス「・・・」ポリポリ
美鶴「なんか地味だな」
アイギス「・・・」ポリポリ
風花(あ、もうすぐ・・・)
ゆかり「どーんwww」
アイギス「んむぅ!?」
風花「んんん!?」
ゆかり「wwwwww」
美鶴「うわぁ・・・」
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 01:24:06 ID:aXTGhTYM
アイギス「・・・んむ」
風花「ちょっ、アイギス・・・///」
ゆかり「え、ちょっと?」
アイギス「ふぅ・・んちゅ・・」
風花「んん・・・むちゅ・・・」
美鶴「お、おい二人とも、ストップストップ!」
アイギス「はぁ・・・」
風花「・・・も、もう、アイギス・・・///」
アイギス「・・・」
風花「・・・」
ゆかり「・・・」
美鶴「・・・」
ゆかり(あれ?なにこの空気・・・)
風花「ちょっ、アイギス・・・///」
ゆかり「え、ちょっと?」
アイギス「ふぅ・・んちゅ・・」
風花「んん・・・むちゅ・・・」
美鶴「お、おい二人とも、ストップストップ!」
アイギス「はぁ・・・」
風花「・・・も、もう、アイギス・・・///」
アイギス「・・・」
風花「・・・」
ゆかり「・・・」
美鶴「・・・」
ゆかり(あれ?なにこの空気・・・)
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 01:31:52 ID:aXTGhTYM
アイギス「・・・次いきます」
美鶴「あ、ああ・・・」
風花「王様だーれだ」
アイギス「私です」
ゆかり「命令をどうぞ」
アイギス「2番の人が1階ででんぐり返しをして決めポーズ」
美鶴「うわああああああ」
ゆかり「wwwwww」
美鶴「あ、ああ・・・」
風花「王様だーれだ」
アイギス「私です」
ゆかり「命令をどうぞ」
アイギス「2番の人が1階ででんぐり返しをして決めポーズ」
美鶴「うわああああああ」
ゆかり「wwwwww」
32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 01:38:03 ID:aXTGhTYM
1階ロビー
順平「さ、さっきのはいったい・・・」
真田「なんだろうな・・・」
美鶴「・・・///」
真田「み、美鶴・・・?」
美鶴「とうっ・・・!」グルン
美鶴「あでッ!?」ドテン
順平「・・・・」
美鶴「・・・・///」キメポーズ
真田「み、美鶴・・・」
美鶴「うわあああああああ///」ダダダ
順平「白・・・でしたね・・・・」
真田「白・・・だったな・・・・」
順平「さ、さっきのはいったい・・・」
真田「なんだろうな・・・」
美鶴「・・・///」
真田「み、美鶴・・・?」
美鶴「とうっ・・・!」グルン
美鶴「あでッ!?」ドテン
順平「・・・・」
美鶴「・・・・///」キメポーズ
真田「み、美鶴・・・」
美鶴「うわあああああああ///」ダダダ
順平「白・・・でしたね・・・・」
真田「白・・・だったな・・・・」
33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 01:41:09 ID:aXTGhTYM
ゆかりの部屋
美鶴「あああああああああああ」
ゆかり「wwwwww」
アイギス「でんぐり返し失敗してやんのwwww」
美鶴「笑うな!」
風花「wwwwwww」
美鶴「笑うなッ!!!」
美鶴「あああああああああああ」
ゆかり「wwwwww」
アイギス「でんぐり返し失敗してやんのwwww」
美鶴「笑うな!」
風花「wwwwwww」
美鶴「笑うなッ!!!」
34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 01:56:48 ID:aXTGhTYM
美鶴「もう王様ゲームはおしまい!」
アイギス「そうですね、そろそろ別なゲームをやりましょう」ゴソゴソ
ゆかり「ええ~・・・まだ何かやるの」
アイギス「ツイスターゲームです!」
風花「だから女子だけでやっても・・・」
アイギス「やるの!」
アイギス「そうですね、そろそろ別なゲームをやりましょう」ゴソゴソ
ゆかり「ええ~・・・まだ何かやるの」
アイギス「ツイスターゲームです!」
風花「だから女子だけでやっても・・・」
アイギス「やるの!」
35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 01:58:57 ID:aXTGhTYM
アイギス「じゃーんけーん・・・」
みんな「「「ぽん!」」」
アイギス「お・・・美鶴さんとゆかりさんのペアですね」
美鶴「うああああああ」
ゆかり「うああああああ」
みんな「「「ぽん!」」」
アイギス「お・・・美鶴さんとゆかりさんのペアですね」
美鶴「うああああああ」
ゆかり「うああああああ」
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 02:04:40 ID:aXTGhTYM
アイギス「美鶴さん、赤」
美鶴「うう・・・」
数分後
アイギス「ゆかりさん、黄色」
ゆかり「んしょ・・・」
ゆかり(シ、69みたいな形になってしまった・・・///)
美鶴(恥ずかしい・・・///)
アイギス「美鶴さん、青・・・・・美鶴さん・・美鶴さん?」
ゆかり(うわあ・・・美鶴先輩のパンツ、黒・・・セクシー///)
美鶴(ゆかりの下着・・・スケスケじゃないか///)
アイギス「おい、動け」
美鶴「うう・・・」
数分後
アイギス「ゆかりさん、黄色」
ゆかり「んしょ・・・」
ゆかり(シ、69みたいな形になってしまった・・・///)
美鶴(恥ずかしい・・・///)
アイギス「美鶴さん、青・・・・・美鶴さん・・美鶴さん?」
ゆかり(うわあ・・・美鶴先輩のパンツ、黒・・・セクシー///)
美鶴(ゆかりの下着・・・スケスケじゃないか///)
アイギス「おい、動け」
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 02:07:29 ID:aXTGhTYM
アイギス「もうやめやめ!つまらないであります」プンスカ
美鶴「・・・///」
ゆかり「・・・///」
風花「さっきから変な空気になってばかりだね・・・」
美鶴「・・・///」
ゆかり「・・・///」
風花「さっきから変な空気になってばかりだね・・・」
38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 02:12:50 ID:aXTGhTYM
ゆかり「もう飲みなおそうよ」
風花「そうだね」
アイギス「でも何かしたいです」
美鶴「そうだな・・・」
風花「あ、記念写真撮らない?」
ゆかり「おお、いいね!」
美鶴「でもカメラがないぞ」
ゆかり「私のカメラ使ってください」
風花「そうだね」
アイギス「でも何かしたいです」
美鶴「そうだな・・・」
風花「あ、記念写真撮らない?」
ゆかり「おお、いいね!」
美鶴「でもカメラがないぞ」
ゆかり「私のカメラ使ってください」
39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 02:17:17 ID:aXTGhTYM
ゆかり「みんな入って入って・・・アイギス、もっとつめないと写らないよ」
アイギス「はい」
ゆかり「じゃあ撮るよ~・・・ハイ、チーズ」カシャ
風花「・・・・撮れた?」
ゆかり「うん、バッチリ!」
アイギス「見せてください」
ゆかり「うん、はいどうぞ」
アイギス「はい」
ゆかり「じゃあ撮るよ~・・・ハイ、チーズ」カシャ
風花「・・・・撮れた?」
ゆかり「うん、バッチリ!」
アイギス「見せてください」
ゆかり「うん、はいどうぞ」
40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 02:23:42 ID:aXTGhTYM
アイギス「どうやるんですか」
風花「この写真一覧再生ってやつじゃないかな」
ゆかり「・・・あっ、ちょっ、待っt」
風花「うわ、なにこれ!?」
アイギス「フォルダ一面キタローさんの写真だらけであります・・・」
美鶴「・・・」
風花「食事中のキタロー君、ソファーでくつろぐキタロー君・・・」
アイギス「うわあ・・・トイレ中の写真に入浴中の写真もありますよ」
ゆかり「あう・・・これはぁ・・・そのぅ・・・」
美鶴「処刑するッ!!!」
風花「この写真一覧再生ってやつじゃないかな」
ゆかり「・・・あっ、ちょっ、待っt」
風花「うわ、なにこれ!?」
アイギス「フォルダ一面キタローさんの写真だらけであります・・・」
美鶴「・・・」
風花「食事中のキタロー君、ソファーでくつろぐキタロー君・・・」
アイギス「うわあ・・・トイレ中の写真に入浴中の写真もありますよ」
ゆかり「あう・・・これはぁ・・・そのぅ・・・」
美鶴「処刑するッ!!!」
47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 17:59:35 ID:9on8mV6k
ゆかり「ずびばぜんでじだ・・・」ボロボロ
美鶴「ふんっ」
風花「あはは・・・」
アイギス「まったくうらやmゲフンゲフン・・・けしからんであります」
ゆかり「反省してます・・・」
風花「・・・・じゃあ、ね?飲みなおそう」
美鶴「ああ」
美鶴「ふんっ」
風花「あはは・・・」
アイギス「まったくうらやmゲフンゲフン・・・けしからんであります」
ゆかり「反省してます・・・」
風花「・・・・じゃあ、ね?飲みなおそう」
美鶴「ああ」
48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 18:03:16 ID:9on8mV6k
美鶴「・・・」モグモグ
ゆかり「・・・」ゴクゴク
アイギス「・・・」グビグビ
風花「・・・あの」
ゆかり「え・・・?」
風花「なんかしゃべろうよ・・・」
美鶴「ああ・・・うん・・・」
アイギス「・・・」
ゆかり「・・・」
風花「しゃべれよ!!」
ゆかり「・・・」ゴクゴク
アイギス「・・・」グビグビ
風花「・・・あの」
ゆかり「え・・・?」
風花「なんかしゃべろうよ・・・」
美鶴「ああ・・・うん・・・」
アイギス「・・・」
ゆかり「・・・」
風花「しゃべれよ!!」
50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 18:31:04 ID:9on8mV6k
帰還
ゆかり「じゃあさ、風花なんかやって盛り上げてよ」
風花「ええっ、無茶振り!?」
アイギス「やれやれー」
美鶴「楽しみだな」
風花「えええ・・・じゃあ」
風花「ドドスコスコスコ・・・・」
ゆかり「あ、それつまんない」
風花「・・・・・」
ゆかり「じゃあさ、風花なんかやって盛り上げてよ」
風花「ええっ、無茶振り!?」
アイギス「やれやれー」
美鶴「楽しみだな」
風花「えええ・・・じゃあ」
風花「ドドスコスコスコ・・・・」
ゆかり「あ、それつまんない」
風花「・・・・・」
51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 18:39:22 ID:9on8mV6k
美鶴「・・・」モグモグ
アイギス「美鶴さん、さっきからなに食べてるんですか?」
美鶴「レモンだ」
風花「レモン・・・?」
ゆかり「すっぱくないんですか?」
美鶴「最近無性にすっぱいものが食べたくてな」
ゆかり「えっ」
風花「それって・・・」
美鶴「えっ?」
アイギス「美鶴さん、さっきからなに食べてるんですか?」
美鶴「レモンだ」
風花「レモン・・・?」
ゆかり「すっぱくないんですか?」
美鶴「最近無性にすっぱいものが食べたくてな」
ゆかり「えっ」
風花「それって・・・」
美鶴「えっ?」
52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 18:44:44 ID:9on8mV6k
ゆかり「先輩、最近生理きてます?」
美鶴「えっ!?なんだいきなり・・・///」
風花「真面目なことなんです!!」
美鶴「そういえばいつもより遅いような・・・」
ゆかり「きゃあああ・・・」
アイギス「なんですかその悲鳴にならない悲鳴は」
風花「もしかして先輩・・・・妊娠してる・・・?」
美鶴「」
美鶴「えっ」
美鶴「えっ!?なんだいきなり・・・///」
風花「真面目なことなんです!!」
美鶴「そういえばいつもより遅いような・・・」
ゆかり「きゃあああ・・・」
アイギス「なんですかその悲鳴にならない悲鳴は」
風花「もしかして先輩・・・・妊娠してる・・・?」
美鶴「」
美鶴「えっ」
53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 18:52:02 ID:9on8mV6k
美鶴「えっ・・・えっ、えっ・・・?」
アイギス「私たちからキタローさんを奪った挙句、子供まで・・・このメス豚!サドスケベ!」
風花「キタロー君と工ッチなことしたんですよね?」
美鶴「した・・・」
ゆかり「と、とりあえず彼にしらせないと・・・!」
アイギス「私たちからキタローさんを奪った挙句、子供まで・・・このメス豚!サドスケベ!」
風花「キタロー君と工ッチなことしたんですよね?」
美鶴「した・・・」
ゆかり「と、とりあえず彼にしらせないと・・・!」
54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 19:06:11 ID:9on8mV6k
キタローの部屋
ドンドンドン
ゆかり「キタローくーん!開けて」
美鶴「キタロー、私だ!」
キタロー「五月蝿いなぁ・・・今何時だと思ってるんですか」
風花「大変なの!美鶴先輩が・・・!」
キタロー「え、どうかしたの?怪我とかはしてなさそうだけど」
美鶴「に、妊娠した・・・かも」
キタロー「・・・はぁ?」
ドンドンドン
ゆかり「キタローくーん!開けて」
美鶴「キタロー、私だ!」
キタロー「五月蝿いなぁ・・・今何時だと思ってるんですか」
風花「大変なの!美鶴先輩が・・・!」
キタロー「え、どうかしたの?怪我とかはしてなさそうだけど」
美鶴「に、妊娠した・・・かも」
キタロー「・・・はぁ?」
55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 19:10:37 ID:9on8mV6k
ゆかり「妊娠だよ妊娠!」
キタロー「・・・誰の子?」
風花「キタロー君の子に決まってるじゃない!」
ゆかり「見損なったよキタロー君・・・こんな時にそんな酷いこと」
キタロー「ん?ん?・・・え?」
ゆかり「エ、工ッチしたら責任はとらないと・・・」
キタロー「いや・・・僕まだ美鶴さんと工ッチしたことないんだけど・・・」
風花「えっ」
キタロー「・・・誰の子?」
風花「キタロー君の子に決まってるじゃない!」
ゆかり「見損なったよキタロー君・・・こんな時にそんな酷いこと」
キタロー「ん?ん?・・・え?」
ゆかり「エ、工ッチしたら責任はとらないと・・・」
キタロー「いや・・・僕まだ美鶴さんと工ッチしたことないんだけど・・・」
風花「えっ」
56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 19:25:08 ID:9on8mV6k
ゆかり「えっ、だって工ッチしたって美鶴先輩が・・・」
美鶴「ああ、工ッチなことを・・・」
キタロー「工ッチなことって・・・僕らまだキスぐらいしかしてないよ?」
風花「ええ?」
美鶴「きゃっ、恥ずかしい///」
ゆかり「もしかして先輩ってキスで子供ができると思ってる人・・・?」
アイギス「マジしねよお前」
美鶴「ああ、工ッチなことを・・・」
キタロー「工ッチなことって・・・僕らまだキスぐらいしかしてないよ?」
風花「ええ?」
美鶴「きゃっ、恥ずかしい///」
ゆかり「もしかして先輩ってキスで子供ができると思ってる人・・・?」
アイギス「マジしねよお前」
57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 19:30:38 ID:9on8mV6k
ゆかりの部屋
美鶴「お騒がせしました・・・」
ゆかり「ホント・・・勘弁してくださいよ」
アイギス「ちっ」
風花「まあ、ね、飲もう」
美鶴「・・・・・」
ゆかり「・・・・・」
アイギス「・・・・・」
風花「・・・・・」
美鶴「お騒がせしました・・・」
ゆかり「ホント・・・勘弁してくださいよ」
アイギス「ちっ」
風花「まあ、ね、飲もう」
美鶴「・・・・・」
ゆかり「・・・・・」
アイギス「・・・・・」
風花「・・・・・」
58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 20:40:24 ID:9on8mV6k
ゆかり「・・・」グビッ
美鶴「・・・」ゴクゴク
風花「・・・」ムシャムシャ
アイギス「・・・もこみち」ボソッ
風花「・・・ぅふww」
ゆかり「ぶ・・・ww」
美鶴「・・・ww」
アイギス「・・・シャチホコッ!」
ゆかり「ぶっほwwwww」
風花「ちょwwwwアイギスwwwwwww」
美鶴「なんでシャチホコwwwwwww」
アイギス「ジュンペーハレベルアップゥー(裏声)」
風花「やめてwwwwww」
ゆかり「wwwwwwwww」
美鶴「・・・」ゴクゴク
風花「・・・」ムシャムシャ
アイギス「・・・もこみち」ボソッ
風花「・・・ぅふww」
ゆかり「ぶ・・・ww」
美鶴「・・・ww」
アイギス「・・・シャチホコッ!」
ゆかり「ぶっほwwwww」
風花「ちょwwwwアイギスwwwwwww」
美鶴「なんでシャチホコwwwwwww」
アイギス「ジュンペーハレベルアップゥー(裏声)」
風花「やめてwwwwww」
ゆかり「wwwwwwwww」
59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 20:43:04 ID:9on8mV6k
ゆかり「wwwww・・・ハァ・・ハァ・・はー」
風花「・・・・・」
美鶴「・・・・・」
アイギス「・・・・・」
ゆかり「・・・・・」
美鶴「・・・・ゴゾウロップ」ボソッ
風花「・・・・・」
ゆかり「・・・・・」
アイギス「・・・・・」
美鶴「・・・・・」
風花「・・・・・」
美鶴「・・・・・」
アイギス「・・・・・」
ゆかり「・・・・・」
美鶴「・・・・ゴゾウロップ」ボソッ
風花「・・・・・」
ゆかり「・・・・・」
アイギス「・・・・・」
美鶴「・・・・・」
60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/02/14(火) 21:34:48 ID:9on8mV6k
美鶴「・・・・・・」
ゆかり「・・・・・」
風花「・・・・・」
アイギス「・・・・そろそろお開きしますか」
ゆかり「そうだね・・・」
風花(なんか疲れたなぁ・・・)
美鶴(もうやりたくない・・・)
アイギス「またやりましょうね」
ゆかり「え?・・・ああ、うん・・・」
おわり
ゆかり「・・・・・」
風花「・・・・・」
アイギス「・・・・そろそろお開きしますか」
ゆかり「そうだね・・・」
風花(なんか疲れたなぁ・・・)
美鶴(もうやりたくない・・・)
アイギス「またやりましょうね」
ゆかり「え?・・・ああ、うん・・・」
おわり
引用元: 美鶴「女子会?」アイギス「女子会です」
【ペルソナ5 新島真SS】目映い影
2019-09-01
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:13:00.30 ID:nJxnVzm1o
※注意点
・シナリオ終了後の話なので多大にネタバレ含みます
・主人公は各種イベントで真を選択してきたと思ってください
・設定的によくわかんないとこは想像で書いてるので許してください
関連記事→【ペルソナ5 奥村春SS】春のまにまに
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1479910379
・シナリオ終了後の話なので多大にネタバレ含みます
・主人公は各種イベントで真を選択してきたと思ってください
・設定的によくわかんないとこは想像で書いてるので許してください
関連記事→【ペルソナ5 奥村春SS】春のまにまに
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1479910379
関連
ハルヒ「SOS団で恋の暴露大会をするわよ!」
【朗報】わたてんさん、ケムリクサを超えてガチで覇権へ
【ラブライブサンシャイン】善子「運命の引力」
【悲報】Twitterで3年前に「令和」を予言してたものがいたwwwwwwwww
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:14:40.89 ID:nJxnVzm1o
それを見て最初に訪れたのは喜びではなく、夢への最初の一歩をつまずくことなく踏み出せたことへの安堵だった。
それでも、一人小さく拳を握っていた。誰に言われたからでもない、私が決めて私自身のためにした努力が実を結んだことは、これまでとは違う種類の達成感と充足感があった。
既に何度も確かめた番号を再度念入りに受験票と見比べ満足すると、ノートPCの前で息を吐いた。全身の力が抜けた気がする。意識しないようにしていたが、やはりさすがに緊張していたらしい。
時代は、幼い私が想像していたような合格発表の風景をも変えてしまっていた。
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:15:37.57 ID:nJxnVzm1o
学内に大きく張り出された数字を大勢の受験者と一緒に眺め、至るところで悲喜こもごもの姿が見られる一大イベント。
おおはしゃぎで胴上げを始める者、泣き崩れて抱き合う者、絶望にうちひしがれる者。そんな光景はどこにもない。Webで合格発表が行われる今、目の前にあるのは無機質な液晶画面だけだ。
私も昔はその時を、今は知らない誰かと喜びを分かち合ったりするのかなとぼんやり思っていたこともあったけど、まさか自宅で一人確認することになっていようとは。
だが考えてみると、これを誰かと一緒に見て、万が一……いや、それは言い過ぎか。百が一ぐらい? 落ちていたら、悲しいもあるけど気まずすぎる。腫れ物のように不自然に優しくされるのは間違いない。だから、やっぱり一人で見るのが正解なのかも。
おおはしゃぎで胴上げを始める者、泣き崩れて抱き合う者、絶望にうちひしがれる者。そんな光景はどこにもない。Webで合格発表が行われる今、目の前にあるのは無機質な液晶画面だけだ。
私も昔はその時を、今は知らない誰かと喜びを分かち合ったりするのかなとぼんやり思っていたこともあったけど、まさか自宅で一人確認することになっていようとは。
だが考えてみると、これを誰かと一緒に見て、万が一……いや、それは言い過ぎか。百が一ぐらい? 落ちていたら、悲しいもあるけど気まずすぎる。腫れ物のように不自然に優しくされるのは間違いない。だから、やっぱり一人で見るのが正解なのかも。
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:17:23.32 ID:nJxnVzm1o
まあ、もはやそれはどっちでもいい。もう自分の受験は終わってしまったから。今は、一人で見たその結果を誰に伝えるかだ。
机の上のスマホを取り、SNSの画面を立ち上げ、そこで手が止まった。私がまず連絡するのは誰なんだろう。
伝えるべきであろう人はたくさんいる。最難関とされる大学の法学部に合格できたのは、私だけの力じゃない。
もちろん私の努力ありきのことではあるけど、言いなりだった過去の優等生の私を作り上げた人たちの存在もこの結果に繋がっている。だから恩師と呼ぶべき人は多い。その人たちにも順を追って報告をしようと思う。
けど、「伝えるべき」でなく「伝えたい」人となると、多くはない。一緒に喜んで欲しい人とも言える、大切な人。
一人は、お姉ちゃん。そしてもう一人。
机の上のスマホを取り、SNSの画面を立ち上げ、そこで手が止まった。私がまず連絡するのは誰なんだろう。
伝えるべきであろう人はたくさんいる。最難関とされる大学の法学部に合格できたのは、私だけの力じゃない。
もちろん私の努力ありきのことではあるけど、言いなりだった過去の優等生の私を作り上げた人たちの存在もこの結果に繋がっている。だから恩師と呼ぶべき人は多い。その人たちにも順を追って報告をしようと思う。
けど、「伝えるべき」でなく「伝えたい」人となると、多くはない。一緒に喜んで欲しい人とも言える、大切な人。
一人は、お姉ちゃん。そしてもう一人。
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:18:27.82 ID:nJxnVzm1o
少しだけ悩んで、簡素な文章を送信した。
『無事に受かったよ』
返信は早かった。一分も経たない内に手に振動が伝わった。
『おめでとう。真なら大丈夫って心配はしてなかったけど、それでも嬉しいわ。今日は私も早く帰るから美味しいものでも食べましょう』
自然と顔が綻んだ。以前の私なら、お姉ちゃんを失望させなかったことにホッと胸を撫で下ろしていただけかもしれない。
あの一連の事件。公的な記録としてはどこまでが正確に残されるのか定かではない、怪盗団絡みの事件。お姉ちゃんもあれよって変わった、変えられた一人だ。
だから、綻んだ。お姉ちゃんを失望させなかったからではなく、喜ばせることができたから。
『無事に受かったよ』
返信は早かった。一分も経たない内に手に振動が伝わった。
『おめでとう。真なら大丈夫って心配はしてなかったけど、それでも嬉しいわ。今日は私も早く帰るから美味しいものでも食べましょう』
自然と顔が綻んだ。以前の私なら、お姉ちゃんを失望させなかったことにホッと胸を撫で下ろしていただけかもしれない。
あの一連の事件。公的な記録としてはどこまでが正確に残されるのか定かではない、怪盗団絡みの事件。お姉ちゃんもあれよって変わった、変えられた一人だ。
だから、綻んだ。お姉ちゃんを失望させなかったからではなく、喜ばせることができたから。
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:20:30.84 ID:nJxnVzm1o
『うん、待ってるね』
返信をして頬杖をつくと、ゆっくり目を閉じた。
彼への報告は二番目になった。始めに送りかけて、止めた。
唯一の家族であるお姉ちゃんを除くと、今の私が最も大切にしたい人。尊敬できて頼りになる、私よりも年下の人。初めて心から好きになれた、最愛の人。
その彼と離れ離れになる日はもう、すぐそこまで来ている。
別に、金輪際会えないなんてことはない。同じ日本だ。それも飛行機で数時間なんて遠く離れた地でもない。休日に会いに行こうと思えばいくらでも行ける距離だ。
けれど、たったそれだけのことがどうしようもなく切なく、締め付けられるように寂しい。
返信をして頬杖をつくと、ゆっくり目を閉じた。
彼への報告は二番目になった。始めに送りかけて、止めた。
唯一の家族であるお姉ちゃんを除くと、今の私が最も大切にしたい人。尊敬できて頼りになる、私よりも年下の人。初めて心から好きになれた、最愛の人。
その彼と離れ離れになる日はもう、すぐそこまで来ている。
別に、金輪際会えないなんてことはない。同じ日本だ。それも飛行機で数時間なんて遠く離れた地でもない。休日に会いに行こうと思えばいくらでも行ける距離だ。
けれど、たったそれだけのことがどうしようもなく切なく、締め付けられるように寂しい。
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:21:24.01 ID:nJxnVzm1o
それが彼への報告を躊躇わせた。私が一足先に大学へ進むと彼に伝えることで、その分だけ別れが早まるような気がして。
弱く長い溜め息を吐いていた。今日同じ学部に合格を決めた人の中でこんな気持ちになっているのは、おそらく私だけに違いない。
今の私にとって、彼の存在はあまりにも大きかった。怪盗団と、彼と出会い、これまでの私が塗り替えられた。敷かれたレールの上を目的なしに走り続けるだけの私ではなくなった。行動に、人生に、未来に、意味と目的を見出だせた。
彼は私を強くした。そして同時に、弱くもした。この二つは矛盾しないことを知った。
「……バカ」
無意味でどうにもならない、私らしくもないことをひとりごちた。
弱く長い溜め息を吐いていた。今日同じ学部に合格を決めた人の中でこんな気持ちになっているのは、おそらく私だけに違いない。
今の私にとって、彼の存在はあまりにも大きかった。怪盗団と、彼と出会い、これまでの私が塗り替えられた。敷かれたレールの上を目的なしに走り続けるだけの私ではなくなった。行動に、人生に、未来に、意味と目的を見出だせた。
彼は私を強くした。そして同時に、弱くもした。この二つは矛盾しないことを知った。
「……バカ」
無意味でどうにもならない、私らしくもないことをひとりごちた。
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:22:33.14 ID:nJxnVzm1o
入学手続きをする前に、去りゆく彼に会おう。そして伝えよう。
この気持ちは、私を優等生じゃなくした貴方のせいだと。私を変えたのは貴方だと。
私は他人に責任を求めようとしたことはない。責任は内にあると常に考えていた。
それに、誰が悪かった、あいつのせいだなんて吊し上げのような犯人探しをしたところで、事態が好転するわけではないことを知っているからだ。
そんな不毛なことに時間を費やすなんて愚の骨頂で、過ぎたことに拘るよりも、これからどうするかに目を向けるべきだ。合理的で可愛げのない思考だけども、今だってその考えは変わらない。
この気持ちは、私を優等生じゃなくした貴方のせいだと。私を変えたのは貴方だと。
私は他人に責任を求めようとしたことはない。責任は内にあると常に考えていた。
それに、誰が悪かった、あいつのせいだなんて吊し上げのような犯人探しをしたところで、事態が好転するわけではないことを知っているからだ。
そんな不毛なことに時間を費やすなんて愚の骨頂で、過ぎたことに拘るよりも、これからどうするかに目を向けるべきだ。合理的で可愛げのない思考だけども、今だってその考えは変わらない。
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:23:21.84 ID:nJxnVzm1o
そんな私が、責任を外に求めたい気分になっていた。こんなのは初めて……、いや、二度目かな。いずれも彼が関わることだ。
「これからどうするか、ね……」
思考が声になっていた。周りに人がいても、誰にも届かない声でそうすることがままある。
「……私を変えた責任、取ってほしいな」
またどうにもならない我儘をひとりごちると、彼になんと連絡しようかと文章を考え始めた。
* * *
「これからどうするか、ね……」
思考が声になっていた。周りに人がいても、誰にも届かない声でそうすることがままある。
「……私を変えた責任、取ってほしいな」
またどうにもならない我儘をひとりごちると、彼になんと連絡しようかと文章を考え始めた。
* * *
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:24:09.36 ID:nJxnVzm1o
白い息を乾いた風が散らし、身を強張らせてマフラーに顔を埋めた。十二月にもなると街は至るところが三色で鮮やかに彩られ、否が応にもその時期を意識させられる。
別に、嫌ではない。むしろ相手のいる今は嬉しいイベントのはずだ。けど、なんとなく落ち着かない。
まだ冬なのに長い春休みに入る前の、一年生最後の講義に向かうべくキャンパスを歩いていると、後ろから声が飛んできた。
「マコちゃーん、待ってー」
振り向くと、栗色の髪を揺らしながら走る小柄な女の子が見えた。男女比およそ4:1の同学部において、そう多くない同性の友人の一人だ。
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:25:01.23 ID:nJxnVzm1o
過酷な受験競争から解放され、その反動が訪れるというのはここの学生と言えどもそう大差なく、彼女もご多分に漏れず入学してから初めて髪を染めたらしい。
実は私も、少しぐらいは彼に可愛いところを見せたいなと思いはしたものの、浮かれているようにしか見えないだろうと考えて自重した。まあ、あまり似合いそうにないと思ったことのほうが大きいんだけど。
「……はぁ、はぁ。……寒い! 鼻もげる!」
「今日は特に冷えるね。おはよう」
彼女は歩みを止めないままモコモコの手袋で顔を暖め、息が整ってから話し始めた。
「おはよ。あー、疲れた」
「無理に追いかけなくていいのに」
「えー、いいじゃん。クリスマス近いし寂しいんだよぅ。ここじゃなかなかそういうのできなさそうだし」
実は私も、少しぐらいは彼に可愛いところを見せたいなと思いはしたものの、浮かれているようにしか見えないだろうと考えて自重した。まあ、あまり似合いそうにないと思ったことのほうが大きいんだけど。
「……はぁ、はぁ。……寒い! 鼻もげる!」
「今日は特に冷えるね。おはよう」
彼女は歩みを止めないままモコモコの手袋で顔を暖め、息が整ってから話し始めた。
「おはよ。あー、疲れた」
「無理に追いかけなくていいのに」
「えー、いいじゃん。クリスマス近いし寂しいんだよぅ。ここじゃなかなかそういうのできなさそうだし」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:25:59.10 ID:nJxnVzm1o
「それは……、確かにそうね」
彼女の言い分には私も納得できた。
大学の授業はゼミのような少人数のものが主体と勝手にイメージしていたが、少なくとも本年度はそんなことはなく、教授の講義を数百人の学生が黙って聞いているだけの、マスプロと呼ばれる形式の基礎授業が主体だった。
ゆえに、席についても周囲は知らないも同然の人たちばかりで関係性が希薄というか、サークルにでも入らなければ友人や恋人と呼べるものができにくい環境にあった。これも同学部が「法学部砂漠」と揶揄される要因の一つなのだろう。
「これから長い休みだねぇ。もう一年生も終わりかー」
彼女が話題を変えた。
「うん。高校と随分違うよね」
彼女の言い分には私も納得できた。
大学の授業はゼミのような少人数のものが主体と勝手にイメージしていたが、少なくとも本年度はそんなことはなく、教授の講義を数百人の学生が黙って聞いているだけの、マスプロと呼ばれる形式の基礎授業が主体だった。
ゆえに、席についても周囲は知らないも同然の人たちばかりで関係性が希薄というか、サークルにでも入らなければ友人や恋人と呼べるものができにくい環境にあった。これも同学部が「法学部砂漠」と揶揄される要因の一つなのだろう。
「これから長い休みだねぇ。もう一年生も終わりかー」
彼女が話題を変えた。
「うん。高校と随分違うよね」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:27:51.11 ID:nJxnVzm1o
「学部によっても違うみたいだよ。理工学部は夏休み長くて冬休みは三月だけだって」
私たちの法学部は夏休みが八月の一ヶ月だけだった。その代わり、冬休みが一月から三月までとなっている。
つまり十二月にして大学の一年目が終了となるわけで、こんなに休んでよいのかと思わなくもない。
「大学って、いろいろ自由よね……。こんなとこでもいろんな人がいるし」
彼女も「わかる、変な人多いよね」とけらけら笑って同意した。
講義とは関係のない、教授が趣味で開いているゼミに参加してみたことが何度かあるが、そこでは情熱の塊のような優秀で少し鬱陶しい学生がいる一方、マスプロに意味などないと講義にあまり参加せずインカレのサークルに没頭している学生もいる。
私たちの法学部は夏休みが八月の一ヶ月だけだった。その代わり、冬休みが一月から三月までとなっている。
つまり十二月にして大学の一年目が終了となるわけで、こんなに休んでよいのかと思わなくもない。
「大学って、いろいろ自由よね……。こんなとこでもいろんな人がいるし」
彼女も「わかる、変な人多いよね」とけらけら笑って同意した。
講義とは関係のない、教授が趣味で開いているゼミに参加してみたことが何度かあるが、そこでは情熱の塊のような優秀で少し鬱陶しい学生がいる一方、マスプロに意味などないと講義にあまり参加せずインカレのサークルに没頭している学生もいる。
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:28:56.30 ID:nJxnVzm1o
ここの学生はかつての私のような優等生タイプばかりなのかと思いきや、いろいろな人と話してそれはただの偏見だと思い知らされた。共通点は、皆一様に向上心は高く勉学はできることだけだった。
私も勉強に関してはそれなりに要領のいいほうだと思っていたが、ここではそれなりに楽しく遊びながらも優れた成績を残す人がいくらでもいる。
このような環境に身を置けることは私にとっても刺激になるし、喜ばしいことのはずだ。だけれども、どこかで物足りなさと一抹の寂しさを感じている私もいる。
それはきっと、ここには誰よりも絆を深めた手のかかる問題児たちがいないからだ。
口は悪いけど人の為に怒ることのできる金髪頭も、スタイル良すぎで羨ましくもなるクォーターも、空気の読めない変人天才画家も、妹みたいにちっちゃいスーパーハッカーも、社長令嬢の天然娘も、私の心までをも盗んだ大怪盗も、誰もいない。もちろん、喋る猫も。
私も勉強に関してはそれなりに要領のいいほうだと思っていたが、ここではそれなりに楽しく遊びながらも優れた成績を残す人がいくらでもいる。
このような環境に身を置けることは私にとっても刺激になるし、喜ばしいことのはずだ。だけれども、どこかで物足りなさと一抹の寂しさを感じている私もいる。
それはきっと、ここには誰よりも絆を深めた手のかかる問題児たちがいないからだ。
口は悪いけど人の為に怒ることのできる金髪頭も、スタイル良すぎで羨ましくもなるクォーターも、空気の読めない変人天才画家も、妹みたいにちっちゃいスーパーハッカーも、社長令嬢の天然娘も、私の心までをも盗んだ大怪盗も、誰もいない。もちろん、喋る猫も。
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:29:56.53 ID:nJxnVzm1o
彼らのことを思い出す度、私は目を閉じる。走馬灯というものがあればこんな感じなんじゃないかなと考えながら、スライドショーのように去年の出来事を振り返る。
「どしたの? 嬉しそうな顔して」
隣を歩く彼女の声で目を開けた。
「え? 私、そんな顔してた?」
そんな自覚はなかった。極短い間、目を閉じているだけのつもりだった。
「うん。嬉しそうっていうか楽しそうっていうか。笑ってたよ」
……やっぱり、そうなんだ。辛いことも多かったけど、あの思い出は私にとって素敵なものだったんだね。
「あ、もしかして彼氏?」
思いを馳せていたのはそれだけではないけど、彼の顔がどの場面でもちらついていたのは確かだった。
「どしたの? 嬉しそうな顔して」
隣を歩く彼女の声で目を開けた。
「え? 私、そんな顔してた?」
そんな自覚はなかった。極短い間、目を閉じているだけのつもりだった。
「うん。嬉しそうっていうか楽しそうっていうか。笑ってたよ」
……やっぱり、そうなんだ。辛いことも多かったけど、あの思い出は私にとって素敵なものだったんだね。
「あ、もしかして彼氏?」
思いを馳せていたのはそれだけではないけど、彼の顔がどの場面でもちらついていたのは確かだった。
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:31:35.65 ID:nJxnVzm1o
素直に答えるべきかと逡巡の間があったが、わざわざ嘘を吐くようなことではないと思い直し、言った。
「あー、まあ、うん。そんなとこ……かな」
しかし恥じらいが勝り、いかにも中途半端な答えになった。もう恥ずかしがるような歳ではないと思うけれど、不慣れなのはまだどうにもならない。
「はぁ……。幸せそうで羨ましいですなぁ」
彼女にはかなり早い段階でその存在を話してあった。だから合コンなるものには参加したくないと、その理由として使わせてもらった側面は確かにあったものの、自慢したい気持ちがなかったとは言い切れない。だって、彼カッコいいし……。
「紹介してよ、マコちゃんみたいなデキる女の彼氏って興味あるなー」
「あー、まあ、うん。そんなとこ……かな」
しかし恥じらいが勝り、いかにも中途半端な答えになった。もう恥ずかしがるような歳ではないと思うけれど、不慣れなのはまだどうにもならない。
「はぁ……。幸せそうで羨ましいですなぁ」
彼女にはかなり早い段階でその存在を話してあった。だから合コンなるものには参加したくないと、その理由として使わせてもらった側面は確かにあったものの、自慢したい気持ちがなかったとは言い切れない。だって、彼カッコいいし……。
「紹介してよ、マコちゃんみたいなデキる女の彼氏って興味あるなー」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:32:23.31 ID:nJxnVzm1o
「暖かくなってきたら、してあげるわ」
「わー、楽しみ」
正直なところ、自慢はしたいけどあまり紹介はしたくないというのが本音だ。
彼を信用していないわけでもないけども、大事に育んできた恋心とともに、淡い独占欲や嫉妬心のようなものが沸きつつあるのは自覚している。
まあ、私がどう思っていようと来年にはもう紹介しないわけにはいかなくなる。何故なら、その頃には彼もここにいるはずだからだ。
彼が地元に戻る前に話した、あの日。彼は私と同じ大学に行くと宣言してくれた。もちろん受かる保証はない。けれど、私には彼が受験に失敗する想像ができない。
あらゆる苦難と不条理を乗り越え、正義を貫き世界までも救ってしまった彼が、私にもできた受験程度で躓くはずがない。
「わー、楽しみ」
正直なところ、自慢はしたいけどあまり紹介はしたくないというのが本音だ。
彼を信用していないわけでもないけども、大事に育んできた恋心とともに、淡い独占欲や嫉妬心のようなものが沸きつつあるのは自覚している。
まあ、私がどう思っていようと来年にはもう紹介しないわけにはいかなくなる。何故なら、その頃には彼もここにいるはずだからだ。
彼が地元に戻る前に話した、あの日。彼は私と同じ大学に行くと宣言してくれた。もちろん受かる保証はない。けれど、私には彼が受験に失敗する想像ができない。
あらゆる苦難と不条理を乗り越え、正義を貫き世界までも救ってしまった彼が、私にもできた受験程度で躓くはずがない。
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:33:56.97 ID:nJxnVzm1o
「あ、マコちゃん。愚問とは思いつつ一応聞いとくけど、クリスマスの予定は? 寂しい女連中で集まって傷を舐め合おうとしてるんだけど」
彼女の精一杯の自虐的な物言いに少しだけ笑みが漏れた。曰く、その愚問、にはすんなり答えることができた。
「ごめん、予定入ってるの」
「ですよねー。いいよいいよ、勝手に楽しんでおくれ。私たちは寂しくホラー映画でも見るよ」
なんでクリスマスにホラー映画? と思ったものの、そこは聞かなかった。
「言っとくけど、か、彼氏だけじゃないからね? 高校のときの友達も一緒のパーティーだから」
正確にはただの高校の友達ではなく、元怪盗団だけど。
彼女の精一杯の自虐的な物言いに少しだけ笑みが漏れた。曰く、その愚問、にはすんなり答えることができた。
「ごめん、予定入ってるの」
「ですよねー。いいよいいよ、勝手に楽しんでおくれ。私たちは寂しくホラー映画でも見るよ」
なんでクリスマスにホラー映画? と思ったものの、そこは聞かなかった。
「言っとくけど、か、彼氏だけじゃないからね? 高校のときの友達も一緒のパーティーだから」
正確にはただの高校の友達ではなく、元怪盗団だけど。
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:34:36.40 ID:nJxnVzm1o
竜司と杏の発案だ。受験勉強の息抜き、との名目だが、その辺りが一番心配な二人が言い出すところに不安を感じる。
「あ、そうなんだ。でも彼氏もいるんでしょ? じゃああれだ、どうせ二人で抜け出してーとか、終わってから落ち合ってとか、あるに決まってるじゃん」
……何故この子にバレているのか。
事実、パーティーが終わったあと二人で会おうと密かに約束を取りつけていた。
「え、えーと……。二人でただ勉強するだけだから、……何もないよ、うん」
大学生になった今も、学力偏差値は上がれど恋愛偏差値は据え置きのままだ。どうやって測るのかすら知らないけど、こんなことを言っているようではあまり変わっていないだろう。
「あ、そうなんだ。でも彼氏もいるんでしょ? じゃああれだ、どうせ二人で抜け出してーとか、終わってから落ち合ってとか、あるに決まってるじゃん」
……何故この子にバレているのか。
事実、パーティーが終わったあと二人で会おうと密かに約束を取りつけていた。
「え、えーと……。二人でただ勉強するだけだから、……何もないよ、うん」
大学生になった今も、学力偏差値は上がれど恋愛偏差値は据え置きのままだ。どうやって測るのかすら知らないけど、こんなことを言っているようではあまり変わっていないだろう。
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:35:19.99 ID:nJxnVzm1o
「それだけで終わるわけ、ないよねー? ていうかクリスマスの夜に彼氏と二人きりで、何を勉強するつもりなんですかね……。いーなぁ彼氏、私も欲しいなー」
彼女はからかい半分、本当の羨み半分という具合で私の顔を覗き込んだ。顔が赤くなっていないか不安だった。
そう。それだけで終わるはずがない。そのぐらい、恋愛音痴の私だって知っている。恋人同士の行き着く先。終着点になるのかはわからないけど、究極の求愛行動。
別に、そんな期待はしてないし。私と彼はそんなんじゃ…………嘘ですごめんなさい。変なこと考えながらドキドキしてたことはあります。
誰にともなく心の中で意味のわからない謝罪をすると、思考が夏の記憶に繋がった。
彼女はからかい半分、本当の羨み半分という具合で私の顔を覗き込んだ。顔が赤くなっていないか不安だった。
そう。それだけで終わるはずがない。そのぐらい、恋愛音痴の私だって知っている。恋人同士の行き着く先。終着点になるのかはわからないけど、究極の求愛行動。
別に、そんな期待はしてないし。私と彼はそんなんじゃ…………嘘ですごめんなさい。変なこと考えながらドキドキしてたことはあります。
誰にともなく心の中で意味のわからない謝罪をすると、思考が夏の記憶に繋がった。
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:36:17.04 ID:nJxnVzm1o
この夏休みの間、彼はこっちで生活をしていた。ルブランでバイトをしながら、大学受験に向けて勉強をしていたのだ。
当然、短い夏休みの隙間を縫って足繁く通い、何度も二人で勉強をして過ごした。
勉強は一人でやる孤独なものだと思っていた私が、その考えを改めざるを得ない程度には幸福な時間だった。たぶん、彼と過ごせるならなんだって幸せというだけなのだろうけど。
でもその時間は、本当にそれだけで終わった。あれだけ何度も行ったのにも関わらず、だ。
そのときは特に不自然とは思わなかった。何故なのかという自問に、今の彼は勉強に集中したいということだろう、と自答して深く考えないようにしていたからだ。
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:36:55.79 ID:nJxnVzm1o
だが、本当にそれだけだったのだろうか。今さらにして不安が頭をもたげる。
彼は年不相応に落ち着きも知性も理性も持ち合わせているが、まだ高校生だ。その年頃の男の子がどんなものかは、周りを見ていればなんとなく想像がつく。そんな彼が一切そんな素振りを見せない。
であれば、だ。考えたくはないけれど。もしかすると。
私になんらかの問題がある……。そう考えるのが自然だ。怪盗はともかくとして、彼は健全な高校生なのだから。
さらに認めたくないけど、もう少し突っ込んで言うなら。
私に魅力がないからじゃ……?
「あ、マコちゃん先入ってて、温かい飲み物買ってくる。隣空けといてねー」
彼は年不相応に落ち着きも知性も理性も持ち合わせているが、まだ高校生だ。その年頃の男の子がどんなものかは、周りを見ていればなんとなく想像がつく。そんな彼が一切そんな素振りを見せない。
であれば、だ。考えたくはないけれど。もしかすると。
私になんらかの問題がある……。そう考えるのが自然だ。怪盗はともかくとして、彼は健全な高校生なのだから。
さらに認めたくないけど、もう少し突っ込んで言うなら。
私に魅力がないからじゃ……?
「あ、マコちゃん先入ってて、温かい飲み物買ってくる。隣空けといてねー」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:37:44.26 ID:nJxnVzm1o
彼女の声にハッとなり、気がつけば教室のすぐ傍まで来ていたことに驚く。いつの間にこんなに歩いてたの……。
夢遊病者のような行動に愕然としながら着座し、隣の席を確保する。
さて、困った。私にはその解も求め方もどこにあるのかわからない。
方程式がなければ解きようもない。微分しようにも全体の様子はわからないし、積分しようにも各点の様子はわからない。そもそも全体とか各点って何よ。人の心が数式で表せるわけないでしょ。
心中でセルフ突っ込みをして頬杖をつくと、無意識に目を閉じていた。
優等生の仮面をつけていた私は、目上の人に好まれる振る舞いというものを心得ていた。だから私は、相手の気持ちを考え良好なコミュニケーションを取ることは容易いと、人からどう思われるかということに無頓着ではないと思っていた。
夢遊病者のような行動に愕然としながら着座し、隣の席を確保する。
さて、困った。私にはその解も求め方もどこにあるのかわからない。
方程式がなければ解きようもない。微分しようにも全体の様子はわからないし、積分しようにも各点の様子はわからない。そもそも全体とか各点って何よ。人の心が数式で表せるわけないでしょ。
心中でセルフ突っ込みをして頬杖をつくと、無意識に目を閉じていた。
優等生の仮面をつけていた私は、目上の人に好まれる振る舞いというものを心得ていた。だから私は、相手の気持ちを考え良好なコミュニケーションを取ることは容易いと、人からどう思われるかということに無頓着ではないと思っていた。
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:38:52.04 ID:nJxnVzm1o
けど、そうじゃなかった。私は真剣に他人の心を知り、重ね合わせようとはしてこなかった。何より、本当の自分をわかってもらうことを放棄してここまできていたんだ、私は。
互いにそうすること。それこそが人と向き合うということであり、人間関係なんだ。
また彼のおかげで一つの答えが出せた。きちんと話して私のことをもっとわかってもらい、私も彼のことをもっと知る。まずはそれだ。
けど問題はその次。具体的な恋人らしい行動として何をすればよいのかがわからない。私はどうすれば彼にもっと喜んでもらえるのだろう。
私にそう思われるのは心外かもしれないが、隣に来る彼女を含め、私の周りの女の子はあまり恋愛経験豊富ではなさそうだ。杏も案外そういうのはまだって言ってたし……。唯一例外そうな栄子はきっと私の参考にはならない。
互いにそうすること。それこそが人と向き合うということであり、人間関係なんだ。
また彼のおかげで一つの答えが出せた。きちんと話して私のことをもっとわかってもらい、私も彼のことをもっと知る。まずはそれだ。
けど問題はその次。具体的な恋人らしい行動として何をすればよいのかがわからない。私はどうすれば彼にもっと喜んでもらえるのだろう。
私にそう思われるのは心外かもしれないが、隣に来る彼女を含め、私の周りの女の子はあまり恋愛経験豊富ではなさそうだ。杏も案外そういうのはまだって言ってたし……。唯一例外そうな栄子はきっと私の参考にはならない。
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:39:33.81 ID:nJxnVzm1o
あとは……お姉ちゃん? 無理無理。何を言われるかわからない。怖い。ごめんなさいお姉ちゃん。
まあ参考になりそうな人がいたとしても、知り合いに相談するのは恥ずかしいな……。
暫く考え、やがてスマホを取り出して検索サイトを立ち上げた。広大なインターネットの向こうには私と同じような人がいるはずだ。とりあえずは文明の利器に頼ってみよう。
* * *
イブの当日、曇り空の街は騒がしかった。
今年はクリスマスが土日と重なっているため、昼のうちから辺りは幸せそうなカップルだらけだ。こうして眺めていると誰もが順風満帆で、悩みなどなさそうに見えてくる。実際にはそんなことないんだろうけど。
まあ参考になりそうな人がいたとしても、知り合いに相談するのは恥ずかしいな……。
暫く考え、やがてスマホを取り出して検索サイトを立ち上げた。広大なインターネットの向こうには私と同じような人がいるはずだ。とりあえずは文明の利器に頼ってみよう。
* * *
イブの当日、曇り空の街は騒がしかった。
今年はクリスマスが土日と重なっているため、昼のうちから辺りは幸せそうなカップルだらけだ。こうして眺めていると誰もが順風満帆で、悩みなどなさそうに見えてくる。実際にはそんなことないんだろうけど。
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:40:53.85 ID:nJxnVzm1o
厚い雲に覆われてあまり明るくないせいもあるのだろうか。それとも街全体が醸し出す、何かに期待して浮かれているような雰囲気のせいか。やはり私は少し落ち着かない。
集合する予定の夕方までにはまだ時間がある。することもないのに早く家を出すぎてしまった。
ああ、落ち着かないのは私の逸る心のせいだね。
だって仕方ないじゃない。久しぶりに彼に会えるんだもの。
文面だけの連絡はいつも取り合っているけど、そんなのとは比較にならない。お互いの性格のせいか、そのやり取りの字面はどこか業務連絡のような感が漂っている。
もちろんそれも嬉しくないわけじゃないけど、実際に会ってする会話とは温度が違う。
集合する予定の夕方までにはまだ時間がある。することもないのに早く家を出すぎてしまった。
ああ、落ち着かないのは私の逸る心のせいだね。
だって仕方ないじゃない。久しぶりに彼に会えるんだもの。
文面だけの連絡はいつも取り合っているけど、そんなのとは比較にならない。お互いの性格のせいか、そのやり取りの字面はどこか業務連絡のような感が漂っている。
もちろんそれも嬉しくないわけじゃないけど、実際に会ってする会話とは温度が違う。
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:41:27.92 ID:nJxnVzm1o
会えるということは、彼の声を聞きながら体温を感じられるということだ。彼の移り変わる表情を見ていられるということだ。そんな想像だけでも、内から込み上げるような喜びがある。
……早いけどもう向かおうかな。少しでも会える時間を長くしたいし。
そう決めると足早に駅に向かい、ちょうど着いていた電車に飛び乗った。
そんなに急いでみんないったい何処に行くの。どこも人が多そうなのに、どうしても今日でなければいけないの? そう尋ねたくなるほどに車内は込み合っていた。外とは違い、暖房もよく効いていて暑いくらいだ。
奥まで入れなかったので扉付近に陣取って、流れる風景と空模様をぼんやりと眺めていた。
……今年も降るのかな。
……早いけどもう向かおうかな。少しでも会える時間を長くしたいし。
そう決めると足早に駅に向かい、ちょうど着いていた電車に飛び乗った。
そんなに急いでみんないったい何処に行くの。どこも人が多そうなのに、どうしても今日でなければいけないの? そう尋ねたくなるほどに車内は込み合っていた。外とは違い、暖房もよく効いていて暑いくらいだ。
奥まで入れなかったので扉付近に陣取って、流れる風景と空模様をぼんやりと眺めていた。
……今年も降るのかな。
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:41:57.11 ID:nJxnVzm1o
ふとそう思うと、ちょうど一年前の記憶が甦った。
あれは、私が人生で初めて恋人と過ごしたクリスマス。何かの比喩や暗喩でなく、言葉の通り、怪盗団が世界を救った日。
一度は死を覚悟したぐらいなのだからそれも当然の話で、私たちは心身ともに疲れきっていた。だからあの場は現地解散となったわけだけど、疲弊した心の奥には得体の知れない胸騒ぎもあった。
疲れとは関係なく、神経が昂っていたのかもしれない。自分でも理解のできない不安に駆られ、彼への愛しさが募り、どうしても我慢できなかった。このまま帰って休もうという気にはならず、どうしても彼に会いたくなった。
そして実際に会って、話して、わかった。
あれは、私が人生で初めて恋人と過ごしたクリスマス。何かの比喩や暗喩でなく、言葉の通り、怪盗団が世界を救った日。
一度は死を覚悟したぐらいなのだからそれも当然の話で、私たちは心身ともに疲れきっていた。だからあの場は現地解散となったわけだけど、疲弊した心の奥には得体の知れない胸騒ぎもあった。
疲れとは関係なく、神経が昂っていたのかもしれない。自分でも理解のできない不安に駆られ、彼への愛しさが募り、どうしても我慢できなかった。このまま帰って休もうという気にはならず、どうしても彼に会いたくなった。
そして実際に会って、話して、わかった。
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:44:04.79 ID:nJxnVzm1o
彼が、私にも言えない何かを抱えていることが。
でも私にならきっと話してくれるはずだと信じ、聞こうとはしなかった。それを問い詰めることは最後までしなかった。
お互いに言えないものを抱えたままの逢瀬は、錆び付いた歯車のような不協和音を残した。そして翌日、お姉ちゃんから聞いたときには、彼は私の声の届かない場所にいた。
私が自分勝手に抱いた期待は、誰よりも私を、仲間を守ろうとしてくれた彼の優しさによって裏切られた。けれど、怪盗団が信じる正義のために己を曲げなかった彼の行動を、私が責められようはずもなかった。
何より悲しかったのは彼がその決意をしたことではなく、私に打ち明けてくれなかったことだった。私への信頼はそんなものだったのかと、責めたくなる気持ちもなかったと言えば嘘になる。
でも私にならきっと話してくれるはずだと信じ、聞こうとはしなかった。それを問い詰めることは最後までしなかった。
お互いに言えないものを抱えたままの逢瀬は、錆び付いた歯車のような不協和音を残した。そして翌日、お姉ちゃんから聞いたときには、彼は私の声の届かない場所にいた。
私が自分勝手に抱いた期待は、誰よりも私を、仲間を守ろうとしてくれた彼の優しさによって裏切られた。けれど、怪盗団が信じる正義のために己を曲げなかった彼の行動を、私が責められようはずもなかった。
何より悲しかったのは彼がその決意をしたことではなく、私に打ち明けてくれなかったことだった。私への信頼はそんなものだったのかと、責めたくなる気持ちもなかったと言えば嘘になる。
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:44:56.32 ID:nJxnVzm1o
恋人であるはずの私は泣きたかった。亡き父の想いを、正義を継ぐと決心した私は泣けなかった。
相反する私のせめぎ合いは、意外な点に着地を見せた。
寂しさを堪え、彼を救おうとみんなで決意したクリスマスの日の夜、私は夢の中で泣いていた。目を覚まして鏡を見ると、右目の下にだけ一筋の跡がついていた。
「次は~、四軒茶屋~、四軒茶屋です」
電車のアナウンスに続き、音を立てながらドアが開いた。降りる人はそう多くなかった。
ううん。もう大丈夫。あんなことはもう起こらない。今年は彼が受験だからおもいっきりとはいかないけど、それでも去年よりは。来年からはもっと。ずっと。少しずつ積み重ねて、楽しい思い出で上書きしていける。
相反する私のせめぎ合いは、意外な点に着地を見せた。
寂しさを堪え、彼を救おうとみんなで決意したクリスマスの日の夜、私は夢の中で泣いていた。目を覚まして鏡を見ると、右目の下にだけ一筋の跡がついていた。
「次は~、四軒茶屋~、四軒茶屋です」
電車のアナウンスに続き、音を立てながらドアが開いた。降りる人はそう多くなかった。
ううん。もう大丈夫。あんなことはもう起こらない。今年は彼が受験だからおもいっきりとはいかないけど、それでも去年よりは。来年からはもっと。ずっと。少しずつ積み重ねて、楽しい思い出で上書きしていける。
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/23(水) 23:46:27.59 ID:nJxnVzm1o
せっかくクリスマスに彼と、みんなと会えるんだから。
余計なことを考えないよう、白い息を吐きながら脚を動かしルブランを目指した。店の前まで来ると、少しだけ立ち止まる。
首を降り、過去の苦い記憶を振り払った。そして新たな素敵な思い出を作るべく、ルブランの扉を開く。
「いらっしゃい。……久しぶり、真」
いつもならマスターがいるはずの場所に、彼が佇んでいた。
* * *
余計なことを考えないよう、白い息を吐きながら脚を動かしルブランを目指した。店の前まで来ると、少しだけ立ち止まる。
首を降り、過去の苦い記憶を振り払った。そして新たな素敵な思い出を作るべく、ルブランの扉を開く。
「いらっしゃい。……久しぶり、真」
いつもならマスターがいるはずの場所に、彼が佇んでいた。
* * *
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:13:03.16 ID:JgmbGynCo
後ろ手に持った扉から手を離すと、扉が閉まる方向に動いて私を店内に押した。ドアベルの音を残して動きが止まり、他にお客さんのいない店内は静寂に包まれる。
「……い、いつ来てたの?」
「ついさっき。着くなりいきなり店番頼まれちゃって」
「そ、そっか。随分早く着いたのね。みんな来るまで、まだ時間あるけど……」
予想外のタイミングで彼の顔を見て舞い上がっていた。だから、私が言ってほしい言葉を願った。
「真だって早いじゃないか。一緒のこと考えてたってことだね。……少しでも早く、真と会いたかった」
一瞬だけ溜めて放たれた彼の言葉は、私の言ってほしい台詞そのものだった。落ち着いた、でも芯のある声は、不思議なほど私の身体に馴染む。
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:14:32.02 ID:JgmbGynCo
「私も、会いたかった。……座っていい?」
彼の向かいのカウンター席を目で指し示した。
「もちろん。何を飲まれますか、お客様」
座ると同時に聞いてきた彼の口調につられるように、私も応える。
「そうね……。暖かくなるようなコーヒー、頂けるかしら」
「かしこまりました」
大仰なほど丁寧にお辞儀をする彼に、笑みが溢れた。
やがて珈琲の芳ばしい香りが漂い始めた。慣れた手つきで豆を挽く彼に言葉をかける。
「いつもそんな接客してるの?」
「まさか。真だけの特別バージョンだよ」
彼の向かいのカウンター席を目で指し示した。
「もちろん。何を飲まれますか、お客様」
座ると同時に聞いてきた彼の口調につられるように、私も応える。
「そうね……。暖かくなるようなコーヒー、頂けるかしら」
「かしこまりました」
大仰なほど丁寧にお辞儀をする彼に、笑みが溢れた。
やがて珈琲の芳ばしい香りが漂い始めた。慣れた手つきで豆を挽く彼に言葉をかける。
「いつもそんな接客してるの?」
「まさか。真だけの特別バージョンだよ」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:16:58.80 ID:JgmbGynCo
なんてことはない小芝居に過ぎなかったけど、特別と言われて悪い気はしなかった。
「よかった。そうよね、貴方がいつもそんなことしてたら大変なことになるわよね」
「何がどう大変?」
自覚のない彼に、私は不安を告げる。
「いつもあんな風にしてたら、店に来た女性が……、その、貴方に惚れたり、とか……そんな感じ。わかる?」
要は「誰もが惚れるんじゃないかと思うほど格好いいです」と言っているのと同じだ。それをわかっていたから、言いながらだんだん照れが出てきた。
「光栄だけど、残念ながらそんなにモテたりはしないよ」
「嘘。自覚ないんだ、やっぱり。貴方が本気を出したら9股ぐらいまでならできると思うわ」
「よかった。そうよね、貴方がいつもそんなことしてたら大変なことになるわよね」
「何がどう大変?」
自覚のない彼に、私は不安を告げる。
「いつもあんな風にしてたら、店に来た女性が……、その、貴方に惚れたり、とか……そんな感じ。わかる?」
要は「誰もが惚れるんじゃないかと思うほど格好いいです」と言っているのと同じだ。それをわかっていたから、言いながらだんだん照れが出てきた。
「光栄だけど、残念ながらそんなにモテたりはしないよ」
「嘘。自覚ないんだ、やっぱり。貴方が本気を出したら9股ぐらいまでならできると思うわ」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:22:09.72 ID:JgmbGynCo
彼は挽き終わった豆をサイフォンにセットしながら、ちょっと引き気味に言った。
「……何その具体的な数。仮にできるぐらいモテたとしても、そんなことしたら体が持たないな」
まあ、実際にそんなことをされたら私は何をするかわからないから、彼が真面目な人で本当によかった。
「人数は適当。けど、今の貴方はそれぐらい格好よくて魅力的なの。わかった?」
「……了解。でも、変わるもんだね。昔は野暮ったいって言われたこともあったのに」
彼は微かに微笑んで過去の私の失敗を口にした。
「あれは……私の眼が節穴だったみたい。ごめん、失言だった」
「……何その具体的な数。仮にできるぐらいモテたとしても、そんなことしたら体が持たないな」
まあ、実際にそんなことをされたら私は何をするかわからないから、彼が真面目な人で本当によかった。
「人数は適当。けど、今の貴方はそれぐらい格好よくて魅力的なの。わかった?」
「……了解。でも、変わるもんだね。昔は野暮ったいって言われたこともあったのに」
彼は微かに微笑んで過去の私の失敗を口にした。
「あれは……私の眼が節穴だったみたい。ごめん、失言だった」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:24:05.77 ID:JgmbGynCo
「いや、責めてるわけじゃないから。実際そのときはそうだったんだし。だから、真に認められたくてあれから努力したんだよ」
彼はサイフォンの原理で汲み上げられた珈琲を撹拌しながら、何事もなかったかのように話した。あの出来事の裏にあった、私の知らなかった彼の思いに驚いた。
「……そうだったの?」
「うん。真とその友達の力になりたかったからね。……というのは一部建前で、真に振り向いてもらいたかった。ちゃんと見てほしかったんだ」
「そんなの、初耳」
「初めて言ったもの」
彼はそう言って笑うと、丸形のフラスコから珈琲を注ぐ。香りと湯気が立ち昇るカップをソーサーごと持ち上げると、私の目の前に静かに置いた。
「おまたせ」
彼はサイフォンの原理で汲み上げられた珈琲を撹拌しながら、何事もなかったかのように話した。あの出来事の裏にあった、私の知らなかった彼の思いに驚いた。
「……そうだったの?」
「うん。真とその友達の力になりたかったからね。……というのは一部建前で、真に振り向いてもらいたかった。ちゃんと見てほしかったんだ」
「そんなの、初耳」
「初めて言ったもの」
彼はそう言って笑うと、丸形のフラスコから珈琲を注ぐ。香りと湯気が立ち昇るカップをソーサーごと持ち上げると、私の目の前に静かに置いた。
「おまたせ」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:25:19.53 ID:JgmbGynCo
彼の言うことが正しいなら、私がそういったことをまだあまり意識していなかった頃から、彼は私を見てくれていたことになる。
今にして思えば、なんと勿体無いことだろう。あのときの鈍感で無頓着な私を殴ってやりたい。
「いただきます」
カップを持ち上げ、香りを楽しむ。啜るように一口飲むと、雑味のないクリアな苦味が溶け出した。続けて、体の中心に向けて温かさが広がる。
「……どうして、貴方のコーヒーはこんなに美味しいのかしら?」
私は特別珈琲好きというわけではないのに、彼の淹れてくれたものだけは本当に美味しく感じる。家で自分で淹れてもこうはならない。
「やっぱり豆と……淹れ方の違いなのかな」
今にして思えば、なんと勿体無いことだろう。あのときの鈍感で無頓着な私を殴ってやりたい。
「いただきます」
カップを持ち上げ、香りを楽しむ。啜るように一口飲むと、雑味のないクリアな苦味が溶け出した。続けて、体の中心に向けて温かさが広がる。
「……どうして、貴方のコーヒーはこんなに美味しいのかしら?」
私は特別珈琲好きというわけではないのに、彼の淹れてくれたものだけは本当に美味しく感じる。家で自分で淹れてもこうはならない。
「やっぱり豆と……淹れ方の違いなのかな」
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:26:41.67 ID:JgmbGynCo
「それもあるけど、やっぱり一番は愛情じゃないかな」
純粋な疑問に、彼は私では口に出せない言葉で答える。強く叩いた鼓動に動揺し、カップを持つ手が震えた。
「どうして、貴方は……。そういうことを、真顔で言えるわけ?」
「どうしてと言われると、そう思ってるから?」
「そ、そういうの……びっくりするから……」
それ以上飲むのは諦め、大人しくカップをソーサーに戻した。
「やめたほうがいい?」
「いや、ちが、そうじゃなくて……」
反射的に即答した。こんなに嬉しいこと、やめてなんて言えるわけがない。
「じゃあ……、何?」
純粋な疑問に、彼は私では口に出せない言葉で答える。強く叩いた鼓動に動揺し、カップを持つ手が震えた。
「どうして、貴方は……。そういうことを、真顔で言えるわけ?」
「どうしてと言われると、そう思ってるから?」
「そ、そういうの……びっくりするから……」
それ以上飲むのは諦め、大人しくカップをソーサーに戻した。
「やめたほうがいい?」
「いや、ちが、そうじゃなくて……」
反射的に即答した。こんなに嬉しいこと、やめてなんて言えるわけがない。
「じゃあ……、何?」
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:27:27.39 ID:JgmbGynCo
彼は私の左手に手を重ね、机に肘をついた。そのままの姿勢を保ち、私を見上げるように目線を固定する。
ただ重ねられているだけなのに、私の手は動かない。すべてを見透かされているような瞳の前に、私は微動だにできなくなっていた。
「え、と。えっと……」
彼の顔が近づいた。吐いた息が彼に届くような気がして、息を止めた。
さらに近づき、鼻先が触れ合うような距離になった。私は流されるままに瞳を閉じる。
ここ、お店なのに。こんなのよくないってわかってるけど、訪れるであろう甘い痺れを想像すると抗えない。
「すまねぇな、来て早々店番……」
ドアベルの音と同時に、よく知っている声が耳に届いた。
ただ重ねられているだけなのに、私の手は動かない。すべてを見透かされているような瞳の前に、私は微動だにできなくなっていた。
「え、と。えっと……」
彼の顔が近づいた。吐いた息が彼に届くような気がして、息を止めた。
さらに近づき、鼻先が触れ合うような距離になった。私は流されるままに瞳を閉じる。
ここ、お店なのに。こんなのよくないってわかってるけど、訪れるであろう甘い痺れを想像すると抗えない。
「すまねぇな、来て早々店番……」
ドアベルの音と同時に、よく知っている声が耳に届いた。
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:28:40.02 ID:JgmbGynCo
慌てて入り口に目を向けると、呆けたような表情をしたマスターが立っていた。私はすかさず、
「い、いえっ! これは、違うんです! えと、目にゴミが……ゴミが!」
何か言われる前から自発的に言い訳を始めていた。
「……あ、ああ。真ちゃんか……。えー……、いらっしゃい」
「は、はい。お邪魔、してます」
マスターはまだ戸惑っていたが、勢いで押し切れたような気がする。いや無理でしょ……。
「そうか、今日あいつらみんな来るんだったな。……ここ、もういいから上行ってな。来たら呼ぶからよ」
「わかった。真、行こうか」
「う、うん」
席を立ち、階段に向かおうとして立ち止まった。
「い、いえっ! これは、違うんです! えと、目にゴミが……ゴミが!」
何か言われる前から自発的に言い訳を始めていた。
「……あ、ああ。真ちゃんか……。えー……、いらっしゃい」
「は、はい。お邪魔、してます」
マスターはまだ戸惑っていたが、勢いで押し切れたような気がする。いや無理でしょ……。
「そうか、今日あいつらみんな来るんだったな。……ここ、もういいから上行ってな。来たら呼ぶからよ」
「わかった。真、行こうか」
「う、うん」
席を立ち、階段に向かおうとして立ち止まった。
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:31:57.22 ID:JgmbGynCo
「あ、お金……」
珈琲を頂いたお金を支払わないと。
「ああ、いいよそんなの。こいつの淹れたコーヒーで金取るわけにゃいかねぇよ」
「普段は取ってるけどね」
「うるせぇよ、ちょっとお前は残れ」
彼に「先に行ってて」と促されたので、マスターにお礼を言って背中を向けた。
「……お前な、ああいうのは……場所考えろよ」
「若気の至りだ」
肩越しに二人のヒソヒソ声が聞こえてきて、私は顔を赤くしながら階段を昇った。
マスター、ごめんなさい。私、彼にああされるとなすがままになっちゃうんです……。
珈琲を頂いたお金を支払わないと。
「ああ、いいよそんなの。こいつの淹れたコーヒーで金取るわけにゃいかねぇよ」
「普段は取ってるけどね」
「うるせぇよ、ちょっとお前は残れ」
彼に「先に行ってて」と促されたので、マスターにお礼を言って背中を向けた。
「……お前な、ああいうのは……場所考えろよ」
「若気の至りだ」
肩越しに二人のヒソヒソ声が聞こえてきて、私は顔を赤くしながら階段を昇った。
マスター、ごめんなさい。私、彼にああされるとなすがままになっちゃうんです……。
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:33:07.86 ID:JgmbGynCo
マスターへの申し訳なさから少しだけ強い自制を取り戻すことができ、屋根裏に上がってからは控えめに二人きりの時間を過ごした。
主に彼の受験の状況と、彼が目指している私の大学生活のことを報告し合った。
毎日のように連絡は取り合っていたから知っていることも多かったけれど、簡単なメッセージよりも多くのことを伝えられるので新鮮な気持ちになれた。
「そう、順調なのね。安心した」
「でもここ半年はずっと勉強漬けだからいい加減飽きてきた」
「もう少しじゃない。と言っても、大学に入ってからも大変よ? 周りは優秀な人ばかりだし、試験なんかも高校と全然違うもの。問題文が三行で答案が白紙の用紙一枚、「下記の事例について論ぜよ」、とか、そんな感じよ」
「へぇ。面白そう」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:34:05.91 ID:JgmbGynCo
驚かせようと思っていたのに、彼の興味を引いたようで拍子抜けした。
「どんな感性してるの。でも、面白そうって思えるなら平気そうね」
「絶対受かるとは言えないけど、やるだけやるよ。でも今日はゆっくり息抜きさせてもらおうかな」
「そうね、せっかくなんだから楽しまないとね」
そこで階段からバタバタとした足音が聞こえ、間もなく、
「ナマステー!」
唐突にサンスクリット語の挨拶が飛び込んできた。
「やあ」
「久しぶり、双葉」
冬にその格好は寒いんじゃないの、と聞きたくなるような格好の双葉はベッドに座ると、ソファにいる私を一瞥した。
「どんな感性してるの。でも、面白そうって思えるなら平気そうね」
「絶対受かるとは言えないけど、やるだけやるよ。でも今日はゆっくり息抜きさせてもらおうかな」
「そうね、せっかくなんだから楽しまないとね」
そこで階段からバタバタとした足音が聞こえ、間もなく、
「ナマステー!」
唐突にサンスクリット語の挨拶が飛び込んできた。
「やあ」
「久しぶり、双葉」
冬にその格好は寒いんじゃないの、と聞きたくなるような格好の双葉はベッドに座ると、ソファにいる私を一瞥した。
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:35:04.41 ID:JgmbGynCo
「真パイセンが一番乗りかー」
「うん。ちょっと早く出すぎちゃって」
実はちょっとじゃなくてだいぶなんだけど、そこは誤魔化すことにした。
私と彼が付き合っていることは、怪盗団メンバーには伝えていない。いつだったか、付き合い始めの頃に二人で話し合って「まだ」言わないでおこうと決めた。
理由は、怪盗団メンバーでぎくしゃくしたくないからとか、そんな感じ。みんなに変に気遣われたくもないしね。
いつかは伝えないと、とも言っているものの、どう話しても嫌味に聞こえるかもしれないと思い、そのいつかは未だ訪れていない。
「そういえばモナは?」
彼と再会を喜んでいた双葉が思い出したように口を開いた。よく考えたら私も見てないな。
「うん。ちょっと早く出すぎちゃって」
実はちょっとじゃなくてだいぶなんだけど、そこは誤魔化すことにした。
私と彼が付き合っていることは、怪盗団メンバーには伝えていない。いつだったか、付き合い始めの頃に二人で話し合って「まだ」言わないでおこうと決めた。
理由は、怪盗団メンバーでぎくしゃくしたくないからとか、そんな感じ。みんなに変に気遣われたくもないしね。
いつかは伝えないと、とも言っているものの、どう話しても嫌味に聞こえるかもしれないと思い、そのいつかは未だ訪れていない。
「そういえばモナは?」
彼と再会を喜んでいた双葉が思い出したように口を開いた。よく考えたら私も見てないな。
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:35:52.74 ID:JgmbGynCo
「ああ、駅に行くって言ってた。みんなと来るんじゃないかな」
「なるほど、お迎えか。やるなーモナ。ネコとは思えない賢さだ」
「まあ話ができる時点でね……」
見た目はどこからどう見てもネコだけど、まあそのあたりはなんだって構わない。
既存の生物の定義に当てはまらないから、あれはモナという生き物なんだろう。どんな存在であれ私たちの仲間の一人(一匹?)で、大事な怪盗団のメンバーだ。
「あ、真パイセン。わたし、ちゃんと高校生やれてるぞ!」
「みたいね。偉いわ、双葉」
「うん。立派だな。更正は順調のようだ」
「更正? んー、まあ、更正か。うん、もっと褒めてほめて」
「なるほど、お迎えか。やるなーモナ。ネコとは思えない賢さだ」
「まあ話ができる時点でね……」
見た目はどこからどう見てもネコだけど、まあそのあたりはなんだって構わない。
既存の生物の定義に当てはまらないから、あれはモナという生き物なんだろう。どんな存在であれ私たちの仲間の一人(一匹?)で、大事な怪盗団のメンバーだ。
「あ、真パイセン。わたし、ちゃんと高校生やれてるぞ!」
「みたいね。偉いわ、双葉」
「うん。立派だな。更正は順調のようだ」
「更正? んー、まあ、更正か。うん、もっと褒めてほめて」
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:36:44.75 ID:JgmbGynCo
学校を案内したときも思ったけど、庇護欲をそそられるというか、なんというか。
彼と二人でよしよし、よく頑張ったねと褒めていると、妹というよりも子供みたいだ。なんだか微笑ましくなってくる。
…………いや、誰と誰のよ……。
「おーいお前ら、続々と来たぞー」
階下からのマスターの声を聞き、慌てて飛躍した妄想をシャットアウトした。よく考えたら双葉は私のたった二つ下じゃない。双葉にも失礼だよ、恥ずかしい……。
「リュージあんまり走るなー! 揺れるんだよ!」
「お前こそ爪立てんな! いてーんだよ!」
まず階段を駆け上がってきたのは予想通り竜司と、その肩から落ちまいと前脚でしがみつくモナだった。
彼と二人でよしよし、よく頑張ったねと褒めていると、妹というよりも子供みたいだ。なんだか微笑ましくなってくる。
…………いや、誰と誰のよ……。
「おーいお前ら、続々と来たぞー」
階下からのマスターの声を聞き、慌てて飛躍した妄想をシャットアウトした。よく考えたら双葉は私のたった二つ下じゃない。双葉にも失礼だよ、恥ずかしい……。
「リュージあんまり走るなー! 揺れるんだよ!」
「お前こそ爪立てんな! いてーんだよ!」
まず階段を駆け上がってきたのは予想通り竜司と、その肩から落ちまいと前脚でしがみつくモナだった。
54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:37:50.41 ID:JgmbGynCo
「メリークリスマース! 真もリーダーも久しぶりー!」
杏が今日に相応しい挨拶をうたいながら部屋に入ってくる。
「やあ、久しいな。元気にしていたか?」
「ああ、勉強漬けの毎日を送ってるよ」
いつもと何も変わらない祐介は、私や彼と再会の挨拶を交わす。
「メリークリスマス。この雰囲気、懐かしいなぁ。……みんな、元気そうだね」
そして一番最後に入ってきた春は、全員の顔を見渡して満足そうに微笑んだ。その気持ち、わかるな。
私も少しだけ瞳を閉じ、物思いに耽った。その間、たぶん笑顔だったと思う。
だって、これでようやく全員集合できたんだもの。
杏が今日に相応しい挨拶をうたいながら部屋に入ってくる。
「やあ、久しいな。元気にしていたか?」
「ああ、勉強漬けの毎日を送ってるよ」
いつもと何も変わらない祐介は、私や彼と再会の挨拶を交わす。
「メリークリスマス。この雰囲気、懐かしいなぁ。……みんな、元気そうだね」
そして一番最後に入ってきた春は、全員の顔を見渡して満足そうに微笑んだ。その気持ち、わかるな。
私も少しだけ瞳を閉じ、物思いに耽った。その間、たぶん笑顔だったと思う。
だって、これでようやく全員集合できたんだもの。
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:39:18.64 ID:JgmbGynCo
この中で頻繁に顔を合わせていたのは竜司と杏、それと同じ秀尽に入学した双葉ぐらいだろう。だから、誰が仕切るでもなく、そこかしこから再会を祝す言葉と近況報告が聞こえてきた。
「なんか、急に騒がしくなったな」
狭い部屋で7人と1匹が作り出す喧騒の中、彼が私の耳元に顔を近づけて話した。
「そうね、でもこれが私たちの空気よね」
私は同じようにして、耳元に顔を近づけて言った。
「そうだな。やっぱりこのメンバーはこうじゃないと」
言うと、彼はソファを立ち私から離れた。私も立ち上がり、春や杏と言葉を交わす。
私は、彼のことと同じくらいに怪盗団の繋がりを大切にしたいと思っている。
「なんか、急に騒がしくなったな」
狭い部屋で7人と1匹が作り出す喧騒の中、彼が私の耳元に顔を近づけて話した。
「そうね、でもこれが私たちの空気よね」
私は同じようにして、耳元に顔を近づけて言った。
「そうだな。やっぱりこのメンバーはこうじゃないと」
言うと、彼はソファを立ち私から離れた。私も立ち上がり、春や杏と言葉を交わす。
私は、彼のことと同じくらいに怪盗団の繋がりを大切にしたいと思っている。
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:39:51.06 ID:JgmbGynCo
直接聞いてはいないけど、きっと彼もそうだと思う。そして、それはおそらくここのみんなが同じ気持ちだ。私はそう信じている。
だから、二人きりじゃなくても今は大丈夫。我慢する。
その分、あとでゆっくり楽しもう?
誰にも届かない声で、祐介や双葉と話す彼の背中にそう語りかけた。
互いがひとしきりの会話を終え、追加の椅子と机をみんなで用意しようと動き始めたときだった。
「なーんかやっぱ殺風景だなー」
「だねー、あんまクリスマスっぽくないよねー」
「というわけでこんなものを用意しました」
だから、二人きりじゃなくても今は大丈夫。我慢する。
その分、あとでゆっくり楽しもう?
誰にも届かない声で、祐介や双葉と話す彼の背中にそう語りかけた。
互いがひとしきりの会話を終え、追加の椅子と机をみんなで用意しようと動き始めたときだった。
「なーんかやっぱ殺風景だなー」
「だねー、あんまクリスマスっぽくないよねー」
「というわけでこんなものを用意しました」
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:42:04.00 ID:JgmbGynCo
竜司と杏のわざとらしい台詞のあと、双葉がどこからか紙袋を取り出した。中には緑やら銀やらに輝く飾り付けの小道具が入っていた。
「わぁ……キレイ」
「いろいろあるのね」
「お前らが用意したのか?」
祐介の問い掛けに、小芝居をした三人が得意げな顔を見せた。
「全員集合はほんっと久々だし、去年ちゃんとできなかったリベンジだよ!」
「そうそう。雰囲気作りってやつ?」
去年のクリスマスは、全員が絶望と怒りと悲しみという負の感情だけを抱えて迎えることになってしまった。
その分、今年はしっかり盛り上げようという気遣いらしい。私たちのムードメーカーはやっぱり、年下のこの子たちなんだよね。
「わぁ……キレイ」
「いろいろあるのね」
「お前らが用意したのか?」
祐介の問い掛けに、小芝居をした三人が得意げな顔を見せた。
「全員集合はほんっと久々だし、去年ちゃんとできなかったリベンジだよ!」
「そうそう。雰囲気作りってやつ?」
去年のクリスマスは、全員が絶望と怒りと悲しみという負の感情だけを抱えて迎えることになってしまった。
その分、今年はしっかり盛り上げようという気遣いらしい。私たちのムードメーカーはやっぱり、年下のこの子たちなんだよね。
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:43:29.96 ID:JgmbGynCo
でも、竜司と杏はそんなにはしゃぐような時期でもないんじゃ、という気がしてならない。空気悪くするのもあれだから言わないけど。
「三人の自腹だぞ。感謝しろおイナリ」
「何故俺だけに言う」
「だってお金ないだろう」
「ないな。感謝するぞ、三人とも」
「うん、ありがとね。竜司くん、杏ちゃん、双葉ちゃん」
私たちを代表して祐介と春がお礼を言うと、三人ともが笑顔を見せた。
「じゃあ、準備しましょうか。男子は机と椅子用意して、私たちで飾り付けしましょう」
たぶん、ここは私の出番だ。これだけ個性的な人間が集まっているのだから、皆が好き勝手にやると収拾がつかなくなるのは目に見えている。
「三人の自腹だぞ。感謝しろおイナリ」
「何故俺だけに言う」
「だってお金ないだろう」
「ないな。感謝するぞ、三人とも」
「うん、ありがとね。竜司くん、杏ちゃん、双葉ちゃん」
私たちを代表して祐介と春がお礼を言うと、三人ともが笑顔を見せた。
「じゃあ、準備しましょうか。男子は机と椅子用意して、私たちで飾り付けしましょう」
たぶん、ここは私の出番だ。これだけ個性的な人間が集まっているのだから、皆が好き勝手にやると収拾がつかなくなるのは目に見えている。
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:44:50.99 ID:JgmbGynCo
「飾り付けには俺の美的感覚が必要なのでは?」
祐介が意義を申し立てた。けど却下です。
「これにあと3ミリ左とか、そんなのいらないから」
「そうそう、祐介は細かすぎ」
「そういえばプランターのときもそんなだったね」
春が怪盗団に入りたての頃の思い出を持ち出してクスッと笑った。
「……御意」
「ワガハイは何をしようか?」
「うーん、モナは……。バランスを見てみんなに指示を出してもらえる?」
「了解だぜ、指示なら任せてくれ」
「じゃあ料理届く前にちゃっちゃと済ませるわよ」
祐介が意義を申し立てた。けど却下です。
「これにあと3ミリ左とか、そんなのいらないから」
「そうそう、祐介は細かすぎ」
「そういえばプランターのときもそんなだったね」
春が怪盗団に入りたての頃の思い出を持ち出してクスッと笑った。
「……御意」
「ワガハイは何をしようか?」
「うーん、モナは……。バランスを見てみんなに指示を出してもらえる?」
「了解だぜ、指示なら任せてくれ」
「じゃあ料理届く前にちゃっちゃと済ませるわよ」
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:45:33.25 ID:JgmbGynCo
私の号令に、各自からはーいとか了解とかバラバラの返事が返ってきた。
料理はピザやチキンのデリバリーを既に頼んでいた。これは春の計らいで、提携している会社の部門にそんなところがあって、タダで提供してくれるらしい。
私は結局のところ春が払ってくれるんじゃないかと思っているけど、どちらにしても感謝することには変わらないからみんなとお礼を言っておいた。
「これ、可愛いね」
春はツリーやサンタのジェルシールを窓ガラスに貼り付けている。天井につける飾りは背の高い杏が担当だ。
「フタバー、杏殿を手伝ってくれー」
「ほいさぁ」
竜司や彼も椅子を運んでいるし、みんなしっかり動いているようだ。私もやらなきゃと気合いを入れると、上着を脱ぎ捨て身軽になった。
料理はピザやチキンのデリバリーを既に頼んでいた。これは春の計らいで、提携している会社の部門にそんなところがあって、タダで提供してくれるらしい。
私は結局のところ春が払ってくれるんじゃないかと思っているけど、どちらにしても感謝することには変わらないからみんなとお礼を言っておいた。
「これ、可愛いね」
春はツリーやサンタのジェルシールを窓ガラスに貼り付けている。天井につける飾りは背の高い杏が担当だ。
「フタバー、杏殿を手伝ってくれー」
「ほいさぁ」
竜司や彼も椅子を運んでいるし、みんなしっかり動いているようだ。私もやらなきゃと気合いを入れると、上着を脱ぎ捨て身軽になった。
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:46:13.00 ID:JgmbGynCo
「杏、反対側は私がやるわ」
「……あ、うん。ありがと」
そうして会場のセッティングをすること約20分。
「おぉー」
「なかなかの出来映えだな」
「立派なもんじゃねーか、お前らワガハイの指示通りによくやったな」
「うるせえよ上から猫」
物がないわけではないのに、どこか殺風景だった屋根裏部屋が一変した。色とりどりの飾りが天井や壁、窓ガラスを覆い、いかにもクリスマスパーティーという装いになっている。こんなの私も初めてのことだから、なんだかワクワクする。
「……おぉ、なんだえらい本格的だな」
新たな声に階段へ目を向けると、マスターが天井を見上げ感嘆の声をあげていた。
「……あ、うん。ありがと」
そうして会場のセッティングをすること約20分。
「おぉー」
「なかなかの出来映えだな」
「立派なもんじゃねーか、お前らワガハイの指示通りによくやったな」
「うるせえよ上から猫」
物がないわけではないのに、どこか殺風景だった屋根裏部屋が一変した。色とりどりの飾りが天井や壁、窓ガラスを覆い、いかにもクリスマスパーティーという装いになっている。こんなの私も初めてのことだから、なんだかワクワクする。
「……おぉ、なんだえらい本格的だな」
新たな声に階段へ目を向けると、マスターが天井を見上げ感嘆の声をあげていた。
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:46:55.00 ID:JgmbGynCo
「だろう? クリスマスパーティーとか、わたし初めてだからよくわかんないけどな!」
「ふふ、私もよ」
私が双葉に同意すると、男子三人組も頷いた。
「私もみんなで飾り付けしたりとか、こんなのは初めて。楽しいね」
春はおそらくもっと盛大な、知らない人がたくさんいるようなものしか経験していないのだろう。私が言うのもなんだけど、ここのみんなは大概寂しい青春を送ってきたみたいだ。
「ま、楽しむのは結構だけどよ、あんま遅くまで大騒ぎすんなよ。じゃ、俺は帰るわ」
手を軽く挙げながら去る背中に、全員でお礼を伝えた。
しばらくダラダラ時間を潰していると、明らかに人数分以上と思われる食べ物が届き、もはやささやかでもなくなった、賑やかで盛大なパーティーが始まった。
「ふふ、私もよ」
私が双葉に同意すると、男子三人組も頷いた。
「私もみんなで飾り付けしたりとか、こんなのは初めて。楽しいね」
春はおそらくもっと盛大な、知らない人がたくさんいるようなものしか経験していないのだろう。私が言うのもなんだけど、ここのみんなは大概寂しい青春を送ってきたみたいだ。
「ま、楽しむのは結構だけどよ、あんま遅くまで大騒ぎすんなよ。じゃ、俺は帰るわ」
手を軽く挙げながら去る背中に、全員でお礼を伝えた。
しばらくダラダラ時間を潰していると、明らかに人数分以上と思われる食べ物が届き、もはやささやかでもなくなった、賑やかで盛大なパーティーが始まった。
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:47:43.71 ID:JgmbGynCo
みんな去年とは違う、彼のいるクリスマスを存分に楽しんでいた。
やっぱり全員が揃ってこその怪盗団だというのを改めて認識すると、この関係がいつまでも続きますようにと、胸の内で強く願った。
* * *
「うぐっ……。駄目だ、もう食えん……」
「俺、もう喋ったら出そうだ……」
「ワガハイも、もう無理だ……」
長い夕食が一段落すると、誰もが苦しそうに背もたれに体を預けていた。
「竜司くんもモナちゃんもスゴい食べてたねー。……ちょっと頼みすぎたかしら?」
「そうね。ちょっと、多かったかもしれないわね……」
やっぱり全員が揃ってこその怪盗団だというのを改めて認識すると、この関係がいつまでも続きますようにと、胸の内で強く願った。
* * *
「うぐっ……。駄目だ、もう食えん……」
「俺、もう喋ったら出そうだ……」
「ワガハイも、もう無理だ……」
長い夕食が一段落すると、誰もが苦しそうに背もたれに体を預けていた。
「竜司くんもモナちゃんもスゴい食べてたねー。……ちょっと頼みすぎたかしら?」
「そうね。ちょっと、多かったかもしれないわね……」
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:49:39.91 ID:JgmbGynCo
「でも美味しかったよー、ありがとね、春。けど、あー……明日からまた節制しなきゃ……」
杏が憂鬱そうに頬杖をついた。モデルはやっぱり大変なのね。でも、気を付けないといけないのは私も同じか。食べきらないと悪いと思って頑張りすぎた……。
届いた料理の数は、一言で言って尋常ではなかった。
チキンも来るとは聞いていたけど、まさかターキーの丸焼きがあんなに届くなんて春以外は誰も想像していなかった。絶対に無理と思っていたのに、よく食べきれたものだ。
「お前明らかに一番食ってたよな? なんで平気な顔してんだよ……」
そう、食べきれたのは彼のお陰と言っても過言ではない。みんなが苦しくなってきて絶望している中、一人だけペースを変えずに最後まで食べ続けていた。その彼は余裕綽々の顔をしている。
杏が憂鬱そうに頬杖をついた。モデルはやっぱり大変なのね。でも、気を付けないといけないのは私も同じか。食べきらないと悪いと思って頑張りすぎた……。
届いた料理の数は、一言で言って尋常ではなかった。
チキンも来るとは聞いていたけど、まさかターキーの丸焼きがあんなに届くなんて春以外は誰も想像していなかった。絶対に無理と思っていたのに、よく食べきれたものだ。
「お前明らかに一番食ってたよな? なんで平気な顔してんだよ……」
そう、食べきれたのは彼のお陰と言っても過言ではない。みんなが苦しくなってきて絶望している中、一人だけペースを変えずに最後まで食べ続けていた。その彼は余裕綽々の顔をしている。
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:50:33.62 ID:JgmbGynCo
知らなかったな、彼がこんなに食べる人だなんて。……今度、何か美味しいものたくさん作ったげようかな。
「ビッグバンバーガーで鍛えたからな」
「そういやオマエ、チャレンジでバカみたいなバーガー食ってたな……うぇっぷ」
「えー! あれ食べてくれてたんだ……。あんまり常識外れで評判よくなかったのに」
春が驚いているのを見て、どんなサイズかをなんとなく察した。今はあまり想像したくもない。
「……俺はもう、ピザとチキンは当分いらんな」
祐介がそう言うと、全員が息を吐いて天井を見上げ、お腹が落ち着くまでゆったりと時間を過ごした。
「ビッグバンバーガーで鍛えたからな」
「そういやオマエ、チャレンジでバカみたいなバーガー食ってたな……うぇっぷ」
「えー! あれ食べてくれてたんだ……。あんまり常識外れで評判よくなかったのに」
春が驚いているのを見て、どんなサイズかをなんとなく察した。今はあまり想像したくもない。
「……俺はもう、ピザとチキンは当分いらんな」
祐介がそう言うと、全員が息を吐いて天井を見上げ、お腹が落ち着くまでゆったりと時間を過ごした。
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:51:31.69 ID:JgmbGynCo
夜もいい時間になった頃、彼がふとした疑問を口にした。
「そういえば何時までやるんだ? これ」
実は私も聞きたかった。彼とこのあと二人で過ごそうと約束していたからだ。
別に今の時間が不要なものではないけれど、それは二人の時間が減ることと同義でもあるので気にはなる。
「んー、特に決めてはないけど、オールでいんじゃね? 明日も休みだし、朝帰ればさ」
ちょっと竜司、何を言い出すの。
「わたしは問題なーし。どうせ帰ってもヒマだしな」
「別に俺も構わんぞ。予定などまったくもってない」
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:53:18.97 ID:JgmbGynCo
「そりゃ祐介は推薦で決まってるからいいよね。……うーん、私もクリスマスに勉強する気なんないし、今日ぐらいは別にいいかなー」
竜司の提案に双葉、祐介、杏が矢継ぎ早に乗ってきた。
「えっ」
つい声が出てしまったと思ったら、私ではなく彼のほうだった。
「む、何か予定があったか?」
祐介が気遣うような素振りを見せるも、
「いやいや、クリスマスだぜ? あるわけねーよ、なぁ?」
竜司が邪魔をする。竜司……!
「えーと、その……」
彼にしては非常に珍しく、言いにくそうに口ごもる。ここにきて私たちの関係をみんなに伝えていないことが仇となった。
竜司の提案に双葉、祐介、杏が矢継ぎ早に乗ってきた。
「えっ」
つい声が出てしまったと思ったら、私ではなく彼のほうだった。
「む、何か予定があったか?」
祐介が気遣うような素振りを見せるも、
「いやいや、クリスマスだぜ? あるわけねーよ、なぁ?」
竜司が邪魔をする。竜司……!
「えーと、その……」
彼にしては非常に珍しく、言いにくそうに口ごもる。ここにきて私たちの関係をみんなに伝えていないことが仇となった。
68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:54:25.40 ID:JgmbGynCo
そこで、彼が私にだけわかるように目線を寄越した。そのアイコンタクトはさしづめ「言ってもいいか?」というところだろう。
「……クリスマスイブの夜に、予定あるの?」
双葉の声。
「……それなら、仕方ないけどさ……」
杏の声。
「みんながそうするなら私も、って思ったんだけど……」
これは春。
困る彼の姿を見て、自らに問いかけ、納得させる。
…………明日もあるし、ね?
私たち怪盗団にとってはみんなのジョーカーだし、独り占めはよくないよね。
「……クリスマスイブの夜に、予定あるの?」
双葉の声。
「……それなら、仕方ないけどさ……」
杏の声。
「みんながそうするなら私も、って思ったんだけど……」
これは春。
困る彼の姿を見て、自らに問いかけ、納得させる。
…………明日もあるし、ね?
私たち怪盗団にとってはみんなのジョーカーだし、独り占めはよくないよね。
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:55:03.25 ID:JgmbGynCo
彼と同じぐらいみんなのことも大事なのは、嘘じゃないから。でも、いつかは本当に話して、みんなに祝福してもらいたいな。
そんなことを考えると彼の視界に入り、目を閉じて首を微かに振った。それで伝わった。
「……いや、予定はないから大丈夫」
「だよなー? 俺は裏切るヤツじゃないと思ってたぜ」
「お前ならいたとしても不思議ではないと思うがな」
祐介、鋭い。
「そういえばマコちゃんは? 泊まり、大丈夫なの?」
春から振られ、私は答えた。
「私も大丈夫よ。あとでお姉ちゃんに連絡しておくわ。こうなったらとことん楽しみましょう」
そんなことを考えると彼の視界に入り、目を閉じて首を微かに振った。それで伝わった。
「……いや、予定はないから大丈夫」
「だよなー? 俺は裏切るヤツじゃないと思ってたぜ」
「お前ならいたとしても不思議ではないと思うがな」
祐介、鋭い。
「そういえばマコちゃんは? 泊まり、大丈夫なの?」
春から振られ、私は答えた。
「私も大丈夫よ。あとでお姉ちゃんに連絡しておくわ。こうなったらとことん楽しみましょう」
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:55:43.07 ID:JgmbGynCo
「お、真パイセン乗り気。朝帰りだぞー?」
「もう大学生だし、委員長の看板は降ろしたからね」
「夜は、まだまだこれからだ」
そう言い放つ彼と目が合うと、彼は諦めたような笑顔を見せた。
それからは双葉が持ってきたいろいろなゲームをして過ごすことになった。ミッションも任務もない時間でも、元怪盗団のみんなと居るのは大学の誰と過ごすよりも楽しかった。
やっぱり、乗り越えてきた時間の濃密さが違うんだろうな。
こうして、騒がしく楽しい夜は更けていった。
* * *
「もう大学生だし、委員長の看板は降ろしたからね」
「夜は、まだまだこれからだ」
そう言い放つ彼と目が合うと、彼は諦めたような笑顔を見せた。
それからは双葉が持ってきたいろいろなゲームをして過ごすことになった。ミッションも任務もない時間でも、元怪盗団のみんなと居るのは大学の誰と過ごすよりも楽しかった。
やっぱり、乗り越えてきた時間の濃密さが違うんだろうな。
こうして、騒がしく楽しい夜は更けていった。
* * *
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:56:22.99 ID:JgmbGynCo
日付はとうに25日になり、午前1時を大きく回った頃にはみんなのテンションにも変化が出始めた。
「ぁふ……」
春が大きな欠伸をして目を擦ったので声をかけた。
「無理しないで、眠ったら?」
「ん~、私普段あんまり夜更かししないからなぁ。お言葉に甘えさせてもらおうかな……」
「……ダメだ、私も眠いー。ちょっと寝ようかな……」
杏も眠そうだ。彼がそんな二人に言った。
「ベッド使っていいから、二人で寝たら?」
……なんだろう。
72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:57:22.06 ID:JgmbGynCo
夏の勉強中とか、私も寝かせてもらったことのある彼のベッド。そこに、私以外の女の子が寝るということに、言葉では表現できないモヤモヤがある。
たぶん、いや絶対、これは嫉妬的なやつだ。合理的な思考で排除できない、自分ではどうにもならない感情的な部分だ。
「え、マジ? ありがとー。春、一緒に寝よー」
「あ、うん……。杏ちゃん、寝相悪かったらごめんね。ベッド、借りるね」
二人は覚束ない足取りでベッドに向かうとすぐに横たわり、間もなく穏やかな寝息が聞こえてきた。べ、別に羨ましくなんかないんだから。
「ほぅ……」
「ほほー……」
抱き合うようにも見える姿勢で寝る二人へ向けられる、祐介と竜司の謎の興味になんとなくイラっとした。
たぶん、いや絶対、これは嫉妬的なやつだ。合理的な思考で排除できない、自分ではどうにもならない感情的な部分だ。
「え、マジ? ありがとー。春、一緒に寝よー」
「あ、うん……。杏ちゃん、寝相悪かったらごめんね。ベッド、借りるね」
二人は覚束ない足取りでベッドに向かうとすぐに横たわり、間もなく穏やかな寝息が聞こえてきた。べ、別に羨ましくなんかないんだから。
「ほぅ……」
「ほほー……」
抱き合うようにも見える姿勢で寝る二人へ向けられる、祐介と竜司の謎の興味になんとなくイラっとした。
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:58:13.71 ID:JgmbGynCo
ちょっと落ち着こう……。
「双葉はまだ平気なの?」
「ラクショーだ。もともとわたしは夜型だからな」
双葉はまだまだ元気のようで、続けてみんなに提案した。
「トランプあるし、大富豪でもする? みんなルール知ってるだろ?」
「お、いいな。やろうぜ」
「俺も付き合おう」
「大貧民は罰ゲームな」
「よし、ワガハイがズルしてないか後ろから見てやる」
「真はどうする?」
テーブルを囲む四人と一匹を遠巻きに眺めていると、彼が私を気遣ってくれた。
「双葉はまだ平気なの?」
「ラクショーだ。もともとわたしは夜型だからな」
双葉はまだまだ元気のようで、続けてみんなに提案した。
「トランプあるし、大富豪でもする? みんなルール知ってるだろ?」
「お、いいな。やろうぜ」
「俺も付き合おう」
「大貧民は罰ゲームな」
「よし、ワガハイがズルしてないか後ろから見てやる」
「真はどうする?」
テーブルを囲む四人と一匹を遠巻きに眺めていると、彼が私を気遣ってくれた。
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 19:58:53.27 ID:JgmbGynCo
「私はいいわ、ちょっと休憩。お手洗い、借りるわね」
そう言い残して、一人階段に向かった。
朝から無駄に気を張ってたから疲れていたのも事実だけど、実はルールをよく知らなかった。もしかしたら杏も春も知っていて、私だけが知らないのかもしれない。
優等生、参謀、委員長、生徒会長。私にはそういう、ご立派に見える役職や肩書きだけは数あれど、遊びとなるとまったくの無知だ。そんな人付き合いをしてこなかったから。
営業を終えた店内はオレンジ色の薄暗い灯りだけが点り、昼間とは随分違って見えた。昔、彼に連れられて行ったバーを思わせるような雰囲気だ。
宣言通りお手洗いを借りたあと、誰もいない店内の、階段に背を向ける席に座った。入り口が見やすい、釈放となった彼を心待ちに迎えた席だ。
そう言い残して、一人階段に向かった。
朝から無駄に気を張ってたから疲れていたのも事実だけど、実はルールをよく知らなかった。もしかしたら杏も春も知っていて、私だけが知らないのかもしれない。
優等生、参謀、委員長、生徒会長。私にはそういう、ご立派に見える役職や肩書きだけは数あれど、遊びとなるとまったくの無知だ。そんな人付き合いをしてこなかったから。
営業を終えた店内はオレンジ色の薄暗い灯りだけが点り、昼間とは随分違って見えた。昔、彼に連れられて行ったバーを思わせるような雰囲気だ。
宣言通りお手洗いを借りたあと、誰もいない店内の、階段に背を向ける席に座った。入り口が見やすい、釈放となった彼を心待ちに迎えた席だ。
75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:00:18.08 ID:JgmbGynCo
「そんな弱いの一枚だけ残してどうやってアガルんだよ! リュージはバカなのか!? 頭リュージか!」
「後ろからうっせーぞ猫! つかバラしてんじゃねえよ!」
杏と春が寝ているのに、騒がしい声が下まで聞こえてきておもわず笑みが溢れた。というか、モナまで大富豪のルールを理解してるのはなんでなの……。
まだあまり眠くもないけど、腕を伸ばしてテーブルに突っ伏した。店全体に染み込んだような香りが、珈琲を淹れる彼の姿を瞼の裏に鮮明に呼び起こす。
「はぁ……。気合い入れてきたけど、出直しかなー……」
泊まりは、もしかするともしかするかもしれないという淡い期待をして出てきたけど、まさかみんなも一緒だなんて。
「後ろからうっせーぞ猫! つかバラしてんじゃねえよ!」
杏と春が寝ているのに、騒がしい声が下まで聞こえてきておもわず笑みが溢れた。というか、モナまで大富豪のルールを理解してるのはなんでなの……。
まだあまり眠くもないけど、腕を伸ばしてテーブルに突っ伏した。店全体に染み込んだような香りが、珈琲を淹れる彼の姿を瞼の裏に鮮明に呼び起こす。
「はぁ……。気合い入れてきたけど、出直しかなー……」
泊まりは、もしかするともしかするかもしれないという淡い期待をして出てきたけど、まさかみんなも一緒だなんて。
76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:01:27.53 ID:JgmbGynCo
クリスマス前に頼った文明の利器による検索は、私の内側に目に見える変化を起こしていた。
内面、ではなく内側だ。今風なのかすらよくわからないけど、調べた言葉で言うならアウターではなく、インナー。
外を歩く分にはいつもの私とそう変わりない。気持ちスカートが短いぐらいだけど、上着を脱いだ今日の私は普段よりも露出が高いはずだった(私比)。
私にしてはかなりおもいきったと思う。こんなに襟元が開いた服なんて着たことがないから、意識すると今さらながらにソワソワしてしまう。
"普段は見せない人の場合、より効果的です"との煽り文句に、疑心暗鬼ながらもまんまと乗せられてみたものの、今のところ特に目立った反応はない。
自分の慎ましい胸元に目をやって、私は何をやっているんだろうと顔が熱くなった。
内面、ではなく内側だ。今風なのかすらよくわからないけど、調べた言葉で言うならアウターではなく、インナー。
外を歩く分にはいつもの私とそう変わりない。気持ちスカートが短いぐらいだけど、上着を脱いだ今日の私は普段よりも露出が高いはずだった(私比)。
私にしてはかなりおもいきったと思う。こんなに襟元が開いた服なんて着たことがないから、意識すると今さらながらにソワソワしてしまう。
"普段は見せない人の場合、より効果的です"との煽り文句に、疑心暗鬼ながらもまんまと乗せられてみたものの、今のところ特に目立った反応はない。
自分の慎ましい胸元に目をやって、私は何をやっているんだろうと顔が熱くなった。
77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:02:09.15 ID:JgmbGynCo
上にはナチュラルに生足を出している双葉や、現役モデルでスタイルについて今さら張り合う気すらしない杏、密かに着痩せするタイプと見ている春なんかがいるから、私が目立たないのはわかる。
わかるけど、彼すら何も反応してくれないのはなぜなにどうして。
……なんか、卑怯だ。狡いよ。
私ばかりこんなに好きで、やきもきさせられるなんて。
「もう、人の気持ち知らないでベッドに普通に寝かせるし……」
姿勢を変えて背もたれに寄りかかると、自然と寒そうな外に目が向いた。
外灯が仄かに照らす地面の上を、綿のような白い結晶が舞うのが見えた。
「今年も、降るのね……」
おそらく世の恋人同士の大半は、ホワイトクリスマスだねと喜び、ロマンチックな夜を盛り上げる幸運な出来事と感じていることだろう。
わかるけど、彼すら何も反応してくれないのはなぜなにどうして。
……なんか、卑怯だ。狡いよ。
私ばかりこんなに好きで、やきもきさせられるなんて。
「もう、人の気持ち知らないでベッドに普通に寝かせるし……」
姿勢を変えて背もたれに寄りかかると、自然と寒そうな外に目が向いた。
外灯が仄かに照らす地面の上を、綿のような白い結晶が舞うのが見えた。
「今年も、降るのね……」
おそらく世の恋人同士の大半は、ホワイトクリスマスだねと喜び、ロマンチックな夜を盛り上げる幸運な出来事と感じていることだろう。
78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:02:48.70 ID:JgmbGynCo
けど、私にとって幸せの象徴とは言い難い。痛く切ないあの日と繋がる、悲壮な光景に近い。
ここ最近でいったい何度目になるだろう。雲の吐き出す息の残滓は去年の記憶をこれまでよりも鮮明に思い起こさせ、反射的に目を閉じた。
失くしたくはないものだけど、今は思い出したくない。
俯いて目を閉じたまま耐えていると、ふわりと浮き上がるようにして意識が遠のいていった。
* * *
……肩に何かが触れる感触があった。暖かい……。
……今度は腕を引かれたような気がした。身体が傾き、頭を預けた。
ここ最近でいったい何度目になるだろう。雲の吐き出す息の残滓は去年の記憶をこれまでよりも鮮明に思い起こさせ、反射的に目を閉じた。
失くしたくはないものだけど、今は思い出したくない。
俯いて目を閉じたまま耐えていると、ふわりと浮き上がるようにして意識が遠のいていった。
* * *
……肩に何かが触れる感触があった。暖かい……。
……今度は腕を引かれたような気がした。身体が傾き、頭を預けた。
79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:03:35.66 ID:JgmbGynCo
続けて、私のよく知っている好きな匂いを近くに感じ、うっすらと目を開けた。片方だけ視界が滲んでいるけど、ここはルブランの店内だ。
「……ごめん、起こしちゃったね」
すぐ傍で声が聞こえた。顔を動かすと、隣に彼が座っていた。
「怖い夢でも見てた?」
いつの間にこんな状況になったのかもわからないまま、冴えない頭で会話を続ける。
「……夢? どうして?」
「泣いてるから」
両手で軽く目の下を拭うと、右手にだけ濡れた感覚があった。これが視界の滲みの原因だったみたい。
夢を見た覚えはなかった。見ていたとしても、その内容を覚えてはいない。でも、寝ていた私が何を想い、どう感じていたかはわかる。
「……ごめん、起こしちゃったね」
すぐ傍で声が聞こえた。顔を動かすと、隣に彼が座っていた。
「怖い夢でも見てた?」
いつの間にこんな状況になったのかもわからないまま、冴えない頭で会話を続ける。
「……夢? どうして?」
「泣いてるから」
両手で軽く目の下を拭うと、右手にだけ濡れた感覚があった。これが視界の滲みの原因だったみたい。
夢を見た覚えはなかった。見ていたとしても、その内容を覚えてはいない。でも、寝ていた私が何を想い、どう感じていたかはわかる。
80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:04:20.72 ID:JgmbGynCo
去年と同じようについた、一筋の跡がその答えだ。
「何かあった?」
私は何も言わず、倒れかかるように彼の胸に顔を押し付けた。知らないうちに肩に掛けられていた、彼の上着がずれ落ちた。
そして強く、全力で、力一杯彼の体を抱き締めた。もう彼に置いていかれることのないように。二度と離さぬように。
その心からの願いは、抱き締める力には転換されず感情の発露となり、瞳から止めどなく溢れ続けた。
彼もそれから何も問うことなく私を抱き止め、頭を優しく撫でてくれていた。
どのくらいそうしていたんだろう。
「何かあった?」
私は何も言わず、倒れかかるように彼の胸に顔を押し付けた。知らないうちに肩に掛けられていた、彼の上着がずれ落ちた。
そして強く、全力で、力一杯彼の体を抱き締めた。もう彼に置いていかれることのないように。二度と離さぬように。
その心からの願いは、抱き締める力には転換されず感情の発露となり、瞳から止めどなく溢れ続けた。
彼もそれから何も問うことなく私を抱き止め、頭を優しく撫でてくれていた。
どのくらいそうしていたんだろう。
81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:05:00.82 ID:JgmbGynCo
長い時間ではなかったと思う。でも短い時間とも思えない。時間の感覚はよくわからないけど、涙はもう出ていない。
「今、何時?」
「3時過ぎたぐらいかな。祐介も力尽きて、今は双葉と竜司だけでゲームしてるよ」
うとうとしただけと思っていたら、一時間以上寝ていたらしい。
「何か飲む?」
水分が出たせいか喉が乾いていたけど、胸に頭をつけたまま首を振り、彼の服を握りしめた。
「離れちゃ……やだ。ここに、いて」
今は珈琲を淹れる間だけでも、飲み物を取りに行く僅かな時間だけでも、離れてほしくない。
「……わかった。傍にいるよ」
「今、何時?」
「3時過ぎたぐらいかな。祐介も力尽きて、今は双葉と竜司だけでゲームしてるよ」
うとうとしただけと思っていたら、一時間以上寝ていたらしい。
「何か飲む?」
水分が出たせいか喉が乾いていたけど、胸に頭をつけたまま首を振り、彼の服を握りしめた。
「離れちゃ……やだ。ここに、いて」
今は珈琲を淹れる間だけでも、飲み物を取りに行く僅かな時間だけでも、離れてほしくない。
「……わかった。傍にいるよ」
82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:05:57.81 ID:JgmbGynCo
彼は私の子供のような我儘を聞くと、また優しく抱き締めてくれた。
耳を当てると感じる心臓の音は、彼が今、間違いなくここにいるんだと私を納得させ、安心させる効果があった。
心地好い音色のようにも思える、愛する人の鼓動。私自身の心音もそのペースに合わせるように、次第に間隔を落としていった。
「落ち着いた?」
「……うん。もう、大丈夫」
「そっか。……よかったら、何があったのか話してほしいな」
そうだね。いきなり泣き出されて、わけがわからないのは彼のほうだよね。
ここに来る前に決めてきた。ちゃんと話そうって。私のことをもっとわかってもらおうって。
耳を当てると感じる心臓の音は、彼が今、間違いなくここにいるんだと私を納得させ、安心させる効果があった。
心地好い音色のようにも思える、愛する人の鼓動。私自身の心音もそのペースに合わせるように、次第に間隔を落としていった。
「落ち着いた?」
「……うん。もう、大丈夫」
「そっか。……よかったら、何があったのか話してほしいな」
そうだね。いきなり泣き出されて、わけがわからないのは彼のほうだよね。
ここに来る前に決めてきた。ちゃんと話そうって。私のことをもっとわかってもらおうって。
83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:06:49.99 ID:JgmbGynCo
「……雪を、見てたの」
「雪? ……ああ」
彼が扉の外に目をやった。
「それで、いろいろ思い出してるうちに寝ちゃってた。夢は、覚えてないけど……たぶん、貴方とか、お父さんとか。大切な人がいなくなっちゃうような、寂しい夢だったんだと思う。……ちょうど一年前にも同じことやったから」
彼は何も言わず、投げ出していた私の手を探して指を絡めた。その温かさに勇気をもらい、続きを話す。
「……でね、目が覚めたらまた、貴方が私の声の届かないところに行ってるんじゃないか、私に何も言わずに消えてるんじゃないかって、不安で、怖かった。でも、起きたら隣に貴方がいて安心したらね、なんか涙が出てきちゃって……」
「……ごめん。俺のせいだね」
「雪? ……ああ」
彼が扉の外に目をやった。
「それで、いろいろ思い出してるうちに寝ちゃってた。夢は、覚えてないけど……たぶん、貴方とか、お父さんとか。大切な人がいなくなっちゃうような、寂しい夢だったんだと思う。……ちょうど一年前にも同じことやったから」
彼は何も言わず、投げ出していた私の手を探して指を絡めた。その温かさに勇気をもらい、続きを話す。
「……でね、目が覚めたらまた、貴方が私の声の届かないところに行ってるんじゃないか、私に何も言わずに消えてるんじゃないかって、不安で、怖かった。でも、起きたら隣に貴方がいて安心したらね、なんか涙が出てきちゃって……」
「……ごめん。俺のせいだね」
84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:08:53.11 ID:JgmbGynCo
そう謝る彼に、私は寄りかかるのを止め、姿勢を正して言った。思っていることを、全部。
「そうだよ、貴方のせい。私がこんなに泣き虫になったのも、貴方のことを想うと苦しくてどうしようもなくなるのも、全部。……私をこんなにした責任、とってほしい」
「もちろん、とるつもりだよ。真は……、後悔してる?」
繋いだ手と、声に力をこめた。
「ううん。してるわけないじゃない、冗談よ。私が勝手に好きになっただけだし、それに、過ぎたことはもういいの。私は貴方と、未来を歩いていきたいから」
「……そっか。じゃあその未来の為に、俺が今できることはある?」
彼に問われ、考えた。
支え合い、並び歩くなら対等である必要がある。けれど、私たちはきっと対等じゃない。少なくとも私はそう思っている。
「そうだよ、貴方のせい。私がこんなに泣き虫になったのも、貴方のことを想うと苦しくてどうしようもなくなるのも、全部。……私をこんなにした責任、とってほしい」
「もちろん、とるつもりだよ。真は……、後悔してる?」
繋いだ手と、声に力をこめた。
「ううん。してるわけないじゃない、冗談よ。私が勝手に好きになっただけだし、それに、過ぎたことはもういいの。私は貴方と、未来を歩いていきたいから」
「……そっか。じゃあその未来の為に、俺が今できることはある?」
彼に問われ、考えた。
支え合い、並び歩くなら対等である必要がある。けれど、私たちはきっと対等じゃない。少なくとも私はそう思っている。
85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:10:03.67 ID:JgmbGynCo
「……私のこと、もっと、好きになってほしい……な」
思うのは簡単だけど、口にするのは難しい。というか恥ずかしい。今は周りが暗いからバレないだろうけど、耳まで赤くなっていそうだ。
「そう言われてもな。もう真のこと大好きだし」
「絶対そう言うと思ってた。別に、それを疑ってるわけじゃないの。けど、貴方の好きよりも、私の好きのほうがきっと大きい。私ばっかりやきもち妬いて、どうしたらもっと好きになってもらえるか悩んで、こんなの狡い」
「……やきもち、妬いてたの? どこで?」
彼は意外そうに間隔の短い瞬きをした。墓穴を掘ったような気がする。
「え、えーと……。今、春と杏が貴方のベッドで寝てること、とか……」
思うのは簡単だけど、口にするのは難しい。というか恥ずかしい。今は周りが暗いからバレないだろうけど、耳まで赤くなっていそうだ。
「そう言われてもな。もう真のこと大好きだし」
「絶対そう言うと思ってた。別に、それを疑ってるわけじゃないの。けど、貴方の好きよりも、私の好きのほうがきっと大きい。私ばっかりやきもち妬いて、どうしたらもっと好きになってもらえるか悩んで、こんなの狡い」
「……やきもち、妬いてたの? どこで?」
彼は意外そうに間隔の短い瞬きをした。墓穴を掘ったような気がする。
「え、えーと……。今、春と杏が貴方のベッドで寝てること、とか……」
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:11:39.37 ID:JgmbGynCo
「あー……。でも、他に寝る場所ないしさ」
「う、うん、わかってるよ? 仕方ないって。でも、どうにもならないのよ……」
言い淀む私を見て、彼は少し寂しそうに微笑んだ。
「真のこと、好きなのは本当なんだけどな……」
「もしかして、隠してる……というか、言ってないこと、ある?」
彼の表情と、彼にしては珍しい言い切らない台詞で、なんとなくそう感じた。
「…………」
「私は、言ったよ? だから、次は貴方の番。話してほしい」
「……そうだな。いつかは、言わないといけないと思ってたんだ」
「う、うん、わかってるよ? 仕方ないって。でも、どうにもならないのよ……」
言い淀む私を見て、彼は少し寂しそうに微笑んだ。
「真のこと、好きなのは本当なんだけどな……」
「もしかして、隠してる……というか、言ってないこと、ある?」
彼の表情と、彼にしては珍しい言い切らない台詞で、なんとなくそう感じた。
「…………」
「私は、言ったよ? だから、次は貴方の番。話してほしい」
「……そうだな。いつかは、言わないといけないと思ってたんだ」
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:12:24.14 ID:JgmbGynCo
深刻さを増す彼の不穏な言葉に、私の胸が警鐘を鳴らす。聞かないほうがよかったことなのかもしれないと。
でも止めるには遅すぎた。彼はもう次の言葉を発していた。
「実は、真に遠慮というか……、これ以上はいけないって、自重してたところがある。そうする前に、一つだけ真に確認しないとって思いながらなかなか言えなかった」
彼は私の望んだ通り、自分のことを話してくれている。受け入れなければならないのに、聞くのが怖い。
「臆病なのは、真だけじゃないよ。俺だって怖い。ほら」
彼は私の心を読んだようにそう言うと、自分の胸、心臓の位置を指差した。耳を当てると、さっきよりも速い鼓動が聞こえた。
「これは焦燥感とか不安のせい。真のことが好きだから、言ったら離れることになるかもしれないって思うと怖くて、ずっと言えなかった」
でも止めるには遅すぎた。彼はもう次の言葉を発していた。
「実は、真に遠慮というか……、これ以上はいけないって、自重してたところがある。そうする前に、一つだけ真に確認しないとって思いながらなかなか言えなかった」
彼は私の望んだ通り、自分のことを話してくれている。受け入れなければならないのに、聞くのが怖い。
「臆病なのは、真だけじゃないよ。俺だって怖い。ほら」
彼は私の心を読んだようにそう言うと、自分の胸、心臓の位置を指差した。耳を当てると、さっきよりも速い鼓動が聞こえた。
「これは焦燥感とか不安のせい。真のことが好きだから、言ったら離れることになるかもしれないって思うと怖くて、ずっと言えなかった」
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:13:16.80 ID:JgmbGynCo
言葉を失った。
知らなかった。彼がそんな葛藤をしていたなんて。
私は怪盗団のリーダーだった彼のイメージをそのまま重ね、完全無欠の人だと思い込んでいた。でも、怪盗団をやれていたのは一年前の話で、今は普通の高校生だ。
そんな彼にレッテルを張り、本当の心を知ろうとせず、重ね合わせようとしてこなかったのは私自身だと思い知った。
途端、胸を締め付けられるような痛みが走り、心の底から絞り出すように謝罪の言葉が溢れ出た。
「ごめん……。全然、気付いてあげられなくて……」
「真が謝ることなんてない。怪盗団じゃない俺には勇気が足りなかっただけの話だ。……もう、ちゃんと話すよ」
知らなかった。彼がそんな葛藤をしていたなんて。
私は怪盗団のリーダーだった彼のイメージをそのまま重ね、完全無欠の人だと思い込んでいた。でも、怪盗団をやれていたのは一年前の話で、今は普通の高校生だ。
そんな彼にレッテルを張り、本当の心を知ろうとせず、重ね合わせようとしてこなかったのは私自身だと思い知った。
途端、胸を締め付けられるような痛みが走り、心の底から絞り出すように謝罪の言葉が溢れ出た。
「ごめん……。全然、気付いてあげられなくて……」
「真が謝ることなんてない。怪盗団じゃない俺には勇気が足りなかっただけの話だ。……もう、ちゃんと話すよ」
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:14:28.22 ID:JgmbGynCo
「……うん。聞かせて」
体の向きを変え、横に座る彼と顔を合わせた。真正面から向き合った。
私も、もう逃げない。
「真は警察官僚を目指すんだよね? それは変わってない?」
彼の告白は予想の外の話から始まった。
「え? う、うん。そのつもりよ。話した通り」
「……そうか。俺は、真なら順当にその道を進んでいけると思う。けど、夢を叶えることを考えたら、俺とこの先も付き合っていくのは真にとってマイナスにしかならないかもしれない。それでも付き合っていけるのか、確認させてほしかった」
彼は真剣な眼差しで、私を見据えながら話した。口調も真面目そのものだ。
体の向きを変え、横に座る彼と顔を合わせた。真正面から向き合った。
私も、もう逃げない。
「真は警察官僚を目指すんだよね? それは変わってない?」
彼の告白は予想の外の話から始まった。
「え? う、うん。そのつもりよ。話した通り」
「……そうか。俺は、真なら順当にその道を進んでいけると思う。けど、夢を叶えることを考えたら、俺とこの先も付き合っていくのは真にとってマイナスにしかならないかもしれない。それでも付き合っていけるのか、確認させてほしかった」
彼は真剣な眼差しで、私を見据えながら話した。口調も真面目そのものだ。
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:17:04.06 ID:JgmbGynCo
その彼は私に問うている。今後も自分と付き合っていく覚悟はあるのかと。
けど、まだそれには答えられない。
「答える前に、理由を聞かせて」
「うん。俺は警察じゃないし、警察関係者から直接聞いたわけでもない。けど、信頼できる筋に聞いて確認してから、たぶん大きくは外れてないと思う」
「何を、聞いたの?」
「警察という組織について」
一呼吸おいて、彼は話し始めた。
「警察は生半可な組織じゃない。ましてや警察官僚は国家公務員の身分だから、結婚どころか付き合うだけでも組織を挙げてその相手の調査がされるところだ。上を目指すなら、獅童の件は晴れたとはいえ、怪盗団として前科のある俺なんかと付き合っていいことなんか何もない」
けど、まだそれには答えられない。
「答える前に、理由を聞かせて」
「うん。俺は警察じゃないし、警察関係者から直接聞いたわけでもない。けど、信頼できる筋に聞いて確認してから、たぶん大きくは外れてないと思う」
「何を、聞いたの?」
「警察という組織について」
一呼吸おいて、彼は話し始めた。
「警察は生半可な組織じゃない。ましてや警察官僚は国家公務員の身分だから、結婚どころか付き合うだけでも組織を挙げてその相手の調査がされるところだ。上を目指すなら、獅童の件は晴れたとはいえ、怪盗団として前科のある俺なんかと付き合っていいことなんか何もない」
91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:18:31.27 ID:JgmbGynCo
私は彼の憂慮を黙って聞き続けた。ようやく彼の考えていることが、気持ちがわかってきた。
「要は……、俺は、真を支えるつもりだし離れたくないけど、同じくらい真の夢の足枷にはなりたくない。怪盗団をやってあんなことになった時点で、俺は日陰の人間なんだ。だから、俺みたいな人間との付き合いは……」
彼が言い淀んだ隙に、口を挟んで発言を遮った。
その先は、言わなくていいよ。そんな悲しいこと、もう考えなくていいんだよ。
「……よかった。何を言われるのかと思った。そんなことならとっくに知ってる。全部覚悟の上だよ。私だって、既に公安から目を付けられてるのよ?」
私は彼の言葉を聞いて安堵していた。私自身に重大な問題があって、それが気掛かりで遠慮しているのかと思い浮かべていたから。
「要は……、俺は、真を支えるつもりだし離れたくないけど、同じくらい真の夢の足枷にはなりたくない。怪盗団をやってあんなことになった時点で、俺は日陰の人間なんだ。だから、俺みたいな人間との付き合いは……」
彼が言い淀んだ隙に、口を挟んで発言を遮った。
その先は、言わなくていいよ。そんな悲しいこと、もう考えなくていいんだよ。
「……よかった。何を言われるのかと思った。そんなことならとっくに知ってる。全部覚悟の上だよ。私だって、既に公安から目を付けられてるのよ?」
私は彼の言葉を聞いて安堵していた。私自身に重大な問題があって、それが気掛かりで遠慮しているのかと思い浮かべていたから。
92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:23:18.70 ID:JgmbGynCo
そうじゃないなら、二人なら、なんとだってなるよ。
「……そんなこと? これがそんなことなわけないだろ。重要なことだ」
「いいえ。そんなの些事に過ぎないわ。私にとって何より大切なのは……、私の夢を見つけてくれた人の傍で、ずっと、一緒に歩んでいくこと。それだけだよ」
「真……」
彼は呆けたように私の名を呟いた。
「私を救ってくれた貴方を失ってまで、目指したい正義なんてない。そんなの本末転倒よ。何もやましいことはしてない貴方が日陰に追いやられるというなら、そんな構造から変えてやるわ」
「……ははっ。なんか、気にしてたのが馬鹿みたいだな」
彼は堅かった表情を、嘘みたいに崩して笑った。
「……そんなこと? これがそんなことなわけないだろ。重要なことだ」
「いいえ。そんなの些事に過ぎないわ。私にとって何より大切なのは……、私の夢を見つけてくれた人の傍で、ずっと、一緒に歩んでいくこと。それだけだよ」
「真……」
彼は呆けたように私の名を呟いた。
「私を救ってくれた貴方を失ってまで、目指したい正義なんてない。そんなの本末転倒よ。何もやましいことはしてない貴方が日陰に追いやられるというなら、そんな構造から変えてやるわ」
「……ははっ。なんか、気にしてたのが馬鹿みたいだな」
彼は堅かった表情を、嘘みたいに崩して笑った。
93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:23:56.81 ID:JgmbGynCo
「うん、バカね。また黙って、一人で抱えて……。でもね、私のことを大事に思ってくれてるから、そう考えたんだろうなっていうのもわかってるよ。……だからもう少しだけ私のこと、信用して、頼ってよ」
「ああ。こんなのは最後にするって約束する。もう、遠慮はなしだ」
「そうしてくれると嬉しいな」
そう言うと、私も自然と笑顔になれた。
「強いね、真は」
「一人で抱えられる、貴方ほどじゃないけど……そうね。この強さは、貴方から貰ったものなんだよ」
「そっか。力になれてるなら嬉しい」
「……でもね、私のこの弱さも、貴方から貰ったもの」
彼の首に手を回してしがみつくと、額を合わせた。透き通った瞳が数センチの距離にある。
「ああ。こんなのは最後にするって約束する。もう、遠慮はなしだ」
「そうしてくれると嬉しいな」
そう言うと、私も自然と笑顔になれた。
「強いね、真は」
「一人で抱えられる、貴方ほどじゃないけど……そうね。この強さは、貴方から貰ったものなんだよ」
「そっか。力になれてるなら嬉しい」
「……でもね、私のこの弱さも、貴方から貰ったもの」
彼の首に手を回してしがみつくと、額を合わせた。透き通った瞳が数センチの距離にある。
94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:24:31.24 ID:JgmbGynCo
「……私、もう貴方なしじゃいられないの」
「俺もだよ。真がいないなんてもう、考えられない」
囁き合うと、彼が私の顔を両手で挟んだ。私は静かに瞼を閉じた。
やがて唇に柔らかいものが触れ、少しして離れた。
名残惜しさを感じて、ゆっくりと目を開いた。閉じる前と変わらず、彼はそこにいてくれた。
「……みんな上にいるのに、凄いことしちゃったね」
言い終わるや否や、彼はまた私に口づけをした。初めての、目を開いたままのキス。
終わりだと思って口を開いたのに、それは勘違いだと知った。それは始まりで、スゴいことはこれからだった。
「俺もだよ。真がいないなんてもう、考えられない」
囁き合うと、彼が私の顔を両手で挟んだ。私は静かに瞼を閉じた。
やがて唇に柔らかいものが触れ、少しして離れた。
名残惜しさを感じて、ゆっくりと目を開いた。閉じる前と変わらず、彼はそこにいてくれた。
「……みんな上にいるのに、凄いことしちゃったね」
言い終わるや否や、彼はまた私に口づけをした。初めての、目を開いたままのキス。
終わりだと思って口を開いたのに、それは勘違いだと知った。それは始まりで、スゴいことはこれからだった。
95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:25:12.72 ID:JgmbGynCo
何度も唇を重ねた。音のない触れ合いから、徐々に啄むような音のするものに変わり始め、じきに、唇の隙間から私のものではないものが侵入してきた。
「…………!」
ビックリしすぎておもわず顔を離そうとしたものの、私の顔は彼の両手で固定されていて動かない。
「~っ! んー!!」
声にならない声を発し、彼の背中を必死で叩くと、ようやく侵略行為が終わった。
「っはぁっ……はぁっ……。な、ななな、何を、するの」
息も絶え絶えになんとか抵抗の意思を向ける。未知の体験に頭はパニック状態だ。口の中に物凄い違和感があるけれど、なんだか脳が溶けているような恍惚感もある。
「もう遠慮しないって言っただろ」
「…………!」
ビックリしすぎておもわず顔を離そうとしたものの、私の顔は彼の両手で固定されていて動かない。
「~っ! んー!!」
声にならない声を発し、彼の背中を必死で叩くと、ようやく侵略行為が終わった。
「っはぁっ……はぁっ……。な、ななな、何を、するの」
息も絶え絶えになんとか抵抗の意思を向ける。未知の体験に頭はパニック状態だ。口の中に物凄い違和感があるけれど、なんだか脳が溶けているような恍惚感もある。
「もう遠慮しないって言っただろ」
96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:25:50.98 ID:JgmbGynCo
こんな場所でいきなりとんでもないことをしておきながら、彼は動じていなかった。なんなのこの人……。
前言撤回。絶対普通の高校生じゃない。
「嫌だった?」
「い、いやじゃない、けど、今は、上に、みんな、いるし……」
心臓がばくばく鳴っててうまく話せない。状況もそうだけど、いきなりで私の心の準備が出来ていない。というか、こんなのに耐えられるような日は来るのだろうか。
そこで不意に階段から音が聞こえ身構えた。と同時に、いきなり頭を押さえ付けられて視界がひっくり返った。
天井と、彼の顔が見える。私は椅子に横たわっていた。彼の膝を枕にして。
「ふぁーぁ……ねむ……。あ、お前何してんの?」
前言撤回。絶対普通の高校生じゃない。
「嫌だった?」
「い、いやじゃない、けど、今は、上に、みんな、いるし……」
心臓がばくばく鳴っててうまく話せない。状況もそうだけど、いきなりで私の心の準備が出来ていない。というか、こんなのに耐えられるような日は来るのだろうか。
そこで不意に階段から音が聞こえ身構えた。と同時に、いきなり頭を押さえ付けられて視界がひっくり返った。
天井と、彼の顔が見える。私は椅子に横たわっていた。彼の膝を枕にして。
「ふぁーぁ……ねむ……。あ、お前何してんの?」
97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:26:32.37 ID:JgmbGynCo
竜司の声だ。
「ああ、コーヒーを飲んでた」
彼は階段のほうに顔を向けて言った。カップを出してもいないのに、よく言う。
「あ、そ。双葉も寝ちまったから、俺も便所行ってちょい寝るわー」
「わかった。俺はもう少しここにいるよ」
竜司の眠そうな相槌が聞こえ、お手洗いの扉の閉まる音が聞こえた。
「……バレてない?」
空気を吐き出すような声で話しかけた。
「うん、大丈夫。そうしてれば見えないよ」
さっきの行為の驚きを引き摺ったままなのか、隠れて彼に膝枕をしてもらっているからか、ずっとドキドキしっぱなしだ。
「ああ、コーヒーを飲んでた」
彼は階段のほうに顔を向けて言った。カップを出してもいないのに、よく言う。
「あ、そ。双葉も寝ちまったから、俺も便所行ってちょい寝るわー」
「わかった。俺はもう少しここにいるよ」
竜司の眠そうな相槌が聞こえ、お手洗いの扉の閉まる音が聞こえた。
「……バレてない?」
空気を吐き出すような声で話しかけた。
「うん、大丈夫。そうしてれば見えないよ」
さっきの行為の驚きを引き摺ったままなのか、隠れて彼に膝枕をしてもらっているからか、ずっとドキドキしっぱなしだ。
98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:27:10.41 ID:JgmbGynCo
「あれ? そういや真は? 降りなかったっけ?」
出てきたらしい竜司の声がまた聞こえてドキッとした。
ど、どうしよう。私、上にも下にもいないことになっちゃうけど……。
「上で寝てるんじゃない? 下にはいないから」
えぇ……。
「あれ、いたっけな……。ふぁぁ、まあいいや。どっかにはいんだろ。おやすみー」
「おやすみ」
階段を昇る音が聞こえ、やがて元通りの静寂が訪れる。
「よくもまぁ、そんなに堂々と嘘を吐けるわね……」
膝枕されたまま、見慣れぬ視点の彼に話しかけた。
出てきたらしい竜司の声がまた聞こえてドキッとした。
ど、どうしよう。私、上にも下にもいないことになっちゃうけど……。
「上で寝てるんじゃない? 下にはいないから」
えぇ……。
「あれ、いたっけな……。ふぁぁ、まあいいや。どっかにはいんだろ。おやすみー」
「おやすみ」
階段を昇る音が聞こえ、やがて元通りの静寂が訪れる。
「よくもまぁ、そんなに堂々と嘘を吐けるわね……」
膝枕されたまま、見慣れぬ視点の彼に話しかけた。
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:28:15.15 ID:JgmbGynCo
「嘘は堂々とするのが見破られにくいコツだ。まあなんとかなる」
「なるのかな……。まあ、バレてもそれはそれで、別にいいか」
この先も続けていくなら、なるべく早くそうすべきかもしれないしね。
「なんだか、凄いクリスマスになっちゃったね」
「二人きりのクリスマス、もう終わり? 25日はまだまだあるよ。……続き、したいんだけど」
彼の残念そうな口振りに、私の心が疼いた。
「……朝になって、みんなが帰ったら……。うち、来る?」
言いながら息が詰まりそうだった。さっきの続きは私の家でしようと、私から誘っている自覚があったから。
「お姉さんは、大丈夫?」
「なるのかな……。まあ、バレてもそれはそれで、別にいいか」
この先も続けていくなら、なるべく早くそうすべきかもしれないしね。
「なんだか、凄いクリスマスになっちゃったね」
「二人きりのクリスマス、もう終わり? 25日はまだまだあるよ。……続き、したいんだけど」
彼の残念そうな口振りに、私の心が疼いた。
「……朝になって、みんなが帰ったら……。うち、来る?」
言いながら息が詰まりそうだった。さっきの続きは私の家でしようと、私から誘っている自覚があったから。
「お姉さんは、大丈夫?」
100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:32:03.81 ID:JgmbGynCo
「うん。今日は泊まるって連絡したとき、お姉ちゃん明日も仕事だってボヤいてたから。誰もいない……と思う」
「なら、そうする」
頷くと、彼の上着を布団のようにして顔を半分隠した。私の家で何が行われるかを想像してしまい、顔から火が出そうだった。
感情が上に下にと乱高下したせいかな。少し疲れを感じ、目を閉じた。
「このまま、少し眠る?」
「……貴方は?」
「真の寝顔を見てるよ」
「恥ずかしいな……。あ、これ……」
彼の膝の上で優しさに満たされると、勝手に掛布団代わりにしている彼の上着について言及した。
「なら、そうする」
頷くと、彼の上着を布団のようにして顔を半分隠した。私の家で何が行われるかを想像してしまい、顔から火が出そうだった。
感情が上に下にと乱高下したせいかな。少し疲れを感じ、目を閉じた。
「このまま、少し眠る?」
「……貴方は?」
「真の寝顔を見てるよ」
「恥ずかしいな……。あ、これ……」
彼の膝の上で優しさに満たされると、勝手に掛布団代わりにしている彼の上着について言及した。
101: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:32:40.83 ID:JgmbGynCo
「ああ、一度様子見に来たときにね。そんなに肩を出して寝たら風邪引くよと思って。珍しいね、そんな格好」
今日の私の服に初めて触れられて、驚きを隠せなかった。
「……気付いてたの?」
「いや、気付かないわけないだろ」
「な、なら、何か言ってよ。全然、興味ないのかと思ってたじゃない」
「真、みんな来るまで上着着たままだったじゃないか。全員いる前じゃなかなか言いにくいよ」
思い返すと、私が上着を脱いだのは飾り付けの準備を始めたときだ。二人で話している間は着たままだった。
「そ、そうね。じゃあ、改めて。ど……どう? かな?」
自信のなさから声が裏返りそうだった。
今日の私の服に初めて触れられて、驚きを隠せなかった。
「……気付いてたの?」
「いや、気付かないわけないだろ」
「な、なら、何か言ってよ。全然、興味ないのかと思ってたじゃない」
「真、みんな来るまで上着着たままだったじゃないか。全員いる前じゃなかなか言いにくいよ」
思い返すと、私が上着を脱いだのは飾り付けの準備を始めたときだ。二人で話している間は着たままだった。
「そ、そうね。じゃあ、改めて。ど……どう? かな?」
自信のなさから声が裏返りそうだった。
102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:33:10.62 ID:JgmbGynCo
「似合ってる、可愛い。真はスタイルいいからなんでも似合うね」
「あ、ありがと……」
「まあ、あとで脱がせるつもりなんだけどね」
寝たまま彼のお腹にパンチを繰り出し、バカと言い捨ててやった。
恥ずかしさから反対向きに寝返りを打ち、狭い視界の隙間から舞い散る雪を眺めていると急激な睡魔に襲われた。
でも、大丈夫。私の傍には彼がいる。一年近くの葛藤を乗り越え、ようやく対等な恋人になれた彼が。
一人のときとは違う、心地好い微睡みの中で見るその光景は、もう寂しい記憶を呼び起こすものではなくなっていた。
* * *
「あ、ありがと……」
「まあ、あとで脱がせるつもりなんだけどね」
寝たまま彼のお腹にパンチを繰り出し、バカと言い捨ててやった。
恥ずかしさから反対向きに寝返りを打ち、狭い視界の隙間から舞い散る雪を眺めていると急激な睡魔に襲われた。
でも、大丈夫。私の傍には彼がいる。一年近くの葛藤を乗り越え、ようやく対等な恋人になれた彼が。
一人のときとは違う、心地好い微睡みの中で見るその光景は、もう寂しい記憶を呼び起こすものではなくなっていた。
* * *
103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:34:36.54 ID:JgmbGynCo
目を覚ますと、寝る前と頭の感触が変わっていた。膝の上じゃない。
彼を探そうと慌てて起き上がろうとしたら、テーブルにおもいきり頭をぶつけてしまった。
「あいたた……」
「お、パイセンお目覚め」
「おはよ、真」
「なんかスゲー音したな」
「マコちゃん、大丈夫?」
頭を擦りながら体を起こすと、上にいたメンバーが全員店内に降りてきていた。
「……あれ、今何時?」
「あー、6時半ってとこ」
カウンターでココアを啜っている竜司から答えが返ってきた。
104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:35:19.01 ID:JgmbGynCo
ズキズキする頭で周りを見回すと、何か飲んでいるのは竜司だけでなく私以外のみんなだった。めいめいがリラックスした姿勢で湯気を立たせている。カウンターにいる彼が振る舞ったようだ。
こうして見ると、彼がエプロンを付けてそこにいるのはとても自然な光景に見える。もしかして、……天職、なのかしら。
「ご注文は?」
カウンターにいる臨時店主が私に問いかける。渋い梅昆布茶……はなさそうだから、別のもの。
「んー……寝覚めだし、濃いエスプレッソを頂ける?」
「かしこまりました」
彼は大袈裟にお辞儀をして見せた。なんだか執事さんみたい。執事とか見たこともないけど。
こうして見ると、彼がエプロンを付けてそこにいるのはとても自然な光景に見える。もしかして、……天職、なのかしら。
「ご注文は?」
カウンターにいる臨時店主が私に問いかける。渋い梅昆布茶……はなさそうだから、別のもの。
「んー……寝覚めだし、濃いエスプレッソを頂ける?」
「かしこまりました」
彼は大袈裟にお辞儀をして見せた。なんだか執事さんみたい。執事とか見たこともないけど。
105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:35:49.79 ID:JgmbGynCo
「な、なんだその執事プレイ」
「えー、何その対応、ズルいー。私してもらってないー」
「君がやると違和感あまりないね、そういうの」
昨日もしたやり取りだったけど、女子三人からちょっとだけ恨めしい視線を送られた。言っていた通り、私にしかしてないらしい。
……バカだなぁ。可愛すぎるよ。
ニヤついた顔を誤魔化そうと、大きな欠伸をする振りをして顔を覆った。
「はー、もう眠くはねえけどダッリィな……。そろそろ帰るかー」
「ああ、真。寝ていたから知らないだろうが、後片付けはもう終わっているからな」
「え? そうなの?」
「えー、何その対応、ズルいー。私してもらってないー」
「君がやると違和感あまりないね、そういうの」
昨日もしたやり取りだったけど、女子三人からちょっとだけ恨めしい視線を送られた。言っていた通り、私にしかしてないらしい。
……バカだなぁ。可愛すぎるよ。
ニヤついた顔を誤魔化そうと、大きな欠伸をする振りをして顔を覆った。
「はー、もう眠くはねえけどダッリィな……。そろそろ帰るかー」
「ああ、真。寝ていたから知らないだろうが、後片付けはもう終わっているからな」
「え? そうなの?」
106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:36:42.79 ID:JgmbGynCo
出てきたエスプレッソを一口飲み、苦味に顔を歪めていると意外な事実が判明した。
「うん。真全然起きなかったからみんなでやっちゃった」
「マコちゃんが起きて、これ飲んだら帰ろうって話してたの。そろそろお店始まるから」
「……あー、ごめん。私、何もしてないね……」
みんなに素直に謝ると、四方から別にいいよと暖かい言葉が飛んできた。
「いやー、ほんとぐっすりだったな」
「真パイセンの貴重な安眠シーン」
「しかもなんか幸せそうだったねー」
「何か、楽しい夢でも見てた?」
春に訊かれ、口ごもった。彼の膝で寝ていたから、なんてことはまだ言えない。
「うん。真全然起きなかったからみんなでやっちゃった」
「マコちゃんが起きて、これ飲んだら帰ろうって話してたの。そろそろお店始まるから」
「……あー、ごめん。私、何もしてないね……」
みんなに素直に謝ると、四方から別にいいよと暖かい言葉が飛んできた。
「いやー、ほんとぐっすりだったな」
「真パイセンの貴重な安眠シーン」
「しかもなんか幸せそうだったねー」
「何か、楽しい夢でも見てた?」
春に訊かれ、口ごもった。彼の膝で寝ていたから、なんてことはまだ言えない。
107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:39:19.30 ID:JgmbGynCo
それより、寝顔をみんなに見られたことが恥ずかしく、私抜きで片付けを終えていたことが少し寂しい。手のかかる子が一人でできるようになった、という感覚に近いものだと思う。
「じゃあ、俺は一足先に失礼する。また来年も集まろう」
「おーよ! ってか別にクリスマスじゃなくてもいいな。まあ、また集合かけるわ」
「わたしも帰って寝直すー。竜司がいつまでもしつこかったから寝不足だ」
「俺のせいかよ……。んじゃ帰るわ、椅子で寝てたから体バッキバキだ。じゃあまたなー」
遅くまで起きていた三人がいなくなると間もなく、春と杏も次の約束を心待ちにしていると言い残し、店を出ていった。あとは……。
「なー、オマエすぐには帰んないんだろ? ワガハイ、上で寝ててもいい? あんま寝られなくてよー」
「じゃあ、俺は一足先に失礼する。また来年も集まろう」
「おーよ! ってか別にクリスマスじゃなくてもいいな。まあ、また集合かけるわ」
「わたしも帰って寝直すー。竜司がいつまでもしつこかったから寝不足だ」
「俺のせいかよ……。んじゃ帰るわ、椅子で寝てたから体バッキバキだ。じゃあまたなー」
遅くまで起きていた三人がいなくなると間もなく、春と杏も次の約束を心待ちにしていると言い残し、店を出ていった。あとは……。
「なー、オマエすぐには帰んないんだろ? ワガハイ、上で寝ててもいい? あんま寝られなくてよー」
108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:40:31.50 ID:JgmbGynCo
「ああ、ちょっと出掛けてくる。帰るときにはまた店に寄るよ」
「オーケーだ。じゃあな、マコト。楽しめよー」
ニャアフフゥという意味深な鳴き声を残して、モナは階段を昇っていった。もう、モナったら……。
そして、まだエスプレッソを飲んでいた私と、カウンターの彼だけが取り残された。
「いつ出る?」
「んー、これ飲んでマスターが来たら行こっか?」
「うん。じゃあそれまでゆっくりしよう」
そう言うと、彼は迷わず私の隣に腰掛けた。
温かい珈琲と、大好きな彼のいる時間。永遠にして閉じ込めたくなるような空間。
「オーケーだ。じゃあな、マコト。楽しめよー」
ニャアフフゥという意味深な鳴き声を残して、モナは階段を昇っていった。もう、モナったら……。
そして、まだエスプレッソを飲んでいた私と、カウンターの彼だけが取り残された。
「いつ出る?」
「んー、これ飲んでマスターが来たら行こっか?」
「うん。じゃあそれまでゆっくりしよう」
そう言うと、彼は迷わず私の隣に腰掛けた。
温かい珈琲と、大好きな彼のいる時間。永遠にして閉じ込めたくなるような空間。
109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:41:23.98 ID:JgmbGynCo
「……私、幸せだよ」
思ったことがそのまま口をついて出た。
「ならよかった。でも、これからはもっとかも。全力でいくから」
彼はそう言って私の腰を抱いた。なんかもう、真っ直ぐすぎて焦る。困る。これまではほんとに、これ以上深めるのはよくないかもって遠慮してたんだ。
「その前に、貴方には受験があるでしょ」
ここではまずいと思い、なんとかかわそうと試みた。
「さらにその前に、今日がある」
けれどかわし切れなかった。
「……受験、私のせいで失敗とかやだからね」
思ったことがそのまま口をついて出た。
「ならよかった。でも、これからはもっとかも。全力でいくから」
彼はそう言って私の腰を抱いた。なんかもう、真っ直ぐすぎて焦る。困る。これまではほんとに、これ以上深めるのはよくないかもって遠慮してたんだ。
「その前に、貴方には受験があるでしょ」
ここではまずいと思い、なんとかかわそうと試みた。
「さらにその前に、今日がある」
けれどかわし切れなかった。
「……受験、私のせいで失敗とかやだからね」
110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:41:53.15 ID:JgmbGynCo
「もし駄目でも、真のせいになんて死んでもしない。真は原因じゃなくて、理由だ。俺が頑張れる」
……ダメだ。心に刺さった。なんでこんなに私の心を掴むのが上手なの。
「し、しょうがないなぁ……」
それから肩を抱かれ、引き寄せられ、流されるままに朝のキスを───する直前、ドアベルの音が耳に届いた。
「さぶさぶ、こりゃ結構積もるかも……、なぁ……」
振り向いた私と、バッチリ視線が交錯した。
あああ。このマスターの呆れたような目、昨日も見た。気のせいじゃない。
「……君たちはさ、その、いつもそういうことしてるわけ?」
「い、いつもはしてませんっ!」
……ダメだ。心に刺さった。なんでこんなに私の心を掴むのが上手なの。
「し、しょうがないなぁ……」
それから肩を抱かれ、引き寄せられ、流されるままに朝のキスを───する直前、ドアベルの音が耳に届いた。
「さぶさぶ、こりゃ結構積もるかも……、なぁ……」
振り向いた私と、バッチリ視線が交錯した。
あああ。このマスターの呆れたような目、昨日も見た。気のせいじゃない。
「……君たちはさ、その、いつもそういうことしてるわけ?」
「い、いつもはしてませんっ!」
111: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:42:25.28 ID:JgmbGynCo
とりあえず弁解をしてみたが、二回目ともなると届いている気はまったくしなかった。そりゃ説得力ないよね……。
「あ、そう。じゃ、俺の間が悪いのかね……」
「若気の至りだ」
「お前昨日も至ってただろうが。至る前に時と場所と省みろ」
……面目ありません。
マスターに平謝りし、赤い顔のまま逃げるように扉を開き店をあとにした。
「結構降ってるね。傘あったほうがよかったかな」
外に出ると、歩くのに邪魔になる程度には白い綿が舞っていた。底冷えしそうなほどに風は冷たく、木々の上にはうっすらと霜のような雪が積もり始めている。
「あ、そう。じゃ、俺の間が悪いのかね……」
「若気の至りだ」
「お前昨日も至ってただろうが。至る前に時と場所と省みろ」
……面目ありません。
マスターに平謝りし、赤い顔のまま逃げるように扉を開き店をあとにした。
「結構降ってるね。傘あったほうがよかったかな」
外に出ると、歩くのに邪魔になる程度には白い綿が舞っていた。底冷えしそうなほどに風は冷たく、木々の上にはうっすらと霜のような雪が積もり始めている。
112: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:43:21.01 ID:JgmbGynCo
「今日は寒いな……」
吹きすさぶ風に彼が大きく肩を縮こまらせた。厚手のコートを羽織ってはいるけど、確かに首元のあたりが寒そうだ。
それを見て、鞄を探り中から紙包みを取り出す。ちょうどよかったかも。
「あの、これ……」
言いながら、それを彼に押し付けるように手渡した。
「なんか、渡すタイミングおかしくなっちゃったけど……」
「ありがとう、真。……開けていい?」
はにかむような彼の笑顔は、眩しすぎて可愛すぎてまともに見られない。変な顔になっているような気がして、目を逸らしながら話した。
「むしろ開けて? 役に立つと思うから」
吹きすさぶ風に彼が大きく肩を縮こまらせた。厚手のコートを羽織ってはいるけど、確かに首元のあたりが寒そうだ。
それを見て、鞄を探り中から紙包みを取り出す。ちょうどよかったかも。
「あの、これ……」
言いながら、それを彼に押し付けるように手渡した。
「なんか、渡すタイミングおかしくなっちゃったけど……」
「ありがとう、真。……開けていい?」
はにかむような彼の笑顔は、眩しすぎて可愛すぎてまともに見られない。変な顔になっているような気がして、目を逸らしながら話した。
「むしろ開けて? 役に立つと思うから」
113: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:45:40.42 ID:JgmbGynCo
実用性を考えている時点で可愛くない思考のような気がするけど、これが私だから仕方ないなと諦めた。身に付けてくれるならそれが一番だし。
彼は丁寧にラッピングとシールを剥がし、中のものを取り出した。
「似合うかなって思って選んだんだけど……。気に入ってくれると、いいな」
選んだのは、暖色の落ち着いた赤と黒をメインとした、チェック柄のマフラーだった。色はジョーカーのイメージそのものでもある。
彼は何も言わずにそれを首に巻いた。
「……似合う?」
「……うん。格好いい」
これを選んでよかった。私、ナイス。
「ありがとう。暖かいよ」
彼は丁寧にラッピングとシールを剥がし、中のものを取り出した。
「似合うかなって思って選んだんだけど……。気に入ってくれると、いいな」
選んだのは、暖色の落ち着いた赤と黒をメインとした、チェック柄のマフラーだった。色はジョーカーのイメージそのものでもある。
彼は何も言わずにそれを首に巻いた。
「……似合う?」
「……うん。格好いい」
これを選んでよかった。私、ナイス。
「ありがとう。暖かいよ」
114: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:46:06.56 ID:JgmbGynCo
「どういたしまして」
「けど、ちょっと長いな。……一緒に巻く?」
「魅力的な提案だけど、それはダメ。さっき場所を省みろって言われたばかりでしょ」
彼は見たことのない、拗ねたような顔で唇を尖らせた。
もう、仕方ないんだから。
「……うちでなら、いいよ」
「じゃあ、それで。今はこれで我慢する」
急に手を握られ、彼のコートのポケットに引っ張りこまれた。
「じゃあ、行こうか。俺のプレゼントは着いたら渡すよ。ここは雪が降ってるから」
「あ、ありがと……。楽しみにしとく」
「けど、ちょっと長いな。……一緒に巻く?」
「魅力的な提案だけど、それはダメ。さっき場所を省みろって言われたばかりでしょ」
彼は見たことのない、拗ねたような顔で唇を尖らせた。
もう、仕方ないんだから。
「……うちでなら、いいよ」
「じゃあ、それで。今はこれで我慢する」
急に手を握られ、彼のコートのポケットに引っ張りこまれた。
「じゃあ、行こうか。俺のプレゼントは着いたら渡すよ。ここは雪が降ってるから」
「あ、ありがと……。楽しみにしとく」
115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:48:19.15 ID:JgmbGynCo
「しといて」
ポケットの中でしっかり指を絡めると、二人で駅に向かって歩き始めた。
雪のせいで前が見辛いけど、今は繋がっているから平気だ。私の人生すら、彼がいれば迷わずに済む。まるで道標とか灯台みたいね。
そんなことを考えていると、ふと思いついた。
「……そうだ。昨日……今日か。貴方、自分は日陰の人間だって言ってたでしょ」
「うん。別に、そんなに自虐でもないよ。怪盗なんてその通りだと思うし、俺は日陰のほうが落ち着くから」
「そうね、去年の花火大会のときもそんなこと言ってたわね」
「言ったけど……よくそんなの覚えてるな。それで、日陰が何?」
ポケットの中でしっかり指を絡めると、二人で駅に向かって歩き始めた。
雪のせいで前が見辛いけど、今は繋がっているから平気だ。私の人生すら、彼がいれば迷わずに済む。まるで道標とか灯台みたいね。
そんなことを考えていると、ふと思いついた。
「……そうだ。昨日……今日か。貴方、自分は日陰の人間だって言ってたでしょ」
「うん。別に、そんなに自虐でもないよ。怪盗なんてその通りだと思うし、俺は日陰のほうが落ち着くから」
「そうね、去年の花火大会のときもそんなこと言ってたわね」
「言ったけど……よくそんなの覚えてるな。それで、日陰が何?」
116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:49:49.22 ID:JgmbGynCo
「ああ、うん。貴方は日陰って言うけど、私にとっては日影だなって思って」
私の言葉に、彼は大きく首を傾げた。
「あれ? 通じてない?」
「うん。何言ってるのかわかってない」
「貴方でも知らないこと、あるんだね」
「なんでもは知らないよ」
「じゃあ、試験には出ないお勉強」
狭い路地を抜け、大きな通りに出た。
「貴方が言った"日陰"は思ってる意味通りで、光の当たってない部分のこと。でも、私が言った"日影"は、かげの字が違うの。陰るの陰、shadeじゃなくて、shadowのほう」
私の言葉に、彼は大きく首を傾げた。
「あれ? 通じてない?」
「うん。何言ってるのかわかってない」
「貴方でも知らないこと、あるんだね」
「なんでもは知らないよ」
「じゃあ、試験には出ないお勉強」
狭い路地を抜け、大きな通りに出た。
「貴方が言った"日陰"は思ってる意味通りで、光の当たってない部分のこと。でも、私が言った"日影"は、かげの字が違うの。陰るの陰、shadeじゃなくて、shadowのほう」
117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:50:14.28 ID:JgmbGynCo
「そっちの影だと意味が違う?」
「うん。意味がね、真逆になるの。"日影"っていうのは日の光そのもの。影じゃなくて、光っていう意味。まあ別の意味もなくはないけど」
「影なのに光か」
「そう。私にとって貴方は……私の行く道を照らして、導いてくれる光。日陰なんかじゃないよ」
「……そう、ありたいもんだね」
彼は、私の期待を笑って受け止めてくれた。
「大丈夫よ、貴方なら」
少しの間足を止め、見つめあった。
「……私の夢って、凄く、大変だと思う。そもそも狭き門だし、なれたとしても忙しくなるのなんて目に見えてる。転勤だってどうなるかわかったもんじゃないわ。……でも、どれだけ頑張っても、私が一生かけたって犯罪はなくならない」
「うん。意味がね、真逆になるの。"日影"っていうのは日の光そのもの。影じゃなくて、光っていう意味。まあ別の意味もなくはないけど」
「影なのに光か」
「そう。私にとって貴方は……私の行く道を照らして、導いてくれる光。日陰なんかじゃないよ」
「……そう、ありたいもんだね」
彼は、私の期待を笑って受け止めてくれた。
「大丈夫よ、貴方なら」
少しの間足を止め、見つめあった。
「……私の夢って、凄く、大変だと思う。そもそも狭き門だし、なれたとしても忙しくなるのなんて目に見えてる。転勤だってどうなるかわかったもんじゃないわ。……でも、どれだけ頑張っても、私が一生かけたって犯罪はなくならない」
118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:51:30.19 ID:JgmbGynCo
少し歩いたところで信号に引っ掛かり、また立ち止まることになった。休日の早朝はまだ人もまばらで、横断歩道の向こう側に数人見えるぐらいだった。
「それでもね、私はお父さんの目指した正義を守りたい。犯罪に苦しむ人を一人でも多く救いたいの。だから……」
彼を見上げると、力強く優しい瞳とぶつかった。
その先は、言わなくてもわかってる。そんな声が聞こえた。
「真はそのままで大丈夫。足りないところは俺が補って、支えてやる」
その言葉を何よりも頼もしく感じて頷くと、彼は悪戯っぽく微笑んで、言った。
「陰ながら、だけどね」
私は目を閉じ、笑みを溢した。
「それでもね、私はお父さんの目指した正義を守りたい。犯罪に苦しむ人を一人でも多く救いたいの。だから……」
彼を見上げると、力強く優しい瞳とぶつかった。
その先は、言わなくてもわかってる。そんな声が聞こえた。
「真はそのままで大丈夫。足りないところは俺が補って、支えてやる」
その言葉を何よりも頼もしく感じて頷くと、彼は悪戯っぽく微笑んで、言った。
「陰ながら、だけどね」
私は目を閉じ、笑みを溢した。
119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 20:52:03.97 ID:JgmbGynCo
こんなに目映い影、私は見たことないよ。
視線を落とすと、少し弱まった雪の中、二人の作る影が薄く伸びていた。
信号が変わり、向こう側で待っていた人がこちらに向けて動き始める。
私は彼にもう一歩寄り添い、腕を胸に抱えるようにしがみついた。
こうして互いの影を重ね合わせると、ずれることのないよう歩幅を広げ、私たちは二人の未来を歩み始めた。
了
視線を落とすと、少し弱まった雪の中、二人の作る影が薄く伸びていた。
信号が変わり、向こう側で待っていた人がこちらに向けて動き始める。
私は彼にもう一歩寄り添い、腕を胸に抱えるようにしがみついた。
こうして互いの影を重ね合わせると、ずれることのないよう歩幅を広げ、私たちは二人の未来を歩み始めた。
了
120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 21:00:30.79 ID:JgmbGynCo
また長くなった、妄想止まりませんね
エピローグ(冴さん編)は蛇足っぽく感じたので削りました、pixivにでものせときます
ここまできたら杏も書きたいけど、杏か……まあ、気が向いたらまたそのうち
読んでくれた方、レスくれた方ありがとう愛してる
コメントほんとに嬉しいですほんとに
では機会があればまたどこかで、あでゅー
エピローグ(冴さん編)は蛇足っぽく感じたので削りました、pixivにでものせときます
ここまできたら杏も書きたいけど、杏か……まあ、気が向いたらまたそのうち
読んでくれた方、レスくれた方ありがとう愛してる
コメントほんとに嬉しいですほんとに
では機会があればまたどこかで、あでゅー
121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/02(金) 21:18:13.01 ID:NldTfaCTo
乙乙
週末にいい主まこが見れてよかったよかった
週末にいい主まこが見れてよかったよかった
122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/03(土) 02:04:30.58 ID:MJ4F/tVV0
全部読んでるで
またあるなら期待してる
またあるなら期待してる
125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/03(土) 11:41:39.49 ID:o5iBfBoAO
杏もあるといいなあ、おつ
引用元: 【ペルソナ5 新島真SS】目映い影
【ペルソナ5 奥村春SS】春のまにまに
2019-08-28
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 21:51:53.83 ID:Y3tzY7X6o
※注意点
・シナリオ終了後の話なので多大にネタバレ含みます
・主人公は各種イベントで春を選択してきたと思ってください
・春可愛いよ春
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1477313513
・シナリオ終了後の話なので多大にネタバレ含みます
・主人公は各種イベントで春を選択してきたと思ってください
・春可愛いよ春
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1477313513
関連
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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 21:54:12.63 ID:Y3tzY7X6o
深みのある独特の芳香が鼻孔に届いた。心臓は警鐘を鳴らすように強く胸を叩いており、とても落ち着いて香りを楽しむどころではないのに。
このコーヒーは私が淹れたものではない。四軒茶屋にある喫茶店「ルブラン」。この屋根裏に暮らす彼が、先ほど下で淹れてくれたものだ。
階下にある店舗は既に営業を終えており、おじ様は気になる台詞を残して帰宅してしまった。
「嬢ちゃん、あまり遅くならないようにな。お前にも一応言っとくが……、いや、なんでもねぇ。ごゆっくり」
おじ様は彼に何を伝えようとしたのだろう。言い方からすると警告のように思えるけれど……。何かを言いかけてやめた、その間が凄く気になって、おじ様が扉の向こうに消えてから二人で照れ隠しのように微笑みあった。
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 21:54:54.76 ID:Y3tzY7X6o
……そりゃあ? 私だって年頃の女の子ですし? 男女が誰もいない家で二人きりになるということの意味ぐらい、わかってるんだから。
でも、そういうのはまだ、早いよね。うん。
そんなことを思っていたのに、私は、今───。
その屋根裏の部屋、部屋と呼んでよいのかよくわからないけど、そこのソファで私は、今───横になっている。半ば押し倒されるように寝そべり、彼の顔と薄暗い天井だけが視界に入っている。
どうしよう。こんなの、考えてなかった。
でも私は彼のことが大好きだし、彼も私のことを好きと言ってくれて、彼と私は彼氏と彼女で……。あれ? もしかして問題ない?
いやいやっ、ちが、そうじゃなくて、とにかく何か、何か言わないと!
でも、そういうのはまだ、早いよね。うん。
そんなことを思っていたのに、私は、今───。
その屋根裏の部屋、部屋と呼んでよいのかよくわからないけど、そこのソファで私は、今───横になっている。半ば押し倒されるように寝そべり、彼の顔と薄暗い天井だけが視界に入っている。
どうしよう。こんなの、考えてなかった。
でも私は彼のことが大好きだし、彼も私のことを好きと言ってくれて、彼と私は彼氏と彼女で……。あれ? もしかして問題ない?
いやいやっ、ちが、そうじゃなくて、とにかく何か、何か言わないと!
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 21:55:31.02 ID:Y3tzY7X6o
「えっ、と……。きゅ、急に、どうした、の?」
やだ、なんでこんなにしどろもどろなの、私。
「どうしたって、言わなきゃ駄目?」
彼は表情をまったく変えることなく私に質問を返す。眼鏡の奥にあるどこまでも澄んだ瞳は「わかるよね?」と訴えかけている。
わかるよねって、わからないこともないけど。わかるけど!
「えぇと……。や、あの、恥ずかし……近い、よ……」
いつの間にか彼がそのまま覆い被さるように私に顔を近づけ、吐息が届くような距離になっていた。間近で見る彼の肌はとてもきめ細やかで、まるで女の子みたいで、でも首筋は男らしくて。
「あ、う、ぁ」
やだ、なんでこんなにしどろもどろなの、私。
「どうしたって、言わなきゃ駄目?」
彼は表情をまったく変えることなく私に質問を返す。眼鏡の奥にあるどこまでも澄んだ瞳は「わかるよね?」と訴えかけている。
わかるよねって、わからないこともないけど。わかるけど!
「えぇと……。や、あの、恥ずかし……近い、よ……」
いつの間にか彼がそのまま覆い被さるように私に顔を近づけ、吐息が届くような距離になっていた。間近で見る彼の肌はとてもきめ細やかで、まるで女の子みたいで、でも首筋は男らしくて。
「あ、う、ぁ」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 21:56:59.08 ID:Y3tzY7X6o
何か言おうにも頭はついてこれず、口から漏れる言葉は意味を成さない。彼は私の喘ぎとも悲鳴ともつかぬ何かを意に介すことなく、私の左手に掌を重ねた。柔らかな温もりが伝わり、顔が、胸が、心が熱くなる。
そこで不意に、彼が、ふっと。
「ひゃあぅっ」
私の耳に息を吹き掛けた。と、思う。されたことないからわかんない。
「春は耳が弱いんだな」
彼は微かな笑みを私に向ける。私の大好きな、すべてを許しちゃいそうな笑顔。
「そそ、そんな、いきなり、わかんないよ……」
「春……」
彼は耳元でもう一度名前を囁き、私の髪をふわっと撫でつけた。手はそのまま首筋をなぞりゆっくりと下に降りていく。
そこで不意に、彼が、ふっと。
「ひゃあぅっ」
私の耳に息を吹き掛けた。と、思う。されたことないからわかんない。
「春は耳が弱いんだな」
彼は微かな笑みを私に向ける。私の大好きな、すべてを許しちゃいそうな笑顔。
「そそ、そんな、いきなり、わかんないよ……」
「春……」
彼は耳元でもう一度名前を囁き、私の髪をふわっと撫でつけた。手はそのまま首筋をなぞりゆっくりと下に降りていく。
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 21:57:47.31 ID:Y3tzY7X6o
ダメ。無理。抗えない。蕩けちゃいそう。
経験のなさに起因する想像力の乏しい頭でこの先にありそうな行為を思い浮かべると、体の内側のどこかで疼きにも似た熱を感じた。
これから、魔性の男のような魅力をもった彼に、知恵の泉のような知識で私のいたるところを、ライオンハートのような大胆さと慈母神のような優しさで、超魔術のような指で、弄ばれる。
「こっ、ここじゃ、ヤダ……。ベッド……いこ?」
火照る顔と沸騰しそうな頭でなんとか紡ぐことのできた声は、もはや抵抗の意思は持ち合わせていなかった。誘いの台詞となんら変わらない。
覚悟は、まだ、できてないけど、それでも、彼となら……。
しかし、そこで返ってきたのは思いもよらぬ言葉だった。
経験のなさに起因する想像力の乏しい頭でこの先にありそうな行為を思い浮かべると、体の内側のどこかで疼きにも似た熱を感じた。
これから、魔性の男のような魅力をもった彼に、知恵の泉のような知識で私のいたるところを、ライオンハートのような大胆さと慈母神のような優しさで、超魔術のような指で、弄ばれる。
「こっ、ここじゃ、ヤダ……。ベッド……いこ?」
火照る顔と沸騰しそうな頭でなんとか紡ぐことのできた声は、もはや抵抗の意思は持ち合わせていなかった。誘いの台詞となんら変わらない。
覚悟は、まだ、できてないけど、それでも、彼となら……。
しかし、そこで返ってきたのは思いもよらぬ言葉だった。
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 21:59:03.13 ID:Y3tzY7X6o
「ベッドは駄目だよ。埋まってる」
「……え?」
彼の言っていることの意味がわからず気の抜けた声が漏れた。
わけのわからないまま、埋まっている? らしきベッドに目をやると、さらにわけのわからない光景が飛び込んできた。
「…………誰?」
「我が東郷キングダムの陣容はまさに磐石。天を裂き地を走る怒りの鉄槌を受け、滅びるがいい!」
なんか知らない女の子がベッドに腰かけて将棋を打っている。いや、さっきまでいなかったと思うんだけど。
「えぇと……」
とりあえず起き上がろうとすると、天井の隅に監視カメラのようなものが目に入った。これもさっきまで……えぇ……?
「……え?」
彼の言っていることの意味がわからず気の抜けた声が漏れた。
わけのわからないまま、埋まっている? らしきベッドに目をやると、さらにわけのわからない光景が飛び込んできた。
「…………誰?」
「我が東郷キングダムの陣容はまさに磐石。天を裂き地を走る怒りの鉄槌を受け、滅びるがいい!」
なんか知らない女の子がベッドに腰かけて将棋を打っている。いや、さっきまでいなかったと思うんだけど。
「えぇと……」
とりあえず起き上がろうとすると、天井の隅に監視カメラのようなものが目に入った。これもさっきまで……えぇ……?
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 21:59:45.16 ID:Y3tzY7X6o
カメラの横にはスピーカーもついているらしく、弱いノイズとともに私も知っている声が聞こえてきた。
「何をしているー。わたしはちゃんと見ているぞー」
「ふ、双葉ちゃん!?」
なんで見られてるのー!?
「ね、ねぇ! これ、いったい……」
もう何もかもがわからない。こんな状況でも動じない彼に掴まり体を起こすと、肩越しに見えたのは机に向かうメイドさん。……メイドさん!?
「あはは、べっきぃはちゃんとキーピック作っておきますからー。ご主人様は、他の、方と…………うぅっ……、ぐすっ……」
泣いてる……。というか、この人の顔、見たことあるような……。
「って、えぇ!? 川上先生!?」
「何をしているー。わたしはちゃんと見ているぞー」
「ふ、双葉ちゃん!?」
なんで見られてるのー!?
「ね、ねぇ! これ、いったい……」
もう何もかもがわからない。こんな状況でも動じない彼に掴まり体を起こすと、肩越しに見えたのは机に向かうメイドさん。……メイドさん!?
「あはは、べっきぃはちゃんとキーピック作っておきますからー。ご主人様は、他の、方と…………うぅっ……、ぐすっ……」
泣いてる……。というか、この人の顔、見たことあるような……。
「って、えぇ!? 川上先生!?」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:00:33.53 ID:Y3tzY7X6o
メイド姿で泣きながら謎の内職をしているのは私の学校の教諭に相違なかった。たぶん見間違いじゃない、はず。
刹那、窓の外が眩く光り輝いた。
「スクープだねこれは。怪盗くんの浮気現場、押さえたよ!」
誰。何してるの。あとここ二階なんですけど。
「占いによるとー、その人とこの先にいっちゃうと聖なる力で天罰が下るみたいですよぉ」
「ちょっと君ねぇ……。これはどういうことなの?」
いつの間にかふわっとした若い女性と、パンク姿の女性が部屋の中にいた。これも知らない人だなー。
さらに階段から足音が聞こえ、振り向くとそこには怪盗姿のマコちゃんと杏ちゃん。すごいすごい、怒濤の展開だね。
刹那、窓の外が眩く光り輝いた。
「スクープだねこれは。怪盗くんの浮気現場、押さえたよ!」
誰。何してるの。あとここ二階なんですけど。
「占いによるとー、その人とこの先にいっちゃうと聖なる力で天罰が下るみたいですよぉ」
「ちょっと君ねぇ……。これはどういうことなの?」
いつの間にかふわっとした若い女性と、パンク姿の女性が部屋の中にいた。これも知らない人だなー。
さらに階段から足音が聞こえ、振り向くとそこには怪盗姿のマコちゃんと杏ちゃん。すごいすごい、怒濤の展開だね。
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:01:29.66 ID:Y3tzY7X6o
「春……。こうなりたくはなかったけど、仕方ないわね」
マコちゃんはペルソナを出してフレイダインをしようとしているらしい。やめて、それ私に効くから。
「抜け駆けはよくないよ!」
杏ちゃんはコンセントレイトで準備万端。ああ、私、死ぬのかな。いやここ現実じゃなかったっけ……。
「あは、あはは……」
力のない乾いた笑いが溢れた。体に力が入らない。まあ笑うしかないよね、こんなの。
「フハハハーッ、It's Show Time!!」
さっきまで私に迫っていた最愛の彼はソファに立ち上がり、ジョーカーらしい高笑いをしていた。
いったい何人いるの? この部屋。意味がわからなすぎるよ。これが現実だなんてとても思えない。こんなの絶対おかしいよ……。
マコちゃんはペルソナを出してフレイダインをしようとしているらしい。やめて、それ私に効くから。
「抜け駆けはよくないよ!」
杏ちゃんはコンセントレイトで準備万端。ああ、私、死ぬのかな。いやここ現実じゃなかったっけ……。
「あは、あはは……」
力のない乾いた笑いが溢れた。体に力が入らない。まあ笑うしかないよね、こんなの。
「フハハハーッ、It's Show Time!!」
さっきまで私に迫っていた最愛の彼はソファに立ち上がり、ジョーカーらしい高笑いをしていた。
いったい何人いるの? この部屋。意味がわからなすぎるよ。これが現実だなんてとても思えない。こんなの絶対おかしいよ……。
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:02:16.96 ID:Y3tzY7X6o
あ、そうか。
ここまできてようやく揺るぎないただ一つの簡単な真実に辿り着き、その虚しい答えを呟いた。
「これ、夢なんだ」
* * *
厚い遮光カーテンの隙間から入る日差しが私の胴体を横切っていた。最悪の寝覚めだった。
「うあー、汗かいちゃってる」
目覚めてまず視界に入ったのは、よく見知った自室の天井だった。家主がお父様から私に移って間もない、一人でだけで暮らしている我が家。
掛け布団をはねのけ、ベタっと張り付いたパジャマの胸元を扇いだ。冴えないままの頭で、妙に鮮明で記憶に残っている夢について意識を巡らせる。
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:03:10.55 ID:Y3tzY7X6o
「なんだったんだろ。知らない人たくさんいたし……」
荒唐無稽にもほどがあるよ、わけわかんなすぎ。
そう思って一人で笑うと、ほんの少しだけど気が紛れた。ちょっと早いけど気持ち悪いからもう着替えちゃおっと。
そう決めると、昨日の夜のうちから慎重に吟味を重ねた、外出用の新しい服と対峙した。気合いが入りすぎと思われないように、でもしっかり可愛く。今日という日に相応しい最良のコーディネート、と私は思ってるけど……。似合ってるって言ってもらえるといいな。
「……ああもう。途中までは本当にいい感じだったのになぁ」
着替えながら、夢に対してどうにもならない愚痴を溢してみた。
荒唐無稽にもほどがあるよ、わけわかんなすぎ。
そう思って一人で笑うと、ほんの少しだけど気が紛れた。ちょっと早いけど気持ち悪いからもう着替えちゃおっと。
そう決めると、昨日の夜のうちから慎重に吟味を重ねた、外出用の新しい服と対峙した。気合いが入りすぎと思われないように、でもしっかり可愛く。今日という日に相応しい最良のコーディネート、と私は思ってるけど……。似合ってるって言ってもらえるといいな。
「……ああもう。途中までは本当にいい感じだったのになぁ」
着替えながら、夢に対してどうにもならない愚痴を溢してみた。
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:03:56.20 ID:Y3tzY7X6o
本当に途中までは幸せだった……恥ずかしくもあったけれど。夢でさえあれだけ焦るのに、もし実際に彼にあんなことをされてしまったら私はどうなってしまうんだろう。そんな具体性に欠ける妄想をしただけでまた顔に熱がこみ上げるのを感じた。
まだ彼が地元に帰ってから一週間ちょっとしか経ってないのにあんな夢を見るなんて、どれだけ彼が恋しいんだろう。
私、彼のことこんなに好きだったんだ。
これほど人を好きになれたことが自分でも驚くほどに意外で、素直に嬉しく思う。人生で初めて焦がれるほどの恋をした私の感情的な部分はそう感じていたが、反して、その裏側には暗い瞳で俯瞰する私の冷めた部分が顔を覗かせていた。
私にとって、私に向けられるほぼすべての"優しさ"や"好意"は、私を通り越した先にいるお父様を意識してのものだった。
まだ彼が地元に帰ってから一週間ちょっとしか経ってないのにあんな夢を見るなんて、どれだけ彼が恋しいんだろう。
私、彼のことこんなに好きだったんだ。
これほど人を好きになれたことが自分でも驚くほどに意外で、素直に嬉しく思う。人生で初めて焦がれるほどの恋をした私の感情的な部分はそう感じていたが、反して、その裏側には暗い瞳で俯瞰する私の冷めた部分が顔を覗かせていた。
私にとって、私に向けられるほぼすべての"優しさ"や"好意"は、私を通り越した先にいるお父様を意識してのものだった。
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:04:45.46 ID:Y3tzY7X6o
恩義。利益。見返り。なんと呼んでもいい。私の家庭環境を知った人たちやお父様の周囲にいた大人たちの行動の数々は、まだ子供だった私の認知を変え固めてしまうには余りあるものだった。
もっとずっと幼かったときは違っていたはずなのに、いつの間にかそうなっていた。私が大きくなるにつれそれを感じ取れるようになったのか、それとも私以外の人たちが変わっていったのかは今となってはよくわからない。
けれども成長とともに私の人付き合いの多くは目的ではなくなり、ただの手段になっていった。大過なく物事を終えるための儀式。通過儀礼。人付き合いというものにそれ以上の価値は見出だせない。
そんな私が知っていた、私の中にもちゃんとあった、純粋な優しさ。素朴な温かさ。ほっとする心地好さ。私の居場所。
もっとずっと幼かったときは違っていたはずなのに、いつの間にかそうなっていた。私が大きくなるにつれそれを感じ取れるようになったのか、それとも私以外の人たちが変わっていったのかは今となってはよくわからない。
けれども成長とともに私の人付き合いの多くは目的ではなくなり、ただの手段になっていった。大過なく物事を終えるための儀式。通過儀礼。人付き合いというものにそれ以上の価値は見出だせない。
そんな私が知っていた、私の中にもちゃんとあった、純粋な優しさ。素朴な温かさ。ほっとする心地好さ。私の居場所。
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:05:39.17 ID:Y3tzY7X6o
それは、古い記憶の喫茶店。朗らかなお爺様と、穏やかにこだまする笑い声と、コーヒーの香り───。
「おはようございます。もう起きていらっしゃいますか?」
部屋の外からの声にハッとなり、沈みかけた過去から現在に呼び戻された。今もなおこの家に残る、数少ない私以外の人のものだ。
「起きています、おはよう」
「朝食はいかがなさいますか?」
返事を待たせたまま着替えを終えて部屋を出ると、普段と変わらずそこにいる彼女に感謝の気持ちを伝えた。
「頂きます。いつもありがとう」
常々思っていたことだけれど、仕事とはいえ長年この家の世話をしてきてくれたことには頭が下がる思いだ。お父様と家族らしい会話が減ってきてからも、何一つ変わらぬ態度で接してくれる彼女に小さくない安らぎを与えてもらっていた。
「おはようございます。もう起きていらっしゃいますか?」
部屋の外からの声にハッとなり、沈みかけた過去から現在に呼び戻された。今もなおこの家に残る、数少ない私以外の人のものだ。
「起きています、おはよう」
「朝食はいかがなさいますか?」
返事を待たせたまま着替えを終えて部屋を出ると、普段と変わらずそこにいる彼女に感謝の気持ちを伝えた。
「頂きます。いつもありがとう」
常々思っていたことだけれど、仕事とはいえ長年この家の世話をしてきてくれたことには頭が下がる思いだ。お父様と家族らしい会話が減ってきてからも、何一つ変わらぬ態度で接してくれる彼女に小さくない安らぎを与えてもらっていた。
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:06:34.94 ID:Y3tzY7X6o
「これが仕事ですので」
返答もいつもと同じ台詞だった。何事にも動じない彼女のその姿は、夢にまで見た彼のことを思い起こさせた。
でも、これもあと数日で区切りの日が訪れる。
「それでも、ありがとう。……あと残り僅かだけれども、よろしくお願いしますね」
「…………はい」
彼女の返事には珍しく歯切れの悪さを感じた。理由は聞かないことにした。
私は大学への進学が決まった。お父様の遺した会社に微力ながらも関わりながら、経営やいろいろなことを徐々に学んでいくつもりだ。
返答もいつもと同じ台詞だった。何事にも動じない彼女のその姿は、夢にまで見た彼のことを思い起こさせた。
でも、これもあと数日で区切りの日が訪れる。
「それでも、ありがとう。……あと残り僅かだけれども、よろしくお願いしますね」
「…………はい」
彼女の返事には珍しく歯切れの悪さを感じた。理由は聞かないことにした。
私は大学への進学が決まった。お父様の遺した会社に微力ながらも関わりながら、経営やいろいろなことを徐々に学んでいくつもりだ。
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:07:22.38 ID:Y3tzY7X6o
もちろん、大きな経営方針や実務に口を出せるほどの経験も知識も持ち合わせていないので、そのあたりは会社で信頼のおける新社長の高倉さんに一任している。当面、オクムラフーズで私が関わるのは新規展開するコーヒーチェーン店のプロジェクトだけだろう。
進学に伴い、私はこの家を出て一人暮らしをすることを決めていた。思いきったが、ちゃんと考えて自分で下した決断だ。
この家はもう私の自由を奪う鳥籠じゃない。そもそもこの家を出たところで奥村という名と無関係にはならないし、今のところそうするつもりもない。生活ではお手伝いの人もいるし、毎日を過ごすにあたり不満があるわけじゃない。
けれど、たった一人で暮らすにはこの家は幾分───広すぎる。別れの前のお父様との関係は良くなかったとはいえ、そうでない思い出がここには多すぎる。
進学に伴い、私はこの家を出て一人暮らしをすることを決めていた。思いきったが、ちゃんと考えて自分で下した決断だ。
この家はもう私の自由を奪う鳥籠じゃない。そもそもこの家を出たところで奥村という名と無関係にはならないし、今のところそうするつもりもない。生活ではお手伝いの人もいるし、毎日を過ごすにあたり不満があるわけじゃない。
けれど、たった一人で暮らすにはこの家は幾分───広すぎる。別れの前のお父様との関係は良くなかったとはいえ、そうでない思い出がここには多すぎる。
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:08:42.10 ID:Y3tzY7X6o
喪失はあまりに唐突で、受け入れられないわけではなかったと思うけれど、感情が追い付いていなかったことをあとになって思い知った。
それからは最高責任者をなくしても廻り続ける会社のこと、怪盗団のこと、今でも信じられないけどこの世界の運命のこと。私に背負える重さを遥かに越えたものが次々と降りかかり、ついていくのに必死で悲しみに暮れる暇はなかった。というより、別の何かに目を向け続けることで、無意識にそれを遠ざけようとしていた。
避け続けていたどうしようもない孤独と寂しさは、怪盗をやめ、彼が地元に戻ってから顕著に現れた。今日の彼の夢もきっとその一部だ。
一人暮らしのことは高倉さんにも既に話していた。世間知らずの私が独りで生活できるのかと随分心配していたが、素直に理由を話すと寂しそうに了承してくれた。
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:09:35.45 ID:Y3tzY7X6o
私の無理や我が儘を聞いてもらい、融通も利かせてもらった。わかっていたことだけれど私はまだまだ子供で、奥村の娘なんだと実感した。
そんな事情でお手伝いさんが毎日来るのは今月で最後になるが、この家自体は手放さず残したままにすることになっていた。その理由は、お父様の遺したものを全て整理しきれていないことがまず一つ。そしてもう一つは、お父様との記憶と、私の帰ってくる場所をなくしたくなかったから。
私にとって、お父様の死は繋がりを断ち切るだけのものではなかった。不満を感じながらただ生きているだけでは見過ごしていた、見えずともそこに確かにあった絆を浮かび上がらせ、ある感情を呼び起こした。
それは、温かい家族への憧れと渇望だった。
* * *
そんな事情でお手伝いさんが毎日来るのは今月で最後になるが、この家自体は手放さず残したままにすることになっていた。その理由は、お父様の遺したものを全て整理しきれていないことがまず一つ。そしてもう一つは、お父様との記憶と、私の帰ってくる場所をなくしたくなかったから。
私にとって、お父様の死は繋がりを断ち切るだけのものではなかった。不満を感じながらただ生きているだけでは見過ごしていた、見えずともそこに確かにあった絆を浮かび上がらせ、ある感情を呼び起こした。
それは、温かい家族への憧れと渇望だった。
* * *
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:10:22.74 ID:Y3tzY7X6o
その日、私たちは馴染みあるいつもの場所に集まっていた。階下から香る深みのある独特の芳香が私の胸の高鳴りを少しだけ静めてくれる。
「つーか遅ぇなあいつら、何してんだ。ったくよー」
竜司くんが椅子を後ろに倒しながら退屈そうに愚痴を溢した。落ち着かない様子ではあるが言葉に怒気は含まれていない。
主役がなかなか現れず、待ち遠しさの強いソワソワした空気が元怪盗団メンバーの間を漂っていた。
「まあ勝手に集まっただけなんだけど、確かに遅いねー。双葉、昼って言ってたんだよね?」
杏ちゃんが竜司くんの言葉に同意し、双葉ちゃんのほうを振り向いた。
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:11:26.31 ID:Y3tzY7X6o
「そーだよー。てかわたしもそうじろうから聞いただけだし。他に誰か聞いてないの?」
ずっとスマホを見つめていた双葉ちゃんが顔をあげ首を捻る。
「残念ながら俺は聞いていないぞ」
「同じく。冷たいヤツだぜ」
祐介くんと竜司くんが少し不満げに答えた。
「私も聞いてないわ。春もそうよね?」
「え? あ、うん」
マコちゃんから急に振られ、一瞬戸惑ってしまった。
「やっぱりマスターにしか伝えてないみたいね」
「まあそうかも。忘れ物を取りに帰るだけだってそうじろうに言ってたぽいし。こそっと来てこそっと帰るつもりだったんだよ、あんにゃろー」
ずっとスマホを見つめていた双葉ちゃんが顔をあげ首を捻る。
「残念ながら俺は聞いていないぞ」
「同じく。冷たいヤツだぜ」
祐介くんと竜司くんが少し不満げに答えた。
「私も聞いてないわ。春もそうよね?」
「え? あ、うん」
マコちゃんから急に振られ、一瞬戸惑ってしまった。
「やっぱりマスターにしか伝えてないみたいね」
「まあそうかも。忘れ物を取りに帰るだけだってそうじろうに言ってたぽいし。こそっと来てこそっと帰るつもりだったんだよ、あんにゃろー」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:12:16.55 ID:Y3tzY7X6o
さっきの返事を変に思われていないかと気が気でなかったがそれは自意識過剰で、みんな変わらず雑談を続けていたのでホッと胸を撫で下ろした。
昨日双葉ちゃんの提案で、リーダーを除いた元怪盗団のグループチャットがひっそりと作られた。
そこで話し合われたのは、地元に戻った彼が今日帰ってくるらしいから、密かに集まってルブランで迎えてやろうというサプライズのことだった。どうもおじ様が双葉ちゃんも聞いているものと思い込み、彼が帰ってくると口を滑らせてしまったらしい。
彼はおじ様にだけ帰ると告げ、ひっそりとこちらに戻る算段だったようだ。元怪盗団のみんなには連絡がなかったらしいから、会わないつもりだったのかもしれない。
ただし、おじ様と私以外には、ということになる。
昨日双葉ちゃんの提案で、リーダーを除いた元怪盗団のグループチャットがひっそりと作られた。
そこで話し合われたのは、地元に戻った彼が今日帰ってくるらしいから、密かに集まってルブランで迎えてやろうというサプライズのことだった。どうもおじ様が双葉ちゃんも聞いているものと思い込み、彼が帰ってくると口を滑らせてしまったらしい。
彼はおじ様にだけ帰ると告げ、ひっそりとこちらに戻る算段だったようだ。元怪盗団のみんなには連絡がなかったらしいから、会わないつもりだったのかもしれない。
ただし、おじ様と私以外には、ということになる。
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:12:59.42 ID:Y3tzY7X6o
実のところ、こればかりはみんなも同じなのかどうかわからないけれど、私は毎日欠かさず彼と連絡を取り合っている。
昨日も他愛もない些細なやり取りをしている最中、急に明日戻るからと連絡を貰っていた。サプライズでみんなで待とうと話し合う少し前のことだった。
『明日そっちに戻るんだけど、会えない?』
その文面を見た瞬間の私はどんな顔をしていたんだろう。あまり想像したくないけど、それはもう緩みに緩んで慌てていたに違いない。
彼に会える。考えるまでもなく、私史上かつてない早さで文章を打ち込み了承の意思を伝えた。
その後、一人少ないほうのグループチャットで計画が練られたわけだが、どういうことなのかよくわからないままの私はみんなに合わせているだけだった。
昨日も他愛もない些細なやり取りをしている最中、急に明日戻るからと連絡を貰っていた。サプライズでみんなで待とうと話し合う少し前のことだった。
『明日そっちに戻るんだけど、会えない?』
その文面を見た瞬間の私はどんな顔をしていたんだろう。あまり想像したくないけど、それはもう緩みに緩んで慌てていたに違いない。
彼に会える。考えるまでもなく、私史上かつてない早さで文章を打ち込み了承の意思を伝えた。
その後、一人少ないほうのグループチャットで計画が練られたわけだが、どういうことなのかよくわからないままの私はみんなに合わせているだけだった。
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:13:35.05 ID:Y3tzY7X6o
会えないかと聞いたのはみんなも含めてのことだったのかなとか、そんなことを考えていた。サプライズだとみんなで話している手前、彼に聞くのもおかしい気がして黙っていたけれど───ようやく事の一部始終を理解できたのだった。
予定してたのとは違うけど、会えるから。
彼はみんなに内緒で、二人で会おうとしてくれてたみたいだし、それだけで十分嬉しいもん。
二人でゆっくりは、また今度のお楽しみで。……本音を言えば、ちょっと残念、かな。
「あいつ向こう戻ってガラッと変わってたらどうするよ?」
「短期間でそんな変わるかっ! でもさ、彼、最初に会ったときと比べたら随分雰囲気変わったよね」
「そうなのか? 俺が会ったときとそんなに変わった気はしないが」
予定してたのとは違うけど、会えるから。
彼はみんなに内緒で、二人で会おうとしてくれてたみたいだし、それだけで十分嬉しいもん。
二人でゆっくりは、また今度のお楽しみで。……本音を言えば、ちょっと残念、かな。
「あいつ向こう戻ってガラッと変わってたらどうするよ?」
「短期間でそんな変わるかっ! でもさ、彼、最初に会ったときと比べたら随分雰囲気変わったよね」
「そうなのか? 俺が会ったときとそんなに変わった気はしないが」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:14:14.10 ID:Y3tzY7X6o
「んー、変わったというか、最後まで普段と怪盗のときで露骨に違ってたよね。怪盗になると『ショータイムだ』とか言ってたし。どんだけノリノリなの」
「とにかく不思議な人、だったわね。確実なのは、彼は今も私たちのリーダーってことかしら」
「そうだね、だっていなくなった今でも話題の中心だもの」
私が言うと、「ちがいねぇ」と竜司くんが爽やかに笑った。
「モナちゃんにも会えるね」
「おーそうだ、あいつもいたな。キャットフードちゃんと買っといたか?」
「ここまできてそんなの可哀想でしょ……」
「モナ用の寿司のパック買っといたぞ」
「とにかく不思議な人、だったわね。確実なのは、彼は今も私たちのリーダーってことかしら」
「そうだね、だっていなくなった今でも話題の中心だもの」
私が言うと、「ちがいねぇ」と竜司くんが爽やかに笑った。
「モナちゃんにも会えるね」
「おーそうだ、あいつもいたな。キャットフードちゃんと買っといたか?」
「ここまできてそんなの可哀想でしょ……」
「モナ用の寿司のパック買っといたぞ」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:15:07.12 ID:Y3tzY7X6o
「ガリも大量に取っておいたぞ。無料とは素晴らしいな」
「ああ、そう……」
人付き合いに意味を見出だせなかった私は、友人と呼べる友人などずっといなかった。そんな私が今、損得や利益といったものと無関係な、対等な関係を築いて楽しくお喋りできている。
もし彼がいなければ、私はもちろんこの輪の中には入れていなかった。もしかすると、私だけでなくみんながそう感じているのかもしれない。彼らはみな私と同じように周囲から大なり小なりのレッテルを貼られ、不自由な思いをしてきた仲間たちだから。
だったらやっぱり、あんまり私だけが彼を占しちゃうのも悪いよね。そう思いながらも、私が彼女なんだからという独占欲と密かな優越感も覚えている。
こういうのって、性格悪いのかしら……。
「ああ、そう……」
人付き合いに意味を見出だせなかった私は、友人と呼べる友人などずっといなかった。そんな私が今、損得や利益といったものと無関係な、対等な関係を築いて楽しくお喋りできている。
もし彼がいなければ、私はもちろんこの輪の中には入れていなかった。もしかすると、私だけでなくみんながそう感じているのかもしれない。彼らはみな私と同じように周囲から大なり小なりのレッテルを貼られ、不自由な思いをしてきた仲間たちだから。
だったらやっぱり、あんまり私だけが彼を占しちゃうのも悪いよね。そう思いながらも、私が彼女なんだからという独占欲と密かな優越感も覚えている。
こういうのって、性格悪いのかしら……。
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:15:45.09 ID:Y3tzY7X6o
「いらっしゃ……、お前か。久しぶり……でもねぇが、よく来たな」
長く続いていた雑談が途切れ、静寂が訪れたタイミングだった。だから下からの声がみんなの耳に小さく届いた。
祐介くんが「やっとか」と小さく呟いた。同時に、みんな姿勢を変えて階段に視線を注ぐ。
「上行ってきな。部屋、そのままにしてあるからよ」
「助かります」
固唾をのんで階段を見守る。徐々に足音が大きくなってきた。
現れた彼は階段の一番上まで昇りきり、そこでようやく部屋に目を向け、そして固まった。目をゆっくり動かし、全員の顔をまじまじと眺めた。肩にいるモナちゃんも同じように目をぱちくりさせている。
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:16:23.52 ID:Y3tzY7X6o
待ち受けた私たちは誰も言葉を発しない。私は大好きな彼の顔に釘付けだったから周りは見えていないけど、みんなニヤニヤしたり優しく微笑んだり、とにかく、笑顔でいた。これはたぶんじゃなくて、絶対。
「……なんでみんないるんだ?」
呆けたように彼が口を開いた。それが合図となって一斉に弾けた。
「なんでじゃねーよ! 戻るんなら言えよなー」
「そうだよもう! こっちこそなんでだよ!」
「お、オマエら……。ワガハイにそんなに会いたかったのかー、そうかー。寂しかったんだなー」
「そうよ、会いたかったわ。貴方は私たちと会いたくなかったみたいだけど?」
マコちゃんの悪戯っぽい物言いに、彼は珍しく焦りの色を見せた。
「……なんでみんないるんだ?」
呆けたように彼が口を開いた。それが合図となって一斉に弾けた。
「なんでじゃねーよ! 戻るんなら言えよなー」
「そうだよもう! こっちこそなんでだよ!」
「お、オマエら……。ワガハイにそんなに会いたかったのかー、そうかー。寂しかったんだなー」
「そうよ、会いたかったわ。貴方は私たちと会いたくなかったみたいだけど?」
マコちゃんの悪戯っぽい物言いに、彼は珍しく焦りの色を見せた。
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:16:54.91 ID:Y3tzY7X6o
「い、いや、そうじゃなくて。ちょっと前に送り出してもらったばっかりなのに、すぐまた会うのって気まずくない?」
彼は竜司くんに肩を抱かれながら、部屋に引っ張り込まれるように入ってくる。モナちゃんは鞄から飛び出て双葉ちゃんの膝に飛び乗った。
「そんなことを気にする間柄じゃないだろう、俺たちは」
「そーそー。てかこっちが実家だし? なんも気にすることなくね?」
「そうだな、悪かったよ」
「おおお、スシがあるじゃねーか! 気が利くなー」
「さすが目ざといな、この猫……。いや鼻が利くのか?」
「ネコじゃねーし!」
「いや今さら否定してもね……。喋る以外完璧ネコだよ、もう」
彼は竜司くんに肩を抱かれながら、部屋に引っ張り込まれるように入ってくる。モナちゃんは鞄から飛び出て双葉ちゃんの膝に飛び乗った。
「そんなことを気にする間柄じゃないだろう、俺たちは」
「そーそー。てかこっちが実家だし? なんも気にすることなくね?」
「そうだな、悪かったよ」
「おおお、スシがあるじゃねーか! 気が利くなー」
「さすが目ざといな、この猫……。いや鼻が利くのか?」
「ネコじゃねーし!」
「いや今さら否定してもね……。喋る以外完璧ネコだよ、もう」
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/24(月) 22:17:37.64 ID:Y3tzY7X6o
もう懐かしくもある作戦会議を思い起こさせるように、騒がしい声が部屋に響き渡る。
私は見惚れていたせいで流れに乗れず何も喋れないままだった。何を言おうとしてたか忘れちゃったけど、無理に話そうとはあまり思わなかった。
しばらくぽーっとしていると、彼が横までやってきて立ち止まり、真正面から目を合わせた。
胸に温かさが満ちるように感情が広がる。彼は何も言わずゆっくり頷き、微笑んだ。
「おかえりなさい」
自然と口が動いていた。考えていた台詞とは違うけれど、伝えたい想いは短い言葉に全部込めることができた。そんな気がした。
「ただいま」
* * *
私は見惚れていたせいで流れに乗れず何も喋れないままだった。何を言おうとしてたか忘れちゃったけど、無理に話そうとはあまり思わなかった。
しばらくぽーっとしていると、彼が横までやってきて立ち止まり、真正面から目を合わせた。
胸に温かさが満ちるように感情が広がる。彼は何も言わずゆっくり頷き、微笑んだ。
「おかえりなさい」
自然と口が動いていた。考えていた台詞とは違うけれど、伝えたい想いは短い言葉に全部込めることができた。そんな気がした。
「ただいま」
* * *
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:11:33.63 ID:sIrnBUYZo
柔らかい陽差しの射していた日中とは違い、春の夜はどこか郷愁を含んでいてまだ冷たく感じる。普段より気持ち短めのスカートから出た脚を撫でるように風が通り抜け、おもわず肩を縮めた。
「寒い?」
隣を歩く彼が私を気遣うように顔を覗き込んだ。
「ううん、大丈夫。……ありがとう」
感謝の言葉は蚊の鳴くような声にしかならなかった。こんな些細なことがどうしようもなく嬉しくて、まともに目線を合わせられず上目遣いになってしまう。
「何それ、可愛いな」
「えっ。あ、あの、嬉しい、です……」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:12:23.82 ID:sIrnBUYZo
もうやだちゃんと喋れない。年下のこの子はなんでこんなに落ち着いてるの。私はこんなにドキドキしてるのに。
「君は、これでよかったの?」
「何が?」
「みんなのこと」
騒がしくも楽しかったみんなとの鍋パーティは夜のいい時間にお開きとなり、その場は各自解散となった。ちなみにモナちゃんは双葉ちゃんに拉致されていった。
そのあと、私はわざわざ彼に送ってもらって帰る振りをしてから引き返し、今こうして落ち合い、また喫茶ルブランへ向かっている。
手を繋いで。
「ああ、いいんじゃないかな。今日は元々春に会いたくて戻ってきたんだから。まあ、みんなの歓迎は嬉しかったけど」
「君は、これでよかったの?」
「何が?」
「みんなのこと」
騒がしくも楽しかったみんなとの鍋パーティは夜のいい時間にお開きとなり、その場は各自解散となった。ちなみにモナちゃんは双葉ちゃんに拉致されていった。
そのあと、私はわざわざ彼に送ってもらって帰る振りをしてから引き返し、今こうして落ち合い、また喫茶ルブランへ向かっている。
手を繋いで。
「ああ、いいんじゃないかな。今日は元々春に会いたくて戻ってきたんだから。まあ、みんなの歓迎は嬉しかったけど」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:13:54.90 ID:sIrnBUYZo
彼は事も無げに、私が言ってほしい台詞を選択しているかのように話す。
それを聞いた瞬間、一人で抜け駆けしている罪悪感は彼への愛しさに転換された。二人きりで会えることの歓喜と愉悦が、後ろめたさをすべて覆い尽くした。
「私も……会いたかったよ」
街灯が少なく周りが暗くなった場所まで進んで立ち止まり、そう言った。顔の赤さを誤魔化したくて。
彼は言葉の代わりに繋いだ手の指をしっかり絡め、強く握った。私は頬の緩みを押さえきれず、照れ隠しに下を向いてまた脚を動かし始めた。
これ、いわゆる、その、恋人繋ぎってやつだよね。
「あ、みんないるのわかってるのにあんなメール送るのは止めてよ……。表情隠すの大変だったんだからね」
それを聞いた瞬間、一人で抜け駆けしている罪悪感は彼への愛しさに転換された。二人きりで会えることの歓喜と愉悦が、後ろめたさをすべて覆い尽くした。
「私も……会いたかったよ」
街灯が少なく周りが暗くなった場所まで進んで立ち止まり、そう言った。顔の赤さを誤魔化したくて。
彼は言葉の代わりに繋いだ手の指をしっかり絡め、強く握った。私は頬の緩みを押さえきれず、照れ隠しに下を向いてまた脚を動かし始めた。
これ、いわゆる、その、恋人繋ぎってやつだよね。
「あ、みんないるのわかってるのにあんなメール送るのは止めてよ……。表情隠すの大変だったんだからね」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:14:45.31 ID:sIrnBUYZo
「ごめん、でも早く確認したくて。二人で会おうってつもりだったのに、春はそれが嫌でみんなに伝えたのかなと」
「そんなわけないじゃない。私も何がなんだかわからなかったの」
「そう、ならよかった」
鍋の準備をしている最中、トイレに行くと席を立った彼からメールがきたときは驚いた。さらにドキッとさせられたのはその内容だ。
『これ終わったらいったん帰る振りして引き返せない? やっぱり二人で会いたい。泊まっていくよね?』
熱い胸の高鳴りを顔に出さないようにするのに本当に苦労した。みんながいる中で密かに逢瀬の約束を取り付ける。そんなドラマの中のような出来事が自分に起こるなんて考えたこともなかった。
「そんなわけないじゃない。私も何がなんだかわからなかったの」
「そう、ならよかった」
鍋の準備をしている最中、トイレに行くと席を立った彼からメールがきたときは驚いた。さらにドキッとさせられたのはその内容だ。
『これ終わったらいったん帰る振りして引き返せない? やっぱり二人で会いたい。泊まっていくよね?』
熱い胸の高鳴りを顔に出さないようにするのに本当に苦労した。みんながいる中で密かに逢瀬の約束を取り付ける。そんなドラマの中のような出来事が自分に起こるなんて考えたこともなかった。
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:15:55.73 ID:sIrnBUYZo
思えば、彼からは私にとって"はじめて"な出来事をもらってばかりだ。彼は私と違って経験豊富そうだけれど、私からもあげられる"はじめて"は何かあるのかな。
そこで、ふと邪な、邪なのかな……?
とにかく、口に出すことなどとてもできない、彼にあげられる……貰ってもらう? 私の"はじめて"が頭をよぎり、握る手に力が入ってしまった。
「どうかした?」
「う、ううん、なんでもない」
明らかに動揺していたけれど、彼はそれ以上聞いてはこなかった。
何かを察したようなのに追求しない彼の優しさに心の中で感謝を送りながら、高くないヒールのついたパンプスでアスファルトを踏み締めた。
そこで、ふと邪な、邪なのかな……?
とにかく、口に出すことなどとてもできない、彼にあげられる……貰ってもらう? 私の"はじめて"が頭をよぎり、握る手に力が入ってしまった。
「どうかした?」
「う、ううん、なんでもない」
明らかに動揺していたけれど、彼はそれ以上聞いてはこなかった。
何かを察したようなのに追求しない彼の優しさに心の中で感謝を送りながら、高くないヒールのついたパンプスでアスファルトを踏み締めた。
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:16:48.85 ID:sIrnBUYZo
過ぎてほしくない時間ほど早く過ぎ去るものだとは聞いていたけれど、喫茶店───彼と二人きりで過ごす部屋───に到着するまでの道のりは、それを最もわかりやすい形で体験できる短い旅路だった。言い過ぎじゃなく感覚的には来たときの半分ぐらいの距離に感じた。
ルブランの扉の前に着くと、どちらからともなく繋いだ手が離れた。最後は指先を伸ばして名残惜しさを彼に伝えた。
営業は終わっているみたいだけど、おじ様がまだ片付けをしているらしく灯りが点いたままだったからだ。別にどうしても隠さなきゃいけない関係ではない(と、少なくとも私は思う)けれど、まだなんとなく恥ずかしい。
「CLOSED」の札がかかった扉を彼が開くと、チャリリンと来客を知らすドアベルが鳴り響いた。カウンターで煙草を吸っていたおじ様が、彼に続いて入る私を見て驚いた目を向ける。
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:17:34.75 ID:sIrnBUYZo
「こ、こんばんは。すみません、夜分遅くに」
「あれ、さっき帰ってたよな? 忘れ物か何か?」
優しく聞いてくるおじ様の顔を見て胸に棘が刺さった気がした。どう返事をしよう、嘘を吐くのはよくないけど……。
「そんなとこ」
考える間もなく、彼が即座に答えた。おじ様は特に疑問に思わなかったのか、「そうか」と呟いて紫煙を吐き出した。
「すみません、ちょっとお邪魔します」
軽く頭を下げてカウンターの前を通ろうとすると、おじ様の声が彼が呼び止めた。
「……ちょっと待て。俺もう帰るから鍵閉めて上がってくれ」
「あれ、さっき帰ってたよな? 忘れ物か何か?」
優しく聞いてくるおじ様の顔を見て胸に棘が刺さった気がした。どう返事をしよう、嘘を吐くのはよくないけど……。
「そんなとこ」
考える間もなく、彼が即座に答えた。おじ様は特に疑問に思わなかったのか、「そうか」と呟いて紫煙を吐き出した。
「すみません、ちょっとお邪魔します」
軽く頭を下げてカウンターの前を通ろうとすると、おじ様の声が彼が呼び止めた。
「……ちょっと待て。俺もう帰るから鍵閉めて上がってくれ」
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:18:32.10 ID:sIrnBUYZo
「……わかった」
二人で入り口近くに立ち、おじ様の帰り支度を待った。
「嬢ちゃん、あまり遅くならないようにな。お前にも一応言っとくが……、いや、なんでもねぇ。ごゆっくり」
再度ドアベルの音が静かな店内に響き、おじ様は扉の向こうに消えた。ドアベルの音が消えると片付けも終わった喫茶店には静寂が立ち込め、二人の間にゆっくりと広がった。
おじ様は彼に何を伝えようとしたのだろう。言い方からすると警告のように思えるけれど……。何かを言いかけてやめた、その間が凄く気になった。
「……何言いかけたのかな?」
「さあ? なんだろうね?」
二人で首を傾げ、照れ隠しのように微笑み合った。やだ、なんかまたドキドキしてきちゃった。
二人で入り口近くに立ち、おじ様の帰り支度を待った。
「嬢ちゃん、あまり遅くならないようにな。お前にも一応言っとくが……、いや、なんでもねぇ。ごゆっくり」
再度ドアベルの音が静かな店内に響き、おじ様は扉の向こうに消えた。ドアベルの音が消えると片付けも終わった喫茶店には静寂が立ち込め、二人の間にゆっくりと広がった。
おじ様は彼に何を伝えようとしたのだろう。言い方からすると警告のように思えるけれど……。何かを言いかけてやめた、その間が凄く気になった。
「……何言いかけたのかな?」
「さあ? なんだろうね?」
二人で首を傾げ、照れ隠しのように微笑み合った。やだ、なんかまたドキドキしてきちゃった。
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:19:17.68 ID:sIrnBUYZo
妙に落ち着かなくて、部屋に向かう階段を昇りながら彼に話しかけた。
「嘘、吐いちゃったね」
「まあわかってて見過ごしてくれてるんだし、別にいいんじゃない?」
「えっ? バレてるの?」
おもわず足を止めてしまった。
「うん。だって忘れ物を取って帰るだけなら鍵閉めて上がれとは言わないだろ」
思い返してみると、その通りだった。すぐに私が出ていくと考えているならあの台詞は不自然だ。
「どう、思われてるのかな……」
「……さあ? それはわからないな」
本当に、私はおじ様にどんな子だと思われてるんだろう。ああ、どうか嫌われていませんように。でももう引き返す気はないんだけどね。
「嘘、吐いちゃったね」
「まあわかってて見過ごしてくれてるんだし、別にいいんじゃない?」
「えっ? バレてるの?」
おもわず足を止めてしまった。
「うん。だって忘れ物を取って帰るだけなら鍵閉めて上がれとは言わないだろ」
思い返してみると、その通りだった。すぐに私が出ていくと考えているならあの台詞は不自然だ。
「どう、思われてるのかな……」
「……さあ? それはわからないな」
本当に、私はおじ様にどんな子だと思われてるんだろう。ああ、どうか嫌われていませんように。でももう引き返す気はないんだけどね。
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:20:07.40 ID:sIrnBUYZo
人のいない屋根裏部屋を見渡すと、さっきまで私もいた同じ場所のはずなのに、お昼とはまったく違う印象を抱いた。ここにあったみんなの優しさとあの喧騒は消え、微かな残り香のみを漂わせている。
誰に話しても信じてもらえないような縁で繋がった私たちも、彼が地元に戻ってしまったように、いずれみんな別々の道を歩み始める。この春からは私とマコちゃんも大学生だから、こうして集まれる機会も徐々に少なくなっていくのだろう。
一瞬だけそんな感傷に浸り、目線を下に落とした。すぐそこに彼の脚が見えた。
「おかえり、春」
彼はそう言いながら私を抱き締めた。
「え、えっと、ただいま?」
私の身体は私より頭一つ分背の高い年下の彼の思いのまま、腕の中にすっぽりおさまった。
誰に話しても信じてもらえないような縁で繋がった私たちも、彼が地元に戻ってしまったように、いずれみんな別々の道を歩み始める。この春からは私とマコちゃんも大学生だから、こうして集まれる機会も徐々に少なくなっていくのだろう。
一瞬だけそんな感傷に浸り、目線を下に落とした。すぐそこに彼の脚が見えた。
「おかえり、春」
彼はそう言いながら私を抱き締めた。
「え、えっと、ただいま?」
私の身体は私より頭一つ分背の高い年下の彼の思いのまま、腕の中にすっぽりおさまった。
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:21:11.49 ID:sIrnBUYZo
おかえり。
ただいま。
私の帰ってくる場所。帰ってこれる場所。ほっとする心地好さ。私の居場所。
「……あったかいね」
「だね。春、ドキドキしてる?」
「あ、当たり前じゃない。というか、いきなりすぎ……。幸せすぎて、死んじゃいそう」
「それは困るな、じゃあ離そう」
私を抱き締める手の力が緩んだ。
「ダメっ。離しちゃ、ヤダ……」
「……女心は難しいな」
また腕に力がこもる。私は彼の胸に額を押し付けた。
ただいま。
私の帰ってくる場所。帰ってこれる場所。ほっとする心地好さ。私の居場所。
「……あったかいね」
「だね。春、ドキドキしてる?」
「あ、当たり前じゃない。というか、いきなりすぎ……。幸せすぎて、死んじゃいそう」
「それは困るな、じゃあ離そう」
私を抱き締める手の力が緩んだ。
「ダメっ。離しちゃ、ヤダ……」
「……女心は難しいな」
また腕に力がこもる。私は彼の胸に額を押し付けた。
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:22:22.33 ID:sIrnBUYZo
「君、わかって言ってるでしょう?」
「さあ。なんのこと?」
彼の声が耳元から私の中に入り、身体中に広がっていく。とぼけたような言い方も全然憎らしくなくて、愛しくてたまらない。
「そんな意地の悪い子には罰を与えないと」
彼の内側におさまったまま、お姉さんとしての僅かな反逆の意思を言葉に込める。
「怖いな、どんな罰?」
全然怖そうにしない彼に、言ってやった。
「もうしばらく、このまま……」
「……ああ。それなら簡単だ」
その間、私の世界はこの世で一番素敵な音だけに包まれた。
「さあ。なんのこと?」
彼の声が耳元から私の中に入り、身体中に広がっていく。とぼけたような言い方も全然憎らしくなくて、愛しくてたまらない。
「そんな意地の悪い子には罰を与えないと」
彼の内側におさまったまま、お姉さんとしての僅かな反逆の意思を言葉に込める。
「怖いな、どんな罰?」
全然怖そうにしない彼に、言ってやった。
「もうしばらく、このまま……」
「……ああ。それなら簡単だ」
その間、私の世界はこの世で一番素敵な音だけに包まれた。
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:23:34.06 ID:sIrnBUYZo
それからソファに座り、甘えたり甘えられたりのくすぐったすぎて悶えそうな時間をひとしきり過ごした。
知らなかったことだけれど、長い時間笑顔でいてもそれが自然なものだとあまり疲れないみたい。作り笑いなら慣れてるけど、立食パーティーなんかでずっとそうしていると、終わり際には頬の筋肉がひきつりそうになっていたのに。
「コーヒーでも飲む?」
少し目を閉じて考えていると、彼が魅惑的な提案をしてくれた。
「いいの?」
「もちろん」
「なら、うん。頂きます」
「じゃ、ちょっと待ってて」
言うと、彼はすっと立ち上がり階段へ向かう。
54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:25:00.57 ID:sIrnBUYZo
「私も君が淹れてるところ、見たいな」
「またいつでも見せるよ。だから今日は座ってて」
「う、うん……」
まただ。またやり込められた感が……。
たぶん、「いつでも」という言葉がなければ私は強引に見ようとしていた気がする。これから先も二人の時間はある、まだ続くんだよと言われたようで、嬉しくて何も言えなくなった。彼は女の子の扱いに慣れすぎていてちょっとだけ不安になる。
彼の消えた部屋でおとなしく座っていると、新たなコーヒーの芳香が昇ってきた。ああ、いい香り。
と、そこで脳内を既視感が駆け巡った。
何かしら、これ……。
「またいつでも見せるよ。だから今日は座ってて」
「う、うん……」
まただ。またやり込められた感が……。
たぶん、「いつでも」という言葉がなければ私は強引に見ようとしていた気がする。これから先も二人の時間はある、まだ続くんだよと言われたようで、嬉しくて何も言えなくなった。彼は女の子の扱いに慣れすぎていてちょっとだけ不安になる。
彼の消えた部屋でおとなしく座っていると、新たなコーヒーの芳香が昇ってきた。ああ、いい香り。
と、そこで脳内を既視感が駆け巡った。
何かしら、これ……。
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:26:01.64 ID:sIrnBUYZo
この部屋、この状況……。クリスマスの日かしら? いや、あのときとは違うような。それに、もっと最近に見たことがある気がする。部屋に入ったときはそんな感覚なかったのに、なんでいきなり?
さっきまでと違うこと。
……コーヒーの香り。これが契機?
「あっ」
わかった。朝の夢だ。そこで見たシチュエーションなんだ。
「ええと、夢だと確か……」
コーヒーもそこそこに、私はこのソファに押し倒されるように横になって……。そこで思い出し悶えをしそうになるのを堪え、夢の続きを遡る。確か問題はそこからだったはずだ。
「それから、知らない人がベッドとかにいて……、監視カメラ……」
さっきまでと違うこと。
……コーヒーの香り。これが契機?
「あっ」
わかった。朝の夢だ。そこで見たシチュエーションなんだ。
「ええと、夢だと確か……」
コーヒーもそこそこに、私はこのソファに押し倒されるように横になって……。そこで思い出し悶えをしそうになるのを堪え、夢の続きを遡る。確か問題はそこからだったはずだ。
「それから、知らない人がベッドとかにいて……、監視カメラ……」
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:26:46.10 ID:sIrnBUYZo
とりあえずここに私以外誰もいないのは間違いなさそうだけど、急に不安になってきた。もしかするとこの一部始終を誰かに見られているのではないかと。
夢と現実を結びつけるなんて非常識で不条理なことだとはわかっている。けれど、夢と符合するところが多くて不安を拭いきれない。
「…………!」
何気なく顔を上げ、夢では監視カメラのあった天井の隅に目をやると、穴のようなものが見えた。気がした。なんか光った気もしてきた。
「ま、まさかね……」
そう思いながらも、確認しないことには落ち着けない気分になっていた。そろそろとベッドに向かい、靴を脱いでベッドにあがる。
隅の黒い場所に目を凝らすが暗くてよく見えない。仕方なく、おそるおそる手を伸ばす。
夢と現実を結びつけるなんて非常識で不条理なことだとはわかっている。けれど、夢と符合するところが多くて不安を拭いきれない。
「…………!」
何気なく顔を上げ、夢では監視カメラのあった天井の隅に目をやると、穴のようなものが見えた。気がした。なんか光った気もしてきた。
「ま、まさかね……」
そう思いながらも、確認しないことには落ち着けない気分になっていた。そろそろとベッドに向かい、靴を脱いでベッドにあがる。
隅の黒い場所に目を凝らすが暗くてよく見えない。仕方なく、おそるおそる手を伸ばす。
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:27:43.79 ID:sIrnBUYZo
「……何してんの、春」
「ひゃうぁっ!?」
慌てて振り返ると、彼がコーヒーを二つ持って階段を昇ってきたところだった。
「いや、あの……監視カメラが!?」
「はい?」
私の頓珍漢な、ともすると被害妄想癖のある電波な人と思われかねない発言に彼は眉をひそめた。
それから彼は私が手を伸ばしていた箇所を一瞥し、安心したように話す。
「何もない、ただの黒ずみだよ。さすがに双葉もそこまではしない」
「な、なんだ……。なら、その……他に誰かいない!?」
まずい、完全に危ない人だ。
「……誰もいないよ。落ち着いて」
「ひゃうぁっ!?」
慌てて振り返ると、彼がコーヒーを二つ持って階段を昇ってきたところだった。
「いや、あの……監視カメラが!?」
「はい?」
私の頓珍漢な、ともすると被害妄想癖のある電波な人と思われかねない発言に彼は眉をひそめた。
それから彼は私が手を伸ばしていた箇所を一瞥し、安心したように話す。
「何もない、ただの黒ずみだよ。さすがに双葉もそこまではしない」
「な、なんだ……。なら、その……他に誰かいない!?」
まずい、完全に危ない人だ。
「……誰もいないよ。落ち着いて」
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:28:41.67 ID:sIrnBUYZo
彼はコーヒーを机に置いてベッドに歩み寄る。彼に手を引かれベッドを降り、二人で深呼吸をした。
「何があったの? 人の気配でもした?」
「う、うーん……。ま、窓の外とか……」
「ここ二階ですけど」
「だ、だよね。じゃあ、ベッドの下とか……?」
「なにそれこわい。あ、ホラー映画でも見たのか?」
「いや、そうでもなくて……。……笑わないでね?」
落ち着きを取り戻しベッドにちょこんと座ると、今日の朝見た夢の内容を、押し倒されたくだりは伏せて彼に話した。コーヒーの香りが漂う中ここで二人で過ごしていると、いつの間にか知らない女性や知っている子が次々と押し寄せてくるという、話していてもバカらしくなるような無茶な夢を。
「何があったの? 人の気配でもした?」
「う、うーん……。ま、窓の外とか……」
「ここ二階ですけど」
「だ、だよね。じゃあ、ベッドの下とか……?」
「なにそれこわい。あ、ホラー映画でも見たのか?」
「いや、そうでもなくて……。……笑わないでね?」
落ち着きを取り戻しベッドにちょこんと座ると、今日の朝見た夢の内容を、押し倒されたくだりは伏せて彼に話した。コーヒーの香りが漂う中ここで二人で過ごしていると、いつの間にか知らない女性や知っている子が次々と押し寄せてくるという、話していてもバカらしくなるような無茶な夢を。
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:29:55.26 ID:sIrnBUYZo
「なるほど。それで気になったんだ」
「うん……。そんなバカなことあるわけないのにね」
「はい。これでも飲んで落ち着いて」
彼は淹れたてのコーヒーをそっと私に手渡した。
「ありがとう」
一口飲むと、香ばしい苦味と淹れたての温かさが染み渡った。はぁっと息を吐いてもう一口飲んだ。
「……あったかい」
「味はどう?」
「おいしい。酸味があまりなくてスッキリしてるのにコクがある。スゴいね」
「よかった。これがマスターなら「説明しよう!」とかって豆の種類の講釈を始めたのち挽き方が悪いって説教されてるとこだよ」
「うん……。そんなバカなことあるわけないのにね」
「はい。これでも飲んで落ち着いて」
彼は淹れたてのコーヒーをそっと私に手渡した。
「ありがとう」
一口飲むと、香ばしい苦味と淹れたての温かさが染み渡った。はぁっと息を吐いてもう一口飲んだ。
「……あったかい」
「味はどう?」
「おいしい。酸味があまりなくてスッキリしてるのにコクがある。スゴいね」
「よかった。これがマスターなら「説明しよう!」とかって豆の種類の講釈を始めたのち挽き方が悪いって説教されてるとこだよ」
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:30:39.84 ID:sIrnBUYZo
彼は大袈裟に肩を竦めぼやく。
「あははっ、おじ様は厳しいね。私も、豆の種類ぐらい当てられるようになんないとね」
味と色と香りから、これまでに飲んだことのあるいくつかの銘柄が頭に浮かんだけれど、具体的にこれというところまでは辿り着けなかった。まだまだだなぁ。
「なんか、懐かしい。……落ち着く」
隣に座る彼に寄りかかり、頭を肩に乗せた。彼は私の腰に手を回して体を密着させた。
「うん。二人で会えてよかった。春、寂しそうだったから」
「え?」
寂しいなんて彼には一言も言ってこなかった。やっと会えた今日だって、みんなの前ではいつも通りの私でいられたと思っている。
「あははっ、おじ様は厳しいね。私も、豆の種類ぐらい当てられるようになんないとね」
味と色と香りから、これまでに飲んだことのあるいくつかの銘柄が頭に浮かんだけれど、具体的にこれというところまでは辿り着けなかった。まだまだだなぁ。
「なんか、懐かしい。……落ち着く」
隣に座る彼に寄りかかり、頭を肩に乗せた。彼は私の腰に手を回して体を密着させた。
「うん。二人で会えてよかった。春、寂しそうだったから」
「え?」
寂しいなんて彼には一言も言ってこなかった。やっと会えた今日だって、みんなの前ではいつも通りの私でいられたと思っている。
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:31:34.94 ID:sIrnBUYZo
「……なんで、そう思うの? そんな素振り、見せてたかな」
「春が無理してるときってなんとなくわかるよ、自分のことに目を向けないで人のことばかり気にしてる。それに家から出て一人暮らしするって言ってたから。あそこだといろいろ思い出しちゃうからじゃないかな、違う?」
彼はコーヒーを啜り、一息で話した。
全部彼にバレてた。何も言わなくても伝わってた。
どうしよう。泣きそう。
「どうしよう。泣きそう」
声に出てた。
「それは、嬉しくて? 悲しくて?」
「嬉しいほう……かな」
「じゃあ……」
「春が無理してるときってなんとなくわかるよ、自分のことに目を向けないで人のことばかり気にしてる。それに家から出て一人暮らしするって言ってたから。あそこだといろいろ思い出しちゃうからじゃないかな、違う?」
彼はコーヒーを啜り、一息で話した。
全部彼にバレてた。何も言わなくても伝わってた。
どうしよう。泣きそう。
「どうしよう。泣きそう」
声に出てた。
「それは、嬉しくて? 悲しくて?」
「嬉しいほう……かな」
「じゃあ……」
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:32:30.60 ID:sIrnBUYZo
彼は私の持っていたコーヒーを半ば奪い取ると、自分のものと並べて机に置く。それからベッドに戻り、
「おいで、春」
と、手を広げた。
その姿に、言い方に、優しかった頃のお父様の幻影を見た。
「っ……!」
外に出さないようにしていたものが堰を切ったように溢れ、彼の胸を濡らす。しがみついたまま、熱の放流はしばらく続いた。
「……私、お姉さんなのになぁ」
涙声を通り過ぎた鼻声のまま、頭を撫でられながらそんなことを呟いた。
「辛いときぐらい甘えたっていいだろ。もっと頼ってほしいしさ」
「おいで、春」
と、手を広げた。
その姿に、言い方に、優しかった頃のお父様の幻影を見た。
「っ……!」
外に出さないようにしていたものが堰を切ったように溢れ、彼の胸を濡らす。しがみついたまま、熱の放流はしばらく続いた。
「……私、お姉さんなのになぁ」
涙声を通り過ぎた鼻声のまま、頭を撫でられながらそんなことを呟いた。
「辛いときぐらい甘えたっていいだろ。もっと頼ってほしいしさ」
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:33:29.72 ID:sIrnBUYZo
「もう十分頼ってるよ。支えられてるのは私ばっかりだもん」
私は少なくとも、年下とか年上とか関係なしに彼とは対等でいたいと思っている。彼の後ろを黙ってついていくだけでなく、並んで立ちたい。彼の向いているほう私も向いて、同じものを見て歩き続けたい。
「私もたまには甘えてもらいたいなぁ」
「いいの?」
「うん。君が甘えるなんてあんまり想像できないけど」
甘さとはほど遠い、彼の強いところや優秀なところはこれまでにたくさん見てきた。酷いレッテルや不条理に耐えながら、強靭な心でいくつもの困難を乗り越えてきたのは私もよく知っている。
そんな彼が甘える姿は……たぶん、かわいい。超。すっごく。よしよししてあげたくなる、絶対。
私は少なくとも、年下とか年上とか関係なしに彼とは対等でいたいと思っている。彼の後ろを黙ってついていくだけでなく、並んで立ちたい。彼の向いているほう私も向いて、同じものを見て歩き続けたい。
「私もたまには甘えてもらいたいなぁ」
「いいの?」
「うん。君が甘えるなんてあんまり想像できないけど」
甘さとはほど遠い、彼の強いところや優秀なところはこれまでにたくさん見てきた。酷いレッテルや不条理に耐えながら、強靭な心でいくつもの困難を乗り越えてきたのは私もよく知っている。
そんな彼が甘える姿は……たぶん、かわいい。超。すっごく。よしよししてあげたくなる、絶対。
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:34:20.75 ID:sIrnBUYZo
でも怪盗の姿は誰よりもスマートで、どこまでも格好いい憧れのヒーロー。
さっき「おいで」と言ってくれた姿は、男らしくて優しくて、父のような包容力に溢れていた。
「……君って、ほんと不思議だよね。いろんな顔がある。……どれが君の本当の顔?」
すぐ傍にある彼の顔を見上げ、そっと肌に触れた。無意識のうちに初めて触れた彼の頬から体温が伝わる。
「どれってことはないかな、全部本物。春だっていろんな顔があるけど、どれも春だよ」
「私、そんなにいろんな顔あるかな?」
「うん。笑ったり泣いたり、寂しそうにしてたり、天然だったり、たくさんある。それは全部春で、全部好きだよ」
さっき「おいで」と言ってくれた姿は、男らしくて優しくて、父のような包容力に溢れていた。
「……君って、ほんと不思議だよね。いろんな顔がある。……どれが君の本当の顔?」
すぐ傍にある彼の顔を見上げ、そっと肌に触れた。無意識のうちに初めて触れた彼の頬から体温が伝わる。
「どれってことはないかな、全部本物。春だっていろんな顔があるけど、どれも春だよ」
「私、そんなにいろんな顔あるかな?」
「うん。笑ったり泣いたり、寂しそうにしてたり、天然だったり、たくさんある。それは全部春で、全部好きだよ」
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:35:22.32 ID:sIrnBUYZo
これまでにも何度か聞かせてもらえた、褒められるよりも嬉しい言葉。何よりも聞きたい言葉。
聴く度に私はドキッとして胸も頭も熱くなり、なかなか上手く話せなくなるぐらいなんだけれど、今は、違った。
コーヒーが布に染み渡るように、ミルクが落ちてゆっくりと溶けていくように、私の中に広がっていった。
「私も……すき。大好き。……愛してる」
愛なんて私が口にする日が来ると思わなかった。というより、愛がなんなのかなんて今だって説明はできない。
それでもわかった。知らない言葉が溢れ出た。私はあなたと、これからも、ずっと───。
「愛はさすがに……、少し照れるな」
彼は恥ずかしそうに身を捩ったけれど、私から目を逸らすことはなかった。
聴く度に私はドキッとして胸も頭も熱くなり、なかなか上手く話せなくなるぐらいなんだけれど、今は、違った。
コーヒーが布に染み渡るように、ミルクが落ちてゆっくりと溶けていくように、私の中に広がっていった。
「私も……すき。大好き。……愛してる」
愛なんて私が口にする日が来ると思わなかった。というより、愛がなんなのかなんて今だって説明はできない。
それでもわかった。知らない言葉が溢れ出た。私はあなたと、これからも、ずっと───。
「愛はさすがに……、少し照れるな」
彼は恥ずかしそうに身を捩ったけれど、私から目を逸らすことはなかった。
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:36:20.35 ID:sIrnBUYZo
「あはっ、ちょっと重いかな、私」
何故か、初めて彼より少し優位に立てた気がする。私の心は完全に奪われちゃってるから、きっと気のせいなんだけど。
「……いや、そんなことない。嬉しいよ」
「……ほんと?」
「本当」
言い終わるや否や、彼は頭を傾けて私を抱き寄せた。音もなく静かに唇が重なった。微かに香る珈琲の匂いの中、私は目を閉じて幸せを噛み締めた。
触れ合ったままだった唇は、離れる際に別れを拒むように引っ張り合い、やがて限界を越えた地点で離れた。息をずっと止めていたから、肺が空気を求めて喘いだ。
「っはぁ……。私、あなたのことが好き」
何故か、初めて彼より少し優位に立てた気がする。私の心は完全に奪われちゃってるから、きっと気のせいなんだけど。
「……いや、そんなことない。嬉しいよ」
「……ほんと?」
「本当」
言い終わるや否や、彼は頭を傾けて私を抱き寄せた。音もなく静かに唇が重なった。微かに香る珈琲の匂いの中、私は目を閉じて幸せを噛み締めた。
触れ合ったままだった唇は、離れる際に別れを拒むように引っ張り合い、やがて限界を越えた地点で離れた。息をずっと止めていたから、肺が空気を求めて喘いだ。
「っはぁ……。私、あなたのことが好き」
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:37:06.46 ID:sIrnBUYZo
「知ってる」
「たぶん、君が思ってるよりも、もっとだよ」
「どのくらい?」
「ええとね……」
少しだけ考えて、ちゃんと話しておこうと決めた。すっごくとか海よりも深くとか、そんなありきたりな言葉で伝わるとも思えなかったから。
寄り掛かるのをやめて、姿勢を正してから口を開いた。
「……私ね、お父様が亡くなる前から……、もう何年もずっと、家族らしいことしてなかったの。会話も業務連絡みたいなのとか、私の意思なんか必要ないって感じのただの命令とか、とにかく一方通行で。私は社長の子供で奥村の娘だから、これは仕方のないことなんだって言い聞かせて、我慢してきたの」
沈めていた想いは、淀みなく出てきてくれた。
「たぶん、君が思ってるよりも、もっとだよ」
「どのくらい?」
「ええとね……」
少しだけ考えて、ちゃんと話しておこうと決めた。すっごくとか海よりも深くとか、そんなありきたりな言葉で伝わるとも思えなかったから。
寄り掛かるのをやめて、姿勢を正してから口を開いた。
「……私ね、お父様が亡くなる前から……、もう何年もずっと、家族らしいことしてなかったの。会話も業務連絡みたいなのとか、私の意思なんか必要ないって感じのただの命令とか、とにかく一方通行で。私は社長の子供で奥村の娘だから、これは仕方のないことなんだって言い聞かせて、我慢してきたの」
沈めていた想いは、淀みなく出てきてくれた。
68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:38:12.06 ID:sIrnBUYZo
「お父様は会社でも従業員の人たちにそんな感じになって、私の人生すらも一人で決めちゃって……、辛かった。苦しかった。それでね、怪盗団にでもなんでも、なんとか昔のお父様に戻ってほしいなって思ってたところでモナちゃんに会って、あなたと、みんなと出会って、やっとちゃんと家族になれるって思ってたら……」
そこで、喉の奥で感情の塊がつっかえて言葉が出なくなった。彼はそんな私の手を握り、深く頷いた。
うん。ちゃんと話すよ。
「……あんなお父様でも、私にとってはたった一人の家族だったの。何気ない一言で嬉しかったことも、楽しかったこともあって、それをずっと、ずっと取り戻しかった。やり直せるはずだって思ってたのにそれはもう、叶わないんだなって。君がこっちから地元に戻って、あの家で一人で寝起きしてたら全部が懐かしくて、いい思い出ばかり甦って、寂しくて、私の家族は誰もいなくて……」
また瞳に熱さを感じた。彼の手をぎゅっと強く握った。
そこで、喉の奥で感情の塊がつっかえて言葉が出なくなった。彼はそんな私の手を握り、深く頷いた。
うん。ちゃんと話すよ。
「……あんなお父様でも、私にとってはたった一人の家族だったの。何気ない一言で嬉しかったことも、楽しかったこともあって、それをずっと、ずっと取り戻しかった。やり直せるはずだって思ってたのにそれはもう、叶わないんだなって。君がこっちから地元に戻って、あの家で一人で寝起きしてたら全部が懐かしくて、いい思い出ばかり甦って、寂しくて、私の家族は誰もいなくて……」
また瞳に熱さを感じた。彼の手をぎゅっと強く握った。
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:39:29.33 ID:sIrnBUYZo
「…………私、独りは嫌だよ。寂しいよ……」
耐えきれず嗚咽が漏れた。私はまた彼に包まれた。
「俺でよければずっと傍にいる」
今日だけで二回も泣いた。人目を気にせずこんなに子供のような想いを晒け出すのはいつ以来だろう。
そうだ。お父様のシャドウに言われた、あの日。運動会を見に来てくれなかった、あの日以来なんだ。
もう話すことはできないお父様。もう怒りも笑いもしないお父様。私は、お父様の娘で幸せでした───。
「……伝えたかったなぁ。昔みたいに戻ったお父様に」
泣き止んでから、彼の胸で呟いた。
耐えきれず嗚咽が漏れた。私はまた彼に包まれた。
「俺でよければずっと傍にいる」
今日だけで二回も泣いた。人目を気にせずこんなに子供のような想いを晒け出すのはいつ以来だろう。
そうだ。お父様のシャドウに言われた、あの日。運動会を見に来てくれなかった、あの日以来なんだ。
もう話すことはできないお父様。もう怒りも笑いもしないお父様。私は、お父様の娘で幸せでした───。
「……伝えたかったなぁ。昔みたいに戻ったお父様に」
泣き止んでから、彼の胸で呟いた。
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:41:10.27 ID:sIrnBUYZo
「なんて、伝えるの?」
「……いろいろ、かな」
胸がしめつけられるような恋をして、心から好きな人ができました、とか。
私の古い記憶のお父様は驚いて、それから……、どんな顔するのかな。悲しむのかな、怒るのかな、喜んでくれるのかな。
どれもあり得ると思うけど、想像できないや。
「あ、私がどれくらい君を好きかって話だったね」
「そうだっけ?」
彼が惚けているのか本気でもう忘れているのか、私にはよくわからなかった。まあ、どっちでもいいよね。
「そうだよ。ええとね……、私、家族が欲しいな……」
「……いろいろ、かな」
胸がしめつけられるような恋をして、心から好きな人ができました、とか。
私の古い記憶のお父様は驚いて、それから……、どんな顔するのかな。悲しむのかな、怒るのかな、喜んでくれるのかな。
どれもあり得ると思うけど、想像できないや。
「あ、私がどれくらい君を好きかって話だったね」
「そうだっけ?」
彼が惚けているのか本気でもう忘れているのか、私にはよくわからなかった。まあ、どっちでもいいよね。
「そうだよ。ええとね……、私、家族が欲しいな……」
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:41:54.47 ID:sIrnBUYZo
やっぱり恥ずかしい。こんなのどう聞いてもプロポーズと変わらないじゃない。私と家族になってくださいって……。
「……大胆だな」
「それぐらい、好きなんだよ。伝わった?」
「うん、伝わった。何人欲しいの?」
彼は真顔で私にそう尋ねた。
「え? 何人?」
「春は女帝だし、子だくさんなイメージあるから三人ぐらいかな?」
「んん? 女帝? ……子だくさん? 三人!?」
ちょっと、なんか勘違いされてる気が……。
「いや、家族ってそういうことじゃ……」
「……大胆だな」
「それぐらい、好きなんだよ。伝わった?」
「うん、伝わった。何人欲しいの?」
彼は真顔で私にそう尋ねた。
「え? 何人?」
「春は女帝だし、子だくさんなイメージあるから三人ぐらいかな?」
「んん? 女帝? ……子だくさん? 三人!?」
ちょっと、なんか勘違いされてる気が……。
「いや、家族ってそういうことじゃ……」
72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:42:41.62 ID:sIrnBUYZo
「もっと? それとも子供はいらない?」
「い、いや、そんなことは……。私も三人ぐらいがいいかなぁって……一姫二太郎って言うでしょう?」
「わかった」
「な、何が!? いや、ちょっと待ってー!」
ちょっと違うと彼に勘違いを伝えて、一度はなだめたけれど───結局、行き着く先は変わらなかった。
私が不満だったのは過程とか流れの話で、今日ここに泊まると決めた時点で"そう"なるかもしれないことは覚悟していた。彼にすべてを奪われる覚悟を。
だから、私は彼に身を任せた。
長い夜が更けていく…………。
* * *
「い、いや、そんなことは……。私も三人ぐらいがいいかなぁって……一姫二太郎って言うでしょう?」
「わかった」
「な、何が!? いや、ちょっと待ってー!」
ちょっと違うと彼に勘違いを伝えて、一度はなだめたけれど───結局、行き着く先は変わらなかった。
私が不満だったのは過程とか流れの話で、今日ここに泊まると決めた時点で"そう"なるかもしれないことは覚悟していた。彼にすべてを奪われる覚悟を。
だから、私は彼に身を任せた。
長い夜が更けていく…………。
* * *
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:43:36.42 ID:sIrnBUYZo
動くものを感じて目を醒ますと、最愛の人の顔がすぐ横にあった。彼の腕を枕にしていたことを思い出して頬が緩んだ。
こんな幸せ、あるんだね。
外からは明るい光が部屋に射し込めている。おじ様が店に来る前に抜け出さないといけないから早く起きないとね、と昨夜二人で話したような気がするけど、今は何時だろう。
よく眠る彼を起こさないように静かに体を起こすと下半身のある部分に違和感を覚え、おもわず両手で顔を覆った。顔に火がつきそう。
「……ぅん…………」
彼が身を捩るようにして寝返りをうった。
昨晩あんなに優しくて凶暴だった彼は穏やかな寝息を立てて眠りこけている。
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:44:46.15 ID:sIrnBUYZo
「…………かわいい」
眼鏡をかけていない、普段と違う姿の彼に引き寄せられるように頬にキスをした。
口づけした唇に指をあてて部屋を見回してみたけど、時計のようなものが見当たらない。仕方なく鞄の中に入れてあったスマートフォンを取り出してデジタル表示の時刻を確認する。
「……えぇ!?」
驚きの声をあげる間にまた分の表示が動いた。何度見ても朝の7時になろうとしているところだった。それはつまり、喫茶店の開店時間を考えるとおじ様がいつ来てもおかしくない時間だ。
「……春……もっと……、もっとだ……」
彼は呑気な寝言を発していた。私が夢に出てるみたいでそれは嬉しいけれど、いったいどんな夢を見ているのかしら……。
眼鏡をかけていない、普段と違う姿の彼に引き寄せられるように頬にキスをした。
口づけした唇に指をあてて部屋を見回してみたけど、時計のようなものが見当たらない。仕方なく鞄の中に入れてあったスマートフォンを取り出してデジタル表示の時刻を確認する。
「……えぇ!?」
驚きの声をあげる間にまた分の表示が動いた。何度見ても朝の7時になろうとしているところだった。それはつまり、喫茶店の開店時間を考えるとおじ様がいつ来てもおかしくない時間だ。
「……春……もっと……、もっとだ……」
彼は呑気な寝言を発していた。私が夢に出てるみたいでそれは嬉しいけれど、いったいどんな夢を見ているのかしら……。
75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:45:26.78 ID:sIrnBUYZo
とりあえず、ぐっすり寝てる彼をこのまま見ていても起きそうな気配はない。起こすのも可哀想だから私一人で帰ってもいいけど、鍵は掛けて貰わないといけないからやっぱり起きてもらわないと。
「ね、ねぇ、起きて、朝だよ」
意を決して、彼の肩を摩るように揺らし声を掛ける。
いいなぁ。いいなぁこれ。一緒に暮らしてるみたい。幸せ。
「じゃなくて、起きてー」
「…………」
彼は目を覚まさない。私もこのまま幸せな朝に身を委ねていたいけれど、さすがに朝帰りするところをおじ様に見られるのは避けないと。
「ねぇ、おーきーてー」
両手で体を掴み少し強く揺さぶると、彼がようやく薄く目を開いた。
「ね、ねぇ、起きて、朝だよ」
意を決して、彼の肩を摩るように揺らし声を掛ける。
いいなぁ。いいなぁこれ。一緒に暮らしてるみたい。幸せ。
「じゃなくて、起きてー」
「…………」
彼は目を覚まさない。私もこのまま幸せな朝に身を委ねていたいけれど、さすがに朝帰りするところをおじ様に見られるのは避けないと。
「ねぇ、おーきーてー」
両手で体を掴み少し強く揺さぶると、彼がようやく薄く目を開いた。
76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:46:17.66 ID:sIrnBUYZo
「……ああ。春?」
「うん。ねぇ、もうおじ様来るかもしれないから早く起きて、鍵かけて……」
「あと二時間……」
私が言い終える前に彼はそう言い、また目を閉じてしまった。
「えぇー……。もしかして君、朝弱い?」
返事はない。また寝息が聞こえてきた。
完璧だと思った彼にこんな一面があったなんて。可愛いところ、あるんだなぁ。泊まってよかった。
「じゃなくて! おじ様が来ちゃうからぁ!」
それでも起きない彼に、私のお姉さん心が疼いた。
「お寝坊さんには……こうですっ」
「うん。ねぇ、もうおじ様来るかもしれないから早く起きて、鍵かけて……」
「あと二時間……」
私が言い終える前に彼はそう言い、また目を閉じてしまった。
「えぇー……。もしかして君、朝弱い?」
返事はない。また寝息が聞こえてきた。
完璧だと思った彼にこんな一面があったなんて。可愛いところ、あるんだなぁ。泊まってよかった。
「じゃなくて! おじ様が来ちゃうからぁ!」
それでも起きない彼に、私のお姉さん心が疼いた。
「お寝坊さんには……こうですっ」
77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:47:00.58 ID:sIrnBUYZo
掛け布団を剥ぎ取り、今度はおもいっきり揺さぶってみた。
すると、彼は眠そうに目元を擦りながら身を起こし、私がここにいる状況をやっと把握できたように挨拶をする。
「…………。おはよ、春」
「うん、おはよう。さあ、早く着替えて下に降りないと」
「……ふぁい」
大きな欠伸をしながらのそのそと動く彼を尻目に、私は服をちゃんと着て身だしなみを整えた。もうお化粧を直している時間はなさそうだから諦めよう。
「あ、春」
「はい?」
準備を終えて階段を降りる直前、彼が突然立ち止まった。振り返ると彼は私に顔を近付け、唇を重ねる。
すると、彼は眠そうに目元を擦りながら身を起こし、私がここにいる状況をやっと把握できたように挨拶をする。
「…………。おはよ、春」
「うん、おはよう。さあ、早く着替えて下に降りないと」
「……ふぁい」
大きな欠伸をしながらのそのそと動く彼を尻目に、私は服をちゃんと着て身だしなみを整えた。もうお化粧を直している時間はなさそうだから諦めよう。
「あ、春」
「はい?」
準備を終えて階段を降りる直前、彼が突然立ち止まった。振り返ると彼は私に顔を近付け、唇を重ねる。
78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:47:41.34 ID:sIrnBUYZo
「…………」
驚いて何も言えなかった。彼は首をコキコキと鳴らすような仕草をしている。
「っあー、やっと目が覚めた。駅まで送るよ」
「……うん。ありがとう」
手を繋ぎ、ふわふわした足取りで階段を降りる。カウンターを横切ろうとしたところで───扉を開けたおじ様と見事に鉢合わせした。
「…………」
ドアベルの音が止み、場を気まずい静寂が支配する。
驚いて何も言えなかった。彼は首をコキコキと鳴らすような仕草をしている。
「っあー、やっと目が覚めた。駅まで送るよ」
「……うん。ありがとう」
手を繋ぎ、ふわふわした足取りで階段を降りる。カウンターを横切ろうとしたところで───扉を開けたおじ様と見事に鉢合わせした。
「…………」
ドアベルの音が止み、場を気まずい静寂が支配する。
79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:48:08.82 ID:sIrnBUYZo
なんと言っていいかわからず立ち往生する私を見て、おじ様は諦めたようにため息を吐いた。それから彼に睨むような視線を送り、
「お前な……。責任は取れよ」
と呟いた。彼は、
「任せろ」
と返す。
え? 今なにか決まった?
「嬢ちゃん、おはよう。コーヒー、飲んでくかい?」
責任だとか任せろだとか、気になりすぎる二人の会話は置き去りにされて話は次に進んだ。
これって、もしかして、そういう話なの?
「お、おはようございます。……頂きます……」
「お前な……。責任は取れよ」
と呟いた。彼は、
「任せろ」
と返す。
え? 今なにか決まった?
「嬢ちゃん、おはよう。コーヒー、飲んでくかい?」
責任だとか任せろだとか、気になりすぎる二人の会話は置き去りにされて話は次に進んだ。
これって、もしかして、そういう話なの?
「お、おはようございます。……頂きます……」
80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:49:11.56 ID:sIrnBUYZo
そしてもはや急いで帰る必要もなくなった私は、申し訳なさと恥ずかしさから俯き加減にそう答えるのだった。
彼と二人でおじ様のコーヒーを待つ時間は、控え目に言っても幸せそのものだった。
私の知っていた、素朴な温かさ。ほっとする心地好さ。私の居場所。この場の誰一人、血は繋がっていなくとも、私の憧れていた幸せが、家族の姿がここにあった。
「はいよ、お待たせ」
もう一度お礼を言ってから出てきたコーヒーの香りを楽しみ、一口啜る。
「……おいしい。これおいしいです、おじ様」
「そうかい、そう言ってもらえると嬉しいね」
彼と二人でおじ様のコーヒーを待つ時間は、控え目に言っても幸せそのものだった。
私の知っていた、素朴な温かさ。ほっとする心地好さ。私の居場所。この場の誰一人、血は繋がっていなくとも、私の憧れていた幸せが、家族の姿がここにあった。
「はいよ、お待たせ」
もう一度お礼を言ってから出てきたコーヒーの香りを楽しみ、一口啜る。
「……おいしい。これおいしいです、おじ様」
「そうかい、そう言ってもらえると嬉しいね」
81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:49:42.51 ID:sIrnBUYZo
お世辞ではない私の絶賛を聞いて、おじ様は少し照れ臭そうに頭を掻いた。
「こいつのとどっちが旨かった? 飲んだだろ?」
昨晩のコーヒーを思い返しながら彼に目をやると、「正直に言っていい」と私を促した。
「……ごめんね。こっちのほうが美味しかったです」
彼に謝って、正直に思ったことを言った。心に染みたのは彼のほうだけれど、味に関してはこちらのほうが深みがある。そう感じた。
「よっしゃ、まだこいつには負けてらんねぇからな」
彼は珍しく悔しがり、おじ様は得意気な顔を彼に見せつけていた。
「いいなぁ、この雰囲気」
「こいつのとどっちが旨かった? 飲んだだろ?」
昨晩のコーヒーを思い返しながら彼に目をやると、「正直に言っていい」と私を促した。
「……ごめんね。こっちのほうが美味しかったです」
彼に謝って、正直に思ったことを言った。心に染みたのは彼のほうだけれど、味に関してはこちらのほうが深みがある。そう感じた。
「よっしゃ、まだこいつには負けてらんねぇからな」
彼は珍しく悔しがり、おじ様は得意気な顔を彼に見せつけていた。
「いいなぁ、この雰囲気」
82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:50:33.57 ID:sIrnBUYZo
また思っていたことがそのまま口から漏れた。問題のある発言ではないけれど、昨日もあったし気を付けないと……。
「はは。ありがとよ」
「春さえよければいつでも来るといい」
「てめえが言うな。あ、嬢ちゃんがいつでも来ていいのは本当だからな?」
「いつこの店を引き継いでもらえるんだ?」
「アホか、当分くたばってやんねえよ。つかお前にやると決まったわけじゃねえ」
「そうか。だそうだ、春」
「だそうだ、って言われても……」
いったいどういう話の流れなんだかよくわからない。
「はは。ありがとよ」
「春さえよければいつでも来るといい」
「てめえが言うな。あ、嬢ちゃんがいつでも来ていいのは本当だからな?」
「いつこの店を引き継いでもらえるんだ?」
「アホか、当分くたばってやんねえよ。つかお前にやると決まったわけじゃねえ」
「そうか。だそうだ、春」
「だそうだ、って言われても……」
いったいどういう話の流れなんだかよくわからない。
83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:51:08.59 ID:sIrnBUYZo
「朝飯も食ってきな、すぐ用意するから」
「あ、え? 悪いです、そんなの」
「気にすんな。こんな朝から客なんか来やしねえよ」
「えと、じゃあ……。お言葉に甘えさせてもらいます」
この素敵なお店の雰囲気を、私は知っている。
それは、古い記憶の喫茶店。朗らかなお爺様と、穏やかにこだまする笑い声と、コーヒーの香り───。
* * *
朝御飯を頂いて、十分にお礼を言ってからお店をあとにした。次は育てたお野菜を持ってくると、次の約束を取り付けるのも忘れなかった。
「あ、え? 悪いです、そんなの」
「気にすんな。こんな朝から客なんか来やしねえよ」
「えと、じゃあ……。お言葉に甘えさせてもらいます」
この素敵なお店の雰囲気を、私は知っている。
それは、古い記憶の喫茶店。朗らかなお爺様と、穏やかにこだまする笑い声と、コーヒーの香り───。
* * *
朝御飯を頂いて、十分にお礼を言ってからお店をあとにした。次は育てたお野菜を持ってくると、次の約束を取り付けるのも忘れなかった。
84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:51:59.93 ID:sIrnBUYZo
朝の陽気な春の陽射しの中、隣には私の好きな人。
こんなに朗らかな気持ちは随分久しぶりな気がする。でも、スッキリするためにもうひとつ、お店での会話のことを尋ねておかないと。
「あの、簡単にあんなこと言ってよかったの? それともただの冗談だった?」
「なんの話?」
「その……。責任、とか。任せろ、とか……」
「ああ、そのつもりだけど……。まあ、その辺は春のまにまに、かな」
"そのつもり"という言葉にドキッとすると同時に、聞きなれない言葉に首を捻った。
「まにまに?」
「まにまに」
こんなに朗らかな気持ちは随分久しぶりな気がする。でも、スッキリするためにもうひとつ、お店での会話のことを尋ねておかないと。
「あの、簡単にあんなこと言ってよかったの? それともただの冗談だった?」
「なんの話?」
「その……。責任、とか。任せろ、とか……」
「ああ、そのつもりだけど……。まあ、その辺は春のまにまに、かな」
"そのつもり"という言葉にドキッとすると同時に、聞きなれない言葉に首を捻った。
「まにまに?」
「まにまに」
85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:52:36.78 ID:sIrnBUYZo
なにこれ、禅問答?
まにまに……Money Money? はっ! もしや彼は私のお金目当て!? ってそんなわけないよね。
「神のまにまに、って聞いたことない?」
「百人一首であるよね。……あ、"随(まにま)"?」
「そう」
「神のまにまに、が神の御心のままに、だから、春のまにまには……」
「春の心次第、ってこと」
そこまでわかってようやく得心がいった。実際にどうなるかは私次第、って伝えようとしてたんだ。
「それ、使い方合ってるの?」
「知らない。でも今伝わったから問題ない」
まにまに……Money Money? はっ! もしや彼は私のお金目当て!? ってそんなわけないよね。
「神のまにまに、って聞いたことない?」
「百人一首であるよね。……あ、"随(まにま)"?」
「そう」
「神のまにまに、が神の御心のままに、だから、春のまにまには……」
「春の心次第、ってこと」
そこまでわかってようやく得心がいった。実際にどうなるかは私次第、って伝えようとしてたんだ。
「それ、使い方合ってるの?」
「知らない。でも今伝わったから問題ない」
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:53:09.90 ID:sIrnBUYZo
「あははっ。君らしいね。……じゃあ、君はそのつもりで、あとは私次第、なんだ」
「そういうこと」
「じゃあ、安心だ。私は変わらないから」
「そうか、なら大丈夫だな」
「君は?」
「ん?」
「変わらない? 浮気、しない?」
「しない。……これは興味本意の質問だけど、もし浮気したらどうなる?」
「ん~……。そのときにならないとわからないけど……」
「けど?」
「……薪割りの要領で? ズバッと?」
「そういうこと」
「じゃあ、安心だ。私は変わらないから」
「そうか、なら大丈夫だな」
「君は?」
「ん?」
「変わらない? 浮気、しない?」
「しない。……これは興味本意の質問だけど、もし浮気したらどうなる?」
「ん~……。そのときにならないとわからないけど……」
「けど?」
「……薪割りの要領で? ズバッと?」
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:54:11.16 ID:sIrnBUYZo
「……何を? あ、いやいい。心に刻んでおく」
「そうしておいてくれると嬉しいな」
長く続いたキャッチボールのような会話が途切れ、駅に向かってゆっくり歩を進める。
信じられない出会いをした、あれからだいたい半年。僅かな期間に過ぎないけれど、その短い間に私の生活も、環境も、想いも、関係も……フィアンセも。全てががらりと変わってしまった。
出会いは、変わってほしいものを変えてくれたけれども、数少ない変わってほしくないものまでをも変えてしまった。かけがえのない繋がりを喪ってしまった。
けれど、それでも、私はこの出会いに感謝しかしていない。裏切ったことを後悔はしていない。裏切りなしに私の自由は存在しなかったから。私の人生は始まらなかったから。
「そうしておいてくれると嬉しいな」
長く続いたキャッチボールのような会話が途切れ、駅に向かってゆっくり歩を進める。
信じられない出会いをした、あれからだいたい半年。僅かな期間に過ぎないけれど、その短い間に私の生活も、環境も、想いも、関係も……フィアンセも。全てががらりと変わってしまった。
出会いは、変わってほしいものを変えてくれたけれども、数少ない変わってほしくないものまでをも変えてしまった。かけがえのない繋がりを喪ってしまった。
けれど、それでも、私はこの出会いに感謝しかしていない。裏切ったことを後悔はしていない。裏切りなしに私の自由は存在しなかったから。私の人生は始まらなかったから。
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:54:44.55 ID:sIrnBUYZo
私の心が問い掛けた、私自身の心。
あなたは誰を裏切るの?
「心はとうに決まっています」
「ん?」
唐突に呟いた私の口上が聞こえたみたいで、彼は不思議な顔をして振り向いた。
そうだ。私は裏切るんだ。裏切りで欲しいものを掴み取るんだ。
そう、決まっている。
「……私、裏切るから」
「どういうこと?」
何を言っているのかわからないという表情の彼に、私は告げる。
「君の予想を裏切るの。君が考えてるよりも、ずっと素敵な女性になってみせるから」
「……そう。それは楽しみだ」
あなたは誰を裏切るの?
「心はとうに決まっています」
「ん?」
唐突に呟いた私の口上が聞こえたみたいで、彼は不思議な顔をして振り向いた。
そうだ。私は裏切るんだ。裏切りで欲しいものを掴み取るんだ。
そう、決まっている。
「……私、裏切るから」
「どういうこと?」
何を言っているのかわからないという表情の彼に、私は告げる。
「君の予想を裏切るの。君が考えてるよりも、ずっと素敵な女性になってみせるから」
「……そう。それは楽しみだ」
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:55:56.17 ID:sIrnBUYZo
「うん。君を絶対離さないために、頑張る。だから、見ててね?」
精一杯の、私が可愛いと思う顔で言ってみた。上手くできてるといいんだけど。
「見てるよ、傍で。これからも、ずっとね」
指をしっかりと絡めて握り、微笑み合う。
心の中でだけ、永遠を誓っておいた。言葉にするのはその時まで、おあずけにしておこっと。
「あ、今日ってすぐ帰っちゃうの?」
「いや、夕方ぐらいに帰ろうかと思ってた」
「じゃあ、二人で出掛けようよ」
「いいけど、どこに行く?」
「どこにしよっか。考えてなかった」
精一杯の、私が可愛いと思う顔で言ってみた。上手くできてるといいんだけど。
「見てるよ、傍で。これからも、ずっとね」
指をしっかりと絡めて握り、微笑み合う。
心の中でだけ、永遠を誓っておいた。言葉にするのはその時まで、おあずけにしておこっと。
「あ、今日ってすぐ帰っちゃうの?」
「いや、夕方ぐらいに帰ろうかと思ってた」
「じゃあ、二人で出掛けようよ」
「いいけど、どこに行く?」
「どこにしよっか。考えてなかった」
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:56:46.71 ID:sIrnBUYZo
柔らかな心地好い春風が首筋を撫でた。髪が乱れないよう、空いたほうの手で抑えた。
彼が尋ねる。
「行きたいところ、ある?」
私は答える。
「その辺は、あれだね。歩きながら。春のまにまに」
「春の?」
「うん。春の」
「まにまに?」
「まにまに」
彼が尋ねる。
「行きたいところ、ある?」
私は答える。
「その辺は、あれだね。歩きながら。春のまにまに」
「春の?」
「うん。春の」
「まにまに?」
「まにまに」
91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:57:18.70 ID:sIrnBUYZo
お弁当を持ってキレイな公園に行こうかしら。桜並木を歩くのも素敵だね。
普段は私の心のままに行き先を決めるけれど、今はこの風の吹くまま、春の陽気に身を委ねてみよう。
君と一緒なら、私はどこへだって行けるから。
それが今日の、春のまにまに。
了
普段は私の心のままに行き先を決めるけれど、今はこの風の吹くまま、春の陽気に身を委ねてみよう。
君と一緒なら、私はどこへだって行けるから。
それが今日の、春のまにまに。
了
92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/29(土) 23:58:55.54 ID:sIrnBUYZo
久しぶりだから疲れました
読んでくれた方、レスつけてくれた方ありがとう愛してる
さあ二周目のスーパー春ちゃんタイムを楽しもう
またどこかで、あでゅー
読んでくれた方、レスつけてくれた方ありがとう愛してる
さあ二周目のスーパー春ちゃんタイムを楽しもう
またどこかで、あでゅー
93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/30(日) 00:32:05.18 ID:4d37km61o
乙、最高
95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/30(日) 03:59:38.28 ID:cVJYTnAD0
乙。素晴らしい春のSSでした
96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/30(日) 16:35:03.89 ID:n/EAAeS4O
乙ー
春ちゃんかわいすぎんよ~
春ちゃんかわいすぎんよ~
98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/09(水) 01:33:31.36 ID:50UcU991o
久々に良い物を見た
引用元: 【ペルソナ5 奥村春SS】春のまにまに
【ペルソナ5】屋根裏のゴミ「子作りしたい」
2018-07-11
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:53:19.10 ID:OvNWKU9p0
■杏
久しぶりに喫茶店に訪ねると、彼とおじさんではなく、武見先生が居た。
お店がcloseになっていたからなんかあると思ったけど
武見先生は私と同じ彼氏持ち。
私の彼氏と同じ名前の彼氏がいて
私の彼氏と同じ格好の彼氏がいて
私の彼氏と同じ顔の彼氏がいる。
要するに股がけされている。しかも、私と武見先生だけじゃなくて、他の女も加えて9股だ。
怪盗団のみんななら、もうなんともないけど、他の女の人と仲良くしているのは、まだ、抵抗がある。
久しぶりに喫茶店に訪ねると、彼とおじさんではなく、武見先生が居た。
お店がcloseになっていたからなんかあると思ったけど
武見先生は私と同じ彼氏持ち。
私の彼氏と同じ名前の彼氏がいて
私の彼氏と同じ格好の彼氏がいて
私の彼氏と同じ顔の彼氏がいる。
要するに股がけされている。しかも、私と武見先生だけじゃなくて、他の女も加えて9股だ。
怪盗団のみんななら、もうなんともないけど、他の女の人と仲良くしているのは、まだ、抵抗がある。
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:54:18.59 ID:OvNWKU9p0
やっぱ女の子だもん。嫉妬する。
恋敵なんだから。
「こんにちは」
「こんにちは、彼に会いに来たの?」
「はい」
「残念だけど、今は留守よ」
「そうみたいですね」
挨拶もおざなりにする。交代の時間で、前の彼女と鉢合わせすることは、何度かある。
そして、その時間は、結構気まずい。
彼の彼女は、私達9人。
私達は朝、昼、晩の順番で、彼を共有する。つまり、週二回は、彼に会える計算。
「全員付き合うならこれぐらいやって」
全員、幸せにして見せる。
そんな言葉を吐いた彼に、きついスケジュールを突きつけてやった。
恋敵なんだから。
「こんにちは」
「こんにちは、彼に会いに来たの?」
「はい」
「残念だけど、今は留守よ」
「そうみたいですね」
挨拶もおざなりにする。交代の時間で、前の彼女と鉢合わせすることは、何度かある。
そして、その時間は、結構気まずい。
彼の彼女は、私達9人。
私達は朝、昼、晩の順番で、彼を共有する。つまり、週二回は、彼に会える計算。
「全員付き合うならこれぐらいやって」
全員、幸せにして見せる。
そんな言葉を吐いた彼に、きついスケジュールを突きつけてやった。
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:54:59.21 ID:OvNWKU9p0
そうしたら彼も懲りて、一人の女の子に絞るだろう。
その方が、みんなにとってもいいはずだ。私たちは、そう考えた。
でも、彼は笑って見せた。
怪盗団の時もそうだけど、彼はピンチの時は、常に笑顔だった。
それから、何年もそのスケジュールで対応している。
彼は一度も私達を満たさないことはないし、デート代、プレゼント代も、どっからか捻出してくる。
「どれだけみんなと一緒にいたいのよ」
呆れて言葉が出てくる。でも、みんな、そんな彼が好きだった。
「杏ちゃん、この前の雑誌買ったよ。綺麗だったね」
「え?本当ですか?ありがとうございます」
先月載ったモデル雑誌かな?確か、私の特集を組んでくれた。
その方が、みんなにとってもいいはずだ。私たちは、そう考えた。
でも、彼は笑って見せた。
怪盗団の時もそうだけど、彼はピンチの時は、常に笑顔だった。
それから、何年もそのスケジュールで対応している。
彼は一度も私達を満たさないことはないし、デート代、プレゼント代も、どっからか捻出してくる。
「どれだけみんなと一緒にいたいのよ」
呆れて言葉が出てくる。でも、みんな、そんな彼が好きだった。
「杏ちゃん、この前の雑誌買ったよ。綺麗だったね」
「え?本当ですか?ありがとうございます」
先月載ったモデル雑誌かな?確か、私の特集を組んでくれた。
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:55:39.37 ID:OvNWKU9p0
「でも、ちょっと気になるかな?」
「え?」
そう言うと、武見先生は私の隣に座った。
「診てもいい?」
「はい?」
というと、先生は私のお腹に触ってきた。
「先生……?」
「しっ!黙ってて……」
「最近、熱ある?」
「…はい」
「胸、張ってる?」
「……はい」
「うん、妊娠している。詳しくはちゃんと、産婦人科、行った方がいいかな」
妊娠…………
妊娠!
「え?」
そう言うと、武見先生は私の隣に座った。
「診てもいい?」
「はい?」
というと、先生は私のお腹に触ってきた。
「先生……?」
「しっ!黙ってて……」
「最近、熱ある?」
「…はい」
「胸、張ってる?」
「……はい」
「うん、妊娠している。詳しくはちゃんと、産婦人科、行った方がいいかな」
妊娠…………
妊娠!
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:56:42.14 ID:OvNWKU9p0
「え?子供ができたんですか?」
「ええ……そうよ。心当たりは……」
「ありまくりです」
というか、散々やった。やりまくった。
「まぁ…そうだよね…」
「あ~、とうとう母親ですか。なんか、実感が沸きませんね」
「私もそうだったから……」
あっ!
そう言えば、先生も……
「先生の子供って、今いくつですか?」
「一歳だよ」
「私の子……って、先生の子供の弟か、妹になるんですかね?」
「まあ、そうなるかな?父親が同じだから」
変な家族。
つくづく、私の彼氏は、普通なんて言葉に、収まらない男だ。
「ええ……そうよ。心当たりは……」
「ありまくりです」
というか、散々やった。やりまくった。
「まぁ…そうだよね…」
「あ~、とうとう母親ですか。なんか、実感が沸きませんね」
「私もそうだったから……」
あっ!
そう言えば、先生も……
「先生の子供って、今いくつですか?」
「一歳だよ」
「私の子……って、先生の子供の弟か、妹になるんですかね?」
「まあ、そうなるかな?父親が同じだから」
変な家族。
つくづく、私の彼氏は、普通なんて言葉に、収まらない男だ。
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:57:10.25 ID:OvNWKU9p0
■妙
さっきまでの泣き声が、嘘のように、眠っている。
まだ、食事、排泄、就寝も一人でできないこの子。
大変で、憎たらしい時もあるけど、この寝顔を見ると、どうでもよくなる。
目が、彼に似ている。
彼の遺伝子を、受け継ぐ。そういうことができて、女で良かった、とつくづく思う。
「こんにちは」
奥から声が聞こえる。
今日はこの子がいるから、診療所は休みなのに
「あら、こんにちは」
ドアを開けると、そこにはお腹の大きな彼女。
さっきまでの泣き声が、嘘のように、眠っている。
まだ、食事、排泄、就寝も一人でできないこの子。
大変で、憎たらしい時もあるけど、この寝顔を見ると、どうでもよくなる。
目が、彼に似ている。
彼の遺伝子を、受け継ぐ。そういうことができて、女で良かった、とつくづく思う。
「こんにちは」
奥から声が聞こえる。
今日はこの子がいるから、診療所は休みなのに
「あら、こんにちは」
ドアを開けると、そこにはお腹の大きな彼女。
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:57:40.11 ID:OvNWKU9p0
新島真。
彼の恋人だ。
じゃあ、私は?私も恋人。彼には9人恋人がいる。おかしい?
そう、彼は普通じゃない。
彼は浮気者で、女たらしで、ジゴロだ。
とんでもない男だ。
でも、私はそんな彼が好き。
「どうしたの?」
「近くに来たので、挨拶に来ました」
「そう、上がって」
彼女のお腹は大きい。6ヶ月というところかな?
それにてしても、杏ちゃんといい、真ちゃんといい、妊婦がよく来る内科ね。
産婦人科でもやろうかしら?
彼の恋人だ。
じゃあ、私は?私も恋人。彼には9人恋人がいる。おかしい?
そう、彼は普通じゃない。
彼は浮気者で、女たらしで、ジゴロだ。
とんでもない男だ。
でも、私はそんな彼が好き。
「どうしたの?」
「近くに来たので、挨拶に来ました」
「そう、上がって」
彼女のお腹は大きい。6ヶ月というところかな?
それにてしても、杏ちゃんといい、真ちゃんといい、妊婦がよく来る内科ね。
産婦人科でもやろうかしら?
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:58:09.57 ID:OvNWKU9p0
「お子さん大丈夫ですか?」
「うん、今寝たとこ」
「見てもいいですか?」
「うん、いいけど」
真ちゃんは、彼の子を見る。
彼に似た目と、私の口元と鼻。2つが混ざっている。
そんな存在を、目の前にして、彼女はどう思うのかしら?
私なら、嫉妬しちゃうかな。
「わあ、可愛いですね」
「ありがとう」
「なんか……近くにお手本がいると、いよいよ実感が沸きますね。」
「そうなの?」
「うん、今寝たとこ」
「見てもいいですか?」
「うん、いいけど」
真ちゃんは、彼の子を見る。
彼に似た目と、私の口元と鼻。2つが混ざっている。
そんな存在を、目の前にして、彼女はどう思うのかしら?
私なら、嫉妬しちゃうかな。
「わあ、可愛いですね」
「ありがとう」
「なんか……近くにお手本がいると、いよいよ実感が沸きますね。」
「そうなの?」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:58:59.43 ID:OvNWKU9p0
「まあ、大変だよ」
「だと思いますが……彼と一緒なら平気です」
……随分と信頼されているのね。
さすが女たらし、ちょっと嫉妬しちゃう。
今度、私の番は、いじめちゃおうかな?ふふ……
「だと思いますが……彼と一緒なら平気です」
……随分と信頼されているのね。
さすが女たらし、ちょっと嫉妬しちゃう。
今度、私の番は、いじめちゃおうかな?ふふ……
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/08(日) 23:59:30.31 ID:OvNWKU9p0
■真
大学を卒業して、私は警部補としてキャリアを初めた。数年が経ち、私は妊娠して、産休をとった。
そうして、この子が生まれた。
世界で一番好きな、彼と私の子供。
親バカかもしれないけど、やっぱり可愛い。
どんな疲れも吹き飛んでしまう。
「あれ?千早さん」
「真ちゃん、奇遇ですね」
今、話題の占い師。
テレビのバラエティで、いくつかコーナーを持っている売れっ子だ。
「千早さんどうしたんですか?」
「テレビの収録の帰りです。真ちゃんは?」
「この子の定期検診です」
「元気そうですね」
「はい、お医者さんもびっくりしていました」
元気過ぎて、暴れちゃったけどね。誰に似たんだか。
大学を卒業して、私は警部補としてキャリアを初めた。数年が経ち、私は妊娠して、産休をとった。
そうして、この子が生まれた。
世界で一番好きな、彼と私の子供。
親バカかもしれないけど、やっぱり可愛い。
どんな疲れも吹き飛んでしまう。
「あれ?千早さん」
「真ちゃん、奇遇ですね」
今、話題の占い師。
テレビのバラエティで、いくつかコーナーを持っている売れっ子だ。
「千早さんどうしたんですか?」
「テレビの収録の帰りです。真ちゃんは?」
「この子の定期検診です」
「元気そうですね」
「はい、お医者さんもびっくりしていました」
元気過ぎて、暴れちゃったけどね。誰に似たんだか。
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:00:40.10 ID:BaVBKbuC0
「どうですか?子育て?」
「大変ですけど、頑張っています。それに、私以上にお姉ちゃんが可愛がってくれますし」
「初の姪っ子ですからね、可愛いですね」
お姉ちゃんは、朝から晩まで、仕事そっちのけで、この子の面倒見ている。
流石に、事務所の人から文句を言われたのか、なくなく自重している。
「それに、彼も支えてくれます」
「ほうほう」
彼は、贔屓目に見ても、お父さんとして理想的だ。
家事をして、料理を作って、ちゃんと遊んで、面倒見て、叱ってくれる。
私にも、ちゃんとフォローしてくれる。
「大変ですけど、頑張っています。それに、私以上にお姉ちゃんが可愛がってくれますし」
「初の姪っ子ですからね、可愛いですね」
お姉ちゃんは、朝から晩まで、仕事そっちのけで、この子の面倒見ている。
流石に、事務所の人から文句を言われたのか、なくなく自重している。
「それに、彼も支えてくれます」
「ほうほう」
彼は、贔屓目に見ても、お父さんとして理想的だ。
家事をして、料理を作って、ちゃんと遊んで、面倒見て、叱ってくれる。
私にも、ちゃんとフォローしてくれる。
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:01:15.98 ID:BaVBKbuC0
こんな理想的な父親で、夫なのに、9股しているんだから、玉に傷というレベルじゃない。
彼じゃなきゃ許さないんだから 。
「そうなんですか、真ちゃんも、ですか?」
「じゃあ、千早さんも?」
「彼、親バカですもん」
彼と付き合っていると、普通の夫婦では、できないことができる。
同じ夫の、愚痴とノロケを共有する。
これは、中々楽しいものね。
彼じゃなきゃ許さないんだから 。
「そうなんですか、真ちゃんも、ですか?」
「じゃあ、千早さんも?」
「彼、親バカですもん」
彼と付き合っていると、普通の夫婦では、できないことができる。
同じ夫の、愚痴とノロケを共有する。
これは、中々楽しいものね。
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:01:41.31 ID:BaVBKbuC0
■千早
番組の収録の終わりに、駅で一二三ちゃんに会いました。
最年少女流タイトルの挑戦者。プロになってから勝ち続けています。
その強さに、ルックス。人気があるのも、分かります。
それに、スタイルもいいです。
やせ形で……ほどよい大きさのお胸。理想的な体形です。
女でも何か燃えてくるんですから、彼が惹き付けられるのも分かります。
あれ……?
でも、お腹が少し膨らんでいます。
「もしかしてそのお腹……」
「はい、5ヶ月になります」
「だから、この子のためにも負けられません」
番組の収録の終わりに、駅で一二三ちゃんに会いました。
最年少女流タイトルの挑戦者。プロになってから勝ち続けています。
その強さに、ルックス。人気があるのも、分かります。
それに、スタイルもいいです。
やせ形で……ほどよい大きさのお胸。理想的な体形です。
女でも何か燃えてくるんですから、彼が惹き付けられるのも分かります。
あれ……?
でも、お腹が少し膨らんでいます。
「もしかしてそのお腹……」
「はい、5ヶ月になります」
「だから、この子のためにも負けられません」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:02:10.35 ID:BaVBKbuC0
あらあら、おめでたです。
まあ、お父さんは、占いするまでも無いですよね。
「良かったら占いましょうか?」
「はい?」
一二三ちゃんと、喫茶店に入って、占いました。
赤ちゃん……
カードは太陽。
うん、元気で健康に生まれてきます。
一二三ちゃん……
カードは皇帝。
やっぱり勝負運が強いカード……母は強し。という訳でしょうか
最後に彼……
……!!
カードは世界です。
やっぱり、恵まれた星の元に生まれています。あと十年は絶好調の運を掴んでいます。さすが、みんなの彼です。
まあ、お父さんは、占いするまでも無いですよね。
「良かったら占いましょうか?」
「はい?」
一二三ちゃんと、喫茶店に入って、占いました。
赤ちゃん……
カードは太陽。
うん、元気で健康に生まれてきます。
一二三ちゃん……
カードは皇帝。
やっぱり勝負運が強いカード……母は強し。という訳でしょうか
最後に彼……
……!!
カードは世界です。
やっぱり、恵まれた星の元に生まれています。あと十年は絶好調の運を掴んでいます。さすが、みんなの彼です。
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:02:47.83 ID:BaVBKbuC0
「まあ、こんな所です。私の占いなら、三人共いい未来が待っています」
「そうですか……」
「……」
「どうしました?」
「三人……ということは彼も?」
「あ、はい。一応占いました」
「千早さん、ご自身は占ったことはありますか?」
「私ですか?私は、自分のことを、あんまり占わないですよ」
「なら、自分も占ったほうがいいと思います」
一二三ちゃんの目が、いつもより大きくなりました。
「千早さん、私と顔色が似ていますから」
後で占ったら、大当りでした。
さすが、彼です。
「そうですか……」
「……」
「どうしました?」
「三人……ということは彼も?」
「あ、はい。一応占いました」
「千早さん、ご自身は占ったことはありますか?」
「私ですか?私は、自分のことを、あんまり占わないですよ」
「なら、自分も占ったほうがいいと思います」
一二三ちゃんの目が、いつもより大きくなりました。
「千早さん、私と顔色が似ていますから」
後で占ったら、大当りでした。
さすが、彼です。
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:03:33.27 ID:BaVBKbuC0
■一二三
「インタビューありがとね。一二三ちゃん」
「いえ、他ならぬ大宅さんの頼みですから」
私は今インタビューを受けています
インタビュアーは大宅一子さん。彼の恋人です。
こういう取材は、苦手ですが、大宅さんなら大丈夫です。
なんとなく、彼を共有している、という余裕があるからでしょうか?
「でも、大宅さん……政治部担当でしたよね?」
「今回は、芸能部から頼まれたんだ。それに、一二三ちゃんと話もしたかったし、育休中の小遣い稼ぎってとこかな」
「後、この子もいるけどいいかな?」
「大丈夫です。相変わらず可愛いですね」
「へへっ、ありがとね」
一子さんの横には、赤ちゃんがいます。
彼に、なんとなく面影が似た赤ちゃんに、会いたかったのも、インタビューを受ける理由の一つです。
「インタビューありがとね。一二三ちゃん」
「いえ、他ならぬ大宅さんの頼みですから」
私は今インタビューを受けています
インタビュアーは大宅一子さん。彼の恋人です。
こういう取材は、苦手ですが、大宅さんなら大丈夫です。
なんとなく、彼を共有している、という余裕があるからでしょうか?
「でも、大宅さん……政治部担当でしたよね?」
「今回は、芸能部から頼まれたんだ。それに、一二三ちゃんと話もしたかったし、育休中の小遣い稼ぎってとこかな」
「後、この子もいるけどいいかな?」
「大丈夫です。相変わらず可愛いですね」
「へへっ、ありがとね」
一子さんの横には、赤ちゃんがいます。
彼に、なんとなく面影が似た赤ちゃんに、会いたかったのも、インタビューを受ける理由の一つです。
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:04:30.85 ID:BaVBKbuC0
今回のインタビューの内容は、ずっと取りたかった、女流タイトルを獲得したからです。
相手は、苦手としていた有名な女流棋士。勝てたのは、本当に奇跡みたいな物でした。
私は、以前と何も変わりません。
一つ、変わったとすれば、母親になりました。
私の母親は私には間違った育て方をしました。
あの時は、母を恨んだりもしましたが、彼と出会えたのだから、結果オーライと、思えるようになりました。
私は、ちゃんとこの子を育てて見せます。
「どうなの?タイトル保持者となって?」
「そうですね……今までは、がむしゃらに挑戦していただけでしてので、今後は、攻めるだけでなく、守る戦い方も学ばなくてはいけませんね」
「ん…?」
大宅さんは複雑な顔をした。
相手は、苦手としていた有名な女流棋士。勝てたのは、本当に奇跡みたいな物でした。
私は、以前と何も変わりません。
一つ、変わったとすれば、母親になりました。
私の母親は私には間違った育て方をしました。
あの時は、母を恨んだりもしましたが、彼と出会えたのだから、結果オーライと、思えるようになりました。
私は、ちゃんとこの子を育てて見せます。
「どうなの?タイトル保持者となって?」
「そうですね……今までは、がむしゃらに挑戦していただけでしてので、今後は、攻めるだけでなく、守る戦い方も学ばなくてはいけませんね」
「ん…?」
大宅さんは複雑な顔をした。
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:06:32.21 ID:BaVBKbuC0
「それって、彼のこと言っている……?」
「はい……」
あっ……しまった。これがインタビューだということを忘れていました。
「あの……この事はオフレコでお願いします」
「分かってる、分かってる。私も当事者みたいなもんだし」
「ところで、さっきのって夜の話?」
私は赤面した。
「はい……」
あっ……しまった。これがインタビューだということを忘れていました。
「あの……この事はオフレコでお願いします」
「分かってる、分かってる。私も当事者みたいなもんだし」
「ところで、さっきのって夜の話?」
私は赤面した。
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:07:05.19 ID:BaVBKbuC0
■一子
「や、双葉ちゃん」
「なんだよ、一子」
行きつけの喫茶店の看板娘。小柄で、眼鏡をかけた小さな女の子。
それが、この子双葉。
というのは表の顔。
実はネット社会では、かなり有名のハッカー。
私は、その双葉ちゃんに頼んで、時々、情報をリークしてもらう。
彼女も、わりとこういう仕事が好きみたいだ。
「この前のリークありがとね」
「ん?問題ないぞ、もっと欲しいならやるぞ」
「あとは自力でやるわよ」
といいながら、コーヒーを注いでくれる。
私好みの少し苦い味がする。
「や、双葉ちゃん」
「なんだよ、一子」
行きつけの喫茶店の看板娘。小柄で、眼鏡をかけた小さな女の子。
それが、この子双葉。
というのは表の顔。
実はネット社会では、かなり有名のハッカー。
私は、その双葉ちゃんに頼んで、時々、情報をリークしてもらう。
彼女も、わりとこういう仕事が好きみたいだ。
「この前のリークありがとね」
「ん?問題ないぞ、もっと欲しいならやるぞ」
「あとは自力でやるわよ」
といいながら、コーヒーを注いでくれる。
私好みの少し苦い味がする。
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:07:36.44 ID:BaVBKbuC0
双葉ちゃんに頼んだのは、仕事の簡略化の為。
やっぱ、記者とママの二人三脚はきつい。
双葉ちゃんに、手伝って貰って、大分、楽になったけどね。
「はい、いつもの」
「ありがと」
双葉ちゃんは、喫茶店のマスターも、やるようになった。
以前、彼から引きこもりだったと聞いたけど、そんな風には見えない。
接客もきちんとやれて、彼女目当ての客もちらほら……。
まあ、可愛いからね。
………
双葉ちゃんを見ていると、常々思う。
やっぱ、記者とママの二人三脚はきつい。
双葉ちゃんに、手伝って貰って、大分、楽になったけどね。
「はい、いつもの」
「ありがと」
双葉ちゃんは、喫茶店のマスターも、やるようになった。
以前、彼から引きこもりだったと聞いたけど、そんな風には見えない。
接客もきちんとやれて、彼女目当ての客もちらほら……。
まあ、可愛いからね。
………
双葉ちゃんを見ていると、常々思う。
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:08:24.52 ID:BaVBKbuC0
しかし、相変わらず細いわね
ビール腹の私は、羨ましい限り。ちゃんと食べているのかしら?
ん?でも、お腹の方が膨らんでいる…
はあ…ん
何か夜食でもしたのかしら?
双葉ちゃんも夜行性だからね。私も言えないけど。
「ん?どうした? 」
「いや、最近どうしたの?体型変わった?」
「…………」
やっぱりまだ年頃……。同性とはいえ、恥ずかしいのかな?
「ん…その…」
「あ、赤ちゃんがいるから…」
「………………」
ビール腹の私は、羨ましい限り。ちゃんと食べているのかしら?
ん?でも、お腹の方が膨らんでいる…
はあ…ん
何か夜食でもしたのかしら?
双葉ちゃんも夜行性だからね。私も言えないけど。
「ん?どうした? 」
「いや、最近どうしたの?体型変わった?」
「…………」
やっぱりまだ年頃……。同性とはいえ、恥ずかしいのかな?
「ん…その…」
「あ、赤ちゃんがいるから…」
「………………」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:08:56.83 ID:BaVBKbuC0
忘れてた。
双葉ちゃんの彼氏のこと。
あの、背が高くて、頭が良くて、悪役っぽい笑顔が可愛い、あいつ。
双葉ちゃんの彼氏は、性欲絶倫で、女好きの女たらしの、種馬だった。
若い女が、近くにいれば孕ましてしまう。そういう病気だ。
双葉ちゃんみたいな、可愛い女の子を何年も、我慢していただけ奇跡ってもんだ。
私なん、て社会人だからって容赦なく孕まされた。
彼じゃなかったら、許さないから。
双葉ちゃんの彼氏のこと。
あの、背が高くて、頭が良くて、悪役っぽい笑顔が可愛い、あいつ。
双葉ちゃんの彼氏は、性欲絶倫で、女好きの女たらしの、種馬だった。
若い女が、近くにいれば孕ましてしまう。そういう病気だ。
双葉ちゃんみたいな、可愛い女の子を何年も、我慢していただけ奇跡ってもんだ。
私なん、て社会人だからって容赦なく孕まされた。
彼じゃなかったら、許さないから。
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:09:35.50 ID:BaVBKbuC0
「いつぐらいなの?」
「五週目…」
「大学はどうするの?」
「通信制だから大丈夫」
「まあ、そうか彼って何人もいたからね、今更どうってことないか」
「うん、全部任せろ、って言ってくれた」
釈然としない。
いくら本人の同意の上としても、納得いかない。
「なんで、私達はあんな男に惚れたかね」
「なんでだろうな」
私達の午前が終わりかけた。
「五週目…」
「大学はどうするの?」
「通信制だから大丈夫」
「まあ、そうか彼って何人もいたからね、今更どうってことないか」
「うん、全部任せろ、って言ってくれた」
釈然としない。
いくら本人の同意の上としても、納得いかない。
「なんで、私達はあんな男に惚れたかね」
「なんでだろうな」
私達の午前が終わりかけた。
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:10:06.16 ID:BaVBKbuC0
■双葉
「先生!!」
「双葉ちゃん、奇遇ね」
ちょっとだるい感じのするこの女は、私の高校時代の先生だ。
そして、あいつの恋人でもある。
そして、一児の母でもある。
悔しいことに、あいつはモテる。
それも、そんじょそこらのイケメンとは違う。超モテモテだ。
街を歩けば逆ナンされ、常に連絡先を聞かれ、年上からは逆セクハラされる。そんな男だ。
でも、そんなあいつが私は好きになってしまった。
「どうなの?体の方は?」
「順調……母子ともに健康だって」
「先生!!」
「双葉ちゃん、奇遇ね」
ちょっとだるい感じのするこの女は、私の高校時代の先生だ。
そして、あいつの恋人でもある。
そして、一児の母でもある。
悔しいことに、あいつはモテる。
それも、そんじょそこらのイケメンとは違う。超モテモテだ。
街を歩けば逆ナンされ、常に連絡先を聞かれ、年上からは逆セクハラされる。そんな男だ。
でも、そんなあいつが私は好きになってしまった。
「どうなの?体の方は?」
「順調……母子ともに健康だって」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:11:17.88 ID:BaVBKbuC0
私は、時々不安になる。あいつが、私から離れてしまうんじゃないかと、思う時がある。
だから、私はあいつの望むことは、何でもさせてやりたくなった。
あいつは、私の子供を欲しがった。
世話になった惣治郎に、孫を見せてあげたいって言ってきた。
私も、惣治郎の孫を作りたいと思うようになった。
だから、あいつの赤ちゃんを産む。
「そ、そうなんだ…。ふーん」
先生が、複雑な顔をしている。
そう言えば、先生は先のあいつの子供を産んでいる。
その時は結構嫉妬したもんだ。
でも、これで並べる。
「はぁ…私器が狭いな…。双葉ちゃんに嫉妬している」
「……」
「先生も、なの?」
「双葉ちゃんも?まぁ…普通そうだよね」
「う、うん……」
私たちは普通の関係ではない。改めて実感した。
だから、私はあいつの望むことは、何でもさせてやりたくなった。
あいつは、私の子供を欲しがった。
世話になった惣治郎に、孫を見せてあげたいって言ってきた。
私も、惣治郎の孫を作りたいと思うようになった。
だから、あいつの赤ちゃんを産む。
「そ、そうなんだ…。ふーん」
先生が、複雑な顔をしている。
そう言えば、先生は先のあいつの子供を産んでいる。
その時は結構嫉妬したもんだ。
でも、これで並べる。
「はぁ…私器が狭いな…。双葉ちゃんに嫉妬している」
「……」
「先生も、なの?」
「双葉ちゃんも?まぁ…普通そうだよね」
「う、うん……」
私たちは普通の関係ではない。改めて実感した。
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:12:18.86 ID:BaVBKbuC0
■貞代
いつもの、学校帰りだった。
「先生…!」
後ろを振り返ると、車から奥村さんに声をかけられた。
「良かったら送りますよ」
「いいの?悪いわね 」
しかし、大きな車。リムジンっていうやつかしら?
さすが、オクムラフーズの二代目社長。
「どうですか、お仕事?」
「産休で休んでいたからね。感覚を戻すのに苦労しているわ」
「産休もう終わったんですか?もっと取ればいいのに」
「そんなに、休んでいられないからね。まだまだ、教職はブラックよ」
「それに、うちの子の面倒は、彼も見てくれるし」
彼は私の赤ちゃんの父親。
元教え子に、手を出した私。というか、出してきたのは彼の方から。
無理矢理押し倒しやがったんだから、あの問題児。
いつもの、学校帰りだった。
「先生…!」
後ろを振り返ると、車から奥村さんに声をかけられた。
「良かったら送りますよ」
「いいの?悪いわね 」
しかし、大きな車。リムジンっていうやつかしら?
さすが、オクムラフーズの二代目社長。
「どうですか、お仕事?」
「産休で休んでいたからね。感覚を戻すのに苦労しているわ」
「産休もう終わったんですか?もっと取ればいいのに」
「そんなに、休んでいられないからね。まだまだ、教職はブラックよ」
「それに、うちの子の面倒は、彼も見てくれるし」
彼は私の赤ちゃんの父親。
元教え子に、手を出した私。というか、出してきたのは彼の方から。
無理矢理押し倒しやがったんだから、あの問題児。
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:12:54.30 ID:BaVBKbuC0
そんな、彼が望んだから産んだ。最初は不安だったけど、彼の笑顔を見たら産んで良かったと本当に思えた。
「先生も、ですか?」
「え?奥村さんも?」
「はい……気がついたらなるべく面倒見てくれています。」
まさか、恋人全員の恋人全員の子供たち面倒見ているの?
どんだけ、忙しいのよ。
体が心配になってきた。今度の私の日、マッサージしてあげよう。
「先生も、ですか?」
「え?奥村さんも?」
「はい……気がついたらなるべく面倒見てくれています。」
まさか、恋人全員の恋人全員の子供たち面倒見ているの?
どんだけ、忙しいのよ。
体が心配になってきた。今度の私の日、マッサージしてあげよう。
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:13:20.44 ID:BaVBKbuC0
■春
大学生活は大忙し。
経営学、経済学、その他もろもろの単位取得。
それに、調理師免許の取得に、会社の会議。
大忙しで目も止まらない。
それでいて、なんとか回っているのは彼のおかけだ。
彼が、私の秘書兼アルバイト兼マネージャー兼恋人として、フォローしてくれるからだ。
頼もしい限り。
今度、時給上げてあげようかな?
大学生活は大忙し。
経営学、経済学、その他もろもろの単位取得。
それに、調理師免許の取得に、会社の会議。
大忙しで目も止まらない。
それでいて、なんとか回っているのは彼のおかけだ。
彼が、私の秘書兼アルバイト兼マネージャー兼恋人として、フォローしてくれるからだ。
頼もしい限り。
今度、時給上げてあげようかな?
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:14:14.61 ID:BaVBKbuC0
ところで、最近杏ちゃんをうちの会社のCMに起用しようって企画が来たの。
これは怪盗団の仲間としてコネじゃなくて、純粋に杏ちゃんの実力。
可愛いルックスに、ちょっと天然な言動……。
今、ティーンエンジャーに人気なんだって。
しかも、ママタレとしても今活躍中。
父親は……まあ、彼だよね……。
杏ちゃんも凄いな。私も頑張らなくちゃ。
数日後杏ちゃんと最終的な面接。
と言っても二人だけの話し合いみたいなもの。
これは怪盗団の仲間としてコネじゃなくて、純粋に杏ちゃんの実力。
可愛いルックスに、ちょっと天然な言動……。
今、ティーンエンジャーに人気なんだって。
しかも、ママタレとしても今活躍中。
父親は……まあ、彼だよね……。
杏ちゃんも凄いな。私も頑張らなくちゃ。
数日後杏ちゃんと最終的な面接。
と言っても二人だけの話し合いみたいなもの。
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:15:09.12 ID:BaVBKbuC0
「じゃあ、本当にいいの?」
「よろしくね、杏ちゃん」
「分かっている、春。私、何個でも食べるよ」
大食いタレントとして呼んだじゃないんだけど……まぁ、いいや…。
「ところで、赤ちゃんは平気なの?」
「うん、最近、夜泣きも減ったし、徐々に仕事復帰しているんだ」
「そうなんだ、良かった」
前に見せてくれた、杏ちゃんの赤ちゃん。
髪が巻き毛で、彼に似ていて、可愛い。
他の女の子は、自分以外の彼の子供は複雑みたいだけど、私は普通に可愛いと、思える。
なんだろう?私も赤ちゃんがいるからかな?
私の赤ちゃんのお兄ちゃん、お姉ちゃんだからかな。
「可愛いもんね、杏ちゃんの赤ちゃん」
「えへへー、ありがと」
「よろしくね、杏ちゃん」
「分かっている、春。私、何個でも食べるよ」
大食いタレントとして呼んだじゃないんだけど……まぁ、いいや…。
「ところで、赤ちゃんは平気なの?」
「うん、最近、夜泣きも減ったし、徐々に仕事復帰しているんだ」
「そうなんだ、良かった」
前に見せてくれた、杏ちゃんの赤ちゃん。
髪が巻き毛で、彼に似ていて、可愛い。
他の女の子は、自分以外の彼の子供は複雑みたいだけど、私は普通に可愛いと、思える。
なんだろう?私も赤ちゃんがいるからかな?
私の赤ちゃんのお兄ちゃん、お姉ちゃんだからかな。
「可愛いもんね、杏ちゃんの赤ちゃん」
「えへへー、ありがと」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:15:36.19 ID:BaVBKbuC0
「それでね、杏ちゃん私もできたみたい」
「えっ!そうなの?」
「うん、…最近具合が悪いみたいだし、…というかいつも…彼が凄くて…」
「いつ、妊娠してもおかしくない…かな?」
「あいつ、性欲…凄よね…」
「うん…」
「前に聞いたらあれで我慢しているんだって…」
「えっ…?嘘だよね?」
「マジっぽい」
もしかして、9股されて、助かっているのかな?
女子の下ネタは結構盛り上がった。
「えっ!そうなの?」
「うん、…最近具合が悪いみたいだし、…というかいつも…彼が凄くて…」
「いつ、妊娠してもおかしくない…かな?」
「あいつ、性欲…凄よね…」
「うん…」
「前に聞いたらあれで我慢しているんだって…」
「えっ…?嘘だよね?」
「マジっぽい」
もしかして、9股されて、助かっているのかな?
女子の下ネタは結構盛り上がった。
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:18:12.35 ID:BaVBKbuC0
おわり
【ペルソナ】番長・キタロー・屋根裏「「「俺達人間頂点ビック3」」」」
2018-04-23
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:14:39.58 ID:S+7r5PmG0
キタロー「君が番長か」
番長「初めましてキタローさん、番長です」
番長「今日の収録お願いします」
キタロー「うん、よろしく」
キタロー「噂は聞いているよ」
キタロー「元文部省のエリート大人気講師…だそうたね」
番長「単なる下っ端だっただけですよ」
キタロー「そう?君は若手ながらバリバリ仕事したって、当時の先輩が言っていたけど…」
番長「そんな事ないです」
キタロー「今は東大合格率80%のカリスマ塾講師なんでしょ」
キタロー「君の参考書ベストセラーなんだってね。『クマでも分かる東大必勝法』」
番長「みんなが頑張ってくれただけですよ」
番長「初めましてキタローさん、番長です」
番長「今日の収録お願いします」
キタロー「うん、よろしく」
キタロー「噂は聞いているよ」
キタロー「元文部省のエリート大人気講師…だそうたね」
番長「単なる下っ端だっただけですよ」
キタロー「そう?君は若手ながらバリバリ仕事したって、当時の先輩が言っていたけど…」
番長「そんな事ないです」
キタロー「今は東大合格率80%のカリスマ塾講師なんでしょ」
キタロー「君の参考書ベストセラーなんだってね。『クマでも分かる東大必勝法』」
番長「みんなが頑張ってくれただけですよ」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:15:44.14 ID:S+7r5PmG0
キタロー「僕の写真集の売上一位を取られて、印象に残っていたんだよ」
番長「キタローさんは、あんな特技もあるんですね」
キタロー「まあ、高校時代部活やっていたからね」
番長「でも、キタローさんこそ、数年前に芸能界に現れて以降絶好調の活躍じゃないですか」
番長「最初は歌手…それからファッション業界…それで絵画展…写真集みんな成功治めていますよね」
キタロー「うん、桐条グループと田中社長が出資とプロモーションしてくれたからね。まぁ、上手くいったよ」
番長「キタローさんは、あんな特技もあるんですね」
キタロー「まあ、高校時代部活やっていたからね」
番長「でも、キタローさんこそ、数年前に芸能界に現れて以降絶好調の活躍じゃないですか」
番長「最初は歌手…それからファッション業界…それで絵画展…写真集みんな成功治めていますよね」
キタロー「うん、桐条グループと田中社長が出資とプロモーションしてくれたからね。まぁ、上手くいったよ」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:16:38.74 ID:S+7r5PmG0
番長「そこからコメンテーターとして情報番組に出て、旅番組やバラエティ番組に出演して…今は司会業でタレント活動ですよね?」
番長「『キタローの部屋』とか『キタローのどうでもいい話』とか大人気じゃないですか」
キタロー「最近はゆるい番組がウケてるんだろうね」
番長「後…この前のクイズ王決定戦とか大食い選手権とかも優勝していましたよね」
キタロー「まあ、美味しいもの食べられるからね」
番長「多才ですね…」
番長「ところでキタローさん、最近歌の方はどうですか?」
キタロー「最近はしていないけど…どうしたの?」
番長「……今度コラボしませんか?」
キタロー「君…歌も出すの?」
番長「『キタローの部屋』とか『キタローのどうでもいい話』とか大人気じゃないですか」
キタロー「最近はゆるい番組がウケてるんだろうね」
番長「後…この前のクイズ王決定戦とか大食い選手権とかも優勝していましたよね」
キタロー「まあ、美味しいもの食べられるからね」
番長「多才ですね…」
番長「ところでキタローさん、最近歌の方はどうですか?」
キタロー「最近はしていないけど…どうしたの?」
番長「……今度コラボしませんか?」
キタロー「君…歌も出すの?」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:17:35.57 ID:S+7r5PmG0
番長「ええ…睡眠学習について効果がある曲を作ろうと…」
番長「是非、協力して頂けませんか?」
番長「キタローさんのデビュー曲『devil』聞きました」
番長「演歌とラップとビジュアル系の音楽性を持っているアーティストは、キタローさんだけなんです」
キタロー「面白そうだね」
キタロー「いいよ、協力する」
番長「是非、協力して頂けませんか?」
番長「キタローさんのデビュー曲『devil』聞きました」
番長「演歌とラップとビジュアル系の音楽性を持っているアーティストは、キタローさんだけなんです」
キタロー「面白そうだね」
キタロー「いいよ、協力する」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:18:21.07 ID:S+7r5PmG0
~半年後~
キタロー「売れたね…どうでもいいけど」
キタロー「君は作曲できるんだね」
番長「まあ、独学ですけど…吹奏楽やっていまして」
番長「でも、売れましたね…ダブルミリオンも行くとか…」
キタロー「美鶴のセールスが良かったからね…」
番長「美鶴…?」
キタロー「スポンサーの一人だよ。僕のフィアンセ」
番長「あれ?キタローさんは女優の岳羽ゆかりさんと交際しているって雑誌が書いてあったけど…」
番長「やっぱゴシップはゴシップなのか」
キタロー「ゆかりもフィアンセだけど?」
番長「??」
キタロー「売れたね…どうでもいいけど」
キタロー「君は作曲できるんだね」
番長「まあ、独学ですけど…吹奏楽やっていまして」
番長「でも、売れましたね…ダブルミリオンも行くとか…」
キタロー「美鶴のセールスが良かったからね…」
番長「美鶴…?」
キタロー「スポンサーの一人だよ。僕のフィアンセ」
番長「あれ?キタローさんは女優の岳羽ゆかりさんと交際しているって雑誌が書いてあったけど…」
番長「やっぱゴシップはゴシップなのか」
キタロー「ゆかりもフィアンセだけど?」
番長「??」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:19:01.09 ID:S+7r5PmG0
キタロー「僕は独身だけど三人にプロポーズしているんだ」
番長「」
キタロー「僕は三人を愛していてね…」
キタロー「彼女達を大切にしている証拠に、女遊びを止めて愛人の数を50人から10人まで減らすほど、愛しているんだ」
番長「」
番長「き、キタローさんは夜の帝王というのは本当になんですね」
キタロー「生き返った衝動かな?子孫を残せと身体が感じてね。マネージャー、スタッフ、スポンサー、女優、女芸人、歌手…手当たり次第手を付けたよ」
番長「」
キタロー「…でも誰も遊びじゃない。真剣なんだ、性的な意味で」
番長「」
キタロー「僕は三人を愛していてね…」
キタロー「彼女達を大切にしている証拠に、女遊びを止めて愛人の数を50人から10人まで減らすほど、愛しているんだ」
番長「」
番長「き、キタローさんは夜の帝王というのは本当になんですね」
キタロー「生き返った衝動かな?子孫を残せと身体が感じてね。マネージャー、スタッフ、スポンサー、女優、女芸人、歌手…手当たり次第手を付けたよ」
番長「」
キタロー「…でも誰も遊びじゃない。真剣なんだ、性的な意味で」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:20:17.13 ID:S+7r5PmG0
番長「そ、そうですか」
キタロー「驚いているけど君だってそうなんだろ」
番長「えっ…」
キタロー「久慈川りせに…白鐘直斗…二人共君の恋人なんでしょ」
キタロー「芸能界には知り合いが多くてね、君の交友関係は耳に入っている」
キタロー「後、他にも噂はちらほら聞いているよ」
番長「…えっと…」
キタロー「隠すことは無いさ…人間誰でも、皆好色…」
番長「…」
番長「正直迷っているんです。こうだらだらと何股している自分が居て、でも資金があるからどれだけ手を出しても、養えるから止められないです」
キタロー「いいじゃないかそれで」
番長「えっ?」
キタロー「驚いているけど君だってそうなんだろ」
番長「えっ…」
キタロー「久慈川りせに…白鐘直斗…二人共君の恋人なんでしょ」
キタロー「芸能界には知り合いが多くてね、君の交友関係は耳に入っている」
キタロー「後、他にも噂はちらほら聞いているよ」
番長「…えっと…」
キタロー「隠すことは無いさ…人間誰でも、皆好色…」
番長「…」
番長「正直迷っているんです。こうだらだらと何股している自分が居て、でも資金があるからどれだけ手を出しても、養えるから止められないです」
キタロー「いいじゃないかそれで」
番長「えっ?」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:20:48.16 ID:S+7r5PmG0
キタロー 「僕は一度死んでね。でも、仲間が居たから戻って来られた。だからこそ、僕はみんなの絆を大切にしている」
キタロー「絆が世界を救うと信じている」
キタロー「ただ、それだけなんだ」
番長「…」
番長「俺は何かを忘れていました」
番長「そのとおりです。力と発想があるなら、それを行動すべきです」
キタロー「いい顔じゃないか」
キタロー「協力するよ」
キタロー「絆が世界を救うと信じている」
キタロー「ただ、それだけなんだ」
番長「…」
番長「俺は何かを忘れていました」
番長「そのとおりです。力と発想があるなら、それを行動すべきです」
キタロー「いい顔じゃないか」
キタロー「協力するよ」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:21:27.38 ID:S+7r5PmG0
~半年後~
キタロー「当選おめでとう」
番長「はい、おかげさまで」
キタロー「野党のベテラン大物議員を破るとかすごいじゃないか」
番長「まあ、色々とコネを使いましてね」
番長「ちょっと来いよ」
屋根裏「はい」
屋根裏「初めまして」
キタロー「ん?彼は?」
番長「泥棒ですよ、話題の怪盗」
キタロー「泥棒?そんな人と知り合いなの?」
屋根裏「大丈夫ですよ。俺は金持ち専用ですから」
キタロー「当選おめでとう」
番長「はい、おかげさまで」
キタロー「野党のベテラン大物議員を破るとかすごいじゃないか」
番長「まあ、色々とコネを使いましてね」
番長「ちょっと来いよ」
屋根裏「はい」
屋根裏「初めまして」
キタロー「ん?彼は?」
番長「泥棒ですよ、話題の怪盗」
キタロー「泥棒?そんな人と知り合いなの?」
屋根裏「大丈夫ですよ。俺は金持ち専用ですから」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:22:19.55 ID:S+7r5PmG0
キタロー「余計危ないよ」
番長「彼がライバルの汚職疑惑を暴露して、落選させたんです」
屋根裏「まあ、利害が一致しましてね、あの政治家は俺が狙っていました」
屋根裏「散々、裏であくどいことしていて、おまけに知り合いの家を地上げされて、困っていたんですよ」
屋根裏「そうしたら、番長先輩が色々とネタ提供してくれて、やっつけることに成功しました」
番長「こいつも色々と女難でして、俺に協力してくれるそうです」
キタロー「最低だな」
番長「あんたが言うんですか?」
番長「彼がライバルの汚職疑惑を暴露して、落選させたんです」
屋根裏「まあ、利害が一致しましてね、あの政治家は俺が狙っていました」
屋根裏「散々、裏であくどいことしていて、おまけに知り合いの家を地上げされて、困っていたんですよ」
屋根裏「そうしたら、番長先輩が色々とネタ提供してくれて、やっつけることに成功しました」
番長「こいつも色々と女難でして、俺に協力してくれるそうです」
キタロー「最低だな」
番長「あんたが言うんですか?」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:22:57.88 ID:S+7r5PmG0
屋根裏「持ちつ持たれつの関係なだけですよ」
キタロー「まあ、今回は助かったから今度は君が困ったら聞くよ」
~一年後~
番長「やあ」
屋根裏「番長さん…こんにちは」
番長「こんな喫茶店がお前のアジトとはな」
屋根裏「普段はここで雇われマスターです」
屋根裏「お仕事…順調そうですね」
番長「まあな」
キタロー「まあ、今回は助かったから今度は君が困ったら聞くよ」
~一年後~
番長「やあ」
屋根裏「番長さん…こんにちは」
番長「こんな喫茶店がお前のアジトとはな」
屋根裏「普段はここで雇われマスターです」
屋根裏「お仕事…順調そうですね」
番長「まあな」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:23:43.81 ID:S+7r5PmG0
屋根裏「若手のホープとして活躍している…最年少文部科学大臣…」
番長「……たまたま前任者が失脚しただけだ」
屋根裏「ところで…」
番長「ああ…」
番長「…」スッ
番長「こいつが例の不起訴処分の人間」
番長「感謝しろよ、警察の知り合いから苦労したんだから」
屋根裏「ありがとうございます」
番長「そいつクロなのか?」
屋根裏「まあ、依頼人の目の前でやっていますからね」
番長「……たまたま前任者が失脚しただけだ」
屋根裏「ところで…」
番長「ああ…」
番長「…」スッ
番長「こいつが例の不起訴処分の人間」
番長「感謝しろよ、警察の知り合いから苦労したんだから」
屋根裏「ありがとうございます」
番長「そいつクロなのか?」
屋根裏「まあ、依頼人の目の前でやっていますからね」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:24:10.59 ID:S+7r5PmG0
屋根裏「無実はないでしょ」
番長「…」
番長「こういう仕事はいつから?」
屋根裏「結構前から」
屋根裏「非合法な仕事やっていると、結構依頼来るんですよ」
番長「…」
屋根裏「心配しなくても殺しはしませんよ」
番長「まあ、見なかったことにしてやる」
番長「…」
番長「こういう仕事はいつから?」
屋根裏「結構前から」
屋根裏「非合法な仕事やっていると、結構依頼来るんですよ」
番長「…」
屋根裏「心配しなくても殺しはしませんよ」
番長「まあ、見なかったことにしてやる」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:25:54.52 ID:S+7r5PmG0
~一ヶ月後~
屋根裏「キタロー先輩はヤクザとか詳しいんですか?」
キタロー「何だよ、藪から棒に」
屋根裏「いえ…今犯罪組織調べていて…詳しい人いないかと」
キタロー「それは女の為?」
屋根裏「知り合いの女刑事の頼みでして…どうにかなりませんか?」
キタロー「昔は芸人がその筋の人の会食に呼ばれた、うんぬんあったけど今は無いでしょ」
屋根裏「そうですか…」
キタロー「まあ…でもネタもない訳では無いよ」
屋根裏「本当ですか?」
キタロー「芸能界と関わりのある連中を教えればいいんでしょ」
キタロー「麻薬関係になるけどそれでいい?」
屋根裏「はい、お願いします」
屋根裏「キタロー先輩はヤクザとか詳しいんですか?」
キタロー「何だよ、藪から棒に」
屋根裏「いえ…今犯罪組織調べていて…詳しい人いないかと」
キタロー「それは女の為?」
屋根裏「知り合いの女刑事の頼みでして…どうにかなりませんか?」
キタロー「昔は芸人がその筋の人の会食に呼ばれた、うんぬんあったけど今は無いでしょ」
屋根裏「そうですか…」
キタロー「まあ…でもネタもない訳では無いよ」
屋根裏「本当ですか?」
キタロー「芸能界と関わりのある連中を教えればいいんでしょ」
キタロー「麻薬関係になるけどそれでいい?」
屋根裏「はい、お願いします」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:27:24.02 ID:S+7r5PmG0
~一ヶ月後~
キタロー「どう?随分やらかしたみたいじゃない?」
屋根裏「まあ、暴れましたね…」
キタロー「麻薬密輸組織…そこから暴力団」
屋根裏「そいつらが振り込め詐欺グループで、そこも潰して…闇金の資金も盗みました」
キタロー「いくつかの暴力団を潰していたら企業との不正見つけたんだろ」
キタロー「そこで、次はその不正をやらかした企業に産業スパイとして潜入」
屋根裏「不正を暴露してやりましたよ」
屋根裏「ついでにマネーロンダリング資金も盗みました」
キタロー「やりすぎだなぁ…」
キタロー「それで、政府の秘密を暴露して、報復に指名手配か…」
屋根裏「まあ、そんな所です」
キタロー「ふーん、しばらくは身を隠すんだね」
キタロー「知り合いに匿ってくれる人いるから」
屋根裏「お願いします」
キタロー「どう?随分やらかしたみたいじゃない?」
屋根裏「まあ、暴れましたね…」
キタロー「麻薬密輸組織…そこから暴力団」
屋根裏「そいつらが振り込め詐欺グループで、そこも潰して…闇金の資金も盗みました」
キタロー「いくつかの暴力団を潰していたら企業との不正見つけたんだろ」
キタロー「そこで、次はその不正をやらかした企業に産業スパイとして潜入」
屋根裏「不正を暴露してやりましたよ」
屋根裏「ついでにマネーロンダリング資金も盗みました」
キタロー「やりすぎだなぁ…」
キタロー「それで、政府の秘密を暴露して、報復に指名手配か…」
屋根裏「まあ、そんな所です」
キタロー「ふーん、しばらくは身を隠すんだね」
キタロー「知り合いに匿ってくれる人いるから」
屋根裏「お願いします」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:28:04.55 ID:S+7r5PmG0
~一ヶ月後~
番長「うーん困った」
キタロー「そうだね」
番長「まさか、テロリストが潜伏しているなんて」
キタロー「大変だね…」
番長「キタローさん、何か知恵とかあります?」
キタロー「もう先制攻撃しちゃえば?」
番長「え?そんなことは…?」
キタロー「1人暇な奴がいるでしょ」
番長「あっ…!」
キタロー「まあ、色々情報渡してみなよ」
番長「うーん困った」
キタロー「そうだね」
番長「まさか、テロリストが潜伏しているなんて」
キタロー「大変だね…」
番長「キタローさん、何か知恵とかあります?」
キタロー「もう先制攻撃しちゃえば?」
番長「え?そんなことは…?」
キタロー「1人暇な奴がいるでしょ」
番長「あっ…!」
キタロー「まあ、色々情報渡してみなよ」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:28:36.38 ID:S+7r5PmG0
~一ヶ月後~
屋根裏「先輩達酷いですよ、散々利用して捨てるんだから」
番長「後で助けてやったろ」
キタロー「僕も知り合いの政財界に訴えたんだよ?」
屋根裏「本当ですか?」
番長「それにお前なら何度も捕まっているし」
キタロー「タフだし」
屋根裏「結構疲れるんですってば…」
屋根裏「つーか、懲役300年ってどういうことですか?」
屋根裏「先輩達酷いですよ、散々利用して捨てるんだから」
番長「後で助けてやったろ」
キタロー「僕も知り合いの政財界に訴えたんだよ?」
屋根裏「本当ですか?」
番長「それにお前なら何度も捕まっているし」
キタロー「タフだし」
屋根裏「結構疲れるんですってば…」
屋根裏「つーか、懲役300年ってどういうことですか?」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:29:08.38 ID:S+7r5PmG0
番長「恩赦にしてやっただろ」
屋根裏「社会奉仕付きでね!」
番長「お前の為でもあるから許せよ」
キタロー「それで?そろそろ新党作るんでしょ?」
番長「ええ、準備は出来ています」
キタロー「資金ならやるから頼むぞ」
番長「お前にも頼むぞ」
屋根裏「分かっていますよ、政敵の秘密暴けばいいでしょ?」
屋根裏「社会奉仕付きでね!」
番長「お前の為でもあるから許せよ」
キタロー「それで?そろそろ新党作るんでしょ?」
番長「ええ、準備は出来ています」
キタロー「資金ならやるから頼むぞ」
番長「お前にも頼むぞ」
屋根裏「分かっていますよ、政敵の秘密暴けばいいでしょ?」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:29:36.79 ID:S+7r5PmG0
屋根裏「でもお願いしますよ、見返りに」
番長「ああ…任せろ。一夫多妻法、成立させてにしてやるよ」
屋根裏「お願いしますよ、そろそろ愛人達がうるさいので」
キタロー「枯れないなお前も」
屋根裏「先輩に言われたくありませんよ、絶倫の癖に」
屋根裏「そもそも先輩らの性欲で行動しているでしょう」
キタロー「悪いか?」
番長「そうだ」
屋根裏「枯れないな、この人達」
おわり
番長「ああ…任せろ。一夫多妻法、成立させてにしてやるよ」
屋根裏「お願いしますよ、そろそろ愛人達がうるさいので」
キタロー「枯れないなお前も」
屋根裏「先輩に言われたくありませんよ、絶倫の癖に」
屋根裏「そもそも先輩らの性欲で行動しているでしょう」
キタロー「悪いか?」
番長「そうだ」
屋根裏「枯れないな、この人達」
おわり
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:31:45.87 ID:S+7r5PmG0
キタロー
突如芸能界に現れた謎のクールフェイスシンガーソングライター。ラップ調で青春を歌った「devil」は200万枚の大ヒット。
さらに、その金でファッション業界に参入。出資企業は桐条グループと時価ネットたなかという事も注目された。ファッションデザイナーとしても成功を収める。
そして、趣味の絵画展や写真集を出版してベストセラーに。
著名になりコメンテーターとして情報番組に出演して、旅番組やバラエティ番組に出演する。人気タレントとなる。
博識を活かして、クイズチャンピオンや大食いの特技を活かして大食いチャンピオンとしても活躍。
既に番組「キタローの部屋」「キタローのどうでもいい話」などの司会も担当して、視聴率100%男の異名を持つ。
カリスマで芸能界の頂点に取ったと称される。
配偶者は女優の岳羽ゆかり、桐条グループ総帥桐条美鶴、将来のノーベル賞候補の科学者山岸風花
愛人はモデル、女優、スタッフ、一般OL、スポーツトレーナなど10人いるとの噂である。
突如芸能界に現れた謎のクールフェイスシンガーソングライター。ラップ調で青春を歌った「devil」は200万枚の大ヒット。
さらに、その金でファッション業界に参入。出資企業は桐条グループと時価ネットたなかという事も注目された。ファッションデザイナーとしても成功を収める。
そして、趣味の絵画展や写真集を出版してベストセラーに。
著名になりコメンテーターとして情報番組に出演して、旅番組やバラエティ番組に出演する。人気タレントとなる。
博識を活かして、クイズチャンピオンや大食いの特技を活かして大食いチャンピオンとしても活躍。
既に番組「キタローの部屋」「キタローのどうでもいい話」などの司会も担当して、視聴率100%男の異名を持つ。
カリスマで芸能界の頂点に取ったと称される。
配偶者は女優の岳羽ゆかり、桐条グループ総帥桐条美鶴、将来のノーベル賞候補の科学者山岸風花
愛人はモデル、女優、スタッフ、一般OL、スポーツトレーナなど10人いるとの噂である。
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:36:08.76 ID:S+7r5PmG0
番長
大学卒業後文部省のエリートとして活躍。様々な教育改革に乗り出す。その後退職。塾講師として再就職。東大合格率80%のカリスマ講師として話題に
その後著書「クマでも分かる東大必勝法」がベストセラーになる。
また、キタローとコラボして睡眠学習に効果があるとして出した作詞作曲「community」はダブルミリオンの大ヒット。
その後国会の出馬。野党ベテラン議員を破り、一位当選。
得意分野の教育やその他部分でも博識ぶりで活躍して、若手のエースと呼ばれる。
その後最年少文部科学大臣に選出される。その後新党結成し最年少党首に襲名する。
配偶者は女優・歌手の久慈川りせ、探偵王子白鐘直斗、番長の従姉妹。
その他、地方に現地妻が複数おり、隠し子も複数存在するという噂である。
大学卒業後文部省のエリートとして活躍。様々な教育改革に乗り出す。その後退職。塾講師として再就職。東大合格率80%のカリスマ講師として話題に
その後著書「クマでも分かる東大必勝法」がベストセラーになる。
また、キタローとコラボして睡眠学習に効果があるとして出した作詞作曲「community」はダブルミリオンの大ヒット。
その後国会の出馬。野党ベテラン議員を破り、一位当選。
得意分野の教育やその他部分でも博識ぶりで活躍して、若手のエースと呼ばれる。
その後最年少文部科学大臣に選出される。その後新党結成し最年少党首に襲名する。
配偶者は女優・歌手の久慈川りせ、探偵王子白鐘直斗、番長の従姉妹。
その他、地方に現地妻が複数おり、隠し子も複数存在するという噂である。
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/04/22(日) 15:37:09.26 ID:S+7r5PmG0
屋根裏のゴミ
前科120犯。懲役推定300年。
大学卒業後、コーヒー店のマスター兼情報屋として様々な企業、官僚、政治家の不正を告発。暴力団や裏社会の人間から脱税した資金を窃盗。
闇金の違法資金を強盗。
企業に忍び込みマネーロンダリング資金を横領。
他にも犯罪者、テロリスト、指名手配犯などに対する障害、暴行、器物破損、殺人未遂などの容疑も起訴されている。
ちなみに配偶者は確認されていないが、協力した女性は20人以上で全員恋人関係あるとされており、子供も複数確認されているとのことである。
懲役推定300年と判決が出たが、現在は恩赦で、社会奉仕活動をすることで出所している。
前科120犯。懲役推定300年。
大学卒業後、コーヒー店のマスター兼情報屋として様々な企業、官僚、政治家の不正を告発。暴力団や裏社会の人間から脱税した資金を窃盗。
闇金の違法資金を強盗。
企業に忍び込みマネーロンダリング資金を横領。
他にも犯罪者、テロリスト、指名手配犯などに対する障害、暴行、器物破損、殺人未遂などの容疑も起訴されている。
ちなみに配偶者は確認されていないが、協力した女性は20人以上で全員恋人関係あるとされており、子供も複数確認されているとのことである。
懲役推定300年と判決が出たが、現在は恩赦で、社会奉仕活動をすることで出所している。
引用元: 【ペルソナ】番長・キタロー・屋根裏「「「俺達人間頂点ビック3」」」」
【ペルソナ3】backyard of P3D
2018-01-09
1: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:27:37.30 ID:PmKq8T0WO
・書き貯めあり
・短い
・主人公は「有里湊」とします
・メタネタあります
・短い
・主人公は「有里湊」とします
・メタネタあります
2: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:30:22.38 ID:UP6fDmH70
幾月「…と、いうわけだ。すまないけど、よろしく頼むよ」
美鶴「気は進みませんが、決定事項なのですよね?」
幾月「うん、まあそうなんだよね、決定事項だから、蹴ってもらっちゃ困るんだよね!」
美鶴「…わかりました。それでは皆には私から説明を。失礼します」...ガチャ
幾月「あれ?気づかなかったかな?決定、蹴ってー…」
美鶴「気は進みませんが、決定事項なのですよね?」
幾月「うん、まあそうなんだよね、決定事項だから、蹴ってもらっちゃ困るんだよね!」
美鶴「…わかりました。それでは皆には私から説明を。失礼します」...ガチャ
幾月「あれ?気づかなかったかな?決定、蹴ってー…」
3: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:34:58.14 ID:UP6fDmH70
【夜ー学生寮作戦室】
桐条「…ということだ。すまないが、よろしく頼m」
ゆかり「ハァ~!?無理無理ムリムリ!ダンスの特訓しろって、なんですか藪から棒に!」
明彦「俺も納得がいかん。ダンスが俺たち特別課外活動部にとってなんだというんだ?
多少の体幹を鍛える程度の効果はあるかもしれないが、日ごろの訓練を上回るとは思えん」
風花「まあまあ、ゆかりちゃんも、それから真田先輩も落ち着いてください。桐条先輩だって、思いつきでってわけじゃないんですよね?」
美鶴「ああ、その通りだ」
湊「上からの指示、ですよね」
ゆかり「え、上っていうと、まさか…」
明彦「幾月さんか?」
桐条「…ということだ。すまないが、よろしく頼m」
ゆかり「ハァ~!?無理無理ムリムリ!ダンスの特訓しろって、なんですか藪から棒に!」
明彦「俺も納得がいかん。ダンスが俺たち特別課外活動部にとってなんだというんだ?
多少の体幹を鍛える程度の効果はあるかもしれないが、日ごろの訓練を上回るとは思えん」
風花「まあまあ、ゆかりちゃんも、それから真田先輩も落ち着いてください。桐条先輩だって、思いつきでってわけじゃないんですよね?」
美鶴「ああ、その通りだ」
湊「上からの指示、ですよね」
ゆかり「え、上っていうと、まさか…」
明彦「幾月さんか?」
4: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:38:34.42 ID:UP6fDmH70
湊「アトラス上層部からの直々のおっ達しってところじゃないですか?」
順平「ちょ、ちょっと待てよ。アトラスが?俺たちはロープレ班なわけ。な?それがダンスだぜ?おかしいだろ」
アイギス「私もおかしいと思います。わたしは戦闘用の兵器です。ロールプレイングゲームの戦闘要員や、
格闘ゲームというのはわかりますが、ダンスというのは適材適所とはいえないのでは」
乾「アイギスさん、自分のことを兵器って言い切るのはあれですけど、そうですよ。
もともと僕たち、タルタロスを探索して、シャドウをやっつけてっていう役目で」
順平「ちょ、ちょっと待てよ。アトラスが?俺たちはロープレ班なわけ。な?それがダンスだぜ?おかしいだろ」
アイギス「私もおかしいと思います。わたしは戦闘用の兵器です。ロールプレイングゲームの戦闘要員や、
格闘ゲームというのはわかりますが、ダンスというのは適材適所とはいえないのでは」
乾「アイギスさん、自分のことを兵器って言い切るのはあれですけど、そうですよ。
もともと僕たち、タルタロスを探索して、シャドウをやっつけてっていう役目で」
5: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:44:49.10 ID:UP6fDmH70
湊「P3FESでは、終業式以降の話もやってたね」
順平「お前、あれは大変だったもんな」
ゆかり「さらに、携帯型ゲームに移植したときはハム子まで登場して、とうとう湊くんの出ないルートまで出来ちゃったよね」
明彦「そのあたりはロープレの本流だからまだいい。
P4Uでの俺の扱いはあまり納得していないんだ。なんだあの衣装は。おれはマント一枚で民間航空機に乗るイメージでもあるのか?
まあ拳で戦う、という機会を与えられたのは悪くなかったが」
風花「P4U2、私だけシャドウキャラがいなかったような…」
アイギス「私は、ラビリスに会えてよかったです」
順平「お前、あれは大変だったもんな」
ゆかり「さらに、携帯型ゲームに移植したときはハム子まで登場して、とうとう湊くんの出ないルートまで出来ちゃったよね」
明彦「そのあたりはロープレの本流だからまだいい。
P4Uでの俺の扱いはあまり納得していないんだ。なんだあの衣装は。おれはマント一枚で民間航空機に乗るイメージでもあるのか?
まあ拳で戦う、という機会を与えられたのは悪くなかったが」
風花「P4U2、私だけシャドウキャラがいなかったような…」
アイギス「私は、ラビリスに会えてよかったです」
6: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:48:07.27 ID:UP6fDmH70
桐条「更にはPQだ。まさかナンバリングタイトル間でクロスオーバーとはな」
順平「時間軸がもうオレっちお手上げ侍だったぜ」
風花「ごーこんきっさは、ちょっと恥ずかしかったですね」
ゆかり「まあギリ、PQまでは我慢するけどダンスって一体何なのって話じゃない?」
明彦「そのとおりだ。なんで探索でもバトルでもなく、ダンスなんだ?美鶴、説明してくれ」
乾「そうですよ、戦うとか探検する、とかなら僕たちもまあ頑張りますよ?でもなんでダンスなんです?」
アイギス「私はそれほど休養を要しない仕様ですが、皆さん映画化もひとしきり終わって落ち着いたところに
新しいお仕事で、ちょっといら立っているようです。納得できる説明が必要なようです」
順平「時間軸がもうオレっちお手上げ侍だったぜ」
風花「ごーこんきっさは、ちょっと恥ずかしかったですね」
ゆかり「まあギリ、PQまでは我慢するけどダンスって一体何なのって話じゃない?」
明彦「そのとおりだ。なんで探索でもバトルでもなく、ダンスなんだ?美鶴、説明してくれ」
乾「そうですよ、戦うとか探検する、とかなら僕たちもまあ頑張りますよ?でもなんでダンスなんです?」
アイギス「私はそれほど休養を要しない仕様ですが、皆さん映画化もひとしきり終わって落ち着いたところに
新しいお仕事で、ちょっといら立っているようです。納得できる説明が必要なようです」
7: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:49:42.78 ID:UP6fDmH70
美鶴「実は、さっき説明した以上のことは、私もよくわかってはいなくてな、すまない」
ゆかり「すまないって、桐条先輩それ問題ですよ。ほとんど情報なんてなかったし。
だいたい桐条先輩自体、この話に納得してるんですか!?」
美鶴「それは…」
順平「ちょっとゆかりッチ、ヒートアップしすぎだって、落ち着けよ…。
なあ、お前なんか知らねえの?各タイトルの主人公間で情報交換とかしてるらしいじゃん?」
湊「ああ」
美鶴「何か知っているのか?」
ゆかり「すまないって、桐条先輩それ問題ですよ。ほとんど情報なんてなかったし。
だいたい桐条先輩自体、この話に納得してるんですか!?」
美鶴「それは…」
順平「ちょっとゆかりッチ、ヒートアップしすぎだって、落ち着けよ…。
なあ、お前なんか知らねえの?各タイトルの主人公間で情報交換とかしてるらしいじゃん?」
湊「ああ」
美鶴「何か知っているのか?」
8: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:51:36.97 ID:UP6fDmH70
湊「元凶は、P4ですよ」
乾「P4って、鳴上さんたちですか?」
順平「いやいや、アイツら確かにリア充っぷりが凄かったけど、ダンス部なんていなかったよな?」
ゆかり「まあ、りせちーがアイドルだから一応ダンスできるんだろうけど、それが何だっていうの?」
湊「P4でダンスゲームが出たんだよ。通称、P4Dと呼ばれてる」
乾「P4って、鳴上さんたちですか?」
順平「いやいや、アイツら確かにリア充っぷりが凄かったけど、ダンス部なんていなかったよな?」
ゆかり「まあ、りせちーがアイドルだから一応ダンスできるんだろうけど、それが何だっていうの?」
湊「P4でダンスゲームが出たんだよ。通称、P4Dと呼ばれてる」
9: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:56:40.21 ID:UP6fDmH70
明彦「おい、ちょっと待て。アイツらだって俺たちと同じ、シャドウと戦うっていう役割のキャラだろう?」
美鶴「そうだった筈だ。彼らがダンスといっても、なんの脈絡も感じないのだが」
湊「僕も最初は驚きましたよ。しかし、実際ゲームは発売され、そこそこの評判だったようなんです」
風花「P4Dって、もしかしてDはダンスのD?」
湊「ああ、そうだよ。"ペルソナ4 ダンシング・オールナイト"が正式名称だ。そのゲームは、本筋の話のしばらく後という世界らしいんだけど、バトルの代わりに"上手に踊る"ことで倒せるシャドウがいるらしい」
乾「え、踊ったらシャドウが死ぬんですか?」
湊「死ぬ、のかどうかはよくわからないんだけど、とにかくダンスで攻略しているらしいんだ」
順平「マジか…なんだその世界観」
風花「ムド的な、呪術的な踊りとかじゃないんだよね?」
ゆかり「さすがにそんなゲーム、イヤでしょ」
美鶴「そうだった筈だ。彼らがダンスといっても、なんの脈絡も感じないのだが」
湊「僕も最初は驚きましたよ。しかし、実際ゲームは発売され、そこそこの評判だったようなんです」
風花「P4Dって、もしかしてDはダンスのD?」
湊「ああ、そうだよ。"ペルソナ4 ダンシング・オールナイト"が正式名称だ。そのゲームは、本筋の話のしばらく後という世界らしいんだけど、バトルの代わりに"上手に踊る"ことで倒せるシャドウがいるらしい」
乾「え、踊ったらシャドウが死ぬんですか?」
湊「死ぬ、のかどうかはよくわからないんだけど、とにかくダンスで攻略しているらしいんだ」
順平「マジか…なんだその世界観」
風花「ムド的な、呪術的な踊りとかじゃないんだよね?」
ゆかり「さすがにそんなゲーム、イヤでしょ」
10: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 01:59:00.34 ID:UP6fDmH70
ゆかり「うーん、とても信じられる話じゃないんだけど…キミが言うなら、本当なんだよね」
美鶴「よくわかった。つまりP4のダンスゲームが既に先行してリリースされているんだな」
明彦「つまり俺たちはその次回作に参加する、ということか」
湊「そういうことです、おそらくね」
乾「僕たちの次回作の系統のゲームの次回作に僕たちが出るってなんか不思議な感じですね」
美鶴「よくわかった。つまりP4のダンスゲームが既に先行してリリースされているんだな」
明彦「つまり俺たちはその次回作に参加する、ということか」
湊「そういうことです、おそらくね」
乾「僕たちの次回作の系統のゲームの次回作に僕たちが出るってなんか不思議な感じですね」
11: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:00:31.50 ID:UP6fDmH70
アイギス「あの、コロマルさんはどうされるのですか?」
美鶴「実は、コロマルに関しては特に何も言われていないんだ」
明彦「おそらくはシンジも、ということだな」
順平「あー、だから荒垣さんがコロマルの散歩に行ってる今この話なのか」
美鶴「実は、コロマルに関しては特に何も言われていないんだ」
明彦「おそらくはシンジも、ということだな」
順平「あー、だから荒垣さんがコロマルの散歩に行ってる今この話なのか」
12: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:03:11.96 ID:UP6fDmH70
ゆかり「で、リリースいつなんですか?それも聞いてないんですか?」
美鶴「リリースもなにも、ゲームということ自体私は知らなかったんだが、我々の"ダンス特訓"の期限は今度の5月ということだ」
明彦「おい、もう4か月しかないじゃないか!」
順平「あれ、真田先輩、やる気っすね」
明彦「シャドウが倒せるというのなら、手段は問わないさ。ダンスでもなんでもやってやる!」
湊「いや、我々の場合にもダンスがシャドウを倒すものになるのかはわかりませんが…」
明彦「構わん!可能性はあるんだろう?」
順平「うわー、真田先輩の一直線キャラ、ガッツリ出てるわー」
美鶴「リリースもなにも、ゲームということ自体私は知らなかったんだが、我々の"ダンス特訓"の期限は今度の5月ということだ」
明彦「おい、もう4か月しかないじゃないか!」
順平「あれ、真田先輩、やる気っすね」
明彦「シャドウが倒せるというのなら、手段は問わないさ。ダンスでもなんでもやってやる!」
湊「いや、我々の場合にもダンスがシャドウを倒すものになるのかはわかりませんが…」
明彦「構わん!可能性はあるんだろう?」
順平「うわー、真田先輩の一直線キャラ、ガッツリ出てるわー」
13: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:05:27.56 ID:UP6fDmH70
ゆかり「うーん、でもちょっとめんどいよねー風花」
風花「えっ、私またナビゲートキャラじゃないのかな?ダンスって私体育の授業でもついていくのやっとだし、自信はないかな」
美鶴「そのあたりは何とも、だ」
湊「あの、実は主人公会でもう一つ聞いていることがあるですが」
美鶴「是非話してくれ」
風花「えっ、私またナビゲートキャラじゃないのかな?ダンスって私体育の授業でもついていくのやっとだし、自信はないかな」
美鶴「そのあたりは何とも、だ」
湊「あの、実は主人公会でもう一つ聞いていることがあるですが」
美鶴「是非話してくれ」
14: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:09:07.19 ID:UP6fDmH70
湊「実は、我々の他にも、P5の連中のダンスゲームも同日発売らしい、と」
ゆかり「え、何?P4どころかP5ってのがあるの!?」
順平「長寿なんすねー、ペルソナシリーズ」
美鶴「なるほど。P4が成功作となり、続編はP3とP5で同日発売…我々は比較されるな、間違いない」
アイギス「容易に想像がつくであります」
順平「あーもう、数字で評価されるのなんて学校のテストだけで充分だっての」
ゆかり「あんたのテストの点数はロクな評価にならないでしょ」
乾「僕たちはシャドウを倒して、守るべきものを守るために頑張るっていうのに、こんな競争をさせるなんて。大人って、そういうとこが醜いですよね」
ゆかり「え、何?P4どころかP5ってのがあるの!?」
順平「長寿なんすねー、ペルソナシリーズ」
美鶴「なるほど。P4が成功作となり、続編はP3とP5で同日発売…我々は比較されるな、間違いない」
アイギス「容易に想像がつくであります」
順平「あーもう、数字で評価されるのなんて学校のテストだけで充分だっての」
ゆかり「あんたのテストの点数はロクな評価にならないでしょ」
乾「僕たちはシャドウを倒して、守るべきものを守るために頑張るっていうのに、こんな競争をさせるなんて。大人って、そういうとこが醜いですよね」
15: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:11:03.25 ID:UP6fDmH70
明彦「なるほど、天田。確かに大人は汚いかもしれない」
乾「はい?」
明彦「しかし、売られた勝負は買うのが男だとも思わないか?」
乾「え、ええ確かに」
明彦「そうだろう?あえて勝負に乗ってやろう、そして勝ってやろうじゃないか!」
乾「は、はい!」
ゆかり「あー真田先輩と真田教の天田くん、スイッチ入っちゃったわこれ」
乾「はい?」
明彦「しかし、売られた勝負は買うのが男だとも思わないか?」
乾「え、ええ確かに」
明彦「そうだろう?あえて勝負に乗ってやろう、そして勝ってやろうじゃないか!」
乾「は、はい!」
ゆかり「あー真田先輩と真田教の天田くん、スイッチ入っちゃったわこれ」
16: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:12:22.44 ID:UP6fDmH70
ゆかり「ところでさ、P5の主人公ってどんな人なの?」
湊「え、どうして?」
ゆかり「いやあ、興味本位というか。ほら、P4の鳴上くんってなかなか格好良かったじゃない?」
湊「あー、そういう…そうだね。名前は雨宮蓮だけど、ネット上では屋根裏ゴミとかってよく書かれてるって落ち込んでた」
風花「屋根裏ゴミって…かわいそう」
美鶴「確かに、あんまりだ。何か、そう呼ばれてしまう理由があるのか?」
湊「え、どうして?」
ゆかり「いやあ、興味本位というか。ほら、P4の鳴上くんってなかなか格好良かったじゃない?」
湊「あー、そういう…そうだね。名前は雨宮蓮だけど、ネット上では屋根裏ゴミとかってよく書かれてるって落ち込んでた」
風花「屋根裏ゴミって…かわいそう」
美鶴「確かに、あんまりだ。何か、そう呼ばれてしまう理由があるのか?」
17: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:14:32.00 ID:UP6fDmH70
湊「もともとは前科が、あ、これは実際は冤罪なんですけど、前科があって、引っ越してとある人の厚意で屋根裏に住まわせて貰っているっていうことで、屋根裏のゴミって言われたらしいですね」
乾「待ってくださいよ、冤罪なんですよね?それならゴミだなんて誹りはすぐになくなるんじゃないんですか?」
湊「いや、えーっと、別の理由もあって」
アイギス「そちらの方が大きい理由なのですね?」
湊「うん、どっちかというと手当たり次第に女の子に手を出してたり、屋根裏に出張メイドさんを呼びつけたりとかしてるっていうのが、ゴミって言われてる所以なんじゃないか、とは思う」
順平「あー、そっちね、そっち系ね。なんか知り合いにもそんなヤツがいるような気もしなくはないけど」
乾「待ってくださいよ、冤罪なんですよね?それならゴミだなんて誹りはすぐになくなるんじゃないんですか?」
湊「いや、えーっと、別の理由もあって」
アイギス「そちらの方が大きい理由なのですね?」
湊「うん、どっちかというと手当たり次第に女の子に手を出してたり、屋根裏に出張メイドさんを呼びつけたりとかしてるっていうのが、ゴミって言われてる所以なんじゃないか、とは思う」
順平「あー、そっちね、そっち系ね。なんか知り合いにもそんなヤツがいるような気もしなくはないけど」
18: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:15:30.17 ID:UP6fDmH70
ゆかり「ふーん、なるほどね。まあキミも大概なところはあるけど、住まいに連れ込むとかまで行くと、その屋根裏ゴミってのは、完全に女性の敵みたいね」
湊「いや、いいヤツなんだよ、それに冤罪のせいで転校とか、苦労してるし」アセアセ
ゆかり「そんなの、私たちだって全員P4の連中より重い不幸背負ってやってるでしょ!」
順平「いやー、ゆかりッチ?ちょっとその話は重すぎじゃないかな?ちょーっと落ち着こ、な?」
湊「いや、いいヤツなんだよ、それに冤罪のせいで転校とか、苦労してるし」アセアセ
ゆかり「そんなの、私たちだって全員P4の連中より重い不幸背負ってやってるでしょ!」
順平「いやー、ゆかりッチ?ちょっとその話は重すぎじゃないかな?ちょーっと落ち着こ、な?」
19: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:16:25.61 ID:UP6fDmH70
ゆかり「いや、落ち着けない!もう無理。そんなゴミにはボロ勝ちして、吠え面かかせる!女の敵を許すな!」
湊「……」
美鶴「ああ、処刑だ!」
湊「………」
風花「わたしも、そういう男の人、ちょっと許せないな!」
湊「…………」
美鶴「よし!早速今晩から影時間を使ってダンスの特訓だ!」
ゆかり風花明彦乾「おーーーー!」
湊「………………」アセダラダラ
湊「……」
美鶴「ああ、処刑だ!」
湊「………」
風花「わたしも、そういう男の人、ちょっと許せないな!」
湊「…………」
美鶴「よし!早速今晩から影時間を使ってダンスの特訓だ!」
ゆかり風花明彦乾「おーーーー!」
湊「………………」アセダラダラ
20: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:17:23.09 ID:UP6fDmH70
順平「おい、顔青いぞ?」
湊「ああ…ちょっと頭が痛くなってきた」
順平「まあ大丈夫だろ、お前の女グセの悪さも、きっとその屋根裏ゴミとかいうヤツほどじゃないだろ、な?」
アイギス「仮にあなたが屋根裏ゴミ以下の人間だとしても、私の一番は、あなたの傍にいること、であります」
湊「……もう、どうでもいい」
湊「ああ…ちょっと頭が痛くなってきた」
順平「まあ大丈夫だろ、お前の女グセの悪さも、きっとその屋根裏ゴミとかいうヤツほどじゃないだろ、な?」
アイギス「仮にあなたが屋根裏ゴミ以下の人間だとしても、私の一番は、あなたの傍にいること、であります」
湊「……もう、どうでもいい」
21: ◆MG4BqOMSNc 2018/01/08(月) 02:18:09.24 ID:UP6fDmH70
終わりです。
P3DもP5Dも楽しみです。
P3DもP5Dも楽しみです。
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